説明

印刷物

【課題】デジタルの情報の読み取りを正しい閲覧者に限って許可し、閲覧権限の無い閲覧者によるデジタルの情報の読み取りを抑止できるようにする。
【解決手段】雑誌などの紙面上に、デジタル情報を表す完結した1つの幾何学模様からなる完全体を複数に分割した不完全体15、16をそれぞれ散在させて印刷し、紙面を一定の条件で加工することにより、散在させた不完全体15、16同士が結合して、完全体が再生できるように不完全体15、16が紙面上に配置されている。紙面の点線(6)と(8)に従って紙面を山側に折り、(7)の点線{(6)と(8)の中心線}に従って紙面を谷側に折ることにより、完全体を再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物に関し、より詳しくは、デジタル情報を表す幾何学模様が印刷された印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、雑誌の読者を特定のウェッブサイトに誘導する手段の一つとして、バーコードが使われている。雑誌の読者は、携帯電話のカメラ機能等を用いてバーコードの読み取りを行い、通信機能を使って特定のウェッブサイトへ容易にアクセスすることができる。例えば、コンビニエンスストアや書店などでは、雑誌内容を確認するための試読が可能なため、雑誌を買わない人でも、雑誌内のバーコードを読み取ることが可能である。このことは、バーコードの入った広告を雑誌に掲載したスポンサーにとって、より多くの人達に広告とバーコードを見てもらえるという利点がある。しかし、雑誌を買った人にだけバーコードを読み取って欲しい場合には、非常に都合が悪くなる。一例として、商品を買った人にだけ応募資格を与える懸賞(以下、マストバイ懸賞という)の申し込みをウェッブサイトで行う場合は、雑誌の中の任意ページに懸賞用のバーコードが印刷してあると、雑誌を試読する人も容易に読み取ることができるため、雑誌を買わない読者が応募するというリスクがある。つまり、マストバイ懸賞の応募にバーコードを使用する場合は、未購入者からの応募を排除する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、顧客が任意の商品を購入する際に、特殊なPOSシステムを利用して代金を支払い、応募用バーコードの付いたレシートを受け取るといった応募システムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、飲料容器のラベルとして表面を胴巻きにしたシュリンクフィルム上に、飲料物と同じ色で応募用のバーコードを印刷しておき、顧客が飲料物を消費してはじめて応募用のバーコードを特定できる、2次元バーコードを利用したくじ付きのシュリンクラベルが提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、箱を開けなければ露出しない場所に分割バーコード(応募用バーコード)の1つを印刷し、顧客が商品を箱から取り出すことによって応募用バーコードが閲覧できるようにした包装体が提案されている。
【0006】
また、特許文献4では、バーコードをスクラッチインクで覆い隠し、顧客がコインなどでスクラッチインクを削ることでバーコードを閲覧できるようにした整理券が提案されている。
【0007】
上記各特許文献において、「レシートを受け取る」、「飲料物を消費する」、「箱から商品を取り出す」、「スクラッチインクを削る」といった行為は、商品の購入者だけに許される行為であるため、商品の未購入者からの応募を排除することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、特殊なPOSシステムが設置された店舗でしか応募資格が得られないため、全ての購入者に応募資格が行き届かない可能性があるという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2にあっては、適用商品がシュリンクフィルムに包装された物に限定されるため、雑誌に適用しようとすると、シュリンク包装を行うための手間と費用が別に発生するという問題がある。
【0010】
さらに、上記特許文献3にあっては、適用商品が箱詰めされた物に限定されるため、雑誌に適用しようとすると、箱詰めするための手間と費用が別に発生するという問題がある。ここで、上記「箱詰め」を「袋とじ」と言い換えて、応募用バーコードが印刷されているページだけを袋とじにすることも考えられるが、袋とじを作るためには特殊な製本技術(ミシン目切り、糊付け、張り合わせなど)が必要となるため、やはりそのための手間と費用が別に発生する。
【0011】
また、上記特許文献4にあっては、スクラッチインクを塗布するための特殊な印刷技術(例えば、OPニスコーティングやスクラッチインク塗布など)が必要となるため、その手間と費用が発生するという問題がある。
