説明

印刷用紙

【課題】印刷機上での走行安定性、機材強度、網点の再現性、印刷の鮮明性及び耐水性等に優れるものであって、枚葉オフセット印刷を施す用途、例えば屋外用ポスターや地図、カタログ、パンフレット、メニューなどの商業印刷用途に好適に用いることができる印刷用紙、およびそれを用いたラベルを提供する。
【解決手段】(a)脂肪族ポリエステル樹脂40〜90重量%、(b)無機微細粉末60〜10重量%を含む組成物をフィルムに成形し、該フィルムをポリエステル樹脂の融点よりも1〜100℃低い温度で一軸方向に1.2〜8倍延伸してなる多孔質な延伸フィルムであって、ガーレ剛度が50〜3,000mgであり、空孔率が5〜60%であり、かつフィルム表面の投影面積4,292μm2 当たりの表面積Sが5,000〜50,000μm2 の範囲であり、且つ投影面積4,292μm2 当たりの凸部の体積Vが2,000〜20,000μm3 の範囲である印刷用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、印刷用紙に関する。詳しくは、脂肪族ポリエステル樹脂に無機微細粉末を配合してなる組成物を溶融させてフィルム状に成形し、このフィルム状成形物を1軸方向に延伸することにより、優れた枚葉オフセット印刷性を有するフィルム状印刷用紙、およびそれを用いたラベルを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリオレフィン樹脂に無機微細粉末を配合し、溶融させてフィルム状に成形し、このフィルム状成形物を、一軸または二軸方向に延伸した多孔質フィルムが提案されている。これらの多孔質フィルムは、特に印刷機上での走行安定性、網点の再現性、インクの密着性等々の要素からなるオフセット印刷性に優れる合成紙として、種々の用途に用いられている。更にこれらの合成紙はパルプ由来の天然紙と比べても、印刷の鮮明性や耐水性に優れるといった特性を有するものであり、例えば屋外用ポスターやカタログ、地図などの商業印刷用途に好適に用いられている。
しかしながら、これら合成紙の原料となるポリオレフィン樹脂は化石原料に由来するものであり、将来的にも安定して供給が可能であるとは言えない。また、使用後に焼却せず埋め立てて処理する場合には、長期にわたり土壌に残存するなどの廃棄上の問題もある。
【0003】
そこで、従来の化石原料由来の樹脂に代わり、植物資源由来のバイオマス原料を主に利用した樹脂、いわゆる「グリーンプラ(登録商標)」を用いた樹脂延伸フィルムの登場が期待されており、既に多くの報告がされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9)。
しかしながら、枚葉オフセット印刷が可能な印刷用紙には、・紙剥けが無いこと、・耐水性があること、・寸法安定性があること、・紙くせが少ないこと、・適度な水濡れ性があること、・インキ密着性、乾燥性、インキセットが良いこと、・適正な腰(こわさ:剛度)をもつこと、・印刷機上での走行性が安定していること、・網点の再現性が良いことなど、多くの品質要求があり、これらを満足した樹脂延伸フィルムは未だ現れていない。
上述の特許文献においてオキシカルボン酸の単独重合体(所謂ポリ乳酸等)を用いたものは、高い弾性率のために硬く脆く、引張破断しやすい性質があり、例えば、用紙が走路上(ロール/ブランケット間など)でひどくしごかれる枚葉オフセット印刷や、ロール間で高張力がかかる輪転オフセット印刷・グラビア印刷等において、柔軟で可撓性のある天然紙やポリオレフィン系合成紙のような印刷機上での安定した走行性は得られない。
【0004】
また、ポリ乳酸以外であって脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を原料とする脂肪族ポリエステル樹脂に関しては、ポリオレフィン並の弾性率を持つものの、従来文献では無機微細粉末を多く配合し空孔を過剰に形成した実施例のみが見られ(特許文献5)、腰がないために走行中にシワが発生したり、基材強度が低いためにピッキング(紙剥け、印刷時のインキ取られ)が発生するため、実機印刷が可能な合成紙としては機能し得ないものばかりであった。
さらに、天然紙の両面に脂肪族ポリエステル系樹脂の薄膜をラミネートした、印刷性に優れるラミネート紙が開示されている(特許文献10)が、このものは用紙の断面部から天然紙が吸水をするために樹脂薄膜の剥離やボコツキの発生が問題となり、屋外用ポスターなどの用途には十分な耐水性があるとは言えない。また、中心層を構成する天然紙の繊維の凹凸(地合)が表面の粗さとして現れるため、印刷時の網点再現性は合成紙と比べて悪く、印刷イメージがぼやけたものとなり、高精細な印刷には不向きである。
【0005】
【特許文献1】特開平05−209073号公報
【特許文献2】特開平09−031228号公報
【特許文献3】特開平09−208817号公報
【特許文献4】特開平09−291163号公報
【特許文献5】特開平09−291164号公報
【特許文献6】特開平09−291165号公報
【特許文献7】特開2001−049003号公報
【特許文献8】特開2001−049004号公報
【特許文献9】特開2003−342404号公報
【特許文献10】特開2003−220680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷性に優れる合成紙、殊に枚葉オフセット印刷用紙に関しては、上述のように印刷機上での走行安定性、機材強度、網点の再現性等の性能を有したものでなければならず、より具体的には適度な腰(剛度)、空孔率、表面の粗さを有したものである。
適度な腰(剛度)を持つ印刷用紙でなければ、印刷機上での走行安定性が悪化する。腰が低すぎる場合には、印刷機給紙部での用紙のタワミの発生や、重走等の給紙不良が問題となり、また印刷物にもシワが発生しやすい。逆に高すぎる場合は走行部での通紙すらできないか、低速度でしか印刷できないものとなり、実用上は使用できない。
また、適度な空孔率を持つ印刷用紙でなければ、印刷の鮮明性(印刷の網点再現性を含む)や、基材強度が悪化する。空孔率が低すぎる場合には、不透明性や白色性に劣り、圧縮回復率も低いために印刷面インキ濃度が十分に出ないために印刷の鮮明性が得られず、印刷用紙としては不適である。空孔率が高すぎる場合には、基材強度が低下し、ピッキング等の問題が発生する。
さらに、適度な表面の粗さを持つ印刷用紙でなければ、印刷の網点再現性や、印刷機上での走行安定性が悪化する。粗さが粗すぎる場合は網点の太り(ドットゲイン)が発生しやすく、高精細な印刷には不向きである。逆に平滑すぎる場合は印刷用紙間の離れが悪くなり、やはり重走等の給排紙不良が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バイオマス原料を主に利用した脂肪族ポリエステル樹脂からなるフィルムであって、印刷に用いられる印刷用紙について、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、
