説明

印刷物

【課題】観察者の視認角度によって真珠光沢顔料の呈する干渉色から、有色下地層の呈する色へとクイックに色彩が変化するロゴパターンを提供する。
【解決手段】被印刷物に、有色下地層と、真珠光沢顔料により構成された色変化層と、により構成されたロゴパターンが印刷された印刷物において、色変化層の任意断面における真珠光沢顔料の、全数の80%以上の顔料であって、顔料のなす角度と、被印刷物の印刷面のなす角度との傾斜角度差が5°以下であり、且つ、印刷物に照射された光源からの正反射光に対し、真珠光沢顔料の呈する干渉色の視認角度が少なくとも15°以下の範囲であることを特徴とし、観察者の視認角度により、真珠光沢顔料の呈する干渉色と、有色下地層の呈する色を交互に発現させる印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有色下地層と、視認角度により色彩変化を呈する真珠光沢顔料により構成された色変化層と、により構成されたロゴパターンが印刷された印刷物であって、観察者の視認角度によって、真珠光沢顔料の呈する干渉色から、有色下地層の呈する色へとクイックに色彩が変化する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ・パーソナルコンピュータ・洗濯機・冷蔵庫の様な家電類や、携帯電話・携帯ゲーム機などの携帯端末等の様々な製品に、製造会社名やシンボルマークを示すロゴパターンが、印刷、あるいは加工を施された銘板として取り付けられている。
【0003】
印刷によるロゴパターンは、様々な形態の製品に直接印字、印画されたものが多く、製品に直接印字、印刷するため製造コストを抑えることが可能であり、また銘板は、プラスチック基板や金属基板に加工を施し、製品に取り付けられるものが多く、他社との差別化を図るべく、意匠性を発現させるための様々な提案が行われている。
【0004】
しかしながら、印刷によるロゴパターンは、単一色による印刷が主であり意匠性に乏しく、他社製品との差別化が困難である。
【0005】
また、銘板として加工されたロゴパターンは、意匠性を発現させるため、様々な加工が必要となり、製造コストを増加させる要因となっていた。
【0006】
また、印刷により意匠性を持たせる方法として、真珠光沢顔料を用いた印刷物の提案もなされている。
【0007】
しかしながら、真珠光沢顔料による光沢色を効率よく発現させるための提案であり、真珠光沢顔料の色彩変化の効果的な使用の提案はなされておらず、印刷によるロゴパターンとして、高い意匠性を持つまでには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−330015号広報
【特許文献2】特開2006−243421号広報
【特許文献3】特開2001−265229号広報
【特許文献4】特開2001−260517号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、印刷によるロゴパターンが、有色下地層と、鱗片状の真珠光沢顔料を含む色変化層と、により構成されており、色変化層任意断面における真珠光沢顔料の、全数の80%以上の顔料において、顔料のなす角度と、被印刷物の印刷面のなす角度との傾斜角度差を5°以下とすることで、観察者の視認角度により、有色下地層の呈する色から、真珠光沢顔料の呈する干渉色へと、交互にクイックな色彩変化を生じさせることが可能となり、高い意匠性を発現させる、ロゴパターン印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として請求項1に記載の発明は、意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物であって、前記特定パターンが、少なくとも第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層により構成され、前記第二の層の色変化層は、鱗片状の真珠光沢顔料と、透明バインダーからなるインキにより構成された印刷物において、前記第二の層の色変化層の、任意断面における鱗片状の真珠光沢顔料のなす角度と、前記被印刷物の印刷面のなす角度との傾斜角度差が5°以下である顔料が、任意断面の全顔料の80%以上であり、且つ、前記印刷物に照射された光源からの正反射光に対し、真珠光沢顔料の呈する干渉色の視認角度が少なくとも15°以下の範囲であることを特徴とする印刷物、としたものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記被印刷物上に、第一の有色下地層と、第二の色変化層が順に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物、としたものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記被印刷物上に、第一の有色下地層と、第二の色変化層とが順に積層され、さらに第二の色変化層に、透明なトップコート層が積層されたことを特徴とする請求項1〜2に記載の印刷物、としたものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記被印刷物が透明であり、被印刷物上に第二の色変化層と、第一の有色下地層が順に積層されていることを特徴とする請求項1〜2に記載の印刷物、としたものである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、第一の有色下地層と、第二の色変化層との間に、透明な中間層を設けたことを特徴とする請求項1から4に記載の印刷物、としたものである。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記特定パターンが、ロゴパターンであることを特徴とする請求項1〜5に記載の印刷物、としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、第一に、意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物としているため、印刷物に対する観察者の視認角度が変化することにより、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互にクイックな色彩変化が生じ、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0017】
