説明

印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法

【課題】 本発明の目的は、機上現像性、耐刷性に優れ、印刷機汚染(色濁り)防止性に優れ、かつ可視画性に優れる印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】 基材上に、基材側から順に、光熱変換材を含有しその表面の反射濃度が1.0以上である親水性層と、ブロック化イソシアネート化合物を含有する感熱画像形成層と、熱溶融性白色粒子を含有する可視画形成層とを有することを特徴とする印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
【0003】
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階で現像処理を行い特に現像工程を必要としない印刷版材料などの、ケミカルフリータイプ印刷版材料やプロセスレスタイプ印刷版材料と呼ばれる印刷版材料が知られている。
【0004】
一方、これらのCTP方式においても従来のPS版と同様に所謂検版という作業が、現状のワークフローにおいては必要とされ、また印刷機に取り付ける際に必要なパンチング(取り付け用の穴あけ)を現像後に行う場合には、トンボ画像を専用装置で読み取って正確な位置調整を行うため、装置で読み取り可能なように画像部と非画像部とで、反射濃度に差があることが必要とされる場合があり、所謂現像可視画性をもつことが必要とされてる。
【0005】
又、特に現像処理を必要としない印刷版材料や印刷機上で現像を行うプロセスレスタイプの印刷版材料においては、印刷機に取り付ける際に必要なパンチングを露光後に行うため、所謂露光可視画性をもつことが必要とされている。
【0006】
これらの可視画性を付与する手段として、例えば「印刷機上で除去可能な親水性オーバーコート層に、露光によって光学濃度を変化させることのできるシアニン系赤外線吸収色素を20質量%以上含有させる」方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0007】
この方法によれば確かに良好な露光可視画性が得られるが、印刷機上で除去される層中に多量の色素を含有させ、露光によって色素をさらに発色させるにしろ退色させるにしろ、露光部もしくは未露光部のいずれかは発色濃度の高い層となるため、機上現像による印刷機汚染は避けるのは難しい。
【0008】
また、画像形成層に含まれれる赤外線吸収色素の露光退色を利用したものが知られているが、このような色素を画像形成層に添加した場合、未露光部と露光部との色差を大きくして露光可視画性を向上させることは、即ち未露光部の着色濃度を上げることになり、未露光部の機上現像時の印刷機汚染が大きくなる。(特許文献2参照。)。
【0009】
又、印刷機上で現像可能な印刷版材料として、画像形成層中にロイコ色素とその顕色剤といったような感熱発色する素材を含有させ、露光部、即ち親油性の画像部のみを発色させる印刷版材料が知られている(特許文献3参照)。
【0010】
この印刷版材料では、印刷機上で除去される非画像部の画像形成層は比較的着色濃度が低いため、露光退色を利用する方法よりも印刷機汚染(色濁り)は低減するが、発色した画像部にはやはり部分的に耐水性が低い領域が残存することは避けられず、発色画像部による印刷機汚染(色濁り)が有る場合があった。
【0011】
他方、上記のサーマルプロセスレスプレートの画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有する赤外線レーザー記録方式である。この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、アブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプが存在する。
【0012】
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものが挙げられる。
【0013】
これらは、例えば、基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。
【0014】
しかしながら、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、露光装置には特別な吸引装置が必要となる場合があり、露光装置に対する汎用性は低い。
【0015】
又、アブレーションを生じることなく画像形成が可能であり、かつ特別な現像液による現像処理や拭き取り処理の不要な印刷版材料の開発も進められている。たとえば、特許2938397号や特許2938397号に開示されているような、感熱画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性高分子化合物の結合剤とを用いた、印刷機上で湿し水またはインクを用いて現像することが可能なCTP用印刷版材料が挙げられる。
【0016】
又、上記の熱可塑性微粒子を感熱画像形成層に含有する印刷版材料の保存性などを改善しるものとして、ブロック化イソシアネート化合物を含む層を有する印刷版材料が知られている(特許文献4、特許文献5参照。)
ブロック化イソシアネートは、イソシアネート化合物のイソシアネート基を特定素材で化学的にブロックした化合物であり、特定温度(一般に100℃前後)以下では反応性を示さない。
【0017】
このブロックは特定温度以上になると解離してイソシアネート基が再生し、反応性を示すようになる。反応性を示すようになるブロックの解離温度に明確な閾値があるため、この解離温度未満の温度範囲であれば比較的良好な保存性を示すものである。
【0018】
しかしながら、このような印刷版材料は前記の露光可視画性が不充分であり、上記の可視画性を付与する方法適用しても、可視画性は不充分であり、また、耐刷性、機上現像性を維持したまま可視画性を向上させるのは困難であった。
