説明

印刷装置、情報処理装置、印刷システム、及びプログラム

【課題】利用者の印刷指示に応じて情報処理装置(ホスト装置)で作成され送信された印刷データがプリンタで受信されなかった場合に、特別な管理装置を設けずとも、プリンタが受信可能な状態になったときにホスト装置で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データをプリンタで印刷させる。
【解決手段】ホスト装置を予めプリンタに登録しておく。プリンタが印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、該登録されているホスト装置に、プリンタで受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認し(202)、印刷データが記憶されていることが確認されたホスト装置に対して、該記憶されている印刷データの送信をプリンタから要求し(206)、該要求に応じて送信された印刷データをプリンタが該受信して印刷する(208)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、情報処理装置、印刷システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷要求を発行する複数のホスト装置とその印刷要求に応じて印刷を行うプリンタとを備えた印刷システムにおいて、ホスト装置が、印刷データを生成し、該印刷データをプリンタへ送信する前にホスト装置を示す固有情報又はホスト装置の利用者に固有のユーザ情報を含む印刷ジョブ情報をプリンタへ送信し、プリンタが、ホスト装置から送信された印刷ジョブ情報を用いて印刷受付順を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−182477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる印刷装置、情報処理装置、印刷システム、及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、印刷データに基づいて印刷する印刷手段と、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段と、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段と、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段と、前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段と、を備えた印刷装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、前記登録された情報処理装置を識別する装置識別情報又は前記登録された情報処理装置を利用する利用者を識別する利用者識別情報を受け付ける受付手段を更に備え、前記確認手段は、自装置が前記印刷データの受信が不能な前記状態から前記印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記受付手段が受け付けた装置識別情報により識別される情報処理装置、又は前記受付手段が受け付けた利用者識別情報により識別される利用者が利用する情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置から、前記記憶されている印刷データを識別する印刷データ識別情報を取得して表示手段に表示する処理を行う表示処理手段と、前記表示手段に表示された印刷データ識別情報から、印刷する印刷データの印刷データ識別情報を利用者に選択させるための選択手段と、を更に備え、前記要求手段は、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データのうち、前記選択手段で選択された印刷データ識別情報により識別される印刷データの送信を要求する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の印刷装置において、前記印刷データの受信が不能な状態は、電源オフ状態又は省電力状態である。
【0009】
請求項5の発明は、印刷データに基づいて印刷する印刷手段、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、を備えた印刷装置に対して、利用者からの印刷指示に応じて印刷データを作成して送信する作成送信手段と、前記送信手段により送信された印刷データが、前記印刷装置で受信されなかった場合に、該受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する処理を行う記憶処理手段と、前記印刷装置から前記記憶手段に記憶されている印刷データの送信の要求があった場合に、該送信要求された印刷データを前記印刷装置に対して再送信する再送信手段と、を備えた情報処理装置である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の印刷装置と、請求項5に記載の情報処理装置と、を備えた印刷システムである。
【0011】
請求項7の発明は、印刷データに基づいて印刷する印刷手段を備えた印刷装置に搭載されるコンピュータを、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