(a)脂肪族ポリエステル樹脂40〜90重量%、(b)無機微細粉末60〜10重量%を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物をフィルムに成形し、該フィルムをポリエステル樹脂の融点よりも1〜100℃低い温度条件下にて一軸方向に1.2〜8倍延伸してなる多孔質な樹脂延伸フィルムであって、ガーレ剛度が50〜3,000mgであり、該樹脂延伸フィルムの下記(I)式で表される空孔率が5〜60%であり、かつ投影面積4,292μm2 当たりのフィルム表面の表面積Sが5,000〜50,000μm2 の範囲であり、且つ投影面積4,292μm2 当たりの凸部の体積Vが2,000〜20,000μm3 の範囲であることを特徴とする印刷用紙を提供するものであり、
空孔率(%)=〔(ρ0 −ρ)/ρ0 〕×100 ・・・(I)
((I)式中、ρ0 は延伸前のフィルムの密度、ρは延伸後のフィルムの密度を表す。)
【0008】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、下記(II)式で表される脂肪族ジオール単位と、下記(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位とを少なくとも含むこと、
−O−(CH2 m −O− ・・・(II)
((II)式中、mは2〜10の整数を表す)
−OC−(CH2 n −CO− ・・・(III )
((III )式中、nは1〜12の整数を表す)
好ましくは(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、更に下記(IV)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含むこと、
【化1】

((IV)式中、pは0または1〜10の整数を表す。)
【0009】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、上記(II)式で表される脂肪族ジオール単位35〜50モル%、上記(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜50モル、及び上記(IV)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0〜30モル%を含み、かつ1万〜50万の数平均分子量を有すること、
脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールを含み、脂肪族ジカルボン酸がコハク酸およびアジピン酸の少なくとも1つを含むこと、脂肪族オキシカルボン酸が乳酸を含むこと、 (b)無機微細粉末が、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタンから選ばれた少なくとも1つを含むこと、を特徴とするものである。
また本発明の印刷用紙は、枚葉オフセット印刷を行なう際、印刷速度が3,000〜12,000枚/時の速度範囲で安定して印刷することが可能であり、印刷物の50%網点部分の太り率(ドットゲイン)が15〜25%の範囲であり、印刷物にピッキングが見られず、印刷用紙表面の表面強度が1.5kg・cm以上であり、不透明度が85%以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷用紙は、植物資源由来のバイオマス原料を利用できる脂肪族ポリエステル樹脂を用いたものであり、印刷機上での走行安定性、機材強度、網点の再現性、印刷の鮮明性及び耐水性等に優れるものであって、枚葉/平版オフセット印刷を施す用途、例えば屋外用ポスターや地図、カタログ、メニュー、パンフレットなどの商業印刷用途に好適に用いられるものである。更に、同じく印刷を施すラベル用途にも好適に用いられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
(脂肪族ポリエステル樹脂)
本発明における脂肪族ポリエステル樹脂としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を反応主成分とし、それぞれを実質的に等モルずつ重縮合反応させたものであり、好ましくは脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し脂肪族オキシカルボン酸を0.04〜60モル共存させ共重合させたものである。さらには、主として脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族または脂環式ジカルボン酸またはその誘導体を重縮合反応させる際に、乳酸に代表されるα−ヒドロキシカルボン酸タイプの脂肪族オキシカルボン酸を、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し0.04〜60モル共存させ、かつ、ゲルマニウム化合物からなる触媒を使用することにより得られた数平均分子量が1万〜50万である脂肪族ポリエステル樹脂である。
このような脂肪族ポリエステル樹脂は、オキシカルボン酸の単独重合体(所謂ポリ乳酸など)とは異なり、用いる脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸の種類やその組み合わせ、その配合比率によって高分子鎖中のアルキレン鎖の割合などを任意に設定できる利点があり、ポリオレフィン樹脂に近い物性(弾性率や引張伸びなど)を有するものを得ることもできる。
【0012】
重縮合反応させる際に、ゲルマニウム化合物からなる触媒を存在させ、乳酸などの脂肪族オキシカルボン酸を適量用いることにより、重合速度が増大し、高分子量の脂肪族ポリエステルが得られる。本発明における脂肪族ポリエステル樹脂は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を反応主成分とした二元系以上の多元系原料からなるものであり、所謂ポリ乳酸のように脂肪族オキシカルボン酸の重縮合及びラクトンの開環重合等により得られる一元系の脂肪族ポリエステル樹脂は含まれない。このような多元系原料からなる脂肪族ポリエステルは分子中のアルキレン鎖によって、ポリオレフィン樹脂に近い物性(引張破断伸度や弾性率)を有しており、樹脂延伸フィルムとしての延伸成形が容易であり、得られた印刷用紙は優れた機上走行性を有する。
【0013】
脂肪族ジオールとしては、HO−(CH2 m−OH(式中、mは2〜10の整数を表す。)に相当する脂肪族ジオールが好適である。
