説明

印刷用紙

【課題】古紙パルプを高配合した非塗工紙で、印刷像の視認性が高く、人目を引く色相を有し、紙ムケや毛羽立ちの発生のない、チラシ用途に適した印刷用紙を提供することである。
【解決手段】次の(1)〜(5)の条件を満たす印刷用紙。(1)JISP8150に準拠して測定したLab表色系による色相が、L=70〜80、a=−12〜−2、b=25〜40であることを特徴とする。(2)不透明度90%以上、(3)坪量40〜55g/m、(4)平滑度20〜80秒、(5)表面処理剤が少なくとも片面に塗工されており、塗工されている面は固形分で0.1〜1.0g/m塗工されている。さらに、カチオン性ポリアクリレート・ポリアルキレンポリアミン複合体を主成分とする凝結剤が添加されていることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷像の視認性(物や文字等の印刷像が明確に認識されること)が高く、人目を引く色相を有し、紙ムケや毛羽立ちの発生のない古紙高配合の印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新聞、書籍、雑誌、ポスター、カレンダー、パンフレット、包装紙等ほとんどの場合紙は印刷を施されて使用されており、印刷用紙の種類および特性は、各種印刷方式や用途によって様々である。一例を挙げると、オフセット印刷方式は、版面に親油性の画線部(印刷しようとする部分)と親水性の非画線部とを作り、湿し水と呼ばれる水を薄く塗り、次にインキを塗ると水をはじいた画線部にだけインキが付着するので、これをブランケットに転写し、さらにこのブランケットから紙にインキを転移させる方式である。湿し水を使用するため、水に濡れたときブランケットに付着して紙粉として取られないように、用紙には表面強度が重視される。また、グラビア印刷方式は、版上の凹部にインキを盛り紙に転写する方式であるため、版と紙とが均一に接し網点の抜け(スペックル)が起こらないように、表面に微小な凹凸がなく平滑性が高いことが要求される。
【0003】
スーパーやホームセンター等のチラシに使用される印刷用紙は、坪量49.0〜54.2g/mの微塗工紙が中心になっている。微塗工紙は顔料と接着剤を含む塗工液を紙の両面に塗工して、インキ着肉性を向上させたもので、一般の塗工紙に比べ少ない塗工量でチラシ用途に必要な印刷適性を付与したものである。このようなチラシに使用される印刷用紙は通常オフセット印刷方式により印刷されている。
昨今、低コスト化の動きが顕著になっており、用紙をグレードダウンする動きがある。具体的には、低坪量化、上質紙から中質紙や下級紙への変更、塗工紙から非塗工紙への変更が進んでいる。チラシ用途においても、微塗工紙から非塗工紙へ変更する動きがある。ここで非塗工紙とは、顔料を塗工していない印刷用紙を指し、日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」の「紙・板紙の品種分類表」にある上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙等に分類されるものを指す。
非塗工紙は微塗工紙に比べて、インキ発色性が劣るため、チラシに必要とされる消費者の目を引く美麗な印刷仕上がりは望めない。
非塗工紙の中で、上級印刷紙は白色度が比較的高く、インキ発色性が良いので、多色印刷にも使用されているが、中級印刷紙や下級印刷紙で白色度が低いものは、多色印刷を行ってもインキ発色性が悪いので、1色印刷されることが多い。
【0004】
このような、中級印刷用紙や下級印刷用紙に1色印刷されたチラシは、多色印刷されて美麗に印刷されたチラシとは異なり、逆に、特売品の印象を与え、広告による集客効果が高いので、広告主は、チラシの目的や商品に合わせて、多色印刷には微塗工紙を使用し、1色印刷には非塗工紙を使用するというように、両者を使い分けていることがある。
【0005】
非塗工紙の白色度、不透明度、印刷適性向上を課題とした技術として、以下のような出願がある。
軽質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を使用するというもの。(特許文献1)紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムまたは、針状凝集型軽質炭酸カルシウムを填料として配合し、6ニップ以上のソフトニップカレンダーで処理するというもの。(特許文献2)2ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理する前および/または処理している間に金属ロール処理面の表面に水分を付与するというもの。(特許文献3)その他、印刷適性、及び製本適性に優れた低米坪印刷用紙として、摩擦係数、縮率、填料の吸油量、紙1gあたりに含まれる内添填料が持つ吸収量等を特定したものがある。(特許文献4)
