説明

印刷版材料及び印刷版材料の製造方法

【課題】 本発明の目的は、非画像部の汚れ防止性、色濁り防止性に優れ、かつ感度、耐刷性に優れる印刷版材料及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 基材上に、光熱変換剤粒子を含有する親水性層及び、感熱画像形成層を有する印刷版材料の製造方法において、該光熱変換剤粒子が金属酸化物粒子または金属酸化物で表面を被覆された粒子であり、該親水性層は該基材上に親水性層用塗布液を塗布し、乾燥して設けられた層であり、該親水性層用塗布液を塗布し、乾燥した後に、親水性層表面をクリーニングする工程を有することを特徴とする印刷版材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷版材料及び印刷版材料の製造方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な感熱画像形成層を有する印刷版材料及び印刷版材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
【0003】
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階で現像処理を行い特に現像工程を必要としない印刷版材料などの、ケミカルフリータイプ印刷版材料やプロセスレスタイプ印刷版材料と呼ばれる印刷版材料が知られている。
【0004】
プロセスレスCTPとしては、印刷機上で湿し水やインクを用いて画像形成層の非画像部を除去する、機上現像タイプが多く知られており、この例として例えば、特許2938397号や特許2938398号に開示されているような、親水性層もしくはアルミ砂目上に熱可塑性微粒子、水溶性の結合剤、光熱変換素材を含有する画像形成層を設けた印刷版材料が挙げられる。
【0005】
この構成においては、赤外線レーザー露光により画像形成層中の光熱変換素材が発熱し、熱可塑性微粒子を熱融着させることで耐水性を有する画像部とするが、アルミ砂目は熱伝導性が比較的良好であるため、画像形成層の露光部で生成した熱は、急速にアルミ砂目へと伝導する。
【0006】
このため、特に画像部画像形成層とアルミ砂目との界面近傍の温度を上昇させることが困難となり、画像形成層素材のアルミ砂目への融着が進行しにくくなって、画像形成に要するエネルギーが高く(低感度)、また、画像部の接着性も不十分(低耐刷)となりやすい。
【0007】
上記の構成において、感度向上を行なうには、画像形成層中の光熱変換素材、例えば赤外線吸収色素の含有量を増量するといった方向が考えられる。
【0008】
しかしながら、色素を増量した場合には、画像形成層の可視光での着色も高くなるため、機上現像した際の湿し水やインクの汚染が著しくなって実用上問題が出てくる。
【0009】
また、赤外線吸収色素は一般に高価であるため、増量によるコストアップも問題となる。
【0010】
上記の問題を解決する印刷版材料構成のひとつとして、光熱変換素材として光熱変換剤粒子を含有する親水性層を有する赤外線レーザー記録用の印刷版材料が種々検討されている。
【0011】
例えば、このような光熱変換剤粒子を含有し、光熱変換剤を含有する親水性層上に、例えば上述の熱可塑性微粒子と水溶性素材とを含有するような感熱画像形成層を設けた構成の印刷版材料や、光熱変換剤を含有する親水性層上に疎水性の薄層を設けた構成の印刷版材料が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0012】
これらの印刷版材料は、親水性層用の塗布液を塗布し、乾燥してその上に感熱画像形成層を設層している。
【0013】
しかしながら、これらの印刷版材料においては印刷時、特に刷りだし時において、非画像部に汚れがでる場合がある、あるいは色濁りが発生する場合があるなど印刷適性において充分なものではなかった。
【特許文献1】特開2000−225780号公報
【特許文献2】特開2000−355178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、非画像部の汚れ防止性、色濁り防止性に優れ、かつ感度、耐刷性に優れる印刷版材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記手段により達成される。
【0016】
(請求項1)
基材上に、光熱変換剤粒子を含有する親水性層及び、感熱画像形成層を有する印刷版材料の製造方法において、該光熱変換剤粒子が金属酸化物粒子または金属酸化物で表面を被覆された粒子であり、該親水性層は該基材上に親水性層用塗布液を塗布し、乾燥して設けられた層であり、該親水性層用塗布液を塗布し、乾燥した後に、親水性層表面をクリーニングする工程を有することを特徴とする印刷版材料の製造方法。
【0017】
(請求項2)
前記光熱変換剤粒子の該親水性層中の含有量が15質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料の製造方法。
【0018】
(請求項3)
前記親水性層表面をクリーニングする工程が、親水性層を塗布形成した基材を搬送させながら、親水性層表面にクリーニング部材を押し当てる工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料の製造方法。
【0019】
(請求項4)
前記クリーニング部材が洗浄液を含浸していることを特徴とする請求項3に記載の印刷版材料の製造方法。
【0020】
(請求項5)
前記親水性層表面にクリーニング部材を押し当てる工程の前に、親水性層表面に洗浄液を供給する工程を有し、該クリーニング部材で、供給された洗浄液を拭き取ることを特徴とする請求項3に記載の印刷版材料の製造方法。
【0021】
(請求項6)
前記光熱変換剤粒子が磁性を有し、かつ前記クリーニングする工程が磁力を有する部材を用いてクリーニングする工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷版材料の製造方法。
【0022】
(請求項7)
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷版材料の製造方法によって製造されたことを特徴とする印刷版材料。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記構成により、非画像部の汚れ防止性、色濁り防止性に優れ、かつ感度、耐刷性に優れる印刷版材料及びその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、基材上に、光熱変換剤粒子を含有する親水性層及び感熱画像形成層を有する印刷版材料の製造方法において、該光熱変換剤粒子が金属酸化物粒子または金属酸化物で表面を被覆された粒子であり、該親水性層は該基材上に親水性層用塗布液を塗布し、乾燥して設けられた層であり、該親水性層用塗布液を塗布し、乾燥した後に、親水性層表面をクリーニングする工程を有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る親水性層は、画像露光による画像様加熱により画像を形成するために光熱変換剤粒子を含有するが、このようなタイプの印刷版材料においては、親水性層中の光熱変換剤粒子の含有比率が感度に影響し、高感度化のためには、光熱変換剤粒子の含有比率を増加させる必要がある。
【0026】
しかしながら、単に光熱変換剤粒子の含有比率を増加させると、印刷時特に刷りだし時に汚れが発生する、色濁りが発生する場合があるなどの問題があった。
【0027】