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。また、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが脂環を有する脂肪族ジオールであっても良い。これらの脂肪族ジオールは、単独でも2種以上の混合物であってもよい。得られる樹脂の性質から、好ましいのは1,4−ブタンジオールまたはエチレングリコールであり、中でも特に好ましいのは1,4−ブタンジオールである。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸としては、HOOC−(CH2 n−COOH(式中、nは1〜12の整数を表す。)に相当する脂肪族ジカルボン酸が好適である。
具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸など、またヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸など脂環を有するもの、またはその誘導体として低級アルキルエステル類、および酸無水物、例えば、無水コハク酸、無水アジピン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸(またはその誘導体)は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。得られるポリマーの性質から、好ましくはアルキレン鎖の炭素数nが1〜4程度のものであり、特に好ましいのは、コハク酸、無水コハク酸、またはコハク酸とアジピン酸の混合物である。
【0015】
脂肪族オキシカルボン酸としては、下記構造式に相当する脂肪族α−ヒドロキシカルボン酸が好適である。
【化2】

(式中、pは0または1〜10の整数を表す。)
【0016】
この脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−n−酪酸、3−ヒドロキシ−n−酪酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシ−n−吉草酸、4−ヒドロキシ−n−吉草酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、2−ヒドロキシ−n−ヘキサン酸、2−ヒドロキシ−1−ヘキサン酸、3−ヒドロキシ−n−ヘキサン酸、4−ヒドロキシ−n−ヘキサン酸など、またはこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合は、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で特に好ましいのは、入手が容易である乳酸または乳酸水溶液である。
【0017】
本発明において脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族オキシカルボン酸は、糖類やデンプンなどのバイオマス原料を出発物質として製造することができるものを用いることが好ましい。
本発明に係る樹脂延伸フィルムの原料となる脂肪族ポリエステル樹脂は、従来から知られている方法によって製造することができ、特に限定されるものではない。例えば、特開平08−239461号公報に記載されているような溶融重縮合法、または有機溶媒中で脱水重縮合する方法などが挙げられる。この脂肪族ポリエステル樹脂を製造する際の重縮合反応条件は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。脂肪族ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し実質的に等モルであるが、一般には、エステル化中の留出があることから、1〜20モル%過剰に用いられる。
【0018】
添加することができる脂肪族オキシカルボン酸の量は、多すぎると耐熱性、機械的特性などが不十分となる傾向があり、少ないと重縮合反応生成物の分子量が低い傾向がある。脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、0〜60モル、好ましくは0.04〜60モル、より好ましくは1〜40モル、特に好ましくは2〜20モルである。脂肪族オキシカルボン酸の添加時期・方法は、重縮合開始以前であれば特に限定されず、例えば、(1)あらかじめ触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で添加する方法、(2)原料仕込み時に触媒を添加すると同時に添加する方法、などが挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリエステル樹脂は、上記原料をゲルマニウム化合物からなる重合触媒の存在下に重縮合させることによって得ることが好ましい。ゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物、または酸化ゲルマニウムおよび塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、またはテトラブトキシゲルマニウムなどが特に好ましい。ゲルマニウム化合物は、1種でも2種以上の混合物でもよい。ゲルマニウム化合物には、ポリエステル樹脂の製造に使用できる他の触媒と併用することもできる。併用できる触媒は反応系に可溶の金属触媒であり、例えば、チタン、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの化合物が挙げられる。
【0020】
これら触媒の使用量は、重縮合反応で使用されるモノマー量に対して0.001〜3重量%、より好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、重縮合開始以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に添加するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加するのが好ましい。中でも、触媒の保存性の観点から1、脂肪族オキシカルボン酸に溶解して添加するのが好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂を製造する際の温度、時間、圧力などの条件は、原料モノマーの組合せ、組成比、触媒の種類、量などの組合せにより変化するが、温度は150〜260℃、好ましくは180〜230℃の範囲で選ぶのがよく、重合時間は2時間以上、好ましくは4〜15時間の範囲で選ぶのがよい。反応圧力は10mmHg以下の減圧、好ましくは2mmHg以下の減圧とするのがよい。
【0021】
脂肪族ポリエステル樹脂の原料組成比は、前記(II)式で表される脂肪族ジオール単位と、前記(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。(II)式で表される脂肪族ジオール単位と(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位は、各々38.5〜50モル%の範囲、好ましくは38.5〜49.99モル%、より好ましくは41.5〜49.75モル%の範囲、特に好ましくは45.5〜49.5モル%の範囲で選ぶのがよい。また(IV)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位は、0〜23モル%の範囲で選ぶのがよい。好ましくは0.02〜23モル%の範囲、より好ましくは0.5〜17モル%の範囲、特に好ましくは1〜9モル%の範囲である。脂肪族オキシカルボン酸が23モル%を超えると、耐熱性、機械的特性が不十分である。
