説明

印刷環境設定を制御するためのコンピュータ・プログラム、複数の印刷環境設定を管理するためのコンピュータ・プログラム、印刷制御装置、および、印刷システム

【課題】自動両面印刷の際に、表面用の印刷環境設定と裏面用の印刷環境設定とを簡単に切り換えて利用することを可能とする。
【解決手段】互いに異なる複数の印刷環境設定を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理する印刷環境作成管理機能部を備えるコンピュータによって印刷を実行する際に、印刷環境設定を制御するためのコンピュータ・プログラムであり、実行する印刷処理に応じた印刷環境設定の取得を要求することにより、実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を、印刷環境作成管理機能部から取得し、取得した印刷環境設定を、実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理する機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータ・プログラムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状況に応じて異なる印刷環境で印刷を実行するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータで実行されるアプリケーションに備えられる印刷機能部は、作成した印刷データの印刷を実行するために、印刷を実行するプリンタによる印刷の環境設定(以下、「印刷環境設定」と呼ぶ。)を、DEVMODE構造体(以下、単に「DEVMODE」とも呼ぶ。)と呼ばれる形式で保持することにより管理している。そして、アプリケーションで作成した印刷データの印刷を実行する場合、印刷機能部は、自身が管理しているDEVMODEを用いて、印刷処理を実行する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−5241号公報
【特許文献2】特開2002−55803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自動両面印刷機能を有するプリンタを用いて、自動両面印刷を実行する場合において、例えば、表面が普通紙で裏面が光沢紙のはがきを印刷媒体とすると、表面と裏面とで印刷の設定環境が異なり、表面用の印刷環境設定と裏面用の印刷環設定とが必要となるため、印刷機能部に対しては、表面用のDEVMODEおよび裏面用のDEVMODEの2つのDEVMODEを保持して管理することが要求される。
【0005】
しかしながら、従来のアプリケーションの多くは、1つのDEVMODEのみを管理しており、表面用のDEVMODEおよび裏面用のDEVMODEの2つのDEVMODEを管理することに対応していない。このため、このようなアプリケーションを自動両面印刷に対応させるためには、アプリケーションの設計を大幅に変更させなければならない場合がある、という問題がある。
【0006】
本発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、上述した従来のアプリケーションに備えられる印刷機能部において、印刷環境設定を管理する仕組みを基本的に変更することなく、複数の印刷環境設定を簡単に切り換えて利用することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は、印刷環境作成管理機能部を備えるコンピュータによって印刷を実行する際に、印刷環境設定を制御するためのコンピュータ・プログラムであって、
前記印刷環境作成管理機能部は、互いに異なる複数の印刷環境設定を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理しており、
実行する印刷処理に応じた印刷環境設定の取得を要求することにより、前記実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を、前記印刷環境作成管理機能部から取得し、取得した印刷環境設定を、前記実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理する機能
をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0008】
なお、前記複数の印刷環境設定は、印刷媒体の表面用および裏面用の2つの印刷環境設定であることが好ましい。
【0009】
上記コンピュータ・プログラムを実行したコンピュータでは、実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を、印刷環境管理機能部から取得し、取得した印刷環境設定を、実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理することができるので、例えば、複数の印刷環境設定を、印刷媒体の表面用および裏面用の2つの印刷環境設定とすると、自動両面印刷の際に、実行する印刷処理のための印刷環境設定を、表面用の印刷環境設定と裏面用の印刷環境設定とで簡単に切り換えることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、複数の印刷環境設定を管理するためのコンピュータ・プログラムであって、
互いに異なる複数の印刷環境設定を作成するとともに、複数の印刷環境設定記憶領域を確保し、確保した複数の印刷環境設定記憶領域に作成した複数の印刷環境設定を記憶する印刷環境作成機能と、
