印刷物への識別情報の付与方法、識別情報を付与した印刷物、および印刷物のセキュリティ管理システム
【課題】印刷物のセキュリティ管理の処理時間を短縮する。より詳細には、真正の印刷物の識別情報の読み取りを不要とする。
【解決手段】印刷物を識別するための識別情報を印刷物の印字部中に組み込むものであり、この識別情報を、互いに相補の関係にあるドットパターンからなる識別ドットパターンの内で、一方のドットパターンを磁性インクで印字し、他方のドットパターンを非磁性インクで印字することで形成する。識別情報を用いた印刷物の真否判定では、識別ドットパターンを走査することで得られる波形信号を比較することで行う。真正な識別情報から得られる波形信号は、識別ドットパターンから計算によって取得し、判定対象の印刷物については印刷された識別情報をセンサで走査することで波形信号を取得する。
【解決手段】印刷物を識別するための識別情報を印刷物の印字部中に組み込むものであり、この識別情報を、互いに相補の関係にあるドットパターンからなる識別ドットパターンの内で、一方のドットパターンを磁性インクで印字し、他方のドットパターンを非磁性インクで印字することで形成する。識別情報を用いた印刷物の真否判定では、識別ドットパターンを走査することで得られる波形信号を比較することで行う。真正な識別情報から得られる波形信号は、識別ドットパターンから計算によって取得し、判定対象の印刷物については印刷された識別情報をセンサで走査することで波形信号を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物のセキュリティに関し、印刷物が真正に印刷されたものであることを識別する識別情報の付与に関し、また、付与された識別情報を用いた印刷物の真否性の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
個人認証技術として、各個人の指紋、光彩パターン、手のひらや指等の静脈パターン、顔面パターン等のバイオメトリクスを利用したものが知られている。また、物を認証する技術としては、カード等に用いられる磁気ストライプやICチップ、軟磁性ファイバを含有させた紙等に用いられる人工物メトリクス、印刷物に適用される電子透かし等が知られている。
【0003】
物を認証する技術において、従来提案されるものは、識別情報を物に付与するために高額な材料を要するという課題や、複写機やイメージスキャナで読み込んだ画像情報を用いて認証するために複雑な画像処理が必要であり、画像情報を記憶するために膨大な記憶容量が必要であるという課題が指摘されている。この課題を解決するために、非磁性体トナーと磁性体トナーを重複して画像を形成し、これによって複製が困難な画像を容易に形成するセキュリティ情報管理が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−178182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した先行技術文献では、非磁性体トナーと磁性体トナーを用い、文字やバーコードの一部を非磁性体トナーで印刷すると共に他の部分を磁性体トナーで印刷してセキュリティ画像を形成している。印刷物が真正なものであるか否かは、このセキュリティ画像の磁性体情報を読み取り、読み取ったデータと予め記憶しておいたセキュリティ画像データとを照合することによって行う。
【0005】
印刷物が真正であることを保証する際に、上記したセキュリティ画像技術を適用する場合には、画像データを照合するために、識別情報を組み込んだセキュリティ画像を印刷した印刷物からセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。
【0006】
印刷物が流通する態様として、例えば、印刷された印刷物自体が流通する態様の他に、印刷物を印字する画像データをネットワークや記録媒体を介して送信する態様がある。
【0007】
印刷物自体が流通する態様では、印刷物の判定を行う判定側において、真正の印刷物と判定対象の印刷物の両方について、それぞれの印刷物に印刷されているセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。このような態様では、各印刷物はそれぞれ個別に設定される識別情報を有しているため、全印刷物について、判定対象の印刷物のセキュリティ画像の磁性体情報を読み取ることに加えて、真正の印刷物についてもセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。そのため、多数の印刷物についてセキュリティ管理を行う場合には、判定対象の印刷物と真正の印刷物の両方の印刷物について磁性体情報を読み取る必要があるため、磁性体情報の読み取りに長時間を要するという問題がある。
【0008】
また、画像データを送信する態様では、画像データの受け手側において、受信した画像データを印刷して印刷物を形成する。この印刷物は、送り手側で印刷した真正の印刷物ではないため、真正の印刷物からセキュリティ画像の磁性体情報を読み取ることができず、照合処理によって真否判定を行うことができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、印刷物のセキュリティ管理の処理時間を短縮することを目的とする。より詳細には、真正の印刷物の識別情報の読み取りを不要とすることを目的とする。
【0010】
また、本発明は、判定対象の印刷物の真否判定において、真正の印刷物を要することなく、判定対象の印刷物の識別情報と真正の印刷物との識別情報との照合を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、方法のカテゴリーでは、印刷物への識別情報の付与方法の形態、および印刷物のセキュリティ管理方法の形態を備える。また、物のカテゴリーでは、識別情報を付与した印刷物の形態、印刷データ形成装置の形態、印刷物判定装置の形態、および印刷物のセキュリティ管理システムの各形態を備える。
【0012】
何れの形態においても、印刷物を識別するための識別情報を印刷物の印字部中に組み込むものであり、この識別情報を、互いに相補の関係にあるドットパターンからなる識別ドットパターンの内で、一方のドットパターンを磁性インクで印字し、他方のドットパターンを非磁性インクで印字することで形成する。
【0013】
識別情報を用いた印刷物の真否判定では、識別ドットパターンを走査することで得られる波形信号を比較することで行う。真正な識別情報から得られる波形信号は、識別ドットパターンから計算によって取得し、判定対象の印刷物については印刷された識別情報をセンサで走査することで波形信号を取得する。
【0014】
本発明の識別情報は識別ドットパターンに基づいて形成されるため、比較照合に用いる基準波形となる波形信号を、識別ドットパターンを用いて計算によって求めることができ、印刷物に識別情報を印字することを要さない。これにより、真正な印刷物を用意し、かつ、印刷物に付与された識別情報をセンサで走査するという手間をかけることなく、比較照合のための基準の波形信号を得ることができる。
【0015】
本発明の、識別情報を付与する方法の態様では、識別情報は互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを用意し、この識別ドットパターンの一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとする。印刷物に識別情報を付与するには、印刷物の印字部中に少なくとも一つの識別情報付与領域を設定し、この識別情報付与領域に識別ドットパターンを磁性インクと非磁性インクを用いて印字する。
【0016】
ここで、磁性インクドットパターンは、識別ドットパターンが備える全ドット数にドット密度を乗算することによってドット数を定め、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて各ドットの配置位置を定める。
【0017】
本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)がドット密度およびしきい値(設定値St)と関連があり、比較対照する波形信号間の相関係数において、ドット密度がある値以上とすることで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなることを見出した。
【0018】
そこで、本発明は、この誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいて、誤受理率(FMR)が“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるドット密度を設定し、このドット密度に基づいて識別ドットパターンの磁性インクドットパターンが備えるドット数を定める。次に、定めたドット数のドットの磁性インクドットパターン上の配置位置をランダム情報に基づいて定める。
【0019】
これによって、磁性インクドットパターンは、印刷物に固有の識別情報を有すると共に、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくすることができる。
【0020】
印字部において識別情報を付与する領域は、同一の単一色で印字される印字部とすることも、あるいは多色で印字される印字部とすることもできる。
【0021】
単一色で印字される印字部に識別情報を付与する場合には、その色について識別ドットパターンを定め、また、多色で印字される印字部に識別情報を付与する場合には、多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることができる。多色印字の場合には、多色中で選択した一色について識別ドットパターンを定める他に、この多色中で選択した複数色について識別ドットパターンを定めてもよい。この場合には、識別ドットパターンを形成する各色について磁性インクと非磁性インクを用意する必要がある。
【0022】
本発明の識別情報を付与した印刷物の態様では、印刷物は、互いに相補の関係にあるドットパターンであって、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとを有する識別ドットパターンを有する。印刷物は、印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に、磁性インクと非磁性インクによって前記識別ドットパターンを印字することによって、印刷物を識別する識別情報が付与される。
【0023】
磁性インクドットパターンが備えるドット数は、印字部中に設定した識別情報付与領域が備える全ドット数にドット密度を乗算して得られる個数である。また、識別情報付与領域内において、磁性インクドットパターン中に分散されるドットの配置位置は、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることができる。
【0024】
識別情報付与領域を単一色で印字する印字部とし、その色について識別ドットパターンを定める構成とする他に、識別情報付与領域を多色で印字する印字部とし、この多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定める構成とすることができる。多色の印字部では、複数の色の組み合わせによって識別ドットパターンを形成してもよい。
【0025】
本発明の印刷物のセキュリティ管理方法の態様では、識別情報を付与した印刷物を形成する工程と、作成データを形成する工程と、判定用検出波形信号を読み取る工程と、波形を比較する工程と、識別情報の真否を判定する工程と、印刷物の真否を判定する工程を備える。
【0026】
識別情報を付与した印刷物を形成する工程では、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとする、互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを、印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に印字して識別情報を付与した印刷物を形成する。
【0027】
作成データを形成する工程では、作成データとして、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算によって得られる検証用計算波形信号と、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む。
【0028】
判定用検出波形信号を読み取る工程は、作成データに含まれる識別情報付与領域データに基づいて印刷物上の検出位置を特定し、その検出位置において磁気的検出を行って判定用検出波形信号を読み取る。
【0029】
波形比較する工程は、印刷物から読み取った判定用検出波形信号と、作成データに含まれる検証用計算波形信号とを波形比較する。波形比較は、各サンプル点での波形信号の振幅値に基づいて相関係数を算出することで行うことができる。
【0030】
識別情報の真否を判定する工程では、波形比較工程での比較結果に基づいて識別情報の真否を判定し、印刷物の真否を判定する工程では、識別情報の真否の判定結果に基づいて印刷物の真否を判定する。
【0031】
識別情報の真否を判定する工程では、波形比較の工程で算出した相関係数Sとしきい値として定めておいた設定値Stとを比較することで行うことができる。この波形比較で用いる設定値Stは、相関係数Sを指標として識別情報の真否を判定するためのしきい値である。ここで、本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)と、真正を非正として誤って判断する誤拒否率(FNMR:False Non-Match Rate)との関係は、設定値Stの変化に応じて一方が増加すると他方は減少するという逆方向の変化を示し、いわゆるトレードアオフの関係にあることを見出した。
【0032】
そこで、本発明では、識別情報の真否を判定する工程において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなる設定値Stを定め、相関係数Sが設定値Stよりも大きい場合に真正と判定する。なお、このときの誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存する。
【0033】
印刷物の真否を判定する工程では、識別情報の真否を判定する工程の判定結果に基づいて、印刷物の真否を判定する。
【0034】
本発明の印刷データ形成装置の態様では、互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、印刷物および識別情報に係わる作成データを形成する作成データ形成部とを備える。
【0035】
作成データは、印刷物に印刷する画像データと識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを含む。
【0036】
印刷物情報は印刷物自体に関わるデータである。印刷物情報の内で、画像データと識別ドットパターンのパターンデータは、受け手側で印刷物を形成するために用いるデータである。印刷物情報の内の識別情報付与領域データは、判定対象の印刷物に付与されている識別情報をセンサで読み取るために、印刷物に対するセンサの走査位置を定めるためのデータであり、センサは、この識別情報付与領域データに基づいて印刷物中に設定されている識別情報付与領域を走査し、判定用検出波形信号を読み取る。
【0037】
一方、検証用計算波形信号は、受け手側において、判定対象の印刷物をセンサで読み取って得た判定用検出波形信号を比較して識別情報の真否を判定するために用いる基準信号である。
【0038】
本発明の印刷物判定装置の態様は、磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、この読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、取得した検証用計算波形信号と、検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、この波形比較の比較結果に基づいて、判定対象の印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、この識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備える。