しかし、いずれの出願も、印刷像の視認性、すなわち物や文字等の印刷像が明確に認識されることについて検討されていない。また、人目を引く紙の色相についても十分な検討はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−248451号公報
【特許文献2】特開2008−274517号公報
【特許文献3】特開2008−274518号公報
【特許文献4】特許第4052083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、古紙パルプを高配合した非塗工紙で、印刷像の視認性(物や文字等の印刷像が明確に認識されること)が高く、人目を引く色相を有し、紙ムケや毛羽立ちの発生のない、チラシ用途に適した印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、1色印刷での印刷像の視認性、ベタ印刷部の均一性、人目の引きやすさ、紙ムケや毛羽立ちの発生について検討した結果、印刷用紙の色相範囲を設定し、不透明度、坪量、平滑度、表面処理剤の塗工量を特定することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
請求項1に係る発明は、
古紙パルプを主原料として含む印刷用紙であって、以下の(1)から(5)の条件を満たす印刷用紙である。
(1)JISP8150に準拠して測定したLab表色系による色相が、L=70〜80、a=−12〜−2、b=25〜40
(2)不透明度90%以上
(3)坪量40〜55g/m
(4)平滑度20〜80秒
(5)表面処理剤が少なくとも片面に塗工されており、塗工されている面は固形分で0.1〜1.0g/m塗工されている。
請求項2に係る発明は、
凝結剤が内添されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷用紙。である。
請求項3に係る発明は、
凝結剤がカチオン性ポリアクリレート・ポリアルキレンポリアミン複合体を主成分とする凝結剤であることを特徴とする請求項2に記載の印刷用紙。である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1色印刷でチラシ用途に使用した場合、印刷像の視認性が高く、人目を引く色相を有し、紙ムケや毛羽立ちの発生のない古紙高配合の印刷用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の印刷用紙の製造には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートの各工程からなる抄紙機を用いる。抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等を適宜使用できるが、オントップ型やギャップフォーマー型のツインワイヤー抄紙機が望ましく、特に両面から脱水するギャップフォーマー型抄紙機が望ましい。長網型抄紙機の場合には、パルプ繊維や填料の表裏差が出るために、印刷適性の表裏差が発生しやすい。
【0012】
本発明の印刷用紙は、原料パルプとして、クラフトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ等が使用できる。クラフトパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等が使用できる。また、古紙パルプとしては、新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプ等の古紙脱墨パルプ(DIP)が使用できる。機械パルプとしては、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等を使用することができる。
【0013】
本発明の印刷用紙は、古紙パルプを主体に使用する。古紙パルプの配合率は資源の有効利用という観点で高いほうがよく、30〜100質量%とするのが好ましい。
古紙パルプ以外では、高い不透明度や剛度を得るために、機械パルプを配合してもよく、その場合の配合率は10〜70質量%程度とする。配合する機械パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は80〜150mlに調整されていることが好ましい。機械パルプのろ水度が80mlより低いと高い剛度が得られず、150mlより高いと結束繊維が多くなり、インキ着肉性が劣ることになる。
【0014】
