説明

印刷装置、印刷方法及び印刷物

【課題】ノズルの目詰まりを抑制する。
【解決手段】本発明は、媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが搬送方向に並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが搬送方向に並ぶ第2ノズル列とを有し、第1ノズル列と第2ノズル列が移動方向に並んで配置されているヘッドと、搬送ユニットに媒体を搬送させる搬送動作と、移動方向に移動するヘッドにインクを吐出させる吐出動作とを行わせる制御部と、を備えた印刷装置である。制御部は、背景画像の上にカラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、カラー画像の上に背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像を移動方向に並べて媒体に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な媒体に、白色等の背景色による背景画像と、カラー画像とを印刷することが知られている(特許文献1参照)。媒体の印刷面の側からカラー画像を見る場合には、まず背景画像を媒体に印刷し、その背景画像の上にカラー画像を印刷する。この印刷方法は「表刷り印刷」と呼ばれている。逆に、透明な媒体の背面の側からカラー画像を見る場合には、まずカラー画像を媒体に印刷し、そのカラー画像の上に背景画像を印刷する。この印刷方法は「裏刷り印刷」と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラー画像を形成するためのインクを吐出するカラーノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出する背景用ノズル列が、ヘッドの移動方向に並んで配置されることがある。このようにカラーノズル列と背景用ノズル列が配置されたヘッドを用いて表刷り印刷を行う場合、特定のノズルが不使用ノズルとなる。また、このようにカラーノズル列と背景用ノズル列が配置されたヘッドを用いて裏刷り印刷を行う場合も、同様に、特定のノズルが不使用ノズルとなる。
このため、表刷り印刷又は裏刷り印刷の一方の印刷が長時間継続して行われると、不使用ノズルのインク成分が蒸発により増粘したり固化したりし、ノズルが目詰まりし易くなる。
【0005】
本発明は、ノズルの目詰まりを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、前記搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶカラーノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ背景用ノズル列とを有し、前記カラーノズル列と前記背景用ノズル列が前記移動方向に並んで配置されているヘッドと、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作と、前記移動方向に移動するヘッドに前記インクを吐出させる吐出動作とを行わせる制御部と、を備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記背景画像の上に前記カラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、前記カラー画像の上に前記背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、前記表刷り印刷画像と前記裏刷り印刷画像を前記移動方向に並べて前記媒体に印刷することを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aは、プリンター1の概略断面図であり、図2Bは、プリンター1の概略上面図である。
【図3】図3は、キャリッジの下面の説明図である。
【図4】図4Aは、表刷り印刷画像の説明図である。図4Bは、裏刷り印刷画像の説明図である。
【図5】図5Aは、表刷り印刷の説明図である。図5Bは、裏刷り印刷の説明図である。
【図6】図6Aは、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像の割り付けの説明図である。図6Bは、或るパスの使用ノズルの説明図である。
【図7】図7Aは、第2実施形態の印刷物の説明図である。図7Bは、第2実施形態の或るパスの使用ノズルの説明図である。
【図8】図8Aは、第2実施形態の変形例の印刷物の説明図である。図8Bは、第2実施形態の変形例の或るパスの使用ノズルの説明図である。
【図9】図9Aは、第3実施形態の印刷物の説明図である。図9Bは、第3実施形態のノズル検査パターンの説明図である。
【図10】図10は、通常のインターレース印刷の説明図である。
【図11】図11は、インターレース印刷による表刷り印刷の説明図である。
【図12】図12A及び図12Bは、第5実施形態の印刷方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、前記搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶカラーノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ背景用ノズル列とを有し、前記カラーノズル列と前記背景用ノズル列が前記移動方向に並んで配置されているヘッドと、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作と、前記移動方向に移動するヘッドに前記インクを吐出させる吐出動作とを行わせる制御部と、を備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記背景画像の上に前記カラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、前記カラー画像の上に前記背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、前記表刷り印刷画像と前記裏刷り印刷画像を前記移動方向に並べて前記媒体に印刷することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、ノズルの目詰まりを抑制できる。
【0011】
