説明

印刷用紙

【課題】内添する填料の原料として再生粒子及び二酸化チタン粒子を用い、高い不透明度及び白色度を有する印刷用紙を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、填料が内添された印刷用紙であって、上記填料として、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られた再生粒子と二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子を含み、印刷不透明度が90%以上96%以下であることを特徴とする。上記複合粒子の表面の少なくとも一部がシリカで被覆されているとよい。また、上記複合粒子におけるシリカの含有率が5質量%以上30質量%以下であるとよい。上記再生粒子の平均粒子径(一次粒子径)が1μm以上10μm以下であり、上記二酸化チタン粒子の平均粒子径(一次粒子径)が0.2μm以上1μm以下であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源問題及び経費削減の観点から、新聞用紙等の印刷用紙は軽量化される傾向にある。しかし、印刷用紙を軽量化した場合、白紙不透明度や印刷後不透明度(以下、これら両不透明度を単に「不透明度」ともいう。)が低下するという不都合を有する。この対策として、紙に種々の填料を内添紙、不透明度を高めることが一般的に行われている。上記填料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水和ケイ酸(ホワイトカーボン)、尿素−ホルマリンポリマー微粒子などが用いられている。これらの中でも、二酸化チタンは屈折率が高く、光散乱能に優れるため、不透明度の向上には有効ではある。しかしながら、この二酸化チタン粒子は、高価であり、吸油能が小さく、加えて粒子径が小さいことに起因して抄紙の際の歩留りが低いという不都合を有している。
【0003】
このような中、填料としての二酸化チタン粒子の歩留りを向上させるべく、各種方法が提案されている。この方法としては、炭酸カルシウム粒子と酸化チタン粒子とを特定の凝集剤(カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アクリル酸モノマー等)を用いて凝集させて凝集粒子を得る方法(特開2004−18336号公報及び特開平6−93204号公報参照)が挙げられる。しかし、このような2種の粒子を凝集させる方法によれば、凝集剤による炭酸カルシウム粒子と酸化チタン粒子との結合は強いものではないため、抄紙の際にこの凝集状態が維持されないこと等により、十分な歩留り向上効果を得ることができず、その結果、得られる紙の不透明度を効果的に向上させることができない。
【0004】
一方、製紙工場の各種工程から排出される製紙スラッジ中の無機物を、いわゆる再生粒子として、製紙用填料等に再利用することが、製紙業界において環境問題に関わる重要な課題となっている。このような再生粒子を製造する方法としては、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程をこの順に経るものが一般的である。このような再生粒子は、様々な改良が行われているが、原料が廃棄物であるが故に粒径をはじめとした品質が一定ではなく、白色度も十分ではない。
【0005】
そこで、再生粒子等の填料の品質を向上させる技術として、粒子にシリカを被覆させる複合化が試みられている(特開2008−81390号公報及び特開2003−49389号公報参照)。このように再生粒子にシリカを被覆させることで、歩留り及び白色度の向上は見られるものの、再生粒子を他の填料と同様程度の品質には至っていない。従って、再生粒子や二酸化チタン粒子を填料として用いた印刷用紙には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−18336号公報
【特許文献2】特開平6−93204号公報
【特許文献3】特開2008−81390号公報
【特許文献4】特開2003−49389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、内添する填料の原料として再生粒子及び二酸化チタン粒子を用い、高い不透明度及び白色度を有する印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
填料が内添された印刷用紙であって、
上記填料として、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られた再生粒子と二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子を用い、
印刷不透明度が90%以上96%以下であることを特徴とする。
【0009】
当該印刷用紙に内添される複合粒子は、比較的粒径の大きい再生粒子と、一般的に粒径の小さい二酸化チタン粒子とが凝集されてなるため、再生粒子の表面を覆うように二酸化チタン粒子が凝集した状態となっている。すなわち上記複合粒子は、二酸化チタン粒子を用いているにもかかわらず粒径が比較的大きく、優れた歩留り性及び不透明度向上能を発揮することができる。特に、上記複合粒子においては、単なる凝集剤による凝集効果のみならず、粒径の小さい二酸化チタン粒子の一部が凝集の際に多孔質状の再生粒子の孔部分(凹部)に侵入して固着することなどにより強固な凝集状態が形成されている。このため、上記複合粒子によれば、抄紙等の際にもこの凝集状態が維持され、優れた歩留り性を発揮することができる。また、上記複合粒子は、白色度が高い二酸化チタン粒子が再生粒子を覆う状態となっているため、再生粒子を用いているにもかかわらず白色度が高い。従って、当該印刷用紙は不透明度及び白色度を共に高めることができる。
【0010】
加えて、上記複合粒子は、上記2種の粒子を凝集剤により凝集させて得られていることで、粒度分布が2粒子の混合粒子状態と比較してシャープになる場合があり、この場合、歩留り性をさらに高めることができる。また、内添される複合粒子の粒度分布がこのように狭いと、紙中に均一に分布することができ、高灰分としなくても軽量化に対応することができる。
【0011】
上記複合粒子の表面の少なくとも一部がシリカで被覆されているとよい。上記複合粒子によれば、このように表面の少なくとも一部がシリカで被覆されているため、上記二種類の粒子がさらに強固に固定され、抄紙等の工程においても、この凝集状態をより確実に維持することができ、歩留り性をより高めることができる。また、上記複合粒子は、表面の少なくとも一部を被覆するこの多孔質状のシリカの優れた吸油能により、高い吸油量が得られ、印刷不透明度を高めることができる。従って、当該印刷用紙は、不透明度及び白色度をより高めることができる。
【0012】
上記複合粒子におけるシリカの含有率が5質量%以上30質量%以下であるとよい。上記複合粒子によれば、シリカ含有率を上記範囲とすることで、抄紙の際等においても二種類の粒子の凝集状態を十分に維持することができ、その結果、歩留り性をより高めることができることに加え、シリカと他の粒子とのバランスにより優れた白紙不透明度と印刷不透明度との両立を図ることができる。従って、当該印刷用紙は、不透明度及び白色度をより高めることができる。
【0013】
上記複合粒子の平均粒子径が2μm以上15μm以下であるとよい。当該印刷用紙は、上記複合粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、紙力の低下を抑えつつより優れた不透明度を発揮することができる。
【0014】
上記再生粒子の平均粒子径(一次粒子径)が1μm以上10μm以下であり、上記二酸化チタン粒子の平均粒子径(一次粒子径)が0.2μm以上1μm以下であるとよい。上記複合粒子によれば、上記範囲の粒径を有する二種類の粒子を用いることで、上述した比較的粒径の大きい再生粒子を核として、この表面を覆うように粒径の小さい複数の二酸化チタン粒子が凝集した状態を形成しやすい。従って、当該印刷用紙によれば、二酸化チタン粒子の優れた光散乱能を十分に発揮させ、不透明度及び白色度を共にさらに高めることができる。
【0015】
ここで、平均粒子径とは、レーザー回析散乱法により測定された粒度分布における体積平均粒径(D50)をいう。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の印刷用紙は、再生粒子及び二酸化チタン粒子を原料とする填料を用い、高い不透明度及び白色度を発揮することができる。従って、当該印刷用紙は軽量化の要請の高い新聞用紙等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の印刷用紙の実施の形態を詳説する。
【0018】
本発明の印刷用紙は、填料として複合粒子が内添されている。当該印刷用紙は、通常、パルプ及び填料等を含むパルプスラリーを抄紙して得られる。
【0019】
<パルプ>
上記パルプとしては、公知のものを用いることができ、古紙パルプ、バージンパルプ又はこれらの組み合わせたものを適宜用いることができる。なお、主成分として古紙パルプを用いることが、省資源化の観点からも好ましい。
【0020】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0021】
これらの古紙パルプの中でも、新聞古紙由来の新聞古紙パルプ、雑誌古紙由来の雑誌古紙パルプ等が好ましく、新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプを混合して用いることが特に好ましい。かかる新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプは、古紙の回収率が高く、各製紙メーカーで新聞用紙、雑誌用紙を構成する原料パルプ種や填料類が近似していることから、原料構成の変動を抑えることができる点で好適である。特に、新聞古紙パルプは、新聞用紙には一般的に古紙パルプが既に50%以上配合され、バージンの機械パルプやクラフトパルプの含有量が少ないため、また、バージンの各種パルプが用いられていても、一度抄紙され、古紙処理により古紙パルプ化されているため、その性状は均質化し、ほぼ一定の性状を有している点で特に好ましい。
