説明

印刷用紙

【課題】本発明の課題は、高白色度および高不透明度を併せ持つ低坪量印刷用紙を提供することである。
【解決手段】本発明によって、不透明度が85%以上である、2以上の層を有する印刷用紙であって、印刷用紙の坪量が70g/m以下であり、紫色顔料および/または青色顔料が複数の層に存在し、JIS P 8150の方法によって測定される前記印刷用紙の色相が、紫外線を含む測定においてa値が0以上7未満、b値が−15以上−3未満である、上記印刷用紙が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い白色度と高い不透明度を兼ね備えた低坪量印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙、特に印刷用塗工紙は、通信販売等のカタログ印刷物などに用いられるため、視覚的に強力な印象を与えられる白さが求められる傾向が著しい。一方、冊子の頁数増と、用紙のコスト削減と輸送および郵送のコスト削減を両立する要望もあり、低坪量品への需要がますます高まっている。
【0003】
塗工紙には、上質塗工紙(A1コート、A2コート、A3コート、微塗工紙)、中質塗工紙、超軽量塗工紙などの品種があり、用途別、要望別に坪量、白色度、光沢度、平滑性、色調等のことなる銘柄が各社から製品化されている。
【0004】
上質系の原料を用いた印刷用紙は、主として晒しクラフトパルプを原料としたパルプが用いられるため、着色異物も少なく白色度が高いものの、不透明度が低く、特に薄物で印刷した場合の裏抜けが問題となっている。一方、中質系の原料を用いた印刷用紙は、晒しクラフトパルプに加えて再生パルプや機械パルプが多く配合されるため、上質系印刷用紙よりも比較的不透明度が高いものの、白色度は、上質系印刷用紙よりも低いという問題がある。
【0005】
白色度と不透明度の両立を求める場合、屈折率の高い酸化チタンを内外添する、中空プラスチックピグメントを塗工層に配合するなどして塗工層に適度なサイズの空隙を設ける、またこれらを組み合わせるなどの方法が開示されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、いずれも高価な原料であり、コスト高になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−336593
【特許文献2】特公昭52−118116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような背景を鑑みた結果、本発明の課題は、高白色、高不透明性を有する低坪量印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、印刷用紙を構成する成分の中に、紫、青の色を有する顔料をいずれか1種類以上含有させることにより、白色度が高く、高不透明度の印刷用紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を含む。
(1) 不透明度が85%以上である、2以上の層を有する印刷用紙であって、前記印刷用紙の坪量が70g/m以下であり、紫色顔料および/または青色顔料が複数の層に存在し、JIS P 8150の方法によって測定される前記印刷用紙の色相が、紫外線を含む測定においてa値が0以上7未満、b値が−15以上−3未満である、上記印刷用紙。
(2) 紫色顔料および/または青色顔料の含有量が0.7〜3.5mg/mである、(1)に記載の印刷用紙。
(3) 原料パルプ中の化学パルプの含有量が60重量%以上である、(1)または(2)に記載の印刷用紙。
(4) 前記印刷用紙が、原紙層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、前記顔料が、原紙層と顔料塗工層に存在する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の印刷用紙。
(5) 前記印刷用紙が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、前記顔料が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層から選ばれる2以上の層に存在する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の印刷用紙。
(6) 前記印刷用紙が、原紙層、クリア塗工層を有する非塗工紙であり、前記顔料が、原紙層とクリア塗工層に存在する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高白色、高不透明性の両方の物性を有する低坪量の印刷用紙を得ることができる。特に、本発明の印刷用紙は見た目の白さが強く、機器で測定する白色度よりも白さが際立って見える。また、特に低坪量品において、優れた高不透明性を発揮する。さらに、印刷面感、印刷光沢にも優れ、平滑度が高く、インクの着肉性も優れ、印刷適性に優れている。
【0011】