前記制御部は、前記表刷り印刷画像が形成される領域と前記裏刷り印刷画像が形成される領域との間を前記ヘッドが通過するときに、前記ノズルから前記インクを強制的に連続吐出させることが望ましい。これにより、表刷り印刷及び裏刷り印刷の一方の印刷中にノズル内でインクの増粘や固化が進んだとしても、他方の印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。
【0012】
前記制御部は、前記表刷り印刷画像が形成される領域と前記裏刷り印刷画像が形成される領域との間を前記ヘッドが通過するときに、前記ノズルから前記インクを強制的に連続吐出させることによって、前記ノズルの目詰まりを検査するためのパターンを形成することが望ましい。これにより、ノズルの目詰まりを検査できる。
【0013】
前記媒体をカットするためのカッターユニットを更に備え、前記表刷り印刷画像及び前記裏刷り印刷画像の少なくとも一方に前記パターンを付随させるように、前記カッターユニットが前記媒体をカットすることが望ましい。これにより、前記パターンを用いて印刷画像の品質評価を行うことができる。
【0014】
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、前記搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ第2ノズル列とを有し、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列が前記移動方向に並んで配置されているヘッドと、を用い、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作と、前記移動方向に移動するヘッドに前記インクを吐出させる吐出動作とを行う印刷方法であって、前記背景画像の上に前記カラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、前記カラー画像の上に前記背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、前記表刷り印刷画像と前記裏刷り印刷画像を前記移動方向に並べて前記媒体に印刷することを特徴とする印刷方法が明らかとなる。
このような印刷方法によれば、ノズルの目詰まりを抑制できる。
【0015】
また、このような印刷方法によって印刷された印刷物が明らかとなる。このような印刷物によれば、ノズルの目詰まりが抑制されて印刷されるため、高画質なものになる。
【0016】
===第1実施形態===
<プリンターの基本構成>
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2Aは、プリンター1の概略断面図であり、図2Bは、プリンター1の概略上面図である。以下、印刷装置をインクジェットプリンター(プリンター1)とし、プリンター1とコンピューター90が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0017】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター90とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、媒体S(ロール紙など)が連続する方向(搬送方向)に、媒体Sを上流側から下流側に搬送するものである。モーターによって駆動する搬送ローラー21によって印刷前のロール状の媒体Sを印刷領域に供給し、その後、印刷済みの媒体Sを巻取機構によりロール状に巻き取る。なお、印刷中に印刷領域に位置する媒体を下からバキューム吸着することで、媒体Sを所定の位置に保持することができる。
【0019】
キャリッジユニット30は、ヘッドを紙幅方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット30は、ヘッドを搭載するキャリッジ31と、キャリッジを往復移動させるためのキャリッジ移動機構32とを有する。
【0020】
ヘッドユニット40は、キャリッジ31に設けられたヘッドを有する。ヘッドの下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられている。本実施形態では、ノズルからUVインクが吐出される。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。
【0021】
照射ユニット60は、媒体に吐出されたUVインクに紫外光を照射するためのものである。本実施形態の照射ユニット60は、仮硬化用照射部61と、本硬化用照射部62とを有する。
仮硬化用照射部61は、キャリッジ31に設けられており、ヘッドとともに移動可能である。仮硬化用照射部61は、媒体に着弾したUVインク同士が滲まないようにUVインクの表面を硬化(仮硬化)させる程度の強度の紫外光を照射する。例えば、仮硬化用照射部61として、LED(発光ダイオード)などが採用される。コントローラー10は、キャリッジ31を移動させながら仮硬化用照射部61から紫外光を照射させて、印刷領域上のUVインクを仮硬化させる。
本硬化用照射部62は、印刷領域のX方向下流側に設けられており、媒体の幅にわたって紫外光を照射できる。本硬化用照射部62は、媒体上のUVインクを本硬化(完全に固化)させることが可能な強度の紫外光を照射する。例えば、本硬化用照射部62として、UVランプなどが採用される。コントローラー10は、媒体を搬送しながら本硬化用照射部62から紫外光を照射させて、UVインクで形成された画像を硬化させる。
【0022】
カッターユニット70は、画像が形成された媒体の所定の部位をカットするためのものである。カッターユニット70は、カッター(金属刃若しくはレーザー)や、カッターを紙幅方向に移動させる移動機構などを備えている。
【0023】
印刷を行うとき、プリンター1のコントローラー10は、キャリッジ31を移動方向に移動させてヘッドからインクを吐出させる動作(パス)と、搬送ユニット20に媒体を搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせる。各パスにおいて、プリンター1は、ヘッドからインクを吐出して媒体に画像を形成するとともに、仮硬化用照射部61から紫外光を照射して画像を仮硬化させる。このようにパスと搬送動作とを繰り返すことによって、媒体に画像をつなぎ合わせて形成することができる。
【0024】