本発明の印刷用紙には、インキ発色性、インキ着肉性、不透明度向上を目的に填料を添加することができる。填料の種類は特に限定されず、一般に印刷用紙に使用されている填料を使用することができる。具体的には、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレー、シリカ等の無機填料やプラスチックピグメント等を使用することができる。
【0015】
本発明の印刷用紙の不透明度は90%以上とされている。このようにすることで両面印刷でも裏抜けによる問題が起こらない。前述したように、不透明度はパルプ配合や填料の添加により調整することができる。
【0016】
本発明では、原料パルプに硫酸バンド、サイズ剤、嵩向上剤、紙力増強剤等を添加できる。サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸等のサイズ剤が使用できる。紙力増強剤としては、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できる。その他、必要に応じ、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用することができる。
【0017】
本発明の印刷用紙は、古紙パルプを使用しているため、古紙に混入している接着剤やホットメルト等の粘着異物の混入がある。
非塗工紙では、顔料層がないため粘着異物が紙面に出ているので、印刷用紙を巻取る際に紙同士が接触し、粘着異物の部分で紙同士が接着すると、巻き戻した際に紙面に紙ムケや毛羽立ちを生じることがある。特に巻取り時の紙の温度が高い場合や印刷されるまでの保管期間が長い場合は、このような問題を生じやすく、印刷不良の原因となる。さらに、粘着異物は、抄紙機のフェルトやキャンバス等の用具や、ロールやドクターに付着して成長し、これが脱落すると、穴や異物の欠点となって、ワインダーで除去する必要が生じる。ひどい場合は抄紙機を停止して洗浄する必要があり、生産性が悪くなる。
本発明の印刷用紙はこのような問題を防止するために、次のような対策をとっている。
【0018】
(凝結剤の使用)
凝結剤をパルプ懸濁液に内添すると、粘着異物の粘着性を低下させることに加え、粘着異物同士が接着して大きくならないうちにパルプに付着させ、目視でわからない程度の大きさのまま紙に抄き込むことが可能となり、前述した紙面の紙ムケや毛羽立ちを抑えることができる。さらに、抄紙機のフェルトやキャンバス等の用具や、ロールやドクターに付着することを防止することができるので、生産性の悪化を防ぐことができる。
一般に凝結剤には、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、エチレンイミン、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジアミンジアミド・ホルマリン縮合物等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤がある。
本発明の印刷用紙は古紙パルプを主原料に配合しているため、古紙パルプに含まれる粘着異物の原因となるアニオントラッシュには酢酸ビニル系のものが多い。酢酸ビニル系のアニオントラッシュはアニオントラッシュの中でも分子量が比較的大きい。
したがって、古紙パルプに含まれる粘着異物の対策としては、一般的な凝結剤(分子量 数10万程度)よりも分子量が大きい、分子量100万〜1000万の凝結剤を使用することが望ましい。
本発明の印刷用紙には、粘着異物の封鎖力が高く、成長過程の粘着異物の粘着性低下と系外排出に効果が高い、カチオン性ポリアクリレート・ポリアルキレンポリアミン複合体を主成分とする凝結剤を使用するのが好ましい。
凝結剤の添加量は、対パルプ100〜500ppmで、これより少ないと効果が得られず、これより多いと効果が頭打ちになる。
【0019】
凝結剤の添加量は、カチオン要求量やゼータ電位により管理することができる。カチオン要求量はアニオン性粒子のマイナス電荷を荷電中和するのに必要なカチオンの量、すなわち電荷の総量を意味し、その値が粘着異物の原因となるアニオントラッシュ量の指標となるためである。またゼータ電位は紙料中に含まれる粒子が持つ荷電の強さの平均値を示しており、凝結剤の効果を高くするにはゼータ電位の絶対値を低く保つことが重要である。
カチオン要求量以外にも、白水の濁度あるいはワンパスリテンションも指標とすることができる。これは白水が清浄であり、粘着異物等が紙の繊維に定着していることを示すからである。濁度のなかでも、NTU濁度(Nephelometric Turbidity
