説明

印刷物

【課題】観察者の視認角度によって真珠光沢顔料の呈する干渉色から、有色下地層の呈する色へと色彩が変化するロゴパターンを提供すること。
【解決手段】被印刷物上に、有色下地層と、色変化層により構成されたロゴパターンが印刷された印刷物において、色変化層が、鱗片状の真珠光沢顔料と、透明バインダーからなるインキにより構成され、真珠光沢顔料の含有比率を、色変化層の固形分の40重量%以下とし、且つ、透明バインダーのHazeを2%以下とし、色変化層のHazeを65%以下とすることで、有色下地層と色変化層を積層した際の、色変化層のHazeによる、有色下地層の発色の妨げを防止し、印刷物に照射された光源の光源正反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色を発現させ、光源非正反射光が観察される角度では、有色下地層の呈する色を発現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有色下地層と、視認角度により色彩変化を呈する真珠光沢顔料により構成された色変化層と、により構成されたロゴパターンが印刷された印刷物であって、観察者の視認角度によって、真珠光沢顔料の呈する干渉色から、有色下地層の呈する色へと色彩が変化する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ・パーソナルコンピュータ・洗濯機・冷蔵庫の様な家電類や、携帯電話・携帯ゲーム機などの携帯端末等の様々な製品に、製造会社名やシンボルマークを示すロゴパターンが、印刷、あるいは加工を施された銘板として取り付けられている。
【0003】
印刷によるロゴパターンは、様々な形態の製品に直接印字、印画されたものが多く、製品に直接印字、印刷するため製造コストを抑えることが可能であり、また銘板は、プラスチック基板や金属基板に加工を施し、製品に取り付けられるものが多く、他社との差別化を図るべく、意匠性を発現させるための様々な提案が行われている。
【0004】
しかしながら、印刷によるロゴパターンは、単一色による印刷が主であり意匠性に乏しく、他社製品との差別化が困難である。
【0005】
また、銘板として加工されたロゴパターンは、意匠性を発現させるため、様々な加工が必要となり、製造コストを増加させる要因となっていた。
【0006】
また、印刷により意匠性を持たせる方法として、真珠光沢顔料を用いた印刷物の提案もなされている。
【0007】
しかしながら、真珠光沢顔料による光沢色を効率よく発現させるための提案であり、真珠光沢顔料の色彩変化の効果的な使用の提案はなされておらず、印刷によるロゴパターンとして、高い意匠性を持つまでには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−330015号広報
【特許文献2】特開2006−243421号広報
【特許文献3】特開2001−265229号広報
【特許文献4】特開2001−260517号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、印刷によるロゴパターンが、有色下地層と、鱗片状の真珠光沢顔料と透明バインダーからなるインキにより構成された色変化層と、により構成されており、観察者の視認角度により、有色下地層の呈する色から、真珠光沢顔料の呈する色へと色彩変化を生じさせるロゴパターン印刷物において、色変化層に含まれる真珠光沢顔料の含有比率を、色変化層の固形分の40重量%以下とし、色変化層を構成する透明バインダーのHazeを2%以下とし、色変化層のHazeを65%以下とすることで、有色下地層と色変化層を積層した際の、色変化層のHazeによる、有色下地層の発色の妨げを防止し、観察者の視認角度に伴う色彩変化を生じさせることが可能となり、高い意匠性を発現させる、ロゴパターン印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として請求項1に記載の発明は、意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物において、前記特定パターンが、少なくとも第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層が順に積層され、前記色変化層が、鱗片状の真珠光沢顔料と、透明バインダーからなるインキであって、真珠光沢顔料の含有比率が、色変化層の固形分の40重量%以下であり、且つ、透明バインダーのHazeが2%以下であり、前記色変化層のHazeが65%以下であることを特徴とする印刷物としたものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記被印刷物上に、第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層とが順に積層され、さらに第二の色変化層上に、透明なトップコート層が積層されたてなることを特徴とする請求項1に記載の印刷物としたものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記被印刷物が透明であり、被印刷物上に第二の層となる色変化層と、第一の層となる有色下地層が順に積層されてなることを特徴とする請求項1〜3に記載の印刷物
としたものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層との間に、透明な中間層を設けたことを特徴とする請求項3〜4に記載の印刷物としたものである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記特定パターンが、ロゴパターンであることを特徴とする請求項1〜4に記載の印刷物
としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、第一に、意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物としているため、有色下地層と色変化層を積層した際の、色変化層のHazeによる、有色下地層の発色の妨げを防止することができ、印刷物に照射された光源の反射光を観察した場合に、正反射光では真珠光沢顔料の呈する干渉色が発現し、それ以外では有色下地層の呈する色が発現するため、印刷物に対する観察者の視認角度の変化に伴い、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互に色彩が変化する、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0016】
第二に、観察者が被印刷物の印刷が施された面より印刷物を観察する場合に、印刷物に対する観察者の視認角度の変化に伴い、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互に色彩が変化する、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0017】
第三に、トップコート層により、色変化層表面の微細凹凸に起因する表面散乱によるHazeを抑えることができ、色変化層のHazeを低下させることができる。
【0018】
さらに印刷物表面の平滑性が向上することによる光沢や艶がより高まり、印刷物に立体感と高級感を生じさせることができると共に、印刷物に対する観察者の視認角度の変化に伴い、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互に色彩が変化する、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0019】
第四に、観察者が透明な被印刷物の、印刷が施された面と対向する面より印刷物を観察する場合に、印刷物に対する観察者の視認角度の変化に伴い、真珠光沢顔料の呈する干渉色から有色下地層の呈する色へと交互に色彩が変化する、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0020】
第五に、色変化層表面の微細凹凸に起因する表面散乱によるHazeを抑える事ができ、色変化層のHazeを低下させることができる。さらに中間層を透明とすることで、真珠光沢顔料の呈する干渉色と、有色下地層の呈する色との色彩変化を阻害することがなく、高い意匠性を持つ印刷物を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の印刷物の第1の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例の印刷物の第2の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例の印刷物の第3の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例の印刷物の第4の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら、本発明による印刷物の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施例の印刷物の第1の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、被印刷物(1)上に、特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンが、被印刷物(1)上に、第一の層となる有色下地層(10)と、第二の層となる色変化層(11)が順に積層され印刷される。
【0025】
色変化層(11)は、鱗片状の真珠光沢顔料(図示せず)と、透明バインダーからなるインキにより構成されており、光源(30)よりの正反射光(50a)を、観察者が視認角度(40a)で観察した場合、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料の効果により、正反射光(50a)は、真珠光沢顔料の反射による干渉色となり、観察者に視認される。
【0026】
一方、光源(30)よりの非正反射光(50b)を、観察者が視認角度(40b)で観察する場合、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料からの反射による干渉色は観察されず、有色下地層(10)からの反射光のみが観察者に視認される。
【0027】
すなわち、光源(30)と印刷物との位置関係を一定とした場合、観察者と印刷物との相対的な移動の方向(41)に沿って観察者の視認角度が変化することで、印刷物の色彩は、有色下地層(10)の呈する色から、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料の呈する干渉色へと交互に変化する。
【0028】
本発明では、色変化層(11)のHazeが65%以下であることを特徴としているが、色変化層(11)のHazeが65%を超えた場合、非正反射光(50b)を観察者が視認角度(40b)より観察する場合に、色変化層(11)のHazeが妨げとなり、有色下地層(10)の呈する色を認識することが困難となり、色変化層(11)のHazeを65%以下にするためには、色変化層に含まれる真珠光沢顔料の含有比率を、色変化層の固形分の40重量%以下にすることが好ましい。より好ましくは30重量%以下とし、さらに色変化層の透明バインダーのHazeを2%以下にすると良い。