パスと搬送動作が繰り返されることによって、印刷領域で形成された画像が徐々に本硬化用照射部62に向かって搬送される。そして、画像が本硬化用照射部62に対向する位置まで搬送されると、本硬化用照射部62から紫外光が照射されて、画像が本硬化する。
【0025】
更に搬送動作が繰り返されることによって、本硬化した画像がカッターユニット70に向かって搬送される。そして、カッターユニット70は、カットすべき位置において媒体をカット(裁断)する。例えば、後述する実施形態では、カッターユニット70は、媒体の幅を半分にカットするように、媒体を搬送方向に沿って裁断する。カット後の媒体は、図示するようにロール状に巻き取られても良いし、カッターユニット70によって枚葉(例えば、A版、B版などの大きさ)にカットされた場合には積み重ねられても良い。
【0026】
図3は、キャリッジの下面の説明図である。
キャリッジ31の下面には、ヘッド41が設けられている。ヘッド41は、5個のノズル列を備えている。この5個のノズル列は、ヘッド41の移動方向(紙幅方向)に並んで配置されている。
【0027】
5個のノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列(K)と、シアンインクを吐出するためのシアンノズル列(C)と、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタノズル列(M)と、イエローインクを吐出するためのイエローノズル列(Y)と、白インクを吐出するための白ノズル列(W)である。ブラックノズル列、シアンノズル列、マゼンタノズル列及びイエローノズル列は、カラー画像を形成するためのカラーインクを吐出するカラーノズル列である。白ノズル列は、背景画像を形成するための白インク(背景用インク)を吐出する背景用ノズル列である。
【0028】
なお、白インクは、透明な媒体にカラー画像を形成する際に用いられる特殊なインクである。透明な媒体にカラー画像を単独で形成するとカラー画像の視認性が良くないため、カラー画像と共に白インクで背景画像を形成することによって、カラー画像のコントラストを向上させて、若しくはカラー画像の遮蔽性を向上させて、カラー画像の視認性を高めている。このため、白インクは、カラーインクとは使用方法が全く異なるインクである。
【0029】
各ノズル列は、それぞれ180個のノズルから構成されている。各ノズル列の180個のノズルは、所定のノズルピッチで搬送方向に沿って並んでおり、本実施形態では1/180インチの間隔で並んでいる(つまり、図中のLは1インチである)。このため、各ノズル列からインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ31が移動方向に1回移動する毎に(1回のパス毎に)、搬送方向に沿って1/180インチの間隔でドット列が形成されることになる。
【0030】
なお、ノズルピッチは、k×Dとして表すことができる。kは整数であり、Dは搬送方向(ノズル列の方向)のドット間隔である。例えば、Dを1/180インチとして画像を形成するのであれば、kは1である。Dを1/720インチとして画像を形成するのであれば、kは4である。
【0031】
2個の仮硬化用照射部61は、搬送方向に沿って1インチの幅(Lに相当)の照射範囲に紫外光を照射することができる。仮硬化用照射部61の照射範囲と各ノズル列のインクの吐出範囲が移動方向に並んでいるため、あるパスにおいてノズル列から媒体にインクが吐出された直後に、一方の仮硬化用照射部が媒体に着弾したインク(ドット)に紫外光を照射できる。
【0032】
<表刷り印刷と裏刷り印刷について>
図4Aは、表刷り印刷により形成される画像(表刷り印刷画像)の説明図である。「表刷り印刷」とは、背景画像を媒体に形成した後に、その背景画像の上にカラー画像を形成する印刷である。表刷り印刷した場合、媒体の表側から見たときには、カラー画像が背景画像の上に印刷されているため、カラー画像が見易い。(但し、媒体の裏側から見たときには、背景画像の下にカラー画像が隠れているため、カラー画像が見難い状態になる。)
図4Bは、裏刷り印刷により形成される画像(裏刷り印刷画像)の説明図である。「裏刷り印刷」とは、カラー画像を媒体に形成した後に、そのカラー画像の上に背景画像を形成する印刷である。裏刷り印刷は主に透明な媒体に対して行われ、裏刷り印刷による印刷物のカラー画像は、透明な媒体越しに見ることになる。裏刷り印刷した場合、媒体の裏側か見たときには、カラー画像が背景画像の上に印刷されているため、カラー画像が見易い。(但し、媒体の表側から見たときには、背景画像の下にカラー画像が隠れているため、カラー画像が見難い状態になる。)
図5Aは、表刷り印刷の説明図である。
表刷り印刷を行う場合、カラーノズル列(例えばシアンノズル列)では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)が用いられ、白ノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)が用いられる。このようにノズルを用いたパスと搬送動作とを交互に繰り返すことによって、白インクによって形成された背景画像の上に、カラー画像が形成される。例えば、図中の領域Aでは、パス1において背景画像が形成され、その後のパス2においてカラー画像が形成されることによって、背景画像の上にカラー画像が形成される。
【0033】
図5Bは、裏刷り印刷の説明図である。
裏刷り印刷を行う場合、カラーノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)が用いられ、白ノズル列では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)が用いられる。このようにノズルを用いたパスと搬送動作とを交互に繰り返すことによって、カラー画像の上に背景画像が形成される。例えば、図中の領域Aでは、パス1においてカラー画像が形成され、その後のパス2において背景画像が形成されることによって、カラー画像の上に背景画像が形成される。
【0034】
