説明

印刷物の記番号検査方法

【課題】 貴重印刷物の規則性を持って変化する連続番号である記番号等の文字列を印刷する場合に、記番号の唯一性を確実に検査するための記番号の検査方法を提供する。
【解決手段】 規則性を持って変化する連続番号である記番号が、所定の位置に印刷されてなる印刷物において、印刷された記番号の検査方法であって、記番号の印刷を視認可能に印刷し、視認可能に印刷した記番号から一定の規則により派生させた記号及び/又は番号を不可視に印刷し、後工程において視認可能に印刷した記番号を読取り、読取った記番号を予め記録してある記番号と照合確認して一致しているか否かを確認し、照合確認が不一致の場合には、さらに不可視の記号及び/又は番号を読取り、視認可能に印刷した記番号と不可視に印刷した記号及び/又は番号とを照合確認して一致しているか否かを確認することで記番号の適合度を拡大して検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の連続番号を含む記号及び番号(以下「記番号」という。)の検査方法に関する。特に、有価証券類、宝くじ等の貴重印刷物において、連続した通し番号や記号の検査方法である。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷機の番号胴に装着されて番号を印字する番号印刷機がある。番号印刷の目的としては、保証のため、管理のため、偽造・改ざん防止のため及び一般的にコンピュータ処理を目的とするための4つの目的があり、それぞれ単一の目的だけでなく、複数の目的の組み合わせにより、幅広い分野に用いられている。
【0003】
保証のための番号印刷としては、番号が入っている印刷がされているということで、そのものが真正であることを保証する。例えば、伝票、金券等に番号という付加価値を付けることにより、発行者側と使用者側が番号によって相互確認及び相互信頼を保つことを目的としている。
【0004】
管理を目的とする番号印刷としては、伝票、金券等に印刷されている番号により、伝票、金券等に記載されているデータを分析及び処理をしながら管理をするもので、例えば、領収書・一般伝票・作業伝票・売上伝票等のように単なる事務処理・業務管理を目的とする一般管理、バーコードシステムのように物流管理等を目的とする商品管理、その他の管理として、IDカード的役割のための各種の登録証の番号印刷の管理等があげられる。
【0005】
偽造・改ざん防止のための番号印刷としては、例えば、独特な文字・形状の書体又は複数番号を入れる特殊番号印刷、例えば、磁気印刷による特殊な紙・インキによる番号印刷、例えば、当事者だけが判る隠し番号印刷、チェックデジット等の付加による特殊変換番号印刷等がある。
【0006】
コンピュータ処理を目的とした番号印刷としては、例えば、銀行の小切手・約束手形等に用いられているMICRシステム、一般伝票に用いられているOCRシステム、入試の解答用紙に用いられているOMRシステム、宅配による物流の管理に用いられているバーコードシステム等におけるコンピュータへのデータ入力媒体としての番号印刷等がある。
【0007】
さらに、番号印刷の種類としては、例えば、連続番号印刷、管理番号印刷、コンピュータ処理用番号印刷、日付印刷があり、これらを単一又は複合して用いて番号印刷をする。
【0008】
以上のような番号印刷が持っている保証的要素の一つとして考えられることは、書体による保証と同一番号がないという要素が考えられる。これは、印刷物に対し意識的に指定した書体であり、同一番号が存在することは連続番号とはいえないからである。
【0009】
しかし、このような番号印刷においては、いくつかの課題がある。1つには、機械的な番号変換に対し、絶対的信頼性がないという点である。これは、番号器の構造、メインテナンス及び耐久性等による物理的な面で、機械的に100%保証することが難しいという点である。
【0010】
2つには、番号印刷製品の管理が難しい点にあり、そのために、番号転換の管理においては、その転換が正常に行われたか否かの客観的なチェックが必要とされると同時に、印字品質の管理においては、インキ濃度、画線の太さ、紙汚れや用紙埃等のチェックが必要であるということである。
【0011】
3つには、番号器自体の大きさに制限があり、このことが印字位置や取付けスペース等に関して物理的な制限を与えている。このことは、安定した番号転換をするには構造上から印字桁数の制限を受けることになる。
