説明

印刷物の製造方法、印刷装置

【課題】布や紙等の記録媒体に対して容易に画像を形成する印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】記録媒体に対して、前記記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成工程と、前記補助層に対応する領域から空気を吸引して、前記記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定工程と、固定された前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、衣類などの布地に画像を印刷する印刷装置が提案されている。このような布地に画像を印刷する場合、所定の位置に布地をエアー吸引等で固定することで布地表面を平坦にする方法が考えられるが、布地の織目からエアーが漏れ、吸引力が低下してしまう。そのため、布地の一方面にバックアップシートを貼り付け、当該バックアップシートをエアー吸引することにより、布地を所定の位置に固定して画像を印刷する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−246576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置では、布地に対して画像を形成する前に、バックアップシートを布地に貼り付ける必要があるので、製造方法が複雑化してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる印刷物の製造方法は、記録媒体に対して、前記記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成工程と、前記補助層に対応する領域からして空気を吸引して、前記記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定工程と、固定された前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、例えば、布地等の記録媒体に対して補助層を形成することにより布地の織目が塞がれる。これにより、補助層に対して空気を吸引しても、布地の織目から空気の漏れが低減されるため、容易に所定の位置で記録媒体を固定することができる。従って、画像が形成される位置のずれ等が無く、高品質な印刷物を提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる印刷物の製造方法の前記補助層形成工程では、前記記録媒体に、前記補助層の材料となる紫外線硬化型インクを塗布し、塗布された前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射して前記補助層を形成することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、紫外線硬化型インクを塗布し、これを固化することにより、記録媒体に固化物(樹脂層)が形成される。形成された固化物(樹脂層)は樹脂層として機能する。従って、容易に記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる印刷物の製造方法の前記記録媒体固定工程では、前記記録媒体の前記補助層が形成された面に対して前記空気を吸引し、前記画像形成工程では、前記記録媒体の前記補助層が形成された面とは反対側の面に前記画像を形成することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、補助層の近辺をエアー吸引することとなるので、より吸引力を高めることができる。また、記録媒体の補助層が形成された面とは反対の面では、補助層の影響を受けずに画像を形成することができる。これにより、高品質な印刷物を提供することができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる印刷装置は、記録媒体に対して、前記記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成部と、前記補助層に対応する領域から空気を吸引して、前記記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定部と、固定された前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、例えば、布地等の記録媒体に対して補助層を形成することにより布地の織目が塞がれる。これにより、補助層に対して空気を吸引しても、布地の織目から空気の漏れが低減されるため、容易に所定の位置で記録媒体を固定することができる。従って、画像が形成される位置のずれ等が無く、高品質な印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷物の構成を示す断面図。
【図2】印刷装置の構成を示す模式図。
【図3】印刷物の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせて示している。
【0016】
(印刷物の構成)
まず、印刷物の構成について説明する。図1は、印刷物の構成を示す断面図である。図1に示すように、印刷物15は、記録媒体10を有している。記録媒体10は、例えば、綿布、麻布、絹布等の織布(布帛)や紙等である。そして、記録媒体10の一方の面10aには、補助層11が形成されている。当該補助層11は、記録媒体10の織目や繊維間の目を塞ぐ層であり、後述する記録媒体の所定位置の固定を補助するためのものである。また、記録媒体10の他方の面10bには、画像層13が形成されている。
【0017】
(印刷装置の構成)
次に、印刷装置の構成について説明する。印刷装置は、印刷物15の製造に適した装置である。図2は、印刷装置の構成を示し、図2(a)は印刷装置の全体を示す模式図であり、図2(b)〜図2(e)は搬送部の一部を示す模式図である。図2に示すように、印刷装置1は、記録媒体10に対して、記録媒体10の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成部20と、補助層に対応して空気を吸引して、記録媒体10を所定の位置で固定する記録媒体固定部30と、固定された記録媒体10に対して画像を形成する画像形成部40を備えている。また、印刷装置1は、補助層形成部20、記録媒体固定部30や画像形成部40に記録媒体10を搬送する搬送部50を備えている。