そして、本発明によれば、紫色顔料および/または青色顔料を2以上の層に分割して存在させることにより、印刷用紙の色むらを抑制することができる。加えて、本発明によれば、不透明度が低い化学パルプを原料に多く用いた場合でも、印刷用紙の不透明度を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】L色相系における色材添加後の色相の変化
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の印刷用紙は、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙でも、前記塗工層を設けない印刷用紙でもよいが、印刷用塗工紙において、本発明の効果を発揮しやすい。印刷用塗工紙とは、基紙(以下、本明細書において、「原紙」ということがある)と、該基紙上の片面あるいは両面に少なくとも一層の塗工層を有し、該塗工層は、顔料および接着剤を主成分とするものである。本明細書においては、白色顔料を含む顔料塗工層を有する印刷用紙を印刷用塗工紙、顔料塗工層を有しない印刷用紙を印刷用非塗工紙という。
【0014】
紫色顔料および/または青色顔料
本発明においては、印刷用紙に、紫色顔料および/または青色顔料を含有させる。本発明において色材とは、白色以外の有色の顔料または染料をいう。顔料とは、水や油や有機溶剤などに不溶または難溶性または分散状態で存在する白色あるいは有色の粉体であり、無機と有機のものがある。本発明においては、無機、有機いずれのものでも良い。染料とは、可視光線を選択吸収または反射して固有の色を持つ有機色素のうち、適当な染色法により繊維や顔料等に染着するものをいい、溶媒(水や有機溶剤など)に可溶である。本発明においては、染料を併用してもよいが、耐光性に優れ、紙の経時による変色・着色を防止するという観点から紫色顔料および/または青色顔料を使用する。
【0015】
本発明の顔料は、青色または紫色であるものを使用でき、青色の顔料としては、例えば、EMT−ブルーDS−18 東洋インキ製造(株)社製などが挙げられ、紫色の顔料としては、例えば、SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製などが挙げられる。顔料は、青色単独、紫色単独、両者併用しても良いが、不透明度向上するには、紫色の顔料を使用することが好ましい。また、本発明においては、必要に応じて、黒、赤、黄などの、青、紫以外の色材を添加しても良い。
【0016】
青色顔料・紫色顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。青色顔料の具体例としては、例えば、ウルトラマリン、アズライト、プロシアブルー(紺青)、群青、スマルト、コバルトブルー(アルミン酸コバルト)、セルリアンブルー(錫酸コバルト)、コバルトクロムブルー、コバルト・アルミ・珪素酸化物、コバルト・亜鉛・珪素酸化物、マンガンブルー、フタロシアニンが挙げられる。また、紫色顔料の具体例としては、例えば、コバルトバイオレット(砒酸コバルト、燐酸コバルト、コバルト・リチウム・燐酸化物、含水燐酸アンモニウムコバルト、ホウ酸コバルトなど)、紫群青、酸化鉄紫、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの無機顔料、インジゴイド系、キナクリドン系、オキサジン系、アントラキノン系、カルボニウム系、キサンテン系の有機顔料が挙げられる。
【0017】
本発明の好ましい態様において、青・紫の顔料を一定量含有することによって色相を後述する範囲とすることにより、印刷用紙の表面色を青白くし、見た目の白さを増強すると共に、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。
【0018】
本発明における青色および紫色の顔料とは、印刷用紙に含有させたときに、印刷用紙をそれぞれの色にする色材である。各々の色材を添加すると、図1に示す方向へ紙の色相を変化させることができる。図1は、L表色系をもとに、本発明の色材を含有しない紙と、含有させた後の紙の色相の変化を示したものである。色相を、a値の(+)方向を0°、(−)方向を180°b値(+)方向を90°、(−)方向を270°として表記した場合、添加前の紙を原点ゼロの位置とすると、青色の色材を添加すると、「青味」と図1に示してある210°以上280°未満の部分に添加後の紙の色相が変化し、紫色の色材を添加すると、「紫味」と図1に示してある280°以上335°未満の部分に添加後の紙の色相が変化するということを表している。
【0019】
顔料の含有量
本発明における紫色顔料および/または青色顔料の含有量は特に限定されるものではないが、顔料合計で、印刷用紙1mあたり、0.7mg以上3.5mg以下であることが好ましく、0.9mg以上3.0mg以下であることがより好ましい。一般に0.7mgより少ないと、顔料による光の吸収が少ないため、不透明度に寄与する隠蔽性が不足するため、好ましくない。また、一般に3.5mgより多いと、顔料による光の吸収量が多く、不透明度向上に大きく寄与するものの、色相が0点から大きく外れ、白色とは感じられなくなるため、好ましくない。顔料の含有量は、上記範囲内で、原料あるいは原紙などの白色度により適宜調節できる。
