説明

印刷装置、印刷方法、及び、プログラム

【課題】或る色の濃インクと淡インクとを用いて、その色の段階的な濃淡印刷を行う印刷装置において、粒状性の向上を図る。
【解決手段】この印刷装置はヘッドと駆動信号生成部とを有する。ヘッドは、インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出する。駆動信号生成部は、前記素子を動作させるための波形部を有する複数種類の駆動信号を生成する。そして、複数種類の駆動信号は、インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する濃インク用の波形部とこの最小ドット階調値に対応する淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する濃インク用の波形部とこの最大ドット階調値に対応する淡インク用の波形部とが異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドからインクを吐出させて印刷を行う、所謂インクジェット方式の印刷装置としては、例えば、プリンタ、プロッタ、ファクシミリがある。この種の印刷装置には、ヘッドが有する素子の動作を駆動信号によって制御し、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調毎に、量を異ならせてインクを吐出させるものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この装置では、ドットの非形成、小ドット、中ドット、及び、大ドットからなる4つのドット階調で制御を行う。このため、ドット階調毎に生成される4種類の駆動信号を、選択的に素子へ印加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−193587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した印刷装置には、或る色の濃インクと淡インクとを用いて、その色の段階的な濃淡印刷を行うものがある。従来の印刷装置では、インクの種類に拘わらず、共通の駆動信号を用いていた。ここで、各階調の駆動信号を共通にして或る色の濃インクと淡インクとを吐出させた場合、粒状性が損なわれてしまう虞がある。これは、各階調において、濃インクと淡インクの吐出インク量が揃ってしまうことに起因すると考えられる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、或る色の濃インクと淡インクとを用いて、その色の段階的な濃淡印刷を行う印刷装置において、粒状性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための主たる発明は、
(a)インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、
(b)前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、
インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
を有する印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷システムの構成を説明する図である。
【図2】コンピュータ、及びプリンタの構成を説明するブロック図である。
【図3】図3Aは、プリンタの構成を示す図である。図3Bは、プリンタの構成を説明する側面図である。
【図4】図4Aは、ヘッドの構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッドの主要部を拡大して示す断面図である。
【図5】ノズル列の配置を説明する図である。
【図6】ヘッド制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】原駆動信号を説明する図である。
【図8】原駆動信号の生成動作を説明するための概念図である。
【図9】印刷データを生成するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】印刷時に行われる処理を説明するフローチャートである。
【図11】図11Aは、淡シアンインクや淡マゼンタインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図11Bは、濃シアンインク、濃マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。
【図12】ピエゾ素子に印加される駆動パルスを、インクの種類毎、及び、階調毎に示した図である。
【図13】淡シアンインクと濃シアンインクについて、吐出されるインク量及び淡シアンインクの濃シアンインクへの換算量をドット形成データSIの種類毎に示した図である。
【図14】第1のハーフトーン処理の具体例を示す図である。
【図15】第2実施形態の印刷システムにおける原駆動信号を説明する図である。
【図16】図16Aは、淡シアンインクや淡マゼンタインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図16Bは、濃シアンインク、濃マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。
【図17】ピエゾ素子に印加される駆動パルスを、インクの種類毎、及び、階調毎に示した図である。
【図18】淡シアンインクと濃シアンインクについて、吐出されるインク量及び淡シアンインクの濃シアンインクへの換算量をドット形成データSIの種類毎に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
すなわち、(a)インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、(b)前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、を有する印刷装置が実現できること。
【0011】
このような印刷装置によれば、最小ドット階調値に対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量をそれぞれ定めることができる。また、最大ドット階調値に対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量もそれぞれ定めることができる。このため、濃インクで印刷される濃度範囲と淡インクで印刷される濃度範囲を最適化でき、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。その結果、粒状性の向上が図れる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成部は、前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて、前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、を有する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、スイッチの制御によって、共通の原駆動信号から複数種類の駆動信号を容易に生成することができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成部は、前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報であって、吐出対象となるインクの種類に応じたスイッチ動作情報を、前記ドット階調値の種類毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部を有し、前記スイッチコントローラは、前記指定されたドット階調値に基づいて対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、制御が容易に行える。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成部は、或るドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と他のドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通である、複数種類の前記駆動信号を生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、駆動信号が有する或る波形部が、或るドット階調値に対応する濃インクの吐出と、他のドット階調値に対応する淡インクの吐出とに用いられる。このため、波形部の種類を抑えつつ、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。
【0015】
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成部は、前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通である、複数種類の前記駆動信号を生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、駆動信号が有する或る波形部が、最小ドット階調値に対応する濃インクの吐出と、最大ドット階調値に対応する淡インクの吐出とに用いられる。このため、波形部の種類を抑えつつ、印刷画像における濃度の変化度合いを一層きめ細かくすることができる。
【0016】
かかる印刷装置であって、前記駆動信号生成部は、前記最大ドット階調値で吐出された淡インクを前記濃インクに換算した量が、前記最小ドット階調値で吐出された濃インクの量よりも少なくなるように、前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部を定めた駆動信号、及び、前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部を定めた駆動信号を含む、複数種類の前記駆動信号を生成する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、濃インクで印刷される濃度範囲と淡インクで印刷される濃度範囲を最適化できる。このため、きめ細かな階調表現が実現できる。
【0017】
かかる印刷装置であって、前記ヘッドは、シアンの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、色相に大きな影響を与えるシアンについて、粒状性の向上が図れる。
【0018】
かかる印刷装置であって、前記ヘッドは、マゼンタの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、色相に大きな影響を与えるマゼンタについて、粒状性の向上が図れる。
【0019】
かかる印刷装置であって、複数種類の前記インクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器を有し、前記駆動信号生成部は、前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識する構成が好ましい。
このような印刷装置によれば、使用されるインク貯留容器に応じてインクの種類が認識されるので、操作の簡略化が図れる。
【0020】
また、次の印刷装置が実現できることも明らかにされる。
すなわち、(a)インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、(b)複数種類の前記インクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器と、(c)前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、(c1)前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、(c2)前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、(c3)前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報であって、吐出対象となるインクの種類に応じたスイッチ動作情報を、前記ドット階調値の種類毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部と、(c4)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値に基づいて、対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、を有し、(c5)前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識し、(c6)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なるとともに、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、(c7)前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通であり、かつ、(c8)前記最大ドット階調値で吐出された淡インクを前記濃インクに換算した量が、前記最小ドット階調値で吐出された濃インクの量よりも少なくなるように、前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部を定めた駆動信号、及び、前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部を定めた駆動信号を含む、(c9)複数種類の前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、を有し、(d)前記ヘッドは、(d1)シアンの階調印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出するとともに、(d2)マゼンタの階調印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する、印刷装置が実現できること。
