説明

印刷装置、印刷制御方法、および排出制御プログラム

【課題】他のユーザによる機密情報を含む印刷物を持ち出し、または閲覧等を防止し、素早く自己の印刷物のみを取り出すこと
【解決手段】印刷ユニット101は、印刷要求に応じて、印刷データを印字し、かつ印刷要求ユーザの認証情報である第一の認証情報を付加した印刷物を生成する。仕分けユニット103は、排出要求に応じて、印刷ユニットにより生成されている印刷物の第一の認証情報と、排出要求時にユーザにより入力される第二の認証情報と、を用いることで印刷物を認証し、認証に成功した印刷物のみを排紙する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置、印刷制御方法、および排出制御プログラムに関し、特にセキュリティ機能を向上させた印刷装置、印刷制御方法、および排出制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータネットワークやネットワーク接続された印刷機器の普及・発展に伴い、ネットワーク上から情報を取得し、印刷機器により情報を印刷することが容易に行える。一般に、企業等で利用されるプリンタ等の印刷機器は、ネットワークを介して複数のコンピュータ等の機器との通信が可能である。
【0003】
企業等で利用されるプリンタ等の印刷機器では、ユーザが自分のコンピュータから印刷指示を行い、印刷を行った場合、印刷物を取りに行く前に他人が印刷物を排紙トレイから持ち去ってしまう恐れや、他人が印刷物の情報を閲覧する恐れ等がある。印刷物には、機密情報が印刷されたものも多く存在し、上記のような印刷物の不正持ち出し行為等は、情報セキュリティの問題となる。そのため、印刷物の不正持ち出し、または印刷要求を行ったユーザ以外による印刷物の閲覧等を防ぐための種々の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の印刷出力紙管理装置は、識別情報タグを印刷紙に印刷し、印刷物を排紙トレイに排紙する。印刷出力紙管理装置は、排紙トレイの近傍に設置された監視装置によりユーザが携帯するユーザIDタグを検知することでユーザを識別し、印刷物が不正に持ち出された場合に、その旨を管理ユーザに通知する。
【0005】
特許文献2に記載のファクシミリ装置は、印刷済みの印刷物を送信元の情報等に基づいて、ロック機構を有する第一のトレイ、またはロック機構を有さない第二のトレイのいずれかに排紙する。ユーザが認証情報を入力し、認証が成功した場合に、第一のトレイのロックが解除され、印刷物を取り出すことができる。
【0006】
特許文献3に記載のスキャナ付きプリンタでは、ユーザは予め印刷を許可するためのコードを埋め込んだ印刷物である印刷許可用紙を作成しておく。印刷要求後に、ユーザはスキャナにより前述のコードを読み取らせ、かつ暗証番号を入力することにより認証を行う。認証が成功した場合、スキャナ付きプリンタは印刷を開始し、印刷物を排紙トレイに排紙する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−288004号公報
【特許文献2】特開2006−333196号公報
【特許文献3】特開2009−49899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の装置や方法では、以下の問題点がある。特許文献1に記載の印刷出力紙管理装置では、印刷物の不正な持ち出し時に管理者等のユーザに通知するのみであり、物理的に不正な印刷物の取り出しを禁止することができない。特許文献2に記載のファクシミリ装置では、第一のトレイのロック解除時に、他人宛てのファクシミリ用紙も取り出すことができてしまう。また、特許文献3に記載のスキャナ付きプリンタでは、認証成功後に、印刷処理を開始するため、印刷開始から印刷終了までプリンタの前で待つ必要があった。
【0009】
すなわち、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、他のユーザによる印刷物の持ち出し、または閲覧等を禁止しつつ、素早く自己の印刷物のみを取り出すことができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、他のユーザによる印刷物の持ち出し、または閲覧等を防止し、かつ素早く自己の印刷物のみを取り出すことができる印刷装置、印刷制御方法および排紙制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる印刷装置の一態様は、印刷物を一時的に保管する蓄積手段と、印刷要求に応じて、前記印刷要求を行ったユーザに対応する第一の認証情報を含んだ情報を印刷した印刷物を生成して前記蓄積手段に格納する印刷ユニットと、排出要求に応じて、前記第一の認証情報と、前記排紙要求を行うユーザにより入力される第二の認証情報と、に基づいて、前記蓄積手段に格納された印刷物のうち、前記第二の認証情報に対応する印刷物を選択して排出する仕分けユニットと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、他のユーザによる不正な印刷物の持ち出し、または閲覧等を禁止しつつ、素早く印刷物を取り出せる印刷装置、印刷制御方法および排紙制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる印刷装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる印刷装置の基本構成の詳細を示す構成図である。
【図3】実施の形態1にかかるバーコードが埋め込まれた印刷物の図である。
【図4】実施の形態1にかかる印刷要求時のフローチャートである。
【図5】実施の形態1にかかる排紙要求時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態1にかかる印刷装置の基本構成について説明する。印刷装置1は、印刷ユニット101と、蓄積手段102(以下、中間トレイ102ともいう)と、仕分けユニット103と、を備える。印刷装置1は、ネットワーク接続されており、他のコンピュータ等との通信を行うことができる。
【0015】
印刷ユニット101は、ユーザからの印刷要求に応じて、印刷データを用紙に印刷するするとともに、印刷要求を行ったユーザの認証情報を用紙に付加した印刷物を生成する。蓄積手段102は、印刷ユニット101により生成した印刷物を一時的に保管する。仕分けユニット103は、排紙要求に応じて、蓄積手段102に保管された印刷物の各々に付加された認証情報と、ユーザから入力される認証情報と、を用いて印刷物を認証し、認証に成功した印刷物のみを排紙する。
【0016】
図1に示した印刷装置の構成により、印刷要求に応じて、印刷物の印刷処理を終了し、印刷装置1内部の蓄積手段102に印刷済みの印刷物を保管する。そのため、印刷済みの印刷物が外部に放置されることはない。また、仕分けユニット103は、排紙要求に応じて、排紙要求を行ったユーザの印刷物のみを排紙する。これにより、他人の印刷物を不正に閲覧する等の行為を防止することができる。また、仕分けユニット103は、すでに印刷済みの印刷物を排紙する処理のみを行い、印刷処理を排紙時に行わない。すなわち、排紙時の印刷処理を省略することができる。
【0017】
次に、図2を参照して、本実施の形態1にかかる印刷装置の詳細を説明する。図2におけるプリンタ100は、本実施の形態にかかる印刷装置の一例である。プリンタ100は、印刷ユニット101と、中間トレイ102と、仕分けユニット103と、認証ユニット104と、排紙トレイ105と、を備える。本実施の形態にかかる印刷装置は、印刷機能を備えるものであればよく、MFP(Multi Functional Peripheral)等であってもよい。プリンタ100は、ネットワークに接続され、印刷要求を行うユーザから当該ユーザのIDを受け付ける。
【0018】
印刷ユニット101は、印刷データをインクジェット等により印刷用紙に印字する。また、印刷ユニット101は、印刷要求を行ったユーザIDを「第一の認証情報」としてバーコード形式により印刷用紙に印字する。ここで、ユーザIDとは、印刷要求を行ったユーザを識別するための情報を指す。
【0019】
中間トレイ102は、プリンタ100に内蔵され、印刷ユニット101が印刷した印刷物を一時的に保管するためのトレイである。中間トレイ102は、ユーザによる外部からの印刷物の取り出しが困難な構造に構成しておく。すなわち、中間トレイ102は、印刷ユニット101と、仕分けユニット103と、からのみ印刷物の出し入れができる構成とする。例えば、中間トレイ102は、物理的な施錠により、印刷物の取り出しが困難にする。または、中間トレイ102は、電子的に制御を行う施錠機構を備えてもよい。印刷装置1が機密情報を多く取り扱う場合には、中間トレイ102から不正に印刷物が取り出されようとされた際に、強制的に印刷物を裁断するような仕組みを中間トレイ102に設けてもよい。
【0020】
仕分けユニット103は、中間トレイ102に保管された印刷物にアクセスし、印刷物に印字されたバーコードからユーザの認証情報を抽出することが可能な処理ユニットである。仕分けユニット103は、認証ユニット104が排紙要求を受け付けた際に、認証ユニット104に入力された認証情報と、中間トレイ102に保管されている全ての印刷物のバーコード形式で印字された認証情報と、を比較する。仕分けユニット103は、前述の比較により認証に成功した印刷物(すなわち、排紙要求を行ったユーザが、印刷要求を行ったことにより生成された印刷物)のみを排紙トレイ105へ排紙する。
