説明

印刷装置および印刷方法

【課題】レンズシートの向きに応じて、印刷速度を速くすること、および印刷精度を良好にすることのうち、少なくとも1つを実現可能な印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷ヘッド24を備え、一方向を長手とする複数の凸レンズ11を有するレンズシート10に対して相対的に移動させ、印刷ヘッド24からインクを噴射することにより印刷を行う印刷装置20であって、印刷ヘッド24を移動させる移動手段28と、レンズシート10がセットされる方向に応じて印刷ヘッド24の移動速度を変更するよう制御する制御手段51と、を具備し、制御手段51は、印刷ヘッド24がレンズシート10の一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、印刷ヘッド24が一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、印刷ヘッド24の移動速度を遅くするように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視認される画像が立体視されたり、見る角度を変えることで視認される画像を切り替える(指向性を有するものとする)ために、多数のシリンドリカル凸レンズ(レンチキュラーレンズともいう;以下、凸レンズとする)が並列配置されたレンズシートに、印刷画像を形成することが行われている。この印刷画像においては、凸レンズのピッチに対応させたレンズ分配画像が凸レンズの並びの方向に配列されている。なお、それぞれのレンズ分配画像内には、視差や画像の切り替えに対応させたストライプ状の細分化画像が、それぞれの凸レンズのピッチ内に多数並べて記録されている。
【0003】
このようなレンズシートに印刷を行う場合においては、凸レンズに対して、インク滴を凸レンズの所定の位置に精度良く着弾させる一方で、印刷速度が向上することも望まれている。ここで、特許文献1には、検出ヘッドによってレンズ位置を検出し、それによって印刷ヘッドがインクを吐出する位置を補正する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レンズシートを印刷装置にセットする向きは、印刷装置の紙送り方向に対して凸レンズの長手が沿う向きとするか、または紙送り方向に対して凸レンズの長手が直交する向きとするかのいずれかであることがほとんどである。ここで、レンズシートをセットする向きを変えると、凸レンズの長手方向も変わる。そのため、レンズシートの向きによっては、印刷速度を速くしても印刷画質にさほど影響を与えない場合もあれば、印刷精度がシビアに要求される場合もあると考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、そのようなレンズシートの向きに応じて、適切な印刷制御とする点に付いては何等開示はない。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、レンズシートの向きに応じて、印刷速度を速くすること、および印刷精度を良好にすることのうち、少なくとも1つを実現することが可能な印刷装置および印刷方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、印刷ヘッドを備え、一方向を長手とする複数の凸レンズを有するレンズシートに対して相対的に移動させ、印刷ヘッドからインクを噴射することにより印刷を行う印刷装置であって、印刷ヘッドを移動させる移動手段と、レンズシートがセットされる方向に応じて印刷ヘッドの移動速度を変更するよう制御する制御手段と、を具備し、制御手段は、印刷ヘッドがレンズシートの一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、印刷ヘッドが一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御するものである。
【0009】
このように構成する場合には、印刷ヘッドの走査方向が一方向に対して垂直な状態で印刷を実行する場合(垂直印刷を行う場合)には、走査方向が一方向に対して平行な状態で印刷を実行する場合(平行印刷を行う場合)よりも、印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御される。それにより、レンズシートに対して垂直印刷を実行する場合には、平行印刷の場合よりも、印刷ヘッドから噴射されるインク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。
【0010】
また、印刷ヘッドからインクを噴射する場合、噴射されるインク滴の大部分は、主滴に含まれる。しかしながら、インクの噴射においては、上述の主滴以外に、サテライトと呼ばれる微小飛沫も発生する。ここで、上述のように垂直印刷を実行する場合に、平行印刷の場合よりも印刷ヘッドの移動速度を遅くすることにより、サテライトの着弾位置を主滴に近づけることができる。それにより、印刷によって形成されるドットが印刷ヘッドの移動方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、印刷ヘッドとレンズシートとの間のギャップを調整するギャップ調整機構を備え、制御手段は、印刷ヘッドがレンズシートの一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、印刷ヘッドが一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、ギャップが狭くなるようにギャップ調整機構を調整する、ことが好ましい。
【0012】