請求項8の発明は、コンピュータを、印刷データに基づいて印刷する印刷手段、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、を備えた印刷装置に対して、利用者からの印刷指示に応じて印刷データを作成して送信する作成送信手段、前記送信手段により送信された印刷データが、前記印刷装置で受信されなかった場合に、該受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する処理を行う記憶処理手段、及び印刷装置から前記記憶手段に記憶されている印刷データの送信の要求があった場合に、該送信要求された印刷データを前記印刷装置に対して再送信する再送信手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる、という効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、不必要な印刷を防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、不必要な印刷を防止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、印刷装置で電源オフ状態又は省電力状態が発生しても、利用者の利便性を損なうことなく、印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる、という効果を奏する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる、という効果を奏する。
【0019】
請求項7に記載の発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる、という効果を奏する。
【0020】
請求項8に記載の発明は、利用者の印刷指示に応じて情報処理装置で作成され送信された印刷データが印刷装置で受信されなかった場合に、情報処理装置とは別の特別な管理装置を設けずとも、印刷装置が受信可能な状態になったときに情報処理装置側で利用者が印刷データを再送信する操作を行うことなく、該受信されなかった印刷データを印刷装置で取得して印刷することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る印刷システムの構成図である。
【図2】第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る情報処理装置(ホスト装置)の構成図である。
【図3】第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る印刷装置(プリンタ)の構成図である。
【図4】ホスト装置の登録状況を示した図である。
【図5】第1の実施の形態及び第2の実施の形態においてホスト装置で実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態においてプリンタで実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態及び第2の実施の形態においてホスト装置で実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態及び第2の実施の形態においてホスト装置で実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態においてプリンタで実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図10】印刷キューの情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷システム10は、情報処理装置としてのホスト装置12と、印刷装置(以下、プリンタ)14とが通信手段16を介して接続されて構成されている。図1では、4台のホスト装置12が図示されているが、ホスト装置12の数は、4台に限定されるものではなく、4台未満であってもよいし、5台以上であってもよい。
【0025】
また、通信手段16は、公衆回線であってもよいし、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等のネットワークであってもよい。また、通信手段16を、無線の通信手段としてもよいし、有線の通信手段としてもよい。
【0026】
ホスト装置12は、利用者から印刷指示を受け付けたときに、該印刷指示に応じて印刷データを作成してプリンタ14に送信する。印刷データには、印刷対象の画像を表わすデータが含まれる。また、印刷データに、該データを印刷するときの印刷設定情報(例えば、印刷範囲の指定、拡大・縮小の有無、カラーか白黒かの指定、用紙サイズ等)が含まれていてもよい。
【0027】
プリンタ14は、ホスト装置12から送信された印刷データに基づいて印刷を行う。また、本実施の形態に係るプリンタ14は、プリンタ14を構成する様々な構成要素の通電を停止して消費電力を抑える省電力状態に移行したり、省電力状態を解除して上記停止していた通電を開始して、省電力状態から復帰したりすることができるよう構成されている。プリンタ14は、予め定められた条件が満たされた場合に(例えば、省電力ボタンが押下された、ユーザにより何も操作されない状態が予め定められた時間以上継続した等)、省電力状態へ移行するよう構成されている。
【0028】
更に、本実施の形態に係るプリンタ14は、プリンタ14が電源オフ状態においてだけでなく、省電力状態においても、通信動作に関わる部分の通電が停止されて、印刷データの受信が不能となる。プリンタ14は、後述する操作パネル34に設けられた省電力解除ボタンがユーザにより押下されると、省電力状態が解除されて非省電力状態に移行し、印刷データの受信が可能な状態となる。
【0029】
なお、本実施の形態の印刷システム10では、ホスト装置12とプリンタ14との間には、ホスト装置12から送信された印刷データを一時的に蓄積してプリンタ14に転送するプリントサーバ等の管理装置は介在しておらず、ホスト装置12とプリンタ14とは、印刷データを直接送受信する。
【0030】
図2は、ホスト装置12の構成の一例を示す図である。
【0031】
本実施の形態のホスト装置12は、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、表示部23、操作部24、HDD(Hard Disk Drive)25、及び通信IF(Interface)26がバス27を介して接続されて構成されている。