【0012】
4つには、製品の種類によっては視認される印字桁数がデザイン等で制限されているため、例えば管理用に余分の桁を印刷することができないという問題がある。
【0013】
5つには、有価証券類等においては、記番号を印字し、最終工程で該記番号が同じ印字内容であることを電子的に読み取ることで、照合確認している。この際、印字品質が管理限界内にあり、印字番号が正規であっても、番号の背景にある印刷の影響、インキ濃度、画線の太さ、紙汚れや用紙埃等により、該番号を読み取れず、そのために機械停止させ、オペレータが視認確認する必要があり、機械の稼動時間が低くなったり計画作業量が達成できなかったりすることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、以上のような問題点に対して、番号印刷のチェック方法として、番号器自体にチェックデジット機能を持たせて番号転換チェックをする方法、外部から電子制御により番号転換のコントロールをする方法及び番号印刷の後、仕上機の読取り及び照合ソフトの精度を改善し、読取率を向上させる方法等が考えられている。
【0015】
電子制御による番号転換を用いることで、番号転換の信頼性アップに繋がり、作業者が安心して作業をすることができる。また、プリセット、プリインキング、カウンター連動等により番号印刷の作業工程が大幅に削減できる。また、番号印刷における作業管理方法がより一層明確化される、つまり標準作業化が促進されることになる。
【0016】
さらに、読取った情報の正確性を検査する方法であるチェックデジット法は、一定の計算方法により算出した数値を末尾に追加し、この末尾の数値をチェックするものであり、このチェックデジットを番号及びデータの安全管理機能の1つとして番号管理に用いることにより、番号印刷の正当性を保証する方法が取られている。
【0017】
しかし、例えば、有価証券等の貴重印刷物の記番号等の文字列を所定の位置に印刷する場合、記番号等は唯一無二の正規の記番号等が印刷されていなければならない。この際、印字品質が管理限界内にあり、印字番号が正規であっても、番号の背景にある印刷の影響、インキ濃度、画線の太さ、紙汚れや用紙埃等により、該番号を読み取れず、そのために機械停止させ、オペレータが視認確認する必要があり機械の稼働率が下がるという問題があり、このような場合における記番号等の唯一性を確実に検査する必要があるが、視認される桁数には制限があるため、その対応策がなかった。
【0018】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、有価証券等の貴重印刷物の規則性を持って変化する連続番号である唯一無二の記番号等の文字列を印刷する場合に、記番号等の唯一性を確実に検査するための記番号等の適合度を拡大して検査するための記番号の検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明は、規則性を持って変化する連続番号を含む記番号が、基材上の所定の位置に視認可能に印刷され、その記番号に対応した記号及び/又は番号が不可視に印刷されてなる印刷物において、印刷物の記番号を検査する方法であって、視認可能に印刷した記番号を読取り、読取った記番号が予め記録してある記番号と照合確認し、照合確認が不一致と判別された場合には、さらに不可視の記番号を読み取り、読み取った不可視の記番号を予め記録してある記番号と照合確認する印刷物の記番号検査方法である。
【0020】
また、本発明は、記番号の印刷をする不可視の印刷は、機能性インキで印刷することを特徴とする。
【0021】
また、本発明において使用する機能性インキとしては、磁性インキ、赤外吸収インキ及び/又は紫外吸収インキを使用する。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明によれば、有価証券等の貴重印刷物の所定の位置に記番号の文字列を印刷する場合に、記番号の唯一性を確実に検査するために、記番号を視認可能に印刷し、前記視認可能に印刷した記番号に対応した記番号の印刷を不可視に印刷しているので、これらのいずれかを照合確認すると共に、記番号の印刷を不可視の機能性インキを用いて印字しているので、複数の照合確認をすることができ、機械停止を回避し、生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る記番号の検査方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
