説明

印刷用ロールの印圧付与装置

【課題】 機械構造部の熱変形による印刷精度の悪化を防止する。
【解決手段】 架台13上に設けたガイドレール14を跨ぐ門型の支持フレーム22を設け、その内側に、ブランケットロール20を回転自在に保持するロール保持フレーム25を配置して、上下方向のリニアガイド23aを介し取り付ける。支持フレーム22の上部のビーム材24の上側に、熱伝達の断面積が少ない溶接リブ構造のブラケット32を介して設けた駆動モータ28及びギアボックス29と、その出力側に連結した上下方向のねじ軸27と、ナット部材30とからジャッキ26を形成し、ナット部材30をロール保持フレーム25に取り付けて印圧付与装置19を形成する。ジャッキ26によりブランケットロール20に印圧を付与する際に駆動モータ28が発熱しても、その熱伝導の経路がブラケット32を経るようにしてあることで、支持フレーム22に伝達される熱量を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置における圧胴、版胴、ブランケットロール等の印刷用ロールを、所要の押付対象物に、上方から所要の印圧で押し付けるように接触させて印刷処理を行なう形式の印刷装置で用いる印刷用ロールの印圧付与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0003】
上記液晶ディスプレイ等の電子回路を基板に形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがある。更に、基板上に上記線幅を10μm程度とするような精密な電子回路を複数を重ね合わせて形成する場合には、重ね合わせずれを数μmに抑えることが必要とされることもある。
【0004】
そのため、上記基板上に電子回路を印刷により形成する場合は、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷に比して高い印刷精度が要求されることから、この場合は、ブランケットロールと版面や印刷対象との間に付与する印圧について非常に高い精度が必要とされる。そのため、高い印刷精度のオフセット印刷を行う場合のオフセット印刷装置としては、版として印刷対象と同様の平板状の版を用いる形式とすることが有利とされている。
【0005】
図6は従来提案されている平板状の版を用いたオフセット印刷装置の一例を示すもので、基台1上に一軸方向に延びるリニアガイドレール2を設けると共に、該リニアガイドレール2と平行に、サーボモータ(ステージモータ)4により駆動されるボールねじ機構3を設け、平板状の版5と印刷対象(ワーク基板)6を所定の間隔で上記一軸方向に並べて固定できるようにした移動テーブル(ステージ)7を、上記リニアガイドレール2にスライド可能に取り付けると共に上記ボールねじ機構3で往復移動させることができるようにしてある。
【0006】
更に、移動テーブル7の所要寸法上方となる位置に、ブランケットロール(ブランケット胴)8を、移動テーブル7の移動方向であるリニアガイドレール2の長手方向に直交する水平方向に延びるように配置すると共に、該ブランケットロール8の両端の回転軸を、その下側に配置して上記基台1に取り付けた昇降用のジャッキ(荷圧装置)9により支持させた構成としてある。
【0007】
10は上記ブランケットロール8の回転駆動用モータであり、該ブランケットロール8の片方の回転軸に減速機11を介して接続してある。12は上記移動テーブル7上に保持した版5にインキングするための上下動可能なインキング装置である。
【0008】
かかる構成としてあるオフセット印刷装置によれば、上記ボールねじ機構3により移動テーブル7を移動させることで該移動テーブル7上の版5をインキング装置12へ導いて該版5に対するインキングを行わせ、次いで、上記ボールねじ機構3による移動テーブル7の移動に伴って、該移動テーブル7上に保持した上記版5と印刷対象6を、上記ブランケットロール8の直下位置を順次通過させるときに、上記回転駆動用モータ10により回転駆動させた上記ブランケットロール8を、上記ジャッキ9により下方へ引くことで版5と印刷対象6に所要の印圧を付与した状態で上方より順に接触させることで、上記インキングされた版5からブランケットロール8へのインクの転写(受理)処理を行わせた後、該ブランケットロール8より上記印刷対象6へインクの再転写(印刷)処理を行わせて、オフセット印刷を実施できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0009】