このように構成する場合には、印刷ヘッドの走査方向が一方向に対して垂直な状態で印刷を実行する場合(垂直印刷を行う場合)には、走査方向が一方向に対して平行な状態で印刷を実行する場合(平行印刷を行う場合)よりも、印刷ヘッドとレンズシートとの間のギャップを狭くなるようにギャップ調整機構にて調整される。それにより、レンズシートに対して垂直印刷を実行する場合には、平行印刷の場合よりも印刷ヘッドとレンズシートとの間のギャップが狭くなる。それにより、垂直印刷の場合には、平行印刷の場合よりも、サテライトの着弾位置が主滴に近付けることができ、印刷精度を高くすることが可能となる。加えて、インク滴がレンズシートに着弾するまでの間における気流等の影響による位置ずれを低減することが可能となり、印刷精度を高くすることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、レンズシートを搬送する搬送手段を備え、制御手段は、印刷ヘッドがレンズシートの一方向に対して平行に移動して印刷する場合は、印刷ヘッドがレンズシートの一方向に対して垂直に移動して印刷する場合より、レンズシートの搬送速度が遅くなるように、前記搬送手段を制御する、ことが好ましい。
【0014】
このように構成する場合には、印刷ヘッドの走査方向が一方向に対して平行な状態で印刷を実行する場合(平行印刷を行う場合)には、走査方向が一方向に対して垂直な状態で印刷を実行する場合(垂直印刷を行う)よりも、レンズシートの搬送速度を遅くするように制御される。それにより、レンズシートに対して平行印刷を実行する場合には、垂直印刷の場合よりも、印刷ヘッドから噴射されるインク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。
【0015】
また、印刷ヘッドからインクを噴射する場合、主滴以外に、サテライトと呼ばれる微小飛沫も発生する。ここで、上述のように平行印刷を実行する場合に、垂直印刷の場合よりもレンズシートの搬送速度を遅くすることにより、サテライトの着弾位置を主滴に近づけることができる。それにより、印刷によって形成されるドットがレンズシートの搬送方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、レンズシートのレンズピッチを測定する測定手段と、測定手段で測定されるレンズピッチが判定閾値を超える場合に平行印刷であると判定し、判定閾値を超えない場合に垂直印刷であると判定する判定手段と、を具備し、制御手段は、判定手段での判定結果に対応して制御内容を変更する、ことが好ましい。
【0017】
このように構成する場合には、測定手段でレンズシートのレンズピッチを測定すると、判定手段では、レンズピッチが判定閾値を超えるか否かに応じて、垂直印刷であるか平行印刷であるかが判定される。それにより、制御手段では、レンズピッチに関する情報の入力を行わくても、判定手段での判定結果に基づいて、レンズシートの方向に応じた制御を自動的に実行させることが可能となる。そして、実際にセットされるレンズシートの方向に応じた印刷を実行させることが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の他の側面である印刷方法は、印刷ヘッドを備え、一方向を長手とする複数の凸レンズを有するレンズシートに対して相対的に移動させ、印刷ヘッドからインクを噴射することにより印刷を行う印刷方法であって、移動手段によって印刷ヘッドを移動させる際に、レンズシートがセットされる方向に応じて印刷ヘッドの移動速度を変更するよう制御する制御工程と、制御工程での移動手段の移動速度の制御に基づいて印刷ヘッドからインクを噴射させてレンズシートへの印刷を実行する印刷実行工程と、を具備し、制御工程では、印刷ヘッドがレンズシートの一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、印刷ヘッドが一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御するものである、ことが好ましい。
【0019】
このように構成する場合には、印刷ヘッドの走査方向が一方向に対して垂直な状態で印刷を実行する場合(垂直印刷を行う場合)には、走査方向が一方向に対して平行な状態で印刷を実行する場合(平行印刷を行う場合)よりも、印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御工程で制御される。それにより、レンズシートに対して垂直印刷を実行する場合には、平行印刷の場合よりも、印刷ヘッドから噴射されるインク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。
【0020】
また、印刷ヘッドからインクを噴射する場合、噴射されるインク滴の大部分は、主滴に含まれる。しかしながら、インクの噴射においては、上述の主滴以外に、サテライトと呼ばれる微小飛沫も発生する。ここで、上述のように垂直印刷を実行する場合に、平行印刷の場合よりも印刷ヘッドの移動速度を遅くすることにより、サテライトの着弾位置を主滴に近づけることができる。それにより、印刷によって形成されるドットが印刷ヘッドの移動方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る垂直印刷の様子を説明する図である。
【図2】平行印刷の状態を説明する図である。
【図3】インク滴のうち、主滴とサテライトのイメージを示す図である。
【図4】平行印刷においてレンズシートの搬送速度調整のイメージを示す図である。
【図5】レンズシートの構成を示す斜視図である。
【図6】印刷装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図7】PG調整機構の構成を示す概略斜視図である。
【図8】制御部の概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態に係る印刷装置20および印刷方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、印刷ヘッド24を駆動させてインクの着弾により形成される絵柄を、印刷画像とする。また、印刷画像を視認した場合において見える画像を、絵柄とする。なお、本実施の形態では、凸レンズ11を介してたとえば立体視用の印刷画像を見る場合、右目用と左目用の2つの絵柄が見え、たとえばチェンジングと呼ばれるタイプの場合、見る角度によって違う絵柄に切り替わるようになっている。
【0023】
<1.概要>
[1]本発明の大枠について
(1−1)キャリッジ22の移動速度に関して
図1は本発明の概要に関する印刷のイメージを示す図であり、図1は凸レンズ11の長手方向に対してキャリッジ22の走査方向が垂直である場合を示し、図2は凸レンズ11の長手方向に対してキャリッジ22の走査方向が平行である場合を示している。なお、以下の説明においては、キャリッジ22の走査方向をX方向とし、レンズシート10の搬送方向をY方向とする。
