説明

印刷装置および印刷制御方法

【課題】ロール紙の残量より大きい画像データを印刷する場合であっても、用紙を無駄に破棄すること無く、またユーザに負担をかけることなく、連続性の損なわない画像を出力可能な印刷方法を提供することである。
【解決手段】先行用紙の後端部が検出された際、先行用紙に印刷可能な画像を印刷した後、その画像の終端ではなく画像領域の途中で先行用紙を切断し、この切断箇所に連続するように後続用紙印刷を開始する。これにより、余白のない後端部を有する先行用紙と、余白のある先端部を有する後続用紙を用意することが出来、これらの張り合わせをスムーズに行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の用紙に連続的に画像の記録を行うシステムの印刷処理に関する。特に、画像の大きさに対し用紙の長さが不足する場合において、印刷後の画像を簡単に繋ぎ合わせるようにするための、画像処理および印刷処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙のような長尺の用紙に記録を行う印刷システムでは、1回のジョブデータの印刷が終了すると、その画像に対応したサイズで用紙を切断し、これを排出する。すなわち、定形サイズの印刷物を出力するのではなく、画像の大きさによって適宜異なるサイズの印刷物を出力する。このようにロール紙の残量も画像データのサイズも様々に変化する印刷システムにおいては、ロール紙の残量が画像データに対し不足し、印刷の途中で用紙が途切れてしまう場合もある。このような場合、従来では、新たに十分な量のロール紙を補充して画像を最初から印刷するのが一般であった。しかし、これでは先行して印刷されたロール紙を破棄することになるので、ロール紙とインクを無駄に消費してしまう。
【0003】
これに対し、セットした時点のロール紙の長さを取得し、その後のロール紙の残量を管理する方法が提案されている。このような構成を備えていれば、印刷ジョブデータを受信した時点で画像の大きさとロール紙の残量を比較することが出来、画像に対してロール紙が不足している場合は、その旨をユーザに通知することが出来る。そして、取り外した未使用のロール紙を破棄せずとも、より小さいサイズの別の画像データのために保存しておくことが可能となる。但しその一方で、残量の異なる複数のロール紙の管理が煩雑になり、ユーザに負担をかけてしまうおそれも生じる。
【0004】
上記問題を緩和するため、画像に対してロール紙が不足している場合は、後に2つのロール紙を張り合わせること前提に、先行するロール紙と後続するロール紙に画像を分割して印刷する方法も提案されている。このような方法で画像が印刷されれば、印刷が完了した後に、先行するロール紙と後続するロール紙とを貼り合せることにより、連続した画像を再現することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−043640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の様に2つのロール紙を張り合わせる場合、先行ロール紙あるいは後続ロール紙の少なくとも一方の余白を切断しないと、張り合わせ部分に余白が含まれ、画像の連続性が得られなくなってしまう。すなわち、ユーザは連続した画像を再現するために「余白の切断」という作業を行わなければならならず、これが負担となっている場合も多かった。
【0007】
例えば特許文献1には、ポスター印刷のように複数の画像を張り合わせて1つの大きな画像を形成する場合において、余白なし印刷を行う方法が開示されている。このような特許文献1であれば、個々の用紙に予め余白が存在しないので、「余白の切断」という作業を省くことは出来る。しかしながら、特許文献1の方法は、定型サイズの用紙を用いることが前提となっているので、用紙の後端位置が定形用紙の様に管理されないロール紙を用いる場合には、その方法をそのまま適用することが出来なかった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、ロール紙の残量より大きい画像データを印刷する場合であっても、用紙を無駄に破棄すること無く、またユーザに負担をかけることなく、連続性の損なわない画像を出力可能な印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドよりも上流側の位置に配置され、用紙の端部の検知するための検知手段と、用紙を切断する切断手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、先行用紙に前記記録ヘッドにより画像を印刷し、前記検知手段が前記先行用紙の後端が通過したことを検知したら印刷を中断するとともに、すでに印刷された画像の途中で前記先行用紙を前記切断手段で切断し、前記先行用紙に続く後続用紙を給紙して、前記先行用紙において切断された画像が連続するように続く画像を前記後続用紙に印刷するよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、余白のない後端部を有する先行用紙と、余白のある先端部を有する後続用紙を用意することが出来、これらの張り合わせをスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用可能な印刷システムの制御構成を説明するためのブロック図である。