【0018】
まず、補助層形成部20について説明する。補助層形成部20は、例えば、綿布、麻布、絹布等の織布(布帛)や紙等の記録媒体10の織目や繊維間の目を塞ぐ補助層11を形成するものである。本実施形態の補助層形成部20は、記録媒体10に対して補助層11の材料となる機能液を塗布等するヘッドユニット21と、記録媒体10を載置する第1ステージ25を備えている。
【0019】
本実施形態では、補助層11の材料となる機能液として紫外線硬化型インクを用いており、ヘッドユニット21は、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッド22と、吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射部23を備えている。従って、本実施形態の補助層11は、紫外線硬化型インクが固化された固形部によって形成される。
【0020】
第1吐出ヘッド22は、例えば、圧力発生手段としての圧電素子を備えたインクジェットヘッドである。なお、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。
【0021】
紫外線照射部23は、紫外線光源を備え、紫外線光源から紫外線が照射される。なお、紫外線光源は、例えば、LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等適宜適用することができる。
【0022】
第1ステージ25の載置部には粘着部26が配置され、搬送された記録媒体10のずれを防止することができる。なお、粘着部26の他、適宜記録媒体10のずれ防止部材を配置してもよい。また、第1ステージ25上に搬送された記録媒体10にテンションを掛けることによりずれ防止を図ってもよい。
【0023】
そして、ヘッドユニット21は、第1ステージ25上に搬送される記録媒体10の幅方向に移動するキャリッジ(図示せず)に設置され、当該キャリッジを移動させることにより、ヘッドユニット21を所定の位置に移動させることができる。そして、ヘッドユニット21を移動させながら、記録媒体10に向けて第1吐出ヘッド22から紫外線硬化型インクを吐出するととともに、紫外線照射部23から紫外線を照射させて紫外線硬化型インクを固化することにより、記録媒体10上に補助層11を形成することができる。
【0024】
記録媒体固定部30は、第2ステージ31を備えている。そして、第2ステージ31の載置部から第2ステージ31の外部に貫通する複数の貫通孔32が設けられている。貫通孔32の開口部のうち、載置部以外の開口部は、配管33を介してポンプ34に接続されている。そして、ポンプ34を駆動させることにより、第2ステージ31の載置部側から貫通孔32を介して空気が吸引される。これにより、第2ステージ31の載置部に載置された記録媒体10と第2ステージ31との間に負圧領域が形成され、第2ステージ31上の所定の位置に記録媒体10を固定することができる。特に、記録媒体10に形成された補助層に対応する位置に合わせて空気を吸引することにより、さらに効率よく記録媒体10を吸引及び固定することができる。
【0025】
画像形成部40は、第2吐出ヘッド41を含むものである。第2吐出ヘッド41は、画像層13の材料を含む機能液を液滴として吐出するものである。第2吐出ヘッド41は、例えば、圧力発生手段としての圧電素子を備えたインクジェットヘッドである。なお、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。
【0026】
そして、第2吐出ヘッド41は、第2ステージ31上に搬送される記録媒体10の幅方向に移動するキャリッジ(図示せず)に設置され、当該キャリッジを移動させることにより、第2吐出ヘッド41を所定の位置に移動させることができる。そして、第2吐出ヘッド41を移動させながら、記録媒体10に向けて機能液を液滴として吐出して、記録媒体10上に機能液を塗布することができる。
【0027】
搬送部50は、記録媒体10を搬送させるものである。本実施形態の搬送部50では、ロール・ツー・ロール方式を用いており、記録媒体10を補助層形成部20側に供給する供給ローラー51と、画像形成部40によって画像が形成された記録媒体10を巻き取って除材する除材ローラー52と、供給ローラー51から除材ローラー52間に記録媒体10の搬送を補助する搬送ローラー53a,53bを有している。また、補助層形成部20に対応する領域と画像形成部40に対応する領域との間に反転部55が配置されている。反転部55は、記録媒体10の面10a,10bを搬送途中で反転させるものである。本実施形態の反転部55は、円柱状のロッドであり、反転部55の長手方向がY軸方向に沿って配置されている。そして、図2(b)〜図2(e)に示すように、反転部55のY軸方向における中心点を軸として、記録媒体10の搬送方向(X軸方向)に対して垂直方向(Z軸方向)に回転させる。これにより、記録媒体10の各面10a,10bの向きが反転される。
【0028】
(印刷物の製造方法)
次に、印刷物の製造方法について説明する。印刷物の製造方法は、記録媒体に対して、記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成工程と、補助層に対応する領域から空気を吸引して、記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定工程と、固定された記録媒体に対して画像を形成する画像形成工程と、を含むものである。なお、本実施形態では、印刷装置1を用いた印刷物の製造方法について説明する。
【0029】
図3は、印刷物の製造方法を示す工程図である。図3(a)及び図3(b)は、補助層形成工程を示している。まず、搬送部50を駆動させ、第1ステージ25上に記録媒体10を搬送する。搬送された記録媒体10は、粘着部26によって固定される。そして、ヘッドユニット21を移動させながら第1吐出ヘッド22から補助層11の材料を含む機能液を液滴として吐出する。なお、本実施形態では、記録媒体10の一方の面10aに向けて補助層11の材料となる紫外線硬化型インクを液滴として吐出し、記録媒体10上に紫外線硬化型インク11aを塗布する。そして、塗布された紫外線硬化型インク11aに紫外線照射部23から紫外線を照射して紫外線硬化型インク11aを固化する。これにより、図3(b)に示すように、補助層11が形成される。
