説明

印刷装置、印刷方法、およびプログラム

【課題】複数のノズル列を有するRθ走査方式の印刷ヘッドを用いる場合に印刷不良の発生を抑制可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】回転する印刷対象物100が描く円の半径方向に相当する基準線Bおよび基準線に平行する1つ以上のオフセット線Oのうち、2つ以上の線上に配列される2列以上のノズル列を有する印刷ヘッド20により、回転する印刷対象物上を第1の経路で通過するノズル30から同一色のインク滴を吐出させ、各ノズル列が基準線上またはオフセット線上で微小移動するように印刷ヘッドを移動させ、回転する印刷対象物上を第1の経路から微小移動された第2の経路で通過するノズルから同一色のインク滴を吐出させる。これにより、ノズルが微小移動される前にノズルの経路に該当せずに印刷不良が生じた領域に、ノズルの経路が微小移動された後にインク滴が吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法、およびプログラムに関し、特に、ディスク状記録媒体、半導体記憶媒体、その他の印刷対象物を回転させ、回転する印刷対象物の印刷面にインク滴を吐出して可視情報を印刷する、印刷装置、印刷方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスク状記録媒体の記録面に映像、音声などのデジタル情報を記録するとともに、記録面と反対側の印刷面に印刷ヘッドからインク滴を吐出して可視情報を印刷することができる印刷装置が提案されている。
【0003】
この種の印刷装置は、印刷ヘッドの走査方式に応じて、いわゆるXY走査方式およびRθ走査方式の印刷装置に区分される。XY走査方式では、ディスクトレイ上に配置されたディスクをディスクトレイの挿入排出方向(副走査方向)に移動させ、副走査方向に直交する方向(主走査方向)に印刷ヘッドを移動させながら印刷を行う。一方、Rθ走査方式では、ディスクを円周方向(副走査方向)に回転させ、回転するディスクの半径方向(主走査方向)に印刷ヘッドを移動させながら印刷を行う(下記特許文献1参照)。
【0004】
ところで、印刷ヘッドは、複数の吐出ノズル(以下では、ノズルとも称する。)を有し、複数のノズルは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど、色毎に略直線上に配置された複数のノズル列を構成する。色毎のノズル列は、ノズルピッチpで1列に配置された複数のノズル(1列配置)、またはノズルピッチpおよびノズル列ピッチsで2列以上に配置された複数のノズル列(複数列配置)からなる。
【0005】
そして、複数列配置では、色毎のノズル列は、千鳥状に配置された複数のノズルによりノズルピッチpを実現するように構成(千鳥配置)される場合もある。この場合、色毎のノズル列は、例えば、各ノズル列がピッチ2pで配置された複数のノズルからなる2列のノズル列からなり、2列のノズル列をノズル列の長さ方向にノズルピッチpで互いにずらして構成される。
【0006】
ここで、千鳥配置を有する印刷ヘッドは、例えば下記非特許文献1〜5に紹介されている。非特許文献1、2には、ノズルピッチp=71μm(360dpi)、またはp=35μm(720dpi)を有するピエゾ方式の印刷装置が紹介されている。また、非特許文献3〜5には、p=21μm(1200dpi)を有するバブル方式の印刷装置などが紹介されている。
【0007】
【特許文献1】特開平09−265760号公報
【非特許文献1】「新世代インクジェットプリンタヘッドを開発 世界最高の歪み量を誇る薄膜ピエゾ素子を独自開発」、セイコーエプソン株式会社、2007年3月27日、[平成20年7月25日検索]、[online]、インターネット<URL:http://www.epson.jp/osirase/2007/070327.htm>
【非特許文献2】「エプソンが−新世代マイクロピエゾヘッド−を発表」、インターネット情報提供サイトITmedia+D、2007年03月27日、[平成20年7月25日検索]、[online]、インターネット<URL:http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0703/27/news089.html>
【非特許文献3】「キヤノン、新型ヘッドを採用し、高速・高画質化した「BJ F900」など8機種を発表〜新ブランド「PIXUS」を立ち上げ 」、インターネット情報提供サイトPC Watch、2001年10月2日、[平成20年7月25日検索]、[online]、インターネット<URL:http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011002/canon2.htm>
【非特許文献4】「HP インクジェットプリンタ世界最速フォトプリント&ムダなしインクの秘密」、ヒューレトパッカード株式会社、[平成20年7月25日検索]、[online]、インターネット<URL:http://h50146.www5.hp.com/products/printers/inkjet/ink_technology.html>
【非特許文献5】“Technology reports archive - Hewlett-Packard Inkjet PrintingTechnology: The State of the Art”、Hewlett-Packard Development Company、[平成20年7月25日検索]、[online]、インターネット<URL:http://www.hp.com/oeminkjet/reports/techpress_11.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
XY走査方式の印刷ヘッド20では、一般に、印刷ヘッド20を移動させる方向MDに略直交するように、ノズル列が1列配置、複数列配置、または千鳥配置される。このため、図19Aに示すように、ノズル列を構成する複数のノズル30は、ノズルピッチp(図19A、19Bでは、同一のピッチとして示されている。)を伴う複数の経路でディスク100上を通過する。
【0009】
一方、Rθ走査方式の印刷ヘッド20では、回転するディスク100(図19B、図20A,20B,および図21A,20Bでは、ディスク100の回転方向RDとして示されている。)の半径方向に相当する基準線Bおよび基準線Bに平行する1つ以上のオフセット線Oのうち、1つ以上の線上にノズル列が1列配置、複数列配置、または千鳥配置される。
【0010】
このため、図19Bに示すように、1列配置の場合、ノズル列を構成する複数のノズル30は、ノズルピッチpを伴う同心円状の経路でディスク100上を通過する。しかし、複数列配置または千鳥配置の場合、複数のノズル30がノズルピッチpを伴う同心円状の経路でディスク100上を通過しない場合がある。
【0011】
例えば、図20Aに示すように、ノズル列Aが基準線B上に配置され、ノズル列Bが基準線Bからノズル列ピッチsでオフセットされたオフセット線O上に配置される2列千鳥配置の場合を想定する。この場合、ノズル列Aのノズル30は、基準線B上で測定されるディスク100の回転中心RCからノズル30までの距離r、r、…、rを伴う経路を通過する。一方、ノズル列Bのノズル30は、基準線B上で測定されるディスク100の回転中心RCからノズル30までの距離r、r、…、rに、オフセット距離(ノズル列ピッチs)が加算され、例えば距離r’=√(r+s)を伴う経路を通過する。
【0012】
このため、ノズル列A、Bのノズル30がノズルピッチpの等間隔で配置されていても、ノズル列A、Bのノズル30は、ノズルピッチpを伴う同心円状の経路でディスク100上を通過しない(図20A,20Bおよび図21A,20Bでは、異なるピッチとして示されている。)。なお、図20Bに示すように、2列千鳥配置でなく単なる2列配置の場合も同様に、ノズル列Bのノズル30は、例えば距離r’(この場合、r=rとなり、r’=√(r+s))を伴う経路を通過する。
【0013】
次に、図21Aに示すように、ノズル列Aが基準線Bからオフセットdのオフセット線O上に配置され、ノズル列Bが基準線Bからオフセットd+sのオフセット線O上に配置される2列千鳥配置の場合を想定する。この場合も、ノズル列Aのノズル30は、例えば距離r’=√(r+d)を伴う経路を通過し、ノズル列Bのノズル30は、例えば距離r’=√(r+(d+s))を伴う経路を通過する。なお、図21Bに示すように、2列千鳥配置でなく単なる2列配置の場合も同様に、ノズル列Bのノズル30は、距離r’(この場合、r=rとなり、r’=√(r+(d+s)))を伴う経路を通過する。
【0014】