このような印刷装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するので、本発明の目的が最も有効に達成される。
【0021】
また、次の印刷方法が実現できることも明らかにされる。
すなわち、(a)或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出する印刷方法であって、(b)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成すること、(c)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて生成された駆動信号を、インクを吐出するための動作を行う素子に印加すること、を行う印刷方法が実現できること。
【0022】
また、次のプログラムが実現できることも明らかにされる。
すなわち、(a)或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出する印刷装置用のプログラムであって、(b)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成すること、(c)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて生成された駆動信号を、インクを吐出するための動作を行う素子に印加すること、を前記印刷装置に行わせるプログラムが実現できること。
【0023】
===第1実施形態===
<印刷システム100の構成について>
まず、印刷装置を印刷システム100とともに説明する。ここで、図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やコンパクトディスクドライブ装置142である。
【0024】
===コンピュータ110===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したように、アプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。これらのアプリケーションプログラムやプリンタドライバは、例えば、フレキシブルディスクFDやコンパクトディスクCDを通じて提供される。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
【0025】
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、ドット形成データSI(図6を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作を実行させるためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、ドット形成データSIは、印刷される画像のドットに関するデータである。ここで、ドットは、用紙Sの上に仮想的に定められた方眼状の升目(以下、単位領域ともいう。)に対応して形成される。そして、ドット形成データSIは、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値に相当する。本実施形態において、ドット形成データSI(ドット階調値)は、2ビットのデータによって構成されている。すなわち、このドット形成データSIには、ドット無し(インクの非吐出)に対応するデータ[00]と、小ドットの形成に対応するデータ[01]と、中ドットの形成に対応するデータ[10]と、大ドットの形成に対応するデータ[11]とがある。要するに、このプリンタ1では、1つの単位領域に対して4種類のドット階調値が選択できる。
【0026】
===プリンタ1===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の構成を説明する側面図である。なお、以下の説明では、図2も参照する。このプリンタ1は、図2に示すように、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、原駆動信号生成回路50、検出器群60、及び、プリンタ側コントローラ70を有する。そして、原駆動信号生成回路50とプリンタ側コントローラ70は共通のコントローラ基板CTRに実装されている。また、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ70によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び原駆動信号生成回路50が制御される。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づいて制御対象部を制御し、用紙Sに画像を印刷させる。このとき、検出器群60の各検出器は、プリンタ1内の各部の状態を検出しており、検出結果をプリンタ側コントローラ70に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ70は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
【0027】
そして、このプリンタ1では、原駆動信号生成回路50、プリンタ側コントローラ70、及び、ヘッド制御部HCが駆動信号生成部に相当し、ヘッド41が有するピエゾ素子PZT(図4Bを参照。)に印加される駆動信号を生成する。なお、駆動信号生成部を構成する各部や、生成される駆動信号については、後で詳しく説明する。
【0028】
<用紙搬送機構20について>
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、媒体としての用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。プラテン24は、用紙Sを裏面側から支持するための部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
【0029】
<キャリッジ移動機構30について>
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有する。このため、キャリッジ移動方向は、ヘッド41が移動するヘッド移動方向(所定方向)に相当する。また、キャリッジ移動機構30は、ヘッド41を所定方向に移動させるヘッド移動部に相当する。このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、アイドラプーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31の動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、アイドラプーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、その端部がキャリッジCRに固定された環状の部材であり、駆動プーリー34とアイドラプーリー35とに架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRはこのガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。これに伴い、ヘッド41も所定方向に移動する。
【0030】
<インクカートリッジICについて>
キャリッジCRには、インクを貯留するインクカートリッジICが装着される。このインクカートリッジICは、インク貯留容器に相当するものである。本実施形態のインクカートリッジICは、ブラックインクを貯留したブラックインクカートリッジICkと、カラーインクを貯留したカラーインクカートリッジICcとを有している。そして、カラーインクカートリッジICcには、5種類のインクが貯留されている。具体的には、淡シアンインク、濃シアンインク、淡マゼンタインク、濃マゼンタインク、及び、イエローインクが貯留されている。これらのインクの中で、濃シアンインクと淡シアンインクの組、及び、濃マゼンタインクと淡マゼンタインクの組は、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクの組に相当する。すなわち、濃シアンインクと淡シアンインクの組は、シアンの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インクと淡インクの組に相当し、濃マゼンタインクと淡マゼンタインクの組は、マゼンタの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インクと淡インクの組に相当する。そして、淡シアンインクは、その濃度が濃シアンインクの濃度に対して1/nの比率となるように調整されている。この濃度比は、例えば或る用紙Sに対して濃シアンインクをベタ印刷して得られた光学濃度と、同じ用紙Sに対して淡シアンインクをベタ印刷して得られた光学濃度とを比較することで得られる。本実施形態では、淡シアンインクの濃度は、濃シアンインクの濃度の1/3となっている。従って、淡シアンインクのインク量は、濃シアンインクに換算すると1/3の量になる。なお、以上は、シアンインクについて説明したが、マゼンタインクについても同様である。以下、本明細書では、淡インクを濃インクで換算した際のインク量を換算量(換算インク量)ともいう。例えば、7.0pLの淡インクを濃インクに換算すると、その換算量は約2.3pLになる。
【0031】
インクカートリッジICには、図2に示すように、カートリッジ側メモリICmが設けられている。このカートリッジ側メモリICmは不揮発性のメモリによって構成されている。そして、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶される。また、カートリッジ側メモリICmには他の情報、例えば、インクの消費量に関する消費量情報も記憶される。そして、カートリッジ側メモリICmには接点端子(便宜上、メモリ側接点端子TM1という。)が設けられている。このメモリ側接点端子TM1は、インクカートリッジICのキャリッジCRへの装着状態において、キャリッジ側に設けられた接点端子(便宜上、キャリッジ側接点端子TM2という。)と接触する。キャリッジ側接点端子TM2は、配線を介してプリンタ側コントローラ70(CPU72)に接続されている。このため、インクカートリッジICが装着されると、駆動信号生成部の一部を構成するプリンタ側コントローラ70は、インク種類情報や消費量情報を取得することができる。
【0032】
<ヘッドユニット40について>
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。このヘッドユニット40は、ヘッド41とヘッド制御部HCとを有している。以下、ヘッドユニット40について説明する。ここで、図4Aは、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッド41の主要部を拡大して示す断面図である。図5は、ノズル列の配置を説明する図である。
【0033】
<ヘッド41について>
ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子ユニット413とを有する。ケース411は、ピエゾ素子ユニット413を収容するための収容室411aが内部に形成されたブロック状の部材である。ピエゾ素子ユニット413は、ノズル列毎に取り付けられる。図5に示すように、このヘッド41では、6つのノズル列(Nk〜Nlm)を有している。このため、ケース411には6つの収容室411aが設けられており、6つのピエゾ素子ユニット413が対応する収容室411aに収容されている。なお、図4Aには、一部の収容室411aを示している。
【0034】