【0022】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。
【0023】
これらのバージンパルプの中でも、印刷用紙の製造において、古紙パルプを用いることによる嵩の低下を補完する効果を有する機械パルプ(MP)が好ましく、古紙から得る古紙パルプの調整に好適なサーモメカニカルパルプ(TMP)が特に好ましい。
【0024】
原料パルプにおける古紙パルプの含有量としては、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。原料パルプ中の古紙パルプの含有量を上記範囲とすることで、資源の有効利用等の環境性が向上し、さらにインキ着肉性等の印刷適性も向上する。逆に、原料パルプにおけるバージンパルプの含有量としては、10質量%以上が好ましく、20質量%以上が特に好ましい。バージンパルプの含有量が上記範囲未満では、強度や嵩の調整が困難で、強度が低い印刷用紙や嵩が出ず腰のない印刷用紙になり、搬送性や作業性が低下するおそれがある。
【0025】
<填料>
上記填料としては、上記複合粒子を含み、その他の例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水和ケイ素、ホワイトカーボン、再生粒子、シリカ複合再生粒子等を含んでもよい。以下、必須成分である複合粒子について詳説する。
【0026】
<複合粒子>
上記複合粒子は、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られた再生粒子と、二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子である。
【0027】
上記複合粒子は、比較的粒径の大きい再生粒子と、比較的小さい二酸化チタン粒子とが凝集されてなるため、再生粒子の表面を覆うように二酸化チタン粒子が凝集した状態となっている。従って、このような複合粒子によれば、二酸化チタン粒子を用いているにもかかわらず粒径が比較的大きく、優れた歩留り性及び不透明度向上能を発揮することができる。特に、上記複合粒子においては、単なる凝集剤による凝集効果のみならず、粒径の小さい二酸化チタン粒子の一部が、凝集の際に多孔質状の再生粒子の孔部分に固着することなどにより強固な凝集状態が形成されている。このため、上記再生粒子によれば、抄紙等の際にもこの凝集状態が維持され、凝集状態が崩れにくいため優れた歩留り性を発揮することができる。また、上記複合粒子は、白色度が高い二酸化チタン粒子が再生粒子を覆う状態となっているため、再生粒子を用いているにもかかわらず白色度が高い。
【0028】
上記複合粒子の平均粒子径としては、2μm以上15μm以下が好ましく、4μm以上10μm以下がさらに好ましい。上記複合粒子は、上記範囲の平均粒子径を有することにより、填料として用いた際、紙力の低下を抑えつつ、より優れた歩留り性能を発揮することができ、不透明度等を効率的に高めることができる。
【0029】
上記複合粒子の平均粒径が上記下限未満の場合は、填料として用いたときに歩留り性が十分に向上しないおそれがあり、また、不透明度向上能も十分ではない。一方、この平均粒子径が上記上限を超えると填料として用いた場合、パルプ繊維間の強度を低下させる結果、紙力が低下する場合があり、また、粒径が大きいことで、スラリー中での均一分散性が低下し、不透明度及び印刷後不透明度が低下するおそれがある。
【0030】
上記再生粒子と二酸化チタン粒子との含有比(質量比)としては、30:70〜90:10が好ましく、50:50〜90:10がさらに好ましい。両粒子の含有比をこのような範囲とすることで、再生粒子を核として、この表面に粒径の小さい二酸化チタン粒子を効率的に凝集した状態とすることができる。従って、上記複合粒子によれば、二酸化チタン粒子の優れた光散乱能を活かしつつ、凝集体として粒径を大きくすることで、より優れた歩留り性を発揮することができる。また、上記複合粒子によれば、白色度の高くない再生粒子を二酸化チタンで効率的に被覆することで、白色度をより高めることができる。
【0031】
<再生粒子>
上記再生粒子は、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られたものである。このような工程を経て得られた再生粒子は、過燃焼が抑えられており、スラリー化の際の増粘を抑制することができる。また、上記再生粒子は、不定形状かつ多孔質形状であるため、上述のように凝集の際、比較的粒径の小さい二酸化チタン粒子を孔部分等に固定することが可能である。なお、この再生粒子の好ましい製造方法については、後に詳述する。
【0032】
上記再生粒子の平均粒子径(一次粒子径)としては、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。再生粒子の平均粒子径を上記範囲とすることで、粒径の小さい再生粒子同士の凝集が進み、一方、粒径の元々大きい粒子は凝集が進行しにくい効果が得られ、複合粒子の粒径を所望する範囲に制御しやすくなり、抄紙の際の歩留りをより高めることができる。
【0033】
再生粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合は、凝集剤によっても十分な粒径にまで凝集が進まず、歩留りが十分に高まらない場合がある。逆に、再生粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合は、得られる凝集体の粒径が大きくなりすぎる場合があり、この結果紙力が低下するおそれがある。
【0034】
<二酸化チタン粒子>
二酸化チタン粒子は、屈折率が高く、光散乱能に優れるため、白紙不透明度を高めることができる。
【0035】
上記複合粒子に用いられる二酸化チタン粒子は、平均粒子径(一次粒子径)が0.2μm以上1μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がさらに好ましい。また、上記再生粒子の平均粒子径に対する、上記二酸化チタン粒子の平均粒子径としては、0.05倍以上0.4倍以下であるとよい。
【0036】
上記二酸化チタン粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることで、上述した比較的粒径の大きい再生粒子を核として、この表面を覆うように粒径の小さい複数の二酸化チタン粒子が凝集した状態を形成しやすい。従って、当該複合粒子は、二酸化チタン粒子の優れた光散乱能を十分に発揮させて、不透明度及び白色度を共にさらに高めることができる。二酸化チタン粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合は、凝集が進行しにくく、十分な粒径の複合粒子を得られにくくなる場合がある。逆に、二酸化チタン粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、再生粒子の孔部分(凹部)に侵入しにくくなるなどにより、凝集性が低く、歩留りが低下するおそれがある。
【0037】
上記二酸化チタン粒子としては、特に限定されず、製紙用として公知のものを用いることができる。この二酸化チタン粒子の結晶形態としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型等のいずれも使用することができるが、ルチル型又はアナターゼ型を用いることが好ましい。
【0038】
<凝集剤>
凝集剤は、再生粒子と二酸化チタン粒子とを凝集させる。この凝集剤としては、その高分子鎖により複数の粒子を絡み取り凝集させることができるものであれば特に限定されずカチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子等の高分子化合物を用いることができる。但し、本発明者等の知見によると、再生粒子と二酸化チタン粒子とを含むスラリーを用い、再生粒子を核としてその表面に二酸化チタン粒子を被覆させるには、カチオン性高分子を用いることが好ましく、カチオン性合成高分子を用いることがさらに好ましい。凝集剤としてカチオン性高分子を用いることで、負に帯電している再生粒子表面にこの凝集剤が優先的に付着し、その表面に二酸化チタン粒子を効果的に付着させることができ、一方、カチオン化された比較的大きい再生粒子同士の凝集を抑え、得られる複合粒子が大型化することを抑えることができる。また、カチオン性合成高分子を用いることで、この凝集剤のカチオン電荷密度及び好適な分子量を容易に調整することができる。
【0039】
この凝集剤の質量平均分子量の下限としては、粒径の小さい粒子同士は凝集が進み、一方、粒径の元々大きい粒子は凝集が進行しにくい効果、すなわち粒度分布を狭くする効果を十分に発現させため、400万が好ましく、600万がさらに好ましく、700万が特に好ましい。一方、この質量平均分子量の上限としては、2,000万が好ましく、1,200万がさらに好ましく、1,000万が特に好ましい。凝集剤の分子量を上記範囲とすることで、粒径の小さい再生粒子同士は凝集が進み、一方、粒径の元々大きい再生粒子同士は凝集が進行しにくい凝集性を発揮することができる。特に、上述のような平均粒子径を有する再生粒子に対しては、このような範囲の分子量を有する凝集剤を用いることで、所望する粒子径を有する複合粒子(凝集体)を効率的に得ることができる。なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
【0040】
凝集剤の質量平均分子量が上記下限未満の場合は、十分な凝集能を発揮することができず、粒子の凝集が進まないため、歩留りの向上が発揮されないおそれがある。逆に、この平均分子量が上記上限を超える場合は、凝集能が強すぎて、偏凝集の発生や、スラリーの粘度が上昇して抄紙の作業性が低下したり、得られる紙の紙力が低下したりするおそれがある。
【0041】
