説明

印刷装置および制御方法

【課題】 印刷履歴データに基づいて一度印刷された画像を再印刷することが可能であり、印刷履歴データとして画像データと画像データに合成すべき合成データを特定するための識別情報を記録している印刷装置において、合成データの書き換えにより、印刷履歴で参照される合成データが消去されると、印刷履歴データの整合性が取れなくなってしまう。
【解決手段】 合成データの書き換えに先立ち、印刷履歴データから参照される、合成データを退避領域に移動して退避させ、印刷履歴データの参照する合成データを特定するための識別情報IDデータを退避領域のスタンプIDに変更する。このような処理を行うことで、印刷履歴データに矛盾が生じてしまうことを防いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷履歴を記録可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ付携帯電話やデジタルカメラの普及により、家庭で手軽に高画質の写真印画ニーズがたかまり、各社から多くの高精細な写真プリンタが発売されている。
【0003】
デジタルカメラの大きな特徴として、撮影そのものにはほとんどコストがかからないことから、一般に撮影枚数は多くなり、これらの写真データを必要に応じて印刷を行うためには何らかのデータ管理が要求される。
【0004】
したがって、ユーザーが撮り貯めた膨大な写真データの管理を容易とするために、プリンタ本体内蔵のストレージメモリを搭載し、そこに印画順に印刷履歴データとして保存する機能をもった製品がある。この機能により、コンピュータのデータベースを探すことなく、プリンタ本体上での操作で、過去に印画したデータであれば再度読み出し、容易に印画することが可能となる。
【0005】
一方、一般家庭での用途として、通常の写真印画意外にプリンタ本体内にあらかじめ用意されたスタンプ画像や文字フォント、フォトフレームなどのイメージデータを写真データに合成して印画する機能をそなえた印刷装置が考案されている。この機能を用いて、通常の写真を年賀状やカレンダーに加工できる。さらに、プリンタ内に格納された合成データを、専用のアプリケーションを用いて、ユーザが所望する合成データに任意に入れ替える機能をそなえた印刷装置も考案されている。
【特許文献1】特開2006−285393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷した画像が、画像データと合成データを合成したものである場合は、履歴データとして画像データと共に合成した合成データの情報を記録する必要がある。例えば、多くの合成データの中から使用した合成データを特定するための識別情報や合成位置情報等である。これらの情報により履歴データに基づいて再印刷を行う場合に、履歴データの識別情報から合成データを特定し合成位置情報に基づいて画像を合成することにより再印刷が可能となる。
【0007】
しかし、履歴データに合成データの識別情報を記録することにより画像データと合成データが合成された画像の再印刷を実現する場合、合成データが消去されてしまうと履歴データの整合性が取れなくなる。
【0008】
そこで、特許文献1のように、印刷に必要なデータをユーザーの選択により保存し、消去させない方法が考えられるが、この場合、印刷履歴に利用される合成データ全てが保存され、合成データの消去や入換えが不可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明の印刷装置は、複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、記憶媒体から読み出した合成データと記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、合成データの識別情報と画像データとを印刷履歴として印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え手段と、書き換え手段により合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が印刷履歴領域に記録されている場合に、記憶媒体中の合成データ領域とは異なる退避領域に消去される合成データを記録する退避手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の印刷装置は、複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、記憶媒体から読み出した合成データと記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、合成データの識別情報と画像データとを印刷履歴として印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理手段とを有し、書き換え処理手段は、合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が印刷履歴領域に記録されている場合に、消去される合成データに対応する識別情報を含む印刷履歴を印刷履歴領域から消去することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の印刷装置は、複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、記憶媒体から読み出した合成データと記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、合成データの識別情