Units、分散粒子としてホルマジンポリマーを標準としたときの、透過散乱光測定方式による濁度の単位)は透過光と散乱光を比較測定しているため、光源の劣化や白水の着色の影響を受けにくいので、よい指標となる。
【0020】
(表面処理剤の使用)
さらに、表面処理剤が原紙の少なくとも片面に塗工されており、塗工されている面は固形分で0.1〜1.0g/m塗工されていることにより、紙面に現れた粘着異物の粘着性を抑えるとともに、紙面のパルプ繊維の毛羽立ちを抑えることができる。表面処理剤の塗工量が0.1g/mより少ないと効果がなく、1.0g/mより多くても効果が頭打ちとなる。
表面処理剤を塗工する塗工装置としては、2ロールサイズプレスコーターやゲートロールコーター等のロールコーターを用いることができる。塗工する表面処理剤としては、カチオン化澱粉、酸化澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、スチレンマレイン酸系共重合体、スチレンアクリル酸系共重合体等が使用できるが、フィルム形成能の高いものが望ましい。
【0021】
本発明の印刷用紙の吸油度(旧JISP3001)は50秒〜200秒が好ましい。吸油度が50秒未満であるとインキ吸収速度が速いのでインキが紙層内部に浸透し、裏抜けが目立つようになる。
吸油度は、使用する填料の吸油量や添加率、表面処理剤の塗工量、カレンダー処理条件等により調整することができる。
【0022】
本発明の印刷用紙の製造に際しては、ドライヤーで乾燥後に、カレンダー装置により平滑化する。かかるカレンダー装置としては、チルドカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。要求される平滑度に応じて、ニップ数やニップ圧、ロール温度、ロール材質、ロール硬度等を設定するが、インキ着肉性と剛度を両立するには、平滑度(JISP8119)は20〜80秒であることが望ましい。
【0023】
本発明の印刷用紙は、坪量(JISP8124)が40〜55g/mとされている。坪量が40g/mより小さいと剛度が不足する。坪量は大きいほど剛度には有利であるが、省資源という点から55g/m以下が好ましい。そして、この坪量範囲で厚さが70〜90μmであればチラシに適した剛度が得られる。
【0024】
本発明の印刷用紙は、JISP8150に準拠して測定したLab表色系による色相が、L=70〜80、a=−12〜−2、b=25〜40であることを特徴とする。Lが70に満たないと、印刷像とのコントラストに欠け、印刷像の視認性が低い。Lが80を超えると、bを25以上にするのが難しくなり、人目の引きやすさが劣る。aが低いと緑色が強く、印刷像の視認性が劣り、aが高いと赤みが強く、印刷像の視認性が劣る。bが低いと人目の引きやすさが劣り、bが40を超えると印刷像の視認性が低い。このような色相にすると、印刷用紙の白色度は10〜40%となる。
【0025】
印刷用紙の色相と、印刷物の目立ちやすさについては明らかにされていない。
印刷物の場合、用紙の色とインクの色によって、印刷像の見栄えが異なってくる。
印刷像の視認性が高いためには、用紙の色とインクの色に明度差があることが必要である。さらに、用紙の彩度が高いと、鮮やかであるため人目を引きやすくなる。本発明の印刷用紙は、明度が高いので印刷像の視認性が高く、彩度が高いため他の印刷物と混ざっても人目を引く効果が高い。
【0026】
チラシに使用される印刷用紙としては、塗工紙が代表的であるが、塗工紙はカラー印刷されることが多いので、カラー印刷の見栄え、色再現性が重視されるので、塗工紙の色相は、白色度の高いものが求められており、各種の印刷用紙の中で、用紙自体がそれほど人目を引くものではない。
非塗工印刷用紙のなかで、上質紙は白色度が高いので、塗工紙と同様、各種の印刷用紙の中で、用紙自体がそれほど人目を引くものではない。
中下級印刷紙は通常1色印刷で用いられ、塗工紙と比べると白色度が低く、くすんだ色相であるため、各種の印刷用紙の中でそれほど人目を引くものではない。
【0027】
しかしながら、本発明の印刷用紙は特定の色相に調整しているので、印刷インクの黒色との組み合わせは、非常に目立つコントラストとなり、印刷像の視認性が高くなる。
また、印刷用紙の彩度が高いので、人目を引くものとなる。しかも、紙面の紙ムケや毛羽立ちが発生しないのでチラシ用途に適している。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例により、本発明の効果を具体的に表す。なお、%は特に断りのない限り質量%を表し、添加量は絶乾パルプに対する固形分または有効成分で表す。
【0029】
(実施例1)