また、凝集剤のカチオン電荷密度の上限としては、30meq/gが好ましく、20meq/gがさらに好ましく、15meq/gが特に好ましい。一方、このカチオン電荷密度の下限としては、0.1meq/gが好ましく、1meq/gがさらに好ましく、2meq/gが特に好ましい。凝集剤のカチオン電荷密度を上記範囲とすることで、再生粒子がもつブロードな粒度分布において、粒径の小さい粒子同士は凝集が進み、一方、粒径の元々大きい粒子は凝集が進行しにくい好適な凝集性を発揮することができる。なお、凝集剤として複数の成分を用いる場合は、その凝集剤全体としてのカチオン電荷密度をいう。
【0042】
本発明において、上記カチオン電荷密度は以下の方法で測定した値である。試料をpH4.0の水溶液に調整した後、流動電位法に基づく粒子荷電測定装置(Muteck PCD−03)にて、1/1000規定のポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いた滴定によって、アニオン要求量を測定する。下記式(1)により試料1gあたりのカチオン電荷密度を計算する。
カチオン電荷密度=A/B ・・・ (1)
A:pH4.0に調整した凝集剤水溶液のアニオン要求量(μeq/l)
B:凝集剤水溶液の固形分濃度(g/l)
【0043】
凝集剤のカチオン電荷密度が上記上限を超えると、再生粒子に加えて、二酸化チタン粒子もがカチオン電荷を帯び、電荷による反発で凝集が生じにくくなる場合がある。逆に、凝集剤のカチオン電荷密度が上記下限未満の場合は、負に帯電している再生粒子(特に粒径の小さい再生粒子)を電気的に凝集させることができる効果を十分に発揮することができず、ブロードな粒度分布となる場合がある。
【0044】
凝集剤として好適に用いられることのできるカチオン性合成高分子としては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の単独重合物又は非イオン性単量体との共重合物、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ジアルキルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライド−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ポリビニルアミジン、キトサン、ポリアルキレンポリアミンなどを挙げることができ、これらを1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
これらの中でも、凝集性及びスラリーの増粘抑制性の点から、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体と非イオン性単量体との共重合物が好ましく、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体と非イオン性単量体との共重合物及びポリアルキレンポリアミンの混合物が特に好ましい。
【0046】
(メタ)アクリレート系カチオン性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の中でも、再生粒子及び二酸化チタン粒子に対する凝集性及びスラリーの増粘抑制性の点から(メタ)アクリル系単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが、より好ましく、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0047】
(メタ)アクリレート系カチオン性単量体との共重合に用いられる非イオン性単量体としては、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トのなどを挙げることができる。これらの中でもアクリルアミドを用いることが、所望の分子量及び電荷密度を有するカチオン性合成高分子を得られやすい点から好ましい。
【0048】
<シリカ>
上記複合粒子においては、表面の少なくとも一部がシリカで被覆されているとよい。このような複合粒子によれば、表面の少なくとも一部がシリカで被覆されているため、シリカが上記二種類の粒子のバインダーとしての機能を有しさらに強固に固定され、抄紙等の工程においても、この凝集状態をより確実に維持することができ、歩留り性をより高めることができる。また、このような複合粒子は、表面の少なくとも一部を被覆するこの多孔質状のシリカの優れた吸油能により吸油量が高く、印刷不透明度を高めることができる。
【0049】
上記シリカとしては、特に限定されず公知のものを用いることができる。なお、後述するように水溶液中でシリカを析出し被覆させることで、効率的に凝集体に被覆させることができ、かつ、多孔質状に被覆させることができるため優れた吸油能を発揮することができる。
【0050】
このシリカの含有率(以下、被覆率と言う場合もある)としては、5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。シリカ含有率をこのような範囲とすることで、抄紙の際等においても二種類の粒子の凝集状態を十分に維持することができ、その結果、歩留りをより高めることができることに加え、シリカと他の粒子とのバランスにより優れた白紙不透明度と印刷不透明度との両立を図ることができる。なお、このシリカ含有率とは、粒子の元素分析を行い、含有する構成成分から再生粒子、二酸化チタン、シリカ等の含有割合を推定し、シリカ被覆後のシリカ成分の含有率から算出することができる。また、シリカの含有率とは、複合粒子全体の質量に対するシリカの質量の割合をいう。
【0051】
シリカ含有率が上記下限未満の場合は、このシリカが二種類の粒子のバインダーとして十分に機能せず、抄紙の際に凝集状態が分断し、歩留りが向上しないおそれがある。また、シリカによる十分な吸油量の向上効果が発揮されない場合がある。逆に、シリカ含有率が上記上限を超える場合は、シリカ被覆量が多くなりすぎるため、二酸化チタン粒子の光散乱機能が十分に発揮されず、白紙不透明度が低下するおそれがある。
【0052】
<複合粒子の品質等>
上記複合粒子は、上述のように高い白色度を有する。上記複合粒子の具体的な白色度としては、80%以上が好ましく、85%以上がさらに好ましい。なお、この白色度は、Tappi−534pm−76法に準じて測定した値である。
【0053】
上記複合粒子の吸油量は、30mL/100g以上150mL/100g以下、より好ましくは60mL/100g以上100mL/100g以下の範囲が好ましい。このような吸油量を有する複合粒子を内添填料として使用すると、紙層中においてこの複合粒子が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収するため用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、また、インクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収することで、インク乾燥性やニジミの防止効果を顕著に発揮することができる。この吸油量が30mL/100g未満の場合には上記の効果が十分でなく、複合粒子がインクの吸収・乾燥性を阻害する傾向が生じる場合が有る。また吸油量が150mL/100gを超えると、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る不都合が生じる場合がある。
【0054】
<複合粒子の製造方法>
上記複合粒子の製造方法としては特に限定されないが、例えば、
(1)再生粒子と二酸化チタン粒子とを凝集剤により凝集させる凝集工程、及び、必要に応じて
(2)上記凝集体表面の少なくとも一部にシリカを被覆させるシリカ被覆工程
を有する方法を挙げることができる。以下、各工程について順に詳説する。
【0055】
<(1)凝集工程>
この凝集工程は、例えば再生粒子と二酸化チタン粒子とを水中へ分散させた粒子スラリーへ、凝集剤を添加することによって行うことができる。両粒子の水中へ分散は、この2種の粒子を同時に水中へ分散させてもよいし、再生粒子を水中へ分散させた再生粒子スラリー中に二酸化チタン粒子を分散させてもよく、その逆であってもよい。
【0056】
なお、凝集剤としてカチオン性凝集剤を用いる場合は、再生粒子と二酸化チタン粒子(又は二酸化チタン粒子を水中へ分散させた二酸化チタン粒子スラリー)を水中へ分散させた再生粒子と二酸化チタン粒子のスラリー中にカチオン性凝集剤を添加するとよい。この方法により、単独の粒子にカチオン性凝集剤を添加させた後工程で他の粒子を添加する手段と異なり、先の粒子にて凝集剤の効果が消費されることなくカチオン性凝集剤を用いる効果(負に帯電している再生粒子表面にカチオン性凝集剤が優先的に付着し、その表面に二酸化チタン粒子を効果的に付着させることができ、一方、カチオン化された比較的大きい再生粒子同士の凝集を抑え、得られる複合粒子が大型化することを抑えることができる効果)を十分に発揮させることができる。
【0057】
粒子スラリーにおける両粒子(再生粒子と二酸化チタン粒子との合計)の固形分濃度としては、5質量%以上40%質量以下が好ましく、10質量%以上35質量%以下がさらに好ましく、15質量%以上25質量%以下が特に好ましい。粒子スラリーの濃度を上記範囲とすることで、粒子を効率良く凝集させることができる。
【0058】
粒子スラリーの濃度が上記下限未満の場合は、凝集剤の添加によっても、粒子が好適な粒径にまで凝集しないおそれがある。一方、粒子スラリーの濃度が上記上限を超える場合は、粘度が高すぎて作業性が低下したり、また、複合粒子の粒度分布が広がり、歩留りが低下するおそれがある。
【0059】
また、凝集剤の添加量としては、再生粒子及び二酸化チタン粒子の合計固形分に対して、固形分換算で200ppm以上3,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以上2,500ppm以下がさらに好ましく、1,500ppm以上2,000ppm以下が例えば再生粒子がもつブロードな粒度分布において、粒径の小さい粒子同士は凝集が進み、一方、粒径の元々大きい粒子は凝集が進行しにくい効果を効果的に発揮するため特に好ましい。
【0060】