【0030】
次いで、図3(c)は、記録媒体固定工程を示している。図3(c)に示すように、記録媒体固定工程では、記録媒体10の補助層11が形成された面10aを第2ステージ31の載置部側に向けて載置する。本実施形態では、反転部55によって記録媒体10の面10a,10bが反転される。そして、補助層11と貫通孔32とを対応させ、ポンプ34(図2参照)を駆動させる。これにより、補助層11に対して空気が吸引され、記録媒体10と第2ステージ31との間に負圧領域が形成され、第2ステージ31の載置部に記録媒体10が固定される。
【0031】
次いで、図3(d)及び図3(e)は、画像形成工程を示している。記録媒体10の補助層11が形成された面10aとは反対側の面10bに画像を形成する。具体的には、図3(d)に示すように、記録媒体10に向けて第2吐出ヘッド41から画像層13の材料を含む機能液を液滴として吐出し、記録媒体10上に機能液13aを塗布する。その後、機能液13aを固化することにより、図3(e)に示すように、画像層13が形成される。
【0032】
以上の工程を経ることにより、印刷物15が形成される。
【0033】
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0034】
記録媒体10の一方面10aに補助層11を形成した。これにより、織物等の目が補助層11によって塞がれる。そして、補助層11に対応して空気を吸引することにより、記録媒体10と第2ステージ31間に負圧領域が形成されるため、記録媒体10を第2ステージ31の所定の位置で容易に固定することができる。従って、画像層13のずれが低減され、高品質な印刷物15を提供することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0036】
(変形例1)上記実施形態の補助層形成工程では、紫外線硬化型インクを用いて補助層11を形成したが、これに限定されない。例えば、染料インクを用いてもよい。このようにしても、記録媒体10の目の大きさを小さくさせることができるので、上記同様の効果を得ることができる。
【0037】
(変形例2)上記実施形態の補助層形成工程では、貫通孔32に対応する領域以外の領域にも補助層11を形成したが、これに限定されない。貫通孔32に対応する領域にのみ補助層11を形成してもよい。このようにすれば、補助層11の形成工数が低減されるととともに、紫外線硬化型インクの使用量を低減することができる。
【0038】
(変形例3)上記実施形態の記録媒体固定工程では、記録媒体10の補助層11が形成された面10aを第2ステージ31の載置部側に向けて固定したが、これに限定されない。例えば、記録媒体10の補助層11が形成された面10aとは反対側の面10bを第2ステージ31の載置部側に向けて固定してもよい。この場合、画像形成工程では、補助層11上に画像層13を形成すればよい。このようにしても、記録媒体固定工程では、補助層11に対応した領域から空気が吸引されるので、記録媒体10を第2ステージ31上に固定することができる。
【0039】
(変形例4)上記実施形態では、補助層11及び画像層13の形成にインクジェット法を用いたが、これに限定されない。例えば、スクリーン印刷法等を用いてもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0040】
(変形例5)上記実施形態の印刷装置1では、補助層形成部20から記録媒体固定部30及び画像形成部40を一体した装置構成としてが、これに限定されない。補助層形成部20と、記録媒体固定部30及び画像形成部40と、を別個にしてよい。このようにすれば、補助層形成部20と、記録媒体固定部30及び画像形成部40との干渉が低減されるので、効率よく印刷物15を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1…印刷装置、10…記録媒体、11…補助層、13…画像層、15…印刷物、20…補助層形成部、21…ヘッドユニット、22…第1吐出ヘッド、23…紫外線照射部、25…第1ステージ、26…粘着部、30…記録媒体固定部、31…第2ステージ、32…貫通孔、40…画像形成部、41…第2吐出ヘッド、50…搬送部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して、前記記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成工程と、
前記補助層に対応する領域から空気を吸引して、前記記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定工程と、
固定された前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成工程と、を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記補助層形成工程では、
前記記録媒体に、前記補助層の材料となる紫外線硬化型インクを塗布し、塗布された前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射して前記補助層を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷物の製造方法において、
前記記録媒体固定工程では、
前記記録媒体の前記補助層が形成された面に対して前記空気を吸引し、
前記画像形成工程では、
前記記録媒体の前記補助層が形成された面とは反対側の面に前記画像を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項4】
記録媒体に対して、前記記録媒体の目を塞ぐ補助層を形成する補助層形成部と、
前記補助層に対応する領域から空気を吸引して、前記記録媒体を所定の位置で固定する記録媒体固定部と、
固定された前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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