【0029】
前記Haze測定方法においては、日本電色工業社製 NDH2000を用いて、JIS−K7136に準拠しておこなう。
【0030】
前記被印刷物(1)は、表面に印刷が可能な物であれば良く、例えばアルミニウムや鉄、チタン等の金属により構成された、あるいは表面にニッケルやクロム、銀などの金属がメッキ処理されたシートや構造物や、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など、プラスチックにより構成されたシートや構造物や、例えばコート紙や上質紙、アート紙などの紙類により構成されたシートや構造物など、あるいはこれらの組み合わせにより構成されたシートや構造物など、特に限定されるものではない。
【0031】
前記有色下地層(10)は、染料インキや顔料インキ、金属粉体等を含むインキなど、所望の色彩を呈することが可能なインキを選択すれば良い。
【0032】
また、前記色変化層(11)は、例えば、ウレタン樹脂やアクリル樹脂といった、単体でHazeが2%以下となるバインダーを選択し、含有比率が固形分の40%以下となるように真珠光沢顔料を混練、分散させ、インキ化すれば良い。
【0033】
なお、真珠光沢顔料とは一般的に、少なくとも鱗片状の母体、例えば天然マイカや合成マイカ、アルミ、アルミナ、シリカなどからなる母体に、少なくとも金属酸化物、例えば酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛などの金属酸化物が被覆された物であり、母体表面による反射光と、金属酸化物表面による反射光の光路差により、干渉色を呈する顔料である。真珠光沢顔料の呈する干渉色は、母体材質の変更や、金属酸化物の種類、被覆膜厚を変化させることにより、様々な干渉色を選択することが可能である。
【0034】
なお、有色下地層(10)、色変化層(11)に選択したインキを印刷する印刷方式については特に限定されるものではなく、例えばオフセット印刷やグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー印刷、パッド印刷など、様々な印刷方法から適宜選択すれば良い。
【0035】
図2は、本発明の印刷物の第2の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0036】
図2に示すように、被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンは有色下地層(10)および色変化層(11)が順次積層され、さらに色変化層(11)上に透明なトップコート層(12)が積層され構成される。
【0037】
色変化層(11)上にトップコート層(12)を積層することにより、色変化層(11)に含まれる真珠光沢顔料による、色変化層(11)の表面の微細凹凸に起因する表面散乱によるHazeを抑えることができ、さらに観察者は、観察者視点(40)から印刷物を観察する場合、最表層に透明なトップコート層を設けることにより、印刷物表面の平滑性を向上させ、光沢、艶を高め、かつ印刷物に立体感を生じさせることができる。
【0038】
なお、トップコート層(12)の表面形状は特に特定される物ではないが、表面を平面形状とすることで、印刷物の角部が強調され、より高い立体感が生じ、またトップコート層(12)の表面を曲面とすることで、ポッティングを施したと同様の効果が得られるため、より高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0039】
また、トップコート層(12)の材料としては、例えばアクリル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、PVAなどの透明樹脂からなるインキを選択すれば良い。
【0040】
図3は、本発名の印刷物の第3の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0041】
図3に示すように、透明な被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンは、色変化層(11)上に有色下地層(10)が積層され構成される。
【0042】
観察者は、観察者視点(40)より観察するため、特定パターンは透明な被印刷物(1)を介して観察される。この構成によれば、観察者側に特定パターンが露呈していないため、被印刷物1の素材選定により特定パターンの機械耐性や化学耐性に柔軟性を持たせることが可能となる利点が生じる。
【0043】
なお、透明な被印刷物としては、例えばポリプロピレンやポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など、プラスチックにより構成されたシートや構造物や、あるいはガラス類など、観察者と対向する面に印刷された特定パターンが認識できる物であれば、特に限定されるものではない。
【0044】
図4は、本発明の印刷物の第4の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0045】
図4に示すように、被印刷物(1)に特定パターンが印刷された印刷物であり、特定パターンを構成する有色下地層(10)と色変化層(11)との間に、透明な中間層(13)を設けることで、第2の実施形態で述べたと同様に、色変化層(11)の表面の微細凹凸に起因する表面散乱によるHazeを抑えることができ、かつ中間層(13)を透明とすることで、有色下地層の呈する色と、真珠光沢顔料の呈する干渉色との交互色彩変化を阻害することなく、高い意匠性を持つ印刷物を得ることができる。
