説明

印刷物検査装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、印刷中の印刷物の品質をインラインで検査する印刷物検査装置に係り、特にその検出結果の表示の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、印刷物の印刷欠陥(油汚れ、裏うつり、こすれ、ヒッキ、ダブリ、濃度むら、見当ずれ、色調不良、しわ等)の有無をインラインで検査するために、種々の印刷物検査装置が開発されている。このような装置の従来として、先に出願した特願昭60−257797号に記載の印刷品質検査装置がある。この装置では、走行中の印刷物に照明光が照射され、その反射光から図5(a)に示すような印刷物の絵柄情報が1ライン毎に読取られる。このライン毎の絵柄情報が基準情報と比較され、印刷欠陥が検出される。そして、図5(b)に示すように絵柄の画像情報を表示部上に表示し、その上で印刷欠陥の発生位置に所定のマーク、例えば、「*」を表示することにより、印刷欠陥の発生を作業員に警告する。
【0003】また、別の従来例では、図6(a)に示すように1検査対象(版胴の1回転により印刷される絵柄)を複数の領域、ここではリボン位置毎に分割して、同図(b)に示すように各領域に対する欠陥発生位置をテーブルの形で表示する例もある。この例では、領域Bに印刷欠陥が発生したことを示す。
【0004】しかしながら、図5の表示では、多面付印刷の場合、欠陥発生位置のリボン位置、カット位置、頁がわかりにくい欠点がある。また、図6に示す表示例は、リボン位置はわかるものの、カット位置、頁がわかりにくい欠点がある。そのため、このような表示方法では、検査対象印刷物が図7(a)に示すような多頁の折丁の場合、同図(b)に示す折丁のどの頁に印刷欠陥が発生したのかわからず、折丁の印刷物から印刷欠陥のある頁を探すことが困難であった。図7は1検査対象印刷物が実線で示すように3リボン×4カットに断裁され、各断裁片が半分に折られて折丁を形成する様子を示す。同図(a)のA〜Xは頁割付を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した事情に対処すべくなされたもので、その目的は多面付の印刷物の印刷欠陥を検出し、欠陥位置を明確に表示できる印刷物検査装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による1つの印刷物検査装置は、複数頁が多面付されている絵柄を連続的に印刷している印刷機に取り付けられる印刷物検査装置において、印刷中の各絵柄を読取る手段と、所望の絵柄が印刷された時に前記読取り手段により読み取られた絵柄情報を基準情報として記憶する手段と、前記読取り手段から出力される各絵柄情報を前記基準情報と比較して絵柄内の印刷欠陥の位置を検出する手段と、印刷物の頁割付情報に応じて前記検出手段が検出した位置情報を印刷物の頁情報に変換する手段と、前記変換手段の出力に応じて印刷欠陥の検出頁情報を表示する手段とを具備するものである。
【0007】本発明による他つの印刷物検査装置は、数頁が多面付されている絵柄を連続的に印刷し、印刷物を折丁として排出する印刷機に取り付けられる印刷物検査装置において、印刷中の各絵柄を読取る手段と、所望の絵柄が印刷された時に前記読取り手段により読み取られた絵柄情報を基準情報として記憶する手段と、前記読取り手段から出力される各絵柄情報を前記基準情報と比較して絵柄内の印刷欠陥の位置を検出する手段と、印刷物の頁割付情報に応じて前記検出手段が検出した位置情報を印刷物のリボン位置情報、カット位置情報に変換する手段と、前記変換手段の出力に応じて印刷欠陥の検出リボン位置情報、カット位置情報を2次元的に表示する手段とを具備するものである。
【0008】
【作用】本発明による印刷物検査装置によれば、多面付印刷物の印刷欠陥の発生位置を頁割付の単位毎に明確に表示でき、その結果、多頁の折丁の検査対象物から容易に印刷欠陥の頁を探し出すことができる。
【0009】
【実施例】以下、図面を参照して本発明による印刷物検査装置の一実施例を説明する。図1は本実施例のブロック図である。本実施例は印刷後の種々の仕上げ工程をインライン化した印刷システムに適用される装置を説明する。すなわち、印刷機に折り機、裁断機がインラインで接続され、印刷、製本、包装、パレタイジング、ストレッチ包装までをインラインで一貫して行なう全自動システムを対象として説明する。このようなシステムでは、例えば2upの本が無線綴じ後、スプリッターにより2分割され、2ラインの三方断裁機、ジャケット機、帯掛け機ラインに導入され、包装される。その後、2ライン上の本は1ラインに集められ、パレタイジングされる。印刷品質の検査は印刷物が印刷機から折り機に受け渡される際に行なわれる。そのため、印刷機の排出部に画像読取り装置11が設けられる。画像読取り装置11は検査対象印刷物10に照明光を照射し、反射光を検出することにより印刷物10の絵柄情報を読取る。一例として、光源としてはキセノンランプが、検出器としてはCCD等のラインセンサが用いられる。絵柄情報はA/D変換器12を介して各画素毎のディジタル信号とされ現在値メモリ14に逐次格納される。