以上説明したように、Rθ走査方式の印刷ヘッド20では、複数列配置または千鳥配置の場合に、複数のノズル30がノズルピッチpを伴う同心円状の経路でディスク100上を通過しない場合がある。そして、複数のノズル30から吐出されるインクの軌跡がノズルピッチpを伴う同心円状とならず、印刷面100aに印刷される可視情報に色ムラ、モアレなどの印刷不良が生じるという問題がある。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のノズル列を有するRθ走査方式の印刷ヘッドを用いる場合に印刷不良の発生を抑制可能な、新規かつ改良された、印刷装置、印刷方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、印刷対象物を回転させる回転駆動部と、回転する印刷対象物が描く円の半径方向に相当する基準線および基準線に平行する1つ以上のオフセット線のうち、2つ以上の線上に配列される2列以上の吐出ノズル列を有し、2列以上の吐出ノズル列の吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出する印刷ヘッドと、各吐出ノズル列が基準線上またはオフセット線上で微小移動するように印刷ヘッドを移動させるヘッド駆動部と、吐出ノズル列の長さに対応する領域を印刷するために、回転する印刷対象物上を通過する吐出ノズルの経路が微小移動するようにヘッド駆動部を制御し、回転する印刷対象物上を微小移動された経路で通過する吐出ノズルからインク滴を吐出するように印刷ヘッドを制御する印刷制御部と、を備える印刷装置が提供される。
【0017】
かかる構成によれば、吐出ノズル列の長さに対応する領域を印刷するために、回転する印刷対象物上を通過する吐出ノズルの経路が微小移動され、回転する印刷対象物上を、微小移動された経路で通過する吐出ノズルからインク滴が吐出される。これにより、吐出ノズルが微小移動される前に吐出ノズルの経路に該当せずに印刷不良が生じた領域に、吐出ノズルの経路が微小移動された後にインク滴が吐出される。
【0018】
本発明の第2の観点によれば、回転する印刷対象物が描く円の半径方向に相当する基準線および基準線に平行する1つ以上のオフセット線のうち、2つ以上の線上に配列される2列以上の吐出ノズル列を有する印刷ヘッドにより、回転する印刷対象物上を第1の経路で通過する吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、各吐出ノズル列が基準線上またはオフセット線上で微小移動するように印刷ヘッドを移動させる工程と、回転する印刷対象物上を第1の経路から微小移動された第2の経路で通過する吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、を含む、印刷方法が提供される。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、本発明の第2の観点に係る印刷方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のノズル列を有するRθ走査方式の印刷ヘッドを用いる場合に印刷不良の発生を抑制可能な、印刷装置、印刷方法、およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<第1の実施形態>
[ディスク装置1の構成]
まず、図1および図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係るディスク装置1の構成について説明する。図1は、ディスク装置1の主要構成を示す平面図であり、図2は、ディスク装置1の主要構成を示す側面図である。
【0023】
ディスク装置1は、CD、DVDなどディスク100の記録面100bに対するデータの記録および/または再生が可能であり、ディスク100の印刷面100aに対する可視情報の印刷が可能であるように構成される。ディスク装置1は、トレイ2、スピンドルモータ3、記録/再生部5、印刷部6、制御部7(図3を参照)を含んで構成される。
【0024】
トレイ2は、ディスク100よりも大きな長方形の平板状部材からなり、ディスク100を搬送する。トレイ2の上面には、ディスク100を収納するための円形の凹部からなるディスク収納部10が設けられる。トレイ2には、スピンドルモータ3、記録/再生部5などとの接触を回避するための切欠き部11が設けられる。
【0025】
トレイ2は、図示しないトレイ移動機構により長手方向(図1および図2の左右方向に相当する。)へ移動可能であり、ディスク装置1の筐体外に突出されたディスク搬入出位置と、筐体内に挿入されたディスク装着位置との間で選択的に搬送される。トレイ2がディスク装着位置に搬送されると、ディスク収納部10に載置されたディスク100がスピンドルモータ3のターンテーブル12に装着される。
【0026】
スピンドルモータ3は、トレイ2により搬送されたディスク100を回転駆動させる回転駆動部として機能する。スピンドルモータ3は、図示しないモータベースに固定され、ディスク装着位置に搬送されたトレイ2のディスク収納部10の略中央部に対向して配置される。スピンドルモータ3の回転軸の先端には、ターンテーブル12が設けられ、ターンテーブル12には、光ディスク100の中心孔100bに着脱可能に嵌合されるディスク嵌合部12aが設けられる。
【0027】
トレイ2がディスク装着位置に搬送されると、図示しない昇降機構によりモータベースが上昇され、スピンドルモータ3およびターンテーブル12が上方に移動する。そして、ターンテーブル12のディスク嵌合部12aがディスク100の中心孔100bに嵌合され、ディスク収納部10から所定距離だけディスク100が持ち上げられる。これにより、ディスク100がターンテーブル12と一体的に回転可能な状態となり、スピンドルモータ3の回転によりディスク100が回転される。
【0028】
また、昇降機構によりスピンドルモータ3を下降させると、ターンテーブル12のディスク嵌合部12aがディスク100の中心孔100bから下方へ抜け出す。これにより、ターンテーブル12がディスク100から外れ、ディスク100がディスク収納部10上に載置される。この状態で、トレイ移動機構によりトレイ2をスピンドルモータ3から離れる方向へ移動させると、トレイ2の先端が筐体から所定量だけ突出する。
【0029】
スピンドルモータ3の上方には、チャッキング部14が設けられ、チャッキング部14は、スピンドルモータ3の上昇により持ち上げられたディスク100を上方から押え付ける。これにより、ディスク100は、チャッキング部14およびターンテーブル12により挟持され、スピンドルモータ3により回転されても、ターンテーブル12から抜け出なくなる。
【0030】
記録/再生部5は、スピンドルモータ3により回転されるディスク100の記録面に対するデータの記録および/または再生を行う。記録/再生部5は、光ピックアップ16と、ピックアップ16が搭載されるピックアップベース17と、ピックアップベース17をディスク100の半径方向へ案内する2本の第1ガイド軸18a,18bなどを含んで構成される。
【0031】
ピックアップ16は、ディスク100の記録面にレーザ光を照射してデータを記録し、および/または、記録面から反射されるレーザ光を受光して予め記録面に記録されているデータを再生する。
【0032】
ピックアップ16は、光源、対物レンズ、二軸アクチュエータ、光検出器を含んで構成される。光源は、例えばレーザダイオードからなり、レーザ光を発する。対物レンズは、光源から発せられたレーザ光を集光し、ディスク100の記録面に照射する。二軸アクチュエータは、対物レンズをディスク100の記録面に臨ませる。光検出器は、例えばフォトダイオードからなり、ディスク100の記録面から反射されたレーザ光を受光して記録面に記録されているデータを読取る。
【0033】
ピックアップ16は、ピックアップベース17に搭載されており、ピックアップベース17と一体的に移動される。ピックアップベース17には、ディスク100の半径方向に配置された第1ガイド軸18a,18bが摺動可能に挿通される。ピックアップベース17は、ピックアップモータを有するピックアップ移動機構により、第1ガイド軸18a,18bに沿って移動可能なように構成され、ピックアップベース17の移動に際して、ディスク100の記録面に対するピックアップ16によるデータの記録および/または再生が行われる。
【0034】
ピックアップ移動機構は、例えば、送りネジ機構、ラック・ピニオン機構、ベルト送り機構、ワイヤ送り機構により構成される。
【0035】
印刷部6は、回転されるディスク100の印刷面100aに可視情報を印刷する。印刷部6は、印刷ヘッド20、2本の第2ガイド軸22a,22b、インクカートリッジ群23、ヘッドキャップ24、吸引ポンプ25、廃インク吸収部26、ブレード27を含んで構成される。
【0036】