第二に、印刷物表面の平滑性が向上することによる光沢や艶がより高まり、印刷物に対する観察者の視認角度が変化することにより、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互にクイックな色彩変化が生じると共に、さらにトップコート層により印刷物に立体感を生じさせることができ、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0018】
第三に、観察者が透明な被印刷物の、印刷が施された面と対向する面より印刷物を観察する場合に、印刷物に対する観察者の視認角度が変化することにより、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互にクイックな色彩変化が生じ、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0019】
第四に、印刷表面に微細な凹凸が生じるような場合に、中間層により非印刷物に始めに印刷される層の表面凹凸を吸収することができる。さらに中間層を透明とすることで、真珠光沢顔料の呈する干渉色と、有色下地層の呈する色との色彩変化を阻害することなく、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例の印刷物の第1の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例の印刷物の第2の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例の印刷物の第3の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例の印刷物の第4の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明による印刷物の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例の印刷物の第1の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0023】
図1(a)に示すように、被印刷物(1)上に、特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンが、被印刷物(1)上に、第一の層となる有色下地層(10)と、第二の層となる色変化層(11)が順に積層され印刷され、図1(b)に示すように、色変化層(11)は、鱗片状の真珠光沢顔料(20)と、透明バインダーからなるインキにより構成されており、色変化層(11)を任意断面にて切断すると、真珠光沢顔料(20)の配列が観察できる。
【0024】
図1に示すように、本発明では色変化層(11)の任意断面における、真珠光沢顔料(20)の全数の80%以上の顔料において、顔料のなす角度と、被印刷物(1)の印刷面のなす角度の傾斜角度差(21)が5°以下であることを特徴としており、観察者が視認角度(40a)から印刷物を観察する場合、光源(30)からの光線が色変化層(11)中の真珠光沢顔料(20)により反射された正反射光(50a)に対し少なくとも15°以下の範囲(51)において、真珠光沢顔料(20)の呈する干渉色が観察者に視認される。
【0025】
一方、光源(30)よりの非反射光(50b)を観察者が視認角度(40b)で観察する場合、色変化層(11)中の真珠光沢顔料(20)からの反射による干渉色は観察されず、色変化層(11)の下に積層された有色下地層(10)からの反射光のみが観察者に視認される。
【0026】
すなわち、光源(30)と印刷物との位置関係を一定とした場合、観察者と印刷物との相対的な移動の方向(41)に沿って観察者の視認角度が変化することで、印刷物の色彩は、有色下地層(10)の呈する色から、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料(20)の呈する干渉色へと交互に変化する。
【0027】
前記被印刷物(1)は、表面に印刷が可能な物であれば良く、例えばアルミニウムや鉄、チタン等の金属により構成された、あるいは表面にニッケルやクロム、銀などの金属がメッキ処理されたシートや構造物や、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など、プラスチックにより構成されたシートや構造物や、コート紙や上質紙、アート紙などの紙類により構成されたシートや構造物など、あるいはこれらの組み合わせにより構成されたシートや構造物などが用いられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
また、前記有色下地層(10)は、染料インキや顔料インキ、金属粉体等を含むインキなど、所望の色彩を呈することが可能なインキを適宜選択すれば良い。
【0029】
また、前記色変化層(11)は、真珠光沢顔料(20)を溶剤型の透明なバインダーと混練、分散させ、インキ化すれば良く、使用するバインダーの材料としては、ウレタンやアクリル、ポリエステル、フェノール、酢酸ビニル、ポリアミド、フッ素、シリコーンなど、透明な樹脂成分からなるバインダーを適宜選択すれば良い。
【0030】
なお、真珠光沢顔料とは一般的に、少なくとも鱗片状の母体、例えば天然マイカや合成マイカ、アルミ、アルミナ、シリカなどからなる母体に、少なくとも金属酸化物、例えば酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛などの金属酸化物が被覆された物であり、母体表面による反射光と、金属酸化物表面による反射光の光路差により、干渉色を呈する顔料であり、真珠光沢顔料の呈する干渉色は、母体材質の変更や、金属酸化物の種類、被覆膜厚を変化させることにより、様々な干渉色を選択することが可能である。
【0031】