流路ユニット412は、流路形成板412aと、流路形成板412aの一方の表面に接合された弾性板412bと、流路形成板412aの他方の面に接合されたノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aは、シリコンウエハーや金属板等によって作製されている。この流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bは、支持枠412hと、ピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412jとを有する。そして、アイランド部412jの周囲には、弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。
【0035】
ピエゾ素子ユニット413は、ピエゾ素子群413aと、接着用基板413bとから構成されている。ピエゾ素子群413aは櫛歯状をしており、1つ1つの櫛歯状部分がピエゾ素子PZTに相当する。このピエゾ素子群413aは、ノズルNzに対応する数のピエゾ素子PZTを有する。また、接着用基板413bは矩形状の板であり、一方の表面にピエゾ素子群413aが接着され、他方の表面がケース411に接着されている。ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定まる。そして、ピエゾ素子PZTの電位は、印加された駆動信号(図11A,図11Bに実線で示す部分。)によって定められる。従って、ピエゾ素子PZTは、印加された駆動信号の電位に応じて伸縮する。
【0036】
そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412jは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜412iが変形するので、ノズルNzからインクを効率よく吐出させることができる。このようなピエゾ素子PZTは、駆動信号によって充放電され、インクを吐出するための動作を行う素子に相当する。そして、ピエゾ素子PZTをヘッド41に用いると、印加される駆動パルスPS1〜PS4(図7を参照。)の形状に応じて、吐出されるインクの量や速度を様々に制御できる。
【0037】
また、前述したノズルプレート412cは、このヘッド41の用紙対向面に設けられている。そして、このノズルプレート412cには、複数のノズルNzからなるノズル列が、インクの種類に応じた複数列設けられている。前述したように、このプリンタ1では6種類のインクを吐出させることができるので、ノズル列も6列設けられている。図5に示す例では、図の左側からブラックインクノズル列Nk,イエローインクノズル列Ny,シアンインクノズル列Nc,マゼンタインクノズル列Nm,淡シアンインクノズル列Nlc,淡マゼンタインクノズル列Nlmが設けられている。それぞれのノズル列は、搬送方向に沿って形成されている。また、キャリッジ移動方向に並んだ状態で形成されている。
【0038】
<ヘッド制御部HCについて>
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。ここで、図6は、ヘッド制御部HCの構成を説明するためのブロック図である。前述したように、ヘッド制御部HCは、駆動信号生成部の一部を構成するものである。本実施形態におけるヘッド制御部HCは、シフトレジスタ81と、ラッチ回路82と、制御ロジック83と、デコーダ84と、ゲート回路85と、ヘッド側スイッチ86とを有する。そして、制御ロジック83を除いた各部、すなわち、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、デコーダ84、ゲート回路85、ヘッド側スイッチ86は、それぞれピエゾ素子PZT毎、つまりノズルNz毎に設けられる。また、このヘッド制御部HCは、インクの種類毎に設けられる。前述したように、このプリンタ1では、6種類のインクを吐出させることができるので、図6に記載されたブロックが6つ設けられる。以下、ヘッド制御部HCを構成する各部分について説明する。
【0039】
シフトレジスタ81は、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIがセットされるものである。ラッチ回路82は、シフトレジスタ81にセットされたドット形成データSIをラッチするものである。
【0040】
制御ロジック83は、スイッチ動作情報記憶部に相当し、ヘッド側スイッチ86の動作を定めるためのスイッチ動作情報(q0〜q3)を記憶する。そして、記憶したスイッチ動作情報を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CH(図7を参照。)で規定されるタイミングで切り替えながら出力する。つまり、時系列的に出力する。この制御ロジック83は、スイッチ動作情報をドット形成データSIの種類毎(ドット階調値の種類毎)、具体的には、ドットの非形成(データ[00])、小ドットの形成(データ[01])、中ドットの形成(データ[10])、及び、大ドットの形成(データ[11])のそれぞれについて記憶している。ここで、ドットの非形成は複数のドット階調値における最小ドット階調値に相当し、小ドットの形成はインクを吐出する際の最小ドット階調値に相当する。また、大ドットの形成は最大ドット階調値に相当する。
【0041】
この制御ロジック83はインクの種類で定められるブロックごとに設けられているので、記憶されるスイッチ動作情報は吐出させるインクの種類に応じて定められる。すなわち、ブラックインク用のスイッチ動作情報、淡シアンインク用のスイッチ動作情報、濃シアンインク用のスイッチ動作情報、…といったように定められる。従って、各ブロックの制御ロジック83は、吐出対象となるインクの種類に応じたスイッチ動作情報を、ドット形成データSI(ドット階調値)の種類毎に記憶している。なお、制御ロジック83に記憶されるスイッチ動作情報については、後で説明する。
【0042】
デコーダ84は、制御ロジック83から出力されるスイッチ動作情報(q0〜q3)を、ラッチ回路82でラッチされたドット形成データSIに応じて選択し、選択したスイッチ動作情報を、ゲート回路85を通じてヘッド側スイッチ86に出力する。ここで、制御ロジック83から出力されるスイッチ動作情報は、デコーダ84で選択される前のものである。このため、選択前スイッチ動作情報と表現することもできる。一方、ヘッド側スイッチ86に印加されるスイッチ動作情報は、デコーダ84によって選択されたものである。このため、選択後スイッチ動作情報に相当する。従って、デコーダ84は、同時に出力される複数種類の選択前スイッチ動作情報から、階調に対応したものを選択後スイッチ動作情報として出力するものといえる。この構成では、複数種類の選択前スイッチ動作情報から選択されたものが選択後スイッチ動作情報として出力されるので、処理を高速化できる。
【0043】
ゲート回路85は、デコーダ84からのスイッチ動作情報とプリンタ側コントローラ70からのN−チャージ信号N_CHGを、ヘッド側スイッチ86に印加するためのものである。ここで、N−チャージ信号N_CHGとは、原駆動信号COM(図7を参照。)を、そのブロックに属する全てのピエゾ素子PZTに印加させるための強制印加信号であり、ピエゾ素子PZTの電位を調整するために用いられる。そして、このN−チャージ信号N_CHGは、Lレベルで有効な信号となっている。従って、このゲート回路85は、N−チャージ信号N_CHGがHレベルのとき、その出力レベルがデコーダ84からのスイッチ動作情報に依存して変化する。一方、N−チャージ信号N_CHGがLレベルのとき、その出力レベルは、デコーダ84からのスイッチ動作情報に拘わらずHレベルとなる。
【0044】
ヘッド側スイッチ86は、ゲート回路85を介して入力されたスイッチ動作情報やN−チャージ信号N_CHGによって動作するスイッチである。このヘッド側スイッチ86は、原駆動信号COMの供給線とピエゾ素子PZTとの間に配置され、オン状態では原駆動信号COMをピエゾ素子PZTに印加し、オフ状態では原駆動信号COMを遮断する。なお、原駆動信号COMの供給線は、原駆動信号生成回路50に接続されている。このため、ヘッド側スイッチ86は、原駆動信号生成回路50とピエゾ素子PZTとの間に配置されているといえる。そして、N−チャージ信号N_CHGがHレベルのとき、ヘッド側スイッチ86は、デコーダ84で選択されたスイッチ動作情報によってオンオフし、原駆動信号COMにおける必要部分(すなわち、駆動信号)をピエゾ素子PZTに印加する。このため、ヘッド側スイッチ86は、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を原駆動信号COMから生成するためのスイッチに相当する。
【0045】
また、このヘッド側スイッチ86の動作を制御する部分、具体的には、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、及び、デコーダ84は、スイッチコントローラに相当する。そして、このスイッチコントローラは、ドット形成データSI(ドット階調値)と選択前スイッチ動作情報とから、選択後スイッチ動作情報を生成する。なお、シフトレジスタ81、ラッチ回路82、制御ロジック83、及び、デコーダ84の動作については、後で説明する。
【0046】
<原駆動信号生成回路50について>
原駆動信号生成回路50は、原駆動信号COMを生成するものであり、原駆動信号生成部に相当する。ここで、原駆動信号COMとは、先の説明から判るように、ピエゾ素子PZTを駆動するための駆動信号の基となっている信号である。
【0047】
図7に示すように、原駆動信号COMは、繰り返し周期T毎に繰り返し生成される。この繰り返し周期Tは、4つの期間T1〜T4に分けることができる。そして、原駆動信号COMは、最初の期間T1で生成される第1区間信号SS1と、2番目の期間T2で生成される第2区間信号SS2と、3番目の期間T3で生成される第3区間信号SS3と、4番目の期間T4で生成される第4区間信号SS4とを有する。そして、第1区間信号SS1は第1駆動パルスPS1を有し、第2区間信号SS2は第2駆動パルスPS2を有している。また、第3区間信号SS3は第3駆動パルスPS3を、第4区間信号SS4は第4駆動パルスPS4をそれぞれ有している。これらの駆動パルスPS1〜PS4は、いずれもピエゾ素子PZTを動作させるための波形部に相当し、その形状はピエゾ素子PZTに行わせる動作に基づいて定められている。
【0048】
これらの駆動パルスPS1〜PS4は、ノズルNzからインクを吐出させる際に用いられる波形部である。これらの中で、第1駆動パルスPS1、第3駆動パルスPS3、及び、第4駆動パルスPS4は、何れも同じ波形をしている。これらの駆動パルスPS1,PS3,PS4のうち1つの駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると、所定量のインクがノズルNzから吐出される。例えば約7pL(約7ng)のインクが吐出される。そして、このインクが用紙Sに着弾すると、用紙Sの単位領域には、対応する大きさのドットが形成される。また、これらの駆動パルスPS1,PS3,PS4のうち2つの駆動パルス、或いは、全ての駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると、ノズルNzからは対応する量(約14pL,約21pL)のインクが吐出され、用紙Sには吐出量に応じた大きさのドットが形成される。第2駆動パルスPS2は、前述した第1駆動パルスPS1等よりも少ない他の所定量のインクを吐出させるための波形部である。この第2駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTへ印加されると、例えば約2.5pLのインクが吐出される。そして、このインクが用紙Sに着弾すると、第1駆動パルスPS1によって形成されたドットよりも小さいドットが用紙Sに形成される。
【0049】
このような原駆動信号COMは、プリンタ側コントローラ70からの駆動信号生成情報に基づき、原駆動信号生成回路50から出力される。以下、原駆動信号生成回路50による原駆動信号COMの生成動作について説明する。図8は、原駆動信号COMの生成動作を説明するための概念図である。
【0050】
プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号COMを生成するためのパラメータに基づき、更新周期τ毎の出力電圧を求める。そして、原駆動信号COMを生成する場合、プリンタ側コントローラ70は、出力電圧に対応するDAC値(波形生成情報;例えば、出力電圧を10ビットのデジタル値で表した情報)を求め、求めたDAC値を更新周期τ毎に原駆動信号生成回路50へ出力する。図8の例では、クロックで規定されるタイミングt(n)で電圧V1に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V1となる。そして、更新周期τ(n+4)までは、電圧V1に対応するDAC値が順次出力されるので、原駆動信号生成回路50からは電圧V1が出力され続ける。また、タイミングt(n+5)では、電圧V2に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+5)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V1から電圧V2へ降下する。同様に、タイミングt(n+6)では、電圧V3に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+6)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V2から電圧V3へ降下する。以下同様にしてDAC値が出力されるため、原駆動信号生成回路50から出力される電圧は、次第に降下する。そして、更新周期τ(n+10)にて、原駆動信号生成回路50の出力は電圧V4になる。なお、この原駆動信号生成回路50において、非出力側の端子は接地されている。このため、出力側の端子は出力電圧に対応する電位となっている。
