説明

印刷版材料、印刷版材料の版曲げ方法、印刷方法及び印刷版

【課題】 本発明の目的は、刷りだし時のインク着肉性に優れ、汚れ回復性に優れる印刷版材料、印刷版材料の版曲げ方法、印刷方法及び印刷版を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも粗面化処理、陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体上に、印刷機上現像可能な画像形成層を有する印刷版材料において、該印刷版材料が80度〜100度に折り曲げ可能であり、該アルミニウム支持体の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、かつ該アルミニウム支持体の表面に径が30〜150nmである凹部を50〜1100個/μm2有することを特徴とする印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷版材料、印刷版材料の版曲げ方法、印刷方法及び印刷版に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能で、アルミニウムを支持体とする印刷版材料並びに、それを用いた版曲げ方法、印刷方法、及び印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
【0003】
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階でインキ及び湿し水を用いて不要部分を除去する特別な薬剤での現像処理を必要としない印刷機上現像可能な印刷版材料などが知られている。その中でも印刷機上現像可能な印刷版材料は、印刷性能や印刷版の保存性に優れている。
【0004】
又、CTP方式による印刷において、比較的高耐刷力を要求される印刷ではアルミニウムを支持体とした印刷版材料が用いられ、例えばアルミニウム支持体上に印刷機上現像可能な画像形成層を有するプロセスレス印刷版材料が知られており、この支持体として中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜1.2μmのものが感熱層との密着性、汚れなどの面から好ましいことが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
他方、通常印刷業界において普及しているオフセット印刷機においては、版胴に印刷版を折り曲げて装着するためのくわえ機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、前記のプロセスレス印刷版を折り曲げて現在普及しているくわえ機構のついたオフセット印刷機に装着して印刷した場合は、折り曲げた部分の近傍で刷り出し時のインク着肉性が悪かったり、汚れ回復性が悪くなる場合があるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−277742号公報
【特許文献2】特開平3−176152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、刷りだし時のインク着肉性に優れ、汚れ回復性に優れる印刷版材料、印刷版材料の版曲げ方法、印刷方法及び印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は下記の手段により達成される。
【0009】
(請求項1)
少なくとも粗面化処理、陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体上に、印刷機上現像可能な画像形成層を有する印刷版材料において、該印刷版材料が80度〜100度に折り曲げ可能であり、該アルミニウム支持体の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、かつ該アルミニウム支持体の表面に径が30〜150nmである凹部を50〜1100個/μm2有することを特徴とする印刷版材料。
【0010】
(請求項2)
前記アルミニウム支持体の表面が、陽極酸化後、封孔処理により形成された面であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
【0011】
(請求項3)
前記アルミニウム支持体が、陽極酸化後に親水化処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
【0012】
(請求項4)
前記画像形成層が、熱溶融性粒子又は熱融着性粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0013】
(請求項5)
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料を80度〜100度に折り曲げることを特徴とする印刷版材料の版曲げ方法。
【0014】
(請求項6)
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッド加熱または700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザー光による画像露光にて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することを特徴とする印刷版材料の印刷方法。
【0015】
(請求項7)
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッド加熱または700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザー光による画像露光にて画像を形成した後に、請求項5に記載の印刷版材料の版曲げ方法により印刷版材料を折り曲げ、折り曲げられた印刷版材料を印刷機に取り付け、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することを特徴とする印刷版材料の印刷方法。
【0016】
(請求項8)
請求項6または7に記載の、印刷版材料の印刷方法、に用いられることを特徴とする印刷版。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記構成により、折り曲げた部分の近傍における刷りだし時のインク着肉性に優れ、汚れ回復性に優れる印刷版材料、印刷版材料の版曲げ方法、印刷方法及び印刷版が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、少なくとも粗面化処理、陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体上に、印刷機上現像可能な画像形成層を有する印刷版材料において、該印刷版材料が80度〜100度に折り曲げ可能であり、該アルミニウム支持体の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、かつ該アルミニウム支持体の表面に径が30〜150nmである凹部を50〜1100個/μm2有することを特徴とする。
【0019】
(支持体)
本発明に係るアルミニウム支持体としては、アルミニウム板が用いられ、アルミニウム板としては、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が使用できる。
【0020】
アルミニウム合金板としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられ、各種圧延方法により製造されたアルミニウム板が使用できる。また、近年普及しつつあるスクラップ材およびリサイクル材などの再生アルミニウム地金を圧延した再生アルミニウム板も使用できる。
【0021】
本発明に係るアルミニウム支持体は少なくとも粗面化処理、陽極酸化処理が施されたアルミニウム板であり、その表面の粗さは、中心線平均粗(Ra)さで、0.2〜0.8μmである。
【0022】
粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。
【0023】
脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いる脱脂処理が用いられる。苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いる脱脂処理の場合は支持体の表面にはスマットが生成するので、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。これらのデスマット処理は、下記の粗面化処理のあとに行ってもよい。
【0024】
粗面化の方法としては、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0025】
本発明においては、支持体の中心線平均粗さ(Ra)を0.2〜0.8μmにするよう粗面化する必要がある。
【0026】
本発明でいう中心線平均粗さ(Ra)とは、測定する試料を23℃48%相対湿度の条件下で24時間放置した後に、23℃48%相対湿度の条件下で測定した三次元粗さ測定での中心線平均粗さ(Ra)をいい、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。
【0027】
すなわち、測定による中心線平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、カットオフ値0.8mmとして、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、下式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0028】
【数1】