報と画像データとを印刷履歴として印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理手段と、合成データ領域は、書き換え手段により合成データを書き換え可能とする書き換え可能領域と、合成データの書き換え不可能とする固定領域とを有し、書き換え処理手段により合成データを書き換える際に、書き換え可能領域に記録されている合成データの識別情報が含まれる印刷履歴を消去する消去手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、合成データの更新により印刷履歴データに参照される合成データが差消去されても、それを参照している印刷履歴データとの整合性を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】
図1は本発明の印刷装置のシステム構成図である。
【0015】
101はユーザからの操作を受け付ける一連の操作部材の入力制御を行う入力部材制御部であり、電源ボタン、印刷ボタン、スタンプ編集ボタン、画像送りボタン、印刷枚数選択ボタンなどからなる。
【0016】
102は対象画像の読み出し、表示、印刷データへの展開と印刷制御シーケンスの実行など、システム全体の制御を行うシステムプログラムコードの実行を行うCPUである。
【0017】
103は主記憶部であり、CPU102で実行されるシステムプログラムの作業領域、表示部104に表示するイメージデータのvram領域、印画データの展開領域、内部記憶部108、外部記録媒体制御部106の入出力バッファなどに用いられる。
【0018】
104は表示部であり、内部記憶部107,108あるいは外部記録媒体制御部106から読み込んだ画像データの表示、さらに、ユーザ操作による選択した画像データの編集操作や、本体の設定などのユーザーインターフェイスの提供を行う。
【0019】
105は印刷制御部であり、印画ヘッドと用紙搬送機構、等からなり、CPU102からの制御により、印画動作と用紙搬送を行う。
【0020】
106は外部記録媒体制御部であり、デジタルカメラなどで作成された画像データが記録されているメモリカード等の外部記録媒体109からデータを読み出すために、スロットや入出力制御回路等から構成される。
【0021】
107は内部記憶部フラッシュメモリであり、CPU102で実行されるシステムプログラム、ユーザーインターフェイスでもちられる文字フォントなどのリソースデータ、などがインストールされている。
【0022】
108はNAND形式の内部記憶部であり、印刷画像を修飾するスタンプやフレームなどの各種合成データが保存され、合成データ領域として利用されるほか、後述する印刷履歴データ領域としても利用される。
【0023】
次に、図1、図2、図4および図5を用い、本発明の印刷装置のシステムプログラムの動作について説明する。
【0024】
ユーザはまず操作部材制御部101の構成要素である電源ボタン202を押下し、システムの起動を図る。CPU102はフラッシュメモリ107内のシステムプログラムを逐次実行し、一連のシステムの初期化を行う。その後、システムプログラムは外部記録媒体制御部106を通じ、現在スロットに装着されている外部記憶媒体中のファイルの走査を行う。画像データと認識されるデータを発見すると、外部記録媒体制御部106により画像データを読み出し、主記憶部103上に展開する。画像データはさらに表示用データに変換され、主記憶部103上に配置された表示用VRAM上に展開し、表示部104、(図2においては液晶表示部209)に対し画像データの表示を行う。ユーザは、表示部104を見ながら操作部材を操作して外部記録媒体109内の画像データの中から印刷対象の画像データを選択し、プリントボタン204を操作すると選択された画像データの画像が印刷制御部105により印刷される。
【0025】
また、本実施例の印刷装置は、印刷制御部105により印刷した画像データを印刷履歴データとして内部記憶部108に記録することが可能である。従って、一度印刷した画像を際印刷した場合は、外部記録媒体109を印刷装置に装着しなくても、内部記憶部108の印刷履歴データにより印刷することが可能である。
【0026】
さらに、本実施例の印刷装置は、画像を印刷する際に、内部記憶部108に格納されているスタンプやフレーム等の合成用画像データを外部記録媒体109の画像データと合成して印刷することが可能である。本実施例では合成データとしてスタンプデータで説明する。
【0027】
図4はNAND内部記憶部108内の構成を表した図である。401はユーザーによる書き換えができない固定領域で、複数のスタンプデータからなる固定スタンプデータセットが格納されている。402はユーザーによる書き換えが可能な書換可能領域で、複数のスタンプデータからなるユーザースタンプデータセットが格納されている。固定データセットは、季節、イベントによらない普遍性のある図案から構成され、予め記録されており、固定領域においては固定スタンプデータセットの書き換えが許可されておらず、書き換えが不可能となっている。これに対し、書換可能領域のユーザスタンプデータセット402は、季節、イベントごとの関連のある図案からなるデータセットであり、ユーザーはその季節、イベント(クリスマス、正月等)などに応じて、本データセットを入れ替えることができる。
【0028】