【0010】ここで、印刷機からは連続紙が排出されるが、絵柄は版胴の1回転により印刷される絵柄10a毎に印刷されている。そのため、この絵柄10aが1検査単位とされ、現在値メモリ14はこの1単位分の絵柄情報を順次更新的に記憶する。画像読取り装置11、A/D変換器12、現在値メモリ14にはタイミングコントローラ13が接続され、動作タイミングがコントローラ13により制御される。
【0011】現在値メモリ14の内容はタイミングコントローラ13の制御の下で所定のタイミングで基準値メモリ15に転送され、記憶される。このように基準値メモリ15は特定のタイミングで読み取られた1単位の絵柄を基準情報として記憶する。現在値メモリ14、基準値メモリ15の出力が比較器16に供給され、画像読みより装置11により順次読み取られた絵柄情報が基準情報と比較される。比較器16は比較結果(両者の差)を中央処理ユニット(CPU)17に供給する。CPU17にはインターフェース(I/F)18、警報装置19、表示装置20、タイミングコントローラ13が接続される。
【0012】I/F18は検査対象印刷物に関するデータをCPU17に入力するためのものである。このデータとは、版胴円周長、紙幅、頁割付、リボン数、カット数、製本方式(折り方)等に関するデータである。リボン数とは印刷物を幅方向に分割した領域の数であり、カット数とは版胴一回転分の印刷物を縦(長さ)方向に分割した領域の数である。データ入力はキーボード等からの手入力に限らず、印刷機で扱う品目のデータをホストコンピュータで一括管理している場合は、外部からの通信によって行なってもよい。リボン数、カット数、折り方に関するデータに基づいてCPU17は絵柄情報の各画素がリボン方向、カット方向に断裁されたどの印刷物に含まれるか、あるいは何頁に割り付けられているかを知ることができる。
【0013】次に、本実施例の動作を説明する。印刷機の稼働状態が安定し、正常な印刷物を生産していると判断したときに、作業員がCPU17に基準取り込み指令を与える。CPU17はこれに応答して、タイミングコントローラ13を制御し、現在値メモリ14に記憶されている絵柄情報を基準値メモリ15に転送させ、基準絵柄情報として記憶させる。基準値メモリ15のデータは次の基準取り込み指令がCPU17に与えられるまで保持される。この後、各印刷絵柄が基準情報と比較される。CPU17は比較結果に基づいて各絵柄と基準絵柄との差が所定値以上の場合に印刷欠陥があると判断し、印刷欠陥の発生位置を表示装置20に表示するとともに、警報装置19を駆動して欠陥の発生を警報する。
【0014】ここで、画像読取り装置11は画素毎の絵柄情報を読取るが、本実施例では、検査対象印刷物に関するデータに応じて、リボン位置、およびカット位置の単位、または頁割付の単位で欠陥の発生位置(画素)が表示装置20上に表示される。
【0015】説明の簡略化のために図2(a)に示すように検査対象印刷物は36個の画素のマトリクスとして画像読取り装置11により読み取られるとする。I/F18を介してCPU17に予め入力されている検査対象印刷物に関するデータがリボン数=2、カット数=2であるとすると、検査領域は同図(b)に示すようにA〜Dの4つの領域に分割される。すなわち、CPU17は画素1〜9は領域Aに、画素10〜18は領域Bに、画素19〜27は領域Cに、画素28〜36は領域Dに対応することを認識する。そのため、検査の結果、欠陥と判定された画素の位置データが検査対象物のリボン数、カット数に応じた領域データに変換される。例えば、CPU17が画素8のデータが異常であると検出すると、領域Aに印刷欠陥が発生したと判断し、表示装置20の画面上の領域Aに欠陥検出表示を行なうとともに、警報装置19から警報を発生する。