【0022】
脂肪族ポリエステル樹脂には、本発明の目的・効果を損なわない限り、他の共重合成分を導入することができる。他の共重合成分としては、3官能以上の多価オキシカルボン酸、多価カルボン酸、多価アルコールなどが挙げられる。これらの他の共重合成分を導入した場合には、脂肪族ポリエステル樹脂の溶融粘度を高めることができ好ましい。他の共重合成分の具体例としては、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。得られる脂肪族ポリエステル樹脂の物性の観点から、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが特に好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量(GPC法により測定しポリスチレン換算した値)で1万〜50万の範囲であり、好ましくは3万〜20万の範囲である。数平均分子量が1万未満であると、印刷用紙としての機械的強度が不足し、逆に50万を越えると成形が困難となり、いずれも好ましくない。
【0023】
また、その融点は70〜180℃の範囲である。融点が70℃未満であると耐熱性が不十分であり、180℃を超えるものは製造が難しい。中でも好ましい融点の範囲は70〜150℃、さらに好ましくは80〜135℃である。さらに、温度190℃におけるMFR(JIS−K−7210に準拠して測定した値)は、0.01〜50g/10分の範囲が好ましい。
樹脂延伸フィルムを成形するにあたり、成形性を改善する目的から脂肪族ポリエステル樹脂組成物を構成する樹脂分は、脂肪族ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン樹脂を混合した混合物であっても良い。ただし、化石原料由来の樹脂を混合する場合には本発明の目的に沿わせるためにこれらは樹脂分中50重量%未満とするのが好ましい。これら2種類以上の樹脂を配合し混合物とする場合であってこれらの相溶性に乏しい場合は、相溶化剤を配合することもできる。
【0024】
(無機微細粉末)
本発明において原料として配合される無機微細粉末は、充填材または空孔形成材、場合によっては結晶核剤として機能するものであり、樹脂フィルムに印刷用紙としての白色度や不透明度を付与するものであり、例えば、炭酸カルシウム、タルク、焼成クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、アスベスト粉、シラスバルーン、ゼオライト、珪酸白土などが挙げられ、特に炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、酸化チタンなどが好適である。これらは単独でも、2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
無機微細粉末の平均粒径は、30μm以下のものが好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、0.2〜5μmのものが最も好ましい。粒径が大きすぎると粒子が外観に現れたり、延伸フィルムの空孔の緻密性が悪くなり、表面に粗大な凹凸が生じやすく印刷の鮮明性が得られにくい点で好ましくない。また粒径が小さすぎると、樹脂組成物への分散性が悪く、空孔も形成されにくく、成形性に劣り好ましくない。無機微細粉末は、樹脂組成物への分散性、延伸性の観点から、その表面は処理されているものであっても良い。この際の表面処理は脂肪酸またはその金属塩などの物質によって化学処理されているものが好ましい。
【0026】
(組成)
原料の樹脂組成物に配合される無機微細粉末の配合割合は、樹脂組成物100重量%に対して無機微細粉末10〜60重量%の範囲で選ばれる。無機微細粉末の割合が10重量%に満たないと、延伸する際にフィルムに空孔が充分に形成されないため所望の空孔率が得られず、不透明度の低いフィルムとなり印刷の鮮明性は得られず好ましくない。また60重量%を超えると、樹脂組成物の混練性、分散性やフィルムの成形性が劣り、更に延伸フィルムの表面強度が低下しピッキング(後述)の原因となり好ましくない。より好ましい無機微細粉末の配合割合は12〜55重量%の範囲であり、特に好ましくは15〜50重量%の範囲である。
【0027】
(任意成分)
なお、本発明に係る樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で他の樹脂添加剤を添加できる。他の樹脂添加剤としては、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、蛍光剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤などが挙げられる。
上記樹脂組成物に配合される可塑剤としては、ジペンタエリスリトールのエステル化物、ポリブタジェン水添加物、エポキシ化大豆油などが挙げられる。これらは単独でも、2種以上の混合物であってもよい。また可塑剤の配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して0〜50重量部の範囲であり、3〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0028】
原料樹脂に無機微細粉末やその他の樹脂添加剤を配合して均一な樹脂組成物を得るには、各成分を所定量秤量して混合機に入れ、十分に撹拌・混合し、均一に分散させれば良い。この際使用し得る混合機としては、ドラム、タンブラー型混合機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられ、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどの高速撹拌型の混合機が好ましい。
上記方法で調製された樹脂組成物は、次に溶融混練して一旦ペレット化した後、樹脂フィルムの成形に供するか、またはこの樹脂組成物を溶融混練して直接物の成形に供することができる。樹脂組成物を溶融混練するには、従来から知られている溶融混練装置、例えば、スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、二軸型混練機などを使用すればよい。
【0029】
(印刷用紙の製造)
本発明の印刷用紙は、無機微細粉末を配合した樹脂組成物をフィルムに成形した後、一軸延伸し、内部や表面へ微小な空孔を発生させることで低密度化、軽量化、不透明化、クッション性(圧縮回復率)の向上などの効果が得られ、また樹脂の延伸配向による腰(剛度)の調整、厚みの均一化、偏肉の軽減などのメリットが生じる。
