説明

印刷物製造方法及び印刷物製造装置並びに印刷物

【課題】開口部を形成する場合でも、光漏れや印刷層の破損を防止できる印刷物製造方法を提供する。
【解決手段】基材107に印刷層109を設ける工程と、基材及び印刷層を貫通する開口部111を設ける工程とを含む。印刷層に接して、開口部を設ける際に印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層108を全面的に設ける工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物製造方法及び印刷物製造装置並びに印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載用の計器板は、基材上に所定のパターンで遮光部等の印刷層を成膜することで形成されている。この種の印刷物においては、用途によっては貫通孔等の開口部が設けられている。この開口部は、例えば型抜き等により形成されるが、印刷層の材質や厚さによっては型抜き時に印刷層に破損が生じる可能性がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、開口部の形成領域については、印刷層を薄く形成することにより、打ち抜き時の印刷層に与えるダメージを小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4127239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
印刷層を薄く形成する領域は、型よりも大きくする必要があるため、打ち抜き後の印刷層には、薄い領域が残存することになり、この部分から光漏れが生じる可能性がある。
また、他の領域よりも薄く形成した印刷層であっても、印刷層の材質や開口部の形成領域の厚さによっては、破損の発生を確実に抑えられるとは言い難い。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、開口部を形成する場合でも、光漏れや印刷層の破損を防止できる印刷物製造方法及び印刷物製造装置並びに印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の印刷物製造方法は、基材に印刷層を設ける工程と、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部を設ける工程とを含む印刷物製造方法であって、前記印刷層に接して、前記開口部を設ける際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層を全面的に設ける工程を有することを特徴とするものである。
【0008】
従って、本発明の印刷物製造方法では、開口部を設ける際に加わる衝撃の一部を緩衝層が負担して、印刷層への衝撃を緩和することにより、印刷層の破損を防止することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、上記の緩衝層を前記印刷層よりも小さい硬度で設ける手順を好適に採用できる。
これにより、本発明では、緩衝層が印刷層よりも大きく変形して、開口部を設ける際に印刷層に加わる衝撃の一部を効果的に負担することができる。
この構成では、例えば、前記印刷層を鉛筆硬度H以上で設け、前記緩衝層を鉛筆硬度H未満で設けることが好ましい。
【0010】
また、本発明では、前記緩衝層を前記印刷層に対して、前記開口部を形成する際の加工開始側とは逆側に接して設ける構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、印刷層に加工開始側から掛かる衝撃が逆側に位置する緩衝層にも加わり、当該衝撃を負担することになるため、印刷層に加わる衝撃を軽減できる。
【0011】
なお、緩衝層を印刷層に対して加工開始側に接して設ける構成を採った場合にも、打ち抜き工具が印刷層に達する前に緩衝層と接触して衝撃を吸収・負担できるため、印刷層に加わる衝撃を緩和することができる。
【0012】
そして、本発明の印刷物製造装置は、基材に印刷層を設ける成膜装置を有し、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部が設けられる印刷物を製造する装置であって、前記開口部が設けられる際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層を、前記成膜装置を制御して前記印刷層に接して全面的に設けさせる制御装置を備えることを特徴とするものである。
【0013】
従って、本発明の印刷物製造装置では、開口部を設ける際に加わる衝撃の一部を緩衝層が負担して、印刷層への衝撃を緩和することにより、印刷層の破損を防止することが可能になる。
【0014】
また、本発明では、前記制御装置が、前記緩衝層を前記印刷層よりも小さい硬度で設けさせる構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、緩衝層が印刷層よりも大きく変形して、開口部を設ける際に印刷層に加わる衝撃の一部を効果的に負担することができる。
この場合には、例えば、前記印刷層を鉛筆硬度H以上で設け、前記緩衝層を鉛筆硬度H未満で設けることが好ましい。
【0015】
また、本発明では、前記制御装置が、前記緩衝層を前記印刷層に対して、前記開口部を形成する際の加工開始側とは逆側に接して設けさせる構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、印刷層に加工開始側から掛かる衝撃が逆側に位置する緩衝層にも加わり、当該衝撃を負担することになるため、印刷層に加わる衝撃を軽減できる。
なお、緩衝層を印刷層に対して加工開始側に接して設ける構成を採った場合にも、打ち抜き工具が印刷層に達する前に緩衝層と接触して衝撃を吸収・負担できるため、印刷層に加わる衝撃を緩和することができる。
【0016】
一方、本発明の印刷物は、基材に印刷層が設けられ、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部が設けられる印刷物であって、前記印刷層に接して、前記開口部が設けられる際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層が全面的に設けられることを特徴とするものである。
