説明

印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法

【課題】複雑な方法や装置を必要とすることなく真贋判定が可能であり、かつ、真贋判定の信頼性に優れる印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法を提供する。
【解決手段】本発明の印刷物10は、基材11と、基材11の一方の面11aに設けられた印刷情報12とを備え、印刷情報12は、3つの印刷層17A,17B,17Cが順に積層されてなる印刷領域17と、1つのインクから形成され1層の印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aからなる印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22とを有し、印刷領域17は、印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22よりも厚みが大きく、かつ、領域13,14,15,16,18,19,20,21,22と色相が略等しいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法に関し、さらに詳しくは、偽造が困難な印刷物、および、印刷物の印刷情報の厚みを測定することにより、印刷の偽造防止や複数の帳票の照合が可能な印刷物の真贋判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造によって経済的な被害を生じるような印刷物、例えば、証書、証券、金券などについては、真贋の判定を可能にしたり、偽造を防止するために、通常使用する用紙の紙質や印刷方法に特殊な工夫が施されている。
偽造を防止するとともに、真贋の判定を可能にした印刷物としては、所望の図柄の少なくとも一部を、視覚上は容易に識別できないが近赤外部反射吸収特性の異なる少なくとも2種のインキを用いて印刷するか、または実質的に近赤外光を吸収しない黒色ないし暗色系インキを用いて印刷した印刷物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、基材上に微粒子金属酸化物を配合したインキ皮膜によって画像が形成され、インキ膜厚の厚みが段階的に変化、連続的に変化のうち、どちらか一方、または両方で形成された印刷物であって、印刷物を可視光下で観察した場合、インキ膜厚の厚み毎に異なった波長の光が干渉して異なる色相を有した、二色性で、かつ、虹彩色を有する画像が視認される印刷物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−144075号公報
【特許文献2】特開2005−119097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、その真贋を判定するために、近赤外光により光学的読み取りを行うバーコードリーダーなどを用いて、印刷に関する近赤外光の吸収を測定しなければならず、近赤外光の吸収の測定方法および装置が複雑となるとともに、真贋判定に時間がかかるという問題があった。
また、特許文献2に記載の方法では、画像を形成する各領域の色相が異なるため、目視により容易に真贋を判定できる一方、各領域の厚みが異なっていても、色相が同じであれば真贋判定が出来ず、信頼性に欠けるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、複雑な方法や装置を必要とすることなく真贋判定が可能であり、かつ、真贋判定の信頼性に優れる印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷物は、基材と、該基材上に設けられた印刷情報とを備えた印刷物であって、前記印刷情報は、異なるインクから形成された複数の印刷層が積層されてなる少なくとも1つの印刷領域αと、1つのインクから形成され1層の印刷層からなる印刷領域βとを有し、前記印刷領域αは、前記印刷領域βよりも厚みが大きく、かつ、前記領域βと色相が略等しいことを特徴とする。
【0006】
本発明の印刷物の真贋判定方法は、印刷物γの印刷情報の厚みを測定し、当該厚みを、予め測定しておいた請求項1に記載の印刷物をなす印刷情報の厚みと照合して、前記印刷物γの真贋判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷物は、基材と、該基材上に設けられた印刷情報とを備えた印刷物であって、前記印刷情報は、異なるインクから形成された複数の印刷層が積層されてなる少なくとも1つの印刷領域αと、1つのインクから形成され1層の印刷層からなる印刷領域βとを有し、前記印刷領域αは、前記印刷領域βよりも厚みが大きく、かつ、前記領域βと色相が略等しいので、印刷情報に関して、印刷領域の厚みを測定することにより、予め設定しておいた印刷領域の厚みと照合することにより、その真贋を判定することができる。ゆえに、本発明の印刷物は、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などに非常に有効に用いられる。
また、本発明の印刷物は、新たな材料の混合調節なども必要なく、複数の印刷層を順に積層して印刷領域が形成されているので、この印刷領域の色相を簡略に、1層の印刷層からなる印刷領域と略等しくすることができる。
また、本発明の印刷物は、印刷領域が複数の印刷層を順に積層してなるので、インクを略同一量塗布するだけで、各印刷層の厚みを所定の大きさに形成することができ、印刷層を積層すると同時に必然的に厚みが増し、所定の厚みの印刷領域を形成することができるので、効率的である。
【0008】