印刷ヘッド20は、ディスク100の印刷面100aに対向して配置され、印刷面100aとの対向面に複数のノズル30が設けられる。ノズル30は、ディスク100の半径方向(回転するディスク100が描く円の半径方向)に相当する基準線Bおよび基準線Bに平行する1つ以上のオフセット線Oのうち、2つ以上の線上に配列された複数のノズル列を構成する。ノズル列は、所定の色のインク滴を吐出するように設定される。なお、印刷ヘッド20の詳細については後述する。
【0037】
ノズル30は、シアン(C)用のノズル列31a、マゼンタ(L)用のノズル列31b、イエロー(Y)用のノズル列31c、ブラック(K)用のノズル列31dを構成する。ノズル30は、増粘インク、気泡、異物などを排出するために、印刷前、印刷後などにインクをダミー吐出する。
【0038】
印刷ヘッド20は、互いに平行する2本のガイド軸からなる第2ガイド軸22a,22bに対して摺動可能に保持され、ヘッド駆動部として機能するヘッド駆動モータ36を有するヘッド移動機構により第2ガイド軸22a,22bに沿って移動可能なように構成される。各ガイド軸22a,22bの一端は、トレイ2の移動方向と交差する方向に延在されたガイド軸支持部材37に固定され、他端は、トレイ2の移動方向と反対の方向に延在される。ディスク100に対する印刷を行わない際には、印刷ヘッド20は、ヘッド移動機構により移動され、ディスク100の半径方向外側の待機位置に退避する。
【0039】
ヘッド移動機構は、例えば、送りネジ機構、ラック・ピニオン機構、ベルト送り機構、ワイヤ送り機構により構成される。ヘッド移動機構は、例えばドットピッチp=43.2μmに対して±10μm程度の精度で、印刷ヘッド20をディスク100の半径方向に移動させることができる。
【0040】
インクカートリッジ群23は、シアン(C)用のインクカートリッジ23a、マゼンタ(M)用のインクカートリッジ23b、イエロー(Y)用のインクカートリッジ23c、ブラック(K)用のインクカートリッジ23dからなる。インクカートリッジ23a〜23dは、対応するノズル列31a〜31dの各ノズル30にインクを供給する。
【0041】
インクカートリッジ23a〜23dは、中空の容器を各々に有し、容器内に内蔵された多孔質体の毛細管力によりインクを蓄えている。インクカートリッジ23a〜23dの開口部は、連結部38a〜38dに各々に着脱可能に連結されており、連結部38a〜38dを介してノズル列31a〜31dの各ノズル30に連通される。
【0042】
ヘッドキャップ24は、印刷ヘッド20の待機位置に設けられ、待機位置に移動された印刷ヘッド20のノズル30が設けられた面に装着される。ヘッドキャップ24は、印刷ヘッド20に内蔵されたインクの乾燥を防止し、ノズル30への塵、埃などの付着を防止する。また、ヘッドキャップ24は、多孔質層を備えており、ノズル列の各ノズル30からダミー吐出されたインクを一時的に保持する。
【0043】
吸引ポンプ25は、チューブ39aを介してヘッドキャップ24に接続される。吸引ポンプ25は、印刷ヘッド20にヘッドキャップ24が装着されている状態で、ヘッドキャップ24の内部空間に負圧を生じさせる。これにより、ノズル30内のインクが吸引され、ノズル30からダミー吐出されてヘッドキャップ24に一時的に保持されたインクが吸引される。また、廃インク吸収部26は、チューブ39bを介して吸引ポンプ25に接続され、吸引ポンプ25により吸引されたインクを収容する。
【0044】
ブレード27は、印刷ヘッド20の待機位置と印刷位置との間に配置される。ブレード27は、印刷ヘッド20が待機位置と印刷位置との間を移動する際に、ノズル30の先端面に接触し、先端面に付着した塵、埃、インクなどを払拭する。
【0045】
[制御回路の構成]
次に、図3を参照しながら、ディスク装置1の制御回路の構成について説明する。図3は、ディスク装置1の制御回路の主要構成を示すブロック図である。
【0046】
ディスク装置1の制御回路は、制御部7、記憶部40、インタフェース部41、再生信号処理回路42、トレイ駆動回路43、モータ駆動回路44、信号処理部45、インク吐出駆動回路46、機構部駆動回路47を含んで構成される。
【0047】
インタフェース部41は、パーソナルコンピュータなどの外部装置をディスク装置1に電気的に接続する接続部である。インタフェース部41は、外部装置から供給される信号を制御部7に出力し、記録/再生部5によりディスク100の記録面から読み出された再生データを外部装置に出力する。外部装置からインタフェース部41に供給される信号は、例えば、ディスク100の記録面に記録するデータを表す記録データ信号、ディスク100の印刷面100aに印刷する可視情報を表す印刷データ信号である。
【0048】
記憶部40は、制御部7により実行される制御プログラム、制御プログラムの実行に必要な各種データを記憶している。制御部7は、中央制御部51、ドライブ制御部52、プリント制御部53を有し、記録/再生部5、印刷部6などを駆動制御する。
【0049】
中央制御部51は、ドライブ制御部52およびプリント制御部53により実行される制御プログラムなどを記憶部40から読出し、ドライブ制御部52およびプリント制御部53に出力する。また、中央制御部51は、インタフェース部41から供給される記録データ信号をドライブ制御部52に出力する。さらに、中央制御部51は、インタフェース部41から供給される印刷データ信号、ドライブ制御部52から供給される位置データ信号をプリント制御部53に出力する。
【0050】
ドライブ制御部52は、中央制御部51から供給されるプログラムに従って、スピンドルモータ3および図示しないピックアップ駆動モータの回転を制御し、ピックアップ16の駆動を制御する。具体的に、ドライブ制御部52は、モータ駆動回路44に制御信号を出力し、モータ駆動回路44を介してスピンドルモータ3、ピックアップ駆動モータ、およびトレイ駆動モータの回転を制御する。
【0051】
また、ドライブ制御部52は、ピックアップ16に制御信号を出力し、ピックアップ16から照射される光ビームがディスク100のトラックを追跡するようにトラックサーボおよびフォーカスサーボを制御する。
【0052】
ドライブ制御部52は、信号処理部45から位置データ信号、再生データ信号を供給され、位置データ信号を中央制御部51に出力し、再生データ信号を再生信号処理回路42に出力する。
【0053】
再生信号処理回路42は、ドライブ制御部52から供給される再生データ信号にエンコード処理、変調処理などを施し、処理後の再生データ信号をドライブ制御部52に出力する。トレイ駆動回路43は、ドライブ制御部52から供給される制御信号に基づいてトレイ駆動モータを駆動させることで、トレイ2が筐体の内外で搬送される。
【0054】
モータ駆動回路44は、ドライブ制御部52から出力される制御信号に基づいてスピンドルモータ3を駆動させることで、スピンドルモータ3のターンテーブル12に装着されたディスク100が回転駆動される。モータ駆動回路44は、ドライブ制御部52から出力される制御信号に基づいてピックアップ駆動モータを駆動させることで、ピックアップ16がピックアップベース17と一体でディスク100の半径方向へ移動される。
【0055】
信号処理部45は、ピックアップ16から供給されるRF信号に対して復調処理および誤り検出処理などを行い、再生データ信号を生成する。信号処理部45は、RF信号に基づいて同期信号などの特定パターンを有する信号、およびディスク100の位置データを示す位置データ信号を検出する。位置データ信号は、例えば、ディスク100の回転角を示す回転角信号、ディスク100の回転位置を示す回転位置信号などである。
【0056】
プリント制御部53は、中央制御部51から供給されるプログラムに従って、印刷ヘッド20およびヘッド駆動モータ36などを有する印刷部6を制御し、ディスク100の印刷面100aに対する印刷を実行させる。プリント制御部53は、中央制御部51から供給される印刷データ信号により可視情報を得て、可視情報に基づいてインク吐出データを生成する。プリント制御部53は、インク吐出データ、および中央制御部51から供給される位置データ信号に基づいて、印刷部6を制御する制御信号を生成し、インク吐出駆動回路46および機構部駆動回路47に出力する。
【0057】
インク吐出駆動回路46は、プリント制御部53から供給される制御信号に基づいて印刷ヘッド20を駆動させる。これにより、印刷ヘッド20に設けられたノズル列31a〜31dの各ノズル30からインク滴が吐出され、回転するディスク100の印刷面100aに滴下される。機構部駆動回路47は、プリント制御部53から供給される制御信号に基づいて、ヘッドキャップ24、吸引ポンプ25、ブレード27、およびヘッド駆動モータ36を駆動させる。ヘッド駆動モータ36の駆動により、印刷ヘッド20がディスク100の半径方向へ移動される。
【0058】
[印刷方法]