【0021】
認証ユニット104は、ユーザが外部から操作できるように設置される。認証ユニット104は、ユーザのIDカード等を読み取り、ユーザの識別情報を「第二の認証情報」として取得する。認証ユニット104は、取得した認証情報を仕分けユニット103に通知する。認証ユニット104は、排紙要求を行うユーザの認証情報を入力できるものであればよく、たとえばタッチパネル等からユーザIDと、パスワードと、を入力させる構成であってもよい。
【0022】
排紙トレイ105は、ユーザが外部からアクセスできるように設置され、印刷された用紙を保持するためのトレイである。
【0023】
続いて、図4のフローチャートを用い、印刷要求時におけるプリンタ100の動作について説明する。印刷要求とは、ユーザが、ネットワーク接続されたコンピュータ等の機器(図1、図2において不図示)を用い、プリンタ100に対して印刷データと、ユーザを識別できる情報であるユーザIDと、を送信することを指す。
【0024】
ユーザは、コンピュータ等の機器を用いて、印刷をしたいデータである印刷データと、自己のユーザIDをプリンタ100に送信する。プリンタ100は、印刷データと、ユーザIDと、を受信する(S101)。
【0025】
プリンタ100内の印刷ユニット101は、受信したユーザIDに対応するバーコードを生成する(S102)。その後、印刷ユニット101は、生成したバーコードと、受信した印刷データと、を印刷用紙に印字する(S103)。なお、印刷データの印字処理と、バーコードの生成及び印字処理と、は別々に行ってもよい。
【0026】
図3は、印刷データと、バーコードと、を印字した印刷物の一例を示す図である。印刷ユニット101は、印刷データの印字部分と、バーコードの印字部分と、が重ならないように印刷制御を行う。また、印字される認証用のバーコードは、マークシート形式であってもよい。
【0027】
印刷ユニット101は、印刷データと、バーコードと、の印字処理が終了した印刷物を中間トレイ102に格納する(S104)。中間トレイ104への印刷物の格納により、印刷要求時の処理を終了する。
【0028】
次に、図5のフローチャートを用い、排紙要求時におけるプリンタ100の動作について説明する。排紙要求とは、ユーザがプリンタ100の前に行き、印刷物を排紙トレイ105に排紙することを要求することを指す。なお、排紙要求は、印刷要求を行った後、任意のタイミングで行えるものである。
【0029】
ユーザは、プリンタ100に設置された認証ユニット104に対し、自己のIDカード等を用いて、認証情報の入力を行う。認証ユニット104は、ユーザから入力されたユーザIDの読み取りを行う(S201)。認証ユニット104は、入力されたユーザIDを仕分けユニット103に通知する。
【0030】
仕分けユニット103は、入力されたユーザIDに基づいて、中間トレイ102に格納された印刷物の認証を行う(S202)。ここで、印刷物の認証の処理の一例としては、認証ユニット104に入力されたユーザIDと、印刷物に付加されたバーコードから抽出される文字列と、が一致するか否かにより行う。
【0031】
認証ユニット104に入力されたユーザIDに対応する、バーコード形式の認証情報を持つ印刷物が中間トレイ102内に存在する場合(S203:Yes)、仕分けユニット103は中間トレイ102から当該印刷物のみを取り出し、排紙トレイ105へ排紙する(S204)。
【0032】
一方、認証ユニット104に入力されたユーザIDに対応する、バーコード形式の認証情報を持つ印刷物が中間トレイ102内に存在しない場合(S203:No)、処理をそのまま終了する。なお、プリンタ100の表示ディスプレイ等に、排紙すべき印刷物が存在しない旨を表示してもよい。
【0033】
以上、説明したように、本実施の形態では、ユーザが印刷要求を行った際に、プリンタ100内の印刷ユニット101は、即時に印刷データと、印刷要求ユーザに対応する第一の認証情報であるバーコードと、を印字した印刷物を生成する。印刷ユニット101は、生成した印刷物を外部からユーザがアクセス困難な中間トレイ102に格納する。これにより、印字処理後の印刷物を他のユーザが印刷物を不正に取り出すこと、または不正に閲覧すること等の不正な行為を防止することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、ユーザが排紙要求を行う際に、ユーザはプリンタ100に設置された認証ユニット104に、第二の認証情報としてユーザID等の認証情報の入力を行う。仕分けユニット103は、認証ユニット104に入力されたユーザIDと、印刷物に付加されたバーコードと、を比較することにより認証を行い、認証に成功した印刷物のみを排紙トレイ105に排紙する。ここで、他のユーザの印刷物が排紙トレイ105に排紙されることはないため、他のユーザの印刷物を不正に取り出すこと、または閲覧すること等の不正な行為を排紙段階においても防止することができる。また、仕分けユニット103は、印刷ユニット101により既に印字済みの印刷物を排紙する。そのため、排紙要求時の印字処理を省略することができる。