なお、オフセット印刷装置におけるブランケットロールを、版や印刷対象に所要の印圧を付与した状態で接触させる機構としては、該ブランケットロールの上側にジャッキを配置して、該ジャッキによりブランケットロールを下向きに押すようにする構成も広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3293978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記図6に示したオフセット印刷装置では、ブランケットロール8を版5や印刷対象6に対して所要の印圧を付与した状態で押し付けている間は、ジャッキ9ではブランケットロール8へ作用させるための下向きの推力を発生させ続ける必要があるが、この際、ブランケットロール8は上記版5や印刷対象6に接触していてほとんど動かないため、上記ジャッキ9の駆動モータでは、該駆動モータへ供給される電気エネルギーを仕事として消費することができず、したがって、上記駆動モータへ供給された電気エネルギーの大部分が熱へ変換されるようになることから、該ジャッキ9の発熱が多くなってしまう。
【0012】
そのため、上記オフセット印刷装置にて、前述したように基板上に上記線幅を10μm程度とするような精密な電子回路を印刷により形成する場合は、上記ジャッキ9の発熱に伴うブランケットロール8や基台1を含む機械構造部の熱変形が、印刷精度に影響する虞が懸念されるというのが実状である。
【0013】
しかし、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷を行う場合に要求される印刷精度では、上記ブランケットロール8の昇降及び印圧付与を行うためのジャッキ9の発熱に起因する熱変形による影響が小さいため、従来のオフセット印刷装置では、上記したようなブランケットロール8の昇降及び印圧付与を行うために用いるジャッキ9の発熱に伴う機械構造部の熱変形に起因する印刷精度の悪化については特に考慮されておらず、その対策も特に提案されていないというのが実状である。
【0014】
そのため、本発明者等は、オフセット印刷装置におけるブランケットロールの昇降及び印圧の付与を行うためのジャッキの発熱に起因する機械構造部の熱変形を抑制できるようにするために、上記ジャッキをブランケットロールの上方に配置すると共に、該ジャッキの駆動モータを、上記ブランケットロールを昇降可能に支持する支持フレームの上部側に露出させて設けることで、該ジャッキの駆動モータの発熱による熱を大気中に効率よく放散させることができる構成とすることを計画している。
【0015】
そこで、本発明は、上記のようにブランケットロールに印圧を付与するジャッキの駆動モータを、上記ブランケットロールを昇降可能に支持する支持フレームの上部側に露出させて設ける考えを更に発展させて、ブランケットロール等の印刷用ロールの昇降及び印圧付与を行うためのジャッキの発熱に伴う機械構造部の熱変形を更に抑制できて、高精度な印刷を行うことができる印刷用ロールの印圧付与装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、押付対象物の上方に配置する印刷用ロールを回転可能に保持するロール保持フレームを、左右のコラムと該各コラムの上端部同士を連結するビーム材からなる門型の支持フレームの内側に昇降可能に配置すると共に、上記支持フレームのビーム材の上側に溶接リブ構造のブラケットを介して取り付けた駆動モータ及びその出力側に接続したギアボックスと、上下方向に延び且つ上端側を上記ギアボックスの出力側に連結したねじ軸と、該ねじ軸に螺着するナット部材からなるジャッキの上記ナット部材を、上記ロール保持フレームに取り付けてなる構成とする。
【0017】
又、上記構成において、ブラケットを、隙間を隔てて平行に配置した或る高さ寸法を有する脚部材と、水平な平板状として幅方向一端寄りにギアボックスの出力軸を通すための貫通孔を備え且つ幅方向一端寄り部分の下面に上記各脚部材を溶接してなる水平部材と、該水平部材の幅方向他端縁部の上側に下端を溶接した駆動モータ取付用の垂直部材と、該垂直部材の一側面と上記水平部材の上面との間に一体に溶接したリブ材とからなる溶接リブ構造とした構成とする。
【0018】
更に、上記構成において、ブラケットにおけるリブ材を、垂直部材より離反するに連れて高さ寸法が減少する形状とした構成とする。
【0019】