前記複数の印刷環境設定記憶領域に記憶されている複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理する印刷環境管理機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0011】
上記コンピュータ・プログラムをコンピュータで実行することにより、互いに異なる複数の印刷環境設定を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理する印刷環境作成管理機能を実現することができる。
【0012】
ここで、前記印刷環境管理機能は、印刷環境設定取得要求を受けた場合に、前記複数の印刷環境設定の中から、前記印刷環境設定取得要求に対応する印刷環境設定を選択し、選択した印刷環境設定を前記印刷環境設定要求の要求元へ返すことができる。
【0013】
また、前記印刷環境作成機能は、印刷を実行するプリンタを制御するプリンタ・ドライバから設定可能な印刷環境を取得し、前記複数の印刷環境設定を作成することができる。
【0014】
なお、前記複数の印刷環境設定は、印刷媒体の表面用および裏面用の2つの印刷環境設定であることが好ましい。
【0015】
なお、本発明は、以下に示すような種々の態様で実現することが可能である。
(1)コンピュータ・プログラム。
(2)上記コンピュータ・プログラムを記録した記憶媒体。
(3)上記コンピュータ・プログラムを含み搬送波内で具現化されたデータ信号。
(4)上記コンピュータリンタ・プログラムにより実現される印刷制御装置。
(5)上記印刷制御装置とプリンタとを備える印刷システム。
(6)印刷環境作成管理方法。
【0016】
本発明のコンピュータ・プログラムまたはそのプログラムを記録した記憶媒体等は、プログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM/RAM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.印刷システムの構成:
B.DEVMODE作成処理:
C.自動両面印刷処理:
D.変形例:
【0018】
A.印刷システムの構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システム1000の概略構成を示す説明図である。この印刷システム1000は、プリンタ100とコンピュータ200とを備えている。プリンタ100は、例えばインクジェット式カラープリンタにより構成され、コンピュータ200は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されている。このコンピュータ200が本発明の印刷制御装置に相当する。
【0019】
コンピュータ200は、コンピュータ・プログラムに従って種々の処理や制御を行うためのCPU210と、上記コンピュータ・プログラムを記憶したり、処理中に得られたデータなどを記憶したりするためのメモリ220と、各種周辺装置との間でデータなどのやり取りを行うためのI/O部230と、キーボードやポインティングデバイスなどから成り、ユーザからの指示などを入力するための入力装置240と、CRTや液晶ディスプレイなどから成り、画像やユーザ・インタフェースとしての各種設定画面などを表示するためのモニタ250と、画像データや印刷データなどを格納するためのハードディスク装置260と、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体RDに書き込まれた上記コンピュータ・プログラムや画像データなどを読み取るためのドライブ装置270と、を備えている。
【0020】
メモリ220には、オペレーティングシステム・プログラムや、アプリケーション・プログラム、プリンタ・ドライバ・プログラム、プリンタ・ドライバ・インタフェース・コントローラ・プログラム等が記憶されており、これらプログラムをCPU210が読み出して実行することにより、オペレーティングシステム(以下、「OS」と略す。)221や、アプリケーション(以下、「APP」と略す場合もある。)222、プリンタ・ドライバ223、プリンタ・ドライバ・インタフェース・コントローラ(以下、「PIC」と略す。)224として機能する。なお、OSとしては種々のOSが利用可能であるが、本例では、マイクロソフト社のウインドウズ(Windows:登録商標)が適用されているものとする。
【0021】
本実施例では、図1に示すように、メモリ220に記憶された上記コンピュータ・プログラムは、記録媒体RDに記録された形態で提供され、ドライブ装置270により読み取られることによって、コンピュータ内に取り込まれる。取り込まれたコンピュータ・プログラムは、ハードディスク装置260に転送され、その後、起動時などにメモリ220に転送される。
【0022】
図2は、コンピュータ200の印刷に関する構成を機能的に示すブロック図である。図示するように、コンピュータ200の印刷に関する構成は、機能的には、アプリケーション222と、OS221によって提供されるAPI(Application Program Interface)225と、プリンタ・ドライバ223と、PIC224とで表すことができる。また、メモリ220には、アプリケーション222がDEVMODEを管理するためのDEVMODE管理領域226と、PIC224がDEVMODEを管理するためのDEVMODE管理領域227と、が確保されている。
【0023】