【0020】
青色顔料および紫色顔料の合計量は、原紙層、サイズプレス層、顔料塗工層の各含有量を合計した値であり、下式によって求められる。
合計量(mg/m
={原紙坪量(g/m)×原紙中のパルプ含有率×原紙中の青色顔料と紫色顔料の含有量(mg/パルプ1g)}
+[サイズプレス液の塗工量(両面)(g/m)×{サイズプレス液中の青色顔料と紫色顔料の合計重量部/サイズプレス液中の全固形分重量部}
+顔料塗工液の塗工量(両面)(g/m)×{顔料塗工液中の青色顔料と紫色顔料の合計重量部/顔料塗工液中の全固形分重量部}]×1000
顔料が含有される層
本発明の青色・紫色顔料は、印刷用紙のいずれの層に含有されていてもよいが、印刷用紙を構成する層の2以上に存在することが必要である。紫色顔料および/または青色顔料を複数の層に存在させることによって、印刷用紙の見た目の白色度や不透明度を安定して向上させることができ、印刷用紙の色むらを抑制することができる。本発明において、青色・紫色顔料が存在する2以上の層とは異なる層である。原紙の両面に同一の層(例えば両面に設けられた塗工層)が存在し、この二つの塗工層が青色・紫色顔料を含む場合は、2の層に青色・紫色顔料が存在することには該当しない。
【0021】
本発明の顔料は、原紙中に含有しても良いし、サイズプレス液中に含有しても良いし、塗工層を設けた印刷用紙であれば、塗工層に含有しても良い。また、原紙層および/または塗工層が2層以上の場合、いずれかの層に含有しても良いし、すべての層に含有しても良い。製造しやすいという観点からは、塗工層に含有している方が好ましい。
【0022】
上述したように、本発明において紫色顔料および/または青色顔料は、印刷用紙を構成する複数の層に存在している必要があるため、本発明の印刷用紙は少なくとも異なる2以上の層を有する必要がある。一般に印刷用紙は、顔料塗工層を有する塗工紙と、顔料塗工層を有していない非塗工紙とに分類され、必要に応じて、澱粉やポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子バインダーの水溶液(サイズプレス液)が原紙上に塗工されてクリア(透明)塗工層が設けられる。そのため、本発明の印刷用紙には、原紙の片面または両面に、クリア塗工層と顔料塗工層のいずれかまたは両方の層が設けられる。
【0023】
したがって、一つの態様において、本発明の印刷用紙は、原紙層と顔料塗工層を有する塗工紙であり、紫色顔料および/または青色顔料が、原紙層と顔料塗工層に存在する。また別の態様において、本発明の印刷用紙は、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、紫色顔料および/または青色顔料が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層から選ばれる2以上の層に存在する。さらに別の態様において、本発明の印刷用紙は、原紙層とクリア塗工層を有する非塗工紙であり、紫色顔料および/または青色顔料が、原紙層とクリア塗工層に存在する。本発明においては、各層に存在する紫色顔料および/または青色顔料の比率は特に制限されないが、最外層である塗工層に存在する顔料の比率を高くすることによって少量の顔料で効率よく発明の効果を享受することができ、例えば、より外側の層に存在する紫色・青色顔料の量を、より内側の層に存在する紫色・青色顔料の量より多くすると好ましい。
【0024】
印刷用紙の製造
本発明の印刷用紙は公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の印刷用塗工紙は、以下に記載する抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造することができ、次いでコーターパートにて後述する塗工液を基紙上に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパートなどに供して製造することができる。また、印刷用非塗工紙の場合、抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して原紙を製造し、その原紙上に水溶性高分子(バインダー)をクリア塗工して製造することができる。
【0025】
原紙
本発明の印刷用紙は少なくとも原紙層を有する。本発明に用いる原紙は、単層抄きであっても多層抄きであってもよい。本発明の原紙が多層構造を有している場合、原紙を構成する複数の層のいずれか1層以上に紫色顔料および/または青色顔料を含有させればよい。紫色顔料および/または青色顔料を原紙層に存在させるためには、紫色顔料および/または青色顔料を含有する抄紙原料から原紙を抄紙すればよい。本発明の原紙の製法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。
【0026】
原料パルプ