【0039】
本発明の印刷物のセキュリティ管理システムの態様は、印刷物に付与した識別情報の真否を判定することによって当該印刷物の真否を判定する印刷物のセキュリティ管理システムにおいて、識別情報およびこの識別情報の真否を判定するためのデータを形成する印刷データ形成装置と、印刷データ形成装置で形成されたデータに基づいて判定対象印刷物の真否を判定する印刷物判定装置とを備える。
【0040】
印刷データ形成装置は、互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、印刷物に印刷する画像データと識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備える。
【0041】
また、印刷物判定装置は、磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、この読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、取得した検証用計算波形信号と、検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、この波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、この識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備える。
【0042】
印刷物の送り手側は、印刷データ形成装置によって作成データを形成し、形成した作成データを受け手側に送る。この際、印刷物の送り手側は、作成データに基づいて印刷物を印刷し、印刷物と共に作成データを送る他に、作成データのみを送る形態としてもよい。受け手側は、送り手側から送り出された後に何らかの経路を経て、印刷物を受け取る。受け手側での印刷物の受け取りは、印刷物自体を取得する他、作成データを受け取り、この作成データに含まれる画像データと識別ドットパターンのパターンデータと識別情報付与領域データを用いて印刷物を印刷することで取得してもよい。
【0043】
受け手側では、取得した印刷物において、識別情報付与領域データに基づいてセンサを走査することによって判定用検出波形信号を読み出し、作成データに含まれる検証用計算波形信号と波形比較を行う。この判定用検出波形信号と検証用計算波形信号との波形比較により識別情報の真否を判定し、識別情報の真否結果に基づいて印刷物の真否を判定する。
【0044】
本発明の付与方法の態様および識別情報を付与した印刷物の態様によれば、印刷物の印字部内に磁気的に識別情報を付与することができる。この識別情報の付与において、識別情報を付与する位置を識別情報付与領域として設定し、この識別情報付与領域のデータを印刷物と別に管理することによって、識別情報の取得に関してセキュリティを高めることができる。例えば、印刷物の印字部において、識別情報を付与する識別情報付与領域以外の部分についても磁性インクと非磁性インクを用いて印刷することで、識別情報付与領域のデータを所持しない者にとっては、識別情報の読み取りを困難とすることができる。
【0045】
また、識別ドットパターンにおいて、誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいてドット密度を定め、このドット密度に基づいて磁性インクドットパターンが備えるドット数を定めことで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるように設定することができる。
【0046】
また、識別ドットパターンにおいて、磁性インクドットパターン上でドットを配置する位置をランダム情報に基づいて定めることで、印刷物に固有の識別情報を付与することができる。
【0047】
本発明の印刷物のセキュリティ管理方法、印刷物判定装置の態様、および印刷物のセキュリティ管理システムの態様によれば、識別情報の真否判定において、作成データに含まれる識別情報付与領域データと検証用計算波形信号を用いる形態であり、この検証用計算波形信号は、識別ドットパターンから計算によって求めることができるため、識別情報を印字した印刷物は不要であり、判定基準となる真正な識別情報が付与された印刷物を用意したり、真正な識別情報が付与された印刷物からセンサ走査によって識別情報を読み取るといった操作を不要とすることができる。
【0048】
また、識別情報の真否判定において、検証用計算波形信号と判定用検出波形信号との相関係数Sを指標とし、この相関係数Sとの比較に用いるしきい値(設定値St)を、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなるように定めることによって、非正を真正に誤って判断したり、真正を非正として誤って判断するといった誤判定の率を低減させることができる。
【0049】
また、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存するため、許容される誤判定の率に応じて、識別情報を読み取るセンサの精度を定めることができ、必要以上に高精度で高価な読み取り装置を使用することを避け、セキュリティ管理に要する費用を抑制することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、印刷物のセキュリティ管理の処理時間を短縮することができる。また、真正の印刷物の識別情報の読み取りを不要とすることができる。
【0051】
また、本発明によれば、判定対象の印刷物の真否判定において、真正の印刷物を要することなく、判定対象の印刷物の識別情報と真正の印刷物との識別情報との照合を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
以下、本発明の印刷物への識別情報の付与方法、識別情報を付与した印刷物、印刷物のセキュリティ管理システムについて説明する。
【0054】
図1、図2は、本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。図1において、印刷物20の真正を保証するために、その印刷物20に固有の識別情報を付与する。識別情報の付与は、印刷物20の印字部21内に識別情報付与領域23を定め、この識別情報付与領域23に識別ドットパターン14を印字することで行う。識別ドットパターン14は印刷物20に対して固有に設定され、印刷物20を特定する識別情報として用いることができる。
【0055】
識別ドットパターン14は、磁性インクにより印字される磁性インクドットパターン14aと非磁性インクにより印字される非磁性インクドットパターン14bとで構成され、この二つのドットパターンは互いに相補的な関係となっている。したがって、磁性インクドットパターン14aを印字する磁性インクと、非磁性インクドットパターン14bを印字する非磁性インクとを同色とした場合には、識別ドットパターン14は同一色で印字され、視覚による観察では識別ドットパターン14のパターンを認識することはできない。なお、この識別ドットパターン14を印字する色は単一色に限らず多色としてもよい。多色印字とする場合には、色データと識別ドットパターン14との組み合わせに基づいて、磁性インクドットパターン14aおよび非磁性インクドットパターン14bの各ドットを印字する印字色を設定する。
【0056】
識別ドットパターン14は、印刷物20中の印字部21内において設定した識別情報付与領域23に印字する。図1では、識別情報付与領域23の場所に識別ドットパターン14が印字されて識別情報印字部24が形成された状態を示している。識別情報印字部24は印字部21の一部であり、識別ドットパターン14に基づいて磁性インクドットパターン14aと非磁性インクドットパターン14bによって磁性インクと非磁性インクで印字されている他は、視覚的には印字部21と同様に観察される。
【0057】
この識別情報印字部24は、磁性インクドットパターン14aの部分が磁性インクで印字されているため、この部分からは磁気的走査によって波形信号を得ることができる。この信号波形は、識別ドットパターン14の磁性インクドットパターン14aに依存し、さらに、この磁性インクパターン14aは識別情報を表しているため、波形信号から識別情報を認識することができる。
【0058】
本発明は、この識別ドットパターン14の各ドットパターンを磁性インクと非磁性インクとで印字することで得られる波形信号を用いて印刷物の真否判定を行う。本発明によって印刷物の真否を判定するには、印刷物20の印字部21内に識別情報付与領域23を定め、この定め識別情報付与領域23の箇所に、磁性インクと非磁性インクを用いて識別ドットパターン14のパターンを印字して識別情報印字部24を形成する。
【0059】
この印刷物20の真否を判定するために、識別情報付与領域23を磁気センサで走査して判定用検出判定信号25を検出する。
【0060】
一方、識別ドットパターン14の磁性インクドットパターン14aから計算によって、磁気的に走査して得られる波形信号を検証用計算波形信号15として求めておく。真正な利用者は、この検証用計算波形信号15と印刷物20を磁気センサで検出して得られる判定用検出波形信号25とを例えば相関係数を用いて比較することによって、識別情報の真否を判定する。
【0061】
したがって、本発明の識別情報を用いた印刷物の真否判定では、判定対象の印刷物を磁気センサで検出することで得られる判定用検出波形信号と、識別ドットパターンから計算によって予め求めておいた検証用計算波形信号とを比較することで行う。検証用計算波形信号は計算によって取得されるため、識別ドットパターンを磁性インクと非磁性インクとで印字して得られる印字パターンを用意する必要がなく、また、その印字パターンを磁気センサで走査して波形信号を検出する必要もない。
【0062】
図2において、一点鎖線の左方の(a)は識別情報の送り手側であり、(b)〜(d)は印刷物あるいは印刷物情報の送り手側であり、右方側の(e)〜(g)は識別情報の受け手側である。受け手側(e)〜(g)は、送り手側(a)から送られた識別情報に基づいて印刷物の真否判定を行う。
【0063】
送り手側(a)では、印刷物20に印刷を行うための画像データ10に基づいて作成データ11を作成する。この作成データ11は、印刷物20を形成するための印刷物情報12と、印刷物の真正判定の判定基準と検証用計算波形信号15とを含む。印刷物情報12は、画像データ10と、識別情報を印刷物内の何れの位置に印字するかを定め得る識別情報付与領域データ13と、識別情報としての識別ドットパターンデータ14の各データを含む。
【0064】
送り手側(a)で作成された作成データ11は受け手側に送られ、作成データ11中の識別情報付与領域データ13および検証用計算波形信号15を用いて、印刷物20に印字された識別情報を照合し、識別情報が真正であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて印刷物20の真否を判定する。
【0065】
従って、識別情報および印刷物に真否判定を行うには、受け手側は作成データ11が備えるデータの内で、少なくとも識別情報付与領域データ13と検証用計算波形信号15を取得する。
【0066】
受け手側(e)〜(g)では、印刷物の流通形態によって、印刷物自体を受け取る態様の他に、印刷物を印字するための印刷物情報12のデータを受け取り、受け手側で印字することで印刷物を形成する態様によって、印刷物を取得することができる。
【0067】
本発明は、受け手側(e)〜(g)において、印刷物を何れの流通態様で取得した場合であっても、作成データ、特に作成データ中の識別情報付与領域データ13と検証用計算波形信号15とを用いて、識別情報の真否を判定し、印刷物の真否を判定する。
【0068】
送り手側(b)は、送り手側(a)から作成データを取得して真正な印刷物20Aを印字する。印字された印刷物20Aは、印刷物情報12中の画像データ10に基づいて印字が行われると共に、識別情報付与領域データ13によって印字部21内に定められた領域に、識別ドットパターンデータ14によって識別情報印字部24が印字される。したがって、印刷物20Aには真正な識別情報が付与されることになる。
【0069】
受け手側(e)は、送り手側(b)から印刷物20Aを取得し、一方、送り手側(a)から作成データ11を取得する。受け手側(e)では、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印刷物20A内の識別情報印字部24を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0070】
識別情報の判定は、作成データ11中から検証用計算波形信号15を読み出し、検出した判定用検出波形信号25とを比較することで行う。ここでは、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することで、識別情報が真正であると判定し、印刷物20Aが真正であることが判定される。
【0071】
送り手側(c)は、印刷物を印字することなく、作成データ11を受け手側(f)に送る。受け手側(f)は、送り手側(c)から作成データ11を取得する。受け手側(f)では、取得した作成データ11中の印刷物情報12に基づいて印刷物20Bを印字する。この印刷物20Bには、印字部21と共に識別情報付与領域23に識別情報印字部24が印字される。
【0072】
受け手側(f)は、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印字した印刷物20B内の識別情報印字部24を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0073】
識別情報の判定は、作成データ11中から検証用計算波形信号15を読み出し、印刷物20Bを走査して検出した判定用検出波形信号25とを比較することで行う。ここでは、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することで、識別情報が真正であると判定し、印刷物20Aが真正であることが判定される。
【0074】
送り手側(d)は不正に印刷物を印字した例を示している。この場合には、送り手側(d)では、不正に印刷物20Cを作成する。ここで、送り手側(d)は、不正に取得した画像データを用いて印字したり、印刷物をコピーする等によって不正に印刷物20Cを作成する。また、不正印刷物20Cに付与される識別情報は種々の形態が考えられ、例えば、識別情報が付与されない形態、不正な識別情報が付与される形態、識別情報は正しいが付与領域が正しくない形態等が考えられる。
【0075】
受け手側(g)は、送り手側(d)から不正な印刷物20Cを取得する。受け手側(g)では、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印刷物20C内の識別情報付与領域データ13で特定される領域を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0076】
このとき、識別情報が付与されない形態では、判定用検出波形信号は検出されないため、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することはできず、印刷物20cは不正であると判定される。
【0077】
また、識別情報は正しいが付与領域が正しくない形態においても、判定用検出波形信号は検出されないため、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することはできず、印刷物20cは不正であると判定される。
【0078】
次に、図3〜図6を用いて作成データの作成について説明する。図3は作成データの作成を説明するためのフローチャートであり、図4は作成データの作成を説明するための説明図であり、図5は磁気ドットパターンの作成を説明するための図であり、図6はドット密度の設定を説明するための図である。
【0079】