更に又、上記各構成において、ブラケットを、ジルコニアセラミックス製とした構成とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の印刷用ロールの印圧付与装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
【0021】
(1)押付対象物の上方に配置する印刷用ロールを回転可能に保持するロール保持フレームを、左右のコラムと該各コラムの上端部同士を連結するビーム材からなる門型の支持フレームの内側に昇降可能に配置すると共に、上記支持フレームのビーム材の上側に溶接リブ構造のブラケットを介して取り付けた駆動モータ及びその出力側に接続したギアボックスと、上下方向に延び且つ上端側を上記ギアボックスの出力側に連結したねじ軸と、該ねじ軸に螺着するナット部材からなるジャッキの上記ナット部材を、上記ロール保持フレームに取り付けてなる構成としてあるので、印刷用ロールに印圧を付与するジャッキの駆動モータが発熱しても、該駆動モータの取り付けに用いるブラケットが溶接リブ構造として熱伝達の断面積が少なくなるようにしてあるため、上記発熱する駆動モータより該ブラケットを介した支持フレームのビーム材への熱伝導を抑制でき、このため、該支持フレームへ伝熱される熱量を低減させることができる。したがって、上記ジャッキの発熱に伴う機械構造部の熱変形を大幅に抑制でき、印刷パターンの形、大きさ、位置等の幾何学的な再現性を高めることができるため、高精度な印刷を行うことができる。
(2)ブラケットを、隙間を隔てて平行に配置した或る高さ寸法を有する脚部材と、水平な平板状として幅方向一端寄りにギアボックスの出力軸を通すための貫通孔を備え且つ幅方向一端寄り部分の下面に上記各脚部材を溶接してなる水平部材と、該水平部材の幅方向他端縁部の上側に下端を溶接した駆動モータ取付用の垂直部材と、該垂直部材の一側面と上記水平部材の上面との間に一体に溶接したリブ材とからなる溶接リブ構造とした構成とすることにより、上記(1)の効果を得るための熱伝達の断面積が少ない溶接リブ構造のブラケットを容易に実現することができる。
(3)ブラケットにおけるリブ材を、垂直部材より離反するに連れて高さ寸法が減少する形状とした構成とすることにより、リブ材の熱伝達に関わる断面積が、垂直部材より離反するに連れて徐々に小さくなるため、ジャッキの駆動モータを取り付ける垂直部材より水平部材へのリブ材を介した熱伝導を抑えることができて、上記駆動モータよりブラケットを介した支持フレームへの熱伝導を更に抑制することができる。
(4)ブラケットを、ジルコニアセラミックス製とした構成とすることにより、ブラケット自体の熱伝達率を小さいものとすることができるため、ジャッキの駆動モータより該ブラケットを介した支持フレームへの熱伝導を更に大幅に抑制することができる。
(5)以上により、従来に比して高精度な印刷を行なうことが可能になることから、線幅を10μm程度とするような精密な電子回路を、印刷位置の位置ずれを数μmからサブμmオーダーに抑えて印刷を行う場合のような精密な印刷を高精度で行う場合に有利な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の印刷用ロールの印圧付与装置の実施の一形態を示す概略正面図である。
【図2】図1における支持フレームのビーム材上にジャッキの駆動モータを設置するために用いるブラケットを拡大して示す切断正面図である。
【図3】図2のA−A方向矢視図である。
【図4】図2のB−B方向矢視図である。
【図5】図1の転写装置を備えたオフセット印刷装置の全体構成を示す概略側面図である。
【図6】従来提案されている平板状の版を用いたオフセット印刷装置の一例の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図5は本発明の印刷用ロールの印圧付与装置の実施の一形態として、たとえば、図5に示すオフセット印刷装置における押付側の印刷用ロールとなるブランケットロールの印圧付与に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0025】
ここで、先ず、図5に示したオフセット印刷装置について概説すると、該オフセット印刷装置は、水平な架台13の上側に、一方向に延びるガイドレール14を、たとえば、2本一組で設ける。上記ガイドレール14上には、押付対象物としての平板状の版15と基板等の平板状の印刷対象16を保持させるための移動テーブルとして、たとえば、版15と印刷対象16をそれぞれ個別に保持できるようにした版テーブル17と印刷対象テーブル18を、ガイドレール14の長手方向一端側(図1における左側)より並べて配置して、図示しない個別の駆動装置により独立して往復動(走行)できるように取り付ける。