【0024】
図1に示すように、凸レンズ11の長手方向がキャリッジ22の走査方向(X方向)に対して垂直である場合(以下、この場合を垂直印刷とする)、凸レンズ11内におけるインク滴の着弾位置がずれてしまうと、本来見えるべき絵柄が違ってくる、という事態が発生する。すなわち、レンズシート10においては、視差や画像の切り替えに対応した細分化画像の長手方向は、凸レンズ11の長手方向と一致した状態で印刷されるが、その細分化画像の幅は1ドット分または数ドット分と、非常に小さいものとなっている。そのため、1ドット分に対応するインク滴の着弾位置がずれてしまうと、細分化画像の幅がずれてしまい、本来見えるべき絵柄が見えない、という事態が発生する。
【0025】
一方、図2に示すように、凸レンズ11の長手方向がキャリッジ22の走査方向に対して平行である場合(以下、この場合を平行印刷とする)、凸レンズ11内におけるインク滴の着弾位置のずれは、細分化画像の幅方向ではなく、長手方向となっている。ここで、細分化画像の長手方向においては、同じまたは類似する階調値のドットDが形成されることが多い。そのため、インク滴の着弾位置が多少ずれても、そのずれは、見える絵柄にさほど影響を与えない。
【0026】
また、少し別の観点から平行印刷を述べると、平行印刷において隣接するドットDが同じ色合いの場合、細分化画像の長手方向(すなわちX方向)においては、同じノズル24aから続けてインク滴が噴射されることによって隣接するドットDが形成される場合が多い。このように、同じノズル24aから続けてインク滴が噴射されると、時間T1のときに着弾したインク滴が乾かないうちに、時間T2のときにインク滴が隣に着弾する。そのため、隣り合うドットD間でインクのにじみが生じる。しかしながら、上述のように隣接するドットDが同じ色合いの場合には、インクのにじみが生じても、見える絵柄への影響はさほど生じない状態となっている。
【0027】
これに対して、垂直印刷の場合、隣接するドットDが同じ色合いの場合であっても、同じノズル24aから続けてインクが噴射されないのが通常である。これは、次の理由による。すなわち、レンズシート10に印刷する場合には、文字の印刷等とは異なり印刷精度が高い状態で印刷されるが、そのような印刷精度の高い印刷では、現状はマイクロウィーブ方式(インターレース方式ともいう)により印刷される。そのため、隣接するドットDは、レンズシート10を所定だけ搬送した後に、異なるノズル24aからインク滴が噴射されることで形成される。それにより、垂直印刷の場合、隣接するドットD同士の間では平行印刷の場合よりも十分に時間が経過するため、先に着弾したインク滴が乾き、それによってインクのにじみが生じない状態となっている。
【0028】
ここで、図3に示すように、キャリッジ22に取り付けられている印刷ヘッド24からインクを噴射する場合、噴射されるインク滴の大部分は、メインのインク滴(以下、このメインのインク滴を主滴D1とする)に含まれる。しかしながら、この主滴D1以外に、サテライトD2と呼ばれる微小飛沫も発生する。このサテライトD2は、キャリッジ22の移動速度が速ければ速いほど発生し易い、という傾向がある。また、サテライトD2に関しては、次の性質がある。すなわち、キャリッジ22の速度が速い場合には、サテライトD2は主滴D1の中心から離れた位置に着弾する傾向がある。逆に、キャリッジ22の速度が遅い場合には、サテライトD2は、キャリッジ22の速度が速い場合よりも主滴D1の中心に近い側に着弾する傾向がある。
【0029】
そこで、本発明では、(1)細分化画像の長手方向では同じまたは類似する階調値の形成されること、(2)平行印刷と垂直印刷のときの隣接するドットDのにじみが発生するか否かの相違、(3)キャリッジ22の速度によるサテライトD2の着弾位置の相違、に鑑みて、キャリッジ22の移動速度を次のように制御している。
【0030】
すなわち、本発明では、印刷装置20にレンズシート10をセットする向きによって、キャリッジ22の移動速度を変更(切り替える)する制御を行うが、その制御では、垂直印刷の場合のキャリッジ22の移動速度V1が、平行印刷の場合の移動速度V2よりも小さくなる(V1<V2)ように制御している。換言すれば、垂直印刷の場合のキャリッジ22の移動速度は、平行印刷の場合のキャリッジ22の移動速度よりも遅いものとなるように制御している。それにより、垂直印刷の場合にキャリッジ22の移動速度が遅くなるので、インク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。加えて、図3に示すように、サテライトD2の着弾位置を主滴D1に近づけることができ、形成されるドットDがキャリッジ22の移動方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【0031】
(1−2)プラテンギャップの調整に関して
また、本発明では、レンズシート10をセットする向きに応じて(平行印刷と垂直印刷とで)、プラテンギャップを変更する制御を行うようにしても良い。以下、その詳細について述べる。
【0032】
垂直印刷の場合、上述のように、凸レンズ11内におけるインク滴の着弾位置がずれてしまうと、本来見えるべき絵柄が違ってくる、という事態が発生する。そのため、垂直印刷では、平行印刷よりも印刷精度が高いことが要求される。上述のように、インク滴の噴射においては、主滴D1以外にサテライトD2も生じるが、そのサテライトD2の着弾位置が主滴D1からずれると、印刷精度が悪化する。また、インク滴はレンズシート10に着弾するまでの間に気流等の影響で位置ずれを生じさせたりする。そのため、印刷ヘッド24のノズル面24bと、レンズシート10との間の距離が遠い場合と近い場合とを比較すると、遠い場合の方が印刷精度が悪化する。
【0033】
そこで、垂直印刷の場合に、平行印刷の場合よりも印刷精度を高めるべく、本発明では、垂直印刷の場合におけるプラテンギャップを、平行印刷の場合におけるプラテンギャップよりも狭くなるように制御している。すなわち、本発明では、印刷装置20にレンズシート10をセットする向きによって、プラテンギャップを変更するが、その変更の態様としては、垂直印刷におけるプラテンギャップが、平行印刷におけるプラテンギャップよりも狭くなるように変更する(切り替える)制御を行っている。
