説明

印刷装置、および印刷方法

【課題】タイヤの側面部に対して、直線状の画像パターンを印刷することができる印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】タイヤTを保持する保持手段と、タイヤTの回転軸周りでタイヤTを回転させる回転手段と、インクヘッド13からインクを噴射して、タイヤTの側面部に印刷を施す印刷手段とを備え、タイヤTを回転させながらインクを噴射して所定の印刷を施す印刷装置1において、直交座標系として入力された画像データを、タイヤTの回転軸の軸心を円の中心とする極座標系に変換する画像変換手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを回転させながらタイヤの側面部に印刷を施すインクジェット式の印刷装置、および印刷方法に関し、より詳細には、タイヤの側面部に、直線状の印刷パターンを印刷しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ等の環状物品に対して印刷を施す方法としては、転写による方法が知られている。その中の1つとしては例えば、凹版に印刷文字や記号等を凹状に形成した凹部にインキを充填し、該凹版の表面にシリコンパッドを一面に当てがい凹部のインキをシリコンゴムパッドの表面に転移させて、タイヤのサイド部の印刷面にシリコンゴムパッドを押し付けることでインキをタイヤの印刷面に転写する印刷方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記のような転写による印刷方法は、印刷面に凹凸がある場合や、ゴムのようにインキの浸透性が低い材質に対して印刷を行う場合、濃淡やかすれが生じやすい等の問題があった。さらに、印刷対象品のサイズや、印刷パターンの変更の際には、その都度凹版を変更しなければならず、効率的ではなかった。
【0004】
上記の問題を解決する印刷方法として、インクジェット印刷装置による方法がある。これは、タイヤの外径付近を上抑えローラにより圧接して、タイヤの側面部の印刷面を平坦にしつつ、タイヤを回転して所定位置からインクジェットヘッドからインクを噴射して印刷を行うものであり、これによれば、印刷対象品が印刷面に凹凸を有する場合や浸透性の低い材質である場合であっても、転写による場合に比べて濃淡やかすれの発生を抑えることができる。さらに印刷パターンやタイヤサイズの変更の際にも、出力データの変更のみで対応できるため効率がよく、転写による印刷に比べて、迅速でより正確に、タイヤの側面部に対して印刷を施すことができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−329402号公報
【特許文献2】特開2010−125440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインクジェット印刷装置でタイヤの側面部に印刷を施す場合、例えば図3(a)の直線状に並ぶ文字のパターン60の画像データが入力された場合において、最終的に印刷された印刷パターンは、図3(b)に示す印刷パターン62のようにタイヤTの側面部に回転軸の周りで円弧を描いて並ぶ印刷パターンであり、タイヤを回転させながら印刷するインクジェット式の印刷装置において、タイヤの側面部に直線状の印刷パターンを印刷する技術がなかった。
【0007】
それゆえ本発明は、タイヤを回転させながら印刷するインクジェット式の印刷装置において、タイヤの側面部に直線状の印刷パターンを印刷する印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の印刷装置は、タイヤを保持する保持手段と、タイヤの回転軸周りでタイヤを回転させる回転手段と、インクヘッドからインクを噴射して、タイヤの側面部に印刷を施す印刷手段とを備え、タイヤを回転させながらインクを噴射して所定の印刷を施す印刷装置において、直交座標系として入力された画像データを、タイヤの回転軸の軸心を円の中心とする極座標系に変換する画像変換手段を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の印刷方法は、タイヤの回転軸周りでタイヤを回転させながらインクヘッドからインクを噴射してタイヤの側面部に印刷を施す印刷方法において、直交座標系として入力された画像データをタイヤの回転軸の軸心を中心とする極座標系に変換して、タイヤの側面部に印刷を施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる印刷方法によれば、保持手段がタイヤを保持し、回転手段がタイヤを回転させるとともに、印刷手段がインクヘッドからインクを噴射して印刷を施す印刷装置において、画像変換手段が、入力された画像データを予めタイヤの回転軸の軸心を基準として直交座標(XY座標)系から極座標(θr座標)系に変換して、インクヘッドに出力することにより、タイヤの側面部に直線状の印刷パターンを印刷することができる。