【0051】
<検出器群60について>
検出器群60は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。図3A,図3Bに示すように、この検出器群60には、リニア式エンコーダ61、ロータリー式エンコーダ62、紙検出器63、及び紙幅検出器64が含まれている。リニア式エンコーダ61は、キャリッジCRのキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ62は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器63は、印刷される用紙Sを検出するためのものである。紙幅検出器64は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのものである。
【0052】
<プリンタ側コントローラ70について>
プリンタ側コントローラ70は、プリンタ1が有する各部を制御するものである。例えば、プリンタ側コントローラ70は、所定の搬送量で用紙Sを搬送させる動作と、キャリッジCR(ヘッド41)を移動させながら断続的にインクを吐出させる動作とを交互に行わせることで、用紙Sに画像を印刷させている。このため、プリンタ側コントローラ70は、搬送モータ22の回転を制御することによって用紙Sの搬送を制御する。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31の回転を制御することによってキャリッジCRの移動を制御する。さらに、ドット形成データSIをヘッド制御部HCへ出力することで、インクを吐出させるための制御を行う。このドット形成データSIは、前述した様に、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を、原駆動信号COMから生成する際に用いられるものである。加えて、プリンタ側コントローラ70は、電圧指定情報としてのDAC値を原駆動信号生成回路50へ出力する制御も行っている。このように、プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号COMを生成するための制御と、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号を、原駆動信号COMから生成するための制御とを行っている。このため、プリンタ側コントローラ70は、原駆動信号生成回路50、ヘッド側スイッチ86、及び、ヘッド制御部HCとともに、駆動信号生成部を構成しているといえる。
【0053】
このプリンタ側コントローラ70は、図2に示すように、インタフェース部71と、CPU72と、メモリ73と、制御ユニット74とを有する。インタフェース部71は、外部装置であるコンピュータ110との間でデータの受け渡しを行う。CPU72は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ73は、CPU72のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU72は、メモリ73に記憶されているコンピュータプログラムに従って各制御対象部を制御する。例えば、CPU72は、制御ユニット74を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。例えば、搬送モータ22やキャリッジモータ31に対する制御信号を出力する。また、CPU72は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号(例えば、クロックCLK,ドット形成データSI,ラッチ信号LAT,チェンジ信号CH,N−チャージ信号N_CHGが相当する。図6を参照。)をヘッド制御部HCへ出力したり、原駆動信号COMを生成させるためのDAC値を原駆動信号生成回路50へ出力したりする。
【0054】
===印刷動作===
<本実施形態における印刷動作の概要>
次に、この印刷システム100における印刷動作について説明する。まず、印刷動作の概要について説明する。この印刷システム100が有するプリンタ1では、前述したように、1つの単位領域について、複数種類のドットで印刷することができる。具体的には、ドットの非形成、小ドットの形成、中ドットの形成、及び、大ドットの形成からなる4種類のドット形成データSI(ドット階調値)で印刷をすることができる。ここで、淡インクと濃インクについて各ドットの量を揃えた場合、或る濃度において画像の粒状性が損なわれてしまう可能性がある。
【0055】
これは、淡インクと濃インクとで、各ドット階調における必要なインク量が異なるためと考えられる。例えば、濃インクの大ドットはベタを埋めるために適したインク量とされるが、淡インクの大ドットは淡インクから濃インクへの切り替え濃度に適したインク量が好ましい。また、濃インクの小ドットも淡インクから濃インクへの切り替え濃度に適したインク量が好ましく、淡インクの小ドットは極めて淡い濃度に適したインク量が好ましい。この点に関し、従来のプリンタにおいて各ドット階調で吐出されるインク量は、濃インクの必要量か淡インクの必要量のいずれかに定められていた。このため、淡インクの或るドットで表現される画像濃度の範囲と濃インクの他のドットで表現される画像濃度の範囲が制限される。その結果、粒状性が損なわれてしまうと考えられる。
【0056】
そこで、この実施形態では、インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する濃インク用の駆動パルス(波形部)とこの最小ドット階調値に対応する淡インク用の駆動パルスとを異ならせ、かつ、最大ドット階調値に対応する濃インク用の駆動パルスとこの最大ドット階調値に対応する淡インク用の駆動パルスとを異ならせている。これにより、表現される画像濃度の範囲が緩和される。そして、画像濃度が低い範囲では主に淡インクが用いられ、画像濃度が高い範囲では主に濃インクが用いられる。その結果、濃インクによるドットと淡インクによるドットの混在する濃度範囲が従来よりも狭くなり、粒状性の向上が図れる。以下、これらの点について、詳細に説明する。
【0057】
<印刷動作について>
例示した印刷システム100にて画像を用紙Sへ印刷する際には、印刷データを生成するための処理と、印刷データに基づいて用紙Sに印刷するための処理とが行われる。そして、印刷データを生成するための処理は、印刷システム100が有するコンピュータ110で行われる。即ち、ホスト側コントローラ111が有するCPU113は、メモリ114に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、この処理を実行する。従って、このコンピュータプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。また、用紙Sに印刷するための処理は、印刷システム100が有するプリンタ1で行われる。即ち、プリンタ側コントローラ70が有するCPU72は、メモリ73に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、この処理を実行する。従って、このコンピュータプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
【0058】
<印刷データを生成するための処理について>
まず、印刷データを生成するための処理について説明する。ここで、図9は、印刷データを生成するための処理を説明するためのフローチャートである。図9に示すように、印刷データを生成するための処理では、解像度変換処理(S10)、色変換処理(S20)、ハーフトーン処理(S30)、ラスタライズ処理(S40)が行われる。
【0059】
解像度変換処理は、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙Sに画像を印刷する際の解像度(印刷するときのドットの間隔であり、印刷解像度ともいう。)に変換する処理である。色変換処理は、RGB画像データの各RGB画素データを、CMYK色空間により表される多段階の階調値(例えば256段階の印刷階調値)を有するデータに変換する処理である。この色変換処理は、例えば、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブル)を参照することによって行われる。
【0060】
ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するCMYK画素データから、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値のデータに変換する処理である。すなわち、多段階の階調値を有するCMYK画素データからドット形成データSIを得るための処理である。このハーフトーン処理により、例えば、256段階の階調値を示すCMYK画素データから、2ビットデータのドット形成データSI(4種類のドット階調値)が得られる。この印刷システム100では、2種類のハーフトーン処理が定められている。第1のハーフトーン処理は、或る色の淡インクと濃インクとを用いて段階的な濃淡印刷を行う場合に選択される処理である。この印刷システム100では、シアンとマゼンタで選択される処理である。第2のハーフトーン処理は、一種類の濃度のインクを用いて印刷を行う色で選択される処理である。この印刷システム100では、イエローとブラックで選択される処理である。これらのハーフトーン処理については、後で説明する。
【0061】
ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理で得られたドット形成データSIを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたドット形成データSIは、前述したコマンドデータとともに、印刷データとしてプリンタ1へ出力される。
【0062】
<用紙Sに印刷するための処理について>
次に、用紙Sに印刷するためにプリンタ1にて行われる処理について説明する。ここで、図10は、印刷時に行われる処理を説明するフローチャートである。図10に示すように、用紙Sに印刷するための処理では、印刷命令の受信動作(S110)、給紙動作(S120)、ドット形成動作(S130)、搬送動作(S140)、排紙判断(S150)、排紙動作(S160)、及び、印刷終了判断(S170)が行われる。
【0063】
印刷命令の受信動作では、プリンタ側コントローラ70は、インタフェース部71を介して、コンピュータ110からの印刷コマンドを受信する。この印刷コマンドは、コンピュータ110から送信される印刷データに含まれている。給紙動作は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に位置決めする動作である。この給紙動作において、プリンタ側コントローラ70は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき用紙Sを搬送ローラ23まで送る。続いて、プリンタ側コントローラ70は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた用紙Sを印刷開始位置に位置決めする。ドット形成動作は、キャリッジ移動方向に沿って移動するヘッド41からインクを断続的に吐出させ、用紙Sにドットを形成する動作である。プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31を駆動し、キャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させる。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジCRが移動している間に、ドット形成データSIに基づいてヘッド41(ノズルNz)からインクを吐出させる。そして、ヘッド41から吐出されたインクが用紙Sの上に着弾すれば、前述したように、用紙Sの上にドットが形成される。なお、ドット形成動作については後で詳しく説明する。搬送動作は、用紙Sをヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる動作である。プリンタ側コントローラ70は、搬送ローラ23を回転させて用紙Sを搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド41は、先程のドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置にドットを形成することができる。排紙判断は、印刷中の用紙Sを排出するか否かを判断する処理である。この判断は、印刷データの有無に基づいて行われる。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、印刷中の用紙Sに対する印刷データの有無を判断し、印刷データが残っていれば排紙しないと判断する。この場合、プリンタ側コントローラ70は、印刷データがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙Sに印刷する。また、プリンタ側コントローラ70は、印刷データがなければ排紙すると判断し、排紙ローラ25を回転させることで、印刷された用紙Sを外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいて行っても良い。印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。この判断において、プリンタ側コントローラ70は、印刷データの有無を判断する。そして、次の用紙Sに印刷を行うのであれば、次の用紙Sについての給紙動作を行う。一方、次の用紙Sに印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