ここで、ユーザからアプリケーション222に対して印刷の実行が指示されると、アプリケーション222の印刷機能部222aは、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されたDEVMODE記憶領域226aに記憶されているDEVMODEに従って、API225に含まれる描画実行機能部225aに対して、アプリケーションで作成した印刷データに応じた描画を要求する。このとき、描画実行機能部225aは、要求に応じた描画データ(印刷データ)を作成し、プリンタ・ドライバ223に対して出力する。プリンタ・ドライバ223は、受け取った描画データをプリンタ100で利用可能なデータ(印刷データ)に変換して、プリンタ100に対して出力する。プリンタ100は、受け取った印刷データに従って印刷を実行する。
【0024】
図3は、DEVMODEにより管理される印刷環境設定情報について示す説明図である。図に示すように、DEVMODEは、OSによって定義される標準定義情報部分と、ユーザによって独自に定義される拡張定義情報部分とに区分される。標準定義情報部分には、紙サイズ、用紙方向、コピー枚数、給紙装置(リア,フロント等)、カラー(モノクロ,カラー等)等の標準の印刷環境設定情報が含まれる。一方、拡張定義情報部分には、印刷モード,解像度,記録方法,色合わせ等のプリンタに依存するような独自の印刷環境設定情報が含まれる。なお、本発明の自動両面印刷の設定情報(図中、一点鎖線枠で示す。)は、拡張定義情報部分に含まれる。また、拡張定義情報部分の領域サイズは、標準定義情報部分に含まれる拡張サイズによって規定される。
【0025】
ところで、従来の場合には、図2のDEVMODE記憶領域226aに記憶されているDEVMODEは、アプリケーション222の起動時において、印刷機能部222aが、API225を介して、プリンタ・ドライバ223に対して、設定可能な印刷環境を問い合わせることによりデフォルトの印刷環境設定を決定し、決定した印刷環境設定を示す情報(印刷環境設定情報)を、DEVMODE記憶領域226aに書き込むことにより、記憶されていた。また、DEVMODE記憶領域226aに記憶されているDEVMODEは、印刷機能部222aが提供するグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を介してユーザが修正することもできた。
【0026】
一方、本発明の場合には、以下で説明するようにして、DEVEMODE記憶領域226aにDEVMODEが記憶される。
【0027】
まず、自動両面印刷でない場合には、アプリケーション222の印刷機能部222aが、PIC224の印刷環境管理機能部224aに対してDEVMODEの取得を要求することにより、印刷環境管理機能部224aは、自身が管理するDEVMODE管理領域227に確保されている1つのDEVMODE記憶領域227aから、記憶されているDEVMODEを読み出して、印刷機能部222aに出力する。これにより、印刷機能部222aは、DEVMODEを取得し、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに書き込むことができる。
【0028】
なお、DEVMODE管理領域227のDEVMODE記憶領域227aに記憶されているDEVMODEは、以下のようにしてDEVMODE記憶領域227aに記憶される。すなわち、アプリケーション222の起動時において、印刷機能部222aが、PIC224の印刷環境管理機能部224aに対して、設定可能な印刷環境を問い合わせることにより、PIC224の印刷環境作成機能部224bが、プリンタ・ドライバ223に対して、設定可能な印刷環境を問い合わせてデフォルトの印刷環境設定を作成し、作成した印刷環境設定を示す情報(印刷環境設定情報)を、DEVEMODE記憶領域226aに書き込むことにより記憶される。また、DEVMODE管理領域227のDEVMODE記憶領域227aに記憶されているDEVMODEは、印刷環境作成機能部224bが提供するグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を介してユーザが修正することもできる。
【0029】
一方、自動両面印刷の場合において、表面の印刷の際には、印刷機能部222aがPIC224の印刷環境管理機能部224aに対して、表面用のDEVMODEの取得を要求し、裏面の印刷の際には、裏面用のDEVMODEの取得を要求することにより、DEVMODE管理用域227に確保されている表面用のDEVMODE記憶領域227aに記憶されている表面用のDEVMODE(図中、「DEVMODE−SF」と表す。)あるいは裏面用のDEVMODE記憶領域227bに記憶されている裏面用のDEVMODE(図中、「DEVMODE−RF」と表す。)を読み出して、印刷機能部222aに出力する。これにより、印刷機能部222aは、表面の印刷の際には表面用のDEVMODEを取得し、裏面の印刷の際には裏面用のDEVMODEを取得し、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに書き込むことができる。
【0030】