【図2】印刷システムの印刷部の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明における印刷の工程を説明するためのフローチャートである。
【図4】バンドメモリ管理手段によるバンドメモリの管理の様子を示す図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明の効果を従来法と比較しながら説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に使用可能な印刷制御システムの構成を説明するためのブロック図である。ホストコンピュータ101で生成された画像データは、ネットワークなどのインターフェースを介して印刷装置のコントローラ100に送信される。コントローラ100においては、受信バッファ102で画像データを受信し、レンダラ103にてこれを描画化し、ドットデータ生成手段104によって、各画素におけるドットの記録あるいは非記録を示す2値データに変換する。この様に生成されたドットデータは、一度プリントバッファ105に蓄えられ、バンドメモリ管理手段106の制御の下、記録ヘッドの1回の走査で記録可能な1バンド分の単位で、プリンタエンジン106に送信される。
【0013】
プリンタエンジン108では、図2を参照するに、記録ヘッド502によるX方向への記録走査と、1バンド分に相当するY方向への用紙Pの搬送を交互に行う。これにより、ロール状に保持され記録部に供給されるロール紙Pには、1バンド分ずつ画像が記録されて行く。
【0014】
この際、プリンタエンジン108は、プリントバッファ105から受信したドットデータに基づいて、記録ヘッド502からインクを吐出させる。また、各種モータ505をコントロールして、記録ヘッド502をX方向に移動したり、用紙PをY方向に搬送したりする。所定の画像データの記録が完了すると、記録ヘッド502よりもY方向下流側に配備されたカッター504を作動して、ロール紙Pを切断する。
【0015】
ロール紙Pの搬送経路の途中であって記録ヘッド502よりもY方向の上流側には、搬送経路中の用紙の有無を判断する、あるいは用紙の先端部や後端部の通過を検知するための紙なし検知手段107(センサ)が配備されている。コントローラ100のバンドメモリ管理手段106は、紙なし検知手段107からの紙なし検出情報を取得し、当該情報に応じて、本発明の特徴的なバンド記録の管理を行う。
【0016】
図3は、本実施例の印刷制御システムにおいて、コントローラ100およびプリンタエンジン108が実行する工程を説明するためのフローチャートである。
【0017】
印刷動作が開始されると、ステップS1において、各種モータ505が駆動され、ロール状に保持されているロール紙Pが記録ヘッド502による記録が可能な領域まで給紙される。続くステップS2では記録ヘッド502がX方向に移動しながらドットデータに従った記録を行うことにより、用紙Pに1バンド分の画像を印刷する。
【0018】
ステップS3では、ステップS2で実行した記録走査によって全ての画像データの印刷が終了したか否かを判断する。全ての画像データの印刷が終了したと判断した場合はステップS4に進み、本処理を終了する。一方、印刷すべき画像データがまだ残っていると判断した場合はステップS5へ進み、紙なし検知手段107が用紙なしを検出したか否かを判断する。ステップS5において、用紙なしが検出されなかった場合、現在のロール紙に印刷を継続可能と判断し、次のバンドの記録のためにステップS2に戻る。一方、用紙なしが検出された場合、印刷動作を中断して、本発明に特徴的なつなぎ部の印刷処理を行うため、ステップS6へ進む。
【0019】
ステップS6では、直前に印刷したバンドのドットデータを、バンドメモリ管理手段のメモリに記憶する。以下、説明のため、ステップS6でドットデータを記憶したバンドをNバンドとする。
【0020】
続くステップS7では、最後に印刷したNバンドとその一つ前の記録走査で記録したN−1バンドの境界がカッター504の切断位置に配置されるまで用紙Pを搬送し、これを切断する。その後、ステップS8にて、切断された用紙Pをさらに搬送し装置から排出すると共に、ユーザにロール紙が使いきられたことを通知する。