凝集剤の添加量が上記下限未満の場合は、十分な凝集を発揮させることができず、歩留りの向上効果が発揮されない場合がある。逆に、凝集剤の添加量が上記上限を超えると、スラリーの増粘が顕著に生じたり、三次、四次凝集が生じ、得られる紙の紙力が低下する場合がある。
【0061】
<(2)シリカ被覆工程>
このシリカ被覆工程においては、上記工程で得られた凝集体の表面にシリカを被覆させる。このシリカの被覆方法としては、凝集体スラリーに珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とをこの順に添加し、凝集体表面にシリカを被覆させる方法や、珪酸アルカリ水溶液に凝集体スラリーを加えて混合し、その後鉱酸を添加してシリカを被覆させる方法などを挙げることができる。鉱酸の添加は、少なくとも2段階に分けて添加し、シリカ複合の反応を行うことが好ましい。
【0062】
上記珪酸アルカリ水溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で望ましい。
【0063】
上記鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸などの鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格や、ハンドリングの点、再生粒子中のカルシウム分の溶出防止や設備・装置の腐食対策と言った理由で希硫酸が最も好ましい。この希硫酸の濃度は、4〜10N程度の濃度が好ましい。希硫酸の濃度が4N未満では反応が遅く、10Nを超えると局部的な反応が生じ、炭酸カルシウム粒子が変質するおそれがある。また、鉱酸を急激に添加すると短時間でシリカが析出してしまい均一に反応しない(均一に複合されない)可能性があるため、5分以内での添加は避けるのが好ましい。
【0064】
本工程における反応温度に関しては、50〜100℃の範囲、特に50〜98℃が好ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する再生粒子及び二酸化チタン粒子の凝集体とシリカとの反応温度はシリカの生成、結晶成長速度及び形成されたシリカ被覆複合粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が50℃未満ではシリカの生成・成長速度が遅く、形成されたシリカ被覆複合粒子の被覆性に劣り、被覆の剥落が生じやすく、填料内添紙の抄造時にかかる剪断力で被覆が壊れやすい。また、100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。
【0065】
本発明では、鉱酸の少なくとも2段の添加と、その際の温度管理を行うのが望ましい。すなわち、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が50〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温することが望ましい。具体的に望ましい温度条件としては、第1段階の液温を50〜75℃未満、第2段階を70以上〜100℃と鉱酸の添加段数に併せて昇温させること、反応の最終段階で90℃以上で98℃以下の温度状態にすることであり、これらの温度条件によって、より均質なシリカ複合粒子を得ることができる。
【0066】
最終反応液のpHは8.0〜11.0が好ましく、8.3〜10.0がより好ましく、8.5〜9.0が最も好ましい。従来の珪酸アルカリと鉱酸とを反応させて得られるシリカ粒子(ホワイトカーボン)の製造においては、珪酸アルカリと鉱酸の反応を完了させるため、pH5.5〜7.0になるまで硅酸アルカリ中に鉱酸を添加する方法が採用されているが、pHが7.0以下と酸性領域になるまで鉱酸を添加すると、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに化学反応しやすくなり、得られるシリカ複合粒子の体積平均粒子径が過度に低下したり、形状が不均質になり、紙への歩留り低下や紙粉の発生、充分な不透明性が得られにくくなるため好ましくない。pHが11.0を超えると、硅酸アルカリと鉱酸の反応が鈍り、再生粒子と二酸化チタン粒子の凝集体の表面にシリカが複合しにくくなるため、複合粒子の充分な力学的安定性と不透明性が得られにくい問題を生じるおそれがある。
【0067】
鉱酸の添加を1段階で行う場合、鉱酸の添加時間を、40分以上添加時間がかかるように添加量を設定することが好ましい。本発明において前述のように鉱酸は2段階以上で添加するのが望ましい。この場合、各段階における鉱酸の添加量を均等に添加することが均質なシリカ複合を得るうえで好ましい。また、1段階の添加(硅酸アルカリ水溶液に対して鉱酸が20〜50%の中和率となるまでの添加)後に、5分〜20分程度の保留時間を作ることで、シリカ複合反応に保留状態を設け、再生粒子と二酸化チタン粒子の凝集体の表面に均質にシリカを複合させ、第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させることが可能になり、再生粒子と二酸化チタン粒子の凝集体の表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0068】
2段階以上で鉱酸を添加する場合は、1段階の鉱酸添加時間は、10分〜45分の時間がかかるように添加量を設定することが再生粒子表面にシリカを均等に複合させるにおいて好ましい。2段階以上で鉱酸を添加する場合は、2段階以降の鉱酸の添加時間を10分〜120分程度の時間がかかるように添加量を設定することが、均質なシリカ複合に好ましい。
【0069】
得られる複合粒子の体積平均粒子径は2μm以上15μm以下が好ましく、4μm以上10μm以下がさらに好ましい。複合粒子の体積平均粒子径が2μm未満では、シリカ複合の効果が十分に発現できず、吸油量及び不透明度の向上効果が見られないおそれがあり、複合粒子の体積平均粒子径が15μmを超えると、紙中に内添する填料として用いた場合、パルプ繊維間の結合強度を低下させ紙力が低下するおそれがある。
【0070】
再生粒子と二酸化チタン粒子との凝集体のシリカ被覆を行う場合、例えば凝集体スラリーと珪酸アルカリ水溶液に添加、分散しスラリーを調製するが、この凝集体と珪酸アルカリを混合したスラリー濃度は、8〜14質量%が好ましい。スラリー濃度を調整することにより、形成されるシリカ被覆複合粒子の粒径がコントロールされる。また、再生粒子と二酸化チタン粒子との凝集体に対する珪酸アルカリ(SiO換算)の固形分比を調整することで形成されるシリカ被覆複合粒子の粒径がコントロールされると同時に凝集体とシリカの組成比率を調整できる。
【0071】
<その他の添加剤>
上記パルプスラリー(当該印刷用紙)には、上記パルプ及び填料の他に、例えば、澱粉類、ポリアクリルアミド、エピクロルヒドリン等の紙力増強剤、ロジン、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等の凝結剤、ポリアクリルアミドやその共重合体等の凝集剤などを含有することができる。
【0072】
<表面処理剤>
当該印刷用紙は、両面に表面処理剤が塗工されていることが好ましい。上記表面処理剤としては、特に限定されず、澱粉類、セルロース類、水溶性合成接着剤等、公知のものを適宜用いることができるが、酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉(HES)を含有することが好ましい。
【0073】
当該印刷用紙において、原紙の両面に塗布する表面処理剤として、このように酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを含むものを用いていると、この表面処理剤の塗布の際、上記2種の澱粉が原紙内部にまで浸透せず、表面で強固な被膜を形成する。従って、当該印刷用紙は、表面強度が高く、紙粉の発生を抑制できるため、印刷作業性に優れる。また、当該印刷用紙によれば、印刷の際のネッパリトラブルの発生も抑制される。
【0074】
上記2種の澱粉を用いることで原紙内部までこの澱粉が浸透せず、表面で強固な被膜を形成する原因は定かではないが、酸化澱粉が有するカルボキシル基等と、ヒドロキシエチル化澱粉が有する水酸基とが結合(エステル化反応等)し架橋することで高分子化し内部まで浸透しにくくなることが考えられる。また、この2種の澱粉を混合することで、適度な粘度になること、上記エステル化によりこの澱粉とパルプ繊維を構成するセルロースとの親和性が低下し、浸透しにくくなることも原因と考えられる。なお、上記粘度の低下は、2種の澱粉の反応が原因とも考えられる。さらに、当該印刷用紙のネッパリトラブルの発生の抑制も上記エステル化等による澱粉の親水性低下が原因とも考えられる。
【0075】
特に、当該印刷用紙においては、再生粒子と二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子が内添されているため、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを含む表面処理剤を塗布することで表面でより強固な被膜が形成され、印刷適性等をさらに高めることができる。さらに好ましくは、再生粒子と二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子を更にシリカで表面の少なくとも一部を被覆した複合粒子を内添し、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを含む表面処理剤を塗布することで表面でより強固な被膜が形成され、不透明度がより一層高く、紙粉発生が少なく、インキ着肉性も良い印刷用紙とすることができる。なお、上記複合粒子を用いることで、表面強度が高まる理由は定かではないが、上記複合粒子が各種酸化物等から形成される混合物であることで、何らかの成分が、上記2種の澱粉のエステル化反応等の触媒的機能を果たし、表面処理剤を塗布した際に、この触媒作用により、表面の被膜形成性が向上することなどが考えられる。なお、この複合粒子は不定形かつ多孔質形状を有すため、この形状が上記触媒機能を高めていることも考えられる。
【0076】