なお、PIC224の印刷環境管理機能部224aが管理するDEVMODE管理領域227には、印刷機能部222aが提供するGUIによる印刷環境設定において自動両面印刷が設定されていない場合、上述したように、1つのDEVMODE記憶領域227aのみが割り当てられている。一方、自動両面印刷が設定されると、これに応じて、印刷環境管理機能部224aがDEVMODE管理領域227に既に確保されている1つのDEVMODE記憶領域227aを、表面用のDEVMODE記憶領域とするとともに、DEVMODE管理領域227内に、新たに、もう一つのDEVMODE記憶領域227bを、裏面用のDVEMODE記憶領域として確保した上で、印刷環境作成機能部224bに対して、表面用のDEVMODEおよび裏面用のDEVMODEの作成を指示する。このとき、印刷環境作成機能部224bは、プリンタ・ドライバ223に対して、設定可能な印刷環境を問い合わせて、デフォルトの表面用の印刷環境設定および裏面用の印刷環境設定を作成し、作成した表面用および裏面用の印刷環境設定を示す情報(印刷環境設定情報)を、表面用のDEVMODE記憶領域227aおよび裏面用のDEVMODE記憶領域227bに書き込む。これにより、表面用のDEVMODE記憶領域227aには表面用のDEVMODE(DEVMODE−SF)が記憶され、裏面用のDEVMODE記憶領域227bには裏面用のDEVMODE(DEVMODE−RF)が記憶される。なお、表面用のDEVMODE記憶領域227aに記憶されている表面用のDEVMODE、および、裏面用のDEVMODE記憶領域227bに記憶されている裏面用のDEVMODEは、印刷環境作成機能部224bが提供するグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を介してユーザが修正することもできる。
【0031】
以下では、まず、PIC224により実行されるDEVMODEの作成処理について説明し、次いで、アプリケーション222の印刷機能部222aにより実行される自動両面印刷処理について説明する。
【0032】
B.DEVMODE作成処理:
図4は、PIC224で実行されるDEVMODE作成処理について示す説明図である。このDEVMODE作成処理は、上述したように、アプリケーション222の起動時や、自動両面印刷設定時、印刷環境設定の修正時において、以下で説明するように実行される。
【0033】
DEVMODE作成処理を開始すると、まず、印刷環境管理機能部224aは、自動両面印刷のためのDEVMODE作成であるか否か判断する(ステップS110)。自動両面印刷のためのDEVMODE作成でない場合には(ステップS110:NO)、まず、印刷環境管理機能部224aは、自身が管理するDEVMODE管理領域227中に、1つのDEVMODE記憶領域227aを確保する(ステップS120)。そして、印刷環境作成機能部224bは、プリンタ・ドライバ223に対して、設定可能な印刷環境を問い合わせて取得し、取得した設定可能印刷環境情報に基づいてデフォルトの印刷環境設定を作成し、この作成した印刷環境設定(図中、「DEVMODE−OF」と表す。)を、確保されているDEVMODE記憶領域227aに書き込んで(ステップS130)、DEVMODE作成処理を終了する。
【0034】
一方、自動両面印刷のためのDEVMODE作成の場合には(ステップS110:YES)、自動両面印刷でない場合に確保していた1つのDEVMODE記憶領域227aを表面用のDEVMODE記憶領域として確保しなおすとともに、裏面用のDEVMODE記憶領域227bを確保する(ステップS140)。そして、印刷環境作成機能部224bは、プリンタ・ドライバ223に対して、設定可能な印刷環境を問い合わせて取得し、取得した設定可能印刷環境情報に基づいて、デフォルトの印刷環境設定として、表面用の印刷環境設定および裏面用の印刷環境設定を作成し、作成した表面用の印刷環境設定(図中、「DEVMODE−SF」と表す。)を、確保した表面用のDEVMODE記憶領域227aに書き込んで記憶するとともに、作成した裏面用の印刷環境設定(図中、「DEVMODE−RF」と表す。)を、確保した裏面用のDEVMODE記憶領域227bに書き込んで記憶し(ステップS150)、DEVMODE作成処理を終了する。
【0035】
以上のようにして、印刷環境作成機能部224bによって、自動両面印刷のための表面用および裏面用のDEVMODE(印刷環境設定)を作成して、印刷環境管理機能部224aによって管理可能なDEVMODE管理領域227中に確保された表面用のDEVMODE記憶用域227aおよび裏面用のDEVMODE記憶領域227bに、印刷環境管理機能部224aによって管理可能な状態で記憶しておくことができる。
【0036】
C.自動両面印刷処理:
図5は、アプリケーション222の印刷機能部223aで実行される自動両面印刷処理について示す説明図である。
【0037】
自動両面印刷処理を開始すると、まず、いまから実施する印刷処理が表面であるか否か判断する(ステップS210)。
【0038】
実施する印刷処理が表面である場合には(ステップS210:YES)、まず、印刷機能部222は、PIC224から表面用のDEVMODEを取得し、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに、自身が管理するDEVMODEとして記憶する(ステップS220)。
【0039】
具体的には、印刷機能部222aが、PIC224の印刷環境管理機能部224aに対して、表面用のDEVMODEの取得を要求すると、これに応じて、印刷環境管理機能部224aは、自身が管理するDEVMODE管理領域227の表面用のDVEMODE記憶領域227aから、表面用のDEVMODE(図中、「DEVMODE−SF」と表す。)を読み出して、印刷機能部222aに出力する。これにより、印刷機能部222aは表面用のDEVMODEを取得する。そして、印刷機能部222aは、取得した表面用のDEVMODEを、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに書き込むことにより、自身が管理するDEVMODEとして記憶する。
【0040】
そして、印刷機能部222aは、DEVMODE記憶領域226aに記憶されている表面用のDEVMODEを用いて印刷処理を実行する(ステップS230)。なお、この表面の印刷処理は、従来の印刷処理と同じであるので説明を省略する。
【0041】