本発明の原紙に用いるパルプ原料としては、化学パルプを使用することができる。化学パルプ以外にも、用途に応じて各種パルプを使用することができ、例えば、脱墨パルプ(DIP)、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプなどを使用することができる。また、本発明において脱墨パルプを使用する場合は、上質紙を中心に選別した高白色度のパルプを配合することが好ましい。
【0027】
本発明の好ましい態様において、本発明の原紙は化学パルプを含むパルプ原料から抄紙される。化学パルプには、クラフトパルプ法により製造したものと、亜硫酸パルプ法により製造されたものがあり、本発明においてはその両方を使用することができるが、クラフト法により製造した化学パルプ(以下、本明細書において、単にクラフトパルプ、ということがある)が生産コストの面から好適である。一般に化学パルプは、その製造過程において木材由来成分のリグニンを除去していることから、パルプの白色度が高いが、その反面、製造した紙の不透明度が低くなる傾向があり、特に化学パルプを使用した低坪量の印刷用紙では不透明度を向上させることが大きな課題であったところ、本発明によれば、不透明度を向上させることができる。
【0028】
本発明の好ましい態様において、原料パルプに占める化学パルプの含有量は、全パルプ中60重量%以上であり、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、100重量%がもっとも好ましい。化学パルプの含有量が100重量%であると、リグニンを含まず、印刷用紙を着色させる成分が最も少ない。加えて、リグニンを含まないので紫外線の吸収を抑えられることにより蛍光染料の効力も阻害しないため、印刷用紙の白色度を高くすることができる。化学パルプの含有量が低いほど、白色度の点で不利である。
【0029】
填料
本発明においては、原紙の填料として公知の填料を任意に使用でき、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが不透明度向上のためにも好ましく使用される。紙中填料率は特に制限されないが、1〜40固形分重量%が好ましく、10〜35固形分重量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明においては、公知の製紙用添加剤を使用することができる。例えば、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、各種紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0031】
[抄紙方法・抄紙機]
本発明における原紙の抄紙方法は特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマ、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン等を用いて行うことができる。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよいが、中性またはアルカリ性が好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0032】
原紙の坪量
本発明の原紙の坪量は60g/m以下が好ましく、より好ましくは20〜60g/m、更に好ましくは20〜40g/mである。一般に、坪量が高い紙は、紙厚もあり不透明度が高いのに対して、坪量が低い紙は、紙厚が薄いため不透明度が低くなるところ、本発明によれば、低坪量でありながら不透明度を高くすることができる。
【0033】
また本発明により塗工紙を製造する場合は、原紙をオンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより、塗工工程の前に、予め平滑化しておいてもよい。
クリア塗工
本発明の印刷用紙は、上述した原紙の片面または両面にクリア(透明)塗工層を有していてもよい。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。本発明においては、クリア塗工層に紫色顔料および/または青色顔料を含有させることができ、その場合、クリア塗工の塗工液中に紫色顔料および/または青色顔料を配合し、それを原紙上に塗工すればよい。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1〜1.0g/mが好ましく、0.2〜0.8g/mがより好ましい。
【0034】
本発明においてクリア塗工とは、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉などの各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
【0035】
顔料塗工
本発明の印刷用紙は、顔料塗工により顔料塗工層を設けて塗工紙とすることもできる。本発明の印刷用紙における顔料塗工層は、単層であっても多層であってもよい。本発明においては単層が好ましい。本発明の顔料塗工層が多層構造を有している場合、顔料塗工層を構成する複数の層のいずれか1層以上に紫色顔料および/または青色顔料を含有させればよい。紫色顔料および/または青色顔料を顔料塗工層に存在させるためには、紫色顔料および/または青色顔料を含有する塗料を用いて顔料塗工を行えばよい。本発明において塗工方法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。