加えて、当該印刷用紙によれば、このように表面処理剤が内部まで浸透せず、表面で被膜を形成していることで、紙内部に空隙を残存させることができる。当該印刷用紙によれば、この空隙のため紙内部での光の散乱度合いが高まり、その結果、白紙不透明度及び印刷不透明度を高めることができる。
【0077】
上記酸化澱粉としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって、分子中へのカルボキシル基等の導入が行われたものがあげられる。この酸化澱粉の質量平均分子量としては50万以上100万以下であるとよい。また、上記ヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量としては120万以上200万以下であるとよい。2種の澱粉の分子量を上記範囲とすることで表面処理剤の粘性を好適な範囲に制御でき、塗布性を高めるとともに、澱粉の紙内部への浸透をより低減させることができる。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
【0078】
酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量が上記下限未満の場合は、塗布の際に、原紙内部にまでこの澱粉が浸透しやすくなり、その結果、表面強度が十分に向上しない場合がある。逆に、これらの質量平均分子量が上記上限を超える場合は、粘性が高まり、塗布性が低下するおそれがある。
【0079】
上記酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比は、質量基準で1:9以上9:1以下が好ましく、5:5以上7:3以下がより好ましい。2種の澱粉の含有比を上記範囲とすることで、好適な粘度に調製することができ、また、上述のエステル化反応等が効率的に進行することができると考えられ、その結果、澱粉の原紙内部への浸透を抑え、表面に強固な被膜を形成することができる。
【0080】
上記表面処理剤には、上記2種の澱粉以外に適宜、他の澱粉、PVA(ポリビニールアルコール)、ポリアクリルアミド、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等を含有することができる。これらの中でも、サイズ性を向上させるため、表面サイズ剤が含有されるとよい。
【0081】
なお、表面サイズ剤として、上記2種の澱粉と表面サイズ剤を共に用いることで、表面サイズ剤が表面に留りやすくなり、表面サイズ剤の添加量を低減することができる。また、表面サイズ剤の過剰添加により発生するオフセット印刷機での紙面汚れを抑制することができる。
【0082】
上記表面サイズ剤としては、公知のものが用いられ、例えば、スチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ロジン等を使用することができるが、高いサイズ性、オフセット輪転印刷におけるインクとの相性、及び填料の脱落防止効果の点から、スチレン系サイズ剤が好ましい。酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比が質量基準で1:9以上9:1以下の澱粉に表面サイズ剤として、スチレン系サイズ剤を用いると、より澱粉を均一に塗工でき、表面強度を向上させ、填料の脱落を防止できるとともにスチレン系サイズ剤が紙表面に留り、サイズ効果が高くなり好ましい。
【0083】
酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉合計の澱粉に対するスチレン系サイズ剤の配合比は、固形分で澱粉100質量部に対し、スチレン系サイズ剤5〜30質量部が好ましい。スチレン系サイズが5質量部を下回ると、紙のサイズ性及び表面強度の向上が充分に得られにくく、30質量部を上回ると、コスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招く恐れがある。
【0084】
スチレン系サイズ剤としては、スチレンアクリル酸共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。)、スチレン(メタ)アクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレンマレイン酸共重合体、スチレンマレイン酸半エステル共重合体、スチレンマレイン酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0085】
上記表面処理剤のB型粘度としては、5cps以上80cps以下がよく、10cps以上40cps以下がさらに好ましい。当該印刷用紙によれば、塗布の際の表面処理剤の粘度を上記範囲とすることで、塗布性をさらに高めることができるとともに、澱粉の紙内部への浸透をより低減させることができる。表面処理剤の粘度が上記下限未満の場合は、塗布の際に澱粉等を含むこの表面処理剤が紙内部にまで浸透しやすく、その結果、表面強度の高い新聞用紙を得られにくくなる場合がある。逆に、この濃度が上記上限を超えると塗布時の作業性が低下したり、均一な塗布が困難になったりするおそれがある。
【0086】
表面処理剤の塗布量としては、紙の表面強度を充分に向上させるためには、原紙の表裏面に片面あたり乾燥質量で0.1〜2.0g/m、さらには0.3〜1.5g/mの量で塗布されていることが好ましい。0.1g/mを下回ると澱粉等による充分な被膜を得ることが困難となり、充分な紙の表面強度が得られない場合がある。一方2.0g/mを上回ると、塗布設備周辺に澱粉など表面処理剤のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じるおそれがある。
【0087】
<品質等>
当該印刷用紙の印刷不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から高いことが求められ、後述する印刷不透明度試験方法に準拠して測定した下限として90%であり、91%が好ましい。また、この印刷不透明度の上限としては、96%であり、95%が好ましい。印刷不透明度が上記下限未満であると裏抜けが生じやすくなる。逆に、印刷不透明度が上記上限を超えると、必要な填料が増大し、その結果パルプ繊維間の密着性が低下し、印刷用紙の強度が低下したり、紙表面からの填料の脱落によって印刷時の紙紛が増加するだけでなく、製造工程におけるマシン系内の汚れが増大し操業性を悪化させる。
【0088】
当該印刷用紙の灰分は、5%以上13%以下が好ましく、7%以上12%以下がさらに好ましい。当該印刷用紙は、灰分が上記範囲であるため高不透明度(白紙不透明度及び印刷不透明度)を有することに加え、多量に配合された填料が繊維の空隙を埋めていることで表面処理剤の浸透を抑えることができ、その結果、表面強度を高めている。従って、当該印刷用紙によれば、填料の含有量が多い(灰分が高い)にもかかわらず、逆に言えば、この填料の高含有量を利用し、表面強度を高め、その結果、優れた印刷作業性を発揮することができる。
【0089】
当該印刷用紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS−P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、38g/m以上、さらには40g/m以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、係る坪量は48g/m以下、さらには46g/m以下であることが好ましい。坪量が上記下限未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であり、上記上限を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。
【0090】
当該印刷用紙の白色度は、購読者の眼精疲労をきたさないように、JIS−P8148に記載の「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定して、52%以上57%以下が好ましく、53%以上56%以下がさらに好ましい。
【0091】
当該印刷用紙の白紙不透明度は、裏抜けが発生し難いという点から高いことが求められるが、JIS−P8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した白紙不透明度の下限として90%が好ましく、92%が特に好ましい。また、白紙不透明度の上限としては、96%が好ましく、95%が特に好ましい。白紙不透明度が上記下限未満であると裏抜けが生じやすくなる。逆に、白紙不透明度が上記上限を超えると、必要な填料が増大し、その結果、パルプ繊維間の密着性が低下し、印刷用紙の強度が低下する。
【0092】
<印刷用紙の製造方法>
当該印刷用紙は、公知の製造方法によって製造することができる。
【0093】
まず、上述のようにパルプスラリーを調整して抄紙して、原紙を得る。この抄紙は、公知の抄紙機等を用いて行うことができる。
【0094】
上記抄紙により得られた原紙の両面に、上記表面処理剤を塗布される。表面処理剤の塗布には、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ゲートロールコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いることができる。
【0095】
上記表面処理剤の塗布の際の原紙の温度としては、35℃以上85℃以下が好ましく、40℃以上75℃以下がさらに好ましい。このような比較的高温の原紙の両面に表面処理剤を塗布することで、表面処理剤が原紙と接触した際に、2種の澱粉の結合反応等が生じることなどによって、紙内部の澱粉の浸透が抑えられ、表面に薄く高強度の被膜を形成することができる。原紙の温度が上記下限未満の場合は、澱粉が内部まで染み込みやすくなり、表面強度を十分に高めることができない場合がある。逆に、この温度が上記上限を超えると、塗布性が低下し、均一な被膜を形成できないおそれがある。
【0096】