【0011】
したがって、本発明の印刷装置および印刷方法によれば、タイヤの側面部に対して、直線状の印刷パターンを印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にしたがう印刷装置の構成図である。
【図2】(a)は、直交座標(XY座標)系として入力された画像データを極座標(θr座標)系に変換する方法を示す図であり、(b)は、(a)の画像データを本発明の画像変換手段により極座標系に変換した後の画像データを示す図である。
【図3】(a)は、印刷装置に入力された直線状の画像データの一例を示す図であり、(b)は、従来の印刷装置および印刷方法によって(a)の画像データを印刷した印刷パターンを示す図である。
【図4】(a)は、本発明に従い画像変換した後の画像データの一例を示す図であり、(b)は、本発明に従う印刷装置および印刷方法により(a)の画像データを印刷した印刷パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明にしたがう実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、印刷装置1は、床面3に設けられた門型フレーム5を備える。門型フレーム5は両側の縦フレーム7と、両側の縦フレーム7の間にまたがる横フレーム9からなる。横フレーム9には軸受11を設け、カラーインクを噴出するインクヘッド13を図示のように固定する。さらに、軸受11に対して回転可能に上側回転軸15を取付け、上側回転軸15の上部に、回転手段としてモータ17を設ける。また、上側回転軸15の下端部には円盤形状の上側ビード部保持部材21を取り付ける。上側ビード部保持部材21は、リムを幅方向中央部分で切断して得られた片側部分と同様の形状である。
【0014】
また、門型フレーム5の両側の縦フレーム7にそれぞれ取付けたガイドレール23に沿って、昇降可能に取付けた移動フレーム25に、軸受11を設け、軸受11に対して回転可能に下側回転軸27を取付ける。下側回転軸27の上端部に、上側ビード部保持部材21と同一の形状で、上側ビード部保持部材21に対向する下側ビード部保持部材29を設ける。上側ビード部保持部材21と下側ビード部保持部材29は、保持手段を構成する。また、上側回転軸15と下側回転軸27は同一軸線状に配置する。
【0015】
また、印刷装置1は、制御部(パーソナルコンピュータ)40を備える。制御部40は、回転制御手段41と、画像変換手段(プログラム)43と、印刷制御手段45とを備える。
【0016】
回転制御手段41はモータ17に接続し、モータ17の回転速度等を制御する。画像変換手段43は、直交座標(XY座標)系として入力された画像データを、タイヤの回転軸の軸心を円の中心とする極座標(θr座標)系に変換し、印刷制御手段45に出力する。印刷制御手段45は、インクヘッド13からの出力(カラーインクの噴射)を制御する。インクヘッド13と印刷制御手段45とは、印刷手段を構成する。
【0017】
次に、上記の印刷装置1を用いた印刷方法について詳細に説明する。印刷装置1へのタイヤTの取付けは、手動または自動により移動フレーム25を制御し、下側ビード部保持部材29を、上側ビード保持部材21との間にタイヤTが挟み込めるだけの空間をあけた状態まで下方に移動しておき、その後、手作業または自動により下側ビード部保持部材29の上に、タイヤTの中心と下側ビード保持部材29の中心とが一致するようにタイヤTを配置し、タイヤTのビード部Bが、隙間を空けずに、下側ビード部保持部材29に保持されていることを確認してから、移動フレーム25を適切な位置まで上昇させ、上下両側のビード部保持部材21、29でタイヤTを気密に挟持する。その後、下側回転軸27の中心部に形成された流路27aを通して、(図示しない)コンプレッサー等により、タイヤT内が所定の内圧になるように空気を充填する。
【0018】
次に回転制御手段41がモータ17を作動し、タイヤTを回転させるとともに、画像変換手段43によって変換された画像データを、印刷制御手段45がインクヘッド13から出力(インクを噴射)し、タイヤTの側面部に印刷を施す。このようにして印刷された印刷パターンを図4(b)に示す。
【0019】
印刷装置1の制御部40には予め、タイヤTの外形、内径、幅、印刷回数、印刷速度、印刷面の位置、画像データ等の印刷に必要な各種データを入力する。その入力された各種データに基いて、画像変換手段43が、入力された画像データを変換し、インクヘッド13から出力するための画像データを作成する。印刷に必要な各種データの入力および画像変換は、印刷制御手段45の信号によってインクヘッド13からインクが噴射される前であれば、どのタイミングで行っても良い。