【0036】
プレカレンダー処理
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくことが、塗工後の塗工層を均一化する上で好ましい。この場合、処理線圧は、好ましくは30〜100kN/m、より好ましくは50〜100kN/mである。また、プレカレンダー処理する際の原紙の水分率も重要であり、水分率は3〜5%が好ましい。
【0037】
塗工工程
本発明の印刷用塗工紙は、以上のように得られた原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工・乾燥して塗工層を設けることができる。塗工は、原紙の表面片面でも両面でも良いが、カールしない、表裏の物性が異ならないということから、両面塗工が好ましい。
【0038】
塗工層に含有する顔料
本発明の塗工層に用いる顔料(白色顔料)の種類は、塗工紙用に従来から用いられているものを使用することができ、例えば、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを必要に応じて単独または2種類以上混合して使用することができる。また、顔料の種類としては、高い白色度の観点から、重質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウムが好ましく、また不透明度をも向上させる観点から、粒子径や形状が揃った軽質炭酸カルシウムが特に好ましい。嵩高な塗工層構造は光を効率的に散乱するためである。
【0039】
塗工液に炭酸カルシウムを配合する場合、軽質炭酸カルシウムもしくは重質炭酸カルシウム、またはその両方をあわせた含有量は、顔料100重量部あたり50重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましく、80重量以上がさらに好ましい。また、原紙上に均一な塗工層を形成させる観点の点から平均粒子径は、Malvern社製Mastersizer Sなどのレーザー回折式粒度分布測定機で測定した値で0.2〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。
【0040】
接着剤
本発明で使用する接着剤(バインダー)について、特に制限はなく、塗工紙用に従来から用いられている接着剤を使用することができる。例えば、好ましい接着剤として、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0041】
本発明に使用する接着剤の量は、印刷適性、塗工適性の点から、顔料100重量部に対して20〜40重量部であることが好ましく、25〜35重量部であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、接着剤の総量が40重量部を越える場合、塗料の粘度は高くなり、フィルム転写方式で塗工する際にボイリング等の操業トラブルが生じ易く、20重量部未満の場合は、原紙にフィルム転写方式で塗工した際に、十分な表面強度を得難いためである。
【0042】
本発明の塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
[塗工液の調整]
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が500〜1000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0043】
塗工方法・塗工機
本発明においては、通常用いられるコータであればいずれを用いても良い。オンマシンコータでもオフマシンコータでも良く、オンマシンコータであれば、サイズプレスコータ、ゲートロースコータなどのロールコータ、ビルブレイドコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータなどのコータを使用できる。塗工速度は、特に限定されないが、現在の技術ではブレードコータでは500〜1800m/分、サイズプレスコータでは500〜3000m/分が好ましい。
【0044】
塗工量
本発明における塗工液の塗工量は、片面あたり固形分で2〜15g/mが好ましく、5〜12g/mがより好ましく、5〜10g/mがさらに好ましい。本発明においては、塗工量が少ない場合において優位性が高く、より不透明度向上の効果が発揮できる。
【0045】
[乾燥工程]
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0046】
表面処理