表面処理剤を塗布し、乾燥した後には、一般に印刷適性(例えば、高平滑や高光沢)を付与する目的で、カレンダに通紙して加圧仕上げが施される。この場合のカレンダ装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダなどの金属またはドラムと弾性ロールの組み合わせになる各種カレンダが、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用できる。
【0097】
<再生粒子の製造方法>
ここで、本発明の複合粒子に好適な再生粒子の製造方法について、原料並びに脱水、熱処理及び粉砕の各工程の順に詳説する。なお、熱処理工程と粉砕工程との間に、配合・スラリー化工程を有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の工程を設けることができる。
【0098】
(原料)
再生粒子の原料としては、主原料として製紙スラッジが用いられ、製紙スラッジの中でも、脱墨フロスが好適に用いられる。脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程でパルプ繊維から分離されるものをいう。製紙における古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも古紙中に未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が含まれていた場合も、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去される。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等の、他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0099】
(脱水工程)
脱水工程は、脱墨フロス等の原料の水分を所定割合まで除去する工程である。例えば、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、公知の脱水設備により脱水される。
【0100】
脱水工程の一例としては、以下の工程が挙げられる。まず一の脱水手段であるスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。このスクリーンにおいて水分率を70%〜90%に脱水した脱墨フロスは、別の脱水手段である例えばスクリュープレスに送り、更に所定の水分率まで脱水する。
【0101】
脱水後の原料(脱墨フロス)は、60%以下、好ましくは30%以上50%未満、より好ましくは30%以上45%以下、特に好ましくは30%超40%以下の含水状態とするとよい。
【0102】
脱水後の原料の水分率が60%を超えると、熱処理工程における処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進め難くなる。また、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる不都合を有する。他方、脱水後の原料の水分率が30%未満と低いと、脱水処理エネルギーの削減に反する。
【0103】
上述のように、原料(脱墨フロス)の脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0104】
脱水工程のための設備は、再生粒子の他の工程の設備に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から熱処理工程に供給することもできる。
【0105】
脱水後の原料は、熱処理工程に供給する前に、粉砕機(又は解砕機)等により、平均粒子径40mm以下、好ましくは平均粒子径3mm〜30mm、より好ましくは平均粒子径5mm〜20mmに粒子径を揃えると好適であり、また、粒子径50mm以下の割合が70質量%以上となるように粒子径を揃えると好適である。平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすい。逆に、平均粒子径が40mmを超えると原料芯部まで均一に燃焼を図るのが困難になる。
【0106】
上記脱水工程における平均粒子径及び粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値である。なお、後述する各熱処理工程における粒子径は、JIS−Z8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した値である。
【0107】
(熱処理工程)
熱処理工程は、脱水された原料の更なる水分除去のための乾燥と、比較的低温の第1の燃焼とを一連で行う第1熱処理工程、及び第1熱処理工程で得られた熱処理物を再度、第1熱処理工程より高温で熱処理(燃焼)する第2熱処理工程を含む。このように順に温度を上げていく2段階の熱処理工程を経ることで、原料の過燃焼を抑え、得られる再生粒子をスラリー化した際の増粘を抑制することができる。また、熱処理温度としては、比較的低温で行うことで、同様に原料の過燃焼を抑え、得られる再生粒子をスラリー化した際の増粘を抑制することができる。熱処理温度の上限としては、具体的には780℃が好ましく、750℃がさらに好ましい。
【0108】
(第1熱処理工程)
脱水工程を経た原料は、第1熱処理工程として、例えば本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用いて、熱処理される。
【0109】
この内熱キルン炉においては、熱風発生炉にて生成された熱風が、排出口側から原料の流れと向流するように送り込まれる。この内熱キルン炉の一方側には排ガスチャンバーが、他方側には排出チャンバーが設けられている。排出チャンバーを貫通して熱風が内熱キルン炉の他方側から吹き込まれ、上記一方側から装入され、内熱キルン炉の回転に伴って上記他方側へ順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0110】
このように第1熱処理工程においては、原料を、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼とを行うことができ、熱処理物の微粉化が抑制され、凝集体形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する原料の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、例えば吹上げ式の乾燥機によって乾燥させることもできる。
【0111】
第1熱処理工程における熱処理温度(例えば、内熱キルン炉の出口温度(熱風温度))は、300℃以上600℃未満、好ましくは400℃以上550℃未満、より好ましくは400℃以上500℃以下が好適である。第1熱処理工程においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、上記範囲の温度で熱処理するのが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、他方、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解によって酸化カルシウムが生成し易くなる。また、温度が600℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の粒揃えが進行するよりも早くに乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と粒子内部との未燃率の差を少なくし、均一にするのが困難になる。
【0112】
第1熱処理工程は、原料に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、上記条件下で、30分〜90分の滞留(熱処理)時間で熱処理させるのが好ましい。熱処理時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。他方、熱処理時間が90分を超えると、脱水物の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、また、得られる再生粒子が極めて硬くなる。有機物の燃焼及び生産効率の面では、40分〜80分の滞留時間で熱処理させるのが好ましい。恒常的な品質を確保するためには、50分〜70分の滞留時間で熱処理燃焼させるのが好ましい。
【0113】
(第2熱処理工程)
第1熱処理工程を経た原料は、第2熱処理工程として、例えば本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を用いて、熱処理される。このように、第1及び第2熱処理工程を経ることで、原料中の有機分が燃焼除去され、無機物が熱処理物として排出されることができる。
【0114】
第2熱処理工程においては、第1熱処理工程で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1熱処理工程において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された熱処理物を用いることが好ましい。第1熱処理工程後の熱処理物の粒揃えは、平均粒子径10mm以下となるように調整するのが好ましく、平均粒子径1〜8mmとなるように調整するのがより好ましく、平均粒子径1〜5mmとなるように調整するのが特に好ましい。第2熱処理工程における外熱キルン炉入口での平均粒子径が1mm未満では過燃焼の危惧があり、平均粒子径10mm超では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0115】