はじめに、印字する画像データ10を取得し(S1)、画像データを展開して2次元のビットマップデータ16と色データ17を取得する。色データ17は、例えば4色とすることができ、各色についてビットマップデータを形成する。例えば、シアンを印字する座標(xC1,yC1)、…、マゼンタを印字する座標(xM1,yM1)、…、イエローを印字する座標(xY1,yY1)、…、ブラックを印字する座標(xB1,yB1)、…等のデータを作成する。プリンタは、このデータに基づいてヘッドを駆動して印字を行うことで印刷物を形成する(S2)。
【0080】
S2の工程で形成したビットマップデータ16と色データ17に基づいて、印字部21内に識別情報を組み込む候補領域22を抽出する。例えば、候補領域22は、ビットマップデータ16の中から設定色を指定することで抽出することができる。図4では、“C”,“M”,“Y”,“B”の各文字をそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色で印字する例を示し、この各色の中からブラックを指定色とし、この指定色であるブラックで印字される“B”の文字中の印字領域を、識別ドットパターンを形成する大きさの複数の領域に分割する、この分割して得られる領域を候補領域22として設定する。
【0081】
なお、ここでは、候補領域22の抽出を、印字色を条件として行う例を示しているが、これに限らず、印刷物中に位置や印字部の印字濃度等、種々の条件を設定してもよい(S3)。
【0082】
次に、抽出した複数の候補領域22の中から識別情報を付与する識別情報付与領域23を選択する。識別情報付与領域23は、例えば、任意に発生させた乱数に基づいて複数の候補領域22の中から選択することができる。識別情報付与領域23の選択をランダム情報に基づいて設定することで、識別情報のセキュリティ性を高めることができる。この選択した識別情報付与領域23の位置情報を付与領域データ13とする(S4)。
【0083】
本発明の識別ドットパターンデータ14は、磁性インクにより印字を行う磁性インクドットパターン14aと非磁性インクにより印字を行う非磁性インクドットパターン14bとから構成され、互いに相補的な関係にある。識別ドットパターンデータ14に基づいて磁性インクドットパターン14aを磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターン14bを非磁性インクを用いて印字することで、印字された識別情報印字部24には識別情報が付与されることになる。この識別情報は、印字された識別情報印字部24が備える磁気特性を磁気センサで走査して検出される波形信号で取得する他に、識別ドットパターンデータ14に基づいて計算によって波形信号を取得することができる。識別ドットパターンデータ14から得られる波形信号は、例えば、識別ドットパターンに基づいて、磁性インクによる磁気分布を計算し、この磁気分布を走査したときに得られる波形信号を計算することで取得することができる。
【0084】
本発明は、この計算によって得られる波形信号を、識別情報の真否判定に用いる検証用計算波形信号15とする(S5)。
【0085】
画像データ10、識別情報付与領域データ13、識別ドットパターンデータ14を含む印刷物情報12と、検証用計算波形信号15によって作成データ11を形成する(S6)。
【0086】
上記した作成データの作成は、演算処理を行うCPUや作成プログラムや計算データや計算結果を記憶するメモリ等で構成される演算装置によって行うことができる。
【0087】
作成データ11は、演算装置が備えるメモリや携帯可能な記憶手段に記憶する他、通信手段を介して送信することができる。
【0088】
識別ドットパターンを形成する磁性インクドットパターン14aは、ランダム情報40とドット密度41に基づいて形成することができる。図5は識別ドットパターンの形成を説明するための図である。
【0089】
磁性インクドットパターン14aは、例えば、格子状に配列されるドット配列の何れのドットを、磁性インクで印字するドットとするかを定めるパターンであり、ドットの個数と配列位置とによって定めることができる。
【0090】
ドット密度は、磁性インクドットパターン14aが備える全ドット数の内で、磁性インクで印字するドットの個数を定めるパラメータである。本出願の発明者は、非正を真正と誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)がドット密度および設定値と関連があり、比較対照する波形信号間の相関係数において、ドット密度がある値以上とすることで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなることを見出した。
【0091】
図6は、ドット密度[%]と誤受理率(FMR:False Match Rate)[%]との関係を模式的に示している。なお、図6では、比較対照する波形信号間の設定値Stによる変化についても示している。
【0092】
ドット密度[%]と誤受理率(FMR:False Match Rate)[%]との関係において、ドット密度が低い範囲では、ドット密度が高くなるほど誤受理率(FMR)が小さくなる傾向にあり、特に設定値Stが大きいほどこの傾向を強く示す。また、図示していないが、ドット密度が高くなると、磁性インクドットパターンによる磁気分布の変化が小さくなり、磁気センサを走査して得られる波形信号の識別が困難となることが予想される。
【0093】
そこで、本発明は、誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいて、誤受理率(FMR)が“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるドット密度を設定し、このドット密度に基づいて識別ドットパターンの磁性インクドットパターンが備えるドット数を定める。例えば、識別ドットパターンの全ドット数に設定したドット密度を乗じることで磁性インクドットパターンが備えるドット数を求めることができる。
【0094】
次に、定めたドット数のドットの磁性インクドットパターン上の配置位置をランダム情報に基づいて分散させる。
【0095】
次に、図7〜図8を用いて識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明する。図7は識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するためのフローチャートであり、図8は識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するための説明図である。
【0096】
はじめに、作成データ11を取得し(S11)、取得した作成データ11から画像データ10、識別情報付与領域データ13,識別ドットパターンデータを取得する(S12)。
【0097】
画像データ10を展開して、二次元のビットマップデータ16、色データ17を求め、記憶手段に記憶する(S13)。
【0098】
次に、ビットマップデータ16および色データ17を用い、非磁性インクドットパターンについては、S14〜S18の工程を繰り返すことによって印字部21を印字し、一方、磁性インクドットパターンについては、S15,S19,S20の工程を繰り返すことによって識別情報を印字部21に付与する。
【0099】
印字位置を順に定め(S14)、印字位置が識別情報付与領域内にあるかを判定する(S15)。
【0100】
印字位置が識別情報付与領域外である場合には(S15)、印字位置のビットマップデータ16と色データ17を記憶手段から読み出し(S16)、ビットマップデータ16が存在する場合には(S17)、そのビットに対して色データ17で指定されたヘッドを駆動して印字を行う(S18)。
【0101】
一方、印字位置が識別情報付与領域内ある場合には(S15)、印字位置のビットマップデータ16と色データ17を記憶手段から読み出し、ビットマップデータ16が存在する場合には、そのビットに対する色データ17が設定色である場合には(S19)、磁性インクドットパターンのドットであるときは磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターンのドットであるときには非磁性インクで印字する(S20)。
【0102】
これによって、識別情報付与領域23に識別情報印字部24が形成された印刷物20が形成される。
【0103】
次に、図9〜図17を用いて識別情報の判定について説明する。
【0104】
図9は識別情報の判定を説明するためのフローチャートであり、図10は識別情報の判定を説明するための説明図であり、図11は識別情報の判定に用いるしきい値の設定を説明するための図である。また、図12〜図17は各判定例を説明するための図である。
【0105】
図9,図10において、はじめに、識別情報付与領域データ13に基づいて、磁気センサで識別ドットパターン14を走査し、判定用検出波形信号25を検出する。磁気センサによる識別ドットパターンの走査は、識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサの位置を制御して行う。識別情報付与領域データ13に基づく磁気センサの位置制御によって、印字部21の何れの位置に識別情報が印字されていても検出することができる(S31)。
【0106】
また、作成データ11から検証用計算波形信号15を読み出し、判定用検出波形信号25と波形比較を行って照合する(S32)。
【0107】
検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との波形比較は、両波形信号の相関係数Stを計算することで求めることができる。
【0108】
相関係数Stは以下の式(1)で表すことができる。
【0109】
【数1】
【0110】
なお、pi,qiはサンプリング点iでの波形振幅であり、p*,q*はp,qのそれぞれの全要素の平均値である。なお、相関係数Sは、振幅ではなく位相変化によって変化する(S33)。
【0111】
計算して得られた相関係数Sと予め設定しておいた設定値Stとを比較して、識別情報の真否を判定する(S34)。
【0112】
ここで、上記した設定値Stについて説明する。この波形比較で用いる設定値Stは、相関係数Sを指標として識別情報の真否を判定するためのしきい値である。本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)と、真正を非正として誤って判断する誤拒否率(FNMR:False Non-Match Rate)との関係は、設定値Stの変化に応じて一方が増加すると他方は減少するという逆方向の変化を示し、いわゆるトレードオフの関係にあることを見出した。図11(a)は、設定値Stの変化に対する、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)との関係を示す図である。なお、この図は傾向を説明するために概略を示すものであって、大小関係を正確に示すものではない。
【0113】
誤受理率(FMR)は設定値Stが大きいほど小さく、誤拒否率(FNMR)は逆に設定値Stが小さいほど小さくなる。したがって、図11(a)において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)を共に小さくする設定値Stは、誤受理率(FMR)の曲線と誤拒否率(FNMR)の曲線が交差する点付近となる。本発明では、相関係数Sを用いて行う識別情報の真否判定において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなる設定値をStとして定め、相関係数Sが設定値Stよりも大きい場合に真正と判定する。
【0114】
このときの誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存する。図11(b)は、設定値Stに対する誤拒否率(FNMR)が磁気センサの位置ずれによって変化する状態を示している。誤拒否率(FNMR)は、磁気センサの位置ずれが大きいほど増加する。また、図11(c)は設定値Stに対する誤拒否率(FNMR)を示している。
【0115】
図11(b)と図11(c)との関係において、図11(c)に示す誤拒否率(FNMR)が十分小さいと見なせる設定値Stに対して、図11(b)からセンサの位置ずれをパラメータとする誤拒否率(FNMR)を判定することができる。
【0116】
この関係から、誤拒否率(FNMR)が十分小さいと見なせる設定値Stに対して、ある誤拒否率(FNMR)を定めるには、図11(b)において、一点鎖線と交差する、誤拒否率(FNMR)の値が設定値となるように、磁気センサの位置ずれを抑制する必要がある。
【0117】
また、磁気センサの位置ずれを抑制する精度に限界がある場合には、磁気センサの位置ずれで定まる誤拒否率(FNMR)の曲線上で許容される誤拒否率の値から、そのときの相関係数Stで定まる誤受理率(FMR)の値を定め、誤受理率(FMR)の値が許容範囲内となるかを判定する。
【0118】
以下、図12〜図17を用いて各判定例を説明する。
【0119】
図12は、データ作成と判定との関係を示している。データ作成側では、画像データ、ランダム情報、およびドット密度の各データに基づいて、作成データ11を作成する。前記したように、作成データ11は、画像データ、識別情報付与領域データ、識別ドットパターンデータを含む印刷物情報と、識別ドットパターンデータから計算によって得られる検証用計算波波形信号を含む。
【0120】
判定側では、データ作成側で作成した作成データ11の少なくとも識別情報付与領域データと検証用計算波形信号15を取得し、判定対象の印刷物20から磁気センサによって識別情報を走査して判定用検出波形信号25を検出し、この検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25とを照合することによって判定を行う。
【0121】
図13を用いて第1の判定例を説明する。第1の判定例は、複写による得られた不正な印刷物を判定する例である。
【0122】
印刷物20を複写することによって不正な印刷物20aが形成された場合、この不正印刷物20aには識別情報印字部24が形成されない。
【0123】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20aの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20aは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0124】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0125】
図14を用いて第2の判定例を説明する。第2の判定例は、画像データと検証用計算波形信号が不正に入手されて形成された印刷物を判定する例である。
【0126】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20bを印字することができる。この場合には、不正印刷物20bには識別情報印字部24が形成されない。
【0127】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20bの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20bは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0128】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0129】
また、画像データと共に、さらに、検証用計算波形信号あるいは識別ドットパターンが不正に入手された場合には、この画像データによって不正な印刷物20bが形成され、不正印刷物20bに識別情報印字部24が形成されるおそれがある。識別ドットパターンが不正入手された場合には印字部内に識別情報が付与されるおそれがある。しかしながら、この場合には、識別情報を付与する位置に関する識別情報付与領域データを有していないため、印字部中に何れかの位置に付与することはできるものの、識別情報付与領域データで定められる正しい位置に付与することは困難である。図14では、印刷物20bの印字部内に識別情報印字部24は形成されるものの、付与位置が正しくない。