【0034】
それにより、垂直印刷においては、平行印刷の場合よりもプラテンギャップが狭くなり、図3に示すように、サテライトD2の着弾位置が主滴D1に近付けることができ、印刷精度を高くすることが可能となる。加えて、インク滴がレンズシート10に着弾するまでの間における気流等の影響による位置ずれを低減することが可能となり、印刷精度を高くすることが可能となる。
【0035】
(1−3)レンズシート10の搬送速度に関して
また、本発明では、レンズシート10をセットする向きに応じて(平行印刷と垂直印刷とで)、レンズシート10の搬送速度を変更する制御を行うようにしても良い。以下、その詳細について述べる。
【0036】
垂直印刷の場合、レンズシート10の搬送方向は、細分化画像の長手方向と一致している。そのため、上述の(1−1)で述べたのと同様の理由により、この垂直印刷においてはレンズシート10の搬送ピッチを大きくしても(すなわち搬送速度を大きくしても)、見える絵柄への影響はさほど生じない状態となっている。
【0037】
これとは逆に、平行印刷の場合、レンズシート10の搬送方向は、細分化画像が並ぶ方向となっている。そのため、レンズシート10の搬送方向においてインク滴の着弾位置がずれてしまうと、本来見えるべき絵柄が違ってくる、という事態が発生する。加えて、搬送方向において隣接するドットDの間でも、インクのにじみが生じないことが好ましい。このため、平行印刷の場合には、搬送方向において隣接するドットDは同じタイミングでは形成せずに、レンズシート10の搬送を経た後に形成することが好ましい。
【0038】
なお、印刷の解像度がノズルピッチと同等の場合には、図4(A)に示すようにして印刷を行っても良い。しかしながら、印刷の解像度が高い場合には、図4(B)に示すように、印刷ヘッド24のノズル24aの間を埋めるようなインターレース方式にて印刷が行われることが好ましい。図4(B)では、ノズル24aのノズル24aの間の間隔の1/4ずつ、ドットDが形成されているが、ノズル24aの列(ノズル列24c)は、ドットDの間隔の7倍だけ相対的に移動させるようにレンズシート10を搬送して、印刷を行っている。
【0039】
以上が本発明の概要である。すなわち、レンズシート10を印刷装置20にセットする向きに応じて、キャリッジ22の移動速度を変更する(切り替える)制御を行う。さらに、レンズシート10をセットする向きに応じて(平行印刷と垂直印刷とで)、プラテンギャップを変更する制御を行うようにしても良い。さらに、レンズシート10をセットする向きに応じて(平行印刷と垂直印刷とで)、レンズシート10の搬送速度を変更する制御を行うようにしても良い。
【0040】
<2.レンズシート10について>
続いて、レンズシート10について説明する。図5に示すように、レンズシート10は、凸レンズ11と、基材12と、インク吸収層13と、を有している。
【0041】
凸レンズ11は、一方向を長手とするシリンドリカル凸レンズである。図5に示すように、この凸レンズ11は、基材12上に一定のピッチで並列に配置されている。この凸レンズ11においては、それぞれの凸レンズ11を進行する光の焦点が、レンズシート10の裏面、または当該裏面に形成される印刷層に位置するように、凸レンズ11の曲率が形成されるのが好ましい。凸レンズ11は、PET(Polyethylene Terephtarate)、PETG(Polyethylene Terephtalate Glycol)、APET(Amorphous Polyethylene Terephthalate)、PP(Polypropylene)、PS(Polystyrene)、PVC(Polyvinyl Chloride)、アクリル、UV(Ultraviolet)樹脂等を材質として形成されている。
【0042】
また、基材12は、透明性を有する材料を薄板状に形成したものであり、例えばPET−G(Polyethylene Terephtalate Glycol)樹脂、PET(Polyethylene Terephtarate)樹脂等を用いることが可能である。
【0043】
インク吸収層13は、インクを吸収および/または固着させる部位である。このインク吸収層13は、たとえばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材質として形成されている。
【0044】
なお、上述のレンズシート10においては、インク吸収層13よりも裏面側(基材12および凸レンズ11から離れる側)にインク透過層を設けるようにしても良い。この場合、インク透過層に付着したインクは、インク透過層を透過して、インク吸収層13に到達する。このようなインク透過層としては、透明性を有する材質であることが必要であり、たとえばガラスファイバー、プラスチックファイバー等を材質として形成することが可能である。
【0045】
<3.印刷装置20およびモーター制御について>
(3−1)印刷装置20の構成について
図6は、本発明の一実施の形態に係る印刷装置20の概略的な構成を示す斜視図である。
【0046】
印刷装置20は、インクジェット式のプリンターであるが、かかるインクジェット式プリンターは、インクを噴射して印刷可能な装置であれば、いかなる噴射方法を採用した装置でも良い。
【0047】
図6に示すように、印刷装置20は、プラテン21を有し、このプラテン21に対してキャリッジ22が往復移動自在に構成されている。キャリッジ22は、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックインクが内部に貯留されたインクカートリッジ23を保持している。キャリッジ22の下方側には、レンズシート10に対向するように、印刷手段としての印刷ヘッド24が設けられており、インクカートリッジ23に貯留されているインクを吸引し、微小なインク滴として吐出可能としている。なお、搭載されるインクカートリッジ23は、4色に限られるものではなく、3色、あるいは5色以上等、何色分であっても良い。また、インクカートリッジ23に充填されるインクは、染料系インクには限られず、顔料系インク等、他の種類のインクを搭載しても良い。また、印刷ヘッド24は、インク量の異なる複数種類(大、中、小)のインク滴を噴射することで、複数種類のサイズのドットDを形成することを可能としても良い。