【0026】
更に、上記ガイドレール14の長手方向における上記版テーブル17及び印刷対象テーブル18が共に走行可能な途中位置、たとえば、上記ガイドレール14の長手方向中間位置と対応する上記架台13上の所要個所に、上記ガイドレール14の長手方向と直交する水平方向に延びるブランケットロール20を備えた本発明の印刷用ロールの印圧付与装置(以下、単に本発明の印圧付与装置と云う)19を設け、且つ上記ガイドレール14の長手方向における上記版テーブル17が走行可能な別の途中位置、たとえば、上記本発明の印圧付与装置19の設置個所よりもガイドレール14の長手方向一端側へ所要寸法離れた位置となる上記架台13上の所要個所に、上記版テーブル17に保持された版15に対してインキングを行うためのインキング装置21を設けた構成としてある。
【0027】
上記構成としてあるオフセット印刷装置に適用する本発明の印圧付与装置19は、図1乃至図4に示す如き構成としてある。なお、以下においては、説明の便宜上、上記ガイドレール14の長手方向を前後方向、それに直交する水平方向を左右方向として説明する。
【0028】
すなわち、上記架台13上におけるガイドレール14の長手方向中間位置と対応する個所に、上下方向に所要の高さ寸法を有する左右一対のコラム23の上端部同士を水平方向に所要寸法延びるビーム材24で一体に連結してなる門型の支持フレーム22を、上記ガイドレール14を跨ぐように設ける。
【0029】
更に、ブランケットロール20の両端の各回転軸を、ロール保持フレーム25の左右両端部に設けてあるベアリングハウジング25aに、図示しないベアリングを介してそれぞれ回転自在に保持させると共に、上記ロール保持フレーム25の所要個所を、上記支持フレーム22の所要個所、たとえば、各コラム23に上下方向のリニアガイド23aを介して上下方向にスライド可能に取り付ける。
【0030】
上記支持フレーム22のビーム材24において上記ロール保持フレーム25の左右両端部の上方となる左右の2個所には、軸受31をそれぞれ貫通させて設けると共に、該各軸受31に、上下方向配置した所要の長さ寸法のねじ軸27の上端寄り部分をそれぞれ回転自在に保持させる。
【0031】
更に、上記ビーム材24における上記各軸受31の近傍位置の上側に、サーボモータ等の昇降用の駆動モータ28、及び、該駆動モータ28の出力側にカップリング33を介して入力軸を連結したギアボックス29を、ブラケット32を介してそれぞれ個別に設置すると共に、上記各ギアボックス29の出力軸に、上記各ねじ軸27における上記軸受31の上側に突出する上端端部(突出端部)を、カップリング34を介しそれぞれ連結する。
【0032】
更に又、上記各ねじ軸27に個別に螺合するナット部材30を、上記ロール保持フレーム25の左右両端部の上側に、所要の取付部材35を介して取り付けて、上記昇降用の各駆動モータ28と、該各駆動モータ28の運転によりそれぞれ対応するギアボックス29を介して回転駆動される各ねじ軸27と、上記各ナット部材30からボールねじ式のジャッキ26を構成する。これにより、上記各ジャッキ26の駆動モータ28の運転により、上記各ギアボックス29を介して各ねじ軸27を回転駆動させることで、上記各ナット部材30と一体に上記ブランケットロール20を保持したロール保持フレーム25を昇降させることができるようにする。
【0033】
なお、上記各ジャッキ26によるブランケットロール20を保持したロール保持フレーム25の昇降に伴い、上記ブランケットロール20を、該ブランケットロール20の外周面の下端部が、上記版テーブル17上に保持された版15及び印刷対象テーブル18上に保持された印刷対象16の上面よりも所要寸法上方となる高さ位置から、該ブランケットロール20の外周面の下端部が、上記版テーブル17上の版15及び印刷対象テーブル18上の印刷対象16の上面よりもやや下方となる高さ位置までの範囲で昇降させることができるようにしてあるものとする。これにより、上記ブランケットロール20の直下位置に版テーブル17上に保持された版15や印刷対象テーブル18上に保持された印刷対象が配置されているときに、上記各ジャッキ26によりブランケットロール20をロール保持フレーム25と共に下降させることで、該ブランケットロール20を上記版テーブル17上の版15や印刷対象テーブル18上の印刷対象16に上方より接触させると共に、この版15や印刷対象16に接触したブランケットロール20を、上記各ジャッキ26によりロール保持フレーム25と共に下方へ付勢することで、該ブランケットロール20を所要の印圧を付与した状態で上記版15や印刷対象16に押し付けることができるようにしてある。