【0130】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20bの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。画像データが不正に得られた印刷物20bは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0131】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0132】
図15を用いて第3の判定例を説明する。第3の判定例は、画像データと識別情報付与領域データが不正に入手されて形成された印刷物を判定する例である。
【0133】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20cを印字することができる。この場合には、識別情報付与領域データによって識別情報を付与する位置を知ることができるものの、識別ドットパターンデータが不明であるため、不正印刷物20cには識別情報印字部24が形成されないか、あるいは、真正の識別ドットパターンデータとは無関係に作成した識別ドットパターンデータを付与することになる。
【0134】
図15では、印刷物20cの印字部内に識別情報印字部24が正しい付与位置に形成されるものの、識別ドットパターンが正しくない。
【0135】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20cの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。画像データが不正に得られた印刷物20cは、識別情報付与領域に形成される識別情報印字部24の識別情報は正しくないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0136】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサから検出される判定用検出波形信号は検証用計算波形信号と不一致となり、不正と判定される。
【0137】
図16を用いて第4の判定例を説明する。第4の判定例は、画像データと識別情報付与領域データと検証用計算波形信号が不正に入手され、これに基づいて形成された印刷物を判定する例である。
【0138】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20dを印字することができる。この場合には、識別情報付与領域データによって識別情報を付与する位置を知ることができるものの、検証用計算波形信号によっては識別ドットパターンデータが不明であるため、不正印刷物20cには識別情報印字部24が形成されないか、あるいは、真正の識別ドットパターンデータとは無関係に作成した識別ドットパターンデータを付与することになる。
【0139】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20dの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20dは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないか、無関係な識別ドットパターンによる識別情報が付与されることになる。そのため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0140】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサから検出される判定用検出波形信号は検証用計算波形信号と不一致となり、不正と判定される。
【0141】
図17を用いて第5の判定例を説明する。第5の判定例は、真正な利用者であっても、識別情報を保持していない場合には、不正検出される例である。
【0142】
画像データを有する場合には、この画像データに基づいて印刷物20eを印字することができる。ここで、識別情報を保持していない場合には、印刷物20eには識別情報印字部24が形成されない。
【0143】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20eの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。印刷物20eは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0144】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0145】
上記した各例では、識別ドットパターンを付与する印字部を単一色で印字する例を示したが、多色で印字してもよい。図18は、識別ドットパターンを多色で印字する場合の一例である。ここでは、イエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの各色によって識別ドットパターンを印字する例を示している。
【0146】
図18(a)は、識別ドットパターンを左方からイエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの各色でストライプを形成する例を示している。これらの各色のストライプを、磁性インクドットパターンと非磁性インクドットパターンとに分け、磁性インクドットパターンについては磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターンについては非磁性インクで印字する。
【0147】
図18(b)はイエローの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(c)はイエローの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンである。同様に、図18(d)はマゼンタの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(e)はマゼンタの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンであり、図18(f)はシアンの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(g)はシアンの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンであり、図18(h)はブラックの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(i)はブラックの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンである。
【0148】
ここでは、各色の印字部がそれぞれストライプ状に形成されているが、これに限らず、各色の印字部がランダムに分布する場合についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、紙等の印刷用紙に印字する印刷物に限らず、樹脂や金属等の各種の材料の面に画像データを印字して形成される印刷物に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。
【図3】本発明の作成データの作成を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の作成データの作成を説明するための説明図である。
【図5】本発明の磁気ドットパターンの作成を説明するための図である。
【図6】本発明のドット密度の設定を説明するための図である。
【図7】本発明の識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するための説明図である。
【図9】本発明の識別情報の判定を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の識別情報の判定を説明するための説明図である。
【図11】本発明の識別情報の判定に用いるしきい値の設定を説明するための図である。
【図12】本発明のデータ作成と判定との関係を示す図である。
【図13】本発明の第1の判定例を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の判定例を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の判定例を説明するための図である。
【図16】本発明の第4の判定例を説明するための図である。
【図17】本発明の第5の判定例を説明するための図である。
【図18】本発明の識別ドットパターンを多色で印字する場合の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0151】
10…画像データ
11…作成データ
12…印刷物情報
13…識別情報付与領域データ
14…識別ドットパターンデータ
14a…磁性インクドットパターン
14b…非磁性インクドットパターン
15…検証用計算波形信号
16…ビットマップデータ
17…色データ
20…印刷物
21…印字部
22…候補領域
23…識別情報付与領域
24…識別情報印字部
25…判定用検出波形信号
30…磁気センサ
40…ランダム情報
41…ドット密度
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物のセキュリティに関し、印刷物が真正に印刷されたものであることを識別する識別情報の付与に関し、また、付与された識別情報を用いた印刷物の真否性の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
個人認証技術として、各個人の指紋、光彩パターン、手のひらや指等の静脈パターン、顔面パターン等のバイオメトリクスを利用したものが知られている。また、物を認証する技術としては、カード等に用いられる磁気ストライプやICチップ、軟磁性ファイバを含有させた紙等に用いられる人工物メトリクス、印刷物に適用される電子透かし等が知られている。
【0003】
物を認証する技術において、従来提案されるものは、識別情報を物に付与するために高額な材料を要するという課題や、複写機やイメージスキャナで読み込んだ画像情報を用いて認証するために複雑な画像処理が必要であり、画像情報を記憶するために膨大な記憶容量が必要であるという課題が指摘されている。この課題を解決するために、非磁性体トナーと磁性体トナーを重複して画像を形成し、これによって複製が困難な画像を容易に形成するセキュリティ情報管理が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−178182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した先行技術文献では、非磁性体トナーと磁性体トナーを用い、文字やバーコードの一部を非磁性体トナーで印刷すると共に他の部分を磁性体トナーで印刷してセキュリティ画像を形成している。印刷物が真正なものであるか否かは、このセキュリティ画像の磁性体情報を読み取り、読み取ったデータと予め記憶しておいたセキュリティ画像データとを照合することによって行う。
【0005】
印刷物が真正であることを保証する際に、上記したセキュリティ画像技術を適用する場合には、画像データを照合するために、識別情報を組み込んだセキュリティ画像を印刷した印刷物からセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。
【0006】
印刷物が流通する態様として、例えば、印刷された印刷物自体が流通する態様の他に、印刷物を印字する画像データをネットワークや記録媒体を介して送信する態様がある。
【0007】
印刷物自体が流通する態様では、印刷物の判定を行う判定側において、真正の印刷物と判定対象の印刷物の両方について、それぞれの印刷物に印刷されているセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。このような態様では、各印刷物はそれぞれ個別に設定される識別情報を有しているため、全印刷物について、判定対象の印刷物のセキュリティ画像の磁性体情報を読み取ることに加えて、真正の印刷物についてもセキュリティ画像の磁性体情報を読み取る必要がある。そのため、多数の印刷物についてセキュリティ管理を行う場合には、判定対象の印刷物と真正の印刷物の両方の印刷物について磁性体情報を読み取る必要があるため、磁性体情報の読み取りに長時間を要するという問題がある。
【0008】
また、画像データを送信する態様では、画像データの受け手側において、受信した画像データを印刷して印刷物を形成する。この印刷物は、送り手側で印刷した真正の印刷物ではないため、真正の印刷物からセキュリティ画像の磁性体情報を読み取ることができず、照合処理によって真否判定を行うことができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、印刷物のセキュリティ管理の処理時間を短縮することを目的とする。より詳細には、真正の印刷物の識別情報の読み取りを不要とすることを目的とする。
【0010】
また、本発明は、判定対象の印刷物の真否判定において、真正の印刷物を要することなく、判定対象の印刷物の識別情報と真正の印刷物との識別情報との照合を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、方法のカテゴリーでは、印刷物への識別情報の付与方法の形態、および印刷物のセキュリティ管理方法の形態を備える。また、物のカテゴリーでは、識別情報を付与した印刷物の形態、印刷データ形成装置の形態、印刷物判定装置の形態、および印刷物のセキュリティ管理システムの各形態を備える。
【0012】
何れの形態においても、印刷物を識別するための識別情報を印刷物の印字部中に組み込むものであり、この識別情報を、互いに相補の関係にあるドットパターンからなる識別ドットパターンの内で、一方のドットパターンを磁性インクで印字し、他方のドットパターンを非磁性インクで印字することで形成する。
【0013】
識別情報を用いた印刷物の真否判定では、識別ドットパターンを走査することで得られる波形信号を比較することで行う。真正な識別情報から得られる波形信号は、識別ドットパターンから計算によって取得し、判定対象の印刷物については印刷された識別情報をセンサで走査することで波形信号を取得する。
【0014】
本発明の識別情報は識別ドットパターンに基づいて形成されるため、比較照合に用いる基準波形となる波形信号を、識別ドットパターンを用いて計算によって求めることができ、印刷物に識別情報を印字することを要さない。これにより、真正な印刷物を用意し、かつ、印刷物に付与された識別情報をセンサで走査するという手間をかけることなく、比較照合のための基準の波形信号を得ることができる。
【0015】
本発明の、識別情報を付与する方法の態様では、識別情報は互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを用意し、この識別ドットパターンの一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとする。印刷物に識別情報を付与するには、印刷物の印字部中に少なくとも一つの識別情報付与領域を設定し、この識別情報付与領域に識別ドットパターンを磁性インクと非磁性インクを用いて印字する。
【0016】
ここで、磁性インクドットパターンは、識別ドットパターンが備える全ドット数にドット密度を乗算することによってドット数を定め、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて各ドットの配置位置を定める。
【0017】
本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)がドット密度およびしきい値(設定値St)と関連があり、比較対照する波形信号間の相関係数において、ドット密度がある値以上とすることで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなることを見出した。