【0012】
このように、上記特許文献から考えると、雑誌のマストバイ懸賞に適切なバーコードの条件としては、(イ)余計な印刷/製本技術を必要とせず、(ロ)余計な外装工程をも必要としないという2つの条件を満たしつつ、未購入者からの応募が排除できることが必要となる。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、デジタルの情報の読み取りを正しい閲覧者に限って許可し、閲覧権限の無い閲覧者によるデジタルの情報の読み取りを抑止することができる印刷物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、用紙にデジタル情報を表す幾何学模様が印刷された印刷物であって、前記デジタル情報を表す完結した1つの幾何学模様を完全体とし、前記完全体を複数に分割した個々の幾何学模様を不完全体とし、1つの完全体を構成する複数の不完全体が、前記用紙のいずれかの位置に散在させて印刷され、前記複数の不完全体は、前記用紙を一定の条件で加工することによって、散在していた前記不完全体同士を結合させ、完全体が再生できる位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、用紙のいずれかの位置に、デジタル情報を表す完結した幾何学模様の完全体を複数に分割した不完全体を散在させて印刷し、その用紙の少なくとも一部を一定の条件で加工することで、散在させた不完全体同士を結合させて完全体が再生できる位置に複数の不完全体を配置したため、デジタルの情報の読み取りを正しい閲覧者に限って許可し、閲覧権限の無い閲覧者によるデジタルの情報の読み取りを抑止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる印刷物に印刷されるデジタル情報を表す幾何学模様の完全体の一例を示す図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる綴じられた複数枚の用紙からなる印刷物を開いた状態の平面図である。
【図3】図3は、図2の印刷物の底面図である。
【図4−1】図4−1は、図1の完全体を2つに分割した分割例Aを示す図である。
【図4−2】図4−2は、図1の完全体を2つに分割した分割例Bを示す図である。
【図4−3】図4−3は、図1の完全体を2つに分割した分割例Cを示す図である。
【図4−4】図4−4は、図1の完全体を2つに分割した分割例Dを示す図である。
【図5】図5は、完全体を分割して複数の不完全体とする場合の切り口の種類と分割例との関係を表す図である。
【図6−1】図6−1は、図1の完全体と切り口の位置を示す図である。
【図6−2】図6−2は、図6−1の切り口位置で分割した不完全体を示す図である。
【図6−3】図6−3は、図6−2の不完全体同士の切り口に幾何学模様の重複する領域を設けた不完全体の例を示す図である。
【図7−1】図7−1は、図4−1の分割例Aの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例A1を示す図である。
【図7−2】図7−2は、図4−1の分割例Aの面積小の不完全体を最上面に配置し、面積大の不完全体を次々頁に配置した配置例A2を示す図である。
【図8−1】図8−1は、図4−2の分割例Bの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例B1を示す図である。
【図8−2】図8−2は、図4−2の分割例Bを天地逆にして面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例B1を示す図である。
【図9−1】図9−1は、図4−3の分割例Cの面積大と面積小の不完全体を同一面上で分けて配置した配置例C1を示す図である。
【図9−2】図9−2は、図4−3の分割例Cの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例C2を示す図である。
【図10】図10は、図4−4の分割例Dの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例Dを示す図である。
【図11】図11は、図7−1の配置例A1の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例A1を示す図である。
【図12−1】図12−1は、図7−2の配置例A2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例A2を示す図である。
【図12−2】図12−2は、図7−2の配置例A2の最上面の一部を切り取る際の注意点を説明する図である。
【図13−1】図13−1は、図8−1の配置例B1の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例B1を示す図である。