本発明の印刷物の真贋判定方法は、印刷物γの印刷情報の厚みを測定し、当該厚みを、予め測定しておいた請求項1に記載の印刷物をなす印刷情報の厚みと照合して、前記印刷物γの真贋判定を行うので、複雑な方法や装置を必要とすることなく、信頼性に優れる印刷物の真贋判定が可能である。したがって、本発明の印刷物の真贋判定方法によれば、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などを、効率的かつ厳格に行うことができる。
また、本発明の印刷物の真贋判定方法は、印刷物に背景画像などがある場合、画像認識センサによる文字や記号などの読み取り(認識)などと異なり、読み取り対象の文字や記号などと背景画像の色とを混同することがなく、正確に読み取り(認識)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明の印刷物の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の印刷物10は、基材11と、基材11の一方の面11aに設けられた印刷情報12とから概略構成されている。
印刷情報12は、印刷領域13,14,15,16,17,18,19,20,21,22から構成され、これら全ての印刷領域は、基材11の一方の面11a側から見て、色相が略等しくなっている。
【0011】
印刷領域13(数字「0」),14(数字「1」),15(数字「2」),16(数字「3」),18(数字「5」),19(数字「6」),20(数字「7」),21(数字「8」),22(数字「9」)はそれぞれ、1種のインクから形成された1層の印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aからなるものである。
また、印刷領域17(文字「4」)は、異なるインクから形成された3つの印刷層17A,17B,17Cが順に積層されてなるものである。さらに、印刷領域17は、印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22よりも厚みが大きくなっている。
【0012】
基材11としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、上述の印刷層13A,14A,15A,16A,17A,18A,19A,20A,21A,22Aの厚みを所定の大きさにするためには、これらの印刷層を形成するインクが内部に浸透しないプラスチック基材が好適に用いられる。
【0013】
印刷層13A,14A,15A,16A,17A,18A,19A,20A,21A,22Aを形成するインクとしては、一般的なインクジェットプリンタ用インクが挙げられる。
このインクジェットプリンタ用インクとしては、シアンインク(Cインク)、マゼンダインク(Mインク)、イエローインク(Yインク)、黒インク(Kインク)、ライトシアンインク(Lcインク)、ライトマゼンダインク(Lmインク)、グリーンインク(Gインク)、ブルーインク(Bインク)、レッドインク(Rインク)、ホワイトインク(Wインク)などのインクから構成されるフルカラー印刷用の紫外線硬化型インクが用いられる。
【0014】
シアンインク(Cインク)としては、銅フタロシアニン顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
マゼンダインク(Mインク)としては、マゼンダ顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
イエローインク(Yインク)としては、イエロー顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
黒インク(Kインク)としては、カーボンブラックを2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
ライトシアンインク(Lcインク)としては、ライトシアン顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
ライトマゼンダインク(Lmインク)としては、ライトマゼンダ顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
グリーンインク(Gインク)としては、グリーン顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
ブルーインク(Bインク)としては、ブルー顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
レッドインク(Rインク)としては、レッド顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
ホワイトインク(Wインク)としては、ホワイト顔料を2〜5%含み、光重合開始剤などを含むアクリル酸エステル組成物(紫外線硬化型樹脂)からなるものが挙げられる。
【0015】
この実施形態では、例えば、印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22をなす印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aは、Kインクで形成され、これらの印刷領域の色相は、基材11の一方の面11a側から見て「黒」である。さらに、印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aの厚みは等しくなっており、その厚みは特に限定されないが、2μm〜3μm程度が好ましい。
また、印刷領域17をなす印刷層17AはCインクで形成され、印刷層17BはMインクで形成され、印刷層17CはYインクで形成されており、印刷領域17の色相は、基材11の一方の面11a側から見て「黒」である。さらに、印刷層17A,17B,17Cの厚みはそれぞれ、特に限定されず、全て等しくても異なっていてもよいが、2μm〜3μm程度が好ましい。