【特許文献1】特開2002−205466号公報
【特許文献2】特開2000−225780号公報
【特許文献3】特開平11−140270号公報
【特許文献4】特開2002−225451号公報
【特許文献5】特開2002−283758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、機上現像性、耐刷性に優れ、印刷機汚染(色濁り)防止性に優れかつ可視画性に優れる印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、下記手段により達成される。
【0021】
(請求項1)
基材上に、基材側から順に、光熱変換材を含有しその表面の反射濃度が1.0以上である親水性層と、ブロック化イソシアネート化合物を含有する感熱画像形成層と、熱溶融性白色粒子を含有する可視画形成層とを有することを特徴とする印刷版材料。
【0022】
(請求項2)
前記感熱画像形成層の付量が0.05〜0.5g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
【0023】
(請求項3)
前記熱溶融性白色粒子の平均粒子径が0.3μm〜2μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
【0024】
(請求項4)
前記熱溶融性白色粒子の融点が前記ブロック化イソシアネート化合物の解離温度よりも低く、60℃〜180℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0025】
(請求項5)
前記感熱画像形成層が印刷機上現像可能な層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0026】
(請求項6)
請求項5に記載の印刷版材料を赤外線レーザーにより画像露光し、画像を形成することを特徴とする印刷版材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の構成により、機上現像性、耐刷性に優れ、印刷機汚染(色濁り)防止性に優れかつ可視画性に優れる印刷版材料及び印刷版材料の画像形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の印刷版材料は、基材上に、基材側から順に光熱変換材を含有しその表面の反射濃度が1.0以上である親水性層、ブロック化イソシアネート化合物を含有する感熱画像形成層、熱溶融性白色粒子を含有する可視画像層、を有することを特徴とする。
【0029】
本発明における反射濃度とは、絶対白基準で可視光領域で濃度測定を行なって得られた値であり、例えばGretag−Macbeth社製の反射濃度計:D−196を用い、絶対白基準で濃度測定(カラー判定BCMYは自動とする)を行なって得ることができる。
【0030】
基材が光透過性である場合には、測定を白色台(具体的には印刷に用いるコート紙を4枚重ねたものを敷いた台)上で行なう。
【0031】
親水性層の表面の反射濃度とは、印刷時非画像部となり得る層の表面の反射濃度のことをいう。
【0032】
(親水性層)
本発明に係る親水性層とは、印刷時に印刷インキ反発性である非画像部となり得る層であり、基材上に親水性層を設けその表面の反射濃度を測定することにより反射濃度を求めることができる。
【0033】
親水性層は、その表面の反射濃度が1.0以上であり、光熱変換材を含有する。
【0034】
上記の反射濃度を1.0以上とするには、着色材を含有することが好ましく、濃色の着色材が好ましく、特にその表面が親水性の黒色顔料を含有することが好ましい。
【0035】
また着色材は、光熱変換材と兼用されることが、濃度向上、感度などの面から好ましく、特に粒子径が0.01〜1μmである顔料粒子を用いるのが好ましい。
【0036】
光熱変換材と兼用される表面が親水性の着色材としては、後述の光熱変換材を用いることができるが、これらのなかでも特に、チタンブラックや、特開2002−370465号に記載されているCu−Fe.Mnの複合金属酸化物顔料や、黒色酸化鉄顔料、特開2001−47755号に記載のシリカ素材で被覆されたカーボンブラック顔料等が好ましく用いられる。
【0037】
親水性層の反射濃度を1.0以上とするには、親水性層中の上記顔料のような着色材粒子の粒子径、分散度、含有量、親水性層乾燥付量等を適宜制御することで達成することが可能である。
【0038】
具体的には、親水性層中の着色材含有量は感度、耐刷性の面から10質量%〜80質量%であることが好ましく、20質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0039】
親水性層の乾燥付量としては、反射濃度、親水性層の基材への接着性などの面から0.5g/m2〜20g/m2であることが好ましく、1g/m2〜10g/m2であることがより好ましい。
【0040】
本発明に係る親水性層は、親水性素材を含む。
【0041】
親水性層に用いられる親水性素材としては、実質的に水に不溶で親水性の素材が好ましく、特に金属酸化物が好ましい。
【0042】
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0043】
金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0044】
上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。
【0045】
また金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0046】
多孔質金属酸化物粒子としては、多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0047】