【図13−2】図13−2は、図8−2の配置例B2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例B2を示す図である。
【図14−1】図14−1は、図9−1の配置例C1の不完全体の切り口とその中間線に沿って紙面を折り曲げて完全体を再生する再生例C1を示す図である。
【図14−2】図14−2は、図9−2の配置例C2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例C2を示す図である。
【図15】図15は、図10の配置例Dの最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例Dを示す図である。
【図16】図16は、図8−2の配置例B2の最上面の不完全体の切り口に設けられた重複する領域を模様や色で強調した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる印刷物の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態にかかる印刷物に印刷されるデジタル情報を表す幾何学模様の完全体の一例を示す図であり、図2は、本実施の形態にかかる綴じられた複数枚の用紙からなる印刷物を開いた状態の平面図であり、図3は、図2の印刷物の底面図である。また、図4−1は、図1の完全体を2つに分割した分割例Aを示す図であり、図4−2は、図1の完全体を2つに分割した分割例Bを示す図であり、図4−3は、図1の完全体を2つに分割した分割例Cを示す図であり、図4−4は、図1の完全体を2つに分割した分割例Dを示す図である。そして、図5は、完全体を分割して複数の不完全体とする場合の切り口の種類と分割例との関係を表す図である。また、図6−1は、図1の完全体と切り口の位置を示す図であり、図6−2は、図6−1の切り口位置で分割した不完全体を示す図であり、図6−3は、図6−2の不完全体同士の切り口に幾何学模様の重複する領域を設けた不完全体の例を示す図である。
【0019】
まず、図1には、本実施の形態にかかる印刷物に印刷されるデジタル情報を表す幾何学模様としての一例である2次元コードを示している。この2次元コードは、デジタル情報を表す1つの幾何学模様として完結しており、本明細書中ではこれを「完全体10」と称する。そして、この2次元コードを図2および図3に示すような綴じ代で綴じられた複数枚の用紙からなる雑誌20に印刷する場合について説明する。
【0020】
例えば、図2および図3に示す雑誌20の紙面上に、図1に示すような2次元コードの完全体10を印刷した懸賞広告を出すと、雑誌の試読中に携帯電話等のカメラ機能等を使って2次元コードを簡単に読み取ることができるため、雑誌20を買わなくても懸賞へ応募することが可能となる。そこで、本実施の形態にかかる印刷物の特徴は、この完全体10を複数に分割した個々の幾何学模様を「不完全体」と称し、この不完全体を雑誌20のいずれかの位置に散在させて印刷しておき、雑誌の購入者が雑誌20の一部を折り曲げたり、切り取ったりすることにより、散在させて印刷した不完全体同士を結合させ、完全体として再生できるようにした点にある。
【0021】
説明の順番としては、上記した完全体から不完全体を作り出す分割例について説明する。ここでは説明を簡略化するために、完全体を2分割して2つの不完全体を作り出した例のみをあげているが、N分割(Nは、3以上の整数)であっても本発明を適用することができる。なお、以下に示す完全体の分割例については、分割された個々の不完全体を読み取っても、完全体を特定することができない程度まで分割されているものとする。
【0022】
(2次元コードの分割例)
まず、図4−1〜図4−4に示す4つの分割例は、図1の完全体10を分割する際の切り口によって区別される。図4−1に示す分割例Aは、曲線を用いて完全体の一部を不完全体11と12に分割している点に特徴がある。図4−2に示す分割例Bは、折線を用いて完全体の一部を不完全体13と14に分割している点に特徴がある。図4−3に示す分割例Cは、1本の直線を用いて完全体の一部を不完全体15と16に分割している点に特徴がある。図4−4に示す分割例Dは、完全体の中心部分とその周辺部分とに分けて切り取り、不完全体17と18に分割している点に特徴がある。
【0023】
このように、本実施の形態の図4−1〜図4−4では、完全体を分割する切り口の線種として、一直線と折線と曲線の3種類が用いられ、また、切り口の始点と終点の位置関係が開いている場合と、閉じている場合とがある(図5参照)。つまり、分割例Aの切り口は、開いている曲線で分割され、分割例Bの切り口は、開いている折線で分割され、分割例Cの切り口は、開いている一直線で分割さている。また、分割例Dの切り口は、閉じている折線で分割されている。なお、閉じている曲線で分割されている例として、図4−4の中心部分が円状にくり抜かれている場合が考えられるが、ここでは図示していない。また、閉じている一直線では完全体を分割することができないため、図5では実施不可能としている。