【0021】
続くステップS9では、ユーザによる新たなロール紙の装着が行われたか否かを判断する。新たなロール紙が装着されたことを確認するとステップS10へ進み、通常の給紙動作を実行する。すなわち、その先端を記録ヘッド502よりも余白の分だけY方向に進めた位置に合わせるように、新たに装着されたロール紙を搬送する。
【0022】
ステップS11では、メモリ管理手段106の指示により、ステップS6で記憶したNバンド目のドットデータを、新たに装着されたロール紙における最初のドットデータとてセットする。そして、新たに装着したロール紙に対する残りのドットデータの印刷を継続するために、ステップS2に戻る。
【0023】
その後、再びステップS2〜S5を繰り返し、新たに装着したロール紙(後続ロール紙)に対しNバンドを先頭とした記録走査を繰り返す。後続ロール紙が消費される前に画像データの記録が終了すれば、ステップS4で本処理を終了する。一方、画像データの記録が完了する前に、後続ロール紙が消費されてしまえば、再度ステップS6からS11を繰り返し、3つ目のロール紙に印刷動作を引き継いで行く。
【0024】
図4は、バンドメモリ管理手段106によるバンドメモリの管理の様子を示す図である。バンドメモリ管理手段106は、プリントバッファ105に格納されているドットデータを1バンドごとに管理しており、記録ヘッド502による各記録走査に応じてプリンタエンジン108にバンド単位でドットデータを送信する。図では、N+mバンドからなる画像を印刷する場合を示している。図3で説明したフローチャートに従えば、バンドメモリ管理手段106の管理のもと、1バンド〜Nバンドのデータが、先行のロール紙に記録される。また、NバンドからN+mバンドのデータが後続するロール紙に記録される。このように、Nバンドについては、先行のロール紙にも後続するロール紙にも重複して記録されるようになっている。
【0025】
以下、図3のフローチャートに従った本実施例の印刷装置の動作を、図2を参照しながら具体的に説明する。図の様にロール紙Pが十分にあるとき、紙なし検知手段107の検出領域には用紙が存在しており、ステップS2による1バンド分ずつの記録走査が繰り返し行われる。一方、ロール紙Pが消費され、後端部が図の点線の位置まで搬送された場合、紙なし検知手段107は用紙なしと判断する。そして、先行ロール紙に対する印刷動作を一時中断する。直前のステップS2で印刷したNバンドとN−1バンドの境界503がカッター504に位置するまで用紙Pが搬送され、切断される。すなわち、先行ロール紙にはNバンドまでの記録が行われるものの、切断後に残った先行ロール紙にはN−1バンドまでの印刷となっており、後端部に余白は存在しない。
【0026】
一方、後続するロール紙に対しては、所定の余白を設けた給紙動作が行われた後、ステップS11においてNバンドが設定され、ステップS2においてこれを先頭バンドとした印刷動作が再開される。すなわち、後続ロール紙はNバンドからが印刷されておりその先端部には余白が設けられている。
【0027】
図5(a)および(b)は、本実施例の印刷制御を従来法と比較しながら説明するための模式図である。図5(a)および(b)において、201は、ホストコンピュータ101から受信した画像データであり、ここでは印刷装置に装着されているロール紙の残量よりも大きいサイズを有するとする。コントローラ100は、このような画像データをドットデータに変換し、プリントバッファ105に格納する。
【0028】
図5(a)は従来法の印刷制御を行った結果を示している。従来法の場合、印刷動作中に先行ロール紙の後端部が検出されても特別な処理は行われないので、先行ロール紙の記録状態は202aのようになる。すなわち、画像は途中で途切れ、後端部には余白203が存在している。そして、新たに後続ロール紙を装着して印刷を継続した場合、後続ロール紙の記録状態は202bのようになる。すなわち、通常の給紙動作の後、画像の途切れた部分から印刷を開始するので、その先端部には余白204が存在している。このような2枚の画像を繋ぎ合わせる場合、先行ロール紙の後端にも、後続ロール紙の先端にも余白が存在しているので、張り合わせ後の画像を連続させるためには、どちらか一方の余白をユーザが切断する必要が生じる。図5(a)では、後続ロール紙の先端の余白204を切断し、先行ロール紙の後端の余白203を糊しろとする場合を示している。
【0029】