本発明においては、以上のように製造した紙を必要に応じて表面処理する。好ましい態様において、本発明の印刷用紙は、スーパーカレンダーや高温ソフトニップカレンダー等のカレンダーで表面処理を行うことができる。表面処理により、印刷用紙の平滑度や光沢性を向上させることができる。本発明においては、ソフトニップカレンダ処理が好ましい。ソフトニップカレンダ処理をすることにより、白色度、不透明度共に向上する。ソフトニップカレンダ処理において、金属ロールの表面温度が20℃〜60℃の線圧は、30〜60kN/m、より好ましくは、40〜60kN/mである。また、金属ロールの表面温度が40℃〜250℃の高温ソフトニップカレンダ処理であれば、線圧は60〜400kN/m、好ましくは、150〜300kN/m、より好ましくは100〜350kN/mである。温度を上げると、塗工紙の表面の光沢、平滑度が向上する。
【0047】
印刷用紙
[坪量]
本発明の印刷用紙の坪量は70g/m以下である。一般に、坪量が高い紙は、紙厚もあり不透明度が高いが、坪量が低い紙は、紙厚が薄いため不透明度が低くなるところ、本発明によれば、低坪量でありながら不透明度を高くすることができる。本発明においては、坪量が低い領域で効果を発揮しやすく、より効果が現れやすいのは、坪量が60g/m以下の場合である。
【0048】
[色相]
本発明の印刷用紙の色相は、JIS P 8150に規定される紫外線を含む測定においてa値が0以上7未満かつb値が−15以上−3未満であることが好ましく、a値が0以上5未満かつb値が−10以上−5未満であることがより好ましく、a値が0以上5未満かつb値が−9以上−5未満であることがさらに好ましい。このようにbを比較的低くすることによって、印刷用紙の見た目の白さを増強できるとともに、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。
【0049】
[灰分]
本発明の印刷用紙の紙中灰分は、非塗工紙の場合、10重量%以上であることが好ましく、塗工紙の場合、30重量%以上であることが好ましい。印刷用紙の灰分が10重量%より少ないと不透明度が十分に向上しない。
【0050】
[蛍光増白強度]
本発明の印刷用紙は、蛍光増白強度が5.5以下であっても十分な白色度を得ることができるが、白色度を向上させる観点から蛍光増白強度は4.0以上であることが好ましい。
【0051】
[不透明度]
本発明によれば、印刷用紙の不透明度を85%以上とすることができる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例および比較例をあげてより詳細に説明するが、当然ながら、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0053】
[品質評価方法]
以下に記載する品質評価方法で、本発明の印刷用紙の品質を評価した。
(1)色相測定方法(a、b):JIS P8150に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
(2)ISO白色度測定方法:JIS P8148に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
(3)不透明度測定方法:JIS P8149に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて測定した。
(4)灰分測定方法:JIS P8251に準拠して測定した。
(5)蛍光増白強度:村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定したISO白色度の値から、紫外光を含まない光源にて測定した白色度の値を引いた差を、蛍光増白強度とした。
(6)色合い:印刷用紙表面の色合いを室内蛍光灯照明下で目視にて評価した。
(7)見た目の白さ:印刷用紙表面の白さを室内蛍光灯照明下で目視にて評価した。色の白さについては白色度が必ずしも人の目で見たときの白さと相関しているわけではないためである。目視の評価は4段階とした。◎:とても白い、○:白い、△:ややくすんで見える、あるいはやや黄ばんで見える、×:くすんで見える、あるいは黄ばんで見える。
(8)印刷時の裏抜け:オフセット輪転機で片面に墨ベタ印刷を施した印刷用紙を、印刷裏側から観察し、裏抜けを目視にて評価した。目視の評価は4段階とした。◎:裏の印刷部が殆ど認識できない、○:裏の印刷部が目立たない、△:印刷部がやや目立つ、×:印刷部が目立ち、裏面の画質或いは見た目を劣化させている。
(9)色むら:印刷用紙の色むらを、以下の基準により目視により4段階で評価した。◎:色むらが認識できない、○:目立つ色むらはない、△:色むらがある、×:色むらが目立つ。
【0054】
また、本発明の印刷用紙について上記以外の品質項目も測定した。
[材料]
サイズプレス液、塗工液に配合した各材料は以下の通りである。
1.酸化澱粉(日本コーンスターチ(株)製SK−20)
2.顔料
・微粒軽質炭酸カルシウム
・微粒カオリン(ハイドラグロス CaMin社製)
3.色材
・青色顔料(EMT−ブルーDS−18 東洋インキ製造(株)社製)
・紫色顔料(SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製)
・黒色顔料(SAブラックA035 御国色素(株)社製)
4.蛍光染料(BLANKOPHOR NCC LIQUID ケミラジャパン(株))