【0046】
なお、中間層(13)を構成するインキは、例えばアクリル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、PVAなどの透明樹脂からなるインキを選択すれば良いが、有色下地層(10)と色変化層(11)両者との密着が良好なインキを選択することが好ましい。
【実施例】
【0047】
次に、実施例を以て本発明を具体的に説明する。
【0048】
(実施例1)
図1に示した本発明の印刷物の構成において、被印刷物として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを、有色下地層インキとしてスクリーン印刷用ミラーインキ(商品名 MIR−51000:帝国インキ製造株式会社)を、真珠光沢顔料として顔料(商品名 Xirallic T60−23:メルク株式会社)を、色変化層用インキのバインダーとして、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が1.5%となるスクリーン印刷用オーバーコートクリヤー(商品名 SG429B:株式会社セイコーアドバンス)を、それぞれ選定した。
【0049】
色変化層用に、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が60%となるよう、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の30重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が50重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0050】
印刷方式としては、スクリーン印刷を採用した。まず、前記PETシート上に、有色下地層としてスクリーン用ミラーインキを、300線メッシュからなるベタパターン版を用いて印刷した。
【0051】
印刷後、加熱により有色下地層を十分乾燥、硬化させた後、色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、同300線メッシュからなるベタパターンを用いて積層印刷、硬化させ、ベタパターン印刷物を得た。
【0052】
得られたベタパターン印刷物を観察したところ、光源正反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源非正反射光が観察される角度では、有色下地層の呈する色である「シルバー」となり、視認角度による良好な色彩変化が確認された。
【0053】
(実施例2)
次に、構成を図2に示した印刷物の構成とし、被印刷物として厚み2mmの透明アクリル基板を使用し、有色下地層インキとして、スクリーン印刷用墨インキ(商品名 CAV透明765:株式会社セイコーアドバンス)を、真珠光沢顔料として顔料(商品名 CRHOMASHINE CRS BL20−R:東洋アルミニウム株式会社)を、色変化層用インキのバインダー、トップコート層インキとして、スクリーン印刷用オーバーコートクリヤー(商品名 SG429B:株式会社セイコーアドバンス)を、それぞれ選択した。
【0054】
色変化層用に、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が7%となるよう、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の5重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が45重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0055】
印刷方式としては、スクリーン印刷を採用した。まず、前記透明アクリル基板上に、有色下地層としてスクリーン印刷用墨インキを、300線メッシュからなる文字パターン版を用いて印刷した。加熱により有色下地層を十分乾燥、硬化させた後、色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、同300線メッシュからなる文字パターンを用いて積層印刷、硬化させ、さらにトップコート層インキを、300線メッシュからなる文字パターンを用いて印刷し、文字パターン印刷物を得た。
【0056】
得られた文字パターン印刷物を観察したところ、光源正反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源非正反射光が観察される角度では、有色下地層の呈する色である「黒」となり、視認角度による良好な色彩変化が確認された。
【0057】
(実施例3)
次に、構成を図4(a)に示した印刷物の構成とし、被印刷物として、厚み2mmの黒アクリル基板を、有色下地層インキとして、スクリーン印刷用ミラーインキ(商品名 MIR−51000:帝国インキ製造株式会社)を、真珠光沢顔料として顔料(商品名 Xirallic T60−23:メルク株式会社)を、色変化層用インキのバインダー、中間層インキ、トップコート層インキとして、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が1.5%となるスクリーン印刷用オーバーコートクリヤー(商品名 SG429B:株式会社セイコーアドバンス)を、それぞれ選定した。
【0058】
色変化層用に、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が65%となるよう、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の30重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらにインキ固形分が45重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た。