【0018】
そこで、本発明は、この誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいて、誤受理率(FMR)が“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるドット密度を設定し、このドット密度に基づいて識別ドットパターンの磁性インクドットパターンが備えるドット数を定める。次に、定めたドット数のドットの磁性インクドットパターン上の配置位置をランダム情報に基づいて定める。
【0019】
これによって、磁性インクドットパターンは、印刷物に固有の識別情報を有すると共に、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくすることができる。
【0020】
印字部において識別情報を付与する領域は、同一の単一色で印字される印字部とすることも、あるいは多色で印字される印字部とすることもできる。
【0021】
単一色で印字される印字部に識別情報を付与する場合には、その色について識別ドットパターンを定め、また、多色で印字される印字部に識別情報を付与する場合には、多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることができる。多色印字の場合には、多色中で選択した一色について識別ドットパターンを定める他に、この多色中で選択した複数色について識別ドットパターンを定めてもよい。この場合には、識別ドットパターンを形成する各色について磁性インクと非磁性インクを用意する必要がある。
【0022】
本発明の識別情報を付与した印刷物の態様では、印刷物は、互いに相補の関係にあるドットパターンであって、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとを有する識別ドットパターンを有する。印刷物は、印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に、磁性インクと非磁性インクによって前記識別ドットパターンを印字することによって、印刷物を識別する識別情報が付与される。
【0023】
磁性インクドットパターンが備えるドット数は、印字部中に設定した識別情報付与領域が備える全ドット数にドット密度を乗算して得られる個数である。また、識別情報付与領域内において、磁性インクドットパターン中に分散されるドットの配置位置は、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることができる。
【0024】
識別情報付与領域を単一色で印字する印字部とし、その色について識別ドットパターンを定める構成とする他に、識別情報付与領域を多色で印字する印字部とし、この多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定める構成とすることができる。多色の印字部では、複数の色の組み合わせによって識別ドットパターンを形成してもよい。
【0025】
本発明の印刷物のセキュリティ管理方法の態様では、識別情報を付与した印刷物を形成する工程と、作成データを形成する工程と、判定用検出波形信号を読み取る工程と、波形を比較する工程と、識別情報の真否を判定する工程と、印刷物の真否を判定する工程を備える。
【0026】
識別情報を付与した印刷物を形成する工程では、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとする、互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを、印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に印字して識別情報を付与した印刷物を形成する。
【0027】
作成データを形成する工程では、作成データとして、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算によって得られる検証用計算波形信号と、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む。
【0028】
判定用検出波形信号を読み取る工程は、作成データに含まれる識別情報付与領域データに基づいて印刷物上の検出位置を特定し、その検出位置において磁気的検出を行って判定用検出波形信号を読み取る。
【0029】
波形比較する工程は、印刷物から読み取った判定用検出波形信号と、作成データに含まれる検証用計算波形信号とを波形比較する。波形比較は、各サンプル点での波形信号の振幅値に基づいて相関係数を算出することで行うことができる。
【0030】
識別情報の真否を判定する工程では、波形比較工程での比較結果に基づいて識別情報の真否を判定し、印刷物の真否を判定する工程では、識別情報の真否の判定結果に基づいて印刷物の真否を判定する。
【0031】
識別情報の真否を判定する工程では、波形比較の工程で算出した相関係数Sとしきい値として定めておいた設定値Stとを比較することで行うことができる。この波形比較で用いる設定値Stは、相関係数Sを指標として識別情報の真否を判定するためのしきい値である。ここで、本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)と、真正を非正として誤って判断する誤拒否率(FNMR:False Non-Match Rate)との関係は、設定値Stの変化に応じて一方が増加すると他方は減少するという逆方向の変化を示し、いわゆるトレードアオフの関係にあることを見出した。
【0032】
そこで、本発明では、識別情報の真否を判定する工程において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなる設定値Stを定め、相関係数Sが設定値Stよりも大きい場合に真正と判定する。なお、このときの誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存する。
【0033】
印刷物の真否を判定する工程では、識別情報の真否を判定する工程の判定結果に基づいて、印刷物の真否を判定する。
【0034】
本発明の印刷データ形成装置の態様では、互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、印刷物および識別情報に係わる作成データを形成する作成データ形成部とを備える。
【0035】
作成データは、印刷物に印刷する画像データと識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを含む。
【0036】
印刷物情報は印刷物自体に関わるデータである。印刷物情報の内で、画像データと識別ドットパターンのパターンデータは、受け手側で印刷物を形成するために用いるデータである。印刷物情報の内の識別情報付与領域データは、判定対象の印刷物に付与されている識別情報をセンサで読み取るために、印刷物に対するセンサの走査位置を定めるためのデータであり、センサは、この識別情報付与領域データに基づいて印刷物中に設定されている識別情報付与領域を走査し、判定用検出波形信号を読み取る。
【0037】
一方、検証用計算波形信号は、受け手側において、判定対象の印刷物をセンサで読み取って得た判定用検出波形信号を比較して識別情報の真否を判定するために用いる基準信号である。
【0038】
本発明の印刷物判定装置の態様は、磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、この読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、取得した検証用計算波形信号と、検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、この波形比較の比較結果に基づいて、判定対象の印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、この識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備える。
【0039】
本発明の印刷物のセキュリティ管理システムの態様は、印刷物に付与した識別情報の真否を判定することによって当該印刷物の真否を判定する印刷物のセキュリティ管理システムにおいて、識別情報およびこの識別情報の真否を判定するためのデータを形成する印刷データ形成装置と、印刷データ形成装置で形成されたデータに基づいて判定対象印刷物の真否を判定する印刷物判定装置とを備える。
【0040】
印刷データ形成装置は、互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、印刷物に印刷する画像データと識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備える。
【0041】
また、印刷物判定装置は、磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、識別ドットパターンのパターンデータと、識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、この読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、取得した検証用計算波形信号と、検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、この波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、この識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備える。
【0042】
印刷物の送り手側は、印刷データ形成装置によって作成データを形成し、形成した作成データを受け手側に送る。この際、印刷物の送り手側は、作成データに基づいて印刷物を印刷し、印刷物と共に作成データを送る他に、作成データのみを送る形態としてもよい。受け手側は、送り手側から送り出された後に何らかの経路を経て、印刷物を受け取る。受け手側での印刷物の受け取りは、印刷物自体を取得する他、作成データを受け取り、この作成データに含まれる画像データと識別ドットパターンのパターンデータと識別情報付与領域データを用いて印刷物を印刷することで取得してもよい。
【0043】
受け手側では、取得した印刷物において、識別情報付与領域データに基づいてセンサを走査することによって判定用検出波形信号を読み出し、作成データに含まれる検証用計算波形信号と波形比較を行う。この判定用検出波形信号と検証用計算波形信号との波形比較により識別情報の真否を判定し、識別情報の真否結果に基づいて印刷物の真否を判定する。
【0044】
本発明の付与方法の態様および識別情報を付与した印刷物の態様によれば、印刷物の印字部内に磁気的に識別情報を付与することができる。この識別情報の付与において、識別情報を付与する位置を識別情報付与領域として設定し、この識別情報付与領域のデータを印刷物と別に管理することによって、識別情報の取得に関してセキュリティを高めることができる。例えば、印刷物の印字部において、識別情報を付与する識別情報付与領域以外の部分についても磁性インクと非磁性インクを用いて印刷することで、識別情報付与領域のデータを所持しない者にとっては、識別情報の読み取りを困難とすることができる。
【0045】
また、識別ドットパターンにおいて、誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいてドット密度を定め、このドット密度に基づいて磁性インクドットパターンが備えるドット数を定めことで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるように設定することができる。
【0046】
また、識別ドットパターンにおいて、磁性インクドットパターン上でドットを配置する位置をランダム情報に基づいて定めることで、印刷物に固有の識別情報を付与することができる。
【0047】
本発明の印刷物のセキュリティ管理方法、印刷物判定装置の態様、および印刷物のセキュリティ管理システムの態様によれば、識別情報の真否判定において、作成データに含まれる識別情報付与領域データと検証用計算波形信号を用いる形態であり、この検証用計算波形信号は、識別ドットパターンから計算によって求めることができるため、識別情報を印字した印刷物は不要であり、判定基準となる真正な識別情報が付与された印刷物を用意したり、真正な識別情報が付与された印刷物からセンサ走査によって識別情報を読み取るといった操作を不要とすることができる。
【0048】
また、識別情報の真否判定において、検証用計算波形信号と判定用検出波形信号との相関係数Sを指標とし、この相関係数Sとの比較に用いるしきい値(設定値St)を、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなるように定めることによって、非正を真正に誤って判断したり、真正を非正として誤って判断するといった誤判定の率を低減させることができる。
【0049】
また、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存するため、許容される誤判定の率に応じて、識別情報を読み取るセンサの精度を定めることができ、必要以上に高精度で高価な読み取り装置を使用することを避け、セキュリティ管理に要する費用を抑制することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、印刷物のセキュリティ管理の処理時間を短縮することができる。また、真正の印刷物の識別情報の読み取りを不要とすることができる。
【0051】
また、本発明によれば、判定対象の印刷物の真否判定において、真正の印刷物を要することなく、判定対象の印刷物の識別情報と真正の印刷物との識別情報との照合を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
以下、本発明の印刷物への識別情報の付与方法、識別情報を付与した印刷物、印刷物のセキュリティ管理システムについて説明する。
【0054】
図1、図2は、本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。図1において、印刷物20の真正を保証するために、その印刷物20に固有の識別情報を付与する。識別情報の付与は、印刷物20の印字部21内に識別情報付与領域23を定め、この識別情報付与領域23に識別ドットパターン14を印字することで行う。識別ドットパターン14は印刷物20に対して固有に設定され、印刷物20を特定する識別情報として用いることができる。
【0055】
識別ドットパターン14は、磁性インクにより印字される磁性インクドットパターン14aと非磁性インクにより印字される非磁性インクドットパターン14bとで構成され、この二つのドットパターンは互いに相補的な関係となっている。したがって、磁性インクドットパターン14aを印字する磁性インクと、非磁性インクドットパターン14bを印字する非磁性インクとを同色とした場合には、識別ドットパターン14は同一色で印字され、視覚による観察では識別ドットパターン14のパターンを認識することはできない。なお、この識別ドットパターン14を印字する色は単一色に限らず多色としてもよい。多色印字とする場合には、色データと識別ドットパターン14との組み合わせに基づいて、磁性インクドットパターン14aおよび非磁性インクドットパターン14bの各ドットを印字する印字色を設定する。
【0056】
識別ドットパターン14は、印刷物20中の印字部21内において設定した識別情報付与領域23に印字する。図1では、識別情報付与領域23の場所に識別ドットパターン14が印字されて識別情報印字部24が形成された状態を示している。識別情報印字部24は印字部21の一部であり、識別ドットパターン14に基づいて磁性インクドットパターン14aと非磁性インクドットパターン14bによって磁性インクと非磁性インクで印字されている他は、視覚的には印字部21と同様に観察される。
【0057】