【0029】
また、三次元測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)は、特定のサンプリング長で、X方向にM点、Y方向にN点、合計でMN点の高さ測定を行って、粗さ中心面の高さを0とした粗さ曲面を求め、X方向がk点目で、Y方向がj点目の測定点における高さZをf(Zjk)として、下式に従って求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0030】
【数2】

【0031】
三次元測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)を測定することのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0032】
機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0033】
ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。
【0034】
ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0035】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい(以降、デスマット処理と呼ぶことがある)。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0036】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に交流電流で粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号、英国特許第896,563号、特開昭53−67507号に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2500C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0037】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。
【0038】
電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2500C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。
【0039】
電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0040】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000C/dm2の範囲を用いることができるが、好ましくは100〜2500C/dm2、更には200〜2500C/dm2の範囲から選ぶのがより好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0041】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい(デスマット処理)。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0042】
機械的粗面化法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0043】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0044】
本発明において用いることができる陽極酸化処理は、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として電流密度1〜50A/dm2で電解する方法、米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法が好ましく用いられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
(支持体上の凹部)
本発明における凹部とは走査型電子顕微鏡にて倍率100000倍で支持体表面を観察した時に、実質的に同じ高さで連続した面から凹んでいる部分をいい、その径が30μm以上であるものをいう。
【0045】
本発明に係る径とは、凹部が円形の場合は直径をいい、非円形の場合は長径(内径の最長部)と短径(内径の最短部)の長さの合計を2で割った値をいう。
【0046】
本発明においては径が30〜150nmの凹部が50〜1100個/μm2である微細粗面を有することが必要であるが、さらに30〜90nmの凹部を200〜1000個
/μm2有することが好ましい。
【0047】
径が30〜150nmの凹部が50〜1100個/μm2であるとは、支持体の表面の対角線を6等分する5点に対応する点で、1点を1μm2の範囲で測定し、30〜150nmの凹部の数を数え、5点全ての点でその数が上記範囲にあることをいう。
【0048】
走査型電子顕微鏡による観察の例としては、日立走査型電子顕微鏡S−5000Hを用い、Pt−Pd;1nmコーティング、加速電圧5kV、傾斜角;0度の条件で、倍率100000倍にて表面を観察して求めることができる。
【0049】
本発明において、径が30〜150nmの凹部が50〜1100個/μm2である微細粗面は、機械的粗面化法または硝酸系電解液による交流電解粗面化法の場合は、陽極酸化処理後に封孔処理を行うことで形成される。
【0050】
その場合の封孔処理は、熱水処理または酢酸アンモニウム処理が好ましい。熱水処理の場合は、温度は70〜97℃、処理時間5〜180秒の間で条件を組み合わせ所望の微細粗面を得ることが出来る。また、酢酸アンモニウムでpHを7〜9.5に調整することにより、より短時間で所望の微細粗面を得ることが出来る。
【0051】
塩酸系電解液による交流電解粗面化法では本発明にかかる、径が30〜150nmの凹部が50〜1100個/μm2である微細粗面が形成される。
【0052】