【0059】
印刷方式としては、スクリーン印刷を採用した。まず、前記黒アクリル基板上に、有色下地層としてスクリーン用ミラーインキを、300線メッシュからなる文字パターン版を用いて印刷した。
【0060】
印刷後、加熱により有色下地層を十分乾燥、硬化させた後、中間層として、前記中間層インキを同300線メッシュからなる文字パターン版を用いて、有色下地層上に積層印刷した。さらに乾燥、硬化させた後、色変化層インキとして調整した真珠光沢顔料を含むインキを、同300線メッシュからなる文字パターンを用いて積層印刷、硬化させ、さらにトップコート層インキを、300線メッシュからなる文字パターンを用いて印刷し、文字パターン印刷物を得た。
【0061】
得られた文字パターン印刷物を観察したところ、光源正反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色し、光源非正反射光が観察される角度では、有色下地層の呈する色である「シルバー」となり、視認角度による良好な色彩変化が確認された。
【0062】
(比較例)
色変化層用インキのバインダーとして、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が30%となるスクリーン印刷用メジウム(商品名 SS65メジウム:東洋インキ製造株式会社)を選定し、色変化層用に、単体でのHaze(JIS−K7136準拠)が85%となるよう、前記で選定した色変化層用バインダーに、含有比率が色変化層の固形分の45重量%の割合で、前記真珠光沢顔料を混練、分散させ、さらに、インキ固形分が50重量%となるよう溶剤にて調整し、色変化層用インキを得た以外は、(実施例1)と同様の構成およびインキを用いてスクリーン印刷によりベタバターン印刷物を得た。
【0063】
得られた文字ベタパターン印刷物を観察したところ、光源反射光が観察される角度では、真珠光沢顔料の呈する干渉色である「青」が発色するが、光源非正反射光が観察される角度では、色変化層のHazeが妨げとなり、有色下地層(10)の呈する色である「シルバー」が発現せず、白濁色を呈するのみであり、視認角度による良好な色彩変化を確認することができなかった。
【0064】
よって、本発明の印刷物は、以上に説明した(実施例1)から(実施例3)の効果を有するものであり、特に印刷物を製造会社名やシンボルパークを示すロゴパターンとすることで、製造コストを抑え、かつ観察者の視認角度により色彩が変化する高い意匠性を持ったロゴパターンを、家電類や携帯端末等の様々な製品に印刷することが可能なため、他社製品との差別化を容易に図ることが可能とした。
【0065】
さらに、家電類や携帯端末以外の、例えばポスターのような広告掲示物など、視認角度の変化、移動中の観察者に気付いてもらいたい掲示物などの一部に使用した場合、観察者の歩行などに伴う掲示物との相対的な位置関係の変化、もしくは掲示物を揺動、回転させるなどにより、色彩変化を生じさせることができ、より効果的なアピールを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 ・・・被印刷物
10 ・・・有色下地層
11 ・・・色変化層
12 ・・・トップコート層
13 ・・・中間層
30 ・・・光源
40 ・・・観察者視点
40a・・・観察者視認角度 光源正反射
40b・・・観察者視認角度 光源非正反射
41 ・・・観察者と印刷物との相対的な移動の方向
50a・・・光源正反射光
50b・・・光源非正反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠を施す被印刷物に特定パターンが印刷された印刷物において、
前記特定パターンが、少なくとも第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層が順に積層され、前記色変化層が、鱗片状の真珠光沢顔料と、透明バインダーからなるインキであって、真珠光沢顔料の含有比率が、色変化層の固形分の40重量%以下であり、
且つ、透明バインダーのHazeが2%以下であり、前記色変化層のHazeが65%以下であることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記被印刷物上に、第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層とが順に積層され、さらに第二の色変化層上に、透明なトップコート層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記被印刷物が透明であり、被印刷物上に第二の層となる色変化層と、第一の層となる有色下地層が順に積層されてなることを特徴とする請求項1〜3に記載の印刷物。
【請求項4】
前記第一の層となる有色下地層と、第二の層となる色変化層との間に、透明な中間層を設けたことを特徴とする請求項3〜4に記載の印刷物。
【請求項5】
前記特定パターンが、ロゴパターンであることを特徴とする請求項1〜4に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143639(P2011−143639A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6792(P2010−6792)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】