一方、実施する印刷処理が裏面である場合には(ステップS210:NO)、まず、印刷機能部222は、PIC224から裏面用のDEVMODEを取得し、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに、自身が管理するDEVMODEとして記憶する(ステップS240)。
【0042】
具体的には、印刷機能部222aがPIC224の印刷環境管理機能部224aに対して裏面用のDEVMODEの取得を要求すると、これに応じて、印刷環境管理機能部224aは、自身が管理するDEVMODE管理領域227の裏面用のDVEMODE記憶領域227bから、裏面用のDEVMODE(図中、「DEVMODE−RF」と表す。)を読み出して、印刷機能部222aに出力する。これにより、印刷機能部222aは裏面用のDEVMODEを取得する。そして、印刷機能部222aは、取得した裏面用のDEVMODEを、自身が管理するDEVMODE管理領域226に確保されているDEVMODE記憶領域226aに書き込むことにより、自身が管理するDEVMODEとして記憶する。
【0043】
そして、印刷機能部222aは、DEVMODE記憶領域226aに自身が管理するDEVMODEとして記憶されている裏面用のDEVMODEを用いて印刷処理を実行する(ステップS250)なお、この裏面の印刷処理も、従来の印刷処理と同じであるので説明を総略する。
【0044】
次に、印刷機能部222aは、上記表面または裏面の印刷処理を実行した後で、この自動両面印刷処理を終了するか否か判断し(ステップS260)、まだ印刷処理を実行していない未処理のページがある場合には(ステップS260:NO)、次に処理を実行する面を、表面から裏面、あるいは、裏面から表面に変更して、上記ステップS210〜S240の処理を実行する。一方、未処理のページがなく、全ページの印刷処理が終了した場合には(ステップS260:YES)、この自動両面印刷処理を終了する。
【0045】
なお、印刷環境管理機能部224aは、表面用のDEVMODE記憶領域227aに記憶されているDEVMODE(DEVMODE−SF)が利用される条件は表面の印刷であり、裏面用のDEVMODE記憶領域227bに記憶されているDEVMODE(DEVMODE−RF)が利用される条件は裏面の印刷であることを、それぞれ対応付けて管理しているので、表面用のDEVMODEの取得が要求されれば、これに応じて表面用のDEVMODEを出力することができ、裏面用のDEVMODEの取得が要求されれば、これに応じて裏面面用のDEVMODEを出力することができる。
【0046】
以上のように、アプリケーション222の印刷機能部222aでは、表面の印刷処理を実行する場合には、PIC224の印刷環境管理機能部224aから表面用のDEVMODEを取得し、取得した表面用のDEVMODEを、自身が管理するDEVMODEとして用いて、表面の印刷処理を実行することができる。そして、裏面の印刷処理を実行する場合には、PIC224の印刷環境管理機能部224aから裏面用のDEVMODEを取得し、取得した裏面用のDEVMODEを、自身が管理するDEVMODEとして用いて、裏面の印刷処理を実行することができる。
【0047】
これにより、印刷機能部222aは、従来の機能に加えて、PIC224の印刷環境管理機能部224aに対して、表面または裏面に対応するDEVMODEを要求して取得する機能を、新たに備える必要があるが、自身が管理する1つのDEVMODEを用いて印刷処理を実行する従来の機能を変更せずに、表面と裏面とで異なるDEVMODEを用いて印刷処理を実現することが可能である。
【0048】
なお、以上説明から分かるように、PIC224が本発明における複数の印刷環境設定を作成し、管理するためのコンピュータ・プログラムを実行することにより実現される印刷環境作成管理機能部に相当する。また、印刷機能部222aが本発明における
【0049】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
上記実施例では、例えば、はがきの宛名面と通信面のように、印刷媒体の表面と裏面とで印刷設定環境が異なる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PICが、互いに異なる複数の印刷環境設定(DEVMODE)を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理し、印刷機能部が、実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を取得し、取得した印刷環境設定を、実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理することにより、印刷機能部が管理する印刷環境設定を、印刷処理を実行するページに対応する印刷環境設定に切り換えるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例では、アプリケーションの一部として印刷機能部を備える場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、アプリケーションから独立した印刷機能部とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例としての印刷システム1000の概略構成を示す説明図である。
【図2】コンピュータ200の印刷に関する構成を機能的に示すブロック図である。
【図3】DEVMODEにより管理される印刷環境設定情報について示す説明図である。
【図4】PIC224で実行されるDEVMODE設定処理について示す説明図である。