【0016】
次に、図1を参照して、この実施形態の印刷物10の製造方法を説明する。
ここでは、一例として、図1に示すように、基材11の一方の面11aに、「0123456789」の十桁の数字を印刷する場合について説明する。
この十桁の数字を全て足し、得られた数の下一桁の数字に着目する。すなわち、この例では、「0+1+2+3+4+5+6+7+8+9=45」となり、「45」の下一桁の数字「5」に着目する。
次いで、上記の十桁の数字において、その下一桁の数字に等しい、上からの桁数の数字に着目する。すなわち、この例では、上記の十桁の数字「0123456789」において、上記の下一桁の数字「5」に等しい、上からの桁数の数字「4」に着目する。そして、この数字「4」のみを、他の数字「012356789」と比較して、基材11の一方の面11a側から見て色相が等しく、厚みが異なるように形成する。
すなわち、まず、インクジェットプリンタを用いて、基材11の一方の面11aに、Kインクにより印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aからなる印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22(数字「012356789」)を形成するとともに、Cインクにより印刷層17Aを形成する。
次いで、インクジェットプリンタを用いて、印刷層17Aの上に、Mインクにより印刷層17Bを形成した後、印刷層17Bの上に、Yインクにより印刷層17Cを形成し、印刷領域17(数字「4」)の形成を完了して、印刷情報12の形成を完了する。
【0017】
なお、この実施形態では、十桁の数字のうち1つが、他の9つの数字と厚みが異なるように印刷された印刷物10を例示したが、本発明の印刷物はこれに限定されない。
本発明の印刷物が、例えば、印刷物10のように印刷情報が十桁の数字を表す場合、1つの数字(印刷領域)において、厚みの異なる2つの領域に分割すれば、この印刷情報を、2の10乗=1024通りの組み合わせによって印刷することができる。このように、例えば、印刷情報が数桁から数十桁の数字を表す場合、各桁の数字をなす印刷領域を分割する数を変え、分割された各領域の厚みが互いに異なるようにすれば、印刷情報の印刷方法の組み合わせを無限に作り出すことができる。
【0018】
この印刷物10は、印刷情報12を構成する9個の印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22が1層の印刷層からなり、1つの印刷領域17のみが3層の印刷層が積層されて、その他の印刷領域よりも厚みが大きくなっており、基材11の一方の面11a側から見て、これら全ての印刷領域の色相が略等しいので、外見上は「0123456789」の10桁の数字は全て同じ色であり、色による識別が困難であるが、数字「012356789」(印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22)と数字「4」(印刷領域17)は、厚みが異なっている。したがって、この印刷物10によれば、印刷情報12に関して、印刷領域13,14,15,16,17,18,19,20,21,22の厚みを測定し、予め設定しておいた印刷領域の厚みと照合することにより、その真贋を判定することができる。ゆえに、この印刷物10は、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などに非常に有効に用いられる。
【0019】
また、この印刷物10は、新たな材料の混合調節なども必要なく、印刷層17A,17B,17Cを順に積層して印刷領域17が形成されているので、この印刷領域17の色相を簡略に、1層の印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22Aからなる印刷領域13,14,15,16,18,19,20,21,22と略等しくすることができる。
また、従来の印刷物のように、一回のインクの塗布により印刷領域(印刷層)の厚みが決まる場合、インクの塗布量によって印刷領域(印刷層)の厚みを調整することは難しいが、印刷物10のように、印刷層17A,17B,17Cを順に積層してなる印刷領域17は、各印刷層17A,17B,17Cのそれぞれを形成するインクを略同一量塗布するだけで形成することができ、それと同時に必然的に厚みが増すので、効率的である。
【0020】
なお、この実施形態では、印刷情報12を構成する10個の印刷領域13,14,15,16,17,18,19,20,21,22のうち、1つの印刷領域17のみが、3つの印刷層が積層されて、その他の印刷領域よりも厚みが大きくなっている印刷物10を例示したが、本発明の印刷物はこれに限定されない。本発明の印刷物は、印刷情報が、異なるインクから形成された2つ以上の印刷層が積層されてなる印刷領域を有していてもよい。また、本発明の印刷物は、印刷情報が、異なるインクから形成された印刷層が積層されてなる印刷領域を2つ以上有していてもよい。
【0021】
また、この実施形態では、印刷層13A,14A,15A,16A,18A,19A,20A,21A,22AがKインクで形成され、かつ、印刷層17AはCインク、印刷層17BはMインク、印刷層17CはYインクで形成された印刷物10を例示したが、本発明の印刷物はこれに限定されない。本発明の印刷物は、印刷情報が、Cインク、Mインク、Yインク、Kインクの群から選択される1種のインクから形成され、互いに異なるインクからなる2層以上の印刷層が積層されてなる印刷領域αと、この印刷領域αと色相が略等しく、かつ、Cインク、Mインク、Yインク、Kインクの群から選択される1種のインクから形成された1層の印刷層、あるいは、Cインク、Mインク、Yインク、Kインクの群から選択される2種以上のインクから形成された1層の印刷層からなる印刷領域βを有していれば、いかなる形態であってもよい。