真珠光沢顔料(20)のなす角度と、被印刷物(1)の印刷面のなす角度との傾斜角度差(21)を5°以下とする方法としては、例えば、真珠光沢顔料(20)を溶剤型の透明バインダーと混練、分散させたインキの固形分比を、10%から70%、より好ましくは30%から50%の範囲に調整し塗布することが好ましく、固形分比が10%を下回ると、液垂れ等が発生し満足な塗布面が得られない。また、固形分比が70%を上回ると、インキ粘度が高まり印刷適性が得られないばかりか、印刷後の真珠光沢顔料(20)の流動性が阻害され、真珠光沢顔料の全数に対する、傾斜角度差(21)が5°以下となる真珠光沢顔料の占める割合が減少してしまう。
【0032】
また、真珠光沢顔料(20)のなす角度と、被印刷物(1)の印刷面のなす角度との傾斜角度差(21)を5°以下とする他の方法としては、例えばポリエステルやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどからなるプラスチック基板に、シリコーンやワックスなどの剥離成分を塗布した転写用基材上に、真珠光沢顔料(20)と透明バインダーからなるインキを塗布し、インキがタック性を有する間に、被印刷物(1)へ転写用基材を押し当て、転写印刷しても良く、被印刷物(1)への転写において、転写圧力は特に指定する物ではないが、確実に転写を行うためには、転写圧力0.5MPa以上、より好ましくは転写圧力2MPa以上にて加圧すると良い。
【0033】
なお、有色下地層(10)、色変化層(11)に選択したインキを印刷する印刷方式については特に限定されるものではなく、例えばオフセット印刷やグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー印刷、パッド印刷など、様々な印刷方法から適宜選択すれば良い。
【0034】
図2は、本発明の一実施例の印刷物の第2の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0035】
被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンは有色下地層(10)および色変化層(11)が順次積層され、さらに色変化層(11)上に透明なトップコート層(12)が積層された構成であり、観察者が、観察者視点(40)から印刷物を観察する場合、最表層に透明なトップコート層を設けることにより、印刷物表面の平滑性を向上させ、光沢、艶を高め、かつ印刷物に立体感を生じさせることができる。
【0036】
なお、トップコート層(12)の表面形状は特に特定される物ではないが、表面を平面形状とすることで、印刷物の角部が強調され、より高い立体感が生じ、またトップコート層(12)の表面を曲面とすることで、ポッティングを施したと同様の効果が得られるため、より高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0037】
また、トップコート層(12)の材料としては、例えばアクリル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、PVAなどの透明樹脂からなるインキを適宜選択すれば良い。
【0038】
次に、図3は、本発明の一実施例の印刷物の第3の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0039】
透明な被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンは、色変化層(11)上に有色下地層(10)が積層された構成であり、観察者は、観察者視点(40)より観察するため、特定パターンは透明な被印刷物(1)を介して観察され、この構成によれば、観察者側に特定パターンが露呈していないため、被印刷物(1)の素材選定により特定パターンの機械耐性や化学耐性に柔軟性を持たせることが可能となる利点が生じる。
【0040】
なお、透明な被印刷物としては、例えばポリプロピレンやポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など、プラスチックにより構成されたシートや構造物や、あるいはガラス類など、観察者と対向する面に印刷された特定パターンが認識できる物であれば、特に限定されるものではない。
【0041】
図4は、本発明の一実施例の印刷物の第4、第5の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0042】
被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンを構成する有色下地層(10)と色変化層(11)との間に、透明な中間層(13)を設けることで、図4(a)では、有色下地層(10)の印刷表面の微小な凹凸による光の表面散乱を増加を抑えることができ、図4(b)では、色変化層(11)の印刷表面の微小な凹凸による光の表面散乱の増加を抑えることができ、それぞれ有用な効果を得ることができる。
【0043】
さらに、図4(a)においては、有色下地層(10)の印刷表面に微小な凹凸がある場合に、そのまま色変化層(11)を積層印刷してしまうと、有色下地層(10)の印刷表面の微小な凹凸の影響により、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料のなす角度と、被印刷物(1)の印刷面のなす角度との傾斜角度差が増加してしまうが、中間層(13)を設けることで、この問題を回避することができる。
【0044】
さらに、中間層(13)を透明とすることで、有色下地層の呈する色と、真珠光沢顔料の呈する干渉色との交互色彩変化を阻害することなく、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0045】
なお、中間層(13)を構成するインキは、たとえばアクリル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、PVAなどの透明樹脂からなるインキを選択すれば良いが、有色下地層(10)と色変化層(11)両者との密着が良好なインキを選択することが好ましい。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を以て本発明を具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