【図5】アプリケーション222の印刷機能部223aで実行される自動両面印刷処理について示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1000…印刷システム
100…プリンタ
210…CPU
220…メモリ
221…オペレーションシステム(OS)
222…アプリケーション
222a…印刷機能部
224…プリンタ・ドライバ・インタフェース・コントローラ(PIC)
224a…環境管理機能部
224b…印刷環境設定機能部
225…アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)
225a…描画実行機能部
225b…環境管理機能部
226…DEVMODE管理領域
226a…DEVMODE記憶領域
227…DEVMODE管理領域
227a…DEVMODE記憶領域
227b…DEVMODE記憶領域
240…入力装置
250…モニタ
260…ハードディスク装置
270…ドライブ装置
RD…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷環境作成管理機能部を備えるコンピュータによって印刷を実行する際に、印刷環境設定を制御するためのコンピュータ・プログラムであって、
前記印刷環境作成管理機能部は、互いに異なる複数の印刷環境設定を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理しており、
実行する印刷処理に応じた印刷環境設定の取得を要求することにより、前記実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を、前記印刷環境作成管理機能部から取得し、取得した印刷環境設定を、前記実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理する機能
をコンピュータに実現させるためのコンピュータ・プログラム。
【請求項2】
請求項1記載のコンピュータ・プログラムであって、
前記複数の印刷環境設定は、印刷媒体の表面用および裏面用の2つの印刷環境設定である
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項3】
複数の印刷環境設定を作成し、管理するためのコンピュータ・プログラムであって、
互いに異なる複数の印刷環境設定を作成するとともに、複数の印刷環境設定記憶領域を確保し、確保した複数の印刷環境設定記憶領域に作成した複数の印刷環境設定を記憶する印刷環境作成機能と、
前記複数の印刷環境設定記憶領域に記憶されている複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理する印刷環境管理機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータ・プログラム。
【請求項4】
請求項3記載のコンピュータ・プログラムであって、
前記印刷環境管理機能は、印刷環境設定取得要求を受けた場合に、前記複数の印刷環境設定の中から、前記印刷環境設定取得要求に対応する印刷環境設定を選択し、選択した印刷環境設定を前記印刷環境設定要求の要求元へ返す
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項5】
請求項3記載のコンピュータ・プログラムであって、
前記印刷環境作成機能は、印刷を実行するプリンタを制御するプリンタ・ドライバから設定可能な印刷環境を取得し、前記複数の印刷環境設定を作成する
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項6】
請求項3ないし請求項4のいずれかに記載のコンピュータ・プログラムであって、
前記複数の印刷環境設定は、印刷媒体の表面用および裏面用の2つの印刷環境設定である
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項7】
印刷環境作成管理機能部を備え、印刷の実行を制御する印刷制御装置であって、
前記印刷環境作成管理機能部は、互いに異なる複数の印刷環境設定を作成し、作成した複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理しており、
実行する印刷処理に応じた印刷環境設定の取得を要求することにより、前記実行する印刷処理に対応する印刷環境設定を、前記印刷環境作成管理機能部から取得し、取得した印刷環境設定を、前記実行する印刷処理のための印刷環境設定として管理する手段を備える、
ことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項8】
印刷を実行する印刷システムであって、
複数の印刷環境設定を作成し管理する印刷制御装置と、
前記印刷制御装置から供給される印刷環境設定に従って印刷を実行する印刷装置と、を備え、
前記印刷制御装置は、
互いに異なる複数の印刷環境設定を作成するとともに、複数の印刷環境設定記憶領域を確保し、確保した複数の印刷環境設定記憶領域に作成した複数の印刷環境設定を記憶する印刷環境作成機能部と、
前記複数の印刷環境設定記憶領域に記憶されている複数の印刷環境設定を、それぞれの印刷環境設定が利用される条件と対応づけて管理する印刷環境管理機能部と、を備える、
ことを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−90661(P2008−90661A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271792(P2006−271792)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】