【0048】
キャリッジ22には、タイミングベルト25の一部が固着されている。タイミングベルト25は、プーリー26,27を連接するように架張されている。プーリー26には、キャリッジモーター(CRモーター)28の駆動軸が接続されている。したがって、CRモーター28が回転されると、キャリッジ22がX方向(主走査方向)に往復動作する。なお、CRモーター28と、キャリッジ22と、タイミングベルト25と、プーリー26,27とは、請求項でいう移動手段の一例に対応するが、その中でCRモーター28は、請求項でいう移動手段の主要部の一例に対応する。
【0049】
キャリッジ22の一部(この図の例では左側)には、凸レンズ11のレンズピッチを検出するための光学センサー30が設けられている。光学センサー30は、請求項でいう測定手段の一例に対応する。この光学センサー30は、たとえば投受光方式のセンサーであり、発光部と受光部とを備えている。ただし、光学センサー30としては、発光部または受光部のみがキャリッジ22に搭載されると共に、受光部または発光部がプラテン21側に存在する構成としても良い。
【0050】
キャリッジ22が往復動作する経路上には、リニアエンコーダーを構成するスケール31が配置されている。キャリッジ22のスケール31に対向する面には、リニアエンコーダーを構成する光学センサー30が配置されており、当該光学センサー30によってスケール31に印刷されたパターンを検出することにより、キャリッジ22の主走査経路上における位置を特定する。
【0051】
プラテン21の上流側(紙面の奥側)には、円柱形状を有する紙送りローラー33が設けられている。紙送りローラー33には、搬送手段の一部としての紙送りモーター(PFモーター)34の駆動力が伝達される。したがって、紙送りモーター34が回転されると、紙送りローラー33が回転され、レンズシート10がプラテン21上を、Y方向(紙送り方向;搬送方向)の排紙側に向けて搬送される。なお、PFモーター34は、請求項でいう第3駆動手段の一例に対応する。
【0052】
(PG調整機構40について)
次に、印刷ヘッド24とプラテン21との間のギャップを調整する、プラテンギャップ調整機構(以下、PG調整機構40とする)について、図7に基づいて説明する。
【0053】
PG調整機構40は、キャリッジ22の移動をガイドするキャリッジ軸41の高さ位置を調整する機構である。なお、このPG調整機構は、請求項でいうギャップ調整機構の一例に対応する。このPG調整機構40は、図7に示すように、キャリッジ軸41と、PGモーター42(図8参照)と、PGモーター42からの駆動力を伝達するPGギヤ輪列43と、PGカム44と、該PGカム44が押し付けられる固定ピン45と、該PGカム44の回動位置の検出のためのフラグ板46と、フラグ検出センサー48とを具備している。
【0054】
これらのうち、PGモーター42は、プラテンギャップ(PG)調整のための駆動力を与えるためのモーターである。このPGモーター42は、請求項でいう第2駆動手段の一例に対応する。また、PGギヤ輪列43は、複数のギヤから構成されていて、PGカム44を回動させるためにPGモーター42の駆動力を減速して伝達する駆動伝達手段である。かかるPGギヤ輪列43のうち、最終段の出力歯車43aは、キャリッジ軸41に対して固定的に取り付けられている。また、キャリッジ軸41には、PGカム44も固定的に取り付けられている。
【0055】
また、PGカム44は、回転中心に対する半径が、段階的に異なるように設けられているカム部材である。このPGカム44は、プラテンギャップ(PG)を設定可能な個数分設けられている。
【0056】
図7に示すように、PGカム44のうち、外周のカム面44aは、固定ピン45に押し付けられている。固定ピン45は、印刷装置20の不図示のシャーシに固定的に設けられるフレーム49に固定的に設けられている。このため、PGカム44が回動すると、そのカム面44aの固定ピン45に対する当接により、キャリッジ軸41の高さ位置を変化させることを可能としている。ここで、フレーム49には、長孔49aが設けられている。長孔49aは、その長手方向が上下方向に向かうように設けられている。しかも、長孔49aの短手方向の幅は、キャリッジ軸41の挿通に必要な寸法のみを有している。このため、PGカム44が回動されると、キャリッジ軸41は、長孔49aの内部を、その長手方向に沿って摺動する。
【0057】
また、フラグ板46は、PGギヤ輪列43の中途部分の不図示のギヤと同軸かつ同時に回転するように設けられている。フラグ板46は、円盤状部46aの外周側に、突出方向に向かうフラグ47が複数設けられることにより、構成されている。このフラグ47は、光を透過させない遮光部分であり、フラグ検出センサー48の検出領域を通過する際に、光を遮ることを可能としている。また、フラグ板46には、PGカム44の段階数に対応する枚数のフラグ47が設けられている。また、フラグ板46には、フラグ検出センサー48が近接する状態で配置されている。フラグ検出センサー48は、発光部48aと受光部48bとを有する光センサであり、全てのフラグ47がこの発光部48aと受光部48bとの間の検出領域を通過可能に設けられている。なお、受光部48bから出力される信号は、制御部50に入力されるように構成されている。それにより、PGカム44の回転ポジションが検出可能となっている。
【0058】
また、図8に示すように、印刷装置20には、制御部50が設けられている。制御部50は、印刷装置20に接続されているコンピューター60から受け取った印刷データに基づいて、印刷ヘッド24を駆動させるための駆動信号を作成する。そして、この駆動信号に基づいて印刷ヘッド24が制御駆動され、レンズシート10にインクを噴射して所望の印刷画像を形成することが可能となっている。
【0059】
図8に示すように、制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、メモリー(ROM、RAM、不揮発性メモリー等)52、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)53、通信I/F55、ヘッドドライバー56、モータードライバー57等を備えていて、これらが例えばバス等の伝送路54を介して相互にデータを送受信可能に接続されている。