新聞古紙脱墨パルプ90質量部(230mlCSF)、サーモメカニカルパルプ10質量部(110mlCSF)からなるパルプ分散液に対パルプ、カチオン化澱粉を0.3質量%、硫酸バンド3%(有姿)、凝結剤(ハイモ株式会社製、商品名:ハイモロックFR740)を200ppm添加して抄紙した。染料はイエロー染料(株式会社日本化学工業所製、商品名:ベーシックイエローMGL)とグリーン染料(BASFジャパン株式会社製、商品名:バサゾールグリーン14L)を用いて、印刷用紙の色相がL=75.0、a=−5.0、b=30.3となるように添加量を調整した。
表面処理剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、商品名:王子エースA)を塗工量が片面当たり0.80g/mとなるように表裏同一塗工量でゲートロールコーターを用いて塗工、乾燥し、坪量49.0g/m、水分7.5%の印刷用紙を得た。
【0030】
(実施例2)
印刷用紙の色相がL=74.3、a=−8.1、b=36.2となるように染料の添加量を調整したこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0031】
(実施例3)
印刷用紙の色相がL=79.3、a=−7.3、b=31.5となるように染料の添加量を調整したこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0032】
(実施例4)
カレンダー処理条件を変更して平滑度をアップさせたこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0033】
(実施例5)
表面処理剤の塗工量を片面当たり0.1g/mとしたこと以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0034】
(比較例1)
新聞古紙脱墨パルプ65質量部(170mlCSF)、サーモメカニカルパルプ35質量部(110mlCSF)からなるパルプを用いたことと、染料はバイオレット染料(保土谷化学工業株式会社製、商品名:メチルバイオレットPSL)とレッド染料(BASFジャパン株式会社製、商品名:バサゾールレッド71L)を用いて、印刷用紙の色相がL=79.7、a=1.1、b=2.9となるように染料の添加量を調整したこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0035】
(比較例2)
印刷用紙の色相がL=80.5、a=−6.0、b=19.0となるように染料の添加量を調整したこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0036】
(比較例3)
新聞古紙脱墨パルプ65質量部(230mlCSF)、サーモメカニカルパルプ35質量部(110mlCSF)からなるパルプを用いたことと、凝結剤を添加しなかったことと、染料はイエロー染料(株式会社日本化学工業所製、商品名:ベーシックイエローMGL)とグリーン染料(クラリアントジャパン株式会社製、商品名:カルタジングリーンBH)を用いて、印刷用紙の色相がL=72.0、a=−4.1、b=9.7となるように染料の添加量を調整したことと、表面処理剤の塗工量を片面当たり0.1g/mとしたこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0037】
(比較例4)
新聞古紙脱墨パルプ65質量部(230mlCSF)、サーモメカニカルパルプ35質量部(110mlCSF)からなるパルプを用いたことと、凝結剤を添加しなかったことと、染料はイエロー染料(株式会社日本化学工業所製、商品名:ベーシックイエローMGL)とレッド染料(クラリアントジャパン株式会社製、商品名:カルタジンレッドB)を用いて、印刷用紙の色相がL=74.4、a=7.2、b=12.0となるように染料の添加量を調整したことと、表面処理剤を塗工しなかったこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0038】
(比較例5)
坪量を39.8g/mとしたこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を得た。
【0039】
(比較例6)
坪量を39.8g/mとしたこと以外は実施例4と同様に印刷用紙を得た。
【0040】
実施例1〜5と比較例1〜6の計11種類の印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。試験方法と評価方法は次のとおりである。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙−坪量測定方法