【0064】
===ドット形成動作とハーフトーン処理===
<ドット形成動作について>
次にドット形成動作について詳細に説明する。ここで、図11Aは、淡シアンインクや淡マゼンタインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図11Bは、濃シアンインク、濃マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図12は、ピエゾ素子PZTに印加される第1駆動パルスPS1〜第4駆動パルスPS4を、インクの種類毎、及び、階調毎に示した図である。図13は、淡シアンインクと濃シアンインクについて、吐出されるインク量及び淡シアンインクの濃シアンインクへの換算量をドット形成データSI毎に示した図である。
【0065】
このドット形成動作において、プリンタ側コントローラ70は原駆動信号生成回路50へDAC値を出力し、原駆動信号生成回路50はDAC値に応じた電圧信号をヘッドユニット40へ出力する。すなわち、原駆動信号生成回路50はDAC値で規定される電圧の原駆動信号COMを生成する。この原駆動信号COMの生成は、ラッチ信号LATがHレベルになる毎に繰り返し行われる。その結果、図7で説明した原駆動信号COMが、繰り返し周期T毎に繰り返し生成される。すなわち、期間T1では第1駆動パルスPS1を有する第1区間信号SS1が生成され、期間T2では第2駆動パルスPS2を有する第2区間信号SS2が生成される。また、期間T3では第3駆動パルスPS3を有する第3区間信号SS3が生成され、期間T4では第4駆動パルスPS4を有する第4区間信号SS4が生成される。そして、駆動パルスPS1,PS3,PS4は何れも同じ波形をしており、1つの駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると約7.0pLのインクが吐出される。また、第2駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTへ印加されると約2.5pLのインクが吐出される。
【0066】
また、ドット形成動作において、プリンタ側コントローラ70は、印刷データに含まれるドット形成データSIをヘッド制御部HCへ転送したり、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHを所定のタイミングでヘッド制御部HCへ出力したりする。ヘッド制御部HCでは、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIをシフトレジスタ81に順次セットする。そして、ラッチ信号LATの受信タイミング(ラッチ信号LATがHレベルになったタイミング)で、対応するドット形成データSIをラッチ回路82がラッチする。
【0067】
ラッチ信号LATは、ヘッド制御部HCの制御ロジック83にも入力される。加えて、この制御ロジック83には、チェンジ信号CHも入力される。そして、制御ロジック83は、吐出するインクの種類に応じたスイッチ動作情報であって、ドット形成データSI(ドット階調値)の種類毎に定められたスイッチ動作情報(q0〜q3)を出力する。すなわち、制御ロジック83は、これらのスイッチ動作情報を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHがHレベルになるタイミングで、その内容を更新しつつ出力する。これらのスイッチ動作情報はデコーダ84にて選択される。すなわち、デコーダ84は、ラッチ回路82から出力されるドット形成データSI(形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値)が非吐出を示す場合にスイッチ動作情報q0を選択し、小ドットの形成を示す場合にスイッチ動作情報q1を選択する。同様に、中ドットの形成を示す場合にスイッチ動作情報q2を選択し、大ドットの形成を示す場合にスイッチ動作情報q3を選択する。そして、選択されたスイッチ動作情報は、ヘッド側スイッチ86に出力される。その結果、原駆動信号COMを構成する区間信号SS1〜SS4が、選択的にピエゾ素子PZTに印加される。なお、これらのスイッチ動作情報は、例えばプリンタ側コントローラ70から転送されて制御ロジック83に記憶される。
【0068】
この場合において、プリンタ側コントローラ70は、吐出されるインクの種類を認識し、そのインクに適したドット形成データSIを制御ロジック83に記憶させる。ここで、前述したように、本実施形態ではカートリッジ側メモリICmに記憶されたインク種類情報に基づいて、プリンタ側コントローラ70が、吐出されるインクの種類を認識している。このため、認識を確実に行うことができる。また、異なる種類のインクを貯留したインクカートリッジICに交換された際も、自動的に対応することができる。
【0069】
次に、スイッチ動作情報に基づく、原駆動信号COMのピエゾ素子PZTへの印加動作、言い換えれば、駆動信号の生成動作について説明する。図11Aに示すように、淡シアンインク及び淡マゼンタインクに用いられるスイッチ動作情報(便宜上、淡インク用スイッチ動作情報ともいう。)は、非吐出のドット形成データSI(データ[00])に対応するスイッチ動作情報q0がデータ[0000]であり、小ドットのドット形成データSI(データ[01])に対応するスイッチ動作情報q1がデータ[0100]である。同様に、中ドットのドット形成データSI(データ[10])に対応するスイッチ動作情報q2がデータ[0010]であり、大ドットのドット形成データSI(データ[11])に対応するスイッチ動作情報q3がデータ[1010]である。
【0070】
これにより、図12にも示すように、非吐出のドット形成データSIでは駆動信号は生成されない。そして、小ドットのドット形成データSIでは第2区間信号SS2が駆動信号となる。この駆動信号が有する第2駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTに印加されることで、ノズルNzからは約2.5pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの小ドットが形成される。また、中ドットのドット形成データSIでは、第3区間信号SS3が駆動信号となる。そして、この駆動信号が有する第3駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTに印加されることで、ノズルNzからは約7.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの中ドットが形成される。同様に、大ドットのドット形成データSIでは、第1区間信号SS1及び第3区間信号SS3が駆動信号となる。そして、この駆動信号が有する駆動パルスPS1,PS3がピエゾ素子PZTに印加されることで、ノズルNzからは約14.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの大ドットが形成される。
【0071】
一方、図11Bに示すように、濃シアンインク、濃マゼンタインクや、イエローインク、及び、ブラックインクに用いられるスイッチ動作情報(便宜上、濃インク用スイッチ動作情報ともいう。)は、非吐出のドット形成データSIに対応するスイッチ動作情報q0がデータ[0000]であり、小ドットのドット形成データSIに対応するスイッチ動作情報q1がデータ[0010]である。同様に、中ドットのドット形成データSIに対応するスイッチ動作情報q2がデータ[1010]であり、大ドットのドット形成データSIに対応するスイッチ動作情報q3がデータ[1011]である。
【0072】
これにより、図12にも示すように、非吐出のドット形成データSIでは駆動信号は生成されない。そして、小ドットのドット形成データSIでは第3区間信号SS3が駆動信号となり、第3駆動パルスPS3に基づいてノズルNzからは約7.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの小ドットが形成される。また、中ドットのドット形成データSIでは第1区間信号SS1及び第3区間信号SS3が駆動信号となり、駆動パルスPS1,PS3に基づいてノズルNzからは約14.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの中ドットが形成される。同様に、大ドットのドット形成データSIでは、第1区間信号SS1、第3区間信号SS3、及び、第4区間信号SS4が駆動信号となり、駆動パルスPS1,PS3,PS4に基づいてノズルNzからは約21.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの大ドットが形成される。
【0073】
ここで、淡インク用スイッチ動作情報に基づいて生成される駆動信号と、濃インク用スイッチ動作情報に基づいて生成される駆動信号とを比較する。まず、インクを吐出する際の最小ドット階調値である小ドットのドット形成データSIについて比較する。小ドットのドット形成データSIでは、淡インクにおいて第2区間信号SS2が駆動信号となり、濃インクにおいて第3区間信号SS3が駆動信号となる。そして、淡インクの吐出は、小ドット用の波形部に相当する第2駆動パルスPS2がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約2.5pLの淡インクが吐出される。また、濃インクの吐出は、小ドット用の波形部に相当する第3駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約7.0pLの濃インクが吐出される。
【0074】
中ドットのドット形成データSIでは、淡インクにおいて第3区間信号SS3が駆動信号となり、濃インクにおいて第1区間信号SS1及び第3区間信号SS3が駆動信号となる。そして、淡インクの吐出は、中ドット用の波形部に相当する第3駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約7.0pLの淡インクが吐出される。また、濃インクの吐出は、中ドット用の波形部に相当する第1駆動パルスPS1及び第3駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約14.0pLの濃インクが吐出される。
【0075】
大ドットのドット形成データSIでは、淡インクにおいて第1区間信号SS1及び第3区間信号SS3が駆動信号となり、濃インクにおいて第1区間信号SS1、第3区間信号SS3及び第4区間信号SS4が駆動信号となる。そして、淡インクの吐出は、大ドット用の波形部に相当する第1駆動パルスPS1及び第3駆動パルスPS3がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約14.0pLの淡インクが吐出される。また、濃インクの吐出は、大ドット用の波形部に相当する第1駆動パルスPS1、第3駆動パルスPS3及び第4駆動パルスPS4がピエゾ素子PZTへ印加されることで行われる。これにより、約21.0pLの濃インクが吐出される。
【0076】
このように、本実施形態のプリンタ1では、淡インク用の駆動パルス(波形部)と濃インク用の駆動パルス(波形部)とを比較した場合、ピエゾ素子PZTに印加される駆動パルスは各ドット形成データSI(ドット階調値)で異なっている。例えば、インクを吐出する最小ドット階調値に相当する小ドットのドット形成データSIでは、淡インクに第2駆動パルスPS2が印加され、濃インクに第3駆動パルスPS3が印加される。また、中ドットのドット形成データSIでは、淡インクに第3駆動パルスPS3が印加され、濃インクに第1駆動パルス及び第3駆動パルスPS3が印加される。同様に、大ドットのドット形成データSIでは、淡インクに第1駆動パルス及び第3駆動パルスPS3が印加され、濃インクに第1駆動パルス、第3駆動パルスPS3及び第4駆動パルスPS4が印加される。
【0077】