しかしデスマット処理を行うと表面のアルミニウム屑と同時に微細粗面も溶解してしまう場合があるので、その場合には陽極酸化処理後に封孔処理を行う必要がある。
【0053】
その場合の封孔処理は、上記熱水処理または酢酸アンモニウム処理が好ましく、デスマット処理条件と熱水処理または酢酸アンモニウム処理の組み合わせで微細構造を形成しても良い。また、デスマット処理による表面のアルミニウム溶解量が0.5〜1.5g/m2の場合は微細粗面は溶解されずに維持される。
【0054】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ前記のように封孔処理を施される。
【0055】
これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0056】
更に、本発明では、これらの処理を行った後に、親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理は特に限定されないが、水溶性の樹脂、たとえばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものが使用できる。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も用いられる。好適なのは、ポリビニルホスホン酸で支持体表面を親水化処理を行うことである。
【0057】
処理方式としては、塗布式、スプレー式、ディップ式等限定されないが、設備を安価にするにはディップ式が好適である。ディップ式の場合には、ポリビニルホスホン酸を0.05〜3%の水溶液で処理することが好ましい。処理温度は20〜90℃、処理時間は10〜180秒が好ましい。処理後、過剰に積層したポリビニルホスホン酸を除去するため、スキージ処理または水洗処理を行うことが好ましい。更に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥温度としては、20〜95℃が好ましい。
【0058】
(画像形成層)
本発明に係る画像形成層は、画像露光により画像を形成しうる層であり、印刷機上現像可能な層である。
【0059】
印刷機上現像可能とは、露光後、平版印刷における湿し水及びまたは印刷インキにより非画像部の画像形成層が除去され得ることをいう。
【0060】
本発明に係る画像形成層は、感熱画像形成層であることが好ましく、感熱画像形成層は赤外線レーザーによる露光によって発生する熱によって画像形成するものであり、熱溶融性粒子、熱融着性粒子等を含有し、必要に応じ光熱変換素材を含有する。
【0061】
(光熱変換素材)
光熱変換素材としては下記のような素材を挙げることができる。
【0062】
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
また、特開平11−240270号、同11−265062号、特開2000−309174号、同2002−49147号、同2001−162965号、同2002−144750号、同2001−219667号等に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0064】
その他に顔料等を用いることもできるが、本発明においては色素を用いることが好ましく、可視光での着色の少ない色素を用いることがより好ましい。
【0065】
(熱溶融性粒子および熱融着性粒子)
熱溶融性粒子および熱融着性粒子として、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子が挙げられる。物性としては、軟化点40℃以上120素℃下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。
【0066】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0067】
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。
【0068】
熱溶融性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0069】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0070】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0071】
層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。本発明の熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0072】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、非造膜型のポリエステル重合体、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メ
タ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。これらの中でも、非造膜型のポリエステル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレートのいずれかを含有することが好ましい。
【0073】
高分子重合体微粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
【0074】
又、熱融着性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0075】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0076】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0077】
層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0078】
(画像形成層に含有可能なその他の素材)