【0034】
更に、上記支持フレーム22のビーム材24の上側に上記各ジャッキ26の各駆動モータ28及び各ギアボックス29を設置するための上記各ブラケット32は、上記駆動モータ28の発熱する熱が該各ブラケット32を介した熱伝導により支持フレーム22に伝わり難くなるようにするために、図2乃至図4に示す如き溶接リブ構造としてある。
【0035】
具体的には、上記各ブラケット32は、前後方向に所要の隙間を隔てて平行に配置した所要の高さ寸法を有する2枚の垂直な矩形板状の脚部材36の上側に、水平な平板状として幅方向一端寄りの所要個所に上記ギアボックス29の出力軸を通すための貫通孔38を穿設してなる水平部材37を、該水平部材37の幅方向の他端寄り部分が上記各脚部材36の幅方向の外側に所要寸法張り出すように配置して、上記各脚部材36の上端部を、上記水平部材37の幅方向一端寄り部分の下面におけるそれぞれ対応する個所に溶接により一体に取り付ける。
【0036】
更に、上記水平部材37の幅方向他端縁部の上側に、上記駆動モータ28のケーシングの先端部を挿入するためのモータ取付孔40を備えた垂直な矩形板状の垂直部材39を配置して、該垂直部材39の下端を、上記水平部材37の幅方向他端縁部の上面に溶接により一体に取り付ける。
【0037】
更に又、上記水平部材37の前後方向の両端縁部と、上記垂直部材39の前後方向の両端縁部との間に、上記垂直部材39より離反する方向に向けて熱伝達の断面積が徐々に小さくなるように、上記垂直部材39より離反する方向に向けて高さ寸法が徐々に低くなる略直角三角形状のリブ材41をそれぞれ配置して、上記水平部材37と垂直部材39の対応する個所に溶接によりそれぞれ一体に取り付けた構成としてある。
【0038】
なお、上記各リブ材41は、必要強度が得られる許容範囲内でできるだけ薄肉とし且つ表面積ができるだけ大きくなるようにすると共に、上記各脚部材36も、必要強度が得られる許容範囲内でできるだけ断面積が小さくなるようにしてあるものとする。
【0039】
更に、上記ブラケット32の材質は、可能な限り熱伝導係数の少ない材料を用いるようにする。具体的には、鉄(熱伝導係数84W/mK)よりはSUS304(同16.7W/mK)が好ましく、更には、ジルコニアセラミックス(同3W/mK)のような熱伝導係数が更に少ないものがより好ましい。
【0040】
上記構成としてある各ブラケット32には、垂直部材39のモータ取付孔40に上記駆動モータ28のケーシングの先端部を内向きに挿入して取り付けると共に、上記水平部材37の上側に、上記ギアボックス29を、該ギアボックス29の出力軸が貫通孔38に通るように配置して取り付けて、上記駆動モータ28の出力側にカップリング33を介して上記ギアボックス29の入力軸を接続した状態としてある。
【0041】
更に、上記ブラケット32は、上記支持フレーム22のビーム材24の上側に、上記水平部材37の貫通孔38に通した上記ギアボックス29の出力軸がビーム材24に設けた軸受31に保持させるねじ軸27と同軸心上に位置するように配置した状態で、各脚部材36の下端部に設けてあるフランジ部36aを、上記ビーム材24の上面の対応する個所に、図示しないボルトの如き固定手段で設置するようにしてある。
【0042】
なお、上記駆動モータ28の出力側とギアボックス29の入力軸を連結するためのカップリング33、及び、上記ギアボックス29の出力軸と上記ねじ軸27の上端部とを連結するためのカップリング34は、できるだけ熱伝導率の低いものを用いるようにしてあるものとする。
【0043】
42はロール保持フレーム25に保持させたブランケットロール20の一方の回転軸に減速機43を介して接続した回転駆動用モータである。
【0044】
以上の構成としてある本発明の印圧付与装置19を備えたオフセット印刷装置を用いてオフセット印刷を行う場合は、先ず、版15を保持した版テーブル17を、インキング装置21へ送って、上記版15に適正量のインキングを行い、このインキングが行われた版15を保持した版テーブル17を、上記本発明の印圧付与装置19よりガイドレール14の長手方向他端寄りに設定してある図示しない所定の印刷処理開始位置へ移動させておく。又、印刷対象テーブル18には、印刷対象16を保持させておく。
