説明

印刷物検査装置

【課題】 帳票に代表される可変情報が印刷された印刷物の検査を、予め用意された管理データ等を参照することなく可能とし、さらに検査の履歴の記録をも可能とする印刷物検査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 表裏に可変情報が印刷された印刷物15の印刷面に記録された識別コードのコードパターンをそれぞれコード読取器21a、21bで読み取り、コード取込部31にてコード情報に変換する。さらに、コード比較判定部32にて表裏のコード情報を比較し、正否を判定する。判定結果は、記憶部35に記録されるとともに、出力制御部33を介して外部に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の印刷面上に出力された識別コードを利用して印刷物の正否を判別する印刷物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトメールは既に広く用いられているが、宛先のみを変えた同一の印刷物(例えば広告)を大量に送るようなかつてのダイレクトメールではなく、近年は、宛先毎に内容が異なる印刷物からなるダイレクトメールが著しく増加している。このような印刷物としては、広告のためのものであれば個人の嗜好に合わせた内容で構成する、などの例がある。他には請求書のように、個々に記載内容が異なる帳票類があり、可変情報を印刷する特徴が発揮され特に重用されている。可変情報の印刷には「オンデマンド印刷」と呼ばれる手法が用いられる。オンデマンド印刷は、プリンタ技術を利用することにより、可変情報を必要に応じて印刷できることが特徴である。
【0003】
特に請求書のような帳票類は、専門業者が請け負い、大量かつ迅速に発行されるが、金額情報や個人情報が伴うことが通常であるため、その発行工程では厳格な工程管理が要求される。例えば、1枚の用紙の表面に個人名を含む宛先、裏面に利用明細が記載されるような場合、万が一にも表裏の不一致があってはならない。したがって、発行工程では、印刷データの管理においても、印刷装置の機構や構成においても、正確に発行されるよう諸処の対策は施されているが、さらに、想定外の障害に備え、事後に発行過程がトレースできるよう履歴を記録する仕組みが必須となっている。
【0004】
そこで、請求書など大量の帳票類を発行する工程では、バーコードなどの管理用パターンを利用して発行工程の管理や履歴管理が行われている。バーコードや2次元コードは、大量の帳票類の識別に堪える情報量を保持できる一方、読み取りが高速かつ比較的簡便であること、さらに、帳票類を発行と同じ印刷工程で形成できることが大きなメリットである。
【0005】
特許文献1は、管理用パターンを付加した帳票の検査装置および検査方法の発明であり、光学認識コードが印刷された帳票からコードパターンを取得し、予め用意された管理データと照合することにより帳票の合否を検査し、さらに検査結果を管理データと紐付けし検査履歴とする技術について述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−151513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の検査方法では、帳票から取得したコードデータと予めデータベース化された管理データとを照合するため、検査のためのデータや手順を業務ごとに前もって準備しておくことが必須となる。このような前準備は、表裏1枚のような比較的単純な構成の帳票では過大な作業負荷となっている。
【0008】
そこで、本発明は、帳票に代表される可変情報が印刷された印刷物の検査を、データベースを参照することなく可能とし、さらに検査の履歴の記録をも可能とする印刷物検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の印刷物検査装置は、
複数の図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなす印刷物の検査装置において、
前記印刷物は、コンピュータによって生成された図柄データに対応する図柄、および、前記図柄データが生成される際に前記図柄データのそれぞれに前記図柄の集合に共通して付与される識別コードに対応するコードパターンがプリンタを介して所定の媒体に出力された印刷物であって、前記コードパターンを前記図柄毎に読み取り、前記識別コードに変換するコード取込部と、前記識別コードをそれぞれ比較することにより前記組み合わせの正否を判定するコード比較判定部と、前記コード比較判定部による判定結果を記録する記憶部と、を備えたことを特徴とする。
また、前記図柄データのそれぞれは、可変情報からなる、異なる図柄データであることを特徴とする。
【0010】
また、前記媒体はシート状の用紙であって、前記印刷物は前記用紙の表裏に印刷された図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなすことを特徴とする。
なお、前記印刷物は複数の用紙に印刷された図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなすものであってもよい。
さらに、前記コードパターンは、OCR文字、バーコード、二次元コードに代表される機械読取コードパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の印刷物検査装置は、複数の印刷機による異なる図柄を組み合わせてなる印刷物を検査するにあたり、発行のための情報と照合することなく組み合わせの正否を判別するため、印刷物検査装置単独での検査および検査結果の履歴管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の印刷物検査装置を示す図
【図2】印刷物検査の態様を示す図
【図3】本発明の印刷物検査装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の印刷物検査装置を示す図である。なお、図1では、印刷物検査の説明のために画像出力装置等を含めた印刷物製造システム全体が示されており、印刷物検査装置20は、印刷物製造システム10に付帯した検査装置として表わされている。また、図1の印刷物製造システム10は、印刷物15の表裏の印刷を別体の印刷装置で行う態様で例示しており、印刷装置は、それぞれ表面プリンタ11、裏面プリンタ12として表わされている。よって、印刷物検査装置20は、印刷物製造システム10が製造する印刷物の表面と裏面の組み合わせの正否を検査することとしており、印刷物検査装置20に付帯するコード読取器21が裏面プリンタ12の後工程に置かれ、印刷された印刷物15の表裏を撮像するよう配置されている。