多孔質金属酸化物粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0048】
本発明に用いることができる親水性層には、前記の着色剤に加えて後述の光熱変換材を含有させてもよい。
【0049】
また本発明に係る親水性層中には親水性有機樹脂を含有させてもよい。
【0050】
親水性有機樹脂としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂及びオリゴ糖、多糖類、澱粉などのセルロース誘導体が挙げられる。
【0051】
また、親水性層形成のための親水性層塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。
【0052】
本発明に係る親水性層は基材の表面を親水化処理して得られる基材の親水性表面層であってもよく、例えば、アルミニウムの表面を粗面化し親水化処理及び着色処理した表面層を親水性層として用いることもできる。この場合、光熱変換材は上記の表面層に付着させて用いることができる。
【0053】
(基材)
本発明に係る基材は感熱画像形成層を担持し得る板状体あるいはフィルム体であり、印刷版の基材として使用される公知の材料を使用することができる。
【0054】
例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。
【0055】
基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0056】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。
【0057】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0058】
プラスチックフィルムとしては、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0059】
これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。下塗り層に、有機または無機の公知の導電性素材を含有させることもできる。
【0060】
また、裏面のすべり性を制御する(例えば版胴表面との摩擦係数を低減させる)目的で、裏面コート層を設けた基材も好ましく使用することができる。
【0061】
(感熱画像形成層)
本発明に係る感熱画像形成層(以下単に画像形成層と称する)は画像様加熱により加熱された部分が印刷時インキを着肉する画像部となる画像を形成し得る層であり、ブロック化イソシアネート化合物を含む。
【0062】
ブロック化イソシアネート化合物は、例えば赤外線レーザーで画像露光を行った場合、露光部の親水性層表面が光熱変換によって発熱することでブロックがはずれて反応性を有するようになり、画像形成層中の他素材(例えば水酸基を有する素材)と結合したり、あるいは画像形成層に隣接する層に存在する素材と隣接面で結合したりして、インク着肉性を有する画像部を形成する。
【0063】
本発明に係る画像形成層は、特に印刷機上現像可能な層であることが好ましい態様である。
【0064】
印刷機上現像可能とは、露光後、平版印刷における湿し水及びまたは印刷インキにより非画像部の画像形成層が除去され得ることをいう。
【0065】
画像形成層の未露光部は水等を用いた現像処理や、印刷機上で湿し水およびまたはインクを用いた、いわゆる機上現像で除去することが可能である。
【0066】
画像形成層の未露光部の除去性の面から、ブロック化イソシアネート化合物は、ブロック化イソシアネート化合物の水分散物を用いて画像形成層中に含有せられるのが好ましい。
【0067】
ブロック化イソシアネート化合物の水分散物について説明する。
【0068】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート[ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)など];脂肪族ポリイソシアネート[1、6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)など];脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネートなど];芳香脂肪族ポリイソシアネート[キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)など];これらの変性物(ビューレット基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、オキサゾリジン基含有変性物など);およびこれらのポリイソシアネートと分子量50〜5、000の活性水素含有化合物からなる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0069】
また、特開平10−72520に記載のポリイソシアネート化合物も好ましく用いることができる。
【0070】
上記の中では特にトリレンジイソシアネートが、反応性が速く好ましい。
【0071】
(ブロック化剤)
イソシアネート基のブロック剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系ブロック剤、フェノール、クレゾールなどのフェノール系ブロック剤、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシムなどのオキシム系ブロック剤、アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどの酸アミド系ブロック剤、マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチルなどの活性メチレン系ブロック剤、ブチルメルカプタンなどのメルカプタン系ブロック剤、コハン酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤、イミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系ブロック剤、尿素、チオ尿素などの尿素系ブロック剤、N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤、ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤、エチレンイミン、ポリエチレンイミンなどのイミン系ブロック剤などが挙げられる。これらの中では特にオキシム系ブロック剤を用いることが好ましい。