【0060】
これらのうち、CPU51は、メモリー52に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、印刷装置20の各部を制御する部分である。なお、CPU51と、制御部50におけるCPU51以外の各部が協動することによって、請求項でいう制御手段の一例が実現される。
【0061】
また、メモリー52には、印刷装置20にセットされるレンズシート10の向きを判定するための判定プログラム52aが記憶されている。この判定プログラム52aは、コンピューター60側から受け渡されるレンズシート10の方向に関する情報、または光学センサー30でのレンズシート10のレンズピッチの測定等の情報に基づいて、セットされたレンズシートの向きが垂直印刷を行うものであるのか、または平行印刷を行うものであるのかを判定する。なお、判定プログラム52aがCPU51で実行され、さらには制御部50におけるCPU51以外の各部が協動することによって、請求項でいう判定手段の一例が実現される。
【0062】
また、メモリー52には、モーター制御プログラム52b、制御選択データ52cおよび制御選択プログラム52dが記憶されている。モーター制御プログラム52bは、CRモーター28、PFモーター34および/またはPGモーター42の制御を行うためのプログラムである。また、制御選択データ52cは、セットされるレンズシート10の方向に応じて選択される制御情報を有している。この制御情報には、垂直印刷に対応したものと、平行印刷に対応したものとが存在している。そして、いずれかの制御情報を選択することにより、モーター28,34,42の制御を変更する(切り替える)ことが可能となっている。なお、制御情報としては、CRモーター28、PFモーター34および/またはPGモーター42の制御に関するデータ、PID制御その他の制御方式の制御式における係数、定数、その他の付加的な情報等がある。
【0063】
また、制御選択プログラム52dは、判定プログラム52aで判定されたレンズシート10の方向に基づいて、制御選択データ52cの中で、セットされるレンズシート10の方向に応じた制御情報を選択するためのプログラムである。すなわち、制御選択プログラム52dで選択された制御情報に基づいて、モーター制御プログラム52bでのCRモーター28、PFモーター34および/またはPGモーター42の駆動制御が行われることとなる。なお、メモリー52には、コンピューター60のプリンタードライバープログラムと同様のプログラムを記憶するようにしても良い。
【0064】
ASIC53は、不図示の各種のセンサーからの信号、およびその信号に基づくCPU51からの指令に基づいて、印刷ヘッド24および各種モーターを駆動させるための専用のICである。また、通信I/F55は、不図示のコネクターを介してコンピューター60と接続され、通信を行う。それにより、印刷装置20がコンピューター60側から印刷データを受け取ると、その印刷データに基づいて、印刷装置20で印刷のための処理が開始される。
【0065】
また、ヘッドドライバー56は、ASIC53からの指令に応じて所定の電圧を生成し、その電圧を印刷ヘッド24内のピエゾ素子に印加する。モータードライバー57は、ASIC53からの指令に応じて所定の電圧を生成し、その電圧をCRモーター28、PFモーター34、および/またはPGモーター42に印加する。
【0066】
(3−2)印刷装置20にセットされるレンズシート10の方向に応じたモーター制御について
続いて、印刷装置20にセットされるレンズシート10の方向に応じたモーター制御について、以下に説明する。
【0067】
コンピューター60が印刷データと共にレンズシート10の方向に関する情報を印刷装置20に向けて送信する場合、CPU51で実行される判定プログラム52aに基づいて、レンズシート10の方向を判定する。また、コンピューター60からレンズシート10の方向に関する情報が存在しない場合、あるいは印刷装置20にセットされるレンズシート10の方向について必ず検出を行う設定の場合には、CPU51は、CRモーター28を駆動させると共に、光学センサー30を作動させる。それによって、レンズシート10のレンズピッチの測定を行う。
【0068】
かかる測定により、CPU51は、セットされるレンズシート10の方向が垂直印刷に対応したものか、または平行印刷に対応したものかを、判定閾値および判定プログラム52aに基づいて判定することが可能となる。すなわち、垂直印刷の場合には、レンズピッチは非常に小さいものである。そのため、測定結果として判定閾値よりも小さな(十分に小さな)レンズピッチが得られる場合には、セットされたレンズシート10の方向が垂直印刷に対応したものであると判定する。また、光学センサー30からの検出信号に十分なレベル差がない場合、または測定結果として非常に大きなレンズピッチが得られる場合(判定閾値よりも大きなレンズピッチが得られる場合)には、セットされたレンズシート10の向きは平行印刷に対応したものであると判定する。
【0069】
以上のようにして、CPU51でレンズシート10の方向を判定した後に、CPU51では、制御選択データ52cが読み込まれると共に制御選択プログラム52dが実行される。そして、CPU51では、レンズシート10の方向に応じたモーター28,34,42の制御に関して、制御選択データ52cが有するいずれかの制御情報を選択する。この選択により、モーター38,34,42の駆動は、水平印刷に対応したものか、または平行印刷に対応したものとすることが可能となる。
【0070】
このように、制御情報を選択することにより、モーター28,34,42の制御が変更される(切り替えられる)。そして、モーター制御プログラム52bでは、選択された制御情報に基づいて、CRモーター28、PFモーター34および/またはPGモーター42を制御する旨の指令を、ASIC53に出力する。すると、ASIC53では、その指令に基づいて、モーター28,34,42が駆動される場合には、モーター28,34,42を制御する。そのとき、モーター28,34,42の制御内容は、レンズシート10の方向に応じて変更されたものとなる。