この識別情報印字部24は、磁性インクドットパターン14aの部分が磁性インクで印字されているため、この部分からは磁気的走査によって波形信号を得ることができる。この信号波形は、識別ドットパターン14の磁性インクドットパターン14aに依存し、さらに、この磁性インクパターン14aは識別情報を表しているため、波形信号から識別情報を認識することができる。
【0058】
本発明は、この識別ドットパターン14の各ドットパターンを磁性インクと非磁性インクとで印字することで得られる波形信号を用いて印刷物の真否判定を行う。本発明によって印刷物の真否を判定するには、印刷物20の印字部21内に識別情報付与領域23を定め、この定め識別情報付与領域23の箇所に、磁性インクと非磁性インクを用いて識別ドットパターン14のパターンを印字して識別情報印字部24を形成する。
【0059】
この印刷物20の真否を判定するために、識別情報付与領域23を磁気センサで走査して判定用検出判定信号25を検出する。
【0060】
一方、識別ドットパターン14の磁性インクドットパターン14aから計算によって、磁気的に走査して得られる波形信号を検証用計算波形信号15として求めておく。真正な利用者は、この検証用計算波形信号15と印刷物20を磁気センサで検出して得られる判定用検出波形信号25とを例えば相関係数を用いて比較することによって、識別情報の真否を判定する。
【0061】
したがって、本発明の識別情報を用いた印刷物の真否判定では、判定対象の印刷物を磁気センサで検出することで得られる判定用検出波形信号と、識別ドットパターンから計算によって予め求めておいた検証用計算波形信号とを比較することで行う。検証用計算波形信号は計算によって取得されるため、識別ドットパターンを磁性インクと非磁性インクとで印字して得られる印字パターンを用意する必要がなく、また、その印字パターンを磁気センサで走査して波形信号を検出する必要もない。
【0062】
図2において、一点鎖線の左方の(a)は識別情報の送り手側であり、(b)〜(d)は印刷物あるいは印刷物情報の送り手側であり、右方側の(e)〜(g)は識別情報の受け手側である。受け手側(e)〜(g)は、送り手側(a)から送られた識別情報に基づいて印刷物の真否判定を行う。
【0063】
送り手側(a)では、印刷物20に印刷を行うための画像データ10に基づいて作成データ11を作成する。この作成データ11は、印刷物20を形成するための印刷物情報12と、印刷物の真正判定の判定基準と検証用計算波形信号15とを含む。印刷物情報12は、画像データ10と、識別情報を印刷物内の何れの位置に印字するかを定め得る識別情報付与領域データ13と、識別情報としての識別ドットパターンデータ14の各データを含む。
【0064】
送り手側(a)で作成された作成データ11は受け手側に送られ、作成データ11中の識別情報付与領域データ13および検証用計算波形信号15を用いて、印刷物20に印字された識別情報を照合し、識別情報が真正であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて印刷物20の真否を判定する。
【0065】
従って、識別情報および印刷物に真否判定を行うには、受け手側は作成データ11が備えるデータの内で、少なくとも識別情報付与領域データ13と検証用計算波形信号15を取得する。
【0066】
受け手側(e)〜(g)では、印刷物の流通形態によって、印刷物自体を受け取る態様の他に、印刷物を印字するための印刷物情報12のデータを受け取り、受け手側で印字することで印刷物を形成する態様によって、印刷物を取得することができる。
【0067】
本発明は、受け手側(e)〜(g)において、印刷物を何れの流通態様で取得した場合であっても、作成データ、特に作成データ中の識別情報付与領域データ13と検証用計算波形信号15とを用いて、識別情報の真否を判定し、印刷物の真否を判定する。
【0068】
送り手側(b)は、送り手側(a)から作成データを取得して真正な印刷物20Aを印字する。印字された印刷物20Aは、印刷物情報12中の画像データ10に基づいて印字が行われると共に、識別情報付与領域データ13によって印字部21内に定められた領域に、識別ドットパターンデータ14によって識別情報印字部24が印字される。したがって、印刷物20Aには真正な識別情報が付与されることになる。
【0069】
受け手側(e)は、送り手側(b)から印刷物20Aを取得し、一方、送り手側(a)から作成データ11を取得する。受け手側(e)では、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印刷物20A内の識別情報印字部24を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0070】
識別情報の判定は、作成データ11中から検証用計算波形信号15を読み出し、検出した判定用検出波形信号25とを比較することで行う。ここでは、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することで、識別情報が真正であると判定し、印刷物20Aが真正であることが判定される。
【0071】
送り手側(c)は、印刷物を印字することなく、作成データ11を受け手側(f)に送る。受け手側(f)は、送り手側(c)から作成データ11を取得する。受け手側(f)では、取得した作成データ11中の印刷物情報12に基づいて印刷物20Bを印字する。この印刷物20Bには、印字部21と共に識別情報付与領域23に識別情報印字部24が印字される。
【0072】
受け手側(f)は、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印字した印刷物20B内の識別情報印字部24を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0073】
識別情報の判定は、作成データ11中から検証用計算波形信号15を読み出し、印刷物20Bを走査して検出した判定用検出波形信号25とを比較することで行う。ここでは、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することで、識別情報が真正であると判定し、印刷物20Aが真正であることが判定される。
【0074】
送り手側(d)は不正に印刷物を印字した例を示している。この場合には、送り手側(d)では、不正に印刷物20Cを作成する。ここで、送り手側(d)は、不正に取得した画像データを用いて印字したり、印刷物をコピーする等によって不正に印刷物20Cを作成する。また、不正印刷物20Cに付与される識別情報は種々の形態が考えられ、例えば、識別情報が付与されない形態、不正な識別情報が付与される形態、識別情報は正しいが付与領域が正しくない形態等が考えられる。
【0075】
受け手側(g)は、送り手側(d)から不正な印刷物20Cを取得する。受け手側(g)では、取得した作成データ11中の識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサ30の走査位置を制御して、印刷物20C内の識別情報付与領域データ13で特定される領域を走査して、判定用検出波形信号25を検出する。
【0076】
このとき、識別情報が付与されない形態では、判定用検出波形信号は検出されないため、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することはできず、印刷物20cは不正であると判定される。
【0077】
また、識別情報は正しいが付与領域が正しくない形態においても、判定用検出波形信号は検出されないため、検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との一致を確認することはできず、印刷物20cは不正であると判定される。
【0078】
次に、図3〜図6を用いて作成データの作成について説明する。図3は作成データの作成を説明するためのフローチャートであり、図4は作成データの作成を説明するための説明図であり、図5は磁気ドットパターンの作成を説明するための図であり、図6はドット密度の設定を説明するための図である。
【0079】
はじめに、印字する画像データ10を取得し(S1)、画像データを展開して2次元のビットマップデータ16と色データ17を取得する。色データ17は、例えば4色とすることができ、各色についてビットマップデータを形成する。例えば、シアンを印字する座標(xC1,yC1)、…、マゼンタを印字する座標(xM1,yM1)、…、イエローを印字する座標(xY1,yY1)、…、ブラックを印字する座標(xB1,yB1)、…等のデータを作成する。プリンタは、このデータに基づいてヘッドを駆動して印字を行うことで印刷物を形成する(S2)。
【0080】
S2の工程で形成したビットマップデータ16と色データ17に基づいて、印字部21内に識別情報を組み込む候補領域22を抽出する。例えば、候補領域22は、ビットマップデータ16の中から設定色を指定することで抽出することができる。図4では、“C”,“M”,“Y”,“B”の各文字をそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色で印字する例を示し、この各色の中からブラックを指定色とし、この指定色であるブラックで印字される“B”の文字中の印字領域を、識別ドットパターンを形成する大きさの複数の領域に分割する、この分割して得られる領域を候補領域22として設定する。
【0081】
なお、ここでは、候補領域22の抽出を、印字色を条件として行う例を示しているが、これに限らず、印刷物中に位置や印字部の印字濃度等、種々の条件を設定してもよい(S3)。
【0082】
次に、抽出した複数の候補領域22の中から識別情報を付与する識別情報付与領域23を選択する。識別情報付与領域23は、例えば、任意に発生させた乱数に基づいて複数の候補領域22の中から選択することができる。識別情報付与領域23の選択をランダム情報に基づいて設定することで、識別情報のセキュリティ性を高めることができる。この選択した識別情報付与領域23の位置情報を付与領域データ13とする(S4)。
【0083】
本発明の識別ドットパターンデータ14は、磁性インクにより印字を行う磁性インクドットパターン14aと非磁性インクにより印字を行う非磁性インクドットパターン14bとから構成され、互いに相補的な関係にある。識別ドットパターンデータ14に基づいて磁性インクドットパターン14aを磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターン14bを非磁性インクを用いて印字することで、印字された識別情報印字部24には識別情報が付与されることになる。この識別情報は、印字された識別情報印字部24が備える磁気特性を磁気センサで走査して検出される波形信号で取得する他に、識別ドットパターンデータ14に基づいて計算によって波形信号を取得することができる。識別ドットパターンデータ14から得られる波形信号は、例えば、識別ドットパターンに基づいて、磁性インクによる磁気分布を計算し、この磁気分布を走査したときに得られる波形信号を計算することで取得することができる。
【0084】
本発明は、この計算によって得られる波形信号を、識別情報の真否判定に用いる検証用計算波形信号15とする(S5)。
【0085】
画像データ10、識別情報付与領域データ13、識別ドットパターンデータ14を含む印刷物情報12と、検証用計算波形信号15によって作成データ11を形成する(S6)。
【0086】
上記した作成データの作成は、演算処理を行うCPUや作成プログラムや計算データや計算結果を記憶するメモリ等で構成される演算装置によって行うことができる。
【0087】
作成データ11は、演算装置が備えるメモリや携帯可能な記憶手段に記憶する他、通信手段を介して送信することができる。
【0088】
識別ドットパターンを形成する磁性インクドットパターン14aは、ランダム情報40とドット密度41に基づいて形成することができる。図5は識別ドットパターンの形成を説明するための図である。
【0089】
磁性インクドットパターン14aは、例えば、格子状に配列されるドット配列の何れのドットを、磁性インクで印字するドットとするかを定めるパターンであり、ドットの個数と配列位置とによって定めることができる。
【0090】
ドット密度は、磁性インクドットパターン14aが備える全ドット数の内で、磁性インクで印字するドットの個数を定めるパラメータである。本出願の発明者は、非正を真正と誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)がドット密度および設定値と関連があり、比較対照する波形信号間の相関係数において、ドット密度がある値以上とすることで、誤受理率(FMR)を“0”と見なし得る程度に十分に小さくなることを見出した。
【0091】
図6は、ドット密度[%]と誤受理率(FMR:False Match Rate)[%]との関係を模式的に示している。なお、図6では、比較対照する波形信号間の設定値Stによる変化についても示している。
【0092】
ドット密度[%]と誤受理率(FMR:False Match Rate)[%]との関係において、ドット密度が低い範囲では、ドット密度が高くなるほど誤受理率(FMR)が小さくなる傾向にあり、特に設定値Stが大きいほどこの傾向を強く示す。また、図示していないが、ドット密度が高くなると、磁性インクドットパターンによる磁気分布の変化が小さくなり、磁気センサを走査して得られる波形信号の識別が困難となることが予想される。
【0093】
そこで、本発明は、誤受理率(FMR)とドット密度との関係に基づいて、誤受理率(FMR)が“0”と見なし得る程度に十分に小さくなるドット密度を設定し、このドット密度に基づいて識別ドットパターンの磁性インクドットパターンが備えるドット数を定める。例えば、識別ドットパターンの全ドット数に設定したドット密度を乗じることで磁性インクドットパターンが備えるドット数を求めることができる。
【0094】
次に、定めたドット数のドットの磁性インクドットパターン上の配置位置をランダム情報に基づいて分散させる。
【0095】
次に、図7〜図8を用いて識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明する。図7は識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するためのフローチャートであり、図8は識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するための説明図である。
【0096】
はじめに、作成データ11を取得し(S11)、取得した作成データ11から画像データ10、識別情報付与領域データ13,識別ドットパターンデータを取得する(S12)。
【0097】
画像データ10を展開して、二次元のビットマップデータ16、色データ17を求め、記憶手段に記憶する(S13)。
【0098】
次に、ビットマップデータ16および色データ17を用い、非磁性インクドットパターンについては、S14〜S18の工程を繰り返すことによって印字部21を印字し、一方、磁性インクドットパターンについては、S15,S19,S20の工程を繰り返すことによって識別情報を印字部21に付与する。
【0099】
印字位置を順に定め(S14)、印字位置が識別情報付与領域内にあるかを判定する(S15)。
【0100】
印字位置が識別情報付与領域外である場合には(S15)、印字位置のビットマップデータ16と色データ17を記憶手段から読み出し(S16)、ビットマップデータ16が存在する場合には(S17)、そのビットに対して色データ17で指定されたヘッドを駆動して印字を行う(S18)。
【0101】
一方、印字位置が識別情報付与領域内ある場合には(S15)、印字位置のビットマップデータ16と色データ17を記憶手段から読み出し、ビットマップデータ16が存在する場合には、そのビットに対する色データ17が設定色である場合には(S19)、磁性インクドットパターンのドットであるときは磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターンのドットであるときには非磁性インクで印字する(S20)。
【0102】
これによって、識別情報付与領域23に識別情報印字部24が形成された印刷物20が形成される。
【0103】
次に、図9〜図17を用いて識別情報の判定について説明する。