本発明に係る画像形成層にはさらに以下のような素材を含有させることができる。
【0079】
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、オリゴ糖、多糖類、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。
【0080】
これらのなかでは、オリゴ糖、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドが好ましい。
【0081】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0082】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドとしては、分子量3000〜500万であることが好ましく、5000〜100万であることがより好ましい。
【0083】
画像形成層は水溶性樹脂を熱架橋しうる架橋剤を含有してもよい。
【0084】
また、画像形成層には、水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。
【0085】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【0086】
画像形成層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0087】
(親水性オーバーコート層)
本発明の印刷版材料は、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。
【0088】
親水性オーバーコート層は画像形成層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが必要である。
【0089】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、前述の光熱変換素材を含有することができる。
【0090】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させてもよい。
【0091】
[80度〜100度に折り曲げ可能]
本発明に係る80度以上100度以下に折り曲げ可能とは、支持体が損傷することなく80度〜100度の範囲に折り曲げ可能なことをいい、この範囲に折り曲げ可能なことにより、印刷機に取り付けることができる。
【0092】
80度〜100度とは、折り曲げられたときの、折り曲がり部を挟む両印刷版材料面の平面である部分を延長して交わった部分における角度(折り曲げ方向の印刷版材料面のなす角度)が80度〜100度であることをいう。
【0093】
印刷版を80度〜100度の角度に折り曲げるには、折り曲げ部に加圧して折り曲げる方法、加熱して折り曲げる方法およびその両者を組み合わせて折り曲げる方法がある。
【0094】
〔折曲げ方法〕
印刷業界において普及しているオフセット印刷機においては、特開平3−176152号公報に記載のような版胴に印刷版を折り曲げて装着するためのくわえ機構が知られている。
【0095】
これらの機構に印刷版を装着して印刷するためには、印刷版の端縁部を80度〜100度の角度に折り曲げることが必要である。
【0096】
折り曲げ部に加圧して折り曲げる方法としては、固定されたブロックに沿って印刷版をブロックの反対方向から別のブロック等で押圧して折り曲げる方法が好ましく用いられる。
【0097】
その際に押圧する力や時間を制御することで、本発明の範囲である80度以上100度以下の角度に折り曲げることができる。
【0098】
本発明の実施の形態を図で説明する。
【0099】
図1は、版折り曲げ装置を用いた場合の主要構成図である。図1(a)は、版下から押圧して版を固定する押圧ブロック1と、それと対をなす版固定ブロック2、該版固定ブロック2に隣接し、ガイドブロック3を備えた凹状の固定上刃4、それと対をなす下刃5とを有する平版印刷版の版折り曲げ装置10を示す。
【0100】
図1(b)の如く、前記押圧ブロック2の矢印方向への移動により、前記版固定ブロック1の間で印刷版材料6を固定し、図1(c)の如く、印刷版の端部を、前記下刃5の上方(矢印方向)への移動により、前記凹状上刃4に押し込み、押圧することにより折り曲げるものである。下刃5の下方への移動と、押圧ブロック2の解放により印刷版材料6が固定から解除され、図1(d)示すような端部が折り曲げられた印刷版材料6が得られる。
【0101】
図2は、あらかじめ位置決め用ピン穴が空けられている印刷版を示す。このピン穴を基準にして折り曲げ位置を決めることとなる。図2(a)は、印刷版材料6の中心部には印刷絵柄が、版の四方にはトンボ14が予め露光されており、位置決め用ピン穴として、u字状のピン穴12と長方形状ピン穴13の2種からなる印刷用のピン穴が、印刷版の折り曲げられる端部15とは反対側の端部に空けられている。
【0102】
図2(b)は、位置決め用ピン穴が、丸状ピン穴16と長方形状ピン穴17の2種からなり、印刷版の折り曲げられる端部15とは反対側の端部に空けられている。
【0103】
図2(c)は、この丸状ピン穴16と長方形状ピン穴17の位置決め用ピン穴を基準に、該位置決めピンと同じ側の端部に、U字状ピン穴12と長方形状ピン穴13の2種からなる印刷用のピン穴を空けた状態を示す図である。
【0104】
本発明の印刷版材料を版折り曲げる装置は、このような位置決めピンを基準に折り曲げ位置を決める。そして、本発明に用いることができる版折り曲げ装置には、このような位置決め用ピン穴を基準に、u字状のピン穴12と長方形状ピン穴13の印刷用のピン穴をあけるパンチブロックを合わせ持つことが好ましい。また、版を固定する排気ステージを有することが好ましい。
【0105】
図3は、本発明に好ましく用いられる印刷版の版折り曲げ装置の概念図を示す。排気ステージ21には排気ポンプが接続されており、ステージの表面は細孔を有し、吸引することができる。位置決め用ピン22に印刷版の位置決め用ピン穴を合わせて印刷版材料6を置き、排気して印刷版を固定し、版の一端にパンチブロック20によりU字状と長方形状の印刷用のピン穴を空ける。