【0032】
CPU20は、ROM21やHDD25に記憶されているプログラムを実行し、ホスト装置12全体の動作を制御する。ROM21には、CPU20が実行するプログラムやCPU20の処理に必要なデータ等が記憶されている。RAM22は、ワークメモリとして使用される。
【0033】
HDD25には、CPU20が実行するプログラムや各種データが記憶されている。また、HDD25には、ホスト装置12から送信した印刷データがプリンタ14で受信されなかった場合に、該印刷データを記憶しておくための記憶領域(以下、印刷キュー)が設けられている。
【0034】
HDD25又はROM21に記憶されているプログラムには、プリンタドライバのプログラムが含まれる。プリンタドライバは、ユーザから印刷指示を受け付けた場合に、該印刷指示に応じて印刷データを作成して通信IF26を介してプリンタ14に送信したり、プリンタ14から印刷キューの状態の問い合せを通信IF26を介して受信した場合に該問い合せに応じて印刷キューの記憶状態を確認して通信IF26を介して通知したり、プリンタ14から印刷データの送信要求を通信IF26を介して受信した場合には、印刷データを印刷キューから読み出して通信IF26を介して送信したりする。
【0035】
なお、CPU20が実行するプログラムを記憶するための記憶媒体は、HDD25やROM21に限定されない。例えば、フレキシブルディスクやDVDディスク、USBメモリ(ユニバーサルシリアルバスメモリ)等(不図示)であってもよいし、通信手段16に接続された他の装置の記憶装置であってもよい。
【0036】
表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成され、CPU20の制御により各種画像やメッセージ等を表示する。また、操作部24は、例えば、キーボードやマウス等により構成され、ユーザが操作部24を操作することより各種情報が入力されたり指定されたりする。
【0037】
通信IF26は、通信手段16を介して他の装置とデータの送受信を行うためのインタフェースである。
【0038】
図3は、プリンタ14の構成の一例を示す図である。
【0039】
プリンタ14は、CPU(Central Processing Unit)30、ROM(Read Only Memory)31、RAM(Random Access Memory)32、HDD(Hard Disk Drive)33、操作パネル34、印刷部35、及び通信IF(Interface)36、及びIF(Interface)37がバス39を介して接続されて構成されている。
【0040】
CPU30は、ROM31に記憶されているプログラム実行し、プリンタ14全体の動作を制御する。ROM31には、CPU30が実行するプログラムやCPU30の処理に必要なデータ等が記憶されている。RAM32は、ワークメモリとして使用される。
【0041】
操作パネル34には、LCD等から成る表示部及びテンキーやタッチパネル等から成り利用者による操作を受け付ける操作受付部が設けられている。また、操作パネル34には、プリンタ14の電源をオン・オフする電源ボタン、及びプリンタ14の省電力状態を解除して非省電力状態に移行させるための省電力解除ボタンも設けられている。
【0042】
HDD33には、CPU30が実行するプログラムが記憶されている。なお、HDD33又はROM31に記憶されているプログラムには、プリンタ14が電源オフ状態から電源オン状態になったとき、及び省電力状態が解除されたときに実行する処理ルーチンのプログラムやユーザ認証のためのプログラムも含まれている。詳細は後述する。
【0043】
また、HDD33の予め定められた記憶領域には、ホスト装置12を識別する識別情報として、ホスト装置12のIPアドレス(以下、ホストIPと呼称)が予め記憶されている。ここでは、HDD33の上記記憶領域にホストIPを記憶することを「ホスト装置を登録する」という。なお、本実施の形態では、図4に示すように、ユーザ或いは管理者等が予め操作パネル34を操作することにより、ホストIP、ユーザID、及びユーザ名の各々をプリンタ14に入力し、プリンタ14のHDD33に、これらを対応付けて記憶することにより、ホスト装置を登録するものとする。なお、ユーザIDは、対応付けられたホストIPが付与されたホスト装置12を操作するユーザを識別する識別情報であり、ユーザ名は、該ユーザの氏名である。
【0044】
印刷部35は、印刷データに基づいて、記録媒体に画像を形成する所謂印刷を行う。
【0045】
通信IF36は、通信手段16を介して他の装置とデータの送受信を行うためのインタフェースである。
【0046】
IF37には、カードリーダ38が接続されている。カードリーダ38は、ICカードのメモリに記録されている情報(本印刷システム10においては、ユーザID)を読み取る。プリンタ14は、ユーザ認証機能を備えており、プリンタ14のユーザ認証機能がオンされている場合には、ユーザ認証のプログラムがCPU30により実行され、カードリーダ38で読み取ったユーザIDが認証に用いられる。
【0047】
次に、本実施の形態における印刷システム10の動作を説明する。本実施の形態では、ユーザ認証機能を使用しない場合の動作について説明する。
【0048】
ホスト装置12において、ユーザが、操作部24を操作して印刷させたいデータを指定すると共に、プリンタドライバ等のソフトウェアにより提供される設定画面から設定情報を設定して、印刷を実行させるための印刷指定を行うと、図5に示す処理ルーチンが開始される。
【0049】
ステップ100では、ユーザの印刷指定に応じて、印刷データを作成する。
【0050】
ステップ102では、作成した印刷データを、プリンタ14に送信する。
【0051】
ステップ104では、送信した印刷データがプリンタ14で受信されたか否かを判断する。ここでは、印刷データを送信してから予め定められた時間が経過するまでの期間に、プリンタ14から受信通知を受信した場合には、肯定判断し、該期間にプリンタ14から受信通知を受信しなかった場合には、否定判断する。