図5は401固定スタンプデータセット、および402ユーザースタンプデータセットの内部構成を表した図である。501管理領域には、データセット内のスタンプデータの数、各スタンプデータのID、各スタンプデータへのポインタ、各スタンプデータのサイズが記述されている。502,503,504はスタンプデータである。このように、複数のスタンプデータが1つのデータセットとして記録されており、書き換え可能領域のスタンプデータを書き換える場合は、書き換え可能領域に記録されている全てのスタンプデータが一度に一括して書き換えられる。つまりスタンプデータセット単位で書き換えが行われる。
【0029】
図4の403は、印刷履歴データ領域であり、印刷した画像データを時系列に蓄積しておく領域である。
【0030】
システムプログラムはPRINT204ボタンの押下を検出すると、液晶表示部209に表示した画像の印刷処理を行う。印刷処理が終了すると、印刷対象となった画像データを外部記録媒体制御部106が外部記録媒体109から読み出し、印刷履歴領域にコピーする。履歴データとして保存される画像数はあらかじめシステム値として決められており、それを上回るコピーはもっとも古い履歴データの削除の後に行われる。また、画像データをコピーする際には画像データにリサイズ処理や色変換等の画像処理を施してからコピーしても良い。
【0031】
また、スタンプデータと画像データを合成して印刷した場合には、画像データを履歴領域にコピーすると共に、スタンプIDとスタンプ合成位置データが印刷履歴データとして記録される。画像データに合成したスタンプデータを特定するための識別情報としてスタンプIDが記録され、スタンプを画像に合成した位置を特定するために合成位置データが記録される。
このようにして画像印刷時に印刷履歴記録処理が実行される。
【0032】
次に、スタンプデータを画像データに合成して印刷する際の処理について説明する。
【0033】
図3は、スタンプボタン208を押し、スタンプを画像に合成して印刷するためのスタンプ合成モードに入った際の操作パネルを表している。
【0034】
液晶表示部209に印刷対象の画像が表示されている状態で、スタンプボタン208の押下をシステムプログラムが検知すると、固定スタンプデータセットの最初のスタンプデータを読み出し、液晶画面上の画像に合成表示する。この状態でシステムプログラムがさらに208スタンプボタンの押下を検知すると、固定スタンプデータセットから次のスタンプデータを読み出し、液晶表示部209上に表示する。以降同様にスタンプボタンの押下のくり返しで、ユーザーはスタンプデータの選択を行うことができる。スタンプボタンの押下のくり返しにより、固定データセットの最後のスタンプデータに達した際には、次のスタンプボタン押下の際に、ユーザスタンプデータセットの最初のスタンプデータが選択される。同様にスタンプボタン押下のくり返しで、ユーザスタンプデータセット最後のスタンプデータが選択された際は、次のスタンプボタン押下で、固定スタンプデータセットの最初のスタンプデータが選択される。
【0035】
あるいは、スタンプボタンの押下でスタンプデータをリスト表示し、ユーザはその中から所望のスタンプを選択するようなシステムにしても良い。
【0036】
以上のようにスタンプデータが選択されると、ユーザは、十字キー203,205,206、207を操作してスタンプデータを移動させ、スタンプデータの合成位置を決定する。所望の位置にスタンプデータを移動させ、スタンプデータが画像に重畳して表示されている状態で、印刷処理が開始されると、スタンプデータを選択された印刷対象の画像データに合成して印刷を行う。その後、印刷履歴データには、印刷対象の画像データのほかに、選択されたスタンプデータのスタンプIDデータおよび合成位置データが画像データと共に印刷履歴データとして保存される。画像データの付加情報としてスタンプIDデータおよび合成位置データを保存しても良い。
【0037】
また、本実施例の印刷装置は、印刷履歴データに基づいて画像を印刷することが可能であり、このとき、印刷履歴データ領域の画像データに基づいて画像を印刷する。また、スタンプIDデータや合成情報データが記録されている場合は、画像データに合成すべきスタンプデータをスタンプIDデータを用いて特定し、固定領域または書き換え可能領域からスタンプデータを読み出して合成位置データに応じた位置に合成して印刷する。印刷履歴データのスタンプIDで特定されるスタンプデータを参照することで、スタンプが合成された画像を印刷することも可能となる。
【0038】
印刷履歴データに基づいて一度印刷した画像を再印刷する際の処理について説明する。
【0039】
システムプログラムがHISTORY210ボタンの検知すると、システムプログラムは履歴印刷モードに移行し、液晶表示部209には、印刷履歴データ領域に保存されたもっとも新しい印刷履歴データの画像データが表示される。さらに、印刷履歴データに、スタンプIDデータ、合成位置データが記録されている場合には、スタンプIDをキーとして固定スタンプデータセット、あるいはユーザースタンプデータセットから対象となるスタンプデータを検索する。そして、スタンプIDに対応するスタンプデータを読み出し、合成位置データに基づいて決定した合成位置にスタンプデータを合成して、液晶表示部209上に表示する。
【0040】
画像送りボタン(左右ボタン)205、206の押下に応じて、次の印刷履歴データの画像が液晶表示部に表示され、印刷履歴領域の複数の印刷履歴データの中から所望の印刷履歴を選択を行うことができる。また、再度HISTORY210ボタン押下を検知することによりにより印刷履歴モードを終了することができる。
【0041】
次に、ユーザースタンプデータセットの書き換え処理について説明する。
【0042】