【0072】
ブロック化剤の含有量としては、ブロック剤中の活性水素基がイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.0〜1.1当量となるように含有させることが好ましいが、後述するポリオール等の活性水素基を有する添加剤と併用する場合は、ブロック剤と活性水素基を有するその他の添加剤とを合計した活性水素基が、イソシアネート基に対して1.0〜1.1当量となるように含有させることが好ましい。1.0未満では未反応のイソシアネート基が残存し、また、1.1を超えるとブロック剤等が過剰となるため好ましくない。
【0073】
ブロック化イソシアネート化合物の解離温度とは、イソシアネート化合物に付加反応していたブロック化剤が、イソシアネート化合物から解離する温度をいう。
【0074】
このブロック剤が解離する解離温度としては、80〜200℃であることが好ましく、80〜160℃であることがより好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。
【0075】
(ポリオール)
本発明の印刷版材料においては、イソシアネート化合物はポリオールを含有する、イソシアネート化合物のポリオール付加物であることが好ましい態様である。
【0076】
ポリオールを含有させることにより、ブロック化イソシアネート化合物の保存安定性を向上させることができる。また、加熱して画像を形成した際の画像強度が向上し、耐刷性が向上する。
【0077】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、キシリレングリコール、ソルビトール、しょ糖などの多価アルコール、これらの多価アルコールあるいはポリアミンにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを、あるいは両者を付加重合して得られるポリエーテルポリオール類、ポリテトラメチレンエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール類、さらに上記多価アルコールとたとえばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アゼライン酸などの多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、アクリルポリオール類、ヒマシ油、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールにビニルモノマーをグラフトして得られるポリマーポリオール類、エポキシ変性ポリオール類などが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、キシリレングリコール、ソルビトールなど分子量50〜5000のポリオールを好ましく使用することができ、特に分子量50〜500程度の低分子量ポリオールをより好ましく使用できる。
【0078】
ポリオールの好ましい含有量としては、ポリオール中の水酸基がイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して0.1〜0.9当量となるような範囲であり、この範囲において特にブロック化イソシアネート化合物の保存安定性が向上する。
【0079】
(ブロック化方法)
イソシアネート化合物のブロック化方法としては、例えば、イソシアネート化合物を無水の条件下、不活性ガス雰囲気下で40〜120℃程度に加温し、攪拌しながらブロック剤を所定量滴下して混合し、攪拌を続けながら数時間かけて反応させるという方法が挙げられる。この際、何らかの溶媒を用いることもできる。また、公知の触媒、例えば、有機金属化合物、第3級アミン、金属塩等を用いることもできる。
有機金属触媒としては、たとえば、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレートなどのスズ系触媒、2−エチルヘキサン酸鉛などの鉛系触媒などが、第3級アミンとしては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N,N′−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロ(2、2、2)−オクタンなどが、金属塩触媒としては、たとえば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸鉛酸化リチウムなどが挙げられる。これらの触媒の使用量は、ポリイソシアネート組成物100質量部に対し、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0080】
本発明のブロック化イソシアネート化合物において、ポリオールとの化合物でもある態様の場合は、ブロック剤およびポリオールをイソシアネート化合物と反応させるが、先にイソシアネート化合物とポリオールとを反応させた後に、残ったイソシアネート基とブロック剤とを反応させてもよく、また、先にイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させた後に、残ったイソシアネート基とポリオールとを反応させてもよい。
【0081】