【0035】
上述の実施の形態では、印刷装置1をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、印刷ユニットによる図4に示した処理、または仕分けユニットによる図5に示した処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の通信媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。また、記憶媒体には、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD、ROMカートリッジ、バッテリバックアップ付きRAMメモリカートリッジ、フラッシュメモリカートリッジ、不揮発性RAMカートリッジ等が含まれる。また、通信媒体には、電話回線等の有線通信媒体、マイクロ波回線等の無線通信媒体等が含まれる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、印刷用紙に印字する認証情報は、必ずしも一次元バーコードの形式である必要はなく、二次元コードの形式や、電子透かしの形式等であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 印刷装置
100 プリンタ
101 印刷ユニット
102 中間トレイ
103 仕分けユニット
104 認証ユニット
105 排紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物を一時的に保管する蓄積手段と、
印刷要求に応じて、前記印刷要求を行ったユーザに対応する第一の認証情報を含んだ情報を印刷した印刷物を生成して前記蓄積手段に格納する印刷ユニットと、
排出要求に応じて、前記第一の認証情報と、前記排紙要求を行うユーザにより入力される第二の認証情報と、に基づいて、前記蓄積手段に格納された印刷物のうち、前記第二の認証情報に対応する印刷物を選択して排出する仕分けユニットと、を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記第二の認証情報を入力するための認証ユニットを備えた、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第一の認証情報は、バーコードにより前記印刷物に印刷されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷要求をネットワーク経由で受け付ける請求項1から請求項3のいずれか一に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷要求に応じて、前記印刷要求を行ったユーザに対応する第一の認証情報を含んだ情報を印刷した印刷物を生成して、一時保管するステップと、
排出要求に応じて、前記第一の認証情報と、前記排紙要求を行うユーザにより入力される第二の認証情報と、に基づいて、一時保管されている前記印刷物のうち、前記第二の認証情報に対応する前記印刷物を選択して排出するステップと、を備えた印刷方法。
【請求項6】
前記第二の認証情報を入力する入力ステップを備える請求項5に記載の印刷制御方法。
【請求項7】
前記第一の認証情報は、バーコードにより前記印刷物に印刷されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の印刷制御方法。
【請求項8】
排出要求に応じて、印刷物を出力する動作を印刷装置に実行させるためのプログラムであって、
印刷要求に応じて生成された印刷物に含まれる前記印刷要求を行ったユーザに対応する第一の認証情報と、排出要求を行うユーザから入力される第二の認証情報と、に基づいて、前記印刷物から、前記第二の認証情報に対応する前記印刷物を選択して排出する処理を実行する排出制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−18973(P2011−18973A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160735(P2009−160735)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】