説明

印刷用通気性化粧シート原紙

【課題】調湿基材の性質を損なわない通気性と木目印刷等の意匠性の高い印刷適性を両立する化粧シート原紙を提供する。
【解決手段】芯部がポリエチレンテレフタレート、鞘部がポリエチレンテレフタレートコポリマーである合成繊維を2〜10重量%と木材パルプ90〜98重量%を含有し、以下の(1)〜(3)を満たす通気性化粧シート原紙。(1)平滑度150〜300s、(2)層間剥離60〜85N/m、(3)透気度10〜16s。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷に適した通気性を有する化粧シート原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の内装材として意匠性を高めるために化粧シートが使用されている。シート原紙表面に印刷等により装飾処理層を形成させ、石膏ボードや合板等の各種基材に貼着させ内装材等として利用されている。また、近年の住宅の高気密化から、室内の結露の発生が問題となり、さらにシックハウス症候群の一因となるホルムアルデヒドが、室内に滞留することとなっている。
【0003】
これを解決する方法として、調湿性やガス吸着性を有する基材を用いた化粧板を用いるのが有効である。しかし、装飾処理層である化粧シートを調湿性やガス吸着性を有する基材に粘着させると、通気性が低下するため調湿性等の基材の性能を十分に活かせないといった問題があった。
【0004】
装飾処理層を有する化粧シートは通気性を優先させると平滑度の低下により印刷に適さなくなり、また印刷適性を優先させると通気性が低下するといったことにより、木目印刷等を施した化粧シート原紙を基材に貼着すると通気性を低下させ基材の調湿性等を充分に発揮できないといった問題があった。
【0005】
そのため、基材に調湿性を有するものを用いた場合、化粧紙により調湿性を低下させない事が求められている。そこで、印刷を行わない化粧紙を用いていた。また、不織布と多孔質フィルムを積層させ通気性シートを作成する方法が提案されている(特許文献1)。さらに、パルプ等のセルロース系繊維にポリエステル等の合成繊維を混合することにより通気性を有する壁紙が報告されている(特許文献2)。 しかし、通気性を確保すると平滑性が悪化し印刷に適さなくなるなど問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−060061号
【特許文献2】特開2006−200111号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通気性と印刷適性を両立する化粧シート原紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意研究の結果、芯部がポリエチレンテレフタレート、鞘部がポリエチレンテレフタレートコポリマーである合成繊維を2〜10重量%と木材パルプ90〜98重量%を含有し、以下の(1)〜(3)を満たす通気性化粧シート原紙。
(1)平滑度 150〜300s
(2)層間剥離 60〜85N/m
(3)透気度 10〜16s
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、調湿基材の性質を損なわない通気性と印刷適性を両立する化粧シート原紙を用いることで、当該シート原紙を調湿性、ガス吸着性を有する基材に貼着させ、当該化粧シートに印刷することによる装飾処理により、意匠性の高い機能性内装材として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用する木材パルプは、印刷適性、通気性の観点からL材を使用することが好ましい。例えば、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒しサルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹溶解クラフトパルプ(LDKP)等がある。なお、印刷適性を損なわない範囲でN材を適宜混合することも可能である。
【0011】
パルプと合成繊維を混合し叩解する。ろ水度を350〜550mlCSF(好ましくは400〜500mlCSF)に叩解する。叩解する方法としては公知のものであれば特に限定するものでなく、例としてはビーターやダブルディスクリファナーが挙げられる。
【0012】
木材パルプと合成繊維のろ水度が350ml〜550mlCSF以外の範囲になると、透気度と叩解度のバランスが悪くなる。 叩解度が高すぎると透気度が上昇し、叩解度が低すぎると平滑度が低下し印刷適性が悪化する。
【0013】
得られる原紙の坪量としては、40〜60g/m となるように抄紙することが好ましい。40g/m以下では、通気性は良好だが、十分な強度を得ることができないため好ましくない。また、60g/m以上となると通気性が悪くなるため好ましくない。
【0014】
本発明で使用する合成繊維は、芯部がポリエステル系樹脂で、鞘部は芯部より低融点の共重合ポリエステル系樹脂で被覆した合成繊維である。芯部のポリエステル系樹脂の融点は、200〜300℃、鞘部は、100〜150℃程度の融点であることが好ましい。鞘部に深部より低融点の合成繊維を使用することで鞘部の合成繊維がカレンダー処理により紙表面に溶解し皮膜が形成され、平滑性が上がることで印刷適性が良好になる。また芯部は、溶解しないため通気性を確保できる。
【0015】
使用する合成繊維は、全重量あたり2〜10重部含有する。これ以外の含有量であると通気性と印刷適性のバランスが悪くなる。使用する合成繊維長は3〜5mmである。3〜5mmの合成繊維を使用し上記のろ水度にすることで印刷適性にすぐれた化粧シート原紙を得ることができる。また、当該合成繊維の太さは1.1〜4.4dtexである。これ以外の太さの合成繊維であると通気性と印刷適性のバランスが悪くなる。
【0016】