【0052】
なお、再送回数の上限値を定めておき、上記期間内に受信通知が得られなかった場合に、再送回数が上限値に到達するまで印刷データの再送信を繰り返してもよい。そして、再送回数が上限値に到達しても受信通知がプリンタ14から受信されなかった場合に、ステップ104で否定判断する。
【0053】
ステップ104で肯定判断した場合には、プリンタ14で印刷データが正常に受信されたため、本処理ルーチンを終了する。一方、ステップ104で否定判断した場合には、ステップ106に進み、プリンタ14で受信されなかった印刷データを印刷キューに記憶する。
【0054】
プリンタ14は、電源オフ状態及び省電力状態においては印刷データの受信ができないが、電源がオフからオンにされた場合或いは省電力状態から非省電力状態に復帰した場合には印刷データの受信が可能となる。そこで、プリンタ14の電源ボタンがユーザにより操作されてプリンタ14が電源オフ状態から電源オン状態となったとき、或いはプリンタ14の省電力解除ボタンがユーザにより押下され省電力状態が解除されたときに、プリンタ14では図6に示す処理ルーチンが実行される。
【0055】
ステップ200では、Nに1をセットする。
【0056】
ステップ202では、予め登録されているホスト装置12のうち、N番目に登録されているホスト装置12(以下、ホスト装置Nという)に対して、ホスト装置Nの印刷キューの記憶状態を問い合わせて(問い合せを送信して)確認する。
【0057】
図7は、ホスト装置12が印刷キューの記憶状態の問い合せを受信したときにホスト装置12で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0058】
ステップ300では、自装置の印刷キューの記憶状態を確認し、印刷データが記憶されているか否かを判断する。
【0059】
ステップ302では、自装置の印刷キューの記憶状態をプリンタ14に通知する。すなわち、印刷データが記憶されているか否かを示す情報をプリンタ14に送信する。
【0060】
プリンタ14では、該情報を受信すると、図6のステップ204で、該受信した情報を参照してホスト装置Nの印刷キューに印刷データが記憶されているか否かを判断する。
【0061】
ステップ204で肯定判断した場合には、ステップ206に進み、ホスト装置Nに対して、ホスト装置Nの印刷キューに記憶されている印刷データの送信要求を送信する。
【0062】
図8は、ホスト装置12がプリンタ14から印刷データの送信要求を受信したときにホスト装置12で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0063】
ステップ350では、自装置の印刷キューに記憶された印刷データを読み出して、プリンタ14に送信する。
【0064】
ステップ352では、送信した印刷データを印刷キューから削除する。なお、送信した印刷データを受信した旨の通知をプリンタ14から受信したときに削除してもよい。
【0065】
プリンタ14では、図6のステップ208で、記送信要求に応じてホスト装置Nから送信された印刷データを受信し、受信通知をホスト装置Nに送信すると共に、該受信した印刷データに基づいて印刷されるよう印刷部35を制御する。印刷終了後は、ステップ210に進む。
【0066】
また、ステップ204で否定判断した場合には、ステップ206及びステップ208をスキップしてステップ210に進む。
【0067】
ステップ210では、登録されたホスト装置12が他にもあるか否かを判断する。ステップ210で肯定判断した場合には、ステップ212に進み、Nに1を加算して、ステップ202に戻る。
【0068】
一方、ステップ210で否定判断した場合には、登録されている全てのホスト装置12について印刷データの有無の確認、及び必要な印刷が終了したため、本処理ルーチンを終了する。
【0069】
ここで、本実施の形態に対する比較例として、ホスト装置12から送信された印刷データが、プリンタ14が電源オフ状態或いは省電力状態にあるためプリンタ14側で受信されなかった場合の、従来の印刷システムにおける処理の流れについて説明する。
【0070】
プリンタ14が電源オフ状態或いは省電力状態にあるためプリンタ14側で印刷データが受信されなかった場合、従来はホスト装置12側で印刷データの送信がキャンセルされ消去される。ユーザは、プリンタ14の設置場所まで移動し、プリンタ14の電源ボタン或いは省電力ボタンを押下して、プリンタ14を電源オン状態或いは非省電力状態に復帰させて印刷データの受信が可能な状態にした後、ホスト装置12の設置場所に戻り、再度ホスト装置12を操作して印刷指示する。そして、再度プリンタ14の設置場所まで移動して、印刷物を取りに行く必要があった。
【0071】
一方、本実施の形態では、ホスト装置12から送信された印刷データがプリンタ14側で受信されなかった場合において、ホスト装置12で該印刷データを記憶しておき、その後、ユーザの操作によりプリンタ14で印刷データの受信が可能となったときに、プリンタ14から登録されているホスト装置12に対して、記憶されている印刷データの送信を要求して印刷データを取得し印刷するようにしたため、ユーザは、プリンタ14の設置場所で待機していれば印刷物を取得でき、ユーザが再度ホスト装置12で印刷データを再送信するための操作を行う必要がなくなる。また、印刷データをホスト装置12から受信して管理しプリンタ14に転送するための管理装置も必要ない。
【0072】
本実施の形態では、プリンタドライバの機能として図5,図7,図8の処理ルーチンが実行される例について説明したが、これら処理ルーチンを実行するプログラムであれば、特にプリンタドライバに限定されない。
【0073】
[第2の実施の形態]
【0074】
本実施の形態では、ユーザ認証機能を使用する場合の印刷システム10の動作について説明する。本実施の形態の印刷システム10の構成、ホスト装置12の構成、及びプリンタ14の構成は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0075】