そして、小ドットのドット形成データSIと大ドットのドット形成データSIにおいて、ピエゾ素子PZTに印加される駆動パルスが、淡インクと濃インクとの間で異なっていることから、各ドット形成データSIにおける淡インクの吐出量と濃インクの吐出量をそれぞれ定めることができる。このため、淡インクで印刷される濃度範囲と濃インクで印刷される濃度範囲とを最適化でき、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。その結果、粒状性の向上が図れる。
【0078】
この点に関し、淡シアンインクを濃シアンインクに換算した換算量で検討する。本実施形態の淡シアンインクは、濃シアンインクの1/3の濃度に設定されている。このため、淡インクを濃インクに換算したインク量(換算量)をドット形成データSI毎に求めると、例えば図13に示すようになる。すなわち、小ドットのドット形成データSIにおける換算量は約0.8pLとなる。また、中ドットのドット形成データSIにおける換算量は約2.3pLとなり、大ドットのドット形成データSIにおける換算量は約4.7pLとなる。ここで、小ドットのドット形成データSIにおける濃シアンインクのインク量は約7.0pLである。すなわち、大ドットのドット形成データSIで吐出された淡シアンインクの濃インクへの換算量が、小ドット形成データSIで吐出された濃シアンインクの量よりも少なくなっている。このように、各ドット形成データSIにおける淡シアンインクの吐出量と濃シアンインクの吐出量を定めることで、濃シアンインクで印刷される濃度範囲と淡シアンインクで印刷される濃度範囲を最適化できる。
【0079】
具体的には、濃シアンインクの量を基準にして、各ドットの形成時に吐出される淡シアンインクの量と濃シアンインクの量とを比較した場合、次の関係が成立する。すなわち、淡シアンインクの小ドット(換算量約0.8pL)<淡シアンインクの中ドット(換算量約2.3pL)<淡シアンインクの大ドット(換算量約4.7pL)<濃シアンインクの小ドット(約7.0pL)<濃シアンインクの中ドット(約14.0pL)<濃シアンインクの大ドット(約21.0pL)の関係が成立する。そして、濃シアンインクのインク量で比較した場合のドット形成データSI毎のインク量がこのように定められることから、淡い画像の印刷には主に淡シアンインクが用いられ、濃い画像の印刷には主に濃シアンインクが用いられる。その結果、淡い画像における濃シアンインクの使用度合いを抑えることができ、粒状性の向上が図れる。
【0080】
さらに、隣り合うドット同士のインク量の差についても検討する。本実施形態において、淡シアンインクの小ドット(換算量約0.8pL)と淡シアンインクの中ドット(換算量約2.3pL)の差は、換算量を基準として約1.5pLである。そして、淡シアンインクの中ドットと淡シアンインクの大ドット(換算量約4.7pL)の差は換算量を基準として約2.4pLであり、淡シアンインクの大ドットと濃シアンインクの小ドット(約7.0pL)の差は換算量を基準として約2.3pLである。また、濃シアンインクの小ドットと濃シアンインクの中ドット(約14.0pL)の差は約7.0pLであり、濃シアンインクの中ドットと濃シアンインクの大ドット(約21.0pL)の差も約7.0pLである。
【0081】
このように、隣り合うドット同士のインク量の差に関し、小さい側のドット同士のインク量の差を大きい側のドット同士のインク量の差よりも小さくしているので、粒状性が損なわれやすい淡い画像について濃度の変化度合いをきめ細かくでき、粒状性の向上が図れる。さらに、このインク量の差に関し、濃インクで換算した場合のインク量が多くなるほどドット同士のインク量の差を大きくしているので、この点でも淡い画像について濃度の変化度合いをきめ細かくでき、粒状性の向上が図れる。
【0082】
なお、以上は、淡シアンインクと濃シアンインクの組について説明したが、淡マゼンタインクと濃マゼンタインクの組についても同様である。そして、色相に大きな影響を与えるシアンやマゼンタについてこのような制御を行っているので、印刷画像の品質を高めることができる。
【0083】
また、この制御を行うにあたり、淡インクにおける中ドットの吐出時にピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号は、濃インクにおける小ドットの吐出時にピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号と同じである。加えて、淡インクにおける大ドットの吐出時にピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号は、濃インクにおける中ドットの吐出時にピエゾ素子PZTへ印加される駆動信号と同じである。このように、或るドット形成データSI(ドット階調値)に対応する濃インク用の駆動パルス(波形部)と、他のドット形成データSIに対応する淡インク用の駆動パルスを共通化すると、原駆動信号に含ませる波形部の種類を抑えつつ、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。
【0084】
<ハーフトーン処理について>
次に、ハーフトーン処理について説明する。前述したように、ハーフトーン処理は、シアンとマゼンタ用の第1のハーフトーン処理と、イエローとブラック用の第2のハーフトーン処理とがある。
【0085】
<第1のハーフトーン処理について>
第1のハーフトーン処理では、1つの単位領域に、淡インクの小ドット、中ドット、大ドット(便宜上、淡小ドット、淡中ドット、淡大ドットともいう。)と、濃インクの小ドット、中ドット、大ドット(便宜上、濃小ドット、濃中ドット、濃大ドットともいう。)との何れを形成するのか、複数のドットを重ねて形成するのか、或いは、ドットを形成しないのかなどを定め、ドット形成データSIを取得する。
【0086】
この第1のハーフトーン処理を具体例に基づいて説明する。ここで、図14は、第1のハーフトーン処理の具体例を示す図である。この図14において、横軸は入力階調値(印刷階調値)である。すなわち、変換の対象となる256階調のCMYK画素データに相当する。また、左側の縦軸はドット形成率を示している。このドット形成率は、対象となる単位領域に対する、各ドットが形成される確率を示したものである。このドット形成率は、インクの種類及び形成対象となるドットの種類毎に示されている。淡小ドットのドット形成率は白い三角形を付した線分で示され、淡中ドットのドット形成率は白い丸を付した線分で示されている。そして、淡大ドットのドット形成率は白い四角形を付した線分で示され、濃小ドットのドット形成率は黒い三角形を付した線分で示されている。また、濃中ドットのドット形成率は黒い丸を付した線分で示され、濃大ドットのドット形成率は黒い四角形を付した線分で示されている。なお、×印を付した線分は、その単位領域における総インク量を示している。また、右側の縦軸は、ドット形成率に対応するレベルデータの値を示している。このレベルデータは、対象となる単位領域にドットを形成するか否かの判断に用いられる値である。
【0087】
この第1のハーフトーン処理において、ホスト側コントローラ111は、或る単位領域について階調値が入力されると、濃インクに関し、濃大ドット、濃中ドット、濃小ドットの順でドットの形成/非形成を判断する。そして、濃大ドットの形成と定められた場合には、ドット形成データSIとしてデータ[11]が定められる。同様に、濃中ドットの形成と定められた場合にはドット形成データSIとしてデータ[10]が定められ、濃小ドットの形成と定められた場合にはドット形成データSIとしてデータ[01]が定められる。なお、それ以外の場合には、ドットの非形成と扱われ、ドット形成データSIとしてデータ[00]が定められる。
【0088】
例えば、或る単位領域の入力階調値(横軸)が191であった場合、濃大ドット及び濃中ドットのドット形成率はともに0%であり、濃小ドットのドット形成率は約50%である。この場合、最初に濃大ドットのレベルデータL0がディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較される。ここで、レベルデータL0は所定の閾値以下であるので、濃大ドットは非形成と判断される。次に、濃中ドットのレベルデータL0も所定の閾値と比較される。ここでも、レベルデータL0は所定の閾値以下であるので、濃中ドットも非形成と判断される。次に、濃小ドットのレベルデータL1と所定の閾値とが比較される。このとき、レベルデータL1の方が大きければ濃小ドットの形成と判断され、そうでなければ濃小ドットが非形成と判断される。
【0089】
また、ホスト側コントローラ111は、淡インクに関しても、淡大ドット、淡中ドット、淡小ドットの順で、ドットの形成/非形成を判断する。そして、ドット形成データSIを定める。例えば、或る単位領域の入力階調値が191であった場合、淡大ドットのドット形成率は70%弱であり、淡中ドットのドット形成率は約30%である。また、淡小ドットのドット形成率は0%である。この場合、最初に淡大ドットのレベルデータL2がディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較される。ここで、レベルデータL2が所定の閾値よりも大きい場合、淡大ドットの形成と判断される。そして、淡大ドットの形成と判断された場合、淡中ドットや淡小ドットの判断は行われない。一方、淡大ドットについて非形成と判断された場合、淡中ドットについての判断がなされる。ここでは、淡中ドットのレベルデータL3が所定の閾値と比較される。そして、レベルデータL3が所定の閾値よりも大きい場合には淡中ドットの形成と判断され、そうでない場合には淡小ドットの判断が行われる。なお、淡小ドットの判断に移行した場合、レベルデータL0が所定の閾値と比較されるが、レベルデータL0は所定の閾値以下であるので、淡小ドットも非形成と判断される。
【0090】
そして、この実施形態では、ドット形成データSIの種類に対応する淡インクのインク量と濃インクのインク量を前述したように定めているので、淡い画像の印刷には淡インクが用いられ、濃い画像の印刷には主に濃インクが用いられる。例えば、階調値0からほぼ中間の階調値127までの範囲では、淡インク(淡小ドット,淡中ドット)が用いられ、濃インクは用いられない。また、階調値128から階調値191までの範囲では、淡中ドット、淡大ドット及び濃小ドットが用いられる。さらに、階調値192から階調値255までの範囲では、淡中ドット、淡大ドット、濃小ドット、濃中ドット及び濃大ドットが用いられる。そして、階調値128から階調値255までの範囲では、階調値が高くなるほど濃インクの比率が大きくなるように、各ドットのドット形成率が定められている。なお、この実施形態では、階調値220以上の濃い画像を印刷する際も淡インクが用いられている。これは、なめらかな階調表現を実現するためである。すなわち、濃インクの補助として淡インクを用いることにより、濃度の変化度合いを小さくすることができ、微妙な濃度差を表すことができる。また、濃インクの濃度を淡インクで補っているため、濃インクの濃度を淡インクの濃度に近付けることができ、この点でもなめらかな階調表現が実現できる。
【0091】
<第2のハーフトーン処理について>
第2のハーフトーン処理では、1つの単位領域に、小ドット、中ドット、大ドットの何れを形成するのか、或いは、ドットを形成しないのかを定め、ドット形成データSIを取得する。この第2のハーフトーン処理も、基本的な内容は第1のハーフトーン処理と同様である。簡単に説明すると、或る単位領域の入力階調値について、大ドットのレベルデータを求め、このレベルデータの値をディザマトリクスで定められる所定の閾値と比較する。ここで、レベルデータの方が大きければ大ドットの形成と判断され、大ドットの形成を示すデータ[11]が定められる。一方、大ドットの非形成と判断された場合には、中ドットについて同様の処理が行われる。ここで、中ドットの形成と判断された場合には、中ドットの形成を示すデータ[10]が定められる。また、中ドットの非形成と判断された場合には、小ドットについて同様の処理が行われる。ここで、小ドットの形成と判断された場合には、小ドットの形成を示すデータ[01]が定められ、小ドットも非形成と判断された場合には、ドットの非形成を示すデータ[00]が定められる。
そして、これらの第1,第2のハーフトーン処理にて、ドットの形成や非形成を示すデータが全ての単位領域について定められたならば、ハーフトーン処理を終了する。
【0092】
<第1実施形態のまとめ>
この第1実施形態の印刷システム100では、ドット形成データSI(ドット階調値)に応じた駆動信号を複数種類生成してピエゾ素子PZTに印加している。そして、生成される複数種類の駆動信号に関し、小ドットのドット形成データSI(データ[01],インクを吐出する際の最小ドット階調値に相当する。)に対応する濃インク用の駆動パルスと淡インク用の駆動パルスとが異なり、かつ、大ドットのドット形成データSI(データ[11],最大ドット階調値に相当する。)に対応する濃インク用の駆動パルスと淡インク用の駆動パルスとが異なっている。このため、小ドットのドット形成データSIに対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量、及び、大ドットのドット形成データSIに対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量をそれぞれ定めることができる。従って、濃インクで印刷される濃度範囲と淡インクで印刷される濃度範囲を最適化でき、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。その結果、粒状性の向上が図れる。