図1(a)は、1ヵ所に記番号2が印刷された有価証券の小切券1の例であり、図1(b)は、2ヶ所に記番号2が印刷された有価証券の小切券1の例であり、図1(c)は、2ヶ所に記番号2が印刷された有価証券の小切券が複数印刷されたシートの一例を示すものである。本実施の形態においては、2ヶ所に記番号2が印刷された有価証券の小切券が複数印刷されたシートを用いて説明する。図2は小切券を作るまでの製造工程の概略を示す一例であるが、この小切券を一連の工程を経て一定単位枚数集積し、最終のデリバリの形態に封包する。
本実施の形態では、連続番号を印刷しているが、本発明の目的から連続番号に限定されるものではなく、同じ記番号が存在しないで印刷されていれば良い。
【0025】
図1(c)に示すように、小切券1が複数印刷された有価証券印刷物のシートには、各小切券毎に、斜めに対向する上下位置の2箇所に記番号等の文字列2が印刷されており、このシートを断裁することにより小切券1が得られる。この場合、小切券1の上番と下番は一致して印刷されていなければならないが、それを確認するために、図2の番号印刷工程で一定枚数毎にサンプリングしてオペレータと専用の番号確認装置3を用いて照合確認した後、後工程の断裁工程に送られる。断裁後、仕上工程の仕上機に投入し、小切券1の製品品質と記番号を電子的に読取り、小切券が確実に良品であることを検査して、最終形態に仕上げる。
【0026】
その際、番号印刷品質が管理限界内にあり、印刷した番号が同一であっても、番号の背景にある印刷の影響、インキ濃度、画線の太さ、紙汚れや用紙埃等により、仕上工程の仕上機で同一の番号と判定できなかった場合は、その都度機械を停止させ、オペレータが視認確認した後、最終形態に仕上げる。
【0027】
図3は、本実施の形態における有価証券印刷物のシートに記番号を印刷するための番号印刷機における胴配列構成の一例を示すものであり、番号胴5、6、7、8の4胴が設けられている例で説明する。
【0028】
シートは給紙胴4を経て印刷機に供給され、番号胴5から番号胴8と圧胴9間をシートが通過することにより、記番号2の印刷が行われる。番号印刷機に取設けられる番号器は複数桁の番号字輪から構成されており、様々のタイプのものがあるが、その1つに番号字輪の全桁が電子的制御により自動的に転換可能な番号器(図示せず)がある。この番号器は、転換前後の番号字輪の位置を電子的に照合・確認することから極めて信頼性が高いものとなっており、本実施例においてもこの番号器を用いている。
【0029】
図3に示す番号印刷機の胴配列構成で、有価証券印刷物のシートに番号印刷する例を説明する。図1(b)の有価証券印刷物のシートの各小切券1の斜めに対向する上番と下番の2箇所に、番号胴5と番号胴6を用いて視認可能な記番号d1を印刷し、番号胴7と番号胴8を用いて不可視の記番号d3を印刷する。本実施例において記番号d3は、数字桁d2から一定の基準に従って算出した値としたが、このような一定の基準に限定されるものではなく、視認可能に印刷した記番号d1に対応(関連付けされた)した値であれば特に規則性にとらわれるものではない。
【0030】
図4は、記番号の印字例である。図4(a)は、小切券1の上番と下番の不可視の記番号d3を数字桁d2から9チェック方式で算出し、印刷したものであり、図4(b)は、上番の不可視の記番号d3は9チェック方式、下番の不可視の記番号d3は7チェック方式の上番と下番で異なる不可視の記番号d3を算出し、印刷したものである。なお、不可視印刷に用いる印刷インキは、その目的が達成されれば種類を問わない。さらに、不可視の記番号d3の桁数も本質的に制限を受けるものではない。不可視の記番号d3は、予めどの方式を用いるかを設定しておくことにより電子的に照合確認される。本実施の形態においては、不可視インキとしては、紫外線の照射により発光する紫外線吸収インキを用いて不可視の記番号d3を印刷し、照合確認に際しての読み取りには紫外線を照射することにより記番号を読み取る。不可視インキとしては、この他に赤外線吸収インキ、磁性インキ等を、単独で又は組み合わせて用いても良い。
【0031】