これは、親水性層中の光熱変換剤粒子の含有比率が増加すると、光熱変換剤粒子を層中に保持固定する親水性バインダの比率が減少することになり、光熱変換剤粒子の保持能力が低下する方向に進み、親水性層全体の塗膜としては十分な強度を維持していても、表層の光熱変換剤粒子は比較的弱い外力で脱落してしまう場合があるためと推定された。
【0028】
光熱変換剤粒子の脱落を抑制する方法としては、親水性バインダの架橋を制御して強度を向上させたり、光熱変換剤粒子を表面処理してバインダとの結合力を向上させたりするなどして親水性層自体の塗膜強度を向上させることで光熱変換剤粒子の保持能力を向上させることが考えられるが、この方法は親水性層の親水性の低下が大きい。
【0029】
本発明者が鋭意検討した結果、親水性層表層の脱落する可能性のある光熱変換剤粒子を、後述するクリーニング工程によってあらかじめ除去してしまうことで、高感度でかつ耐刷性が良好で、刷りだし時の汚れ、色濁りが防止された印刷版材料を製造できることを見出し本発明に至ったものである。
【0030】
[光熱変換剤粒子]
本発明に係る光熱変換剤粒子は、画像露光により発熱して感熱画像形成層に画像を形成しうる機能を有する粒子であり、金属酸化物粒子もしくは金属酸化物で表面を被覆された粒子である。
【0031】
光熱変換剤粒子の粒子径としては、平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。
【0032】
平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。
【0033】
金属酸化物剤粒子としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材からなる粒子を使用することができる。
【0034】
前者としては、例えば黒色酸化鉄(Fe34)や、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。
【0035】
後者とては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。
【0036】
又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。
【0037】
これらの光熱変換剤粒子のうち、黒色酸化鉄および二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられる。
【0038】
黒色酸化鉄粒子としては、針状比(長軸径/短軸径)が1〜1.5の範囲の粒子であることが好ましく、実質的に球状(針状比1)であるか、もしくは、八面体形状(針状比約1.4)を有していることが好ましい。
【0039】
このような黒色酸化鉄粒子としては、例えば、チタン工業社製のTAROXシリーズが挙げられる。
【0040】
球状粒子としては、BL−100(粒子径0.2〜0.6μm)、BL−500(粒子径0.3〜1.0μm)等を好ましく用いることができる。
【0041】
また、八面体形状粒子としては、ABL−203(粒子径0.4〜0.5μm)、ABL−204(粒子径0.3〜0.4μm)、ABL−205(粒子径0.2〜0.3μm)、ABL−207(粒子径0.2μm)等を好ましく用いることができる。
【0042】
さらに、これらの粒子表面をSiO2等の無機物でコーティングした粒子も好ましく用いることができ、そのような粒子としては、SiO2でコーティングされた球状粒子:BL−200(粒子径0.2〜0.3μm)、八面体形状粒子:ABL−207A(粒子径0.2μm)が挙げられる。
【0043】
二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物粒子としては、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物粒子が挙げられる。
【0044】
これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0045】
本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物がが好ましい。
【0046】
Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。
【0047】
金属酸化物で表面を被覆された粒子としては、例えば後述する金属粒子やカーボンブラック粒子、グラファイト粒子などが挙げられる。
【0048】
金属粒子の表面は薄い酸化物皮膜が形成されているため、金属酸化物で被覆された粒子であると言える。
【0049】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0050】
また、特開2000−3551788号に記載されている、磁性を有する鉄合金粒子も用いることができる。
【0051】
カーボンブラック粒子としては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0052】
グラファイト粒子としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0053】
これらのカーボンブラック粒子やグラファイト粒子は、例えば、特開2000−3551788号に記載されているような方法を用いて表面を金属酸化物で被覆することで、本発明に用いることができる。
【0054】
また、金属酸化物粒子や金属粒子をさらにSiO2等の金属酸化物で被覆したものも好ましく用いることができる。
【0055】
これらの光熱変換剤粒子の添加量としては、親水性層に対して0.1〜90質量%であることが好ましいが、15質量%以上であることが好ましく、本発明においては高感度化と耐刷性との両立ために、15〜70質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
本発明に係る光熱変換剤粒子としては、下記の親水性素材としての機能を合わせ持つものも好ましく使用できる。
【0057】
[親水性層のその他の含有可能な素材]
本発明の親水性層は、親水性素材を含有する。
【0058】
親水性素材としては、金属酸化物が好ましく用いられる。
【0059】
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子の状態で用いるのが好ましい。
【0060】
例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0061】
この金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0062】
上記金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0063】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、炭素原子を含まない素材が91質量%以上というような層においても良好な強度を得ることができる。
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカは コロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0064】
ネックレス状コロイダルシリカとは1次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称である。本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは1次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0065】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0066】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられる。