次に、図4および図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係るディスク装置1の印刷方法について説明する。図4は、ディスク装置1による印刷動作の流れを示すフロー図であり、図5は、インク吐出データの生成処理の流れを示すフロー図である。
【0059】
印刷動作を開始すると、ディスク装置1は、まず、以下で示すインク吐出データの生成処理を含むデータ処理を行う(ステップS10)。
【0060】
インク吐出データの生成に用いる可視情報は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に色分けされた複数のドットを二軸直交座標(XY座標)上に分布させて表現される画像データであり、各ドットは、各色の明るさを表す階調値を有する。可視情報は、例えば、ディスク100の記録面、ディスク装置1以外の外部装置などに記憶されており、中央制御部51を介してプリント制御部53に入力される。
【0061】
インク吐出データの生成処理に際して、まず、プリント制御部53は、R、G、B各色の階調値で表現された画像データを、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)各色のドット(画素)分布により表現されるCMYKデータに変換する(S102)。
【0062】
CMYKデータは、Cデータ、Mデータ、YデータおよびKデータに分割される。Cデータは、シアンを設定された複数の画素分布により表現され、Mデータは、マゼンタを設定された複数の画素分布により表現される。同様に、Yデータは、イエローを設定された複数の画素分布により表現され、Kデータは、ブラックを設定された複数の画素分布により表現される。CMYKデータを表現する各ドットは、画像データに基づいて、例えば0〜255(8ビット)の階調値を有する。
【0063】
ステップS104以降の処理は、分割されたCデータ、Mデータ、YデータおよびKデータに対して行われる。よって、ステップS104以降の処理では、CMYKデータに対する処理は、Cデータ、Mデータ、YデータおよびKデータの各々に対する処理を意味する。
【0064】
次に、プリント制御部53は、二軸直交座標で表されるCMYKデータを極座標(Rθ座標)で表される極座標データに変換する(S104)。ここで、プリント制御部53は、ニアレストネイバー法、バイリニア法、ハイキュービック法などによりCMYKデータの解像度を変換し、ディスク100の印刷面100aのサイズに応じた極座標データを生成する。
【0065】
なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る印刷方法では、ディスク100の半径方向に印刷ヘッド20を微小移動させながら印刷が行われる。このため、プリント制御部53は、印刷ヘッド20の微小移動を予め考慮した上で極座標への変換を行うようにしてもよい。
【0066】
次に、プリント制御部53は、極座標データに対する内外周濃度補正演算を行う(S106)。具体的に、プリント制御部53は、極座標データにドット密度補正を施し、ドット補正極座標データを生成する。ドット密度補正では、極座標データの各ドットの階調値に対して、補正用の重み付けに基づいて、各ドットが表現する明るさが調整される。
【0067】
次に、プリント制御部53は、ドット補正極座標データを誤差拡散法により2値化し、2値化極座標データを生成する(S108)。2値化極座標データは、ディスク100の印刷面100a上で各ドットが対応する位置にインク滴が滴下されるか否かを示すデータである。
【0068】
ドット補正極座標データの各ドットの階調値は、0〜255(8ビット)で表されており、ドット補正極座標データを2値化した2値化極座標データの各ドットの階調値は、0と255(1ビット)で表される。2値化極座標データのドットの階調値が255であれば、対応する印刷面100aの位置にインク滴が滴下され、階調値が0であれば、滴下されない。
【0069】
次に、プリント制御部53は、印刷ヘッド20の位置に応じてデータを並び替える(S110)。具体的に、インク吐出データは、印刷ヘッド20に設けられたノズル列のノズル数に応じて並び替えられる。これは、ノズル列により印刷可能な範囲が印刷面100aの全範囲より小さいので、印刷面100aの全範囲を印刷する場合に、ディスク100の半径方向に印刷ヘッド20を移動させる必要があるためである。
【0070】
なお、詳細は後述するが、いくつかの実施形態に係る印刷方法では、ディスク100の回転方向に連続する複数の印刷位置に対して順次に印刷が行われる代わりに、所定の周期毎の印刷位置で印刷が行われる。この場合、プリント制御部53は、実際の印刷順序に対応するように、インク吐出データを並び替える。
【0071】
データ処理が完了すると、ディスク装置1は、ピックアップ16の制御およびディスク100の回転制御を起動する(S12)。また、ディスク装置1は、印刷ヘッド20に対して印刷開始前のメンテナンス処理を行う(S14)。
【0072】
ここで、ディスク100の印刷面100aは、ノズル列のノズル数(ノズル列の長さ;「ノズル列幅」とも称される。)に応じてディスク100の半径方向に連続する同心円状の複数の印刷領域0、1、…、Lに区分される。そして、各印刷領域0、1、…、Lに対して、ディスク100を回転させながら、一連の印刷タイミング0、1、…、Nで印刷が行われる。
【0073】
ディスク装置1は、例えば印刷領域0に対応する印刷開始位置に印刷ヘッド20を移動させた状態で印刷処理を開始する(S16)。ディスク装置1は、まず、印刷領域0に対して、ディスク100を回転させながら、一連の印刷タイミング0、1、…、Nで印刷を行う(S18)。
【0074】
具体的に、プリント制御部53は、インク吐出データに基づいて制御信号を生成し、制御信号をインク吐出駆動回路46に出力する。これにより、回転するディスク100に対してノズル列の各ノズル30からインク滴が吐出され、各印刷タイミングに対応する印刷位置に可視情報が印刷される。
【0075】
次に、ディスク装置1は、最後の印刷領域Lに対する印刷が完了するまで(S20)、隣接する印刷領域1、2、…、Lに対応する位置に印刷ヘッド20を順次に移動させ(S22)、各印刷領域1、2、…、Lに対して、一連の印刷タイミング0、1、…、Nで印刷を行う。そして、ディスク装置1は、印刷領域Lに対する印刷が完了すると(S20)、印刷ヘッド20に対して印刷終了後のメンテナンス処理を行う(S24)。そして、ディスク装置1は、ピックアップ16の制御およびディスク100の回転制御を停止し(S26)、印刷動作を終了する。
【0076】
[印刷ヘッド20の構成]
次に、図6を参照しながら、本発明の一実施形態に係るディスク装置1の印刷ヘッド20について説明する。図6は、ディスク装置1の印刷ヘッド20を示す模式図である。
【0077】
印刷ヘッド20は、複数のノズル30を有し、複数のノズル30は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色毎のノズル列を構成する。なお、以下では、説明の便宜上、ブラック(K)のノズル列を省略して説明する。色毎のノズル列は、インク供給溝32を介在してノズル列ピッチs=0.6mmで配置された2列のノズル列からなる。各ノズル列は、ピッチ2p=84.6μmで配置された複数のノズル30からなる。色毎のノズル列は、ノズルピッチp=42.3μmで千鳥配置された複数のノズル30により構成される。
【0078】
図6に示すように、シアンのノズル列は、オフセット線O、O上に配置され、マゼンタのノズル列は、オフセット線O、O上に配置され、イエローのノズル列は、オフセット線O、O上に配置されている。なお、図6には、色毎のノズル列を構成する複数のノズル30について、ディスク100の外周側(図6の上側)に配置されるノズル30から内周側(図6の下側)に配置されるノズル30までノズル番号0、1、…、7が付されている。
【0079】
複数のノズル30を千鳥配置にすると、千鳥配置にせずに同一の印刷解像度(例えば600dpi)を得る場合に比して、同一のノズル列上で隣接するノズル30(例えば、ノズル番号0、2のノズル30)間で所定の距離が確保される。これにより、印刷ヘッド20の製造時に要求される加工精度を低下させることができ、また、印刷ヘッド20の構造的強度を増加させることができる。
【0080】
[印刷不良]
次に、図7および図8を参照しながら、複数のノズル列を有するRθ走査方式の印刷ヘッド20を用いる場合に生じる印刷不良について説明する。図7は、Rθ走査方式の印刷ヘッド20とディスク100との位置関係を模式的に示す図である。図8は、対向する近傍ノズルがディスク100上で通過する経路の間隔を示すグラフである。
【0081】
Rθ走査方式の印刷ヘッド20では、回転するディスク100の半径方向に相当する基準線Bおよび基準線Bに平行する1つ以上のオフセット線Oのうち、少なくとも2つ以上の線上に2列以上のノズル列が色毎に配置される。なお、図7に示す場合では、基準線Bに平行する6つのオフセット線O〜Oに対して、シアン、マゼンタ、およびイエロー、各色のノズル列が2列ずつ、合計6列のノズル列が配置されている。
【0082】
図6および図7に示す場合、シアンのノズル列は、基準線Bの左に2.5s=1.5mmおよび1.5s=0.9mmでオフセットされたオフセット線O、O上に、2列のノズル列が各々に配置されている。マゼンタのノズル列は、基準線Bの左右にs/2=0.3mmでオフセットされたオフセット線O、O上に、2列のノズル列が各々に配置されている。イエローのノズル列は、基準線Bの右に1.5s=0.9mmおよび2.5s=1.5mmでオフセットされたオフセット線O、O上に、2列のノズル列が各々に配置されている。
【0083】
印刷ヘッド20は、図7に示すように配置された状態で、回転するディスク100(図7では、ディスク100の回転方向RDとして示されている。)の上方でディスク100の半径方向に移動する。これにより、印刷ヘッド20が移動すると、シアンの2列のノズル列は、基準線Bから左1.5mmおよび左0.9mmのオフセット線O、O上を各々に移動し、マゼンタの2列のノズル列は、基準線Bから左右0.3mmのオフセット線O、O上を各々に移動する。
【0084】
図8には、マゼンタおよびシアンの色毎のノズル列について、ディスク100上で対向する近傍ノズル(ノズル番号0、1のノズル30)が通過する経路の間隔(半径差)△rが曲線Mおよび曲線Cとして各々に示されている。図8には、マゼンタおよびシアンの対向する近傍ノズルが通過する経路の間隔△rが縦軸に示され、印刷ヘッド20の中心位置Rがディスク100の回転中心RCからの距離として示されている。
【0085】
図8に示すように、マゼンタのノズル30の経路は、印刷ヘッド20の中心位置Rに係わらず、一定の間隔△r=p=42.3μmを有する。ここで、ディスク100の回転中心RCからノズル番号0、1のノズル30までの距離r’、r’は、各々にr’=√(r+(0.5s))、r’=√(r+(0.5s))となる。なお、r、rは、ディスク100の回転中心RCからノズル番号0、1のノズル30までの基準線B上の距離である。つまり、ノズル番号0、1のノズル30までの距離r’、r’には同一のオフセット加算項(0.5s)が含まれるので、マゼンタのノズル30の経路は、印刷ヘッド20の中心位置Rに係わらず一定の間隔△rを有する。
【0086】
一方、シアンのノズル30の経路は、印刷ヘッド20の中心位置R=60mmで間隔△r=30.3μm、R=40mmで△r=24.3μm、R=20mmで△r=6.2μmを有する。ここで、ディスク100の回転中心RCからノズル番号0、1のノズル30までの距離r’、r’は、各々にr’=√(r+(2.5s))、r’=√(r+(1.5s))となる。
【0087】
つまり、ノズル30までの距離r’、r’には互いに異なるオフセット加算項(2.5s)および(1.5s)が含まれるので、シアンのノズル30の経路は、印刷ヘッド20の中心位置Rに応じて、異なる間隔△rを有する。また、印刷ヘッド20の中心位置Rが小さくなるディスク100の内周側では、ノズル30までの距離r’、r’のうち、半径項rおよびrに対するオフセット加算項(2.5s)および(1.5s)の割合が相対的に大きくなる。このため、シアンのノズル30の経路について、間隔△rが減少する。
【0088】
これにより、ディスク100の内周側ほど、対向する近傍ノズルが通過する経路の重なり度合いが大きくなり、換言すれば、印刷ドットが存在せずに、印刷面100aの下地が露出する領域が増加してしまう。結果として、同一濃度の印刷データを印刷した場合にも、濃淡ムラが発生し、フルカラーで印刷した場合には、色ムラが発生し、印刷品質が低下してしまう。
【0089】
[第1の実施形態に係る印刷処理]
次に、図9〜図11を参照しながら、前述した印刷不良を解消するための本発明の第1の実施形態に係る印刷方法について説明する。図9は、第1の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。図10は、図9に示す印刷処理の手順を示す模式図である。図11は、連続する2つの印刷タイミング(ディスク100の回転方向タイミング)で印刷ヘッド20を反復的に微小移動させながら隣接する印刷位置で印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【0090】
図10および図11には、説明の便宜上、マゼンタおよびシアンの各ノズル列を構成するノズル番号0〜3のノズル30に対応する印刷ドットの配置のみが示されている。なお、図10および図11には、同一の印刷タイミングで配置される印刷ドットが同一のハッチングパターンで示されている。図11には、図面上部に、対比のために従来の印刷方法による印刷ドットの配置が示され、図面下部に、本実施形態に係る印刷方法による印刷ドットの配置が示されている。また、図11には、印刷ヘッド20の中心位置RがR=20mm、40mm、60mmの場合における印刷ドットの配置が各々に示されている。なお、後述する図12〜図14についても、上記図11と同様に説明される。
【0091】
図9〜図11を参照しながら、従来の印刷方法および本実施形態に係る印刷方法について説明する。
【0092】
従来の印刷方法では、図11の上部に示すように、印刷タイミング0で、印刷タイミング0に対応する印刷位置に印刷ドットが配置される。そして、所定の回転角度によるディスク100の回転を伴い、後続する印刷タイミング1、2、3では、印刷ヘッド20の微小移動を伴わずに、印刷タイミング1、2、3に対応する印刷位置に印刷ドットが配置される。
【0093】
このため、図8で説明したように、近傍ノズルが通過する経路の間隔△rは、マゼンタのノズル列では、ノズルピッチp=42.3μmで一定となるが、シアンのノズル列では、ディスク100の内周側ほど、ノズルピッチpよりも小さくなる。ここで、近傍ノズルとは、例えば、ノズル番号0、1のノズル30、ノズル番号2、3のノズル30を意味する。
【0094】
これにより、シアンのノズル列では、ディスク100の内周側に対応する印刷領域ほど、近傍ノズルの通過する経路の重なり度合いが大きくなる。そして、例えば、印刷ヘッド20の中心位置R=20mmの場合で顕著に示されるように、印刷ドットが存在せずに、印刷面100aの下地が露出する領域MAが増加してしまう。
【0095】
一方、本実施形態に係る印刷方法では、図4に示したステップS16により印刷処理が開始されると、ディスク装置1は、図9に示す手順に従って印刷処理を行う。なお、図9には、図4に示したステップS14がステップS202として示されている。
【0096】
ディスク装置1は、まず、最初の印刷領域0に対して、最初の印刷タイミング0で、印刷タイミング0に対応する印刷位置に印刷ドットを配置する(S204)。次に、ディスク装置1は、ディスク100の半径方向で印刷ヘッド20を微小移動させ(S206)、次の印刷タイミング1で、印刷タイミング1に対応する印刷位置に印刷ドットを配置する(S208)。ディスク装置1は、印刷タイミング1以降、最後の印刷タイミングNまで(S210)、ディスク100の半径方向で印刷ヘッド20を微小移動させながら(S206)、印刷タイミング2、3、…、Nに対応する印刷位置に印刷ドットを順次に配置する(S208)。
【0097】
具体的に、プリント制御部53は、インク吐出データに基づいて制御信号を生成し、制御信号をインク吐出駆動回路46および機構部駆動回路47に出力する。そして、インク吐出駆動回路46は、制御信号に基づいて、印刷ヘッド20に設けられたノズル列のノズル30からインク滴が吐出され、回転するディスク100の印刷面100aに滴下されるように、印刷ヘッド20を駆動する。また、機構部駆動回路47は、制御信号に基づいて、ディスク100の半径方向で印刷ヘッド20が微小移動するように、ヘッド駆動モータ36を駆動させる。
【0098】
そして、印刷領域0に対する印刷が完了すると、ディスク装置1は、次の印刷領域1に対応する位置に印刷ヘッド20を移動させ(S214)、印刷領域1に対して、印刷領域0の場合と同様の手順で印刷を行う。さらに、ディスク装置1は、最後の印刷領域Lまで(S212)、同様の手順で印刷領域2、3、…、Lに対する印刷を行う。
【0099】
前述した手順により、図10に示すように、印刷タイミング0で、印刷タイミング0に対応する印刷が行われた後に、印刷ヘッド20が半径方向でディスク100の内周側にドットピッチpだけ微小移動され、印刷タイミング1で、印刷タイミング1に対応する印刷が行われる。次に、印刷ヘッド20がディスク100の外周側にドットピッチpだけ微小移動され、印刷タイミング2で、印刷タイミング2に対応する印刷が行われる。そして、印刷ヘッド20がディスク100の内周側にドットピッチpだけ微小移動され、印刷タイミング3で、印刷タイミング3に対応する印刷が行われる。