図4(a)に示した本発明の印刷物の構成において、被印刷物として、厚み2mmの黒アクリル基板を、有色下地層インキとして、スクリーン印刷用ミラーインキ(商品名 MIR-51000:帝国インキ製造株式会社)を、真珠光沢顔料として顔料(商品名 Xirallic T60-23:メルク株式会社)を、色変化層用インキのバインダー、中間層インキ、トップコート層インキとして、スクリーン印刷用オーバーコートクリヤー(商品名 SG429B:株式会社セイコーアドバンス)を、それぞれ選定した。
【0048】
色変化層用には、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の30重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が45重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0049】
前記で得られた色変化層用インキを、スクリーン印刷方式を用いて形成することとした。
【0050】
まず、前記黒アクリル基板上に、有色下地層としてスクリーン用ミラーインキを、300線メッシュからなる文字パターン版を用いて印刷し、加熱により有色下地層を十分に乾燥、硬化させた後、中間層として、前記中間層インキを同300線メッシュからなる文字パターン版を用いて、有色下地層上に積層印刷を施し、乾燥、硬化させた後、色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、同300線メッシュからなる文字パターンを用いて、さらに積層印刷を施す。さらに、硬化させ、トップコート層インキを、300線メッシュからなる文字パターンを用いて印刷し、文字パターン印刷物を得た。
【0051】
得られた文字パターン印刷物を目視観察したところ、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源反射光より10°以上傾斜させた角度では、有色下地層の呈する色である「シルバー」となり、クイックな色彩変化が確認された。
【0052】
さらに、得られた文字パターン印刷物の任意断面を光学顕微鏡にて観察したところ、色変化層に含まれる80%以上真珠光沢顔料において、真珠光沢顔料のなす角度と、印刷面のなす角度の傾斜角度差が5°以下であった。
【0053】
(実施例2)
次に、図3に示した印刷物の構成とし、被印刷物として厚み2mmの透明アクリル基板を使用した以外は、(実施例1)と同様のインキを用いて、スクリーン印刷によって文字パターン印刷物を作成した。
【0054】
得られた文字パターン印刷物を目視観察したところ、(実施例1)と同様に、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源反射光より10°以上傾斜させた角度では、有色下地層の呈する色である「シルバー」となり、クイックな色彩変化が確認された。
【0055】
(実施例3)
次に、図1に示した印刷物の構成とし、被印刷物として厚み2mmの黒アクリル基板を使用し、真珠光沢顔料として顔料(商品名 XirallicT60-23:メルク株式会社)を、色変化層用インキのバインダーとして、スクリーン印刷用メジウム(商品名 SS65メジウム:東洋インキ製造株式会社)をそれぞれ選択した。
【0056】
色変化層用には、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の30重量%の割合で、上記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が50重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0057】
また、色変化層を転写印刷するための転写用基材として、厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に、剥離成分として厚み100μmとなるようにシリコーンを積層して転写シートを準備した。
【0058】
前記で得られた色変化層用インキを、スクリーン印刷方式を用いて形成することとした。
【0059】
まず、上記前記黒アクリル基板上に、有色下地層としてスクリーン用ミラーインキを、300線メッシュからなる文字パターン版を用いて印刷し、加熱により有色下地層を十分に乾燥、硬化させた。
【0060】
色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、300線メッシュからなる反転文字パターン版を用いて、転写シートに印刷し、色変化層インキが完全硬化する前に、前記有色下地層による文字パターンが印刷された黒アクリル基板に密着させ、ハンドローラーによりおよそ30kPaにて押し当てた後、プレス機により、1MPaの押し当て圧を1分間加えた。
押し当て後、転写用シートを剥離し、色変化層を十分乾燥、硬化させ、文字パターン印刷物を得た。
【0061】
得られた文字パターン印刷物を観察したところ、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源反射光より15°以上傾斜させた角度では、有色下地層の呈する色である「シルバー」となり、クイックな色彩変化が確認された。
【0062】
(実施例4)
次に、図2に示した印刷物の構成とし、被印刷物として厚み2mmの透明アクリル基板を使用し、有色下地層インキとして、スクリーン印刷用墨インキ(商品名 CAV透明765:株式会社セイコーアドバンス)を、真珠光沢顔料として顔料(商品名 CRHOMASHINE CRS BL20−R:東洋アルミニウム株式会社)を、色変化層用インキのバインダー、トップコート層インキとして、スクリーン印刷用オーバーコートクリヤー(商品名 SG429B:株式会社セイコーアドバンス)を、それぞれ選択した。
【0063】