一方、図5(b)は本実施例の印刷制御を行った結果を示している。本実施例の場合、Nバンドまで記録した後、NバンドとN−1バンドの境界がカッター504で切断されているので、先行ロール紙の記録状態は302aのようになる。すなわち、画像はN−1バンド目で途切れ、後端部には余白が存在しない。このように、本実施例では、既に記録された画像領域の中でロール紙を切断しているので、多少の搬送誤差が発生し切断の位置がずれた場合であっても、先行ロール紙の後端部には余白が発生することはない。先行ロール紙を排出後、新たに後続ロール紙を装着して印刷を継続すると、その記録状態は302bのようになる。すなわち、切断部分に連続するNバンド目からの画像が印刷され、先端部には余白が存在している。このような2枚の画像を繋ぎ合わせる場合、先行ロール紙の後端には余白が存在していないので、ユーザによる余白の切断の必要はない。すなわち、後続ロール紙の先端の余白304を糊しろとして、両者をそのまま貼り合せることが出来る。
【0030】
以上説明したように、本実施例によれば、画像の大きさに対し用紙の長さが不足する場合であっても、余白のない先行ロール紙と余白の存在する後続ロール紙に分けて連続した画像を印刷することが出来る。その結果、ユーザに切断作業の手間をかけることなく、張り合わせ作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0031】
なお、以上では簡単のため、シリアル型の印刷装置において、記録ヘッドが1回の記録走査で記録可能なドットデータを、記録ヘッドによる1回の記録走査で全て記録する形態(1パス記録)について説明した。しかしながら、本発明は、記録ヘッドが1回の記録走査で記録可能なドットデータを、記録ヘッドの複数の記録走査で分割して記録する所謂マルチパス記録形態にも採用することも出来る。この場合、プリントバッファに格納されたドットデータは複数の記録走査に対応して分割されるので、バンドメモリ管理手段106は、分割された後のドットデータを単位として管理することになる。
【0032】
いずれにしても、先行用紙の後端部が検出された際、先行用紙に印刷可能な画像を印刷した後、その画像の終端ではなく画像領域の途中で先行用紙を切断し、この切断箇所に連続するように後続用紙印刷が開始されれば本発明の効果を発揮することは出来る。
【符号の説明】
【0033】
100 コントローラ
105 プリントバッファ
106 バンドメモリ管理手段
107 紙なし検知手段
108 プリンタエンジン
201 画像データ
302a 先行用紙
302b 後続用紙
394 余白
502 記録ヘッド
503 境界
504 カッター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと、
前記記録ヘッドよりも上流側の位置に配置され、用紙の端部の検知するための検知手段と、
用紙を切断する切断手段と、
制御手段と、
を備え、前記制御手段は、
先行用紙に前記記録ヘッドにより画像を印刷し、前記検知手段が前記先行用紙の後端が通過したことを検知したら印刷を中断するとともに、すでに印刷された画像の途中で前記先行用紙を前記切断手段で切断し、
前記先行用紙に続く後続用紙を給紙して、前記先行用紙において切断された画像が連続するように続く画像を前記後続用紙に印刷する
よう制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記記録ヘッドによる1回の記録走査で記録可能な画像データを1バンドとしたとき、
前記画像データのNバンド目の画像領域とN−1バンド目の画像領域の境界で前記先行用紙を前記切断手段で切断し、
前記画像データのNバンド目を先頭にして前記後続用紙に対する印刷を開始するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記後続用紙の先頭に余白が設けられるように前記後続用紙に対する印刷を開始するよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
記録ヘッドにより先行用紙に画像を印刷し、
前記記録ヘッドよりも上流側の位置において用紙の端部をセンサで検知し、
前記先行用紙の後端が前記位置を通過したことが検知されたら印刷を中断するとともに、すでに印刷された画像の途中で前記先行用紙を切断し、
前記先行用紙に続く後続用紙を給紙して、前記先行用紙において切断された画像が連続するように、続く画像を前記後続用紙に印刷する
よう制御することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項5】
前記後続用紙の先頭に余白が設けられるように前記後続用紙に対する印刷を開始することを特徴とする請求項4に記載の印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78905(P2013−78905A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220386(P2011−220386)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】