【0100】
ここで、印刷タイミング0〜3に対応する印刷位置は、連続的に隣接している。このため、印刷タイミング0〜3で、印刷タイミング毎に印刷ヘッド20が微小移動されながら、印刷タイミング0〜3に対応する互いに隣接する印刷位置で印刷が行われる。特に、図10および図11に示す場合では、連続する2つの印刷タイミングで、印刷ヘッド20がノズルピッチpで反復的に微小移動されながら、各印刷タイミングに対応する互いに隣接する印刷位置で印刷が行われる。
【0101】
これにより、図11の下部に示すように、近傍ノズルが通過する経路の重なり度合いを小さくすることができ、印刷面100a上で印刷ドットが存在する位置が空間的に平均化されるので、印刷面100aの下地が露出する領域MAの発生を抑制することができる。
【0102】
次に、図12〜図14を参照しながら、本実施形態に係る印刷方法の変形例について説明する。図12は、連続する印刷タイミングで印刷ヘッド20を移動させるとともに、連続する4つの印刷タイミング毎に印刷ヘッド20を元の位置に復帰させながら隣接する印刷位置で印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。図13および図14は、各々に図11および図12に示す場合に比して、ディスク100の回転方向での解像度を2倍にして印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【0103】
図12に示す変形例では、印刷タイミング0で、印刷タイミング0に対応する印刷が行われた後に、印刷ヘッド20がディスク100の内周側にドットピッチpの1/2=0.5pだけ微小移動され、印刷タイミング1で、印刷タイミング1に対応する印刷が行われる。次に、印刷タイミング2、3で、印刷ヘッド20がディスク100の内周側にさらに0.5pずつ微小移動された状態で、印刷タイミング2、3に各々に対応する印刷が行われる。そして、印刷ヘッド20がディスク100の外周側に1.5pだけ移動され、印刷タイミング0の場合と同じ印刷ヘッド20の配置状態で、印刷タイミング4で、印刷タイミング4に対応する印刷が行われる。
【0104】
図12に示す場合では、連続する印刷タイミングで、印刷ヘッド20が0.5pで微小移動されるとともに、連続する4つの印刷タイミング毎に、印刷ヘッド20が1.5pで元の位置に復帰されながら、各印刷タイミングに対応する隣接する印刷位置で印刷が行われる。これにより、図11に示した場合よりも良好な印刷品質を得られることが確認されている。
【0105】
図13および図14に示す変形例では、各々に図11および図12に示す場合に比して、ディスク100の回転方向での解像度を2倍にして、つまり、印刷タイミング0〜3の時間間隔を1/2にして印刷が行われる。これにより、各々に図11および図12に示した場合よりも、さらに良好な印刷品質を得られることが確認されている。なお、図13および図14に示す場合では、ディスク100の回転方向での解像度を2倍にする以外は、各々に図11および図12に示す場合と同様の手順で印刷処理が行われるので、詳細な説明を省略する。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷方法によれば、第1の印刷タイミングで所定の印刷位置で印刷が行われ、ノズル30の経路が微小移動された後に、第1の印刷タイミングでの印刷位置に隣接する印刷位置に対して、後続の第2の印刷タイミングで印刷が行われる。これにより、従来の印刷方法に比して印刷時間を実質的に増加させずに、印刷不良の発生を抑制することができる。
【0107】
<第2の実施形態>
[第2の実施形態に係る印刷処理]
第1の実施形態に係る印刷方法では、印刷タイミング毎に印刷ヘッド20を微小移動させ、ディスク100の内周方向および外周方向の双方に印刷ヘッド20を微小移動させる。このため、従来の印刷方法の場合と同様の印刷時間で印刷を行うことができるが、印刷ヘッド20を高頻度および反復的に微小移動させることで、バックラッシュが生じ易くなる。
【0108】
次に、図15および図16を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る印刷方法について説明する。図15は、第2の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。図16は、図15に示す印刷処理の手順を示す模式図である。
【0109】
本実施形態に係る印刷方法では、図4に示したステップS16により印刷処理が開始されると、ディスク装置1は、図15に示す手順に従って印刷処理を行う。
【0110】
ディスク装置1は、まず、例えば印刷領域0に対して、ディスク100の1回転目の印刷タイミング0、1、…、(N−1)/2(N:奇数)で、各印刷タイミングに対応する印刷位置に印刷ドットを順次に配置する(S224)。ここで、印刷タイミング0、1、…、(N−1)/2に対応する印刷位置は、第1の実施形態に係る印刷方法で説明した互いに隣接する印刷位置のうち、1つおきの位置に相当する。ディスク装置1は、次に、ディスク100の半径方向で印刷ヘッド20を(図16の場合ノズルピッチpで)微小移動させ(S226)、2回転目の印刷タイミング(N−1)/2+1、(N−1)/2+2、…、Nで、各印刷タイミングに対応する印刷位置に印刷ドットを順次に配置する(S228)。
【0111】
ここで、印刷タイミング(N−1)/2+1、(N−1)/2+2、…、Nに対応する印刷位置は、印刷タイミング0、1、…、(N−1)/2に対応する印刷位置に対して、各々に隣接している。
【0112】
そして、印刷領域0に対する印刷が完了すると、ディスク装置1は、次の印刷領域1に対応する位置に印刷ヘッド20を移動させ(S232)、印刷領域1に対して、印刷領域0の場合と同様の手順で印刷を行い、さらに、ディスク装置1は、最後の印刷領域Lまで(S230)、同様の手順で印刷領域2、3、…、Lに対する印刷を行う。
【0113】
ここで、印刷タイミングは、隣接する印刷位置で一定の周期を有している。つまり、連続的に隣接する印刷位置0〜N(N:奇数)を想定すると、印刷タイミング0、1、…、(N−1)/2で、印刷位置0、2、N−1に対する印刷が各々に行われた後に、印刷ヘッド20が微小移動され、タイミング(N−1)/2+1、(N−1)/2+2、…、Nで印刷位置1、3、…、Nに対する印刷が各々に行われる。
【0114】
なお、図16では、図11に示した印刷ドットの配置を行う場合について説明したが、図12に示した印刷ドットの配置を行う場合についても同様に説明される。つまり、図12に示した印刷ドットの配置を行う場合には、印刷タイミングは、隣接する複数の印刷位置(例えば4つの印刷位置)で一定の周期を有している。
【0115】
具体的には、連続的に隣接する印刷位置0〜N(N:4の倍数−1)を想定すると、第1に、ディスク100の1回転目の印刷タイミング0、1、…(N+1)/4−1で、印刷位置0、4、…、N−3に対する印刷が各々に行われた後に、印刷ヘッド20が微小移動される。同様に、第2に、2回転目の印刷タイミング(N+1)/4、(N+1)/4+1、…、(N+1)/2−1で、印刷位置1、5、…、N−2に対する印刷が各々に行われた後に、印刷ヘッド20が微小移動される。
【0116】
第3に、3回転目の印刷タイミング(N+1)/2、(N+1)/2+1、…、(N+1)*3/4−1で、印刷位置2、6、…、N−1に対する印刷が各々に行われた後に、印刷ヘッド20が微小移動される。第4に、4回転目の印刷タイミング(N+1)*3/4、(N+1)*3/4+1、…、Nで、印刷位置1、5、…、Nに対する印刷が各々に行われる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷方法によれば、連続する第1の印刷タイミング群で所定の周期毎の印刷位置で印刷が行われ、ノズル30の経路が微小移動された後に、第1の印刷タイミング群での印刷位置に隣接する印刷位置に対して、連続する第2の印刷タイミング群で印刷が行われる。これにより、印刷ヘッド20を高頻度および反復的に微小移動させずに、印刷不良の発生を抑制することができる。よって、本実施形態に係る印刷方法によれば、第1の実施形態に係る印刷方法に比してバックラッシュが生じ難くなる。
【0118】
なお、本実施形態に係る印刷方法では、ディスク100の回転回数が増加するので、印刷時間は、図11および図12に示す印刷ドットの配置を行う場合で、従来の印刷方法の場合に比して、各々に約2倍および約4倍となる。しかし、印刷ヘッド20の吐出駆動周波数に合わせて印刷時のディスク100の回転数を2倍、4倍にすることで、印刷時間の増加を抑制することができる。