図5Aに示すように、表刷り印刷が行われているとき、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)と、白ノズル列の搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)は、不使用ノズルになる。このため、表刷り印刷が長時間継続して行われると、これらの不使用ノズルのインク成分が蒸発により増粘したり固化したりし、ノズルが目詰まりし易くなる。特に、白インクは増粘し易く、ノズルが目詰まりし易くなる。なお、ノズルの目詰まりを防止するための手段として、印刷領域の外側でノズルからインクを強制的に連続吐出させるフラッシング動作(印刷外フラッシング)があるが、印刷外フラッシングが頻繁に行われると、インクの消費量が増大するだけでなく、印刷動作が一旦中断されるため印刷時間が長くなってしまう。
【0035】
同様に、図5Bに示すように、裏刷り印刷が行われているとき、カラーノズル列の搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)と、白ノズル列の搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)は、不使用ノズルになる。このため、裏刷り印刷が長時間継続して行われても、ノズルが目詰まりし易くなる。特に、白インクは増粘し易く、ノズルが目詰まりし易くなる。また、ノズルの目詰まりを防止するために印刷外フラッシングが頻繁に行われると、インクの消費量が増大するだけでなく、印刷動作が一旦中断されるため印刷時間が長くなってしまう。
【0036】
<表刷り印刷と裏刷り印刷の割り付け>
例えば、プリンター1を所有する印刷会社が、A社から表刷り印刷の印刷物を受注すると共に、B社から裏刷り印刷の印刷物を受注することがある。このようなとき、プリンター1は、表刷り印刷の印刷指示(印刷ジョブ)と裏刷り印刷の印刷指示の両方をコンピューター90から受信することになる。但し、仮にプリンター1が表刷り印刷を完了した後に裏刷り印刷を行うと、表刷り印刷中に不使用ノズルが目詰まりしてしまい、その後の裏刷り印刷を正常に行えなくなるおそれがある。
【0037】
そこで、以下に説明する本実施形態では、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方がある場合、プリンター1は、表刷り印刷画像(図4A参照)と裏刷り印刷画像(図4B参照)を紙幅方向(ヘッド41の移動方向)に割り付けて、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方を行う。
【0038】
図6Aは、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像の割り付けの説明図である。プリンター1のコントローラー10は、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方があれば、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像が紙幅方向に並ぶように、印刷すべき画像を配置する(画像を割り付ける)。表刷り印刷すべき画像が複数ある場合には、複数の表刷り印刷画像が搬送方向に沿って並ぶように、印刷すべき画像を配置する。同様に、裏刷り印刷すべき画像が複数ある場合にも、複数の裏刷り印刷画像が搬送方向に沿って並ぶように、印刷すべき画像を配置する。
【0039】
ここでは、図中の媒体の左側に表刷り印刷領域が設定されており、右側半分に裏刷り印刷領域が設定されている。そして、左側の表刷り印刷領域に複数の表刷り印刷画像が搬送方向に沿って配置され、右側の裏刷り印刷領域に複数の裏刷り印刷画像が搬送方向に沿って配置される。表刷り印刷領域と裏刷り印刷領域が均等に割り付けられているが、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像のそれぞれの大きさに応じて、それぞれの印刷領域の幅が異なっていても良い。
【0040】
表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像を紙幅方向に並べて割り付けることによって、次に説明するように、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われることになる。
【0041】
図6Bは、或るパスの使用ノズルの説明図である。
表刷り印刷では、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)と、白ノズル列の搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)が不使用ノズルになるが、これらのノズルは、裏刷り印刷で用いられることになる。また、裏刷り印刷では、カラーノズル列の搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)と、白ノズル列の搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)が不使用ノズルになるが、これらのノズルは、表刷り印刷で用いられることになる。
【0042】
このため、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われることによって、長時間継続して不使用となるノズルを減らすことができる。この結果、ノズルが目詰まりしにくくなる。また、長時間継続して不使用となるノズルを減らすことできるため、印刷領域の外側でノズルからインクを強制的に連続吐出させるフラッシング動作(印刷外フラッシング)の回数を減らすことも可能である。印刷外フラッシングが頻繁に行われると、インクの消費量が増大するだけでなく、印刷動作が一旦中断されるため印刷時間が長くなってしまうが、本実施形態によれば、インクの消費量を抑制し、印刷時間を短縮させることが可能になる。特に、増粘し易い白インクでは、この効果が顕著である。
【0043】
なお、コントローラー10は、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像との間の余白において、カッターユニットに媒体をカットさせる。このカットラインは、搬送方向に沿ったラインとなる(図6A参照)。表刷り印刷画像も裏刷り印刷画像も搬送方向に沿って並んで複数並んで配置されているため、搬送方向に沿って媒体を2分割すれば、表刷り印刷が行われた媒体と、裏刷り印刷が行われた媒体とを切り離すことができる。前述のようにA社から表刷り印刷の印刷物を受注し、B社から裏刷り印刷の印刷物を受注した場合には、カッターユニットにより2分割された媒体の一方をA社に納品し、他方をB社に納品することになる。
【0044】
===第2実施形態===