【0106】
他の一方の端には、位置決め用ピンから特定の距離に本発明の平版印刷版を版折り曲げ装置10が設定されており、ある特定の距離に折り曲げ部を形成することができる。
【0107】
図4及び図5は、本発明に好ましく用いられるもう一つの平版印刷版を折り曲げる装置の折曲押圧作業の前後の状態を示す拡大立面図である。アンビル31と、カム32とレバー33とからなる押圧手段34によって前記アンビル31に押圧される版押さえ35が具えられる。前記アンビル31の頂縁部には折曲用エッジ36が設けられており、このエッジ36と共働して印刷版38の端縁部39を折曲すべき版曲げ部材40を装着した前記アンビル31と共働して折曲加圧手段が構成されている。
【0108】
なお前記印刷版38は画像面38Aを上面として使用するものとする。前記折曲加圧手段に関しては、図4及び図5に示すように、版曲げ部材40を取り付けた構体41に形成したラック42に噛み合うピニオン43の回動によって進退運動が行なわれ、その前進位置において、版曲げ部材40と前記折曲用エッジ36との間で、前記印刷版38の折り曲げを行なうものである。この際、前記折曲用エッジ36の角度を変更すること、折り曲げる時間及び回数を変更することで折曲角度を調整する。
【0109】
加熱して折り曲げる方法には、折り曲げ部を加圧する前に加熱する方法、折り曲げ部を加圧している時に加熱する方法又は折り曲げ部を加圧した後に加熱する方法がある。
【0110】
具体的には、特開平2−102049号公報に記載のような印刷版に折り目をつけたあとに折り目を介して重ね折りした状態で折り目を加熱して折り曲げる方法、特開平10−235834号公報に記載のような印刷版を、加熱手段を有するV字型溝部とその上に設けた昇降可能な同形状ブレードとの間で加熱押圧して折り曲げる方法、特開2000−190456号公報に記載のように押圧ブロックの印刷版の画像面側の折曲げ用端縁部を前記加熱手段によって加熱した直後に非加熱部材からなる折曲加圧手段によって折曲押圧して折り曲げる方法、特開2002−254601号公報に記載のような印刷版を折り曲げた後折り目に熱風を当てる方法がある。本発明においては、これらの方法を単独で又は複数併用して適用することができる。
【0111】
本発明においては、折り曲げたあとで印刷版の変形の少ない、折り曲げ部に加圧して折り曲げる方法が最も好ましく用いられる。
【0112】
(印刷版材料の画像形成−印刷)
(画像露光)
本発明における印刷方法は、印刷版材料を画像様加熱により画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し、印刷版とする工程を含む印刷方法である。
【0113】
画像様加熱としてはサーマルヘッドによる加熱またはサーマルレーザー露光による加熱が好ましく用いられるが、特にサーマルレーザー露光による加熱によって画像形成を行うことが特に好ましい。
【0114】
即ち、上記の本発明の印刷版材料をサーマルヘッド加熱またはサーマルレーザー露光にて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することが好ましい態様である。
【0115】
上記露光に関し、より具体的には、赤外及び/又は近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザー光による画像露光により画像形成を行うのが好ましい。
【0116】
レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましく、これらを用いた走査露光が好ましく用いられる。
【0117】
上記の走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0118】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0119】
本発明では特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0120】
(印刷)
本発明の印刷に用いられる印刷機としては、一般に公知の、湿し水及び平版印刷インキを用いる平版オフセット印刷機が使用できる。
【0121】
本発明では、印刷版材料を、上記のように画像様加熱した後に、平版印刷機上で湿し水または湿し水と印刷インキにより現像を行い、印刷版とし印刷する。
【0122】
また、本発明において、印刷版材料を上記のようにサーマルヘッド加熱またはサーマルレーザー露光にて画像を形成した後に、上記の印刷版材料の版曲げ方法により印刷版材料を80度〜100度に折り曲げ、折り曲げられた印刷版材料を印刷機に取り付け、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することが好ましい態様である。
【0123】
印刷版材料の上記の画像形成機能層の非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長は特に必要としない。
【0124】
印刷機上での画像形成層の非画像部(未露光部)の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行うことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行うことができる。また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
【0125】
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0126】
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0127】
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0128】
(湿し水)
湿し水は、平版印刷版の印刷に従来から使用されている湿し水を使用することができる。
【0129】