【0045】
次に、上記版15を保持した版テーブル17と、印刷対象16を保持した印刷対象テーブル18を、ガイドレール14に沿う長手方向他端側から一端側への走行を開始させ、該版テーブル17上に保持した版15と、印刷対象テーブル18上に保持した印刷対象16が、本発明の印圧付与装置19におけるブランケットロール20の直下位置を順次通過するときに、回転駆動用モータ41により上記版15や印刷対象16の移動速度に同期する周速で転動(回転)させ且つ各ジャッキ26の作動によりロール保持フレーム25と共に下降させたブランケットロール20を、上記版テーブル17上の版15と印刷対象テーブル18上の印刷対象16に対して上方より所要の印圧を付与した状態で押し付けるようにして順次接触させる。これにより、上記インキングしてある版15よりブランケットロール20へのインクの転写(受理)処理と、該ブランケットロール20より印刷対象への再転写(印刷)処理が順に行なわれることでオフセット印刷が行われるようになる。
【0046】
この転写(受理)処理、及び、再転写(印刷)処理の際、上記ブランケットロール20より版15や印刷対象16に所要の印圧を作用させるために該ブランケットロール(イ)対して下向きの推力を作用させ続けるようにしてある各ジャッキ26では、それぞれの駆動モータ28に供給される電気エネルギーの大部分が熱へ変換されるようになることから、該各ジャッキ26における各駆動モータ28が発熱するようになるが、該発熱する各駆動モータ28は、熱伝導係数の少ない材料製の溶接リブ構造とし、且つ駆動モータ28が取り付けてある垂直部材39と水平部材37との間に設けるリブ材41を、上記垂直部材39より離反する方向に向けて熱伝達の断面積が徐々に小さくなるようにしてあることで、上記駆動モータ28の発熱する熱を直接受ける上記垂直部材39より、該垂直部材39の下端面と上記リブ材41を介して水平部材37への熱伝導を抑え、更に、各脚部材36を必要強度が得られる許容範囲内でできるだけ断面積が小さくなるようにしてあることで、上記水平部材37より各脚部材36上端側から下端側への熱伝導を抑えることができるようにしてある個別のブラケット32を介して支持フレーム22のビーム材24の上側に取り付けた構成としてあるため、上記発熱する各ジャッキ26の駆動モータ28より、上記各ブラケット32を介した上記支持フレーム22のビーム材24への熱伝導は抑制される。
【0047】
更に、上記各ブラケット32は、上記駆動モータ28の出力軸の方向と、ギアボックス29の出力軸の方向が直角となるようにして、熱伝達距離を長く取るようにしてあるため、このことによっても、上記発熱する各駆動モータ28より各ブラケット32を介した支持フレーム22のビーム材24への熱伝導を抑えることができる。
【0048】
更には、上記各ブラケット32のリブ材41の表面積ができるだけ大きくなるようにしてあると共に、上記各駆動モータ28自体を、支持フレーム22のビーム材24の上方の外部に露出されるように設けてあるため、上記各ブラケット32の各リブ材41や、上記各駆動モータ28自体より大気への熱の輻射を効率よく行わせることができる。
【0049】
以上により、上記各ジャッキ26の駆動モータ28が発熱する熱は、その大部分が輻射により周囲環境へ逃がす(放散させる)ことができるようになるため、上記支持フレーム22等の機械構造部へ伝達される熱を大幅に低減でき、よって、上記機械構造部の熱変形の影響を許容値以下に抑えることができるようになる。
【0050】
なお、本発明者等が行った数値計算によれば、ジャッキ26を熱源と考えると、輻射で周囲環境に逃げる熱量は、
P=ρ・ε・A(T2−T1)
ここで、ρ=5.67×10−8[Wm−2−4](シュテファン・ボルツマン定数),ε=0.5〜0.9(鉄)放射率,A[m2]表面積,T2[K]ジャッキの絶対温度,T1[K]周囲環境の絶対温度
と表すことができる。
【0051】
一方、上記ブラケット32を介してジャッキ26の駆動モータより支持フレーム22側へ伝熱される熱量は、
Q=k・S・(T2−Ts1)/L
ここで、k[W/mK]熱伝達率,S[m2]断面積,L[m]長さ,T2[K]ジャッキの絶対温度,Ts1[K]装置温度
で表すことができる。
【0052】
ここで、ジャッキ26の表面積をA=0.0688m、ジャッキ26の温度が30℃(303K)、周囲環境温度が22℃(295K)、ε=0.5、S=0.001108m、L=0.133mとし、k=3[W/mK](ジルコニアセラミックス)とすると、P=1.67W、Q=0.20Wとなり、熱輻射による周囲環境への熱の放散を、ブラケット32を介して熱伝導される熱量に比して十分に大きくとることができることが明らかとなっている。