本実施例においてユーザスタンプデータの書き換えは、内部記憶部のユーザスタンプデータセットを、印刷装置に装着された外部記録媒体109から読み出したユーザスタンプデータセットに書き換えることにより実行される。書き換え方法についてはこれに限らず、印刷装置とパーソナルコンピュータを通信接続し、パーソナルコンピュータが保持するユーザスタンプデータに書き換えても良い。また、またこのデータセットは、合成データ更新時に1つのデータファイルとして扱われる。
【0043】
まず、スタンプ書き換えボタン211の押下を検出すると、システムプログラムは印刷装置に装着されている外部記録媒体内のファイルの走査を行う。スタンプデータセットと認識されるデータファイルを発見すると、外部記録媒体制御部106を通じて読み出されたスタンプデータセットのファイルを主記憶部103上に展開し、スタンプ書き換え処理を開始する。
【0044】
ユーザースタンプデータセットの書き換えにより、印刷履歴データに参照されるスタンプデータ、つまり、印刷履歴中のスタンプIDデータにより特定されるスタンプデータが消去されしまう可能性がある。そのため、本実施例では、ユーザースタンプデータセット書き換えに先立ち、印刷履歴データから参照されている、スタンプデータを図4の退避領域404に移動して退避させ、履歴データ上のスタンプIDデータを退避領域のスタンプIDに変更する。このような処理を行うことで、印刷履歴データに矛盾が生じてしまうことを防いでいる。
【0045】
図4の404は退避領域であり、スタンプデータセットの更新処理により、印刷履歴データに参照されているスタンプデータが消去される場合に、印刷履歴データに参照されているスタンプデータを記録しておく領域である。退避領域にはスタンプID、スタンプデータ、参照カウンタがスタンプ毎に記録されている。退避領域にスタンプデータが保存される際は、書き換え領域のスタンプIDとは異なる新しいIDが付与されて記録される。参照カウンタはそのスタンプデータが印刷履歴により参照される印刷履歴数を表している。
【0046】
図6のフローチャートに即してユーザースタンプデータセット更新時の処理を説明する。
【0047】
ステップ601で印刷履歴データを1レコード分読み出す。ステップ601で読み出した印刷履歴データのスタンプIDデータで指定され、印刷履歴データに参照されているスタンプデータが固定スタンプデータセットのデータであるかユーザースタンプデータセット内のデータであるか判定する(ステップ602)。印刷履歴データがユーザスタンプデータセットのスタンプデータを参照している場合は、スタンプIDで特定されるスタンプデータが既にスタンプ退避領域にコピーして移動済かどうか判定を行う(ステップ603)。すでに移動済の場合は退避領域にコピーしたスタンプデータの参照カウンタを1加算する(ステップ607)。ステップ603で参照しているスタンプデータが退避領域にコピーしていないスタンプデータと判定された場合は、対象となるスタンプデータをユーザスタンプデータセットから退避領域にコピーする。そして退避領域用の新しいスタンプIDを付与し、退避領域のスタンプデータの参照カウンタを1として退避領域に記録する(ステップ605)。スタンプデータを退避領域へ移動した際に新しいスタンプIDが付与されるため、ステップ606では、印刷履歴データのスタンプIDデータを新しい退避領域のスタンプIDに書き換えて、スタンプIDの変更を印刷履歴データに反映させる。ステップ608で次の印刷履歴データがあるかを判定し、印刷履歴データがある場合は次のレコードについてステップ601〜607の処理を行う。印刷履歴データの全てのレコードについてステップ601〜607の処理が完了したら、内部記憶部108のユーザスタンプデータセットを外部記憶媒体109から読み出したに入換えるユーザスタンプデータセット更新処理を行う。
【0048】
以上のように、退避領域を設けることにより、印刷履歴データにより参照されているスタンプデータが書き換え可能領域から消去される場合であっても、参照されるスタンプデータを退避領域にコピーしてから消去するため、印刷履歴データの整合性が保障される。
【0049】
一方、前述したように、履歴データとして保存される画像数はあらかじめシステム値として決められている。そのためシステムプログラムは、印刷後に履歴データを追加する際にそのシステム値を上回った場合にもっとも古い履歴データの削除が行われる。この際、削除対象となる履歴データが、退避領域にあるスタンプデータのIDを持っていた際、対象となる退避領域のスタンプデータの参照カウンタを1減少させる。この結果参照カウンタが0となり、そのスタンプデータを参照する印刷履歴データがなくなった場合には、そのスタンプデータはスタンプデータ退避領域から自動的に削除される。つまり、印刷履歴データに参照されなくなり必要がなくなったスタンプデータは自動的に削除される。また、印刷履歴データの個数以上のスタンプデータが保持されることはなく。記憶容量の管理が容易となる。
【0050】
(実施例2)
実施例1では、NAND内部記憶部108内に退避領域を設けることにより、履歴データの整合性を保障するものであった。また、退避領域に退避されるデータ数は保存される履歴データ数を上回ることはないため、典型的なスタンプデータのサイズ数から、退避領域に必要とされるサイズはおおむね算出可能である。しかし、内部記憶部に退避領域を確保する余地がない場合は、ユーザースタンプデータセットを参照している履歴データを削除する方法が考えられる。
【0051】
図7に即して本実施例を説明する。本実施例の基本的な処理は実施例1と同じであるため、異なる部分のみを説明し、実施例1と同様の処理は説明を省略する。
【0052】
ステップ701でユーザースタンプデータセットの更新処理を行う。ステップ702で印刷履歴データを1レコード読み出し、スタンプIDデータにより参照されるスタンプデータがユーザースタンプデータセットのものであるか判定を行う(ステップ703)。ユーザースタンプデータセットのものである場合、印刷履歴レコードは印刷履歴データ領域から削除する(ステップ704)。