湿し水の水としては、水道水、井戸水等一般に得られる水でかまわない。微量成分として、酸類、例えば、りん酸またはその塩、クエン酸またはその塩、硝酸またはその塩、酢酸またはその塩、さらに具体的には、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリム等、クエン酸、クエン酸アンモニム、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム等、また、水溶性高分子化合物として、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、等を含んでもより。これらの微量成分の含量は、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量パ−セント以下である。
【0130】
またさらにグリコール系化合物、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル等も含むことができる、これらグリコール系化合物の含量も少量がこのましく、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量パ−セント以下である。
【0131】
また、界面活性剤を含む水溶液も本発明の効果を発揮する。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、またはこれら界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、またはこれらの混合した界面活性剤が好ましく用いられる。
【0132】
アニオン型界面活性剤の具体例としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン錯塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレンと無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが挙げられる。
【0133】
非イオン型界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル化物類、ソルビタン脂肪酸部分エステル化物類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル化物類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル化物類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル化物類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、トリアルキルアミンオキシド類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。その他弗素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤も使用することができる。
【0134】
カチオン型界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
【0135】
これら界面活性剤の使用は単独で用いても、2種以上を併用しても良い。湿し水中の界面活性剤の量は0.01質量%以下がこのましく、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0136】
微量成分として、酸類、例えば、りん酸またはその塩、クエン酸またはその塩、硝酸またはその塩、酢酸またはその塩、さらに具体的には、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリム等、クエン酸、クエン酸アンモニム、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム等、また、水溶性高分子化合物として、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、等を含んでもより。これらの微量成分の含量は、0.1質量パーセント以下、好ましくは0.05質量パ−セント以下である。
またさらにグリコール系化合物、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル等も含むことができる、これらグリコール系化合物の含量も少量がこのましく好ましくは0.1質量パーセント以下、さらに好ましくは0.05質量パ−セント以下である。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0138】
実施例1
(支持体の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。
【0139】
次いで、このアルミニウム板を、塩酸水溶液中で、表1に示す電解条件で電解粗面化を行った。その後50℃に保たれた水酸化ナトリウム水溶液中で表1に示すデスマット条件でデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、30%硫酸溶液中で、25℃、電流密度30A/dm2、電圧25Vの条件下に30秒間陽極酸化処理を行った。次いで酢酸アンモニウム水溶液により表1に示す条件で封孔処理を行った。
【0140】
(ポリビニルホスホン酸処理)
上記支持体を、0.44%のポリビニルホスホン酸水溶液に、75℃、30秒間ディップ処理を行い、次いで蒸留水で水洗し、25℃の冷風で乾燥し、感光性平版印刷版用支持体を得た。
【0141】
中心線平均粗さ(Ra)は非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)で40倍にて測定した。
【0142】
微細粗面の平均径が30〜150nmで構成される凹部の個数は、日立走査型電子顕微鏡S−5000Hにて、Pt−Pd;1nmコーティング、加速電圧5kV、傾斜角;0度、倍率100000倍にて表面を観察し求めた。
【0143】
【表1】