【0022】
次に、図1を参照して、この実施形態の印刷物10を用いた印刷部の真贋判定方法を説明する。
上記の印刷物10に関して、印刷情報12の印刷領域13,14,15,16,17,18,19,20,21,22の厚みを測定し、その測定結果(厚みに関する情報)をデータベースなどとして保存する。
印刷領域の厚みを測定するには、例えば、二次元変位センサ(8ポイント同時測定(繰り返し精度1μm) 高速・高精度ラインレーザ型 LJ−Gシリーズ、株式会社キーエンス製)が用いられる。
【0023】
また、上記の二次元変位センサを用いて、印刷物10とは別の印刷物γに関して、その基材上に設けられた印刷情報の厚みを測定する。
次いで、印刷物γに関する測定結果を、データベースなどとして保存されている印刷物10の印刷情報12に関する測定結果と照合して、印刷物γの真贋判定を行う。
この照合の結果、これらの測定結果が一致した場合、印刷物γを本物と判定し、一方、測定結果が一致しなかった場合、印刷物γを偽物と判定する。
【0024】
この実施形態の印刷物の真贋判定方法は、二次元変位センサを用いて、印刷物γの印刷情報の厚みを測定し、この厚みを、予め測定しておいた印刷物10の印刷情報10の厚みと照合して、印刷物γの真贋判定を行うので、複雑な方法や装置を必要とすることなく、信頼性に優れる印刷物の真贋判定が可能である。したがって、この印刷物の真贋判定方法によれば、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などを、効率的かつ厳格に行うことができる。
また、この実施形態の印刷物の真贋判定方法は、印刷物に背景画像などがある場合、画像認識センサによる文字や記号などの読み取り(認識)などと異なり、読み取り対象の文字や記号などと背景画像の色とを混同することがなく、正確に読み取り(認識)することができる。
【0025】
(2)第二の実施形態
図2は、本発明の印刷物の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
この実施形態の印刷物30は、基材31と、基材31の一方の面31aに設けられた印刷情報32とから概略構成されている。
印刷情報32は、印刷領域33,36,39,42,45から構成され、これら全ての印刷領域は、基材31の一方の面31a側から見て、色相が略等しくなっている。
【0026】
印刷領域33は、図中の破線を境にして厚みの異なる2つの領域(印刷領域34、印刷領域35)から構成されている。また、印刷領域36は、図中の破線を境にして厚みの異なる2つの領域(印刷領域37、印刷領域38)から構成されている。また、印刷領域39は、図中の破線を境にして厚みの異なる2つの領域(印刷領域40、印刷領域41)から構成されている。また、印刷領域42は、図中の破線を境にして厚みの異なる2つの領域(印刷領域43、印刷領域44)から構成されている。また、印刷領域45は、図中の破線を境にして厚みの異なる2つの領域(印刷領域46、印刷領域47)から構成されている。
【0027】
上記の印刷領域34は、1種のインクから形成された1層の印刷層34Aからなり、印刷領域35は、異なるインクから形成された3つの印刷層35A,35B,35Cが順に積層されてなるものである。また、印刷領域37は、異なるインクから形成された3つの印刷層37A,37B,37Cが順に積層されてなり、印刷領域38は、1種のインクから形成された1層の印刷層38Aからなるものである。また、印刷領域40は、異なるインクから形成された3つの印刷層40A,40B,40Cが順に積層されてなり、印刷領域41は、1種のインクから形成された1層の印刷層41Aからなるものである。また、印刷領域43は、1種のインクから形成された1層の印刷層43Aからなり、印刷領域44は、異なるインクから形成された3つの印刷層44A,44B,44Cが順に積層されてなるものである。また、印刷領域46は、1種のインクから形成された1層の印刷層46Aからなり、印刷領域47は、異なるインクから形成された3つの印刷層47A,47B,47Cが順に積層されてなるものである。
【0028】
基材31としては、上記の基材11と同様のものが用いられる。
印刷層34A,35A,35B,35C,37A,37B,37C,38A,40A,40B,40C,41A,43A,44A,44B,44C,46A,47A,47B,47Cを形成するインクとしては、上記の印刷層13A,14A,15A,16A,17A,18A,19A,20A,21A,22Aを形成するインクと同様のものが用いられる。
【0029】
この実施形態では、例えば、印刷層34A,38A,41A,43A,46Aは、Kインクで形成され、印刷領域34,38,41,43,46の色相は、基材31の一方の面31a側から見て「黒」である。さらに、印刷層34A,38A,41A,43A,46Aの厚みは等しくなっており、その厚みは特に限定されないが、2μm〜3μm程度が好ましい。
また、印刷層35A,37A,40A,44A,47AはCインクで形成され、印刷層35B,37B,40B,44B,47BはMインクで形成され、印刷層35C,37C,40C,44C,47CはYインクで形成されており、印刷領域35,37,40,44,47の色相は、基材31の一方の面31a側から見て「黒」である。さらに、印刷層35A,35B,35Cの厚みはそれぞれ、特に限定されず、全て等しくても異なっていてもよいが、2μm〜3μm程度が好ましい。印刷層37A,37B,37C,40A,40B,40C,44A,44B,44C,47A,47B,47Cの厚みについても同様である。