【0104】
図9は識別情報の判定を説明するためのフローチャートであり、図10は識別情報の判定を説明するための説明図であり、図11は識別情報の判定に用いるしきい値の設定を説明するための図である。また、図12〜図17は各判定例を説明するための図である。
【0105】
図9,図10において、はじめに、識別情報付与領域データ13に基づいて、磁気センサで識別ドットパターン14を走査し、判定用検出波形信号25を検出する。磁気センサによる識別ドットパターンの走査は、識別情報付与領域データ13に基づいて磁気センサの位置を制御して行う。識別情報付与領域データ13に基づく磁気センサの位置制御によって、印字部21の何れの位置に識別情報が印字されていても検出することができる(S31)。
【0106】
また、作成データ11から検証用計算波形信号15を読み出し、判定用検出波形信号25と波形比較を行って照合する(S32)。
【0107】
検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25との波形比較は、両波形信号の相関係数Stを計算することで求めることができる。
【0108】
相関係数Stは以下の式(1)で表すことができる。
【0109】
【数1】
【0110】
なお、pi,qiはサンプリング点iでの波形振幅であり、p*,q*はp,qのそれぞれの全要素の平均値である。なお、相関係数Sは、振幅ではなく位相変化によって変化する(S33)。
【0111】
計算して得られた相関係数Sと予め設定しておいた設定値Stとを比較して、識別情報の真否を判定する(S34)。
【0112】
ここで、上記した設定値Stについて説明する。この波形比較で用いる設定値Stは、相関係数Sを指標として識別情報の真否を判定するためのしきい値である。本出願の発明者は、非正を真正に誤って判断する誤受理率(FMR:False Match Rate)と、真正を非正として誤って判断する誤拒否率(FNMR:False Non-Match Rate)との関係は、設定値Stの変化に応じて一方が増加すると他方は減少するという逆方向の変化を示し、いわゆるトレードオフの関係にあることを見出した。図11(a)は、設定値Stの変化に対する、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)との関係を示す図である。なお、この図は傾向を説明するために概略を示すものであって、大小関係を正確に示すものではない。
【0113】
誤受理率(FMR)は設定値Stが大きいほど小さく、誤拒否率(FNMR)は逆に設定値Stが小さいほど小さくなる。したがって、図11(a)において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)を共に小さくする設定値Stは、誤受理率(FMR)の曲線と誤拒否率(FNMR)の曲線が交差する点付近となる。本発明では、相関係数Sを用いて行う識別情報の真否判定において、誤受理率(FMR)と誤拒否率(FNMR)が共に小さくなる設定値をStとして定め、相関係数Sが設定値Stよりも大きい場合に真正と判定する。
【0114】
このときの誤拒否率(FNMR)は、判定対象の印刷物に印字された識別情報と、この識別情報を読み取るセンサとの位置ずれに依存する。図11(b)は、設定値Stに対する誤拒否率(FNMR)が磁気センサの位置ずれによって変化する状態を示している。誤拒否率(FNMR)は、磁気センサの位置ずれが大きいほど増加する。また、図11(c)は設定値Stに対する誤拒否率(FNMR)を示している。
【0115】
図11(b)と図11(c)との関係において、図11(c)に示す誤拒否率(FNMR)が十分小さいと見なせる設定値Stに対して、図11(b)からセンサの位置ずれをパラメータとする誤拒否率(FNMR)を判定することができる。
【0116】
この関係から、誤拒否率(FNMR)が十分小さいと見なせる設定値Stに対して、ある誤拒否率(FNMR)を定めるには、図11(b)において、一点鎖線と交差する、誤拒否率(FNMR)の値が設定値となるように、磁気センサの位置ずれを抑制する必要がある。
【0117】
また、磁気センサの位置ずれを抑制する精度に限界がある場合には、磁気センサの位置ずれで定まる誤拒否率(FNMR)の曲線上で許容される誤拒否率の値から、そのときの相関係数Stで定まる誤受理率(FMR)の値を定め、誤受理率(FMR)の値が許容範囲内となるかを判定する。
【0118】
以下、図12〜図17を用いて各判定例を説明する。
【0119】
図12は、データ作成と判定との関係を示している。データ作成側では、画像データ、ランダム情報、およびドット密度の各データに基づいて、作成データ11を作成する。前記したように、作成データ11は、画像データ、識別情報付与領域データ、識別ドットパターンデータを含む印刷物情報と、識別ドットパターンデータから計算によって得られる検証用計算波波形信号を含む。
【0120】
判定側では、データ作成側で作成した作成データ11の少なくとも識別情報付与領域データと検証用計算波形信号15を取得し、判定対象の印刷物20から磁気センサによって識別情報を走査して判定用検出波形信号25を検出し、この検証用計算波形信号15と判定用検出波形信号25とを照合することによって判定を行う。
【0121】
図13を用いて第1の判定例を説明する。第1の判定例は、複写による得られた不正な印刷物を判定する例である。
【0122】
印刷物20を複写することによって不正な印刷物20aが形成された場合、この不正印刷物20aには識別情報印字部24が形成されない。
【0123】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20aの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20aは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0124】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0125】
図14を用いて第2の判定例を説明する。第2の判定例は、画像データと検証用計算波形信号が不正に入手されて形成された印刷物を判定する例である。
【0126】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20bを印字することができる。この場合には、不正印刷物20bには識別情報印字部24が形成されない。
【0127】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20bの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20bは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0128】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0129】
また、画像データと共に、さらに、検証用計算波形信号あるいは識別ドットパターンが不正に入手された場合には、この画像データによって不正な印刷物20bが形成され、不正印刷物20bに識別情報印字部24が形成されるおそれがある。識別ドットパターンが不正入手された場合には印字部内に識別情報が付与されるおそれがある。しかしながら、この場合には、識別情報を付与する位置に関する識別情報付与領域データを有していないため、印字部中に何れかの位置に付与することはできるものの、識別情報付与領域データで定められる正しい位置に付与することは困難である。図14では、印刷物20bの印字部内に識別情報印字部24は形成されるものの、付与位置が正しくない。
【0130】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20bの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。画像データが不正に得られた印刷物20bは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0131】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0132】
図15を用いて第3の判定例を説明する。第3の判定例は、画像データと識別情報付与領域データが不正に入手されて形成された印刷物を判定する例である。
【0133】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20cを印字することができる。この場合には、識別情報付与領域データによって識別情報を付与する位置を知ることができるものの、識別ドットパターンデータが不明であるため、不正印刷物20cには識別情報印字部24が形成されないか、あるいは、真正の識別ドットパターンデータとは無関係に作成した識別ドットパターンデータを付与することになる。
【0134】
図15では、印刷物20cの印字部内に識別情報印字部24が正しい付与位置に形成されるものの、識別ドットパターンが正しくない。
【0135】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20cの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。画像データが不正に得られた印刷物20cは、識別情報付与領域に形成される識別情報印字部24の識別情報は正しくないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0136】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサから検出される判定用検出波形信号は検証用計算波形信号と不一致となり、不正と判定される。
【0137】
図16を用いて第4の判定例を説明する。第4の判定例は、画像データと識別情報付与領域データと検証用計算波形信号が不正に入手され、これに基づいて形成された印刷物を判定する例である。
【0138】
画像データが不正に入手された場合には、この不正に入手された画像データに基づいて印刷物20dを印字することができる。この場合には、識別情報付与領域データによって識別情報を付与する位置を知ることができるものの、検証用計算波形信号によっては識別ドットパターンデータが不明であるため、不正印刷物20cには識別情報印字部24が形成されないか、あるいは、真正の識別ドットパターンデータとは無関係に作成した識別ドットパターンデータを付与することになる。
【0139】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20dの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。複写によって不正に得られた印刷物20dは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないか、無関係な識別ドットパターンによる識別情報が付与されることになる。そのため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0140】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサから検出される判定用検出波形信号は検証用計算波形信号と不一致となり、不正と判定される。
【0141】
図17を用いて第5の判定例を説明する。第5の判定例は、真正な利用者であっても、識別情報を保持していない場合には、不正検出される例である。
【0142】
画像データを有する場合には、この画像データに基づいて印刷物20eを印字することができる。ここで、識別情報を保持していない場合には、印刷物20eには識別情報印字部24が形成されない。
【0143】
判定側では、識別情報付与領域データに基づいて、不正印刷物20eの識別情報付与領域を磁気センサで走査する。印刷物20eは、識別情報付与領域に識別情報印字部24が形成されないため、磁気センサからは判定用検出波形信号を取得することはできない。
【0144】
検証用計算波形信号と判定用検出波形信号とを照合すると、磁気センサからは判定用検出波形信号が検出されていないため、結果的に不一致となり、不正と判定される。
【0145】
上記した各例では、識別ドットパターンを付与する印字部を単一色で印字する例を示したが、多色で印字してもよい。図18は、識別ドットパターンを多色で印字する場合の一例である。ここでは、イエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの各色によって識別ドットパターンを印字する例を示している。
【0146】
図18(a)は、識別ドットパターンを左方からイエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの各色でストライプを形成する例を示している。これらの各色のストライプを、磁性インクドットパターンと非磁性インクドットパターンとに分け、磁性インクドットパターンについては磁性インクで印字し、非磁性インクドットパターンについては非磁性インクで印字する。
【0147】
図18(b)はイエローの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(c)はイエローの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンである。同様に、図18(d)はマゼンタの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(e)はマゼンタの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンであり、図18(f)はシアンの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(g)はシアンの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンであり、図18(h)はブラックの磁性インクで印字を行う磁性インクドットパターンであり、図18(i)はブラックの非磁性インクで印字を行う非磁性インクドットパターンである。
【0148】
ここでは、各色の印字部がそれぞれストライプ状に形成されているが、これに限らず、各色の印字部がランダムに分布する場合についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、紙等の印刷用紙に印字する印刷物に限らず、樹脂や金属等の各種の材料の面に画像データを印字して形成される印刷物に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の識別情報によるセキュリティ管理の概要を説明するための図である。
【図3】本発明の作成データの作成を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の作成データの作成を説明するための説明図である。
【図5】本発明の磁気ドットパターンの作成を説明するための図である。
【図6】本発明のドット密度の設定を説明するための図である。
【図7】本発明の識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の識別ドットパターンによる識別情報の印字について説明するための説明図である。
【図9】本発明の識別情報の判定を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の識別情報の判定を説明するための説明図である。
【図11】本発明の識別情報の判定に用いるしきい値の設定を説明するための図である。
【図12】本発明のデータ作成と判定との関係を示す図である。
【図13】本発明の第1の判定例を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の判定例を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の判定例を説明するための図である。
【図16】本発明の第4の判定例を説明するための図である。
【図17】本発明の第5の判定例を説明するための図である。