本発明に係る樹脂延伸フィルムは、当業者に公知の種々の方法及びそれらを組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された印刷用紙であっても、本発明の効果を満たす印刷用紙を利用するものである限り本発明の範囲内に包含される。
【0030】
本発明の印刷用紙の製造法としては、前述の方法で調製した脂肪族ポリエステル樹脂組成物を溶融させて、フィルム状に成形し延伸するものであり、公知の種々のフィルム製造技術やそれらの組み合わせが可能である。例えば、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形法、延伸による空孔発生を利用した延伸フィルム法や、圧延時に空孔を発生させる圧延法やカレンダー成形法、発泡剤を使用する発泡法、空孔含有粒子を使用する方法、円形ダイによるインフレーション法、溶剤抽出法、混合成分を溶解抽出する方法などが挙げられる。特に本発明では、連続して延伸の工程を設けることが容易なキャスト成形法を用いるのが好ましい。
【0031】
本発明の印刷用紙は、単層構造であっても良いし、二層以上に積層された複層構造であっても良い。積層フィルムとする際には、複数の原料樹脂を複数の押出機で溶融し、共押出ダイ内で複数層に積層する方法や、原料樹脂の一つを先にフィルム状にし、これに他の押出機で溶融させた他の原料樹脂をダイからフィルム状に押し出して溶融ラミネートする方法、予め作成した複数の延伸フィルムをドライラミネートする方法、またはこれらを組み合わせる方法などが挙げられ、いずれの方法によっても良い。この場合、原料樹脂にはこれまで例示した種々の脂肪族ポリエステル樹脂組成物以外に、異なる熱可塑性樹脂、無機微細粉末、任意成分、配合比率等を採用し得るが、少なくとも最外層を構成する樹脂組成物は本発明のものを用いることが好ましく、全層とも本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いるのがより好ましい。
キャスト成形法等で得られた未延伸フィルムは、次いで一軸方向に延伸される。一軸方向に延伸する際には、通常は周速差の異なる複数のロールを用いるロール延伸法が採用される。また延伸は一段延伸方式でも、二段以上の多段延伸方式であってもよい。
【0032】
未延伸フィルムを延伸する際の温度は、上記樹脂組成物の融点以下で選ぶのが好ましく、更に好ましくは用いる脂肪族ポリエステル樹脂の融点よりも1〜100℃低い温度の範囲内である。融点より100℃を超えて低い温度では、延伸にかかる引張応力が高くなりフィルム延伸する際に延伸斑(ムラ)が発生したり、延伸切れが生じやすく好ましくない。融点より1℃低い温度より高い温度では、所望の空孔率が得られにくく好ましくない。延伸倍率は一軸方向に1.2〜8倍の範囲で選ぶのが好ましく、1.5〜6倍の範囲で選ぶのがより好ましく、2〜5倍の範囲で選ぶのが特に好ましい。延伸倍率が1.2倍未満では、延伸による効果が不十分であり、フィルムの多孔性および引っ張りは充分なものとはならず、所望の空孔率は得られにくい。また、8倍を越える場合には、延伸フィルムは延伸方向への過度の分子配向を強いることとなりフィルムの強度が低下したり、延伸切れが生じやすく好ましくない。
【0033】
延伸した後のフィルムには、通常の熱可塑性樹脂延伸フィルムと同様に、熱処理、コロナ処理、フレーム処理などの後処理を施すこともできる。
前述のように、本発明の印刷用紙は、無機微細粉末を配合した脂肪族ポリエステル樹脂を延伸することで内部や表面に微小な空孔が発生することにより、低密度化、不透明化させることができる。これにより得られる樹脂延伸フィルムの密度は、0.6〜1.4g/cm3 であり、0.7〜1.3g/cm3 であることが好ましく、0.75〜1.0g/cm3 であることが特に好ましい。また、樹脂延伸フィルムの不透明度は85%以上であり、90〜100%であることが好ましく、95〜100%であることが更に好ましく、97〜100%であることが特に好ましい。
【0034】
(樹脂延伸フィルムの物性)
得られた樹脂延伸フィルムは、本発明の印刷用紙として、以下の諸物性を満たす必要がある。
〔腰(ガーレ剛度)〕
本発明の印刷用紙の腰は、ガーレ剛度として、MD(流れ方向)、TD(幅方向)の両目方向で50〜3000mgの範囲である。好ましくはMD、TDの両目方向で75〜2000mgの範囲であり、特に好ましくはMD、TDの両目方向で100〜1500mgの範囲である。一般に剛度は基材の厚み因子に依存する特性であるが、印刷機上での制約であって、厚み因子も加味した上で上記範囲である。印刷用紙としての厚みは例えば80〜350μm、好ましくは100〜300μm、特に好ましくは120〜280μmである。
【0035】
印刷用紙のガーレ剛度が上記範囲内であれば、トラブルの発生することがない安定した機上走行性が得られる。
ガーレ剛度がMD、TD何れかの目方向でも50mgに満たない場合は印刷機給紙部での用紙のタワミ発生や重走等の給紙不良が問題となる。また、印刷物にもシワが発生しやすい。逆に3000mgを越える場合は印刷機走行部で用紙が追随せずに暴れ、通紙すらできないか、低速度でしか印刷できないものとなり、更に紙詰まりを起こすとブランケットを壊してしまうために実用上は使用できない。
印刷用紙の目方向に依らず、ガーレ剛度がMD,TD方向ともに上記範囲内であれば、印刷の面付けの自由度が向上し、印刷加工時の実務上より好ましいものとなる。
【0036】
〔空孔率〕
本発明に係る樹脂延伸フィルムは、延伸することにより無機微細粉末を核として内部及び表面に微細な空孔を多数設けるが、印刷用紙としては下記(I)式で表される空孔率は5〜60%であり、10〜55%であることが好ましく、20〜50%であることが特に好ましい。
空孔率(%)=〔(ρ0 −ρ)/ρ0 〕×100 ・・・(I)
((I)式中、ρ0 は延伸前のフィルムの密度、ρは延伸後のフィルムの密度を表す。) 空孔率が5%に満たない場合は、不透明性や白色性に劣り、さらに圧縮回復率も低いために印刷面インキ濃度が十分に出ないために印刷の鮮明性が得られず、印刷用紙としては不適である。逆に、空孔率が60%を越える場合は、基材強度が低下し、ピッキング(紙剥け、多色印刷時の重色部インキ取られ)、エッジピック(印刷部端部でのインキ取られ)等の問題が発生する。ピッキングに係る基材強度として、印刷用紙の表面強度は1.5kg・cm以上であることが好ましい。
【0037】
〔表面の粗さ〕
本発明に係る樹脂延伸フィルムは、印刷用紙としては、投影面積4,292μm2 当たりの表面積Sが5,000〜50,000μm2 の範囲であり、且つ投影面積4,292μm2 当たりの凸部の体積Vが2,000〜20,000μm3 の範囲である。
本発明において、樹脂延伸フィルムの表面の粗さを観察するために、従来の探針を用いた接触型の三次元粗さ計ではなく、レーザー光を用いた非接触型の超深度形状測定顕微鏡を用いている。