【0067】
製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらにそれぞれ対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0068】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、層の多孔質化材として好ましく使用できる。
【0069】
これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0070】
また、コロイダルシリカは粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明には平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、3〜15nmであることが更に好ましい。
【0071】
又、前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが地汚れ発生を抑制する効果が高いため、アルカリ性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。
【0072】
平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0073】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0074】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95が好ましく、70/30〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が更に好ましい。
【0075】
本発明に係る親水性層は親水性素材としての金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0076】
多孔質金属酸化物粒子としては、後述する多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
・多孔質シリカ多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子多孔質シリカ粒子は一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。
【0077】
乾式法では四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0078】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
多孔質アルミノシリケート粒子は例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0079】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で細孔容積で1.0ml/g以上であることが好ましく、1.2ml/g以上であることがより好ましく、1.8〜2.5ml/g以下であることが更に好ましい。
【0080】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。細孔容積が1.0ml/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0081】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(例えば分散時に破砕された場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。不必要に粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れやブランケット汚れが劣化する場合がある。
・ゼオライト粒子
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。
【0082】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0083】
また、本発明に係る親水性層は金属酸化物として、層状鉱物粒子を含んでもよい。
【0084】
層状鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。
【0085】
中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0086】
又、上記の層状鉱物粒子のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0087】
層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、又平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましく、平均粒径が1μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。
【0088】
また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲をはずれると、引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、柔軟性が不充分となり、同様に引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。
【0089】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0090】
特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを作製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0091】
本発明に係る親水性層はその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0092】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0093】
親水性層中には親水性有機樹脂を含有させてもよい。
【0094】
親水性有機樹脂としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂、糖類が挙げられる。
【0095】
又、カチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、例えば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0096】
上記の糖類としては、オリゴ糖を用いることもできるが、特に多糖類を用いることが好ましい。
【0097】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0098】
これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0099】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜50μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。
【0100】
このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷性能を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0101】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)はアルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0102】
凹凸構造のピッチとしては0.2〜30μmであることがより好ましく、0.5〜20μmであることが更に好ましい。又、ピッチの大きな凹凸構造の上に、それよりもピッチの小さい凹凸構造が形成されているような多重構造の凹凸構造が形成されていてもよい。
表面粗さとしては、Raで100〜1000nmが好ましく、150〜600nmがより好ましい。
【0103】
また、親水性層の膜厚としては、0.01〜50μmであり、好ましくは0.2〜10μmであり、更に好ましくは0.5〜3μmである。
【0104】
本発明に係る親水性層用塗布液は、上記の親水性層に用いられ素材と塗布溶媒からなる。
【0105】
塗布溶媒としては、水が好ましく用いられるが、アルコール類等の水と相溶する溶媒を含有することもできる。
【0106】
また、本発明に係る親水性層用塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。
【0107】
Si系やF系やアセチレングリコール系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。
【0108】
該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0109】
また、本発明に係る親水性層はリン酸塩を含むことができる。本発明では親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0110】
[基材]
基材としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。
【0111】
例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0112】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行なうことが好ましい。
【0113】
例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行なう方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム基材を使用することもできる。
【0114】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0115】
本発明に係る基材としては、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0116】
これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行なうことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。下塗り層に、有機または無機の公知の導電性素材を含有させることもできる。
【0117】
また、裏面のすべり性を制御するために粗面を有する裏面コート層を設けた基材や公知の導電性素材を含有する裏面コート層を設けた基材も好ましく使用することができる。
【0118】
[塗布・乾燥方法]
上記の親水性層用塗布液を基材上に塗布する塗布方法としては、公知の塗布方法、例えばバー塗布、ロール塗布、押し出し塗布等、どのような塗布方法であっても用いることができる。
【0119】
乾燥温度としては、70℃以上であることが好ましい。基材が樹脂である場合には、80〜150℃の範囲であることがより好ましい。また、基材が金属である場合には、80℃〜300℃の範囲であることがより好ましい。
【0120】
乾燥時間としては1秒間〜5分間の範囲が好ましく、5〜2分間の範囲がより好ましい。また、乾燥温度と乾燥時間との組み合わせによっては、基材に熱ダメージを与える可能性があるため、基材が熱ダメージを受けない条件とすることが好ましい。
【0121】
[クリーニング方法]
本発明に係るクリーニングする工程に用いられるクリーニング方法としては、親水性層表面に比較的弱く固定されているか、付着している光熱変換剤粒子を除去できる方法であれば、そのような方法であっても適用することができる。
【0122】
本発明においては、光熱変換剤粒子の含有量が多い場合、特に含有量が15質量%以上である場合に効果が顕著に表れる。
【0123】
クリーニング方法としては具体的には下記のようなものが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0124】
また、これらを適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0125】
a.親水性層を形成した基材を搬送させながら、親水性層表面にクリーニング部 材を押し当てる方法(親水性層を形成した基材を固定し、親水性層表面にクリー ニング部材を押し当てながら移動させても良い)。
【0126】
クリーニング部材としては、公知の不織布や東レ社製の工業用トレシー等のクリーニングクロスが挙げられる。
【0127】
このようなクリーニングクロスは、一般的に金属バー等のバックアップ部材によって、連続搬送されるウエブに押し付けて使用される。
【0128】
また、クリーニングクロスはロール状形態のものを用い、連続搬送されるウエブに押し付けながら、ウエブの進行方向とは反対方向に巻き出してわずかずつ搬送させ、使用済み部分を巻取るようにして使用することが好ましい。
【0129】
さらに、バックアップ部材のウエブに対向する部分に吸引孔を形成しておき、クリーニングクロスで拭き取るとともに吸引してクリーニング効果を向上させることも可能である。
【0130】
クリーニング部材に水等の洗浄液を含浸させてもよく、また、クリーニング部材と接触する前に親水性層表面に水等の洗浄液を供給(塗布)し、次いでクリーニング部材で洗浄液を拭き取るような方式を取ってもよい。このような湿式のクリーニングの後に、乾式のクリーニング工程(乾燥したクリーニング部材で拭き取る)を設けたり、乾燥工程を設けたりすることもできる。
【0131】
アルカリ性のコロイダルシリカやケイ酸塩を含有する親水性層の場合、洗浄液にリン酸等を含有させて酸性とすることで、クリーニング後の親水性層塗膜強度を向上させることもできる。
【0132】
b.親水性層表面に超音波高速エアを吹きつけ、次いで吸引する方法。
【0133】
例えば、伸興社製、ヒューグルエレクトロニクス社製等の超音波式ウエブクリーナを用いることができる。
【0134】
c.親水性層を形成した基材を水等の洗浄液の入った洗浄槽中に浸漬し、親水性層表面に水流を当てたり、クリーニング部材(回転ブラシ等)を押し当てて相対運動をさせたりする方法。
【0135】
クリーニング後には適宜、親水性層表面の乾燥工程(表面スキージ、不織布等による拭き取り、冷風もしくは温風乾燥等)を設けることが必要である。
【0136】
上記の中でも、a.の方法によるクリーニング方法が塗布乾燥ラインに組み込みやすく、また、イニシャルコストも低く抑えることができる等の利点があり、好ましい。
【0137】
発明において、光熱変換剤粒子として、磁性を有する粒子を用いた場合には、クリーニング工程に、磁力を有する部材を用いてクリーニングする工程を含むことにより、クリーニングの効果を向上させることができる。
【0138】
磁性を有する光熱変換剤粒子としては、上述の黒色酸化鉄粒子、鉄合金粒子等が挙げられる。
【0139】