【0144】
《印刷版材料の作製》
前記作製した支持体上に、下記にて作製した画像形成層塗布液及びオーバーコート層塗布液を下記条件の乾燥付き量になるようにコーターで塗布して、下記条件で乾燥し、その後エイジング処理を行ない、印刷版材料を得た。
【0145】
画像形成層塗布:乾燥付き量0.75g/m2、乾燥条件55℃/3分
オーバーコート層塗布:乾燥付き量0.30g/m2、乾燥条件55℃/3分
エイジング条件:40℃/24時間
(画像形成層塗布液の作製)
表2に画像形成層塗布液の素材の詳細を示す。純水で希釈、分散して画像形成層塗布液を調製した。
【0146】
【表2】

【0147】
【化1】

【0148】
(オーバーコート層塗布液の作製)
表3にオーバーコート層塗布液の素材の詳細を示す。純水で希釈、分散してオーバーコート層塗布液を調製した。
【0149】
【表3】

【0150】
【化2】

【0151】
(赤外線レーザー露光による画像形成)
印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを250mJ/cm2として、2400dpi(dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。
【0152】
露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。
【0153】
作製した印刷版試料には、図2(a)に示すような印刷用のピン穴が空けた。
【0154】
〈折り曲げ〉
作製した印刷版試料を、図3に示す折り曲げ装置の位置決めピンに印刷版試料のピン穴を合わせて、ステージにのせ、真空吸引して印刷版試料を固定した。その後、折り曲げ装置10で折り曲げを行い、折り曲げ時間を変えることで、短辺が6.5mm、折り曲げ角90度の角度で折り曲げることができた。折り曲げた印刷版試料を印刷機に装着して、評価を行った。
【0155】
(c)印刷版としての諸特性の評価
《印刷方法》
折り曲げた印刷版試料を印刷機(小森コーポレーション製のLITHRONE26)にかけて、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして東洋インキ製造株式会社製の大豆油タイプのTKハイエコーSOY1の紅のインクを使用してコート紙に印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行った。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る印刷版試料は非画像部が除去されていた。
【0156】
〈刷り出し時のインキ着肉性の評価〉
印刷開始のシークエンスをPS版の印刷シークエンスで行い、何枚目で非画線部、特にくわえ近傍のインキ汚れがなくなるかを測定し、刷り出し時のインキ着肉性の指標とした。
【0157】
枚数が少ないほどインク着肉性が優れている。結果を表4に示す。
【0158】
(汚れ回復性の評価)
インキローラーのみをニップして、全面にインキを付着した状態で通常の印刷(インキローラーと水ローラーをニップ)を行った。その際、印刷物における非画線部の汚れがなくなった枚数を測定し、汚れ回復性の指標とした。枚数が少ない方が良い。
【0159】
結果を表4に示す。
【0160】
表4から、本発明の印刷版材料を用いた印刷において、折り曲げた部分の近傍において刷り出し時のインキ着肉性、及び汚れ回復性に優れていることが分かる。
【0161】
【表4】

【0162】
実施例2
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。
【0163】
次いで、このアルミニウム板を、硝酸水溶液中で、表5に示す電解条件で電解粗面化を行った。その後50℃に保たれた水酸化ナトリウム水溶液中で表5に示すデスマット条件でデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、30%硫酸溶液中で、25℃、電流密度30A/dm2、電圧25Vの条件下に30秒間陽極酸化処理を行った。次いで酢酸アンモニウム水溶液により表5に示す条件で封孔処理を行った。
【0164】
(ポリビニルホスホン酸処理)
上記支持体を、0.44%のポリビニルホスホン酸水溶液に、75℃、30秒間ディップ処理を行い、次いで蒸留水で水洗し、25℃の冷風で乾燥し、感光性平版印刷版用支持体Tを得た。
【0165】
実施例1と同様に中心線平均粗さ(Ra)及び微細粗面の平均径が30〜150nmで構成される凹部の個数を測定した。結果を表5に示す。
【0166】
【表5】

【0167】
《印刷版材料の作製》
下記の画像形成層塗布液を、上記の支持体に塗布液量が12cm3/m2になるようバーコーターで塗布した。その後、100℃、1分間加熱乾燥し、乾燥塗布量0.42g/m2の画像形成層を得た。
【0168】
【表6】

【0169】
次に、上記の画像形成層上に、下記に示した組成の親水層塗布液を塗布液量が12cm3/m2になるようバーコーターで塗布した。その後、100℃、1分間加熱乾燥し、乾燥塗布量0.40g/m2の親水層を得た。
【0170】
【表7】