【0093】
また、この印刷システム100では、インクの種類毎に制御ロジック83(スイッチ動作情報記憶部)を設け、各制御ロジック83にドット形成データSI毎のスイッチ動作情報を記憶させている。そして、各制御ロジック83から出力させたドット形成データSI毎のスイッチ動作情報を、ドット形成データSIに基づいてデコーダ84で選択させ、選択されたスイッチ動作情報に基づいてヘッド側スイッチ86を動作させている。この構成では、ヘッド側スイッチ86の動作を制御することで、共通の原駆動信号COMから複数種類の駆動信号を容易に生成できる。また、インクの種類毎及びドット形成データSIの種類毎のスイッチ動作情報を制御ロジック83に記憶させているので、CPU72等による演算をすることなく、多階調における制御が行える。その結果、印刷動作の高速化が図れる。また、使用されるインクの種類が相違した場合において、制御ロジック83の記憶内容を更新すれば済み、容易に対応できる。
【0094】
===第2実施形態===
ところで、前述した第1実施形態の印刷システム100では、淡インクの中ドットと濃インクの小ドットで同じ駆動パルス(第3駆動パルスPS3)が用いられ、淡インクの大ドットと濃インクの中ドットで同じ駆動パルス(第1駆動パルスPS1,第3駆動パルスPS3)が用いられていた。この点に関し、淡インクの大ドットと濃インクの小ドットについてのみ同じ駆動パルスを用いてもよい。以下、このように構成した第2実施形態の印刷システム100について説明する。
【0095】
ここで、図15は、第2実施形態の印刷システム100における原駆動信号COMを説明する図である。図16Aは、淡シアンインクや淡マゼンタインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図16Bは、濃シアンインク、濃マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの吐出時に生成される駆動信号を階調毎に示した図である。図17は、ピエゾ素子PZTに印加される駆動パルスPS11〜PS15を、インクの種類毎、及び、階調毎に示した図である。図18は、淡シアンインクと濃シアンインクについて、吐出されるインク量及び淡シアンインクの濃シアンインクへの換算量をドット形成データSIの種類毎に示した図である。
【0096】
なお、この第2実施形態におけるハードウェアの構成は、前述した第1実施形態と同じである。このため、ハードウェアの説明は省略する。
【0097】
<原駆動信号COMについて>
まず、原駆動信号COMについて説明する。この原駆動信号COMにおいて、繰り返し周期Tの期間T1では第1駆動パルスPS11を有する第1区間信号SS11が生成され、期間T2では第2駆動パルスPS12を有する第2区間信号SS12が生成される。また、期間T3では第3駆動パルスPS13を有する第3区間信号SS13が生成され、期間T4では第4駆動パルスPS14を有する第4区間信号SS14が生成される。さらに、期間T5では第5駆動パルスPS15を有する第5区間信号SS15が生成される。
そして、駆動パルスPS11,PS13,PS15は何れも同じ波形をしており、1つの駆動パルスがピエゾ素子PZTに印加されると約7.0pLのインクが吐出される。また、第2駆動パルスPS12がピエゾ素子PZTへ印加されると約3.5pLのインクが吐出され、第4駆動パルスPS14がピエゾ素子PZTへ印加されると約1.6pLのインクが吐出される。
【0098】
<駆動信号の生成について>
図16Aに示すように、淡インク用スイッチ動作情報は、スイッチ動作情報q0がデータ[00000]であり、スイッチ動作情報q1がデータ[00010]である。また、スイッチ動作情報q2がデータ[01000]であり、スイッチ動作情報q3がデータ[00100]である。これにより、図17にも示すように、非吐出のドット形成データSIでは、スイッチ動作情報q0が選択されるので、駆動信号は生成されない。そして、小ドットのドット形成データSIではスイッチ動作情報q2が選択され、第4区間信号SS14が駆動信号となり、第4駆動パルスPS14のピエゾ素子PZTへの印加により、インクが吐出される。これにより、ノズルNzからは約1.6pLのインクが吐出され、用紙Sには対応する大きさの小ドットが形成される。また、中ドットのドット形成データSIではスイッチ動作情報q2が選択され、第2区間信号SS12が駆動信号となり、第2駆動パルスPS12のピエゾ素子PZTへの印加により、インクが吐出される。これにより、ノズルNzからは約3.5pLのインクが吐出され、用紙Sには対応する大きさの中ドットが形成される。同様に、大ドットのドット形成データSIではスイッチ動作情報q3が選択され、第3区間信号SS13が駆動信号となり、駆動パルスPS13のピエゾ素子PZTへの印加により、インクが吐出される。これにより、ノズルNzからは約7.0pLのインクが吐出され、用紙Sには対応する大きさの大ドットが形成される。
【0099】
一方、図16Bに示すように、濃インク用スイッチ動作情報は、スイッチ動作情報q0がデータ[00000]であり、スイッチ動作情報q1がデータ[00100]である。また、スイッチ動作情報q2がデータ[10100]であり、スイッチ動作情報q3がデータ[10101]である。これにより、図17にも示すように、非吐出のドット形成データSIでは駆動信号は生成されない。そして、小ドットのドット形成データSIでは第3区間信号SS13が駆動信号となり、第3駆動パルスPS13に基づいてノズルNzからは約7.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの小ドットが形成される。また、中ドットのドット形成データSIでは第1区間信号SS11及び第3区間信号SS13が駆動信号となり、駆動パルスPS11,PS13に基づいてノズルNzからは約14.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの中ドットが形成される。同様に、大ドットのドット形成データSIでは、第1区間信号SS11、第3区間信号SS13、及び、第5区間信号SS15が駆動信号となり、駆動パルスPS11,PS13,PS15に基づいてノズルNzからは約21.0pLのインクが吐出される。これにより、用紙Sにはこのインク量に対応する大きさの大ドットが形成される。
【0100】
ここで、淡インク用スイッチ動作情報に基づく吐出動作と、濃インク用スイッチ動作情報に基づく吐出動作とを比較する。小ドットのドット形成データSIにおいて、淡インクの吐出は第4駆動パルスPS14によって行われる。また、濃インクの吐出は、第3駆動パルスPS13によって行われる。中ドットのドット形成データSIにおいて、淡インクの吐出は第2駆動パルスPS12によって行われ、濃インクの吐出は第1駆動パルスPS11及び第3駆動パルスPS13によって行われる。大ドットのドット形成データSIにおいて、淡インクの吐出は、第3駆動パルスPS13によって行われる。また、濃インクの吐出は、第1駆動パルスPS11、第3駆動パルスPS13及び第5駆動パルスPS15によって行われる。
【0101】
このように、本実施形態のプリンタでも、淡インク用の駆動パルス(波形部)と濃インク用の駆動パルス(波形部)とに関し、ピエゾ素子PZTに印加される駆動パルスは、ドット形成データSIの種類毎に異なっている。従って、各ドットにおける淡インクの吐出量と濃インクの吐出量をそれぞれ定めることができる。このため、淡インクで印刷される濃度範囲と濃インクで印刷される濃度範囲とを最適化でき、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。その結果、粒状性の向上が図れる。
【0102】
また、本実施形態では、濃インクの小ドットで用いられる駆動パルス(インクを吐出する最小ドット階調値の波形部)と、淡インクの大ドットで用いられる駆動パルス(最大ドット階調値の波形部)のみが、ともに第3駆動パルスPS13で共通である。このため、原駆動信号に含ませる駆動パルスの種類を抑えつつ、印刷画像における濃度の変化度合いを一層きめ細かくすることができる。
【0103】
この点に関し、淡シアンインクを濃シアンインクに換算した換算量で検討する。本実施形態において淡インクを濃インクに換算したインク量(換算量)をドットの種類毎に求めると、例えば図18に示すようになる。すなわち、小ドットにおける換算量は約0.5pLとなる。また、中ドットにおける換算量は約1.2pLとなり、大ドットにおける換算量は約2.3pLとなる。そして、小ドットにおける濃シアンインクのインク量は約7.0pLであるので、大ドットの形成時に吐出された淡シアンインクの濃インクへの換算量は、小ドットの形成時に吐出された濃シアンインクの量よりも少ない。従って、本実施形態でも、濃シアンインクで印刷される濃度範囲と淡シアンインクで印刷される濃度範囲を最適化できる。
【0104】
また、隣り合うドット同士のインク量の差についても検討する。本実施形態において、淡シアンインクの小ドット(換算量約0.5pL)と淡シアンインクの中ドット(換算量約1.2pL)のインク量の差は、換算量を基準として約0.7pLである。そして、淡シアンインクの中ドットと淡シアンインクの大ドット(換算量約2.3pL)のインク量の差は換算量を基準として約1.1pLであり、淡シアンインクの大ドットと濃シアンインクの小ドット(約7.0pL)の差は換算量を基準として約4.7pLである。なお、濃シアンインクの小ドットと濃シアンインクの中ドットのインク量の差、及び、濃シアンインクの中ドットと濃シアンインクの大ドットのインク量の差は、ともに約7.0pLである。本実施形態でも、隣り合うドット同士のインク量の差に関し、小さい側のドット同士におけるインク量の差を大きい側のドット同士におけるインク量の差よりも小さくしているので、粒状性が損なわれやすい淡い画像について濃度の変化度合いをきめ細かくでき、粒状性の向上が図れる。さらに、このインク量の差に関し、濃インクで換算した場合のインク量が多くなるほどドット同士のインク量の差を大きくしているので、この点でも淡い画像について濃度の変化度合いをきめ細かくでき、粒状性の向上が図れる。
【0105】
<第2実施形態のまとめ>
この第2実施形態の印刷システム100でも、ドット形成データSIに応じた駆動信号を複数種類生成してピエゾ素子PZTに印加している。そして、生成される複数種類の駆動信号に関し、小ドットのドット形成データSIに対応する濃インク用の駆動パルスと淡インク用の駆動パルスとが異なり、かつ、大ドットのドット形成データSIに対応する濃インク用の駆動パルスと淡インク用の駆動パルスとが異なっている。このため、小ドットのドット形成データSIに対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量、及び、大ドットのドット形成データSIに対応する濃インクの吐出量と淡インクの吐出量をそれぞれ定めることができる。従って、濃インクで印刷される濃度範囲と淡インクで印刷される濃度範囲を最適化でき、印刷画像における濃度の変化度合いをきめ細かくすることができる。その結果、粒状性の向上が図れる。
【0106】
特に、この印刷システム100では、濃インクの小ドットで用いられる駆動パルス及び淡インクの大ドットで用いられる駆動パルスのみが、ともに第3駆動パルスPS13で共通となっている。このため、原駆動信号に含ませる駆動パルスの種類を抑えつつ、印刷画像における濃度の変化度合いを一層きめ細かくすることができる。
【0107】
===その他の実施形態について===
上記の各実施形態は、主としてプリンタ1について記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、印刷システム、プログラム等の開示が含まれている。また、実施形態としてのプリンタ1について説明をしたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0108】
<階調値について>
前述した各実施形態では、ドット形成データSIの種類(階調値の数)が「4」である印刷システム100について説明をした。しかし、この構成に限定されるものではない。すなわち、階調値は複数であればよい。例えば、階調値の数を「3」としてもよく、「6」や「8」にしても同様に構成できる。
【0109】
<駆動信号について>
前述した各実施形態は、共通の原駆動信号COMを使用し、駆動パルス(波形部)の選択パターンを異ならせることで、異なる駆動信号を生成していた。この点に関し、原駆動信号生成回路50を複数設けて、複数種類の原駆動信号COMを生成するようにしてもよい。
【0110】
<インクの色について>