磁力を有する部材を用いてクリーニングする工程の具体的な方法としては、例えば、a.の方法によるクリーニング方法において、バックアップ部材に磁石を組み込むといった方法が挙げられる。
【0140】
なお、本発明で用いられるクリーニング方法は、塗布乾燥後の親水性層表面だけではなく、スリット加工後の端面の親水性層にも適用可能である。スリット端面のクリーニングを行なうことで、搬送ラインのウエブスリット端部が接触するロール、ガイド等の汚染を抑制することが可能となる。
【0141】
[感熱画像形成層]
上記のクリーニングする工程を経た後、後述するような感熱画像形成層(以下単に画像形成層という)を形成することで、印刷版材料とすることができる。
【0142】
画像形成は、露光部の画像形成層が熱によって親水性表面を有する基材上から除去されやすくなる方向へと変化する、いわゆるポジ版であってもよいし、あるいは、露光部の画像形成層が熱によって除去されにくくなる方向へと変化する、いわゆるネガ版であってもよい。
【0143】
本発明に係る印刷版材料の好ましい態様としては、露光部の画像形成層が熱によって親水性表面を有する基材上から除去されにくくなる方向へと変化する、ネガ版タイプの印刷版材料である。
【0144】
このような、露光部が熱によって親水性層上から除去されにくくなる方向へと変化する画像形成層としては、例えば、親水性層を熱により親水性層から疎水性への変化させ得る疎水化前駆体と水溶性もしくは水分散性素材とを含有する画像形成層を挙げることができる。
【0145】
疎水化前駆体としては、例えば熱によって親水性(水溶性または水膨潤性)から疎水性へと変化するポリマー、具体的には、例えば、特開2000−56449に開示されている、アリールジアゾスルホネート単位を含有するポリマーを挙げることができる。
【0146】
本発明に係る画像形成層には、疎水化前駆体として、熱溶融性微粒子および熱融着性微粒子等の熱可塑性疎水性粒子、もしくは、疎水性物質を内包するマイクロカプセル、特定のブロック化イソシアネート化合物などを好ましく用いることができる。
【0147】
熱可塑性微粒子としては、後述する熱溶融性微粒子および熱融着性微粒子を挙げることができる。
【0148】
熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0149】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行なうことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0150】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒子径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0151】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0152】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0153】
熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000、000の範囲であることが好ましい。
【0154】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0155】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒子径は機上現像性、感度などの面から0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0156】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0157】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0158】
マイクロカプセルとしては、例えば特開2002−2135号や特開2002−19317号に記載されている疎水性素材を内包するマイクロカプセルを挙げることができる。
【0159】
マイクロカプセルは平均径で0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
【0160】
[ブロック化イソシアネート化合物]
ブロック化イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物に下記に記載のブロック化剤を反応付加させたものである。
【0161】
画像形成層に用いることができるブロック化イソシアネート化合物は後述するような化合物の水分散物であることが好ましい。
【0162】
水分散物から塗布形成することで、良好な機上現像性を得ることができる。
【0163】
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート[ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)など];脂肪族ポリイソシアネート[1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)など];脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネートなど];芳香脂肪族ポリイソシアネート[キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)など];これらの変性物(ビューレット基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、オキサゾリジン基含有変性物など);およびこれらのポリイソシアネートと分子量50〜5、000の活性水素含有化合物からなる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0164】
また、特開平10−72520に記載のポリイソシアネート化合物も好ましく用いることができる。
【0165】
上記の中では特にトリレンジイソシアネートが、反応性が速く好ましい。
【0166】
[ブロック化剤]
イソシアネート基のブロック剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系ブロック剤、フェノール、クレゾールなどのフェノール系ブロック剤、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシムなどのオキシム系ブロック剤、アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどの酸アミド系ブロック剤、マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチルなどの活性メチレン系ブロック剤、ブチルメルカプタンなどのメルカプタン系ブロック剤、コハン酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤、イミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系ブロック剤、尿素、チオ尿素などの尿素系ブロック剤、N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤、ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤、エチレンイミン、ポリエチレンイミンなどのイミン系ブロック剤などが挙げられる。これらの中では特にオキシム系ブロック剤を用いることが好ましい。
【0167】