従って、本発明の印刷物では、開口部を設ける際に加わる衝撃の一部を緩衝層が負担して、印刷層への衝撃を緩和することにより、印刷層の破損を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、印刷装置の概略構成図である。
【図2】キャリッジの概略構成を示す側面図である。
【図3】キャリッジの概略構成を示す底面図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図5】光照射手段の説明図である。
【図6】本発明に係る印刷物の正面図である。
【図7】印刷物の部分断面図である。
【図8】印刷物の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の印刷物製造方法及び印刷物製造装置並びに印刷物の実施の形態を、図1ないし図8を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
まず、本発明に係る印刷物を製造する際に用いられる印刷物製造装置である印刷装置について説明する。
図1は、本発明の印刷装置の概略構成図である。印刷装置(印刷物製造装置)1は、支持体(基材)P上に光硬化型インクを吐出した上で、吐出した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させ、支持体P上に文字・数字や各種の絵柄などを描画するものである。
【0020】
この印刷装置1は、支持体Pを載置する基台2と、基台2上の支持体Pを図1中のX方向に搬送する搬送装置3と、光硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド(図示せず)と、該液滴吐出ヘッドを複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4を、X方向と直交するY方向に移動させる送り装置5と、を具備して構成されている。なお、本実施形態では、搬送装置3及び送り装置5により、支持体Pとキャリッジ4とを、X方向及びY方向にそれぞれ相対移動させる移動装置が構成されている。
【0021】
搬送装置3は、基台2上に設けられたワークステージ6及びステージ移動装置7を備えて構成されたものである。ワークステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、製造工程において印刷装置1の上流側に配置された搬送装置(図示せず)から搬送される支持体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御装置8から入力される、ワークステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0022】
図2及び図3は、キャリッジ4の説明図であり、図2は側断面図、図3は底面図である。図に示すように、キャリッジ4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、底面4a側に複数(本実施形態では4つ)の液滴吐出ヘッド(成膜装置)9を、Y方向に沿って配列させた状態で保持したものである。
【0023】
これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、後述するように多数(複数)のノズルを備えたもので、制御装置8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、光硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した光硬化型インク、および透明色(W)の光硬化型インクをそれぞれ吐出するものであり、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図1に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0024】
Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の光硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0025】
同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の光硬化型インクを充填した第2タンク11C、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の光硬化型インクを充填した第3タンク11M、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の光硬化型インクを充填した第4タンク11K、W(透明または白、ここでは透明とする)に対応する液滴吐出ヘッド9WにはW(透明)用の光硬化型インクを充填した第5タンク11W、がそれぞれ接続されている。このような構成によって各液滴吐出ヘッド9には、対応する光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0026】
これら液滴吐出ヘッド9Y、9C、9M、9K、9W、チューブ(配管)10、タンク11Y、11C、11M、11K、11Wには、各色(Y、C、M、K、W)の系それぞれに、ヒーター等の加熱手段(図示せず)が設けられている。すなわち、それぞれの色の系では、液滴吐出ヘッド9、チューブ10、タンク11のうちの少なくとも一つに、光硬化型インクの粘度を低下させてその流動性を高める加熱手段が設けられており、これによって光硬化型インクは、液滴吐出ヘッド9からの吐出性が良好になるように調整されている。
【0027】
ここで、光硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような光硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0028】
図4は、液滴吐出ヘッド9の概略構成図である。図4(a)は液滴吐出ヘッド9をワークステージ6側から見た平面図、図4(b)は液滴吐出ヘッド9の部分斜視図、図4(c)は液滴吐出ヘッド9の1ノズル分の部分断面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、液滴吐出ヘッド9は、複数(例えば180個)のノズルNをY方向と交差する方向、本実施形態ではX方向に配列しており、これら複数のノズルNによってノズル列NAを形成している。なお、図では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、例えばX方向に配列したノズル列NAをY方向に複数列設けてもよい。