【0053】
したがって、本発明の印圧付与装置を採用したオフセット印刷装置によれば、ジャッキ26の発熱に伴う機械構造部の熱変形を大幅に抑制でき、印刷パターンの形、大きさ、位置等の幾何学的な再現性が高まることで、高精度な印刷を行うことができる。
【0054】
以上により、従来に比して高精度な印刷を行なうことが可能になることから、線幅を10μm程度とするような精密な電子回路を、印刷位置の位置ずれを数μmからサブμmオーダーに抑えて印刷を行う場合のような精密な印刷を高精度で行う場合に有利な構成とすることができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、ブランケットロール20の下方を版15と印刷対象16が移動できるようにしてあれば、版15と印刷対象16を、ガイドレール14に沿って移動できるようにした共通の移動テーブルに保持させる形式のオフセット印刷装置に適用してもよい。
【0056】
ブランケットロール20以外の版胴や圧胴等の印刷用ロールを、版や印刷対象、その他、所要の押付対象物に所要の印圧を付与した状態で押し付けて印刷処理を行うようにしてある印刷装置であれば、いかなる形式の印刷装置の印刷用ロールに印圧を付与する場合に適用してもよい。
【0057】
各ジャッキ26に表面積を増やすためのフィンを設けて、該各ジャッキ26より周囲環境への熱輻射を高めるようにしてもよい。
【0058】
各ブラケット32における水平部材37の幅方向他端部の脚部材36からの張り出し量を増加させて、各ジャッキ26の駆動モータ28を取り付ける垂直部材39より各脚部材36までの伝熱距離を大きくするようにしてもよい。この場合は、各駆動モータ28の出力側と、対応するギアボックス29の入力軸を、動力伝達用の連結バーを介して連結するようにすればよい。
【0059】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
15 版(押付対象物)
16 印刷対象(押付対象物)
20 ブランケットロール
22 支持フレーム
23 コラム
24 ビーム材
25 ロール保持フレーム
26 ジャッキ
27 ねじ軸
28 駆動モータ
29 ギアボックス
30 ナット部材
32 ブラケット
36 脚部材
37 水平部材
38 貫通孔
39 垂直部材
41 リブ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押付対象物の上方に配置する印刷用ロールを回転可能に保持するロール保持フレームを、左右のコラムと該各コラムの上端部同士を連結するビーム材からなる門型の支持フレームの内側に昇降可能に配置すると共に、上記支持フレームのビーム材の上側に溶接リブ構造のブラケットを介して取り付けた駆動モータ及びその出力側に接続したギアボックスと、上下方向に延び且つ上端側を上記ギアボックスの出力側に連結したねじ軸と、該ねじ軸に螺着するナット部材からなるジャッキの上記ナット部材を、上記ロール保持フレームに取り付けてなる構成を有することを特徴とする印刷用ロールの印圧付与装置。
【請求項2】
ブラケットを、隙間を隔てて平行に配置した或る高さ寸法を有する脚部材と、水平な平板状として幅方向一端寄りにギアボックスの出力軸を通すための貫通孔を備え且つ幅方向一端寄り部分の下面に上記各脚部材を溶接してなる水平部材と、該水平部材の幅方向他端縁部の上側に下端を溶接した駆動モータ取付用の垂直部材と、該垂直部材の一側面と上記水平部材の上面との間に一体に溶接したリブ材とからなる溶接リブ構造とした請求項1記載の印刷用ロールの印圧付与装置。
【請求項3】
ブラケットにおけるリブ材を、垂直部材より離反するに連れて高さ寸法が減少する形状とした請求項2記載の印刷用ロールの印圧付与装置。
【請求項4】
ブラケットを、ジルコニアセラミックス製とした請求項1,2又は3記載の印刷用ロールの印圧付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104955(P2011−104955A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265306(P2009−265306)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)