図7Aは、第2実施形態の印刷物の説明図である。図7Bは、第2実施形態の或るパスの使用ノズルの説明図である。
【0045】
第2実施形態においても、プリンター1のコントローラー10は、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方があれば、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像が紙幅方向に並ぶように、印刷すべき画像を割り付ける(図7A参照)。この結果、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われる(図7B参照)。これにより、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ノズルが目詰まりしにくくなる。
【0046】
更に第2実施形態では、コントローラー10は、表刷り印刷領域と裏刷り印刷領域との間にフラッシング領域を設定する(図7A参照)。そして、コントローラー10は、各パスにおいてノズルがフラッシング領域上を通過するときに、次の画像の印刷に用いられるノズルからインクを強制的に連続吐出させる(フラッシング動作)。図7Bに示すパスでは、ノズルがフラッシング領域上を通過するときに、裏刷り印刷に用いられるノズル(カラーノズル列の搬送方向上流側半分のノズル♯91〜180と、白ノズル列の搬送方向下流側半分のノズル♯1〜90)からインクが強制的に連続吐出させられる。これにより、蒸発しやすい成分を含むインクが採用されて、表刷り印刷中にノズル内でインクの増粘や固化が多少進んだとしても、裏刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。
【0047】
なお、図7Bの左側に示すように、表刷り印刷が行われる直前に、媒体の外側で全てのノズルからインクを強制的に連続吐出させても良い。これにより、表刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。また、図7Bの右側に示すように、裏刷り印刷が行われた直後に、媒体の外側で全てのノズルからインクを強制的に連続吐出させても良い。これにより、次のパスで使用されるノズルの目詰まりを抑制できる。なお、裏刷り印刷が行われた直後のフラッシングは行わなくても良い。
【0048】
ところで、第2実施形態によれば、表刷り印刷領域と裏刷り印刷領域との間のフラッシング領域に、フラッシング動作により吐出されたインクが着弾することになる。この結果、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像との間に、フラッシングによる画像が形成されることになる。
【0049】
そこで、第2実施形態では、コントローラー10は、フラッシング領域を切り取るように、フラッシング領域の両側をカッターユニットにカットさせる。つまり、第2実施形態では、コントローラー10は、表刷り印刷画像とフラッシング領域との間の余白にカットラインを設けると共に、裏刷り印刷画像とフラッシング領域との間の余白にカットラインを設ける。これにより、本来であればフラッシングによる画像を除去した状態で、表刷り印刷画像や裏刷り印刷画像を納品することができる。
但し、フラッシングによる画像が表刷り印刷画像又は裏刷り印刷画像に付属されていても許容される場合には、図7Bの2つのカットラインの片側だけでも良い。
【0050】
<第2実施形態の変形例>
図7A及び図7Bに示した第2実施形態では、表刷り印刷が行われる直前にフラッシングが行われる場合、媒体の外側で行われていた。但し、このフラッシングを媒体の内側で行っても良い。また、図7A及び図7Bに示した第2実施形態では、裏刷り印刷が行われた直後にフラッシングが行われる場合も、媒体の外側で行われていた。但し、このフラッシングを媒体の内側で行っても良い。
【0051】
図8Aは、第2実施形態の変形例の印刷物の説明図である。図8Bは、第2実施形態の変形例の或るパスの使用ノズルの説明図である。
【0052】
この変形例においても、プリンター1のコントローラー10は、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方があれば、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像が紙幅方向に並ぶように、印刷すべき画像を割り付ける(図8A参照)。この結果、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われる(図8B参照)。これにより、変形例においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ノズルが目詰まりしにくくなる。
【0053】
また、変形例においても、コントローラー10は、表刷り印刷領域と裏刷り印刷領域との間にフラッシング領域を設定する(図8A参照)。これにより、蒸発しやすい成分を含むインクが採用されて、表刷り印刷中にノズル内でインクの増粘や固化が多少進んだとしても、裏刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。
【0054】
また、変形例では、図8Bの左側に示すように、表刷り印刷が行われる直前に、媒体の内側で全てのノズルからインクを強制的に連続吐出させている。これにより、表刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。なお、不図示であるが、双方向印刷で図8Bの移動方向とは反対方向にノズル列が移動する場合には、裏刷り印刷が行われる直前に、媒体の内側で全てのノズルからインクを強制的に連続吐出させる。これにより、裏刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。
【0055】
ところで、変形例によれば、表刷り印刷画像と媒体の端部との間のフラッシング領域に、フラッシング動作により吐出されたインクが着弾することになる。この結果、表刷り印刷と媒体の端部との間に、フラッシングによる画像が形成されることになる。そこで、変形例では、コントローラー10は、表刷り印刷画像の左側をカッターユニットにカットさせると良い。同様に、コントローラー10は、裏刷り印刷画像の右側をカッターユニットにカットさせると良い。
【0056】
===第3実施形態===