【0014】
なお、このような印刷物製造システム10に適した印刷装置としては、インクジェット方式、電子写真方式、感熱方式などが挙げられる。
【0015】
図2は、印刷物15の印刷面の態様を示す図である。印刷物15上には、表裏とも、印刷物を個別に識別するためのコード情報(識別コード)がコードパターン24として印刷されており、図1に示すコード読取器21が印刷物毎にコードパターン24を読み取る。
前記コード情報は、組となる図柄の集合ごとに重複することなく割当てられているため、印刷物15が表裏とも正しい組み合わせで印刷されていれば表裏とも同一のコードパターン24が印刷されることとなる。
【0016】
なお、コードパターン24は、図1に示すプリンタ制御装置13が備える識別コード生成手段により生成され、図柄14とともに表面プリンタ11および裏面プリンタ12から媒体であるシート状の用紙16に出力されたものである。
【0017】
このように、コード情報の生成は、プリンタ制御装置13が担うが、通常、プリンタ制御装置13では、印刷物作成のための印刷データは管理情報などとともに整理された状態で予め準備されているので、この管理情報をコード情報として用いれば、後工程まで一貫した生産情報の管理が可能となる。
【0018】
なお、図2ではコードパターン24をバーコードで表わしているが、このような機械読取り可能なコードパターンで、かつ、プリンタによる出力に適したものとしてはバーコード241の他に、二次元コード242、OCR文字243などがある。例えば、二次元コードは記録する情報量が多いこと、OCR文字は機械読取りとともに人間が読取ることが可能、などそれぞれに特徴を持ち、用途により使い分けられる。
このように、コードパターンには種々のものがあり、さらに、例えばバーコードであればNW−7、CODE39など、また、OCR文字であればOCR−A、OCR−Bなどのように細分化され規格化されており、それぞれの規格でコード体系を形成している。
【0019】
図3は、本発明の印刷物検査装置の機能ブロック図である。
本発明の印刷物検査装置20は、コード取込部31、コード比較判定部32、出力制御部33、伝送制御部34、記憶部35などデータ処理にかかわる各部と、これらに付帯する入出力機器で構成されている。
【0020】
コード取込部31は、同取込部31に付帯するコード読取器21から印刷物15の印刷面のコードパターンを取り込み、コード情報に変換してコード比較判定部32に送信する。なお、コード読取器21は表面用のコード読取器21aと裏面用のコード読取器21bからなり、したがってコード取込部31では2つのコード情報が生成される。
コード比較判定部32は、取り込まれた2つのコード情報から、両者を比較し、表裏のコード情報が一致であれば「正」、不一致であれば「否」の判別情報を出力制御部33に送信する。
【0021】
出力制御部33は、コード情報と判別情報を組とする検査結果として記憶部35に格納する。さらに、印刷物製造システム10が不良なった印刷物を排除するための排出機構を備えているのであれば、出力制御部33は同排出機構を駆動するための信号を生成する。
出力制御部33には、印刷物15の検査結果の履歴が蓄積されるので、以降、随時参照することが可能となる。
これら印刷物15の検査にかかわるデータ処理や操作者との情報の授受は管理部30が実行する。端末38は操作者との情報の授受のための付帯機器である。
【0022】
このように、本発明の印刷物検査装置20によれば、コード読取器21で読み取ったコード情報をプリンタ制御装置13のコード情報と照合することなく印刷物15の検査が可能となる。したがって、印刷物15は、図柄14のそれぞれが可変情報からなるような異なる図柄の組み合わせのであってもよい。
また、上記説明では、印刷物15が別体の印刷装置で用紙の表裏に印刷が行われる態様を例としたが、印刷物15は複数の用紙に印刷されたものの組み合わせであってもよい。
【0023】
一方、出力制御部33で生成されたコード情報と判別情報を利用すれば、プリンタ制御装置13は不良となった印刷物の再製作が可能となり好都合である。このためには、プリンタ制御装置13と印刷物検査装置20を結ぶ伝送手段18を設け、伝送制御部34を介して前記情報を伝達すればよい。
【0024】
検査の記録は検査装置20の記憶部35に格納してもよいが、伝送手段によりプリンタ制御装置13に送致し格納することもできる。この場合、プリンタ制御装置13は、検査結果を元に再発行を行うことができ好都合である。
【符号の説明】
【0025】
10 印刷物製造システム
11 表面プリンタ
12 裏面プリンタ
13 プリンタ制御装置
14 図柄
15 印刷物
20 印刷物検査装置
21 コード読取器
24 コードパターン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなす印刷物の検査装置において、
前記印刷物は、コンピュータによって生成された図柄データに対応する図柄、および、前記図柄データが生成される際に前記図柄データのそれぞれに前記集合に共通して付与される識別コードに対応するコードパターンがプリンタを介して所定の媒体に出力された印刷物であって、
前記コードパターンを前記図柄毎に読み取り、前記識別コードに変換するコード取込部と、
前記識別コードをそれぞれ比較することにより前記組み合わせの正否を判定するコード比較判定部と、
前記コード比較判定部による判定結果を記録する記憶部と、
を備えたことを特徴とする印刷物検査装置。
【請求項2】
前記図柄データのそれぞれは、可変情報からなる、異なる図柄データであることを特徴とする請求項1記載の印刷物検査装置。
【請求項3】
前記媒体はシート状の用紙であって、前記印刷物は前記用紙の表裏に印刷された図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなすことを特徴とする請求項1または2記載の印刷物検査装置。
【請求項4】
前記媒体はシート状の用紙であって、前記印刷物は複数の用紙に印刷された図柄の組み合わせによる集合をもって一つの組をなすことを特徴とする請求項1または2記載の印刷物検査装置。
【請求項5】
前記コードパターンは、OCR文字、バーコード、二次元コードに代表される機械読取コードパターンであることを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の印刷物検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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