ブロック化剤の含有量としては、ブロック剤中の活性水素基がイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.0〜1.1当量となるように含有させることが好ましいが、後述するポリオール等の活性水素基を有する添加剤と併用する場合は、ブロック剤と活性水素基を有するその他の添加剤とを合計した活性水素基が、イソシアネート基に対して1.0〜1.1当量となるように含有させることが好ましい。1.0未満では未反応のイソシアネート基が残存し、また、1.1を超えるとブロック剤等が過剰となるため好ましくない。
【0168】
ブロック剤の解離温度としては、80〜200℃であることが好ましく、80〜160℃であることがより好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。
【0169】
[ポリオール]
ブロック化イソシアネート化合物は、さらにポリオールが付加したポリオール付加物であることが好ましい。
【0170】
ポリオールを含有させることにより、ブロック化イソシアネート化合物の保存安定性を向上させることができる。また、加熱して画像を形成した際の画像強度が向上し、耐刷性が向上する。
【0171】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、キシリレングリコール、ソルビトール、しょ糖などの多価アルコール、これらの多価アルコールあるいはポリアミンにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを、あるいは両者を付加重合して得られるポリエーテルポリオール類、ポリテトラメチレンエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール類、さらに上記多価アルコールとたとえばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アゼライン酸などの多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、アクリルポリオール類、ヒマシ油、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールにビニルモノマーをグラフトして得られるポリマーポリオール類、エポキシ変性ポリオール類などが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、キシリレングリコール、ソルビトールなど分子量50〜5000のポリオールを好ましく使用することができ、特に分子量50〜500程度の低分子量ポリオールをより好ましく使用できる。
【0172】
ポリオールの好ましい含有量としては、ポリオール中の水酸基がイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して0.1〜0.9当量となるような範囲であり、この範囲において特にブロック化イソシアネート化合物の保存安定性が向上する。
【0173】
[ブロック化方法]
イソシアネート化合物のブロック化方法としては、例えば、イソシアネート化合物を無水の条件下、不活性ガス雰囲気下で40〜120℃程度に加温し、攪拌しながらブロック剤を所定量滴下して混合し、攪拌を続けながら数時間かけて反応させるという方法が挙げられる。この際、何らかの溶媒を用いることもできる。また、公知の触媒、例えば、有機金属化合物、第3級アミン、金属塩等を用いることもできる。
【0174】
有機金属触媒としては、たとえば、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレートなどのスズ系触媒、2−エチルヘキサン酸鉛などの鉛系触媒などが、第3級アミンとしては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N,N′−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどが、金属塩触媒としては、たとえば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸鉛酸化リチウムなどが挙げられる。これらの触媒の使用量は、ポリイソシアネート組成物100質量部に対し、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0175】
ブロック化イソシアネート化合物において、ポリオールとの化合物でもある態様の場合は、ブロック剤およびポリオールをイソシアネート化合物と反応させるが、先にイソシアネート化合物とポリオールとを反応させた後に、残ったイソシアネート基とブロック剤とを反応させてもよく、また、先にイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させた後に、残ったイソシアネート基とポリオールとを反応させてもよい。
【0176】
ブロック化イソシアネート化合物の好ましい平均分子量としては、重量平均分子量で500〜2000であることが好ましく、600〜1000であることがより好ましい。この範囲で反応性と保存安定性とのバランスが良好となる。
【0177】
[水分散物の製造]
上述のようにして得られたブロック化イソシアネート化合物は、例えば、界面活性剤と水とを加えて、ホモジナイザ等を用いて強力に混合攪拌することで水分散物とすることができる。
【0178】
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のノニオン系界面活性剤、あるいはラウリルベタイン、ステアリルベタインの塩などのアルキルベタイン型の塩、ラウリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸型の両界面活性剤などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中ではノニオン界面活性剤が好ましい。
【0179】
ブロック化イソシアネート化合物水分散物の固形分としては、10〜80質量%であることが好ましい。界面活性剤の添加量としては、水分散物の固形分中の0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0180】
イソシアネート化合物のブロック化反応等に有機溶媒を用いた場合には、水分散物としてから有機溶媒を除去することもできる。
【0181】
画像形成層は水溶性素材を含んでもよく水溶性素材としては下記のような素材を挙げることができる。
【0182】
[水溶性高分子化合物]
画像形成層に含有される水溶性素材としては、pH4からpH10の水溶液に溶解する公知の水溶性高分子化合物が挙げられる。
【0183】
具体的には、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0184】
これらのなかでは、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0185】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルラン、キトサン、またはこれらの誘導体などが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0186】
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミドとしては、分子量3000〜100万であることが好ましく、5000〜50万であることがより好ましい。
【0187】
これらの中では、ポリアクリル酸Naといったポリアクリル酸塩が最も好ましい。ポリアクリル酸塩は親水性層の親水化処理剤としての効果が高く、画像形成層が機上現像されて現れる親水性層の表面の親水性を向上させることができる。