【0024】
次に、図6−1では、図1に示す完全体10に対して、開いた折線による切り口を使って、2つの不完全体を分割する位置を示している。この切り口で2つの不完全体13と14に分割した例を示す図が図6−2である。ここでは、それぞれの不完全体13と14は、完全体10を正確に分割したものであるが、このような不完全体同士を結合させて完全体を再生しようとすると、切り口部分を正確に位置合わせしないと、デジタル情報の読み取れる完全体とはならない。そこで、図6−3に示すように、分割した切り口付近に2次元コード(幾何学模様)の重複する領域をそれぞれ持たせた不完全体13と14をそれぞれ作成した例を示している。これにより、不完全体13と14から完全体10を再生する場合は、不完全体同士を結合する位置関係が多少ずれたとしても隙間が開くことがなくなり、読み取りエラーが発生しにくく、位置合わせもそれ程厳密に行う必要が無いため、完全体を容易に再生することができる。
【0025】
続いて、図7−1は、図4−1の分割例Aの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例A1を示す図であり、図7−2は、図4−1の分割例Aの面積小の不完全体を最上面に配置し、面積大の不完全体を次々頁に配置した配置例A2を示す図であり、図8−1は、図4−2の分割例Bの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例B1を示す図であり、図8−2は、図4−2の分割例Bを天地逆にして面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例B1を示す図であり、図9−1は、図4−3の分割例Cの面積大と面積小の不完全体を同一面上で分けて配置した配置例C1を示す図であり、図9−2は、図4−3の分割例Cの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例C2を示す図であり、図10は、図4−4の分割例Dの面積大の不完全体を最上面に配置し、面積小の不完全体を次々頁に配置した配置例Dを示す図である。
【0026】
(2次元コードの配置例)
そこで、上記図4−1〜図4−4に示した分割例A〜Dの不完全体を図2および図3の雑誌20に印刷する時の配置例を以下説明する。上記分割例A〜Dでは、完全体を2分割したため不完全体の数も2個となる。そして、これらの完全体を構成する2個の不完全体は、同一頁上に配置したり、異なる頁に配置したりすることができる。以下の例では、図9−1に示す配置例C1が前者に該当し、残りの配置例が後者に該当する。特に、後者の場合は、雑誌20の中から任意の2面を選ぶことになる。その選び方としては、雑誌20の紙面を重ね合わせて透かした時に完全体が特定できるような2面、例えば、図3に示すような隣接する上面同士、あるいは、下面同士とする。このため、本実施の形態では、図3のPage2とPage4に1つずつ不完全体を配置することにする。
【0027】
まず、図7−1に示す配置例A1は、図4−1の分割例Aによって生成された不完全体11、12のうち、面積の大きい物をPage4、小さい物をPage2に配置したものである。そして、図7−2に示す配置例A2は、配置例A1に対してPage2とPage4の配置を入れ替えたものである。この配置例A1とA2については、Page2とPage4を重ね合わせると、閲覧者から見て、Page4が手前(上側)となり、Page2が奥(下側)になることを確認しておく(図2および図3参照)。
【0028】
続いて、図8−1に示す配置例B1は、図4−2の分割例Bによって生成された不完全体13、14のうち面積の大きい物をPage4、小さい物をPage2に配置したものである。そして、図8−2に示す配置例B2は、配置例B1の天地(図面に向かって上下方向)を逆転させるように向きを改めたものである。この配置例B1とB2については、紙面の中心寄りに配置された不完全体が、前者はPage2にあり、後者はPage4にあることを確認しておく。
【0029】
続いて、図9−1に示す配置例C1は、図4−3の分割例Cによって生成された2個の不完全体15、16を、同じPage4内に配置したものである。ここでは、不完全体13と14の切り口が互いに平行となるように、2つの不完全体13、14を配置している。これは、後述する完全体へ再生する際の用紙の加工上必要な配置となっている。そして、図9−2に示す配置例C2は、図4−3の分割例Cによって生成された不完全体15、16のうち面積の大きい物をPage4、小さい物をPage2に配置したものである。