本発明のブロック化イソシアネート化合物の好ましい平均分子量としては、重量平均分子量で500〜2000であることが好ましく、600〜1000であることがより好ましい。この範囲で反応性と保存安定性とのバランスが良好となる。
【0082】
(水分散物の製造)
上述のようにして得られたブロック化イソシアネート化合物は、例えば、界面活性剤と水とを加えて、ホモジナイザ等を用いて強力に混合攪拌することで水分散物とすることができる。
【0083】
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のノニオン系界面活性剤、あるいはラウリルベタイン、ステアリルベタインの塩などのアルキルベタイン型の塩、ラウリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸型の両界面活性剤などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中ではノニオン界面活性剤が好ましい。
【0084】
ブロック化イソシアネート化合物水分散物の固形分としては、10〜80質量%であることが好ましい。界面活性剤の添加量としては、水分散物の固形分中の0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0085】
イソシアネート化合物のブロック化反応等に有機溶媒を用いた場合には、水分散物としてから有機溶媒を除去することもできる。
【0086】
(画像形成層のその他の素材)
画像形成層は、ブロック化イソシアネート化合物のみで構成することも可能であるが、下記のような素材を適宜含有させることもできる。
【0087】
ただし、本発明においては画像形成層上にさらに可視画形成層を塗布形成することを考慮して、可視画形成層の塗布液に用いる溶媒、例えば水への耐性をある程度維持できるような素材構成とすることが好ましい。
【0088】
具体的には、画像形成層に含有される水溶性素材は0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
【0089】
(反応促進剤)
画像形成層には、ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤の解離促進や、再生したイソシアネート基と他の官能基との反応を促進させる触媒機能を有する反応促進剤を含有させることができる。
【0090】
これは、上述の公知の触媒、例えば、有機金属化合物、第3級アミン、金属塩等を用いることができる。
【0091】
(解離したイソシアネート化合物との反応可能な化合物)
画像形成層は、解離したイソシアネート化合物と反応可能な化合物、例えば水酸基、カルボキシ基、イミノ基、アミノ基を含有する化合物を含むことが好ましく、特に水酸基、カルボキシ基を含む水溶性素材を含有することが好ましく、例えば下記の水溶性素材が挙げられる。
【0092】
(画像形成素材)
本発明に係る画像形成層は、ブロック化イソシアネート化合物以外に画像形成層の露光部を、露光前の実質的に水や印刷印kでで親水性層上から除去されうる状態から除去されない状態へと画像形成層を変化させ得る画像形成素材を含有してもよい。
【0093】
画像形成素材としては、疎水性の熱溶融性素材、熱融着性素材等を好ましく用いることができる。
【0094】
熱溶融性素材あるいは熱融着性素材は微粒子の状態で用いるのが好ましい。
【0095】
熱溶融性微粒子は、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。
【0096】
物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0097】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。
【0098】
熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度などの面より、0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0099】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0100】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0101】
熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0102】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0103】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度などの面から0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0104】
また、画像形成素材として特開2002−2135号や特開2002−19317号に記載されている疎水性素材を内包するマイクロカプセルも好ましく用いることができる。
【0105】
(水溶性化合物)
本発明に係る画像形成層には水溶性化合物を含有させることができる。
【0106】
水溶性化合物としては、20℃の水100gに0.5g以上溶解する化合物であれば、どのような化合物でも用いることができる。が、20℃の水100gに2g以上溶解する化合物であることが良好な、水による現像性を得るために好ましく、また、20℃で固体であることが画像形成層の強度維持のために好ましい。
【0107】
具体的には下記のような化合物が挙げられる。
【0108】
オリゴ糖:トレハロース、スクロース、マルトース、シクロデキストリン等。
【0109】
水溶性高分子化合物:多糖類(デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルラン、キトサン、またはこれらの誘導体)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等。