従来、印刷用紙の印刷品質を、探針を用いた接触型の三次元粗さ計にて求めた算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rv)、ピークカウント(Pc)などのパラメータにて説明しようとする試みがなされている。しかしながら、これらは充分な相関が得られるものではなかった。
【0038】
このことは従来の探針を用いた接触型の三次元粗さ計では、解像度は探針の先端径(2μm程度)に依存し、用いる無機微細粉末が2μmより細かく、生じる凹凸が非常に微細な場合はこれを観測できず緩和した結果になってしまうためであると推定される。レーザー光を用いた非接触型の超深度形状測定顕微鏡は、用いるレーザー光の波長、レンズの絞りにも依るが、0.3μm程度の解像度でサンプルを破壊せずに表面の粗さを観察できるため、配合する無機微細粉末の粒径のオーダーにも合致しており、測定結果と印刷用紙の印刷品質とに高い相関を得ることができた。
すなわち本発明の印刷用紙としては、投影面積4,292μm2 当たりの表面積Sが5,000〜50,000μm2 の範囲であり、且つ投影面積4,292μm2 当たりの凸部の体積Vが2,000〜20,000μm3 の範囲のものである。表面積Sが8,000〜40,000μm2 の範囲であり、且つ凸部の体積Vが4,000〜15,000μm3 の範囲であることがより好ましく、表面積Sが10,000〜30,000μm2 の範囲であり、且つ凸部の体積Vが5,000〜10,000μm3 の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
樹脂延伸フィルムの表面積Sが5,000μm2 に満たない場合は、全体に凹凸の少ない高平滑な表面となり、樹脂延伸フィルム間の滑りが悪くなり重走等の給紙トラブルを起こす可能性が高く、またインキのタックが充分に得られずインキ密着性も悪い。表面積Sが50,000μm2 を超えて大きい場合は全体に凹凸が多く粗い表面となり、表面強度が低下する傾向がある。
樹脂延伸フィルムの凸部の体積Vが2,000μm3 に満たない場合は、凹凸があっても高さや深さが小さく結果的に高平滑な表面となり、樹脂延伸フィルム間の離れが悪くなり、やはり重走等の給排紙不良が問題となる。凸部の体積Vが20,000μm3 を超えて大きい場合は、凹凸が大きすぎる粗い表面となり、網点の太り(ドットゲイン)が発生しやすく印刷の網点再現性は悪化するために高精細な印刷には不向きである。
【0040】
(印刷)
このようにして得られる印刷用紙は、種々の印刷に適しており、酸化重合型(溶剤型)オフセット印刷は勿論、紫外線硬化型オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レータープレス印刷、シルクスクリーン印刷などにより、シートの形態(枚葉)やロールの形態(巻取)で印刷、印字した印刷製品を作成できる。
【0041】
(粘着ラベルへの適用)
本発明の印刷用紙は、少なくとも片面に粘着剤層を設けることによりラベルとしても使用できる。設けられる粘着剤層の種類や厚さ(塗工量)は、被着体の種類や使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。
一般に用いられる水系もしくは溶剤系の粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が代表的であり、ゴム系粘着剤の具体例には、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが挙げられる。アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。
【0042】
これらの合成高分子粘着剤は、有機溶媒溶液や、ディスパージョンやエマルジョンといった水に分散された状態で使用可能である。ラベルの不透明度向上のため、粘着剤はチタンホワイト等の顔料を含有したものを使用することも可能である。
粘着剤層は、溶液状態で印刷用紙と離型紙との貼合面上に塗工して形成できる。塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等により行ない、必要によりスムージングを行ない、乾燥工程を経て粘着剤層は形成される。
粘着剤層の形成は、用いる離型紙へ粘着剤を塗工し、必要により乾燥を行ない、粘着剤層を形成したものに印刷用紙を積層する方法が一般的であるが、場合によっては印刷用紙に直接に粘着剤を塗工して形成することもできる。
該粘着剤の塗工量は特に限定されないが、通常は固形分量で3〜60g/m2 、好ましくは10〜40g/m2 の範囲である。
【実施例】
【0043】
以下に、製造例、実施例、比較例及び評価例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
以下に示す原料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、各実施例、比較例で使用した原料を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
(脂肪族ポリエステル樹脂の製造)
〔製造例1〕
撹拌装置、窒素ガス導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量600リットルの反応容器に、コハク酸を137kg、1,4−ブタンジオールを116リットル、酸化ゲルマニウム1重量%を予め溶解させた90重量%DL−乳酸水溶液を7.43kg、結晶核剤としてスーパータルクSG95(日本タルク社製)0.2kgをそれぞれ仕込み、窒素ガス雰囲気中、120〜220℃で2時間重縮合反応させた。引き続いて容器内温を昇温させ、窒素ガスの導入を停止し、0.5mmHgの減圧下で5時間脱グリコール反応を行った。この反応生成物を水中にストランド状に押し出し、カッターで裁断した。得られた脂肪族ポリエステル樹脂は白色であり、収量は180kgであった。
【0046】
得られた脂肪族ポリエステル樹脂(脂肪族ポリエステル1)は、融点が110℃(DSC法により得られたピーク温度、昇温速度16℃/min、窒素ガス雰囲気下で測定)、数平均分子量(Mn)が65,000、重量平均分子量が150,000であった。ここで、平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法によって測定したものである(東ソー社製のHLC−8020型GPC装置を使用。カラムはPLgel−5μ−MIX。ポリスチレン換算。クロロホルム溶媒。)。
また、 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位3.1モル%、コハク酸単位48.0モル%、1,4−ブタンジオール単位48.9モル%であった。さらに、JIS−K−7210に準拠して測定したMFRは、9.6g/10分であった。
【0047】
〔製造例2〕