【0188】
[オリゴ糖]
水溶性素材としては、上述の水溶性高分子化合物以外にオリゴ糖を含有させることができる。
【0189】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0190】
[画像形成層に含有可能なその他の素材]
また、画像形成層には光熱変換素材として、赤外線吸収色素を含有させることができる
赤外線吸収色素の含有量としては、色素の可視光での着色の程度によって、機上現像時の印刷機汚染との兼ね合いを考慮する必要があるが、一般的に印刷版材料の単位面積あたりとして、0.001g/m2以上、0.2g/m2未満であることが好ましく、0.05g/m2未満であることがより好ましい。また、可視光での着色が少ない色素を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0191】
赤外線吸収色素の具体例としては上述のものが挙げられる。
【0192】
また、画像形成層には、界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0193】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【実施例】
【0194】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0195】
(基材の作製)
厚さ175μmの二軸延伸ポリエステルフィルムフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行ないながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。
【0196】
また反対側の面に下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行ないながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、しそれぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0197】
塗布後の25℃、25%相対湿度での表面電気抵抗は108Ωであった。このようにして、両面に下引き層を形成した基材1を得た。
【0198】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) (固形分基準)6.3部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 92.0部
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05部
硬膜剤H−1 0.02部
マット剤(シリカ、平均粒子径3.5μm) 0.02部
防黴剤F−1 0.01部
水 98.9部
【0199】
【化1】

【0200】
《下引き塗布液c》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス (固形分基準)0.4部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 91.9部
《下引き塗布液d》
成分d−1/成分d−2/成分d−3=66/31/1の導電性組成物 6.4部
硬膜剤H−2 0.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.07部
マット剤(シリカ、平均粒子径3.5μm) 0.03部
水 92.8部
成分d−1;
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−2;
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−3;
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0201】
【化2】

【0202】
(実施例1)
(下層用塗布液の調製)
下記表1に示す組成の素材のうち、界面活性剤を除いた素材を、ホモジナイザを用いて、回転数10000回転で10分間混合分散した後、界面活性剤を添加して、回転数200回転で1分間混合した。
【0203】
次いで、これをろ過して固形分15質量%の下層用塗布液を得た。
【0204】
下層用塗布液組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0205】
【表1】

【0206】
(親水性層用塗布液1、2の調製)
下記表2に示す組成の素材を、ホモジナイザを用いて、回転数10000回転で10分間混合分散した。
【0207】
次いで、これをろ過して固形分20質量%の親水性層用塗布液1、2を得た。
【0208】
親水性層塗布液1、2組成(表中単位記載のない数値は質量部を示す)
【0209】
【表2】

【0210】
(親水性層用塗布液3〜6の調製)
下記表3に示す組成の素材のうち、界面活性剤を除いた素材を、ホモジナイザを用いて、回転数10000回転で10分間混合分散した後、界面活性剤を添加して、回転数200回転で1分間混合した。
【0211】
次いで、これをろ過して固形分30質量%の親水性層用塗布液3〜6を得た。
【0212】
親水性層用塗布液3〜6組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0213】
【表3】

【0214】
(親水性層用塗布液のの塗布乾燥)
コーター/乾燥部を二基有する塗布ラインで、ラインスピード30m/minの搬送速度で上述のPET基材の下引きA面上に親水性層を塗布形成し、親水性層を内側としてロール状に巻き取った。
【0215】
親水性層1、2に関しては、第一コーターで下層を塗布形成した後、第二コーターで下層上に親水性層を塗布形成した。
【0216】
下層は乾燥付量で2g/m2なるように、公知の方法でワイヤーバーを用いて塗布した。親水性層1、2は、それぞれ乾燥付量で1.5g/m2となるように、公知の方法でワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥条件は、下層、親水性層ともに125℃、45秒であった。
【0217】
親水性層3〜6に関しては、第一コーターを使用せず、第二コーターで親水性層を塗布形成した。親水性層3〜6は、それぞれ乾燥付量で5g/m2となるように、公知の方法でワイヤーバーを用いて塗布した。
【0218】
乾燥条件は、同様に125℃、45秒であった。
【0219】
親水性層の塗布形成にあたっては、第二コーターの乾燥部の後、巻取り部間に後述するクリーニング機構を設置し、表5に示すような後述する条件で親水性層表面のクリーニングを行なった(一部サンプルはクリーニングを行なわなかった)。
【0220】
(クリーニングする工程)
[条件1]
ロール状のクリーニングクロスを30m/minで搬送されるウエブの親水性層表面に押し当てるタイプのクリーニング機構:1台を用いてクリーニングを行なった。
【0221】
クリーニングクロスとしては、東レ社製のトレシーMTEテープを用いた。押し当てるバックアップ部材としては、20mmφのステンレスパイプを用い(ステンレスパイプにクリーニングクロスを120°程度の抱き角で巻きつけて押し当てた)、ウエブとクリーニングクロスとの搬送方向の接触長が8mmとなるように押し当て量を調整した。
【0222】
また、クリーニング機構はクリーニングクロスロールの巻出し、巻取り機構を有しており、搬送方向とは反対方向にクリーニングクロスを5cm/minの速度で巻き取った。
【0223】
[条件2]