【0110】
(無機微粒子)
画像形成層には、耐水性や塗膜強度を適度に向上させるために、無機微粒子を含有させることができる。
【0111】
無機粒子としては、耐水性や塗膜強度、耐刷性、機上現像性等の面から、特開2002−370465号に記載されているコロイダルシリカあるいは、モンモリロナイト等の層状粘土鉱物粒子を用いることが好ましい。
【0112】
(光熱変換材)
本発明に係る画像形成層は光熱変換材を含有してもよい。
【0113】
光熱変換素材としては、カーボンブラック、グラファイト、金属粒子、金属化合物粒子といったいわゆる顔料及び色素を挙げることができる。
【0114】
カーボンブラックとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0115】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0116】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0117】
金属化合物物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0118】
前者としては、黒色酸化鉄(Fe34)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。
【0119】
後者としては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。
【0120】
又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0121】
光熱変換効率を考慮した場合に、黒色酸化鉄および二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられる。
【0122】
黒色酸化鉄粒子としては、針状比(長軸径/短軸径)が1〜1.5の範囲の粒子であることが好ましく、実質的に球状(針状比1)であるか、もしくは、八面体形状(針状比約1.4)を有していることが好ましい。
【0123】
このような黒色酸化鉄粒子としては、例えば、チタン工業社製のTAROXシリーズが挙げられる。球状粒子としては、BL−100(粒子径0.2〜0.6μm)、BL−500(粒子径0.3〜1.0μm)等を好ましく用いることができる。また、八面体形状粒子としては、ABL−203(粒子径0.4〜0.5μm)、ABL−204(粒子径0.3〜0.4μm)、ABL−205(粒子径0.2〜0.3μm)、ABL−207(粒子径0.2μm)等を好ましく用いることができる。
【0124】
さらに、これらの粒子表面をSiO2等の無機物でコーティングした粒子も好ましく用いることができ、そのような粒子としては、SiO2でコーティングされた球状粒子:BL−200(粒子径0.2〜0.3μm)、八面体形状粒子:ABL−207A(粒子径0.2μm)が挙げられる。
【0125】
二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物は、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0126】
色素としては赤外線吸収色素が好ましく用いられる。
【0127】
赤外線吸収色素の含有量としては、色素の可視光での着色の程度によって、画像形成層の着色の割合が変化するが、露光可視画の面から、印刷版材料の単位面積あたりとして、0.001g/m2以上、0.2g/m2未満であることが好ましく、0.05g/m2未満であることがより好ましい。
【0128】
また、可視光での着色が少ない色素を用いることが好ましい。
【0129】
赤外線吸収色素の具体例としては、一般的な赤外線吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0131】
また、画像形成層には、界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系、アセチレングリコール系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi系界面活性剤およびアセチレングリコール系界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は画像形成層(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0132】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
また、画像形成層は潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤を含有させることで、画像形成層へのスクラッチ傷(印刷において汚れとなる懸念がある)を軽減させることができる。
【0133】
潤滑剤としては、公知のワックスが挙げられるが、その中でも脂肪酸アミドや脂肪酸Ca、脂肪酸Znなどが好ましい。また、これらの潤滑剤も水分散体として塗布液に添加することが好ましい。
【0134】
潤滑剤の含有量としては、画像形成層の0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0135】
本発明に係る画像形成層の基材上の付き量としては、機上現像性、耐刷性の面から0.05〜0.5g/m2が好ましい。
【0136】
(熱溶融性白色粒子を含有する可視画形成層)
可視画形成層は熱溶融性白色粒子を含有する。
【0137】
熱溶融性白色粒子は、粒子状としたとき白色を呈するものであり、熱溶融性白色粒子としては、融点が50〜200℃の範囲にある有機物粒子を用いることが好ましい。
【0138】