【0030】
また、図4(b)に示すように、チューブ10と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられたリザーバー(液溜まり)22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティー(液室)24とを備えて構成されている。ノズルプレート21の表面(底面)は、複数のノズルNを形成したノズル面21aとなっている。振動板20上には、各ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例えばピエゾ素子からなっている。
【0031】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される光硬化型インクが充填されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに対して1対1に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバー22から光硬化型インクが導入されるようになっている。
【0032】
また、図4(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したもので、一対の電極26に駆動信号が印加されることにより、圧電材料25が収縮するように構成されたものである。したがって、このような圧電素子PZが配置されている振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようになっている。
【0033】
よって、キャビティー24内に増大した容積分に相当する光硬化型インクが、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへの駆動信号の印加が停止すると、圧電素子PZと振動板20とは共に元の形状に戻り、キャビティー24も元の容積に戻る。これにより、キャビティー24内の光硬化型インクの圧力が上昇し、ノズルNから支持体Pに向けて光硬化型インクの液滴Lが吐出されるようになっている。
【0034】
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド9は、そのノズルプレート21の底面、すなわちノズルNの形成面(ノズル面)NSが、図2に示すようにキャリッジ4の底面4aより下側となるように、該底面4aから突出して配置されている。
【0035】
また、キャリッジ4には、図2及び図3に示すように、配列する複数(図では5つ)の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に光照射手段12が隣り合って配置されている。すなわち、光照射手段12は、Y方向に配列された液滴吐出ヘッド9の配列方向に沿って、その両側にそれぞれ配置されている。
【0036】
これら光照射手段12は、光硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、光照射手段12は、光硬化型インクの重合を促進する波長の光を射出可能であればLEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を光照射手段12として用いることができる。例えば、光硬化型インクとして紫外線硬化型のインクを用いる場合には、紫外線を射出する各種光源を用いることができる。
【0037】
本実施形態のLEDからなる光照射手段12は、照射する光が、液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの、最適硬化波長を含む波長帯域を有する光となっている。つまり、前述したように各光硬化型インクは、その成分(配合)等によって最適硬化波長が異なることが想定されるが、上述のような光を照射することにより、各光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0038】
図5は、光照射手段12の説明図である。光照射手段12にあっては、例えば図5(a)に示すような市販のLEDを光源13aが用いられるが、図5(b)に示すように、素子胴体側面を長方形や正方形などの多角形に加工した光源13bがより好適に用いられる。すなわち、この光源13bは、図5(c)に示すように縦横に整列させられて、矩形状の大きな一つの光照射源(光照射手段12)としてキャリッジ4に取り付けられ、用いられる。その際、各光源13bが図5(b)に示したように平面視長方形または正方形などに形成されていることにより、これを縦横に整列させた際に高密度で配置されるようになっている。したがって、形成した光照射源(光照射手段12)は、その光量が十分に多くなっている。
【0039】
また、光照射手段12は、図5(c)に示したように、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル列NAの長さに対応して、これとほぼ同じ長さとなるように光源13bを配列して形成されている。そして、これら光源13bは、隣り合う一対の光源13b間15が、複数のノズルNの、隣り合う一対のノズルN間16に対応するようにして、配置されている。
このような構成によって光照射手段12は、ノズルNから吐出された光硬化型インクに対して、光源13bからの光を確実に照射できるようになっている。すなわち、光源13b間15と対応する位置にノズルNがある場合に、このノズルNから吐出されたインクに対して光源13bからの光が十分に照射されない、といった不都合が回避されている。
【0040】
なお、図5(c)では、ノズルNと光源13bとが1:1で配置されているように記載しているが、実際にはノズルNは光源13bに比べて格段に小さく、したがって複数のノズルに対して1つの光源13bが対応するようになっている。その場合にも、前述したように、隣り合う一対の光源13b間15が、隣り合う一対のノズルN間16に対応するように構成される。
【0041】