図5は、図4に示す番号を印刷する状態を図示したものであり、図示しない番号転換指示装置から番号胴5と番号胴6に視認可能な可視の同一の記番号を指示し印刷する。また、番号胴7と番号胴8には不可視の同一の記番号または異なる記番号を印刷する。照合・確認する部分に不可視の記番号のチェック方式を予め設定しておく。
【0032】
図6は、番号工程で印刷された記番号を後工程である仕上工程における認識方法をブロック図で示したものである。通常の読取においては、上番と下番の文字列を読み取った後、この両者が同一番号であることを照合確認し、一致していれば(Y)機械の運転を継続し、不一致(N)であれば機械停止をする。
【0033】
この方法で小切券の番号検査をする場合、良品であるにもかかわらず上述した番号の背景にある印刷の影響、インキ濃度、画線の太さ、紙汚れや用紙埃等による品質の番号が発生する度に機械を停止するため、機械停止率が高くなり所要の計画量を達成することが困難になる場合がある。
【0034】
そこで、図6のI部に示す不可視の記番号を照合確認する部分を設け、上番と下番の文字列の番号が不一致(N)であっても、I部を経由する方法で同一(Y)であれば機械の運転を継続することができる。もちろん不一致(N)であれば機械停止をする。このことにより、機械の稼働時間を減少させることがなくなり、効率的な製造が行えることになった。
【0035】
なお、本発明は、正規の記番号でありながら、印刷物上の記番号以外の模様等による影響で、正規の記番号と不一致であると判定して機械停止を行ってしまう場合に、別の判定方法をさらに行うことで、誤判定による機械停止を防止するものであり、当該検査終了後において、不一致と一端判定された製品が本当に正規の記番号であるか否かを確認し、最終的に製品として保証するものである。
【0036】
また、本実施の形態で説明した記番号の検査方法のメリットとして、不可視の記番号は視認できないために、視認できる記番号は制限の桁数内に収めることが可能となる。
また、不可視の記番号をコピーされると視認可能なインキで印刷することにより、コピー防止の機能を持たせることも可能である。
更に、ATM等での検出に応用すれば、偽造防止効果の向上に繋がることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態の有価証券印刷物を示す図である。
【図2】小切券を作るまでの製造工程の概略図を示す。
【図3】本実施の形態における番号印刷機の胴配列の構成図を示す。
【図4】記番号の印字例を示す。
【図5】記番号を印刷する状態を示す図である。
【図6】番号工程で印刷された記番号を後工程である仕上工程における認識方法を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
1 小切券
2 上番と下番の記番号
3 番号認識装置
4 給紙胴
5、6、7、8 番号胴
9 圧胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則性を持って変化する連続番号を含む記番号が、基材上の所定の位置に視認可能に印刷され、前記記番号に対応した記号及び/又は番号が不可視に印刷されてなる印刷物において、前記印刷物の記番号を検査する方法であって、
前記視認可能に印刷した記番号を読取り、前記読取った記番号が予め記録してある記番号と照合確認し、前記照合確認が不一致と判別された場合には、さらに前記不可視の記号及び/又は番号を読取り、前記読取った不可視の記号及び/又は番号から予め設定してあるチェック方式に基づき前記視認可能に印刷した記番号を照合確認する印刷物の記番号検査方法。
【請求項2】
前記不可視の印刷は、機能性インキで印刷することを特徴とする請求項1記載の印刷物の記番号検査方法。
【請求項3】
前記機能性インキは、磁性インキ、赤外線吸収インキ及び/又は紫外線吸収インキである請求項2記載の印刷物の記番号検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−268468(P2006−268468A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86063(P2005−86063)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】