【0119】
<第3の実施形態>
[第3の実施形態に係る印刷処理]
ところで、ディスク100が高速で回転駆動されると、回転するディスク100にインク滴の吐出周波数を対応させることが困難となる場合がある。このため、所定の吐出周波数によりインク滴を吐出させて印刷を行うために、ディスク100の回転方向に間引いた印刷を複数回重ねて印刷を行う場合がある。
【0120】
次に、図17および図18を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る印刷方法について説明する。図17は、第3の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。図18は、ディスク100の回転方向に間引いた印刷を複数回重ねて印刷する場合の印刷処理の手順を示す模式図である。
【0121】
図18Aには、ディスク100の回転方向に間引いた印刷を行う場合の印刷処理の一例が示されている。ディスク100の印刷面100aは、ノズル列のノズル数(ノズル列の長さ)に応じてディスク100の半径方向に隣接する同心円状の複数の第1印刷領域(PA1)0、1、…、Lに区分される。また、各第1印刷領域0、1、…、Lは、ディスク100の円周方向に隣接する第2印刷領域(PA2)0、1、…、Mに区分される。そして、各第2印刷領域0、1、…、Mに対して、ディスク100が回転している状態で、一連の印刷タイミング0、1、…、N(例えばN=31)で印刷が行われる。なお、図18A、18Bでは、説明の便宜上、印刷ヘッド20が1列のノズル列からなる印刷ヘッド20として模式的に示されている。
【0122】
図18Aに示す例では、例えば第1印刷領域0に対して、ディスク100を32周回転させる間に、ディスク100の回転方向に間引いた印刷を32回重ねることで、印刷が行われる。
【0123】
具体的には、連続的に隣接する印刷位置0〜31を想定すると、1周目では、各第2印刷領域0、1、…、Mについて、印刷タイミング0に対応する印刷位置0で印刷が行われ、2周目では、各第2印刷領域0、1、…、Mについて、印刷タイミング1に対応する印刷位置1で印刷が行われる。そして、3周目以降では、各第2印刷領域0、1、…、Mについて、印刷タイミング2〜31に対応する印刷位置2〜31で印刷が順次に行われる。
【0124】
さらに、第1印刷領域0に対する印刷が完了すると、第1印刷領域1に対応する位置に印刷ヘッド20が移動され、第1印刷領域0の場合と同様に、第1印刷領域1に対する印刷が開始される。
【0125】
図18Bには、図11に示した印刷ドット配置を用いて、図18Aに示す印刷処理を行う場合の手順が示されている。図18Bに示す例では、ディスク100を32周回転させる間に、一定の周期でディスク100の回転方向に間引いた印刷を32回重ねることで印刷が行われる。
【0126】
具体的には、1周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング0に対応する印刷位置0で印刷が行われ、2周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング1に対応する印刷位置2で印刷が行われ、3周目〜16周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング2〜15に対応する印刷位置4、6、…、30で印刷が順次に行われる。
【0127】
16周目で、各第2印刷領域について、印刷位置30で印刷が行われた後に、ディスク100の半径方向にドットピッチpで印刷ヘッド20が微小移動される。そして、17周目〜32周目では、印刷ヘッド20が微小移動された状態で、各第2印刷領域0について、印刷タイミング16〜31に対応する印刷位置1、3、…、31で印刷が順次に行われる。
【0128】
なお、図18Bでは、図11に示した印刷ドットの配置を行う場合について説明したが、図12に示した印刷ドットの配置を行う場合についても同様に説明される。つまり、図12に示した印刷ドットの配置を行う場合には、印刷タイミングは、隣接する複数の印刷位置(例えば4つの印刷位置)で一定の周期を有している。
【0129】
具体的には、1周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング0に対応する印刷位置0で印刷が行われ、2周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング1に対応する印刷位置4で印刷が行われ、3周目〜8周目では、各第2印刷領域0について、印刷タイミング2〜7に対応する印刷位置8、12、…、28で印刷が行われる。
【0130】
8周目で、各第2印刷領域について、印刷位置28で印刷が行われた後に、ディスク100の半径方向にドットピッチpの1/2に相当する0.5pで印刷ヘッド20が微小移動される。そして、9周目〜16周目では、印刷ヘッド20が微小移動された状態で、各第2印刷領域0について、印刷タイミング8〜15に対応する印刷位置1、5、…、29で印刷が順次に行われる。
【0131】
そして、同様に、印刷タイミング15の後に、ディスク100の半径方向に0.5pで印刷ヘッド20が微小移動され、17周目〜24周目で、印刷タイミング16〜23に対応する印刷位置2、6、…、30で印刷が順次に行われる。また、印刷タイミング23の後に、ディスク100の半径方向に0.5pで印刷ヘッド20が微小移動され、25周目〜32周目で、印刷タイミング24〜31に対応する印刷位置3、7、…、31で印刷が順次に行われる。
【0132】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷方法によれば、印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷領域毎に、連続する第1の印刷タイミング群で所定の周期毎の印刷位置で印刷が行われ、ノズル30の経路が微小移動された後に、第1の印刷タイミング群での印刷位置に隣接する印刷位置に対して、連続する第2の印刷タイミング群で印刷が行われる。これにより、ディスク100の回転方向に間引いた印刷を複数回重ねて印刷を行う場合でも、印刷不良の発生を抑制することができる。よって、本実施形態に係る印刷方法によれば、所定の吐出周波数によりインク滴を吐出させて印刷を行うことができる。
【0133】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0134】
上記実施形態の説明では、複数のノズル30が千鳥配置された印刷ヘッド20の場合について説明した。しかし、従来技術の説明でもふれたように、本発明は、千鳥配置された印刷ヘッド20のみを適用対象とするものではなく、例えば、図20Bおよび図21Bに示したように複数列配置された印刷ヘッド20をも適用対象とするものである。
【0135】
本発明は、回転する印刷対象物(例えばディスク100)が描く円の半径方向に相当する基準線Bおよび基準線Bに平行する1つ以上のオフセット線Oのうち、2つ以上の線上に配列される2列以上のノズル列を有し、ノズル列のノズル30から同一色のインク滴を吐出する印刷ヘッド20を適用対象とする。特に、本発明は、基準線Bに対して他の全てのノズル列と線対称に配置されていないノズル列を含む2列以上のノズル列を有する印刷ヘッド20に好適に適用される。
【0136】
また、上記実施形態の説明では、ドットピッチpまたはドットピッチpの1/2で、印刷ヘッド20を微小移動させることで、印刷不良の発生を抑制する場合について説明した。しかし、印刷ムラを抑制するという観点からすれば、ドットピッチp以上で印刷ヘッド20を微小移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】ディスク装置の主要構成を示す平面図である。
【図2】ディスク装置の主要構成を示す側面図である。
【図3】ディスク装置の制御回路の主要構成を示すブロック図である。
【図4】ディスク装置による印刷動作の流れを示すフロー図である。
【図5】インク吐出データの生成処理の流れを示すフロー図である。
【図6】ディスク装置の印刷ヘッドを示す模式図である。
【図7】Rθ走査方式の印刷ヘッドとディスクとの位置関係を模式的に示す図である。
【図8】対向する近傍ノズルがディスク上で通過する経路の間隔を示すグラフである。
【図9】第1の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。
【図10】図9に示す印刷処理の手順を示す模式図である。
【図11】連続する2つの印刷タイミングで印刷ヘッドを反復的に微小移動させながら隣接する印刷位置で印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【図12】連続する印刷タイミングで印刷ヘッドを移動させるとともに、連続する4つの印刷タイミング毎に印刷ヘッドを元の位置に復帰させながら隣接する印刷位置で印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【図13】図11に示す場合に比して、ディスクの回転方向での解像度を2倍にして印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【図14】図12に示す場合に比して、ディスクの回転方向での解像度を2倍にして印刷を行う場合の印刷ドットの配置を示す模式図である。
【図15】第2の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。
【図16】図15に示す印刷処理の手順を示す模式図である。
【図17】第3の実施形態に係る印刷処理の手順を示すフロー図である。
【図18A】ディスクの回転方向に間引いた印刷を複数回重ねて印刷する場合の印刷処理の手順を示す模式図である。
【図18B】印刷ヘッドを微小移動させながら、ディスクの回転方向に間引いた印刷を複数回重ねて印刷する場合の印刷処理の手順を示す模式図である。
【図19A】XY走査方式の千鳥配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【図19B】Rθ走査方式の一列配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【図20A】Rθ走査方式の千鳥配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【図20B】Rθ走査方式の複数列配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【図21A】Rθ走査方式の千鳥配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【図21B】Rθ走査方式の複数列配置を有する印刷ヘッドでノズルがディスク上を通過する経路を示す図である。
【符号の説明】
【0138】
1 ディスク装置
3 スピンドルモータ
20 印刷ヘッド
30 ノズル
36 ヘッド駆動モータ
53 プリント制御部
100 ディスク
B 基準線
O オフセット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物を回転させる回転駆動部と、
回転する前記印刷対象物が描く円の半径方向に相当する基準線および前記基準線に平行する1つ以上のオフセット線のうち、2つ以上の線上に配列される2列以上の吐出ノズル列を有し、前記2列以上の吐出ノズル列の吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出する印刷ヘッドと、
前記各吐出ノズル列が前記基準線上または前記オフセット線上で微小移動するように前記印刷ヘッドを移動させるヘッド駆動部と、
前記吐出ノズル列の長さに対応する領域を印刷するために、回転する前記印刷対象物上を通過する前記吐出ノズルの経路が微小移動するように前記ヘッド駆動部を制御し、回転する前記印刷対象物上を微小移動された経路で通過する前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御する印刷制御部と、
を備える、印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御部は、前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置に対して、第1の印刷タイミングでは、所定の印刷位置で前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御し、前記吐出ノズルの経路が微小移動するように前記ヘッド駆動部を制御した後、後続の第2の印刷タイミングでは、前記第1の印刷タイミングでインク滴が吐出された印刷位置に隣接する印刷位置に対して、前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御部は、前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置に対して、連続する第1の印刷タイミング群では、前記連続する複数の印刷位置のうち所定の周期毎の印刷位置で前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御し、前記吐出ノズルの経路が微小移動するように前記ヘッド駆動部を制御した後、連続する第2の印刷タイミング群では、前記第1の印刷タイミング群でインク滴が吐出された印刷位置に隣接する印刷位置に対して、前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置が定められ、前記複数の印刷位置が前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷領域に区分され、
前記印刷制御部は、前記各印刷領域における前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置に対して、第1の印刷タイミングでは、前記各印刷領域における所定の印刷位置で前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御し、前記吐出ノズルの経路が微小移動するように前記ヘッド駆動部を制御した後、後続の第2の印刷タイミングでは、前記各印刷領域における前記第1の印刷タイミングでインク滴が吐出された印刷位置に隣接する印刷位置に対して、前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置が定められ、前記複数の印刷位置が前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷領域に区分され、
前記印刷制御部は、前記各印刷領域における前記印刷対象物の回転方向に連続する複数の印刷位置に対して、連続する第1の印刷タイミング群では、前記各印刷領域における前記連続する複数の印刷位置のうち所定の周期毎の印刷位置で前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御し、前記吐出ノズルの経路が微小移動するように前記ヘッド駆動部を制御した後、連続する第2の印刷タイミング群では、前記各印刷領域における前記第1の印刷タイミング群でインク滴が吐出された印刷位置に隣接する印刷位置に対して、前記吐出ノズルからインク滴を吐出するように前記印刷ヘッドを制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記2列以上の吐出ノズル列は、前記基準線に対して他の全ての吐出ノズル列と線対称に配置されていない吐出ノズル列を含む、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記2列以上の吐出ノズル列には、複数の吐出ノズルが千鳥状に配置されている、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
回転する印刷対象物が描く円の半径方向に相当する基準線および前記基準線に平行する1つ以上のオフセット線のうち、2つ以上の線上に配列される2列以上の吐出ノズル列を有する印刷ヘッドにより、回転する前記印刷対象物上を第1の経路で通過する吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、
前記各吐出ノズル列が前記基準線上または前記オフセット線上で微小移動するように前記印刷ヘッドを移動させる工程と、
回転する前記印刷対象物上を前記第1の経路から微小移動された第2の経路で通過する前記吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、
を含む、印刷方法。
【請求項9】
回転する印刷対象物が描く円の半径方向に相当する基準線および前記基準線に平行する1つ以上のオフセット線のうち、2つ以上の線上に配列される2列以上の吐出ノズル列を有する印刷ヘッドにより、回転する前記印刷対象物上を第1の経路で通過する吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、
前記各吐出ノズル列が前記基準線上または前記オフセット線上で微小移動するように前記印刷ヘッドを移動させる工程と、
回転する前記印刷対象物上を前記第1の経路から微小移動された第2の経路で通過する前記吐出ノズルから同一色のインク滴を吐出させる工程と、
を含む、印刷方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図21A】
image rotate

【図21B】
image rotate