また、図5(c)では、ノズル列NAに沿う光源13bの列を2列形成しているが、1列でもよく、3列以上でもよいのはもちろんである。さらに、図5(c)では光照射手段12を単一の光源群として示したが、例えば図3に示したように、複数の光源群によって一つの光照射手段12を構成するようにしてもよい。
【0042】
そして、このような光源13bからなる光照射手段12は、図5(b)に示した光源13bの発光面14が、図2に示したようにキャリッジ4の底面4aとほぼ面一になるようにキャリッジ4に取り付けられている。これにより、光照射手段12はその発光面が、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル面より高い位置となっている。したがって、液滴吐出ヘッド9では、光照射手段12から照射された光がノズルNに照射され、ノズルN内のインクが硬化させられてノズル詰まりを生じる、といった不都合が確実に防止されている。
【0043】
また、キャリッジ4には、光照射手段12の近傍に、冷却手段(図示せず)が設けられている。冷却手段は、冷却水を循環させる方式のものや、ペルティエ素子(ペルチェ素子)からなるものなど、公知のものが用いられる。このような冷却手段が光照射手段12の近傍に配置されることにより、LEDからなる光源13b(13a)が自身や周辺の熱によって劣化し、寿命が低下するといったことが抑制され、光照射手段12の長寿命化が図られる。
【0044】
図1に戻って、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向及びXY平面に直交するZ方向に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、制御装置8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向に移動させるとともに、Z方向にも移動させるようになっている。
【0045】
制御装置8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御装置8は、支持体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ワークステージ6の移動による支持体Pの位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、支持体P上の所定の位置に光硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御装置8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、光照射手段12に光照射動作を行わせるようにもなっている。
印刷装置1は、以上のような構成となっている。
【0046】
続いて、上記の印刷装置1を用いて製造される印刷物について、図6を参照して説明する。
本実施形態では、車両用計器の計器板(メータ文字盤)を印刷物として例示する。
この印刷物100には、透明透光部103と、着色透光部104、105と、遮光部106、開口部111とを有する意匠が構成されている。
【0047】
透明透光部103は、光を透過する透明の部位であり、目盛りや文字を構成している。着色透光部104は、例えば、光を透過する青色の部位であり、方向指示器の指示方向を表示する表示部である。着色透光部105は、例えば、光を透過する黄色の部位であり、シフトポジションを示す表示部である。遮光部106は、光を透過しない黒色の部位であり、目盛りや文字の背景部である。開口部111は、印刷物100を貫通して形成されており、メータ指示針を支持して回転する回転軸(図示せず)が挿通される箇所である。
【0048】
計器板100は、図7の拡大断面図に示すように、透明性の樹脂基板(基材)107と、この樹脂基板107の裏面107bに設けられた透明色の緩衝層108と、緩衝層108の樹脂基板107とは逆側に設けられ着色透光部104、105及び遮光部106の色に対応した画像層(印刷層)109とを有している。
【0049】
樹脂基板107は、ポリカーボネートやPET等の透明性の樹脂により構成されている。樹脂基板107の表面側には、用途に応じて、外光により生じるつやを消すためのつや消し層が形成される。
【0050】
緩衝層108は、樹脂基板107の裏面107bの全面に、透明色の光硬化型インクを塗布することにより形成されており、紫外線照射により硬化させることにより、例えば鉛筆硬度H未満、より詳細には鉛筆硬度B〜2B程度で成膜される。
【0051】
画像層109は、着色透光部104の位置に青色の光硬化型インクを塗布して成膜された青色部109B、着色透光部105の位置に黄色の光硬化型インクを塗布して成膜された黄色部109Y、着色透光部104、105及び透明透光部103以外の領域である遮光部106の位置に黒色の光硬化型インクを塗布して成膜された黒色部109Kを有している。透明透光部103は、黒色部109Kが成膜されないことで設けられた開口により形成される。これら青色部109B、黄色部109Y、黒色部109Kは、各色の光硬化型インクを紫外線照射により硬化させることにより、例えば鉛筆硬度H以上、より詳細には鉛筆硬度2H〜H程度で成膜される。
【0052】
開口部111は、上記印刷装置1による印刷処理の後に、図示しない打ち抜き装置により、樹脂基板107、緩衝層108、画像層109を貫通するように打ち抜き形成されたものである。
【0053】
続いて、上記の印刷装置1及び打ち抜き装置を用いて、印刷物100を製造する手順について、図8を参照して説明する。
まず、図8(a)に示すように、樹脂基板107の裏面107b上に、上述した印刷装置1を用いて透明色の光硬化型インクを全面的に吐出・塗布するとともに、光照射手段12から、例えば紫外線を照射して硬化させることにより緩衝層108を成膜する。
【0054】
次に、成膜された緩衝層108上に、上述した印刷装置1を用いて、黒色、青色、黄色の光硬化型インクの所定位置への塗布・光照射を順次行うことにより、図8(b)に示すように、画像層109を成膜する。このとき、例えば、黄色、黒色の順序で吐出・硬化させると、薄い色のインク滴に対して濃い色のインク滴が滲み、滲んだ濃い色が目立つことから境界輪郭が不鮮明になるが、逆に濃い色のインクから先に吐出・硬化させると、目立つ色により予め境界輪郭を形成できるため、境界輪郭を鮮明に形成することができ、表示品質を向上させることができる。
【0055】