色変化層用には、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の5重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が45重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0064】
前記で得られた色変化層用インキを、スクリーン印刷方式を用いて形成することとした。
【0065】
まず、前記透明アクリル基板上に、有色下地層としてスクリーン用墨インキを、300線メッシュからなる文字パターン版を用いて印刷した。
【0066】
加熱により有色下地層を十分乾燥、硬化させた後、色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、同300線メッシュからなる文字パターンを用いて積層印刷を施し、硬化させた後、さらにトップコート層インキを、300線メッシュからなる文字パターンを用いて印刷し、文字パターン印刷物を得た。
【0067】
得られた文字パターン印刷物を観察したところ、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源反射光より15°以上傾斜させた角度では、有色下地層の呈する色である「墨」となり、クイックな色彩変化が確認された。
【0068】
さらに、得られた文字パターン印刷物の任意断面を光学顕微鏡にて観察したところ、色変化層に含まれる80%以上真珠光沢顔料において、真珠光沢顔料のなす角度と、印刷面のなす角度の傾斜角度差が5°以下であった。
【0069】
(比較例1)
中間層を設けないこと意外は(実施例1)と同様構成およびインキを用いて、スクリーン印刷により文字パターン印刷物を得た。
【0070】
得られた文字パターン印刷物を観察したところ、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色するが、光源反射光より30°以上傾斜させても、真珠光沢顔料の呈する干渉色が発色し、さらに傾斜させると、干渉色の発色が徐々に失われ、次第に有色下地層の呈する「シルバー」へとなだらかな色彩変化となり、メリハリのない色彩変化が確認された。
【0071】
さらに、得られた文字パターン印刷物の任意断面を顕微鏡にて観察したところ、有色下地層の印刷面に微小な凹凸が確認された。
【0072】
また、真珠光沢顔料のなす角度と、印刷面のなす角度の傾斜角度差が5°以下である真珠光沢顔料は、色変化層に含まれる顔料の35%にとどまり、他の真珠光沢顔料は、傾斜角度が5°以上であった。
【0073】
よって、本発明の印刷物は、以上に説明した(実施例1)から(実施例3)の効果を有するものであり、特に印刷物を製造会社名やシンボルパークを示すロゴパターンとすることで、製造コストを抑え、かつ観察者の視認角度により色彩が変化する高い意匠性を持ったロゴパターンを、家電類や携帯端末等の様々な製品に印刷することが可能なため、他社製品との差別化を容易に図ることが可能とした。
【0074】
さらに、家電類や携帯端末以外の、例えばポスターのような広告掲示物など、視認角度の変化、例えば移動中の観察者に気付いてもらいたい掲示物などの一部に使用した場合、観察者の歩行などに伴う掲示物との相対的な位置関係の変化、もしくは掲示物を揺動、回転させるなどにより、色彩変化を生じさせることができ、より効果的なアピールを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 ・・・被印刷物
10 ・・・有色下地層
11 ・・・色変化層
12 ・・・トップコート層
13 ・・・中間層
20 ・・・真珠光沢顔料
21 ・・・真珠光沢顔料のなす角度と被印刷物印刷面のなす角度の傾斜角度差
30 ・・・光源
40 ・・・観察者視点
40a・・・観察者視認角度 光源正反射
40b・・・観察者視認角度 光源非正反射
41 ・・・観察者と印刷物との相対的な移動の方向
50a・・・光源正反射光
50b・・・光源非正反射光
51 ・・・真珠光沢顔料の呈する干渉光発色範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物であって、前記特定パターンが、少なくとも第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層により構成され、前記第二の層の色変化層は、鱗片状の真珠光沢顔料と、透明バインダーからなるインキにより構成された印刷物において、
前記第二の層の色変化層の、任意断面における鱗片状の真珠光沢顔料のなす角度と、前記被印刷物の印刷面のなす角度との傾斜角度差が5°以下である顔料が、任意断面の全顔料の80%以上であり、且つ、前記印刷物に照射された光源からの正反射光に対し、真珠光沢顔料の呈する干渉色の視認角度が少なくとも15°以下の範囲であることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記被印刷物上に、第一の有色下地層と、第二の色変化層が順に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記被印刷物上に、第一の有色下地層と、第二の色変化層とが順に積層され、さらに第二の色変化層に、透明なトップコート層が積層されたことを特徴とする請求項1〜2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記被印刷物が透明であり、被印刷物上に第二の色変化層と、第一の有色下地層が順に積層されていることを特徴とする請求項1〜2に記載の印刷物。
【請求項5】
第一の有色下地層と、第二の色変化層との間に、透明な中間層を設けたことを特徴とする請求項1から4に記載の印刷物。
【請求項6】
前記特定パターンが、ロゴパターンであることを特徴とする請求項1〜5に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143638(P2011−143638A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6791(P2010−6791)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】