【0030】
そして最後に、図10に示す図配置例Dは、図4−4に示す分割例Dによって生成された不完全体17、18のうち面積の大きい物をPage4、小さい物をPage2に配置したものである。
【0031】
このように、完全体を分割した不完全体同士は、雑誌20の同一紙面、あるいは隣接する紙面上に、所定の位置関係を保ちながら配置されている。以下、これらの不完全体同士の配置例に基づいて、不完全体から完全体を再生するための再生例を説明する。
【0032】
図11は、図7−1の配置例A1の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例A1を示す図であり、図12−1は、図7−2の配置例A2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例A2を示す図であり、図12−2は、図7−2の配置例A2の最上面の一部を切り取る際の注意点を説明する図であり、図13−1は、図8−1の配置例B1の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例B1を示す図であり、図13−2は、図8−2の配置例B2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例B2を示す図であり、図14−1は、図9−1の配置例C1の不完全体の切り口とその中間線に沿って紙面を折り曲げて完全体を再生する再生例C1を示す図であり、図14−2は、図9−2の配置例C2の最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例C2を示す図であり、図15は、図10の配置例Dの最上面の一部を切り取って完全体を再生する再生例Dを示す図であり、図16は、図8−2の配置例B2の最上面の不完全体の切り口に設けられた重複する領域を模様や色で強調した例を示す図である。
【0033】
(2次元コードの再生例)
図7−1に示す配置例A1の場合は、図2に示す雑誌のPage4を開いて、図11に示す再生例A1に示す点線(1)に従って領域Uを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。
【0034】
また、図7−2に示す配置例A2の場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図12−1の再生例A2に示す点線(2)に従って領域Vを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。なお、図12−2に示すように、点線(3)に従って切除すると、Page4に印刷されている不完全体11が切り離されて、完全体10が再生できないので注意を要する。
【0035】
そして、図8−1に示す配置例B1の場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図13−1の再生例B1に示す点線(4)に従って領域Wを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。
【0036】
また、図8−2に示す配置例B2の場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図13−2の再生例B2に示す点線(5)に従って領域Xを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。
【0037】
さらに、図9−1に示す配置例C1の場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図14−1の再生例C1に示す(6)と(8)の点線に沿って紙面を山側に折り、(7)の点線{(6)と(8)の中心線}に沿って紙面を谷側に折ることにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。
【0038】
また、図9−2に示す配置例C2の場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図14−2の再生例C2に示す点線(9)に沿って領域Yを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。なお、図14−2の場合は、領域Eを切除しなくとも、点線(9)を山折りにすることによって、完全体10を再生することもできる。
【0039】
続いて、図10に示す配置例Dの場合は、図2の雑誌のPage4を開いて、図15の再生例Dに示す点線(10)に沿って領域Zを切除することにより、図1に示すような完全体10を再生することができる。
【0040】