樹脂基板107上に緩衝層108及び画像層109を成膜すると、プレス装置等の打ち抜き装置において、開口部111形成領域と対向する位置となるように抜き型Mをセットした後に(図8(b)参照)、図8(c)に示すように、画像層109側から樹脂基板107側に抜き型Mを移動(下降)させて画像層109、緩衝層108、樹脂基板107を順次打ち抜いて開口部111を形成する。
【0056】
ここで、打ち抜き時に抜き型Mとの接触に伴って画像層109に加わる衝撃の一部は、画像層109の裏面側に設けられた緩衝層108が変形して負担することになり、画像層109に加わる衝撃が緩和される。
【0057】
(実施例)
画像層109を50μmの厚さで成膜し、緩衝層108をそれぞれ4μm、8μm、10μm、13μm、18μmの厚さで成膜した印刷物100について開口部111を形成したところ、緩衝層108を10μm、13μm、18μmの厚さで成膜した印刷物100については画像層109に欠けや割れが発生しなかったが、緩衝層108を4μm、8μmの厚さとした印刷物100の画像層109については、打ち抜いた開口部111の周辺に欠けや割れが発生した。
そのため、緩衝層108の厚さは、画像層109の厚さに対して20%以上とすることが好ましい。
【0058】
このように、本実施形態では、打ち抜き加工時に画像層109に加わる衝撃を緩衝層108が負担して、画像層109への負荷を軽減するため、開口部111を形成する場合でも、光漏れや画像層109に亀裂等の破損が生じることを防止できる。特に、本実施形態では、緩衝層108を画像層109よりも小さな硬度で設けているため、緩衝層108及び画像層109に同程度の衝撃・負荷が加わった場合でも、緩衝層108の方が画像層109よりも大きく変形することで、画像層109に加わる衝撃・負荷を効果的に軽減することが可能になる。
【0059】
また、本実施形態では、緩衝層108が樹脂基板107に全面的に設けられているため、設計変更等により開口部111の位置が変更された場合でも、変更後の位置において画像層109に加わる衝撃・負荷を効果的に軽減して破損が生じることを防止できる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、印刷装置1を用いた液滴吐出方式で緩衝層108を設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、例えばスピンコート法やディップ法、印刷法等によって設ける構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、緩衝層108を画像層109に対して打ち抜き時の加工開始側とは逆側に接して設ける構成を例示したが、これに限られず、緩衝層108を画像層109に対して打ち抜き時の加工開始側に接して設ける構成としてもよい。
この場合には、抜き型Mが画像層109に達する前に緩衝層108が接触して衝撃を吸収・負担できるため、画像層109に加わる衝撃を緩和することができ、上記実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1…印刷装置(印刷物製造装置)、 8…制御装置、 9…液滴吐出ヘッド(成膜装置)、 107…樹脂基板(基材)、 108…緩衝層、 109…画像層(印刷層)、 111…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に印刷層を設ける工程と、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部を設ける工程とを含む印刷物製造方法であって、
前記印刷層に接して、前記開口部を設ける際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層を全面的に設ける工程を有することを特徴とする印刷物製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の印刷物製造方法において、
前記緩衝層を前記印刷層よりも小さい硬度で設けることを特徴とする印刷物製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の印刷物製造方法において、
前記印刷層を鉛筆硬度H以上で設け、前記緩衝層を鉛筆硬度H未満で設けることを特徴とする印刷物製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷物製造方法において、
前記緩衝層を前記印刷層に対して、前記開口部を形成する際の加工開始側とは逆側に接して設けることを特徴とする印刷物製造方法。
【請求項5】
基材に印刷層を設ける成膜装置を有し、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部が設けられる印刷物を製造する装置であって、
前記開口部が設けられる際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層を、前記成膜装置を制御して前記印刷層に接して全面的に設けさせる制御装置を備えることを特徴とする印刷物製造装置。
【請求項6】
請求項5記載の印刷物製造装置において、
前記制御装置は、前記緩衝層を前記印刷層よりも小さい硬度で設けさせることを特徴とする印刷物製造装置。
【請求項7】
請求項6記載の印刷物製造装置において、
前記制御装置は、前記印刷層を鉛筆硬度H以上で設けさせ、前記緩衝層を鉛筆硬度H未満で設けさせることを特徴とする印刷物製造装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載の印刷物製造装置において、
前記制御装置は、前記緩衝層を前記印刷層に対して、前記開口部を形成する際の加工開始側とは逆側に接して設けさせることを特徴とする印刷物製造装置。
【請求項9】
基材に印刷層が設けられ、前記基材及び前記印刷層を貫通する開口部が設けられる印刷物であって、
前記印刷層に接して、前記開口部が設けられる際に前記印刷層に加わる衝撃を緩和する緩衝層が全面的に設けられることを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115887(P2012−115887A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269679(P2010−269679)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】