製造例1で使用したのと同じ反応容器に、コハク酸を123kg、アジピン酸を17kg、1,4−ブタンジオールを121リットル、酸化ゲルマニウム1重量%をあらかじめ溶解させた90%DL−乳酸水溶液を7.43kg、トリメチロールプロパンを0.23kg、スーパータルクSG95(日本タルク社製)0.2kgをそれぞれ仕込み、窒素ガス雰囲気中、120〜220℃で2時間重縮合反応させた。引き続いて容器内温を昇温させ、窒素ガスの導入を停止し、0.5mmHgの減圧下で5時間脱グリコール反応を行った。この反応生成物を水中にストランド状に押し出し、カッターで裁断した。得られた脂肪族ポリエステル樹脂は白色であり、収量は180kgであった。
【0048】
この脂肪族ポリエステル樹脂(脂肪族ポリエステル2)は、融点が90℃、数平均分子量(Mn)が68,000、重量平均分子量が173,000であった。また、 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位3.3モル%、コハク酸単位43.3モル%、アジピン酸4.8モル%、1,4−ブタンジオール単位48.6モル%であった。さらに、MFRは8.2g/10分であった。
〔製造例3〕
L−乳酸を重縮合反応させた、融点が170℃、重量平均分子量が200,000のL−ポリ乳酸(脂肪族ポリエステル3)を得た。
【0049】
(実施例1)
製造例1で得た脂肪族ポリエステル1の85重量%、表1に記載のタルク14重量%、および表1に記載の酸化チタン1重量%とからなる樹脂組成物を、ヘンシェルミキサーで撹拌混合した後に、二軸混練機((株)神戸製鋼所製、NEXT−T60)によって溶融混練し、ペレットとした。
得られたペレットをシリンダー温度を180℃に設定した押出機(三鈴エリー社製、MK−40)によって溶融した後、押出機先端に装着したTダイからフィルム状に押出し、冷却ロールにより冷却して無延伸フィルムを得た。
得られた無延伸フィルムを80℃に加熱した後、周速が異なるロール間で縦方向に4倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムの厚みは125μm、密度は1.03g/cm3 、表面積Sは12,800μm2 、凸部の体積Vは5,600μm3 、ガーレ剛度は延伸方向で300mg、幅方向で160mg、空孔率は30%であった。結果を表2に示す。また、この印刷用紙は軽量で印刷作業への負担が小さく、耐水性にも優れるものであった。
【0050】
(実施例2〜11、比較例1〜6)
製造例1の脂肪族ポリエステルに、表1に記載の無機微細粉末を表2に示す比率で混合した樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により縦一軸延伸フィルムを得た。これら以降の実施例、比較例では押出機の吐出量変更によりいずれも最終的なフィルム厚さを表2に示す厚みになるよう調整している。表面積S、体積V、ガーレ剛度、空孔率等の物性測定の結果を表2にまとめて示す。
(実施例12)
製造例2で得た脂肪族ポリエステル2を用い、延伸温度を60℃とする以外は、実施例1と同様の方法により縦一軸延伸フィルムを得た。得られた縦一軸延伸フィルムの物性測定の結果を表2に示す。
【0051】
(実施例13、14)
実施例1と同様の方法で無延伸フィルムを得た後に、表2に記載の倍率にて延伸を実施し、縦一軸延伸フィルムを得た。得られた縦一軸延伸フィルムの物性測定の結果を表2にまとめて示す。
(比較例7)
製造例3で得た脂肪族ポリエステル3を用いる以外は、実施例1と同様の方法により縦一軸延伸フィルムを得た。得られた縦一軸延伸フィルムの物性測定の結果を表2に示す。 (比較例8)
実施例1と同様の無延伸フィルムを得た後に、表2に記載の延伸倍率(9倍)にて縦一軸延伸フィルムを得ようとしたが、当該設定ではフィルム切れが発生し安定したフィルム成形が実施できなかった。
【0052】
(実施例15)
上質紙の両面にポリエチレンフィルムをラミネートし、その片面にシリコーン処理を施した厚み150μm、密度0.9g/cm3 の剥離紙のシリコーン処理面に、アクリル系粘着剤(東洋インキ製造(株)製、商品名:オリバインBPS−1109)を固形分量で25g/m2 となるように塗工した後、乾燥させて粘着剤層を形成した。この剥離紙上の粘着剤層を、実施例1で得られた印刷用紙上に積層させて、粘着剤層及び剥離物を有する粘着ラベルを得た。
このものの厚みは300μm、ガーレ剛度は流れ方向2,770mg、幅方向1,480mgであり、後述する印刷機の走行性、印刷網点再現性、ピッキングは良好なものであった。
【0053】
(評価例)
〔厚み〕
JIS−P−8118に準じて測定した。
〔密度〕
JIS−P−8118に準じて測定した。
〔ガーレ剛度〕
JAPAN TAPPI 規格No.40に準じて測定した。
〔空孔率〕
上記密度より、下記(I)式に従って算出した。
空孔率(%)=〔(ρ0 −ρ)/ρ0 〕×100 ・・・(I)
((I)式中、ρ0 は延伸前のフィルムの密度、ρは延伸後のフィルムの密度を表す。) 〔表面積S及び凸部の体積V〕
(株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡(商品名:VK−8550)を用いて、本発明の印刷用紙の投影面積4,292μm2 当たりの表面積S、及び投影面積4,292μm2 当たりのフィルム表面の凸部の体積Vを、解像度0.3μm、倍率2,000倍にて測定した(凸部の体積Vは中心面と平行な、最大谷深さ部を基準面とした時の山部の体積である)。
【0054】
〔印刷適性評価〕
(オフセット印刷機走行性)
(株)T&K TOKA製の合成紙用油性オフセット印刷インキ(商品名:ベストSP墨、藍、紅、黄)及び給紙部がバキュームベルト方式のローランド製オフセット4色印刷機(商品名:ローランド700)を用い、本発明の印刷用紙の表面側に、50%網点を含むテストパターンの4色枚葉オフセット印刷を行なう際、印刷用紙の印刷機走行性を次の基準で評価した。
・良好(○):3,000〜12,000枚/時の速度で安定して印刷ができる。
・やや不良(△):安定して印刷するために3,000枚/時よりも速度を落とす必要がある。
・不良(×):重走トラブルや用紙の暴れにより機器が自動停止し、全く印刷ができない。
【0055】
(オフセット印刷網点再現性)
上記で得た印刷物の50%網点部分を、実体顕微鏡に接続した画像解析装置(ニレコ(株)製、商品名:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、網点の実面積率から網点の太り率(ドットゲイン)を計算により求め、次の基準で良否を評価した。一般には表面の粗度、特に凸部の体積Vが大きいほど網点部のインキは周囲に流れて網点の太り率は増加し、不鮮明でぼやけたイメージの印刷物となる傾向がある。
・良好(○):ドットゲインが15〜25%の範囲である。
・やや不良(△):ドットゲインが25%を越えて30%の範囲である。
・不良(×):ドットゲインが30%を越えて大きい。
【0056】
(ピッキング)