【0020】
以下、画像変換について図を参照しながら詳細に説明する。例えば、図2(a)に示すように、タイヤTの回転軸の軸心Oおよび、タイヤTに対して直線状に、すなわちタイヤTの半径方向に対して直行する方向に並ぶ文字のパターン50の画像データが入力された場合、タイヤTの回転軸の軸心OからX軸の負の方向に延びる線を基準線Sとして、画像データのパターン50を回転軸の軸心Oからの距離rと、基準位置Sからの回転角度θで表すと、図2(b)のパターン52のような出力用の画像データに変換することができる。
【0021】
さらに、従来技術と比較しながら、出力される印刷パターンについて説明する。従来技術に従い、入力された図3(a)のような直線状に並ぶ文字パターン60を変換せずにそのまま印刷すると、図3(a)の矢印方向に沿ってインクヘッド13から出力(インク噴射)される画像データが、タイヤTの回転軸の軸心Oからの距離を一定に保ちながら印刷されるため、図3(b)のような略円弧状に並ぶ印刷パターン62になる。これに対して、本発明に従い画像変換を行った図4(a)に示す画像データのパターン64を図4(a)に示す矢印方向にインクヘッド13から出力して同様に印刷すると、タイヤTの側面部には図4(b)に示すように、直線状の印刷パターン66を印刷することができる。
【0022】
上述の実施形態の印刷装置および印刷方法によって、入力された画像データを予め変換することにより、容易にタイヤの側面部に対して直線状の印刷パターンを印刷することができる。また、インクを噴射する印刷方式であるため、転写等による方法と比較して印刷面の凹凸による影響が少なく、かすれや濃淡の少ない鮮明な印刷をすることができる。さらに、タイヤに内圧を負荷した状態で印刷を行うことにより、タイヤの印刷面が使用時に近い状態となり、印刷時と使用時との間で印刷面が変形するのを抑えることが出来るので、内圧を負荷せずに印刷した場合と比較して劣化を抑制することが出来る。
【0023】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができる。例えば、タイヤの搬送、取付けを自動化し、手作業でなく専用の機械を用いても良い。あるいは、タイヤの裏面にも印刷を施す場合、タイヤ反転用の装置を用いて自動的に裏面にも印刷を施す構成にしてもよい。また、印刷面へのインクのなじみを良くして、耐久性を向上するために、印刷面の清浄手段やプライマー(下地)塗布手段を設け、さらに、インクの硬化・定着のために、インクの種類に応じて紫外線照射ランプ、遠赤外線照射装置、又はヒータ等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
かくして、本発明により、タイヤを回転させながら、インクジェット式の印刷を行い、タイヤの側面部に対して直線状のパターンを印刷することができる印刷装置および印刷方法を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0025】
1 印刷装置
3 床面
5 門型フレーム
7 縦フレーム
9 横フレーム
11 軸受
13 インクヘッド
15 上側回転軸
17 モータ
21 上側ビード部保持部材
23 ガイドレール
25 移動フレーム
27 下側回転軸
29 下側ビード部保持部材
40 制御部(パーソナルコンピュータ)
41 回転制御手段
43 画像変換手段(プログラム)
45 印刷制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを保持する保持手段と、タイヤの回転軸周りでタイヤを回転させる回転手段と、インクヘッドからインクを噴射して、タイヤの側面部に印刷を施す印刷手段とを備え、タイヤを回転させながらインクを噴射して所定の印刷を施す印刷装置において、
直交座標系として入力された画像データを、タイヤの回転軸の軸心を円の中心とする極座標系に変換する画像変換手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
タイヤの回転軸周りでタイヤを回転させながらインクヘッドからインクを噴射してタイヤの側面部に印刷を施す印刷方法において、
直交座標系として入力された画像データをタイヤの回転軸の軸心を中心とする極座標系に変換して、タイヤの側面部に印刷を施すことを特徴とする印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−1010(P2013−1010A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135444(P2011−135444)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】