(厚さ)JISP8118:1998紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照射法
(平滑度)JISP8119:1998紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法
(クラークこわさ)JISP8143:2009紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(色相)JISP8150:2004「紙及び板紙−色(C/2°)の測定方法−拡散照法」に準じて測定した。Lab表色系による色差を測定した。
(印刷評価)オフセット輪転印刷機を用い、印刷速度700rpm、紙面温度120℃で両面に1色印刷(オフ輪用プロセスインキ 墨)を行い、5千部印刷時の印刷用紙を評価した。
印刷像の視認性は、○高い、△やや劣る、×低い の3段階で評価した。
紙ムケ毛羽立ちは、ベタ印刷部の紙面を観察し、○平坦である、△やや毛羽立ちがみられる、×紙ムケがみられる の3段階で評価した。
(人目の引きやすさ)印刷用紙をA4の大きさにカットし、重ねて順番を並び替えたものを準備し、被験者に目視で最も目立つと思う用紙を選んでもらい、ランク付けを行った。10名の被験者で実験し、上位3つを○評価、中位2つを△評価、下位2つを×評価とした。
(剛度評価)クラークこわさ縦の値により、次の3段階で評価した。
○35.0以上、△25以上35.0未満、×25.0未満
(生産性評価)抄紙機に設置された検紙機により、欠点(巾6mm以上8mm以下、または流れ40mm以上の黒点を検出)をオンラインで検出し、1時間当りの欠点発生個数により評価した。2個以下を○評価、3個以上を×評価とした。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1、表2に示したように、本発明の実施例1〜5では、いずれも、印刷像の視認性、人目の引きやすさ、紙ムケ毛羽立ち、剛度、生産性の各評価が良好となっている。
【0044】
比較例1は、一般的な上更紙であるが、色相に鮮やかさが無いため、人目の引きやすさが劣っている。
比較例2は、実施例よりやや淡い色に着色した印刷用紙であるが、人目の引きやすさがやや劣っている。
比較例3は、グリ−ン系の色(日和色)に着色した印刷用紙であるが、印刷像の視認性が劣っており、人目の引きやすさもやや劣っている。また、凝結剤を使用していないため欠点により生産性が悪く、表面処理剤は塗工しているが、紙ムケ毛羽立ち評価がやや悪くなっている。
比較例4は、赤茶系の色(樺色)に着色した印刷用紙であるが、印刷像の視認性がやや劣っており、人目の引きやすさが劣っている。また、凝結剤を使用していないため欠点により生産性が悪く、表面処理剤の塗工も行っていないため、紙ムケ毛羽立ち評価が悪くなっている。
比較例5は、坪量が低く不透明度が低いので、裏抜けにより印刷像の視認性がやや悪くなっている。また、坪量と厚さが不足して剛度評価がやや悪くなっている。
比較例6は、坪量が低く不透明度が低いので、裏抜けにより印刷像の視認性がやや悪くなっている。また、平滑度が高いので厚さが不足して剛度評価が悪くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のオフセット印刷用紙は、チラシ用途に好適に使用されるほか、印刷像の視認性や、他の印刷物と混ざっても人目の引きやすさが必要とされる、フリーペーパーやフリーマガジンの用紙として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを主原料として含む印刷用紙であって、以下の(1)から(5)の条件を満たす印刷用紙。
(1)JISP8150に準拠して測定したLab表色系による色相が、L=70〜80、a=−12〜−2、b=25〜40
(2)不透明度90%以上
(3)坪量40〜55g/m
(4)平滑度20〜80秒
(5)表面処理剤が少なくとも片面に塗工されており、塗工されている面は固形分で0.1〜1.0g/m塗工されている。
【請求項2】
凝結剤が内添されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷用紙。
【請求項3】
凝結剤がカチオン性ポリアクリレート・ポリアルキレンポリアミン複合体を主成分とする凝結剤であることを特徴とする請求項2に記載の印刷用紙。

【公開番号】特開2012−57259(P2012−57259A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198419(P2010−198419)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】