以上の処理を印刷履歴データの全レコードについて繰り返し行う。
このようして実施例2では、スタンプデータ書き換え処理時に、書き換え可能領域に記録されているユーザースタンプデータセットを参照している印刷履歴データを印刷履歴データ領域から消去する。
【0053】
(実施例3)
本実施例では実施例1と同様に、スタンプデータ書き換え時に印刷履歴データにより参照されているスタンプデータが書き換え可能領域から消去される場合は、参照されるスタンプデータを退避領域にコピーしてから消去する。しかし、実施例3では退避領域に記録可能なスタンプデータの数に上限がある。スタンプデータ更新時に退避領域に退避させたいスタンプデータ、つまり印刷履歴データに参照されるスタンプデータの数が退避領域に記録可能なスタンプデータの数を超える場合は、その超えた分のスタンプは退避領域に記録しない。そして、退避領域に記録されないスタンプデータを参照している印刷履歴データを実施例2のように印刷履歴データ領域から消去する。
また、スタンプデータ書き換え時に、新しい印刷履歴に参照されているスタンプデータを優先させて退避領域に記録し、古い印刷履歴に参照されるスタンプデータは退避領域に記録せずに印刷履歴ごと消去されるようにしても良い。また、参照される印刷履歴数、つまり参照カウンタの数が多いスタンプデータを優先させて退避領域に記録してもよい。
また、スタンプデータ書き換え時に、既に退避領域に記録されているスタンプデータおよびそのスタンプデータに参照される印刷履歴データを全て消去してから、今回のスタンプデータ書き換えにより退避必要となるスタンプデータを退避領域に記録するようにしても良い。
あるいは、既に退避領域に記録されているスタンプデータの参照カウントが小さかったり、参照している印刷履歴データが古いものであれば、そのスタンプデータを退避領域から消去しそのスタンプデータを参照する印刷履歴も消去してもよい。退避領域に新しく記録可能なスタンプデータの数が増えるためより新しい印刷履歴に参照されるスタンプデータまたはより多くの印刷履歴データに参照されるスタンプデータを多く退避領域に記録できる。そのため、より新しい印刷履歴データが消去されず残すことやより多くの数の印刷履歴データを消去せずに残すことができる。
【0054】
(その他の実施形態)
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態では印刷装置について説明してきたが、印刷装置に接続されるPC等の制御装置側で本発明を実施しても良い。
【0055】
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。
【0056】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。
【0057】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0058】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が考えられる。また、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の印刷装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の印刷装置の操作パネル表した図である。
【図3】本発明の印刷装置の操作パネル表した図である。
【図4】本発明の印刷装置の内部記憶部の構成図である。
【図5】本発明の印刷装置のスタンプデータセットの構成図である。
【図6】実施例1の印刷装置のユーザースタンプデータセット書き換え処理のフローチャートである。
【図7】実施例2の印刷装置のユーザースタンプデータセット書き換え処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え手段と、
前記書き換え手段により合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が前記印刷履歴領域に記録されている場合に、前記記憶媒体中の前記合成データ領域とは異なる退避領域に前記消去される合成データを記録する退避手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記履歴記録手段は、前記記録媒体から読み出した画像データに画像処理を施してから記録することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記合成データ領域は、前記書き換え手段により合成データを書き換え可能とする書き換え可能領域と、合成データの書き換え不可能とする固定領域とを有し、
前記書き換え手段は、前記書き換え可能領域に記憶されている複数の合成データを一括して新しい合成データに書き換えることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記合成データ領域に記録されている複数の合成データは1つのデータセットとして記録されており、