【0071】
ところで、具体的な各モーター28,34,42の制御は、上述した通りであるが、要約すると、垂直印刷の場合のキャリッジの移動速度V1が、平行印刷の場合の移動速度V2よりも小さくなる(V1<V2)ように制御している。また、プラテンギャップの調整を行う場合には、垂直印刷の場合におけるプラテンギャップを、平行印刷の場合におけるプラテンギャップよりも狭くなるように制御している。また、レンズシート10の搬送速度の制御を行う場合には、垂直印刷の場合におけるレンズシート10の搬送速度よりも平行印刷の場合におけるレンズシート10の搬送速度の方が小さくなるように制御している。
【0072】
以上のようなモーター制御と共に、印刷ヘッド24の駆動も、印刷データに基づいて制御される。それにより、レンズシート10には、所望する印刷画像が形成される。
【0073】
<4.本実施の形態における効果>
以上のような構成の印刷装置20および印刷方法によると、垂直印刷を行う場合には、平行印刷を行う場合よりも、キャリッジ22の移動速度を遅くするための制御情報が、制御選択プログラム52dで選択される。それにより、レンズシート10に対して垂直印刷を実行する場合には、平行印刷の場合よりも、印刷ヘッド24から噴射されるインク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。
【0074】
また、印刷ヘッド24からインクを噴射する場合、主滴D1以外に、サテライトD2と呼ばれる微小飛沫も発生する。ここで、上述のように垂直印刷を実行する場合に、平行印刷の場合よりもキャリッジ22の移動速度を遅くすることにより、サテライトD2の着弾位置を主滴D1に近づけることができる。それにより、印刷によって形成されるドットがキャリッジ22の移動方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【0075】
また、レンズシート10をセットする向きに応じて、プラテンギャップを変更する制御を行うようにしても良い。この場合には、レンズシート10に対して垂直印刷を実行する場合には、平行印刷の場合よりも印刷ヘッド24とレンズシート10との間のギャップが狭くなるように調整される。それにより、垂直印刷の場合には、平行印刷の場合よりも、サテライトD2の着弾位置が主滴D1に近付けることができ、印刷精度を高くすることが可能となる。加えて、インク滴がレンズシート10に着弾するまでの間における気流等の影響をによる位置ずれを低減することが可能となり、印刷精度を高くすることが可能となる。
【0076】
さらに、レンズシート10をセットする向きに応じて、レンズシート10の搬送速度を変更する制御を行うようにしても良い。この場合には、平行印刷を行う場合には、垂直印刷を行う場合よりも、レンズシート10の搬送速度を遅くするような制御情報が、制御選択プログラム52dの実行に基づいてCPU51で選択される。それにより、レンズシート10に対して平行印刷を実行する場合には、垂直印刷の場合よりも、印刷ヘッド24から噴射されるインク滴の着弾位置をより精度良いものとすることができる。また、平行印刷を実行する場合に、垂直印刷の場合よりもレンズシート10の搬送速度を遅くすることにより、サテライトD2の着弾位置を主滴D1に近づけることができる。それにより、印刷によって形成されるドットDがレンズシート10の搬送方向に広がるのを抑えることが可能となり、隣接する細分化画像の絵柄の切り替わりを良好なものとすることが可能となる。
【0077】
また、光学センサー30でレンズピッチを測定し、その測定情報に基づいて、判定プログラム52aのCPU51での実行により、セットされているレンズシート10が、垂直印刷に対応したものであるのか、または平行印刷に対応したものであるのかを判定するようにしても良い。このようにする場合には、ユーザーが制御情報の選択に関する入力を行わくても、制御情報の選択を自動的に実行させることが可能となる。また、実際にセットされるレンズシート10の方向に応じた印刷を実行させることが可能となる。
【0078】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
【0079】
(5−1)変形例その1
上述の実施の形態では、レンズシート10へ直接印刷する場合に、セットされるレンズシート10の方向に応じて、モーター28,34,42の制御情報の中から適したものを選択するようにしている。しかしながら、たとえばレンズシート10に後ほど貼付する用紙等に、本発明を適用するようにしても良い。この場合にも、本発明と同様の効果を得ることが可能となる。なお、後に用紙等を貼付して完成したものを、本発明におけるレンズシート10の概念に含めるようにしても良い。
【0080】
(5−2)変形例その2
また、上述の実施の形態においては、図7に示すような構成のPG調整機構40によって、プラテン21と印刷ヘッド24との間のギャップを調整するようにしている。しかしながら、上述したギャップの調整は、他の構成によって実現するようにしても良い。このような他のギャップ調整の機構としては、たとえば、プラテン21側を持ち上げる機構によって、プラテンギャップを調整するものがある。
【0081】
(5−3)変形例その3
上述の実施の形態におけるPG調整機構40は、PGモーター42を具備する構成としている。しかしながら、PGモーター42を具備せずに、他のモーターがPGモーターの機能を兼用する構成としても良い。この場合における他のモーターとしては、PFモーター34、CRモーター28としても良い。
【0082】
(5−4)変形例その4
上述の実施の形態においては、光学センサー30によって凸レンズ11のレンズピッチを測定するようにしている。しかしながら、印刷装置20がスキャナー機能を有する場合、またはコンピューター60にスキャナー装置が別体的に接続されて、それらスキャナー機能またはスキャナー装置によってレンズピッチが測定可能な場合には、光学センサー30を設けない構成としても良い。この場合には、スキャナー機能またはスキャナー装置が請求項でいう測定手段に対応する。またこの場合には、スキャナー機能またはスキャナー装置によってレンズピッチが測定できるため、判定プログラム52aでのレンズシート10の方向の判定に支障が生じないためである。