本発明には、公知の填料を添加することができる。通常、填料を添加すると通気性を阻害するため、通気性を阻害しない程度に添加する必要がある。例えば、遮蔽性を得るために二酸化チタンを添加する場合は、木材パルプに対して2〜5重量%の含有量であれば、通気性を確保した上で遮蔽性を得ることが可能である。
【0017】
本発明には、公知の製紙薬品を内添する。具体的には、乾燥紙力剤、表面紙力剤、湿潤紙力等である。紙力増強剤は、ポリアクリルアミドエピクロロヒドリンやCMCやカチオンデンプンがある。特に印刷適性を得るためには、表面紙力剤を添加することが好ましい。使用できる表面紙力剤としては、デンプン類、セルロース類の天然高分子やアクリルアミド系樹脂類等の合成高分子を用いることができる。これらの中でもカチオンデンプン等のデンプン類が好ましい。
【0018】
本発明には、製紙原料に粘剤を添加することで、抄紙機のワイヤにパルプ繊維を均一に分散させることで、良好な地合を形成させることができる。使用する粘剤は、公知のものであれば、特に限定されないが、アニオン性のポリアクリルアミド系粘剤等が使用できる。
【0019】
抄紙方法は、特に限定されないが、長網、丸網、傾斜ワイヤ、あるいは多層抄きの各抄紙機を用いることができ、いずれの方法でもよい。
【0020】
印刷適性(平滑性)を良好なものにするため必要に応じてヤンキードライヤーとの接触面が印刷面となるようにヤンキードライヤーで乾燥させる。ヤンキードライヤーにより合成繊維を溶解させ表面に均一なPET皮膜を形成させることができる。
【0021】
さらに、本発明では、必要に応じて高い印刷適性を得る目的でカレンダー処理をする。印刷適性(平滑性)と通気性は、カレンダーの熱ロールの温度、線圧で調整する。本願の通気性と印刷適性(平滑性)を得るためには、熱ロールの温度は、室温(25℃)〜80℃、線圧は、150〜250kg/cmで行うと良好な印刷適性と通気性を得ることができる。
【0022】
本発明には、必要に応じて顔料等を添加することで単色の装飾処理をすることも可能であるが、本発明のシート原紙は、印刷後においても充分な通気性を確保することができるので、各種印刷(グラビア印刷等)による装飾処理を施すことが可能である。本発明のシート原紙は、木目印刷等による装飾処理をしても十分な通気性を確保することができる。
【0023】
本発明では、印刷後の通気性は、原紙の透気度を代用とし、印刷適性は、層間剥離と平滑度を代用特性とした。印刷後においても十分な通気性を確保するためには、原紙の段階で、透気度を10〜16sとする必要がある。この透気度であれば、印刷後においても必要な通気性を確保することができる。
【0024】
印刷適性については、原紙の平滑度を150〜300s、層間剥離を60〜85N/mとすることで必要な印刷適性を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施例を挙げる。本発明の物性値については、以下の方法で行った。また、通気性は、透気度を代用とし、印刷適性は、平滑度及び層間剥離を代用特性とした。
(1)透気度 JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.5−2 紙及び板紙―平滑度及び透気度試験方法 王研式法に準じて測定した。透気度が、10〜16sとなると印刷後の通気性を○とした。
(2)平滑度JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.5−2 紙及び板紙―平滑度及び透気度試験方法 王研式法を用いて測定した。
(3)層間剥離JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.19−2 板紙―すき合わせ層のはく離強さ試験方法 平均荷重測定法 B法に準じて測定した。 平滑度が150〜300s、層間剥離60〜85N/mの場合、印刷適性を○とした。
(4)ろ水度(叩解度) JIS P8121に基づき測定した。
【0026】
(実施例1〜4)(比較例1〜5)表1に示すような条件で長網抄紙機により抄紙した。パルプはLBKP、合成繊維は芯部:融点255℃のPET、鞘部:融点110℃のPET共重合、2.2dtex、長さ3mmの繊維をパルプと混合し、ダブルディスクリファナーでフリーネス(カナディアン)に叩解した。実施例1〜4、比較例4〜5には、パルプに対してカルボキシルメチルセルロース乾燥紙力剤0.25重量%、カチオンデンプン表面紙力剤1.0重量%、ポリアミドエポキシ樹脂ウエット紙力材0.7重量%を添加した。比較例1〜3では、ポリアミドエポキシ樹脂ウエット紙力材0.7重量%、ポリアミド系紙力剤1.3重量%を添加した。印刷面をヤンキードライヤー面に密着させて乾燥し、表1に示すような熱ロール、線圧によりキャレンダー処理をした。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、通気性と印刷適性を両立する化粧シート原紙を用いることで、当該シート原紙を調湿性、ガス吸着性を有する基材に貼着させ、当該化粧シートに印刷することによる装飾処理により、意匠性の高い機能性内装材として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部がポリエチレンテレフタレート、鞘部がポリエチレンテレフタレートコポリマーである合成繊維を2.0〜10重量%と木材パルプ90〜98重量%を含有し、以下の(1)〜(3)を満たす通気性化粧シート原紙。
(1)平滑度 150〜300s
(2)層間剥離 60〜85N/m
(3)透気度 10〜16s

【公開番号】特開2011−26722(P2011−26722A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171416(P2009−171416)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】