前記書き換え手段は、合成データを書き換える際にはデータセット単位で書き換えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記退避手段は、前記消去される合成データを退避領域に記録する際に、新しい識別情報を割り当てて記録し、印刷履歴中の前記消去される合成データの識別情報を新しい識別情報に書き換えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記退避手段は、前記消去される合成データに対応する識別情報が記録されている印刷履歴の数を参照カウンタとして前記消去される合成データと共に記録することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記履歴記録手段は、前記印刷履歴領域に記録可能な印刷履歴数を超える場合、印刷履歴を消去し、
前記退避手段は、消去される印刷履歴に、前記退避領域に記録されている合成データの識別情報が含まれている場合は、当該合成データの参照カウンタを1つ減少させることを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記退避手段は、前記参照カウンタが0になった合成データを消去することを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記退避領域に記録可能な合成データの数を超える場合、前記書き換え手段により合成データを書き換える際に消去される合成データを前記退避領域に記録せずに、当該合成データの識別情報が含まれる印刷履歴を消去することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理手段とを有し、
前記書き換え処理手段は、合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が前記印刷履歴領域に記録されている場合に、消去される合成データに対応する識別情報を含む印刷履歴を前記印刷履歴領域から消去することを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体と、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録手段と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理手段と、
前記合成データ領域は、前記書き換え手段により合成データを書き換え可能とする書き換え可能領域と、合成データの書き換え不可能とする固定領域とを有し、
前記書き換え処理手段により合成データを書き換える際に、前記書き換え可能領域に記録されている合成データの識別情報が含まれる印刷履歴を消去する消去手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体を有する印刷制御装置の制御方法であって、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録工程と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え工程と、
前記書き換え工程により合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が前記印刷履歴領域に記録されている場合に、前記記憶媒体中の前記合成データ領域とは異なる退避領域に前記消去される合成データを記録する退避工程を有することを特徴とする印刷制御装置の制御方法。
【請求項13】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体を有する印刷制御装置の制御方法であって、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録工程と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理工程と、
合成データを書き換える際に消去される合成データに対応する識別情報が前記印刷履歴領域に記録されている場合に、消去される合成データに対応する識別情報を含む印刷履歴を前記印刷履歴領域から消去する消去工程とを有することを特徴とする印刷制御装置の制御方法。
【請求項14】
複数の合成データを記録する合成データ領域と、印刷された画像の画像データを含む印刷履歴を記録する印刷履歴領域とを有する記憶媒体を有する印刷制御装置の制御方法であって、
前記記憶媒体から読み出した合成データと前記記憶媒体とは異なる記録媒体から読み出した画像データとを合成して印刷した場合に、前記合成データの識別情報と前記画像データとを印刷履歴として前記印刷履歴領域に記録する履歴記録工程と、
前記記憶媒体に記録されている合成データを他の合成データに書き換えるための書き換え処理工程と、
前記合成データ領域は、前記書き換え工程で合成データを書き換え可能とする書き換え可能領域と、合成データの書き換え不可能とする固定領域とを有し、
合成データの書き換え時に、前記書き換え可能領域に記録されている合成データの識別情報が含まれる印刷履歴を消去する消去工程を有することを特徴とする印刷制御装置の制御方法。
【請求項15】
請求項12ないじ14のいずれか1項に記載の印刷制御装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項12ないじ14のいずれか1項に記載の印刷制御装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記憶されるコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46995(P2010−46995A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215701(P2008−215701)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】