前述した各実施形態では、シアンの段階的な濃淡印刷を行う場合に、濃シアンインクと淡シアンインクとを用い、マゼンタの段階的な濃淡印刷を行う場合に、濃マゼンタインクと淡マゼンタインクとを用いる印刷システム100を例に挙げて説明した。しかし、段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクは、シアンやマゼンタに限られるものではなく、他の色であってもよい。例えば、ブラックの階調印刷を行う場合に、ブラックインクとグレーインクとを用いてもよい。また、セピアの階調印刷を行う場合に、濃セピアインクと淡セピアインクを用いてもよい。
【0111】
<プリンタ1について>
前述の実施形態では、専ら印刷を行う単機能のプリンタ1を例に挙げて説明したが、印刷装置はこのプリンタ1に限定されるものではない。例えば、プリンタ1の機能とスキャナ装置の機能とを併せ持つ、所謂プリンタ・スキャナ複合機であってもよい。また、前述したように、プロッタやファクシミリ装置であってもよい。加えて、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の印刷装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0112】
<ヘッド41が有する素子について>
前述した各実施形態では、ヘッド41が有する素子、すなわち、インクを吐出させるための動作を行う素子として、ピエゾ素子PZTを例示したが、ピエゾ素子PZTに限定されるものではない。例えば、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子もヘッド41が有する素子になりうる。
【符号の説明】
【0113】
1 プリンタ,20 用紙搬送機構,21 給紙ローラ,22 搬送モータ,
23 搬送ローラ,24 プラテン,25 排紙ローラ,30 キャリッジ移動機構,
31 キャリッジモータ,32 ガイド軸,33 タイミングベルト,
34 駆動プーリー,35 アイドラプーリー,40 ヘッドユニット,
41 ヘッド,411 ケース,411a 収容室,412 流路ユニット,
412a 流路形成板,412b 弾性板,412c ノズルプレート,
412d 圧力室,412e ノズル連通口,412f 共通インク室,
412g インク供給路,412h 支持枠,412i 弾性膜,
412j アイランド部,413 ピエゾ素子ユニット,413a ピエゾ素子群,
413b 接着用基板,50 原駆動信号生成回路,60 検出器群,
61 リニア式エンコーダ,62 ロータリー式エンコーダ,63 紙検出器,
64 紙幅検出器,70 プリンタ側コントローラ,71 インタフェース部,
72 CPU,73 メモリ,74 制御ユニット,81 シフトレジスタ,
82 ラッチ回路,83 制御ロジック,84 デコーダ,85 ゲート回路,
86 ヘッド側スイッチ,100 印刷システム,110 コンピュータ,
111 ホスト側コントローラ,112 インタフェース部,113 CPU,
114 メモリ,120 表示装置,130 入力装置,131 キーボード,
132 マウス,140 記録再生装置,
141 フレキシブルディスクドライブ装置,
142 コンパクトディスクドライブ装置,
CR キャリッジ,IC インクカートリッジ,
ICk ブラックインクカートリッジ,
ICc カラーインクカートリッジ,
ICm カートリッジ側メモリ,TM1 メモリ側接点端子,
TM2 キャリッジ側接点端子,SI ドット形成データ,
CTR コントローラ基板,HC ヘッド制御部,PZT ピエゾ素子,
Nk ブラックインクノズル列,Ny イエローインクノズル列,
Nc シアンインクノズル列,Nm マゼンタインクノズル列,
Nlc 淡シアンインクノズル列,Nlm 淡マゼンタインクノズル列,
Nz ノズル,CLK クロック,SI ドット形成データ,
LAT ラッチ信号,CH チェンジ信号,N_CHG N−チャージ信号,
q0〜q3 スイッチ動作情報,
T 繰り返し周期,COM 原駆動信号,SS1 第1区間信号,
SS2 第2区間信号,SS3 第3区間信号,SS4 第4区間信号,
SS11 第1区間信号,SS12 第2区間信号,SS13 第3区間信号,
SS14 第4区間信号,SS15 第5区間信号,PS1 第1駆動パルス,
PS2 第2駆動パルス,PS3 第3駆動パルス,PS4 第4駆動パルス,
PS11 第1駆動パルス,PS12 第2駆動パルス,PS13 第3駆動パルス,
PS14 第4駆動パルス,PS15 第5駆動パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、
(b)前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、
インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
を有する印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成部は、
前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、
前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、
前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて、前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、
を有する印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成部は、
前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報であって、吐出対象となるインクの種類に応じたスイッチ動作情報を、前記ドット階調値の種類毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部を有し、
前記スイッチコントローラは、
前記指定されたドット階調値に基づいて対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御する、印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成部は、
或るドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と他のドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通である、複数種類の前記駆動信号を生成する、印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成部は、
前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通である、複数種類の前記駆動信号を生成する、印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成部は、
前記最大ドット階調値で吐出された淡インクを前記濃インクに換算した量が、前記最小ドット階調値で吐出された濃インクの量よりも少なくなるように、前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部を定めた駆動信号、及び、前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部を定めた駆動信号を含む、複数種類の前記駆動信号を生成する、印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記ヘッドは、
シアンの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する、印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記ヘッドは、
マゼンタの段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する、印刷装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の印刷装置であって、
複数種類の前記インクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器を有し、
前記駆動信号生成部は、
前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識する、印刷装置。
【請求項10】
(a)インクを吐出するための動作を行う素子を有し、或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出するヘッドと、
(b)複数種類の前記インクを貯留するインク貯留容器であって、貯留されたインクの種類を示すインク種類情報が記憶された容器側記憶部を有するインク貯留容器と、
(c)前記素子を動作させるための波形部を有する駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、
(c1)前記波形部を複数有する原駆動信号を生成する原駆動信号生成部と、
(c2)前記原駆動信号生成部と前記素子との間に配置され、前記原駆動信号から前記素子に印加される駆動信号を生成するためのスイッチと、
(c3)前記スイッチの動作を定めるためのスイッチ動作情報であって、吐出対象となるインクの種類に応じたスイッチ動作情報を、前記ドット階調値の種類毎に記憶したスイッチ動作情報記憶部と、
(c4)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値に基づいて、対応するスイッチ動作情報を選択し、選択したスイッチ動作情報を用いて前記スイッチの動作を制御するスイッチコントローラと、を有し、
(c5)前記容器側記憶部に記憶されたインク種類情報に基づいて、吐出するインクの種類を認識し、
(c6)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なるとともに、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、
(c7)前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが共通であり、かつ、
(c8)前記最大ドット階調値で吐出された淡インクを前記濃インクに換算した量が、前記最小ドット階調値で吐出された濃インクの量よりも少なくなるように、前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部を定めた駆動信号、及び、前記最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部を定めた駆動信号を含む、
(c9)複数種類の前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
を有し、
(d)前記ヘッドは、
(d1)シアンの階調印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出するとともに、
(d2)マゼンタの階調印刷に用いられる濃インク及び淡インクを前記ドット階調値毎に量を異ならせて吐出する、印刷装置。
【請求項11】
(a)或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出する印刷方法であって、
(b)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成すること、
(c)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて生成された駆動信号を、インクを吐出するための動作を行う素子に印加すること、
を行う印刷方法。
【請求項12】
(a)或る色の段階的な濃淡印刷に用いられる濃インク及び淡インクを、形成すべきドットの大きさに基づくドット階調値毎に量を異ならせて吐出する印刷装置用のプログラムであって、
(b)インクを吐出する際の最小ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最小ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なり、かつ、最大ドット階調値に対応する前記濃インク用の波形部と前記最大ドット階調値に対応する前記淡インク用の波形部とが異なる、複数種類の前記駆動信号を生成すること、
(c)前記形成すべきドットの大きさに応じて指定されたドット階調値及び前記インクの種類に基づいて生成された駆動信号を、インクを吐出するための動作を行う素子に印加すること、
を前記印刷装置に行わせるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−63668(P2013−63668A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3818(P2013−3818)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2006−14343(P2006−14343)の分割
【原出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】