外熱キルン炉の外熱源としては、外熱キルン炉内の温度制御が容易で、かつ長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の熱源が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉が好ましい。外熱源に電気を使用することにより、炉内の温度を細かく、かつ均一にコントロールすることができ、凝集体の形成、硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する熱処理物の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。また、電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、熱処理物の温度を一定時間、一定温度に保持することができ、第1熱処理工程を経た熱処理物中の残留有機分、特に残カーボンを第2熱処理工程で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく限りなくゼロに近づけることができ、例えば重質炭酸カルシウムと比べて低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
【0116】
第2熱処理工程における熱処理温度は、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。第2熱処理工程では、先に述べたように、第1熱処理工程で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1熱処理工程よりも高温で熱処理するのが好ましく、熱処理温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることができないおそれがあり、熱処理温度が780℃を超えると、熱処理物中の炭酸カルシウムの脱炭酸が進行し、粒子が硬くなるおそれがある。
【0117】
第2熱処理工程としての外熱キルン炉における滞留(熱処理)時間としては、好ましくは60分以上、より好ましくは60分〜240分、特に好ましくは90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムが分解するおそれがある。また、熱処理物の安定生産を行うにおいては、滞留時間を60分以上、過燃焼防止、生産性確保のためには、滞留時間を240分以下とするのが好適である。
【0118】
第2熱処理工程としての外熱キルン炉から排出される熱処理物の平均粒子径は、10mm以下、好ましくは1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜4mmに調整すると好適である。この調整は、例えば、熱処理物を一定のクリアランスを持った回転する2本ロールの間を通過させること等により行うことができる。
【0119】
第2熱処理工程を経た熱処理物は、好適には凝集体であり、例えば冷却機により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機により選別され、燃焼品サイロに一時貯留される。この後、配合・スラリー化工程及び粉砕工程で目的の粒子径に調整された後、再生粒子として填料等の用途先に仕向けられる。
【0120】
なお、以上では、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とすることなどもできる。
【0121】
(配合・スラリー化工程)
配合・スラリー化工程は、上記第2熱処理工程から排出される熱処理物に酸及び/又は塩を配合し、その熱処理物を水中に懸濁させてスラリー化させる工程である。
【0122】
この熱処理物は、後工程である粉砕工程において、効果的な粉砕を図るために、ミキサー等を使用して水中に懸濁させ、スラリーとした後に粉砕するのが好ましい。この際のスラリー濃度(スラリー全体に対する添加された熱処理物の質量比)の下限としては、15%が好ましく、20%がさらに好ましい。また、このスラリー化濃度の上限としては、50%が好ましく、40%がさらに好ましい。スラリー化濃度が上記下限未満であると最終的に得られた粒子を固形状とする際に、多大なエネルギーが生じるなど生産効率が低下する。逆に、スラリー化濃度が上記上限を超えると、のちの粉砕工程において効果的な粉砕が困難となる、また凝固、固化が生じやすくなるなどのおそれがある。
【0123】
上記酸及び/又は塩は、カルシウムイオンの存在下でカルシウム塩を析出し得るものである。当該酸及び/又は塩によれば、過燃焼によって生じた酸化カルシウムやメタカオリンに起因しスラリー中に溶け出したカルシウムイオンと反応し、カルシウム塩を析出させることで、カルシウムイオンとスラリー中に共存する珪酸イオンやアルミン酸イオンとの反応を抑え、硬化物質の生成を抑制させることができる。この結果、この酸及び/又は塩を用いることで、スラリーの凝固、固化を抑えることができる。
【0124】
(粉砕工程)
粉砕工程は、上記工程にて得られたスラリーを粉砕し、微粒子化することで再生粒子を得る工程である。この粉砕工程においては、公知の粉砕装置等を用いることができる。この粉砕工程を経て、スラリーを適宜必要な粒子径に微細粒化することで、得られる再生粒子を塗工用の顔料、内添用の填料として好適に使用することができる。
【0125】
(その他の工程)
再生粒子の製造方法においては、原料の凝集工程、造粒工程や、各工程間における分級工程、スラリーを炭酸化する炭酸化工程等を設けてもよい。
【0126】
(炭酸化工程)
得られた再生粒子のスラリーは、そのままではpHが12以上とアルカリ性を呈し、例えば、填料として原料パルプに添加した場合、抄紙pHを高くするおそれがあり、調成工程での抄紙薬品の効果の低下をまねくおそれがある。従って、熱処理物又は再生粒子中の酸化カルシウムを炭酸カルシウムに戻してpHを低減させるために、第1熱処理燃焼工程や第2熱処理工程において排出された排ガス中の二酸化炭素を利用して、例えば7〜9にpH調整すると好適である。
【0127】
なお、この炭酸化工程は、配合・スラリー化工程と粉砕工程との間、粉砕工程と同時、又は粉砕工程の後に行ってもよい。なお、この二酸化炭素の吹き込みは、他の酸及び/又は塩の配合に替えて、又は加えて、炭酸の配合として、配合・スラリー化工程とすることもできる。
【0128】
炭酸化に際しては、反応槽の底部にガス吹き込み口を設けるとともに、槽内のpHを測定するpH計を設け、バッチ処理で、スラリーのpHが所定の値以下になるまで槽中のスラリーに対してガスを吹き込むことで実施することが出来る。また、VFポンプのような歯車が噛み合う部分にガス吹き込み口を設け、スラリーに対して粉砕とガスの吹き込みを同時に実施することが出来る。
【0129】
炭酸化のための二酸化炭素としては、CO分離工程として、例えばPSA型分離装置等の二酸化炭素分離装置を用いて排ガスから二酸化炭素を分離して用いることができる。また、排ガスを直接利用したり、市販の二酸化炭素ガスを利用、併用したりすることもできる。
【0130】
二酸化炭素の吹き込み速度は、一定とすることも、また可変とすることも可能であり、可変とする場合、pHの推移に応じて適宜調整すること等ができる。
【0131】
本形態において、再生粒子のいっそうの品質安定化を図るためには、被処理物の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
【0132】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロス(脱水物)を造粒することが好ましく、更には造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用できるが、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【実施例】
【0133】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
【0135】
[平均粒子径(単位:μm)]
レーザー回折粒度分布測定装置〔マイクロトラック/日機装社〕(型番:MT−3300)を使用し、(体積)平均粒子径(D50:μm)を測定した。測定試料の調製は、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に粒子を添加し、超音波で1分間分散した。
【0136】
[シリカ含有率(質量%)]
堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、含有する構成成分から再生粒子、二酸化チタン、シリカ等の含有割合を推定し、シリカ被覆後のシリカ成分の含有率からシリカ含有率(質量%)を算出した。
【0137】
[白色度(粒子)(%)]
Tappi−534pm−76法に基づいて粒子の白色度を測定した。
【0138】
[吸油量(mL/100g)]
JIS−K5101−13−1(2004)に準じて測定した。すなわち105℃〜110℃で2時間乾燥した試料2g〜5gをガラス板に取り、精製アマニ油(酸価4以下のもの)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下しその都度ヘラで練り合わせ、滴下練り合わせの操作を繰り返し、全体が初めて1本の棒状にまとまったときを終点として、精製アマニ油の滴下量を求め、下記式(2)によって吸油量を算出した。
吸油量(mL/100g)
=[アマニ油量(mL)×100]/紙料(g) ・・・(2)
【0139】
[坪量(g/m)]
JIS−P818124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0140】
[灰分(単位:%)]
JIS−P8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0141】
[白紙不透明度(単位:%)]
JIS−P8149(2000)「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
【0142】
[印刷不透明度(単位:%)]
JAPAN TAPPI No.45(2000)「新聞用紙−印刷後不透明度試験方法」に準拠し、測定機器ISO白色度計(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0143】
[白色度(紙)(単位:%)]
JIS−P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
【0144】
[引張強度(縦)(単位:kN/m)]
JIS−P8113(2006)に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して測定した。