また、ホスト装置12で実行される処理ルーチン(図5,図7,及び図8)は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
図9は、本実施の形態において、プリンタ14の電源ボタンがユーザにより操作されてプリンタ14が電源オフ状態から電源オン状態となったとき、或いはプリンタ14の省電力解除ボタンがユーザにより押下され省電力状態が解除されたときに、プリンタ14で実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0077】
ステップ400では、ユーザがプリンタ14に設けられたカードリーダ38にICカードをかざすと、カードリーダ38が、該ICカードのメモリに格納されたユーザIDを読み取る。プリンタ14は、読み取ったユーザIDを用いて認証処理を行う。例えば、読み取ったユーザIDが登録されているユーザIDであれば、認証成功、登録されているユーザIDでなければ認証失敗とする。認証失敗の場合には、プリンタ14での印刷が不能となるようにしてもよいが、ここでは、認証失敗の場合の処理については説明を省略し、認証が成功したものとして、次のステップ402に進む。
【0078】
ステップ402では、認証されたユーザのホスト装置12(以下、認証ホスト装置という)に対して、印刷キューの記憶状態を問い合わせて(問い合せを送信して)確認する。すなわち、上記読み取ったユーザIDに対応付けて登録されているホストIPを読み出し、該ホストIPを送信先として、問い合せを送信し、該ホストIPが付与された認証ホスト装置の印刷キューの確認を行う。
【0079】
問い合せを受けた認証ホスト装置の処理は、第1の実施の形態で、図7を参照して説明した通りである。ただし、本実施の形態では、プリンタ14からの問い合せに応じて認証ホスト装置から送信する情報には、印刷キューに印刷データが記憶されているか否かの情報だけでなく、印刷キューに記憶されている印刷データの各々を識別するための印刷データ識別情報も含まれる。印刷データ識別情報は、例えば、ユーザが印刷を指定したファイルのファイル名であってもよいし、印刷データの作成日時や送信日時であってもよいし、印刷データの作成順に付与された番号であってもよい。
【0080】
ステップ404では、認証ホスト装置から受信した情報を参照して、認証ホスト装置の印刷キューに印刷データが記憶されているか否かを判断する。
【0081】
ステップ404で肯定判断した場合には、ステップ406に進み、操作パネル34に印刷キューの情報を一覧表示する。ここでは、印刷キューに記憶されている印刷データの印刷データ識別情報の各々を操作パネル34に表示する。
【0082】
図10に、印刷キューの情報の表示例を示す。図10に示す例では、ユーザID、ユーザ名、そして、認証ホスト装置から取得した印刷データ識別情報が表示されている。更に、「印刷データを選択してください」というメッセージも表示され、一覧から印刷する印刷データをユーザに選択させるようにしている。ユーザは、操作パネル34のタッチパネルをタッチするか、或いは操作キーを操作する等により、表示されている印刷データの印刷データ識別情報を選択する。選択数は複数でもよい。
【0083】
ステップ408では、ユーザが印刷データ(印刷データの印刷データ識別情報)を選択したか否かを判断し、選択したと判断した場合には、ステップ410で、該選択した印刷データの送信要求を認証ホスト装置に送信する。
【0084】
送信要求を受けた認証ホスト装置の処理は、第1の実施の形態で、図8を参照して説明した通りである。ただし、ここでは、認証ホスト装置は、印刷キューに記憶されている全ての印刷データではなく、ユーザにより選択された印刷データを読み出してプリンタ14に送信する。
【0085】
ステップ412では、上記送信要求に応じて認証ホスト装置から送信された印刷データを受信し、受信通知を認証ホスト装置に送信すると共に、該受信した印刷データに基づいて印刷されるよう印刷部35を制御する。
【0086】
なお、本実施の形態では、認証にユーザIDを使用したが、ホストIPがICカードに記憶されており、ICカードからホストIPの情報を読み取ってホストIPが登録されているか否かで認証を行うようにしてもよい。
【0087】
また、本実施の形態では、ICカードを利用して認証を行う例について説明したが、ICカードは使用せずに操作パネル34を操作することにより、ユーザにユーザIDやホストIPを入力させ、これを認証に使用するようにしてもよい。
【0088】
更にまた、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、プリンタ14が電源オフ状態のとき、或いは省電力状態のときには印刷データの受信が不能である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電源オフ状態のときには印刷データの受信が不能であるが、省電力状態では印刷データの受信が可能な印刷装置にも適用される。
【0089】
また、通信障害又はプリンタ14の通信IF36の故障よりプリンタ14で印刷データが受信できなかった場合においても、例えば、障害復帰或いは故障修理後にユーザがプリンタ14の電源をオンしたときに上記と同様の処理ルーチンを実行するようにしてもよい。
【0090】
更にまた、上記第1の実施の形態では、印刷キューに印刷データが記憶されていれば、該印刷データの各々をホスト装置12から取得して印刷する例について説明したが、これに限定されるものではない。認証を行わない場合であっても、登録されているホスト装置12の各々について、第2の実施の形態と同様に、まず、印刷データ識別情報の一覧を操作パネル34に表示し、ユーザに選択させるようにして、該選択された印刷データ識別情報が示す印刷データの送信要求を該当のホスト装置12に送信して、該選択された印刷データを取得し、印刷するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 印刷システム