なお、上記再生例において、各点線上を正確に切除できなかった例として考えられるのは、過剰にPage4を切除した場合、つまり不完全体の一部分を切除する場合であれば、Page2に印刷されている不完全体のうち、Page4の不完全体と重複する領域が露出することになるため、なお完全体10を正しく再生することが可能である。
【0041】
しかしながら、上記とは逆に切除する部分が足りない場合、つまり領域U〜Zの一部分をPage4側に残してしまう場合は、Page2に印刷されている不完全体の一部が隠れて露出しなくなるため、再生される完全体10の一部に余白が生まれる可能性がある。これでは正しく完全体10を再生することはできない。そのため、本実施の形態では、図16に示すように、重複する領域の中心線を狙って切除するようにすれば、上記再生時における課題を解決することができる。つまり、図16に示すように重複する領域をより認識し易くするための工夫が必要となる。例えば、重複する領域の下地に色を付けて視認性を高めたり、重複する領域の中心線に模様(ここでは、図が煩雑になるので省略してある)を付けたりすることによって、重複する領域をより際立たせる印刷処理を行うことが望ましい。なお、上述した重複する領域を際立たせる印刷処理を行う場合は、2次元バーコードの幾何学模様と混同しない色や模様を用いるようにすることは勿論である。
【0042】
(2次元コードのより好ましい分割例と配置例)
そして最後に、不完全体から完全体を再生する際に行った雑誌20一部を切り取ったり、折り曲げたりする加工(破損)の程度に着目し、雑誌を買った人にだけ懸賞の応募資格を与えるマストバイ懸賞の場合の好ましい2次元コードの分割例と配置例とを説明する。
【0043】
本実施の形態では、不完全体から完全体を再生する紙面の加工方法として、「紙面を折る行為」と「紙面を切除する行為」があることを説明している。これらいずれの加工方法も雑誌の紙面を破壊する行為であるため、雑誌の所有者(購入者)しか完全体を再生することができない。つまり、再生できた完全体が応募用のバーコードであるとすれば、雑誌の所有者(購入者)しか応募することができず、未購入者からの応募を排除することができる。しかしながら、所有者(購入者)の気持ちとしては、なるべく購入した雑誌を破壊したくないと思われる。また、雑誌の破壊はやり直しがきかないため、1回で成功させなければならないという制約もある。このような実情をふまえると、より破壊する程度が少なく、破壊作業が平易な加工による再生方法が好ましいと考えられる。
【0044】
例えば、図11の再生例A1と図12−1の再生例A2Jを比べた場合には、切除する面積が少なく、切り口の単純な再生例A1が好ましいと考えられる。また、図13−1の再生例B1と図13−2の再生例B2とを比べた場合も、同様の理由から再生例B2の方が好ましいと考えられる。さらに、図14−1の再生例C1と図14−2の再生例C2とを比べた場合に、再生例C2の方が紙面を折るだけで完全体が再生できるため、他の例よりも破壊の程度が少なく、作業も平易といえる。
【0045】
このことから、上記のマストバイ懸賞により好ましい再生法と考えることもできるが、はさみやカッタなどの道具を使わずに、指だけで再生作業が済むため、未購入者が再生作業を行って懸賞に応募するというリスクも残る。つまり、完全体を再生する方法としては、一方では「紙面を折る行為」だけでは易しすぎるとの見方もある。そこで、仮に「紙面を切除する行為」に限定したい場合は、切り口の線種は一直線とせずに、折線や曲線にした方がより望ましいと考えられる。その理由は、図14−2の再生例C2のように、切り口の線種が1本線の場合であれば、領域Yを切除しなくとも点線(9)を山折にすれば、同じことが達成できるからである。また、図15に示す再生例Dは、領域Zを切除する作業が難しいため、好ましくないと考えられる。
【0046】
以上のことをまとめると、下記のようになる。マストバイ懸賞に必要な情報を幾何学模様として雑誌の紙面に印刷するならば、下記(ハ)と(ニ)の条件を満たす不完全体を、下記(ホ),(ヘ),(ト),(チ)の条件を満たす配置で散在させることがより好ましい。さらに、不完全体の重複する領域には、下記(リ)の処理が施されていると、さらに好ましい。
(ハ) 個々の不完全体には重複する領域を設けること。
(ニ) 不完全体は、完全体の外郭の一部を有していること。
(ホ) 不完全体を同一紙面上に散在させる場合は、不完全体の切り口とその中間線に沿って紙面を折り曲げた時に、完全体が特定できる位置にあること。
(ヘ) 不完全体を複数紙面に散在させる場合は、複数紙面を重ねて透かした時に完全体が特定できる位置にあること。
(ト) 不完全体を複数紙面に散在させる場合は、最大面積を有する不完全体を最上面となる紙面に配置すること。
(チ) 不完全体を複数紙面に散在させる場合は、最上面となる紙面に配置される不完全体を、他の不完全体よりも、紙面の中心寄りに配置すること。