【0145】
[インキ着肉性]
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、小森コーポレーション社製)を使用し、新聞インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業社製)にて連続10000部の印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
4:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
3:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがややある。
2:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
1:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
【0146】
[ブランケット紙粉パイリング]
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−4、三菱重工業社製)を使用して50連巻きの印刷用紙にて両出し10万部の印刷を行い、印刷紙面のカスレとブランケット非画像部における紙粉の発生及び堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:紙面カスレと紙粉の発生が全く認められない。
4:紙面カスレがわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
3:紙面カスレがやや認められブランケット上での堆積が少し認められる。
2:紙面カスレの発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
1:紙面カスレとブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
【0147】
〔再生粒子の製造〕
原料として脱墨フロスを用い、水分率が45質量%、平均粒径が10mm、また、50mm以下の粒子の割合が90質量%となるように脱水工程を行った。この脱水物にシャワー水による洗浄を経て、第1熱処理工程、その後、第2熱処理工程を以下の条件で行い熱処理物を得た。
第1熱処理工程条件
燃焼形式:内熱キルン
燃焼温度:500℃
酸素濃度:10%
滞留時間:50分
第2熱処理工程条件
燃焼形式:外熱キルンと内熱キルンの併用
入口の平均粒子径:5mm
燃焼温度:700℃
酸素濃度:14%
滞留時間:140分
出口の平均粒子径:5mm
【0148】
得られた熱処理物100質量部に対して、配合・スラリー化工程として、硫酸カルシウム二水和物0.3質量部を添加し、この添加物を水中に懸濁させて、濃度(スラリーの全質量に対する熱処理物の質量比)35質量%のスラリーを得て、粉砕装置にて粉砕した。この粉砕物を分級し、体積平均粒子径1.0μm、2.0μm、3.4μm、5.0μm及び10.0μmの再生粒子をそれぞれ得た。
【0149】
<製造例1>
上記方法で得られた平均粒子径3.4μmの再生粒子60質量部と、平均粒子径0.5μmの二酸化チタン粒子40質量部とを水に分散させ、17.4質量%(固形分濃度)の粒子スラリーを得た。この粒子スラリーに、カチオン性凝集剤(ハイモ社製「ハイモロックFR−740」)を粒子固形分に対し固形分で1,750ppm添加し、凝集体スラリーを得た。
【0150】
上記凝集体スラリー(濃度17.4質量%)10,000kgを撹拌機付タンクに入れ、撹拌しながら珪酸ナトリウム水溶液(3号珪酸ナトリウム:SiO濃度29wt/wt%、NaO濃度9wt/wt%)1,320kgと希釈水を添加して、表1に記載の凝集粒子と珪酸分(SiO換算)の固形分比および珪酸アルカリと凝集粒子からなるスラリーの濃度(11質量%)に調製した。鉱酸として希硫酸(4規定)を添加撹拌し複合粒子スラリーを得た。スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用し、スラリーのpHは、堀場製作所のpH計にて、反応温度は公知の温度計にて測定した。1次反応工程では、珪酸アルカリ水溶液と硫酸の中和率が33%になるように希硫酸を表1に示す時間で添加した。次に加熱撹拌してスラリーの液温を93℃に調製した。その後、2次反応工程では、希硫酸を表1の反応終了pHになるまで表1に示す鉱酸添加時間で添加してシリカで被覆された複合粒子1を含む複合粒子スラリーを得た。
【0151】
得られた複合粒子1のシリカ含有率は18質量%、平均粒子径は6.4μm、白色度は94.0%、吸油量は62mL/100gであった。
【0152】
<製造例2〜14及び比較製造例1〜3>
表1に記載の再生粒子、二酸化チタン粒子、これらの配合比(質量比)、凝集剤及びシリカ被覆における反応条件とした以外は、製造例1と同様にして、製造例2〜14及び比較製造例1〜3を行い、複合粒子1〜14及びi〜iiiを得た。
【0153】
なお、製造例5、7及び14では、凝集後のシリカ被覆を行わなかった。比較製造例1では再生粒子のみを凝集させた後、シリカ被覆した。比較製造例2では、再生粒子の代わりに平均粒子径3.0μmの軽質炭酸カルシウム粒子を用いた。比較製造例3では、再生粒子と二酸化チタン粒子とを混合したのみで、凝集及びシリカ被覆はどちらも行わなかった。
【0154】
また、用いた表1中の凝集剤は以下のとおりである。
・カチオン性凝集剤:ハイモ社製「ハイモロックFR−740」
アクリルアミドとアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体及びポリアルキレンポリアミン混合物
質量平均分子量:850万
カチオン電荷密度:8.0meq/g
・アニオン性凝集剤:ハイモ社製「ハイモロックFA230」
アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体
質量平均分子量:1,400万
カチオン電荷密度:−4meq/g
得られた各複合粒子の平均粒子径、白色度及び吸油量を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
(実施例1)
離解・脱墨古紙パルプ(DIP)を80質量%、サーモメカニカルパルプ(TMP)を20質量%配合し、レファイナーでフリーネスを120mLC.S.F(JIS−P8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、填料として得られた複合粒子1を灰分が表1に示す値(12.0%)となるように添加し、絶乾パルプ100質量部あたり0.07質量部の凝集剤(ハイモ社製ハイモロックND270)及び0.05質量部の凝結剤(ハイモ社製ハイマックスSC924)を添加してツインワイヤー抄紙機で坪量42.3g/mの原紙を抄造した。
【0157】
更に、表面処理剤として酸化澱粉(日本食品加工社製 質量平均分子量70万)90質量部、ヒドロキシエチル化澱粉(HES:ペンフォード社製 質量平均分子量155万)10質量部を混合した澱粉液にスチレン系サイズ剤(星光PMC株式会社製「SS2712」)を固形分で澱粉100質量部に対しスチレン系サイズ剤を15質量部配合した(固形分濃度6%、B型粘度22cps)。この表面処理剤を表面温度50℃の上記原紙の両面に乾燥質量で1.2g/m(片面あたりそれぞれ0.6g/m)塗工して実施例1の印刷用紙を得た。
【0158】
(実施例2〜17、及び比較例1〜3)
填料の種類、表面処理剤、灰分量を表1に示すとおりに代えたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜17及び比較例1〜3の印刷用紙を得た。
【0159】
(評価)
得られた各印刷用紙について、上記方法にて坪量、灰分、白紙不透明度、印刷不透明度、白色度、引張強度、インキ着肉性及びブランケット紙粉パイリングについて評価した。評価結果について、表2に示す。
【0160】
【表2】

【0161】
上記表2に示されるように、本発明の印刷用紙は、不透明度(白紙不透明度及び印刷不透明度)が高く、また、インキ着肉性及びブランケット紙粉パイリングの評価も高く印刷適性が高いことがわかる。さらに、本発明の印刷用紙は、白色度及び引張強度も高い。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の印刷用紙は、優れた不透明度及び印刷適性を有し、新聞用紙等に好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
填料が内添された印刷用紙であって、
上記填料として、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られた再生粒子と二酸化チタン粒子とが凝集剤にて凝集されてなる複合粒子を用い、
印刷不透明度が90%以上96%以下であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項2】
上記複合粒子の表面の少なくとも一部がシリカで被覆されている請求項1に記載の印刷用紙。
【請求項3】
上記複合粒子におけるシリカの含有率が5質量%以上30質量%以下である請求項2に記載の印刷用紙。
【請求項4】
上記複合粒子の平均粒子径が2μm以上15μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の印刷用紙。
【請求項5】
上記再生粒子の平均粒子径が1μm以上10μm以下であり、
上記二酸化チタン粒子の平均粒子径が0.2μm以上1μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷用紙。

【公開番号】特開2012−255230(P2012−255230A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128715(P2011−128715)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】