【0016】具体例として、検査対象印刷物が図3に示すように3リボン、4カットの印刷物である場合を以下に説明する。図3(a)に示すように、検査対象物は3×4の領域に分割でき、これが欠陥検出位置の最小単位となる。そのため、CPU17は表示装置20上に同図(b)に示すような2次元形式のテーブルを表示する。ここで、A〜Cはリボン番号、1〜4はカット番号である。図3(a)において、2つの印刷欠陥Pが検出されたとすると、CPU17は欠陥発生位置を(A,2),(C,3)と判断し、図3(b)に示すように、テーブル内の(A,2),(C,3)の位置に欠陥検出表示を行なう。ここでは、テーブル内の対応する欄を単に点灯させるだけであるが、例えば先に出願した特願昭58−217032号に記載のようにCPU17が欠陥の種類を検出できる場合は、欠陥の種類に応じたマークを欠陥発生位置に表示させてもよい。このような図3に示した表示により、欠陥の発生位置が明確に認識でき、該当する印刷物をリジェクトできる。
【0017】また、図4(a)に示すように、印刷物に頁割付がされている場合は、同図(b)に示すように頁割付に従った位置の表示部を点灯する。ここで、頁番号はリボン位置、カット位置から換算して求めてもよいし、入力データが直接頁番号を示していてもよい。この場合も、欠陥の種類によって異なる表示マークを表示してもよい。
【0018】以上説明したように、本実施例によれば、検出した印刷欠陥の位置をリボン、カット単位、または頁割付の単位で表示することにより、図7に示したような多頁の折丁の検査対象物から容易に印刷欠陥の頁を探し出すことができる。
【0019】本発明は上述した実施例に限定されず、種々変形して実施可能である。例えば、上述の説明では、単に印刷欠陥の発生位置を表示するだけであるが、検出した印刷欠陥の頁をマーキング、あるいは自動的にリジェクトする等してもよい。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、多面付印刷物の印刷欠陥の発生位置を頁割付の単位毎に表示することにより、検出した欠陥位置を明確に表示でき、その結果、多頁の折丁の検査対象物から容易に印刷欠陥の頁を探し出すことができる印刷物検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による印刷物検査装置の第1実施例の構成を示すブロック図。
【図2】リボン数、カット数に応じた検査対象物の領域分割を示す図。
【図3】領域分割の具体例を示す図。
【図4】頁割付に応じた検査対象物の領域分割を示す図。
【図5】従来例における印刷欠陥の表示の一例を示す図。
【図6】従来例における印刷欠陥の表示の他の例を示す図。
【図7】多面付の折丁を説明する図。
【符号の説明】
10…検査対象印刷物、11…画像読取り装置、12…A/D変換器、13…タイミングコントローラ、14…現在値メモリ、15…基準値メモリ、16…比較器、17…CPU、18…I/F、19…警報装置、20…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数頁が多面付されている絵柄を連続的印刷している印刷機に取り付けられる印刷物検査装置において、印刷中の各絵柄を読取る手段と、所望の絵柄が印刷された時に前記読取り手段により読み取られた絵柄情報を基準情報として記憶する手段と、前記読取り手段から出力される各絵柄情報を前記基準情報と比較して絵柄内の印刷欠陥の位置を検出する手段と、印刷物の頁割付情報に応じて前記検出手段が検出した位置情報を印刷物の頁情報に変換する手段と、前記変換手段の出力に応じて印刷欠陥の検出頁情報を表示する手段とを具備する印刷物検査装置。
【請求項2】 複数頁が多面付されている絵柄を連続的印刷し、印刷物を折丁として排出する印刷機に取り付けられる印刷物検査装置において、印刷中の各絵柄を読取る手段と、所望の絵柄が印刷された時に前記読取り手段により読み取られた絵柄情報を基準情報として記憶する手段と、前記読取り手段から出力される各絵柄情報を前記基準情報と比較して絵柄内の印刷欠陥の位置を検出する手段と、印刷物の頁割付情報に応じて前記検出手段が検出した位置情報を印刷物のリボン位置情報、カット位置情報に変換する手段と、前記変換手段の出力に応じて印刷欠陥の検出リボン位置情報、カット位置情報を2次元的に表示する手段とを具備する印刷物検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【特許番号】第2848064号
【登録日】平成10年(1998)11月6日
【発行日】平成11年(1999)1月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−316212
【出願日】平成3年(1991)11月29日
【公開番号】特開平5−147201
【公開日】平成5年(1993)6月15日
【審査請求日】平成7年(1995)6月28日
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【参考文献】
【文献】特開 昭50−36214(JP,A)