(リ) 不完全体の幾何学模様と混同しない模様や色を用いて、重複する領域を強調すること。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、雑誌等の紙面上に2次元コードを印刷する際に、2次元コード(完全体)を複数に分割して不完全体を作成し、それぞれの不完全体を紙面上に散在させることによって、そのままの状態では2次元コードを読み取ることができないため、正式な閲覧権限を持たない(例えば、雑誌等を購入していない)閲覧者が2次元コード(デジタル情報)を読み取ることを抑止することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、紙面を一定の条件で加工(切り取り、折り曲げ)するだけで、紙面上に散在させた複数の不完全体からなる2次元コードを完全体として容易に再生できるため、正式な閲覧権限を持った閲覧者(例えば、雑誌等の購入者)であれば、2次元コード(デジタル情報)を正しく読み取ることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 完全体
11〜18 不完全体
20 雑誌
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2003−6500号公報
【特許文献2】特開2006−317654号公報
【特許文献3】特開2007−87126号公報
【特許文献4】特開2008−178999号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙にデジタル情報を表す幾何学模様が印刷された印刷物であって、
前記デジタル情報を表す完結した1つの幾何学模様を完全体とし、
前記完全体を複数に分割した個々の幾何学模様を不完全体とし、
1つの完全体を構成する複数の不完全体が、前記用紙のいずれかの位置に散在させて印刷され、
前記複数の不完全体は、前記用紙を一定の条件で加工することによって、散在していた前記不完全体同士を結合させ、完全体が再生できる位置に配置されていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記用紙を一定の条件で加工するとは、前記用紙の折り曲げ、あるいは前記用紙の一部を切り取ることであることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記不完全体は、前記完全体の外殻の少なくとも一部を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記完全体の外殻の少なくとも一部を一直線で分割した不完全体を前記用紙の同一紙面上に散在させ、
前記複数の不完全体のそれぞれの切り口と、その中間線とに沿って用紙を折り曲げて加工することにより、散在している不完全体同士が結合して完全体を再生することができる位置に前記不完全体を配置したことを特徴とする請求項3に記載の印刷物。
【請求項5】
前記複数の不完全体を散在させて印刷する用紙は、一端が綴じられた複数枚からなる用紙であって、
前記複数の不完全体は、前記複数枚の異なる用紙面上にそれぞれ印刷され、複数枚の紙面を重ねて透かした時に、散在している不完全体同士が結合して完全体を再生できる位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の印刷物。
【請求項6】
前記複数に分割された不完全体のうち、最大面積を有する不完全体を前記複数紙面の最上面となる紙面に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の印刷物。
【請求項7】
前記複数紙面の最上面となる紙面に配置される不完全体は、他の紙面に配置する不完全体よりも、紙面の中心寄りに配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の印刷物。
【請求項8】
前記不完全体は、1つの完全体を複数に分割するにあたって、分割した境界部分で幾何学模様が重複する領域を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の印刷物。
【請求項9】
前記不完全体の幾何学模様の重複する領域は、それ以外の領域の幾何学模様と識別可能な模様や色によって強調されていることを特徴とする請求項8に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−231535(P2010−231535A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78807(P2009−78807)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】