【0083】
(5−5)変形例その5
また、上述の実施の形態において、印刷装置20の概念には、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり噴射したりする流体噴射装置を含むようにすることもできる。そのようなものとしては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する流体噴射装置等がある。
【0084】
(5−6)変形例その6
さらに、本発明の印刷装置20の概念に含まれるものとしては、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置等がある。
【符号の説明】
【0085】
10…レンズシート、11…凸レンズ、12…基材、13…インク吸収層、20…印刷装置、21…プラテン、22…キャリッジ(移動手段の一部の一例に対応)、23…インクカートリッジ、24…印刷ヘッド、24a…ノズル、24b…ノズル面、24c…ノズル列、25…タイミングベルト(移動手段の一部の一例に対応)、26,27…プーリー(移動手段の一部の一例に対応)、28…CRモーター(移動手段の主要部の一例に対応)、30…光学センサー(測定手段の一例に対応)、31…スケール、33…紙送りローラー、34…PFモーター(第3駆動手段の一例に対応)、40…PG調整機構、41…キャリッジ軸、42…PGモーター(第2駆動手段の一例に対応)、43…ギヤ輪列、43a…出力歯車、44…PGカム、44a…カム面、45…固定ピン、46…フラグ板、46a…円盤状部、47…フラグ、48…フラグ検出センサー、48a…発光部、48b…受光部、49…フレーム、49a…長孔、50…制御部、51…CPU(制御手段の主要部の一例に対応)、52…メモリー、52a…判定プログラム(制御手段の主要部の一例に対応)、52b…モーター制御プログラム、52c…制御選択データ、52d…制御選択プログラム、53…ASIC、54…伝送路、55…通信I/F、56…ヘッドドライバー、57…モータードライバー、60…コンピューター、D…ドット、D1…主滴、D2…サテライト




【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドを備え、一方向を長手とする複数の凸レンズを有するレンズシートに対して相対的に移動させ、前記印刷ヘッドからインクを噴射することにより印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷ヘッドを移動させる移動手段と、
前記レンズシートがセットされる方向に応じて前記印刷ヘッドの移動速度を変更するよう制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記印刷ヘッドが前記レンズシートの前記一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、前記印刷ヘッドが前記一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、前記印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御するものである、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記印刷ヘッドと前記レンズシートとの間のギャップを調整するギャップ調整機構を備え、
前記制御手段は、前記印刷ヘッドが前記レンズシートの前記一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、前記印刷ヘッドが前記一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、前記ギャップが狭くなるように前記ギャップ調整機構を調整する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の印刷装置であって、
前記レンズシートを搬送する搬送手段を備え、
前記制御手段は、前記印刷ヘッドがレンズシートの前記一方向に対して平行に移動して印刷する場合は、前記印刷ヘッドが前記レンズシートの前記一方向に対して垂直に移動して印刷する場合より、前記レンズシートの搬送速度が遅くなるように、前記搬送手段を制御する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記レンズシートのレンズピッチを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定される前記レンズピッチが判定閾値を超える場合に前記平行印刷であると判定し、前記判定閾値を超えない場合に前記垂直印刷であると判定する判定手段と、を具備し、
前記制御手段は、前記判定手段での判定結果に対応して制御内容を変更する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
印刷ヘッドを備え、一方向を長手とする複数の凸レンズを有するレンズシートに対して相対的に移動させ、前記印刷ヘッドからインクを噴射することにより印刷を行う印刷方法であって、
移動手段によって前記印刷ヘッドを移動させる際に、前記レンズシートがセットされる方向に応じて前記印刷ヘッドの移動速度を変更するよう制御する制御工程と、
前記制御工程での前記移動手段の移動速度の制御に基づいて前記印刷ヘッドから前記インクを噴射させて前記レンズシートへの印刷を実行する印刷実行工程と、
を具備し、
前記制御工程では、前記印刷ヘッドが前記レンズシートの前記一方向に対して垂直に移動して印刷する場合には、前記印刷ヘッドが前記一方向に対して平行に移動して印刷する場合よりも、前記印刷ヘッドの移動速度を遅くするように制御するものである、
ことを特徴とする印刷方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83687(P2013−83687A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221592(P2011−221592)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】