上記で得た印刷物を目視で観察し、ピッキング(紙剥けや重色ベタ印刷部のインキの取られ)があるかを確認した。一般に表面強度が小さいほどピッキングは起こりやすく、良好な印刷物が得られにくい傾向がある。
・良好(○):ピッキングは見られない。
・不良(×):ピッキングが確認される。
(印刷鮮明性)
上記で得た印刷物の反対面に、更に画像や文字情報を含むテストパターンを印刷し、インキ乾燥後、室内照明下で表面側より印刷物の透けを目視により観察し、次の基準で良否を評価した。
・非常に良好(◎):反対面側の画像は判別できず、文字情報は読み取れない。
・良好(○):反対面側の画像、文字情報は判別できないが、色濃度変化は見える。
・不良(×):反対面側の画像が重ねて見え、文字情報が読み取れる。
【0057】
〔表面強度〕
本発明の表面強度は、樹脂延伸フィルムを23℃の温度、相対湿度50%の雰囲気下で3日間保管した後、密着強度測定機(熊谷理機工業(株)社製、商品名:インターナルボンドテスター)にて密着強度を測定した。上記密着強度の測定原理は、フィルム塗布面にセロファンテープを貼った試料の上面にアルミアングルを貼り付け、下面も同じく所定のホルダーにセットし90度の角度よりハンマーを振り下ろし、そのアルミアングルに衝撃を加え、その際の剥離エネルギーを測定するものである。密着強度1.5kg・cm以上を合格レベルとした。
〔不透明度〕
本発明の不透明度は、JIS−P−8138(1976)に準拠し、測定試料背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値で示す。一般に不透明度が低いほど光の裏抜けが多くなり、印刷物の鮮明性に欠ける。不透明度85%以上を合格レベルとし、不透明度95%以上を特に好ましいとした。
【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の印刷用紙は、印刷機上での走行安定性、機材強度、網点の再現性、印刷の鮮明性及び耐水性等に優れるものであって、枚葉/平版オフセット印刷を施す用途、例えば屋外用ポスターや地図、カタログ、メニュー、パンフレット、ラベルなどの商業印刷用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂40〜90重量%、(b)無機微細粉末60〜10重量%を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物をフィルムに成形し、該フィルムをポリエステル樹脂の融点よりも1〜100℃低い温度条件下にて一軸方向に1.2〜8倍延伸してなる多孔質な樹脂延伸フィルムであって、ガーレ剛度が50〜3,000mgであり、該樹脂延伸フィルムの下記(I)式で表される空孔率が5〜60%であり、かつ投影面積4,292μm2 当たりのフィルム表面の表面積Sが5,000〜50,000μm2 の範囲であり、且つ投影面積4,292μm2 当たりの凸部の体積Vが2,000〜20,000μm3 の範囲であることを特徴とする印刷用紙。
空孔率(%)=〔(ρ0 −ρ)/ρ0 〕×100 ・・・(I)
((I)式中、ρ0 は延伸前のフィルムの密度、ρは延伸後のフィルムの密度を表す。)
【請求項2】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、下記(II)式で表される脂肪族ジオール単位と、下記(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷用紙。
−O−(CH2 m −O− ・・・(II)
((II)式中、mは2〜10の整数を表す。)
−OC−(CH2 n −CO− ・・・(III )
((III )式中、nは1〜12の整数を表す。)
【請求項3】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、更に下記(IV)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含むことを特徴とする請求項2に記載の印刷用紙。
【化1】

((IV)式中、pは0または1〜10の整数を表す。)
【請求項4】
(a)脂肪族ポリエステル樹脂が、上記(II)式で表される脂肪族ジオール単位38.5〜50モル%、上記(III )式で表される脂肪族ジカルボン酸単位38.5〜50モル%、及び上記(IV)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0〜23モル%を含み、かつ1万〜50万の数平均分子量を有することを特徴とする請求項3に記載の印刷用紙。
【請求項5】
脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールを含み、脂肪族ジカルボン酸がコハク酸およびアジピン酸の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項6】
脂肪族オキシカルボン酸が乳酸を含むものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項7】
(b)無機微細粉末が、タルク、炭酸カルシウム、及び酸化チタンから選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項8】
枚葉オフセット印刷を行なう際、印刷速度が3,000〜12,000枚/時の速度範囲で安定して印刷することが可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項9】
印刷物の50%網点部分の太り率(ドットゲイン)が15〜25%の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項10】
印刷物にピッキングが見られないことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項11】
印刷用紙表面の表面強度が1.5kg・cm以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項12】
不透明度が85%以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の印刷用紙。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の印刷用紙の少なくとも片面に粘着剤層を設けたことを特徴とするラベル。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の印刷用紙または請求項13に記載のラベルを用いた印刷製品。

【公開番号】特開2006−104460(P2006−104460A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261448(P2005−261448)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】