【0171】
【化3】

【0172】
このようにして得られた各親水層上に、下記組成のオーバーコート層塗布液を塗布液量が12cm3/m2になるようバーコーターで塗布後、100℃、1.5分間加熱乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2のオーバーコート層を設け、感熱性平版印刷版用原板を作製した。
【0173】
(オーバーコート層塗布液組成)
アラビアガム28質量%水溶液 1.50部
光熱変換剤(上記IR−2) 0.177部
エマレックス#710(10%水溶液、界面活性剤、日本エマルジョン(株)製)
0.316部
酢酸マグネシウム10%水溶液 0.038部
水 39.57部
(赤外線レーザー露光による画像形成)
印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2として、2400dpi(dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。
【0174】
露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。
【0175】
作製した印刷版試料には、図2(b)に示すような印刷用のピン穴が空けた。
【0176】
作製した印刷版を図3に示す折り曲げ装置の基準ピンに印刷版のピン穴を合わせて、ステージにのせ、真空吸引して印刷版を固定した。その後、折り曲げ機構で折り曲げ時間を変えて、折り曲げを行ったところ、短辺が6.6mm、折り曲げ角度89度になった。引き続き同装置に付属するパンチブロックにより印刷用のパンチ穴(U字状と長方形状の2種からなる印刷用のピン穴)を空けた。折り曲げを施し、かつ印刷用パンチ穴を設けた印刷版を印刷機に装着した。
【0177】
実施例1と同じ条件で印刷を行い、実施例1と同様な評価を行った。
【0178】
以上により得られた結果を表8に示す。
【0179】
【表8】

【0180】
表8から、本発明の印刷版材料を用いた印刷において、折り曲げた部分の近傍について刷り出し時のインキ着肉性、及び汚れ回復性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明に好ましく用いられる平版印刷版材料の版折り曲げ装置の主要構成図である。
【図2】あらかじめ位置決め用ピン穴が空けられた印刷版材料を示す。
【図3】本発明に好ましく用いられる印刷版材料の版折り曲げ装置の概念図を示す。
【図4】本発明に好ましく用いられる印刷版材料の版折り曲げ装置の折曲押圧作業前の構成部の拡大図を示す。
【図5】本発明に好ましく用いられる印刷版材料の版折り曲げ装置の折曲押圧作業後の構成部の拡大図を示す。
【図6】支持体101の電子顕微鏡写真である。
【図7】支持体104の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0182】
1 押圧ブロック
2 版固定ブロック
3 ガイドブロック
4 固定上刃
5 下刃
6 印刷版材料
10 版折り曲げ装置
12 u字状のピン穴
13 長方形状ピン穴
16 丸状ピン穴
17 長方形状ピン穴
21 排気ステージ
22 位置決め用ピン
31 アンビル
35 版押さえ台
38 印刷版材料
40 版曲げ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粗面化処理、陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体上に、印刷機上現像可能な画像形成層を有する印刷版材料において、該印刷版材料が80度〜100度に折り曲げ可能であり、該アルミニウム支持体の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、かつ該アルミニウム支持体の表面に径が30〜150nmである凹部を50〜1100個/μm2有することを特徴とする印刷版材料。
【請求項2】
前記アルミニウム支持体の表面が、陽極酸化後、封孔処理により形成された面であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
【請求項3】
前記アルミニウム支持体が、陽極酸化後に親水化処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
【請求項4】
前記画像形成層が、熱溶融性粒子又は熱融着性粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料を80度〜100度に折り曲げることを特徴とする印刷版材料の版曲げ方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッド加熱または700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザー光による画像露光にて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することを特徴とする印刷版材料の印刷方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッド加熱または700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザー光による画像露光にて画像を形成した後に、請求項5に記載の印刷版材料の版曲げ方法により印刷版材料を折り曲げ、折り曲げられた印刷版材料を印刷機に取り付け、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去し印刷版とし、印刷することを特徴とする印刷版材料の印刷方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の、印刷版材料の印刷方法、に用いられることを特徴とする印刷版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−26904(P2006−26904A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204309(P2004−204309)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】