【0030】
この印刷物30は、印刷情報32を構成する印刷領域34,38,41,43,46が1層の印刷層からなり、これらのそれぞれに隣接する印刷領域35,37,40,44,47はそれぞれ3層の印刷層が積層されて、隣接する印刷領域よりも厚みが大きくなっており、基材31の一方の面31a側から見て、これら全ての印刷領域の色相が略等しいので、外見上は5つの記号は全て同じ色であり、色による識別が困難であるが、5つの記号は、厚みが異なっている。したがって、この印刷物30によれば、印刷情報32に関して、印刷領域33,36,39,42,45の厚みを測定し、予め設定しておいた印刷領域の厚みと照合することにより、その真贋を判定することができる。ゆえに、この印刷物30は、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などに非常に有効に用いられる。
【0031】
(3)第三の実施形態
図3は、本発明の印刷物の第三の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
この実施形態の印刷物50は、基材51と、基材51の一方の面51aに設けられた印刷情報52とから概略構成されている。
印刷情報52は、印刷領域53,54から構成され、これら全ての印刷領域は、基材51の一方の面51a側から見て、色相が略等しくなっている。
【0032】
印刷領域53は、2種のインクを混合して形成された1層の印刷層53Aからなるものである。
印刷領域54は、異なるインクから形成された2つの印刷層54A,54Bが順に積層されてなるものである。さらに、印刷領域54は、印刷領域53よりも厚みが大きくなっている。
【0033】
基材51としては、上記の基材11と同様のものが用いられる。
印刷層53A,54A,54Bを形成するインクとしては、上記の印刷層13A,14A,15A,16A,17A,18A,19A,20A,21A,22Aを形成するインクと同様のものが用いられる。
【0034】
この実施形態では、例えば、印刷層53Aは、MインクとYインクを所定の割合で混合した、インク混合物で形成され、印刷領域53の色相は、基材51の一方の面51a側から見て「赤」である。さらに、印刷層53Aの厚みは特に限定されないが、2μm〜3μm程度が好ましい。
また、印刷領域54をなす印刷層54AはYインクで形成され、印刷層54BはMインクで形成されており、印刷領域54の色相は、基材51の一方の面51a側から見て「赤」である。さらに、印刷層54A,54Bの厚みはそれぞれ、特に限定されず、等しくても異なっていてもよいが、2μm〜3μm程度が好ましい。
【0035】
この印刷物50は、印刷情報52を構成する印刷領域53が2種のインクを混合して形成された1層の印刷層53Aからなり、印刷領域54が2層の印刷層54A,54Bが積層されて、印刷領域54は印刷領域53よりも厚みが大きくなっており、基材51の一方の面51a側から見て、これらの印刷領域の色相が略等しいので、外見上は2つの数字は同じ色であり、色による識別が困難であるが、2つの数字は、厚みが異なっている。したがって、この印刷物50によれば、印刷情報52に関して、印刷領域53,54の厚みを測定し、予め設定しておいた印刷領域の厚みと照合することにより、その真贋を判定することができる。ゆえに、この印刷物50は、証書、証券、金券などの印刷物の偽造防止や、複数の帳票の照合確認などに非常に有効に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の印刷物およびこれを用いた印刷物の真贋判定方法は、複数帳票のマッチング確認などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の印刷物の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明の印刷物の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の印刷物の第三の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・印刷物、11・・・基材、12・・・印刷情報、13,14,15,16,17,18,19,20,21,22・・・印刷領域、13A,14A,15A,16A,17A,18A,19A,20A,21A,22A・・・印刷層、30・・・印刷物、31・・・基材、32・・・印刷情報、33,36,39,42,45・・・印刷領域、50・・・印刷物、51・・・基材、52・・・印刷情報、53,54・・・印刷領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられた印刷情報とを備えた印刷物であって、
前記印刷情報は、異なるインクから形成された複数の印刷層が積層されてなる少なくとも1つの印刷領域αと、1つのインクから形成され1層の印刷層からなる印刷領域βとを有し、
前記印刷領域αは、前記印刷領域βよりも厚みが大きく、かつ、前記領域βと色相が略等しいことを特徴とする印刷物。
【請求項2】
印刷物γの印刷情報の厚みを測定し、当該厚みを、予め測定しておいた請求項1に記載の印刷物をなす印刷情報の厚みと照合して、前記印刷物γの真贋判定を行うことを特徴とする印刷物の真贋判定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−238631(P2008−238631A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83645(P2007−83645)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】