5.接着剤
・スチレン−ブタジエン系合成高分子ラテックス
6.水溶性高分子
・尿素リン酸エステル化澱粉(日本食品化工(株)製スターコート16)
[紙料の調成]
広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を65%、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を35%含有するパルプスラリーを調成し、填料として表1に記載の配合割合で軽質炭酸カルシウムを添加し、内添紙力剤としてカチオン性紙力増強剤を対パルプ0.5%添加して紙料を調成した。実施例5においては紙料に顔料を添加した。
【0055】
[サイズプレス液(表面処理液)の調製]
表1に示す配合で、各材料を常温にて混合攪拌し、固形分濃度が8重量%のサイズプレス液を得た。なお、色材の配合量は、酸化澱粉100重量部に対する値である。このサイズプレス液の塗工量は、すべての実施例および比較例で0.5g/mとした。
【0056】
[顔料塗工液の調整]
顔料として、微粒軽重質炭酸カルシウムを85部、微粒カオリンであるハイドラグロス(CaMin社製)を15部を配合し、全顔料に対して、モノマー組成が主にスチレンおよびブタジエンである合成高分子ラテックスを7部、水溶性高分子としてリン酸エステル化澱粉を4部配合し、さらに蛍光染料を4部配合し、さらに、表1に示す配合で色材を常温にて混合攪拌し、固形分濃度が67重量%の塗工液を得た。なお、色材、接着剤、水溶性高分子の配合量は、顔料100重量部に対する値である。
【0057】
【表1】

【0058】
[印刷用紙の製造]
上記の紙料を用いて、抄紙速度が1100m/分にて、ツインワイヤーを有する抄紙機で抄紙して、上記のサイズプレス液(表面処理液)をゲートロールコータにて塗工量片面あたり0.5g/mになるように、両面にサイズプレスして乾燥し、坪量41.8g/mの原紙を得た。
【0059】
続いて、上記の塗工液を原紙にブレードコータで塗工量片面あたり表1に示す値になるように、塗工速度1100/分で両面に塗工して乾燥した。
抄紙、塗工を連続してオンラインで行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1100m/分であった。さらに高温ソフトニップカレンダで4ニップ、最高処理温度200℃、最高処理線圧250kN/mの条件で表面処理して印刷用塗工紙を得た。
【0060】
【表2−1】

【0061】
【表2−2】

【0062】
表2から明らかなように、青色、紫色の顔料を1種類以上含有する本発明の印刷用紙は、高い白色度と高い不透明度を併せ持ち、印刷時、特にオフセット印刷時の裏抜けが目立たず、色彩再現幅が広い、優れた印刷用塗工紙である。
【0063】
また、原紙の両面に形成された塗工層2層以上に含有させた印刷用紙(実施例)は、料を1層のみに含有させた印刷用紙(比較例)と比較して色むらが少なく、好適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明度が85%以上である、2以上の層を有する印刷用紙であって、
前記印刷用紙の坪量が70g/m以下であり、
紫色顔料および/または青色顔料が複数の層に存在し、
JIS P 8150の方法によって測定される前記印刷用紙の色相が、紫外線を含む測定においてa値が0以上7未満、b値が−15以上−3未満である、印刷用紙。
【請求項2】
紫色顔料および/または青色顔料の含有量が0.7〜3.5mg/mである、請求項1に記載の印刷用紙。
【請求項3】
原料パルプ中の化学パルプの含有量が60重量%以上である、請求項1または2に記載の印刷用紙。
【請求項4】
前記印刷用紙が、原紙層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、前記顔料が、原紙層と顔料塗工層に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項5】
前記印刷用紙が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、前記顔料が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層から選ばれる2以上の層に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用紙。
【請求項6】
前記印刷用紙が、原紙層、クリア塗工層を有する非塗工紙であり、前記顔料が、原紙層とクリア塗工層に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用紙。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26753(P2011−26753A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63596(P2010−63596)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】