前述の第2実施形態では、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像との間に、フラッシングによる画像が形成されていた(図7A参照)。但し、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像との間に、有用な検査パターンが形成されても良い。
【0057】
図9Aは、第3実施形態の印刷物の説明図である。図9Bは、第3実施形態のノズル検査パターンの説明図である。
【0058】
第3実施形態においても、プリンター1のコントローラー10は、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方があれば、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像が紙幅方向に並ぶように、印刷すべき画像を割り付ける(図9A参照)。この結果、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われ、これにより第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ノズルが目詰まりしにくくなる。
【0059】
更に第3実施形態では、コントローラー10は、表刷り印刷後で裏刷り印刷直前にノズル検査パターンを形成させることによって、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像との間に、ノズル検査パターンを形成させる(図9A参照)。ノズル検査パターンを形成させる際に、コントローラー10は、各ノズルから所定数(ここでは5個)のインク滴を所定のタイミングで吐出させる(図9B)。これにより、検査者がノズル検査パターンを見れば、検査者は、インクを吐出できない不良ノズルの有無を検査することができる。例えば、図9Bのノズル検査パターンを検査者が確認すれば、ノズル♯8が不良ノズルであることを特定できる。
【0060】
ノズル検査パターンを形成する際に、コントローラー10は、ノズルからインクを強制的に連続吐出させることになる。このため、前述のフラッシング動作と同様に、表刷り印刷中にノズル内でインクの増粘や固化が多少進んだとしても、裏刷り印刷時のノズルの目詰まりを抑制できる。例えば、図9Bに示すように、仮に表刷り印刷中にノズル♯4のインクの増粘や固化が進んでいても、ノズル検査パターンを形成する際にノズル♯4からインクを強制的に連続吐出させることによって、裏刷り印刷前にノズル♯4を回復させることができる。
【0061】
ノズル検査パターンは、表刷り印刷や裏刷り印刷の品質保証機能を果たすことができる。このため、裏刷り印刷画像や裏刷り印刷画像にノズル検査パターンを付随させても良い。この場合、図9Aに示すように、ノズル検査パターンの両側ではなく、片側のみをカッターユニットにカットさせると良い。これにより、例えば裏刷り印刷の印刷物を受領したB社は、ノズル検査パターンを見て、裏刷り印刷画像の品質をチェックすることができる。そして、図9Bのようなノズル検査パターンであれば、ノズル♯8が不良ノズルの状態で印刷物が作製されたことを知ることができる。
【0062】
===第4実施形態===
前述の図5Aの表刷り印刷や図5Bの裏刷り印刷では、ノズルピッチ(1/180インチ)と同じ解像度でカラー画像や背景画像が形成されることになる。但し、ノズルピッチよりも細かい解像度でカラー画像や背景画像を形成することも可能である。
【0063】
<参考:通常のインターレース印刷>
図10は、通常のインターレース印刷の説明図である。図中には、パス1〜パス4におけるヘッド(ノズル列)の位置とドットの形成の様子が示されている。
【0064】
説明の都合上、複数あるノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、ノズル数も少なくしている(ここでは12個)。図中の黒丸で示されるノズルは、インクを吐出可能なノズルである。一方、白丸で示されるノズルは、インクを吐出不可のノズルである。また、説明の便宜上、ヘッド(ノズル列)が媒体に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッドと媒体との相対的な位置を示すものであって、実際には媒体が搬送方向に搬送される。また、説明の都合上、各ノズルが数ドット(図中の丸印)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる。このドットの列をラスタラインともいう。黒丸で示されるドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されるドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
【0065】
「インターレース印刷」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方法を意味する。例えば、図に示した印刷方法では、kが4であり、1回のパスで形成されるラスタラインの間に3本のラスタラインが挟まれている(既に説明した通り、ノズルピッチはk×Dであり、kは整数であり、Dは搬送方向のドット間隔である)。
【0066】
インターレース印刷では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。
【0067】
同図では、ノズル列は搬送方向に並ぶ12個のノズルを有する。ノズル列のノズルピッチ(k×D)は1/180インチであり、搬送方向のドット間隔Dは1/720インチであるため、kは4である。このため、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、全てのノズルは用いられずに、11個のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯11)が用いられる。また、11個のノズルが用いられるため、媒体は搬送量11・Dにて搬送される。その結果、1/180インチ(=4×D)のノズルピッチのノズル列を用いて、1/720インチ(=D)のドット間隔にて媒体にドットが形成される。なお、180個のノズル♯1〜♯180を備えたノズル列によってインターレース印刷を行う場合、179個のノズルを用いたパスと、179・Dの搬送量の搬送動作とが交互に繰り返されることになる。
【0068】
