説明

印刷物の検査方法

【課題】ラインセンサカメラに対する印刷物の傾きが大きい場合でも印刷機から出力された印刷物を正確に且つ多くの処理時間を要することなく検査することのできる印刷物の検査方法を提供する。
【解決手段】印刷機12から出力された印刷物14をラインセンサカメラ16により撮像して検査画像を取得し、取得した検査画像を基準画像と比較して印刷物14を検査するに際して、ラインセンサカメラ16に対して印刷物14が傾いているときの複数の基準画像と傾いていないときの基準画像とを記憶装置26に格納しておき、記憶装置26に格納された各基準画像と検査画像とのパターンマッチングをマルチコアCPU28により並列に行って検査画像と最も一致度の高い基準画像を選択し、選択した基準画像と検査画像とを比較して印刷物14を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機から出力された印刷物を検査する方法に関し、特に、印刷物に印刷された絵柄等を検査する印刷物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機から出力された印刷物を検査する方法として、印刷物をラインセンサカメラにより撮像して印刷物の検査画像を取得し、取得した検査画像を基準画像と比較して印刷物を検査する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。この検査方法によると、印刷機から出力された印刷物を目視により検査する必要がないため、検査員の負担軽減等を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−210836号公報
【特許文献2】特開2000−15785号公報
【特許文献3】特開2004−264214号公報
【特許文献4】特開2008−64486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した先行技術では、印刷物がラインセンサカメラに対して傾いていないときの基準画像と検査画像とを比較して印刷物を検査しているため、ラインセンサカメラに対する印刷物の傾きが例えば±0.4度以上と大きい場合には印刷物を正確に検査することができなくなるという問題点があった。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ラインセンサカメラに対する印刷物の傾きが大きい場合でも印刷機から出力された印刷物を正確に且つ多くの処理時間を要することなく検査することのできる印刷物の検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、印刷機から出力された印刷物をラインセンサカメラにより撮像して検査画像を取得し、取得した検査画像を基準画像と比較して前記印刷物を検査する方法であって、前記ラインセンサカメラに対して前記印刷物が傾いているときの複数の基準画像と傾いていないときの基準画像とを記憶装置に格納しておき、前記記憶装置に格納された各基準画像と前記検査画像とのパターンマッチングを並列に行って前記検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択し、選択した基準画像と前記検査画像とを比較して前記印刷物を検査することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載の印刷物の検査方法において、前記記憶装置に格納された各基準画像と前記検査画像とのパターンマッチングをマルチコアCPUにより並列に行って前記検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択し、選択した基準画像と前記検査画像とを比較して前記印刷物を検査することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び2の発明によれば、ラインセンサカメラに対して印刷物が傾いているときの複数の基準画像と傾いていないときの基準画像とを記憶装置に格納しておくことで、ラインセンサカメラに対する印刷物の傾きが大きい場合でも印刷物を正確に検査することができ、また、記憶装置に格納された各基準画像と検査画像とのパターンマッチングを並列に行って検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択することで、検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を比較的短時間で選択することができる。したがって、ラインセンサカメラに対する印刷物の傾きが大きい場合でも印刷機から出力された印刷物を正確に且つ多くの処理時間を要することなく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷物の検査方法を適用した印刷物検査装置の一例を示す図である。
【図2】記憶装置に格納された基準画像の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る印刷物の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る印刷物の検査方法を実施するための印刷物検査装置の一例を図1に示す。図1に示される印刷物検査装置は印刷機12から出力されたシート状の印刷物14を検査するものであって、ラインセンサカメラ16、照明装置18、トリガーセンサ20、A/D変換器22及び画像処理装置24を備えている。
【0010】
ラインセンサカメラ16は印刷物14の印刷面(図中上面)を撮像するものであって、CCD等の多数の光電変換素子(図示せず)を印刷物14の幅方向と長手方向に配列して構成されている。
照明装置18はラインセンサカメラ16により撮像される印刷物14の撮像部位を照明するものであって、例えば複数のLEDを印刷物14の幅方向に配列して構成されている。
【0011】
トリガーセンサ20は印刷物14に一定間隔で印刷された印刷検査開始マークを光学的に検出してトリガー信号を出力するものであって、このトリガーセンサ20から出力されたトリガー信号はA/D変換器22でデジタル信号に変換された後、画像処理装置24に供給されるようになっている。