クリーニングクロスとして、あらかじめ純水を含浸させた東レ社製のトレシーMTEテープを用いた以外は、条件1と同様のクリーニング機構を用いた。クリーニング機構の直後に50℃の温風を吹き付けて乾燥させた。
【0224】
[条件3]
条件1に用いたクリーニング機構を直列で2台用いた以外は、条件1と同様の条件で行なった。
【0225】
[条件4]
条件3に用いたクリーニング機構の直前で、押し出し方式のコーターを用いて親水性層上に0.5質量%のリン酸水溶液を塗布し、2台のクリーニング機構で拭き取り、さらにクリーニング機構の直後に50℃の温風を吹き付けて乾燥させた。
【0226】
リン酸水溶液の塗布量は5g/m2となるように調整し、1台目のクリーニングクロスの巻取り速度を10cm/minとした。
【0227】
[条件5]
バックアップ部材として、市販の25mmφネオジムマグネットバーを用い、接触長を10mmとなるように押し当てた以外は条件1と同様の条件で行なった。
【0228】
エイジング処理
親水性層を塗布形成し、巻き取った各サンプルのロールを60℃の恒温炉に入れ、48時間のエイジング処理を行なった。
【0229】
(画像形成層用塗布液の調製)
下記表4に示す組成の素材を十分に混合攪拌し、ろ過して、固形分5質量%の画像形成層用塗布液を調製した。
【0230】
画像形成層用塗布液組成(表中の単位指定のない数字は質量部を表す)
【0231】
【表4】

【0232】
(画像形成層用塗布液の塗布乾燥)
親水性層を塗布形成したラインを用い、親水性層まで形成した各サンプルのウエブを30m/minで搬送して、親水性層上に画像形成層塗布液を第二コーターで塗布乾燥して、画像形成層を形成し、画像形成層を外側にして巻き取った。
【0233】
画像形成層は乾燥付量で0.3g/m2となるように、公知の方法でワイヤーバーを用いて塗布した。
【0234】
乾燥条件は、70℃、45秒であった。
【0235】
画像形成層を塗布形成した各サンプルのロールを55℃の高温炉に入れ、55℃48時間のエイジング処理を行なった。
【0236】
次いで、各サンプルを所定の大きさのシート状に断裁して各印刷版材料1〜19を得た。
【0237】
(赤外線レーザーによる露光)
各印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像と2400dpiのラインアンドスペース細線画像とを含むものである。
【0238】
露光エネルギーは150mJ/cm2から25mJ/cm2刻みで450mJ/cm2まで変化させ、各露光エネルギーで上記の画像を形成した。
【0239】
印刷方法(1):感度評価、耐刷性評価
印刷機:三菱重工業社製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製トーヨーキングハイユニティM紅)を使用して印刷を行なった。
【0240】
露光後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付け、PS版と同様の印刷条件および刷り出しシークエンスを用いて1000枚まで印刷を行なった。後、印刷用紙を上質紙(しらおい)に変更し、かつ、50μm厚の版下を入れて30000枚までの印刷評価を行なった。
【0241】
[感度評価]
刷 り出しから1000枚目の印刷物をルーペで観察し、感度評価を行なった。1%網点が欠けずに再現している最低露光エネルギーを求め、これを感度の指標とした。結果を表5に示した。数値が低い方が高感度である。
【0242】
[耐刷性評価]
印刷用紙を上質紙(しらおい)に変更して印刷を行い、1000枚ごとに印刷物をサンプリングし、3%網点画像の欠け、もしくは、ベタ画像のカスレのいずれかが認められた印刷枚数(上質紙のみの枚数)を耐刷性の指標とした。結果を表5に示した。
【0243】
印刷方法(2):機上現像時の印刷機汚染評価(汚れ防止性、色濁り評価)
インクを東洋インク社製トーヨーキングハイユニティM黄に変え、印刷シークエンスを変えた以外は印刷方法(1)と同様にしてコート紙で1000枚の印刷を行なった。
【0244】
印刷シークエンスとしては、版胴に湿し水ローラーを接触させて3回転させた後に、インクローラーを版胴に接触させ、それと同時に紙を供給して印刷が開始されるようにした。
【0245】
この印刷方法では刷り出しの画像濃度が薄く、かつ、版面(親水性層表面)から脱落した光熱変換剤粒子がインクローラー上流側に巻き上げられていくことも少ないために、親水性層表面からの微量の光熱変換剤粒子脱落による印刷機汚染であっても確認することが可能となる。
【0246】
[印刷機汚染評価1]
刷り出しから1〜10枚目までの全ての印刷物を観察し、いずれかの印刷物に黒色の汚れが見られるか目視で着色の程度を確認し、汚れ、色濁り防止性の評価とした。評価基準は下記のようにし、結果を表5に示した。
○:着色が確認できない
△:非画像部が着色していることが確認できる
×:非画像部の着色に加え,画像部の着色(インク濁り)も確認できる
[印刷機汚染評価2]
刷り出しから20枚目の印刷物を観察し、印刷物に黒色の汚れが見られるか目視で着色の程度を確認し、汚れ防止、色濁り防止性の評価とした。評価基準は下記のようにし、結果を表5に示した。
○:着色が確認できない
△:非画像部が着色していることが確認できる
×:非画像部の着色に加え,画像部の着色(インク濁り)も確認できる
表5からわかるように、本発明の製造方法による印刷版材料は、耐刷性が良好であり、また、感度を向上させても機上現像時の印刷機汚染が少なく、汚れ防止性、色濁り防止性に優れていることが分かる。
【0247】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、光熱変換剤粒子を含有する親水性層及び、感熱画像形成層を有する印刷版材料の製造方法において、該光熱変換剤粒子が金属酸化物粒子または金属酸化物で表面を被覆された粒子であり、該親水性層は該基材上に親水性層用塗布液を塗布し、乾燥して設けられた層であり、該親水性層用塗布液を塗布し、乾燥した後に、親水性層表面をクリーニングする工程を有することを特徴とする印刷版材料の製造方法。
【請求項2】
前記光熱変換剤粒子の該親水性層中の含有量が15質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料の製造方法。
【請求項3】
前記親水性層表面をクリーニングする工程が、親水性層を塗布形成した基材を搬送させながら、親水性層表面にクリーニング部材を押し当てる工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料の製造方法。
【請求項4】
前記クリーニング部材が洗浄液を含浸していることを特徴とする請求項3に記載の印刷版材料の製造方法。
【請求項5】
前記親水性層表面にクリーニング部材を押し当てる工程の前に、親水性層表面に洗浄液を供給する工程を有し、該クリーニング部材で、供給された洗浄液を拭き取ることを特徴とする請求項3に記載の印刷版材料の製造方法。
【請求項6】
前記光熱変換剤粒子が磁性を有し、かつ前記クリーニングする工程が磁力を有する部材を用いてクリーニングする工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷版材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷版材料の製造方法によって製造されたことを特徴とする印刷版材料。

【公開番号】特開2006−7637(P2006−7637A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189439(P2004−189439)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】