インターレース印刷の場合、ノズルピッチ幅の連続するラスタラインが完成するためには、k回のパスが必要となる。例えば、180dpiのノズルピッチのノズル列を用いて720dpiのドット間隔にて連続する4つのラスタラインが完成するためには、4回のパスが必要となる。同図によれば、パス3のノズル♯3が形成したラスタライン(図中の矢印で示されるラスタライン)よりも搬送方向上流側に、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成されることが示されている。
【0069】
なお、背景画像を形成せずにカラー画像だけインターレース印刷する場合には、各色のカラーノズル列(図3のシアンノズル列、マゼンタノズル列、イエローノズル列及びブラックノズル列)が、図10に示したようにそれぞれ動作する。つまり、各色のカラーノズル列は、それぞれのノズル♯1〜11(各ノズル列が180個のノズルをそれぞれ備える場合にはノズル♯1〜♯179)からインクを吐出する。
【0070】
但し、背景画像を形成しつつカラー画像を形成するような場合には、次に説明するように、カラーインクを吐出するカラーノズルの搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズルの搬送方向の位置とが重複しないようにしている。
【0071】
<インターレース印刷による表刷り印刷と裏刷り印刷>
図11は、インターレース印刷による表刷り印刷の説明図である。図中では、カラーノズル列のノズルを丸印で示し、白ノズル列のノズルを三角印で示している。
【0072】
インターレース印刷による表刷り印刷の場合においても、カラーノズル列の搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜6)が用いられ、白ノズル列の搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯7〜12)が用いられる。既に説明したインターレース印刷の条件((1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること)を満たすようにするため、6個のノズルでインターレース印刷を行う場合には、5個のノズルからインクが吐出されると共に、媒体は搬送量5・Dにて搬送される。
【0073】
いずれのラスタラインの位置においても、白ノズル列のノズル(白ノズル)によって白ドットが形成されてから、カラーノズル列のノズル(カラーノズル)によってカラードットが形成されている。例えば、図中の点線の位置のラスタラインでは、パス1において白ドットが形成された後、パス5においてカラードットが形成される。このため、背景画像の上にカラー画像を形成することができる。
【0074】
図示はしないが、インターレース印刷による裏刷り印刷の場合においても、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズルが用いられ、白ノズル列の搬送方向下流側の半分のノズルが用いられる。そして、インターレース印刷の条件を満たすようにパスと搬送動作とを交互に繰り返すことによって、カラー画像の上に背景画像を形成することができる。
【0075】
ところで、インターレース印刷によって表刷り印刷が行われるときも、前述の実施形態と同様に、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズルと、白ノズル列の搬送方向下流側の半分のノズルは、不使用ノズルになる。また、インターレース印刷によって裏刷り印刷が行われるときも、前述の実施形態と同様に、カラーノズル列の搬送方向下流側の半分のノズルと、白ノズル列の搬送方向上流側の半分のノズルは、不使用ノズルになる。
【0076】
そこで、インターレース印刷の場合においても、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方がある場合、プリンター1は、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像を紙幅方向に割り付けて、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方を行うと良い。同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われることによって、長時間継続して不使用となるノズルを減らすことができる。この結果、ノズルが目詰まりしにくくなる。
【0077】
===第5実施形態===
前述の実施形態では、表刷り印刷又は裏刷り印刷の際に、各ノズル列の半分のノズルが用いられていた。しかし、ノズルの用い方は、これに限られるものではない。
【0078】
図12A及び図12Bは、第5実施形態の印刷方法の説明図である。
或るパスにおいて、図12Aに示すように、表刷り印刷領域では白ノズル列が用いられて背景画像が形成されるとともに、裏刷り印刷領域ではカラーノズル列が用いられてカラー画像が形成される。図12Aに示すパスの後、搬送動作は行われずに、次のパスが行われる。次のパスでは、図12Bに示すように、裏刷り印刷領域では白ノズル列が用いられて背景画像が形成されるとともに、表刷り印刷領域ではカラーノズル列が用いられてカラー画像が形成される。これにより、図12Bに示すパスの後、表刷り印刷領域には背景画像の上にカラー画像が形成されて表刷り印刷画像が印刷され、裏刷り印刷領域にはカラー画像の上に背景画像が形成されて裏刷り印刷画像が印刷される。なお、図12Bに示すパスの後、ノズル列の長さL(図3参照)に相当する搬送量にて媒体が搬送方向に搬送され、この搬送動作の後、上記の図12A及び図12Bに示すパスが再び行われる。
【0079】
このように、第5実施形態においても、プリンター1のコントローラー10は、表刷り印刷の印刷指示と裏刷り印刷の印刷指示の両方があれば、表刷り印刷画像と裏刷り印刷画像が紙幅方向に並ぶように、印刷すべき画像を割り付ける。この結果、同じパスで表刷り印刷と裏刷り印刷の両方が行われる(図12A及び図12B参照)。これにより、第5実施形態においても、ノズルが目詰まりしにくくなる。
【0080】
===その他===