熱溶融性白色粒子の融点は、保存性、印刷適性などの面から前記ブロック化イソシアネート化合物の解離温度よりも低く、60℃〜180℃であることが特に好ましい。
【0139】
また、粒子を中空構造としたり、屈折率の異なる素材をコアシェル構造にしたりして、白色度を向上させることもできる。
【0140】
具体的には、パラフィン、ポリエチレン、カルナバ、マイクロクリスタリンといったワックスの粒子を用いることが好ましい。
【0141】
熱溶融性白色粒子の平均粒子径としては、解像度、感度、層の透明性などの面から0.1〜5.0μmの範囲が好ましく、0.3〜2.0μmの範囲がより好ましく、0.4〜1.0μmの範囲がさらに好ましい。
【0142】
熱溶融性白色粒子の粒子径は電子顕微鏡による画像を用いて測定した粒子の最長径と最短径の平均をいい、平均粒子径とは100個測定した粒子径の平均値をいう。
【0143】
可視画形成層の熱溶融性白色粒子の含有量としては、隠蔽力、熱溶融前後での不透明性の変化の割合などの面から40〜100質量%であることが好ましく、60〜98質量%であることがより好ましい。
【0144】
可視画形成層には、熱溶融性白色粒子の他にも、上述の画像形成層が含有できる素材を含有させることができる(ブロック化イソシアネート化合物も含有可能である)。
【0145】
可視画形成層においては、未露光部の洗浄除去性や、機上現像性を向上させるために、層中に上述の水溶性素材を0.1〜40質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0146】
可視画形成層を形成した後の印刷版材料表面の反射濃度としては、1.5以下であることが好ましく、親水性層表面の反射濃度よりも0.3以上低いことがより好ましく、0.5以上低いことがさらに好ましい。
【0147】
画像形成層を形成することにより反射濃度を0.3以上、好ましくは0.5以上低減させることは、画像形成層中の熱溶融性白色粒子の素材、粒子径、含有量、画像形成層の乾燥付量等を適宜調整することで達成することが可能である。
【0148】
また、露光部の反射濃度を0.2以上、好ましくは0.4以上増加させることが、好ましい態様である。
【0149】
露光部の反射濃度を0.2以上、好ましくは0.4以上増加させることは、熱溶融性白色粒子の融点、粒子径、画像形成層の厚さ等を適宜調整することで達成することが可能である。
【0150】
本発明に係る可視画形成層の付き量としては、0.2〜2.0g/m2の範囲が好ましい。
【0151】
(露光)
本発明に係る露光はレーザー光を用いることが好ましい。その中でも、特に赤外線レーザーなどのサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0152】
例えば赤外及び/または近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0153】
走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0154】
一般的には、(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。又特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0156】
(基材の作製)
(基材1の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0157】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行った。
【0158】
この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は8回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で320C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。
【0159】
また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0160】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、90℃に保たれた0.1質量%の酢酸アンモニウム水溶液(水酸化ナトリウム添加でpHを9.0に調整)に60秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。基材1の表面粗さはRaで0.35μmであった。
【0161】
[表面粗さの測定方法]
試料表面に白金ロジウムを1.5nmの厚さで蒸着した後、WYKO社製の非接触三次元粗さ測定装置:RSTplusを用いて、20倍の条件(222.4μmx299.4μmの測定範囲)で測定し、傾き補正およびMedian Smoothingのフィルターをかけて測定データを処理してRa値を求めた。
【0162】
測定は一試料について測定箇所を変えて5回行ない、その平均を求めてRa値とした。
【0163】
(基材2の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0164】
次に下記素材を十分に混合攪拌し、ろ過して、固形分20質量%の下塗り層用塗布液を作成した。
【0165】
下塗り層用塗布液組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0166】
【表1】

【0167】
次いで、このアルミニウム板に下塗り層を乾燥付量で1.0g/m2となるようにワイヤーバーで塗布し、170℃で3分間乾燥して、基材2を得た。
【0168】
実施例1
(親水性層塗布液の調製)
下表の組成の素材を、ホモジナイザを用いて、回転数5000回転で5分間混合分散した後、ろ過して固形分30質量%の親水性層用塗布液1を得た。この塗布液のpHは9.5であった。