12 ホスト装置
14 プリンタ
16 通信手段
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 表示部
24 操作部
25 HDD
26 通信IF
30 CPU
31 ROM
32 RAM
33 HDD
34 操作パネル
35 印刷部
36 通信IF
37 IF
38 カードリーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づいて印刷する印刷手段と、
利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段と、
自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段と、
印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段と、
前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段と、
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記登録された情報処理装置を識別する装置識別情報又は前記登録された情報処理装置を利用する利用者を識別する利用者識別情報を受け付ける受付手段を更に備え、
前記確認手段は、自装置が前記印刷データの受信が不能な前記状態から前記印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記受付手段が受け付けた装置識別情報により識別される情報処理装置、又は前記受付手段が受け付けた利用者識別情報により識別される利用者が利用する情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置から、前記記憶されている印刷データを識別する印刷データ識別情報を取得して表示手段に表示する処理を行う表示処理手段と、
前記表示手段に表示された印刷データ識別情報から、印刷する印刷データの印刷データ識別情報を利用者に選択させるための選択手段と、
を更に備え、
前記要求手段は、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データのうち、前記選択手段で選択された印刷データ識別情報により識別される印刷データの送信を要求する
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷データの受信が不能な状態は、電源オフ状態又は省電力状態である
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷データに基づいて印刷する印刷手段、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、を備えた印刷装置に対して、利用者からの印刷指示に応じて印刷データを作成して送信する作成送信手段と、
前記送信手段により送信された印刷データが、前記印刷装置で受信されなかった場合に、該受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する処理を行う記憶処理手段と、
前記印刷装置から前記記憶手段に記憶されている印刷データの送信の要求があった場合に、該送信要求された印刷データを前記印刷装置に対して再送信する再送信手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の印刷装置と、
請求項5に記載の情報処理装置と、
を備えた印刷システム。
【請求項7】
印刷データに基づいて印刷する印刷手段を備えた印刷装置に搭載されるコンピュータを、
利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、
自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、
印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び
前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
印刷データに基づいて印刷する印刷手段、利用者の印刷指示に応じて印刷データを作成して送信すると共に送信先で受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する情報処理装置を、予め登録する登録手段、自装置が印刷データの受信が不能な状態から印刷データの受信が可能な状態に復帰したときに、前記登録されている情報処理装置に、自装置で受信されなかった印刷データが記憶されているか否かを確認する確認手段、印刷データが記憶されていることが確認された情報処理装置に対して、前記記憶されている印刷データの送信を要求する要求手段、及び前記要求手段の要求に応じて送信された印刷データを受信した場合に、該受信した印刷データに基づいて印刷が行なわれるように前記印刷手段を制御する制御手段、を備えた印刷装置に対して、利用者からの印刷指示に応じて印刷データを作成して送信する作成送信手段、
前記送信手段により送信された印刷データが、前記印刷装置で受信されなかった場合に、該受信されなかった印刷データを記憶手段に記憶する処理を行う記憶処理手段、及び
前記印刷装置から前記記憶手段に記憶されている印刷データの送信の要求があった場合に、該送信要求された印刷データを前記印刷装置に対して再送信する再送信手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67030(P2013−67030A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205386(P2011−205386)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】