上記の実施形態は、主としてプリンターについて記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0081】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0082】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0083】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線が照射されると硬化する性質を有するUVインクが用いられていた。但し、必ずしもUVインクが用いられなくても良い。UVインクを用いない場合には、前述の照射ユニット60も不要である。
【0084】
<白インクについて>
本明細書において「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、いわゆる「白っぽい色」のように、社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-one Proを用いて測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、Lab系での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、かつL*が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製の測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、Lab系での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、かつL*が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色かをいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0085】
<背景画像について>
前述の実施形態では、白インクによって背景画像が形成されていた。但し、背景画像は白インクによって形成される白画像に限られるものではない。例えば、光輝性インク(メタリックインク)によって形成されるメタリック画像を背景画像としても良い。この場合、ヘッド41は、白ノズル列の代わりに、光輝性インクを吐出するノズル列を備えていると良い。
【符号の説明】
【0086】
1 プリンター、10 コントローラー、
11 インターフェース部、12 CPU、
13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジ移動機構、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 照射ユニット、61 仮硬化用照射部、62 本硬化用照射部、
70 カッターユニット、90 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、
前記搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶカラーノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ背景用ノズル列とを有し、前記カラーノズル列と前記背景用ノズル列が前記移動方向に並んで配置されているヘッドと、
前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作と、前記移動方向に移動するヘッドに前記インクを吐出させる吐出動作とを行わせる制御部と、
を備えた印刷装置であって、
前記制御部は、前記背景画像の上に前記カラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、前記カラー画像の上に前記背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、前記表刷り印刷画像と前記裏刷り印刷画像を前記移動方向に並べて前記媒体に印刷する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記表刷り印刷画像が形成される領域と前記裏刷り印刷画像が形成される領域との間を前記ヘッドが通過するときに、前記ノズルから前記インクを強制的に連続吐出させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記表刷り印刷画像が形成される領域と前記裏刷り印刷画像が形成される領域との間を前記ヘッドが通過するときに、前記ノズルから前記インクを強制的に連続吐出させることによって、前記ノズルの目詰まりを検査するためのパターンを形成する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記媒体をカットするためのカッターユニットを更に備え、
前記表刷り印刷画像及び前記裏刷り印刷画像の少なくとも一方に前記パターンを付随させるように、前記カッターユニットが前記媒体をカットする
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、
前記搬送方向と交差する移動方向に沿って移動可能なヘッドであって、カラー画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出するノズルが前記搬送方向に並ぶ第2ノズル列とを有し、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列が前記移動方向に並んで配置されているヘッドと、
を用い、
前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作と、前記移動方向に移動するヘッドに前記インクを吐出させる吐出動作とを行う印刷方法であって、
前記背景画像の上に前記カラー画像を形成する表刷り印刷画像の印刷指示と、前記カラー画像の上に前記背景画像を形成する裏刷り印刷画像の印刷指示の両方を受けた際に、前記表刷り印刷画像と前記裏刷り印刷画像を前記移動方向に並べて前記媒体に印刷する工程を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷方法によって印刷された印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−91200(P2013−91200A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233668(P2011−233668)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】