画像処理装置24はラインセンサカメラ16から出力された信号を処理して印刷物14の検査画像を取得し、取得した検査画像を基に汚れ、カスレ、色抜け等の印刷欠陥が印刷物14に存在するか否かを検査するものであって、この画像処理装置24で得られた印刷物14の検査結果は図示しない表示装置やプリンタ等に出力されるようになっている。
【0012】
画像処理装置24は記憶装置26を備えており、この記憶装置26には、図2に示すように、ラインセンサカメラ16に対する印刷物14の傾き度が0°,±0.6°,±1.2°,±1.8°の基準画像A,B,C,D,E,F,Gが格納されている。
また、画像処理装置24はマルチコアCPU28を備えており、このマルチコアCPU28は図3に示すフローチャートに従って印刷欠陥の有無等を判定するように構成されている。
【0013】
すなわち、マルチコアCPU28は印刷物14に印刷された印刷検査開始マークをトリガーセンサ20が検出すると、ラインセンサカメラ16から出力された画像信号を取り込み、取り込んだ画像信号を処理して印刷物14に印刷された絵柄等の検査画像を取得する(図2のステップS1参照)。
【0014】
印刷物14に印刷された絵柄等の検査画像を取得したならば、マルチコアCPU28は取得した検査画像を予め定めた複数の領域に分割し、分割した各領域の特定箇所から検査画像のパターンを抽出する(図2のステップS2,S3参照)。次に、検査画像のパターンが記憶装置26に格納された基準画像A〜Gのパターンとマッチングしているか否かのパターンマッチングをマルチスレッド処理等の並列処理で行う(図2のステップS4参照)。そして、記憶装置26に格納された基準画像A〜Gの中で検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像(例えば検査画像のパターンと非一致度の平均値が最も小さく且つ位置ずれ量が最も小さい基準画像)を選択する(図2のステップS5参照)。
なお、検査画像と基準画像とのパターンマッチングは特許文献4に開示された方法を適用可能であるが、これに限られるものではない。
【0015】
このようにして検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択したならば、マルチコアCPU28は選択した基準画像と検査画像とを比較し、その差分量等から印刷欠陥の有無や種類等を判定する(図2のS6参照)。そして、その判定結果を印刷物14の検査結果として表示装置やプリンタ等に出力する(図2のS7参照)。
【0016】
上述のように、印刷機12から出力された印刷物14をラインセンサカメラ16により撮像して検査画像を取得し、取得した検査画像を基準画像と比較して印刷物14を検査するに際して、ラインセンサカメラ16に対して印刷物14が傾いているときの複数の基準画像と傾いていないときの基準画像とを記憶装置26に格納しておくことで、ラインセンサカメラ16に対する印刷物14の傾きが大きい場合でも印刷物14を正確に検査することができる。また、記憶装置26に格納された各基準画像と検査画像とのパターンマッチングを並列に行って検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択することで、検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を比較的短時間で選択することができる。
【0017】
したがって、上述した本発明の一実施形態では、ラインセンサカメラ16に対する印刷物14の傾きが大きい場合でも印刷機12から出力された印刷物14を正確に且つ多くの処理時間を要することなく検査することができる。
なお、上述した本発明の一実施形態では、印刷物14の検査画像を予め定めた複数の領域に分割し、分割した各領域の特定箇所から検査画像のパターンを抽出したが、印刷物14の検査画像を複数の領域に分割せずにパターンを抽出してもよい。
【0018】
また、上述した本発明の一実施形態では、印刷物の片面を検査する印刷物検査装置に適用した場合を例示したが、これに限られるものではなく、印刷物の両面を検査する印刷物検査装置についても本発明を適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0019】
12…印刷機、14…印刷物、16…ラインセンサカメラ、18…照明装置、20…トリガーセンサ、22…A/D変換器、24…画像処理装置、26…記憶装置、28…マルチコアCPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機から出力された印刷物をラインセンサカメラにより撮像して検査画像を取得し、取得した検査画像を基準画像と比較して前記印刷物を検査する方法であって、
前記ラインセンサカメラに対して前記印刷物が傾いているときの複数の基準画像と傾いていないときの基準画像とを記憶装置に格納しておき、前記記憶装置に格納された各基準画像と前記検査画像とのパターンマッチングを並列に行って前記検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択し、選択した基準画像と前記検査画像とを比較して前記印刷物を検査することを特徴とする印刷物の検査方法。
【請求項2】
前記記憶装置に格納された各基準画像と前記検査画像とのパターンマッチングをマルチコアCPUにより並列に行って前記検査画像のパターンと最も一致度の高い基準画像を選択し、選択した基準画像と前記検査画像とを比較して前記印刷物を検査することを特徴とする請求項1記載の印刷物の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−286256(P2010−286256A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138080(P2009−138080)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(591006298)JFEテクノリサーチ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】