【図18】本発明の識別ドットパターンを多色で印字する場合の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0151】
10…画像データ
11…作成データ
12…印刷物情報
13…識別情報付与領域データ
14…識別ドットパターンデータ
14a…磁性インクドットパターン
14b…非磁性インクドットパターン
15…検証用計算波形信号
16…ビットマップデータ
17…色データ
20…印刷物
21…印字部
22…候補領域
23…識別情報付与領域
24…識別情報印字部
25…判定用検出波形信号
30…磁気センサ
40…ランダム情報
41…ドット密度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
印刷物の印字部中に少なくとも一つの識別情報付与領域を設定し、当該識別情報付与領域に前記識別ドットパターンを印字して付与し、印刷物を識別する識別情報とすることを特徴とする、印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項2】
前記磁性インクドットパターンは、
前記識別ドットパターンが備える全ドット数にドット密度を乗算することによってドット数を定め、
前記ドット数のドットの配置位置を印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることを特徴とする、請求項1に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項3】
前記識別情報付与領域は単一色で印字する印字部であり、当該色について前記識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項4】
前記識別情報付与領域は多色で印字する印字部であり、前記多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項5】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に、磁性インクと非磁性インクによって前記識別ドットパターンを印字することによって、印刷物を識別する識別情報を付与したことを特徴とする、識別情報を付与した印刷物。
【請求項6】
前記磁性インクドットパターンにおいて、
ドット数は、前記識別情報付与領域が備える全ドット数にドット密度を乗算して得られる個数であり、
前記識別情報付与領域内に分散させるドットの配置位置は、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることを特徴とする、請求項5に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項7】
前記識別情報付与領域は単一色で印字する印字部であり、当該色について前記識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項5又は6に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項8】
前記識別情報付与領域は多色で印字する印字部であり、前記多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項5又は6に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項9】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
前記識別ドットパターンを、印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に印字して識別情報を付与した印刷物を形成する工程と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算によって得られる検証用計算波形信号と、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む作成データを形成する工程と、
前記作成データに含まれる識別情報付与領域データに基づいて印刷物上の検出位置を特定し、当該検出位置において磁気的検出を行って判定用検出波形信号を読み取る工程と、
前記作成データに含まれる検証用計算波形信号と、前記工程で検出した判定用検出波形信号とを波形比較する工程と、
前記波形比較の比較結果に基づいて前記識別情報の真否を判定する工程とを備え、
前記識別情報の真否の判定結果に基づいて印刷物の真否を判定することを特徴とする、印刷物のセキュリティ管理方法。
【請求項10】
互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、
印刷物に印刷する画像データと前記識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備えることを特徴とする、印刷データ形成装置。
【請求項11】
磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、
識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、
前記識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、当該読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、
取得した前記検証用計算波形信号と、前記検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、当該波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、当該識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備えることを特徴とする印刷物判定装置。
【請求項12】
印刷物に付与した識別情報の真否を判定することによって当該印刷物の真否を判定する印刷物のセキュリティ管理システムにおいて、
前記識別情報および当該識別情報の真否を判定するためのデータを形成する印刷データ形成装置と、前記印刷データ形成装置で形成されたデータに基づいて判定対象印刷物の真否を判定する印刷物判定装置とを備え、
前記印刷データ形成装置は、
互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、
印刷物に印刷する画像データと前記識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備え、
前記印刷物判定装置は、
磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、
識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、
前記識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、当該読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、
取得した前記検証用計算波形信号と、前記検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、当該波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、当該識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備えることを特徴とする、印刷物のセキュリティ管理システム。
【請求項1】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
印刷物の印字部中に少なくとも一つの識別情報付与領域を設定し、当該識別情報付与領域に前記識別ドットパターンを印字して付与し、印刷物を識別する識別情報とすることを特徴とする、印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項2】
前記磁性インクドットパターンは、
前記識別ドットパターンが備える全ドット数にドット密度を乗算することによってドット数を定め、
前記ドット数のドットの配置位置を印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることを特徴とする、請求項1に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項3】
前記識別情報付与領域は単一色で印字する印字部であり、当該色について前記識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項4】
前記識別情報付与領域は多色で印字する印字部であり、前記多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の印刷物への識別情報の付与方法。
【請求項5】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に、磁性インクと非磁性インクによって前記識別ドットパターンを印字することによって、印刷物を識別する識別情報を付与したことを特徴とする、識別情報を付与した印刷物。
【請求項6】
前記磁性インクドットパターンにおいて、
ドット数は、前記識別情報付与領域が備える全ドット数にドット密度を乗算して得られる個数であり、
前記識別情報付与領域内に分散させるドットの配置位置は、印刷物に固有に設定したランダム情報に基づいて定めることを特徴とする、請求項5に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項7】
前記識別情報付与領域は単一色で印字する印字部であり、当該色について前記識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項5又は6に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項8】
前記識別情報付与領域は多色で印字する印字部であり、前記多色の少なくとも一色について識別ドットパターンを定めることを特徴とする、請求項5又は6に記載の識別情報を付与した印刷物。
【請求項9】
互いに相補の関係にあるドットパターンを有する識別ドットパターンを有し、
一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、
他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとし、
前記識別ドットパターンを、印刷物の印字部中に設定する少なくとも一つの識別情報付与領域に印字して識別情報を付与した印刷物を形成する工程と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算によって得られる検証用計算波形信号と、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む作成データを形成する工程と、
前記作成データに含まれる識別情報付与領域データに基づいて印刷物上の検出位置を特定し、当該検出位置において磁気的検出を行って判定用検出波形信号を読み取る工程と、
前記作成データに含まれる検証用計算波形信号と、前記工程で検出した判定用検出波形信号とを波形比較する工程と、
前記波形比較の比較結果に基づいて前記識別情報の真否を判定する工程とを備え、
前記識別情報の真否の判定結果に基づいて印刷物の真否を判定することを特徴とする、印刷物のセキュリティ管理方法。
【請求項10】
互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、
印刷物に印刷する画像データと前記識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備えることを特徴とする、印刷データ形成装置。
【請求項11】
磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、
識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、
前記識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、当該読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、
取得した前記検証用計算波形信号と、前記検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、当該波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、当該識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備えることを特徴とする印刷物判定装置。
【請求項12】
印刷物に付与した識別情報の真否を判定することによって当該印刷物の真否を判定する印刷物のセキュリティ管理システムにおいて、
前記識別情報および当該識別情報の真否を判定するためのデータを形成する印刷データ形成装置と、前記印刷データ形成装置で形成されたデータに基づいて判定対象印刷物の真否を判定する印刷物判定装置とを備え、
前記印刷データ形成装置は、
互いに相補の関係にあり、一方のドットパターンを磁性インクで印字する磁性インクドットパターンとし、他方のドットパターンを非磁性インクで印字する非磁性インクドットパターンとするドットパターンを有する識別ドットパターンを形成する識別ドットパターン形成部と、
前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性から得られる検証用計算波形信号を計算により形成する検証用計算波形信号形成部と、
印刷物に印刷する画像データと前記識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンを印字する印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データとを含む印刷物情報と、検証用計算波形信号とを印刷物の作成データとして作成する作成データ形成部とを備え、
前記印刷物判定装置は、
磁気的な識別ドットパターンから成る識別情報が印字された印刷物の真否を判定する印刷物判定装置であって、
識別ドットパターンのパターンデータと、前記識別ドットパターンの印刷物上の位置を定める識別情報付与領域データと、前記識別ドットパターンを所定方向に走査した際に磁性インクドットパターンの磁性特性に基づいて計算により得られる検証用計算波形信号とを取得する取得部と、
前記識別ドットパターンの印刷物上の印字位置を定める識別情報付与領域データに基づいて判定対象印刷物上の読み取り位置を設定し、当該読み取り位置を走査して判定対象印刷物上に印字された識別ドットパターンを磁気的に検出して判定用副波形を検出する検出部と、
取得した前記検証用計算波形信号と、前記検出部で検出した判定用検出波形信号とを波形比較し、当該波形比較の比較結果に基づいて、判定対象印刷物に付与される識別情報の真否を判定し、当該識別情報の真否の判定結果に基づいて判定対象印刷物の真否を判定する判定部とを備えることを特徴とする、印刷物のセキュリティ管理システム。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図4】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図4】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−64273(P2009−64273A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231911(P2007−231911)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
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