【0169】
親水性層用塗布液組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0170】
【表2】

【0171】
(画像形成層塗布液の調製)
下表の組成の素材を、十分に混合した後、ろ過して固形分5質量%の画像形成層用塗布液A1〜A4を得た。
【0172】
画像形成層用塗布液A1〜A4組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0173】
【表3】

【0174】
【化1】

【0175】
(可視画形成層塗布液の調製)
下表の組成の素材を、十分に混合した後、ろ過して固形分10質量%の可視画形成層用塗布液B1〜B4を得た。
【0176】
可視画形成層用塗布液B1〜B4組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0177】
【表4】

【0178】
(印刷版材料の作製)
表5に示す基材、各層ごとの塗布液種の組み合わせで、印刷版材料1〜11を作製した。
【0179】
各層ともに、塗布はワイヤーバーを用いて、表5に示す乾燥付量となるように塗布した。
【0180】
乾燥条件は、親水性層が170℃3分間、画像形成層、可視画形成層がともに55℃3分間であった。
【0181】
親水性層塗布後、さらに積層塗布を行なう前に60℃24時間のエイジング処理を行なった。また、所定の塗布層を形成し終わった試料は、55℃48時間のエイジング処理を行なった。
【0182】
赤外線レーザーによる露光
各印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。
【0183】
露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像と2400dpi(同上)のラインアンドスペース細線画像とを含むものである。
【0184】
露光エネルギーはそれぞれの印刷版材料で最適となるように調整して露光を行なった。各印刷版材料に適用した露光エネルギーを表5に示した。
【0185】
(可視画性評価)
露光後の印刷版材料のベタ露光部と、未露光部の表面の反射濃度を、Gretag−Macbeth社製の反射濃度計:D−196を用いて測定し、表6に示した。
【0186】
これは、絶対白基準で濃度測定(カラーは自動判定)を行なって得られた濃度の数値である。
【0187】
また、ベタ露光部と未露光部との濃度差の絶対値(ΔD)を求め、表6に示した。
【0188】
(印刷方法)
印刷機:三菱重工業社製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製) 2質量%、インク(東洋インク社製トーヨーキングハイユニティM紅)を使用して印刷を行なった。露光後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付け、PS版と同様の印刷条件および刷り出しシークエンスを用いて1000枚まで印刷を行なった。
(印刷評価)
[刷り出し性(機上現像性)評価]
刷り出しから何枚目の印刷物で良好な画像が得られるかを求め機上現像性の指標とした。良好な画像とは、地汚れがなく、かつ、ベタ画像部の濃度が1.5以上であることとした。結果を表6に示した。
【0189】
[耐刷性評価]
コート紙を用いた印刷を1000枚行なった後、印刷用紙を上質紙(しらおい)に変更し、かつ、50μm厚の版下を入れて、耐刷性の加速評価を行なった。1000枚ごとに印刷物をサンプリングし、3%網点画像の欠け、もしくは、ベタ画像のカスレのいずれかが認められた印刷枚数を耐刷性の指標とした。結果を表6に示した。
【0190】
[印刷機汚染(色濁り)防止性評価]
印刷版材料2及び7について、画像形成層側表面をそれぞれ、水を含ませたガーゼで擦り汚れの程度を比較し印刷機汚染(色濁り)防止性の評価の指標とした。印刷版材料2では明確な汚れは確認できなかったのに対し、印刷版材料7では、ガーゼに緑色の汚れが付着した。これにより本発明の印刷版材料は印刷機汚染(色濁り)防止性に優れていることが分かる。
【0191】
【表5】

【0192】
【表6】

【0193】
表6から、本発明の印刷版材料は、露光後の可視画性が非常に良好であり、かつ機上現像性および耐刷性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、基材側から順に、光熱変換材を含有しその表面の反射濃度が1.0以上である親水性層と、ブロック化イソシアネート化合物を含有する感熱画像形成層と、熱溶融性白色粒子を含有する可視画形成層とを有することを特徴とする印刷版材料。
【請求項2】
前記感熱画像形成層の付量が0.05〜0.5g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
【請求項3】
前記熱溶融性白色粒子の平均粒子径が0.3μm〜2μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
【請求項4】
前記熱溶融性白色粒子の融点が前記ブロック化イソシアネート化合物の解離温度よりも低く、60℃〜180℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【請求項5】
前記感熱画像形成層が印刷機上現像可能な層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷版材料を赤外線レーザーにより画像露光し、画像を形成することを特徴とする印刷版材料の画像形成方法。

【公開番号】特開2006−7698(P2006−7698A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191110(P2004−191110)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】