説明

印刷装置および印刷装置の制御方法

【課題】2台を超える印刷機構部を用いて印刷を行い1つの画像を形成する際の、各印刷機構部による印刷位置の制御を容易に行う。
【解決手段】用紙搬送制御部は、所定の搬送距離毎にパルスが発生する印刷基準位置信号を生成する。印刷基準タイミング信号生成部は、印刷基準位置信号を、印刷機構部における印刷開始位置の、印刷用紙搬送の際の基準位置に対する距離に応じて遅延させた印刷基準タイミング信号を、各印刷機構部毎に生成する。各印刷機構部は、搬送されてくる印刷用紙に対する印刷を、印刷基準タイミング信号に示されるタイミングに従い開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷機構部により1つの画像を印字するようにした印刷装置および印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷装置と、当該印刷装置に対して印刷データを渡すと共に印刷指示を行う上位装置とから構成される印刷システムが知られている。このような印刷システムでは、例えば、上位装置は、ホスト装置から送信された、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述された印刷データに従いRIP(Raster Image Process)によりラスタイメージによる印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データを印刷装置の印刷制御部に転送する(特許文献1参照)。
【0003】
また、上述の印刷システムとは異なり、プリンタコントローラと、プリンタエンジンと、プリンタコントローラおよびプリンタエンジンを接続するデータ線とを備える印刷装置が既に知られている(特許文献2参照)。この特許文献2の印刷装置では、プリンタコントローラとプリンタエンジンとの間で各種制御情報の送受信を行う制御線と、印刷画像データの送受信を行うデータ線とを分離し、データ転送の高速化が図られている。
【0004】
一方、1枚の用紙に対して複数の印刷機構部を連動させて印刷を行う技術が知られている。この場合には、複数の印刷機構部それぞれによる印刷の位置を互いに合わせることが必要となってくる。
【0005】
特許文献3には、用紙の一方および他方の面にそれぞれ印刷を行う2台の印刷機構部で構成される、所謂タンデム印刷システムにおける、他方の面に印刷を行う第2プリンタの印刷基準位置の制御方法に関する技術が開示されている。特許文献3では、連続紙の一方の面に印刷を行う第1のプリンタから他方の面の印刷を行う第2のプリンタに対して、印刷基準位置から印刷開始位置までの距離を示す情報を送信することで、第1のプリンタと第2のプリンタとの間で印刷位置を合わせるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、1の印刷画像データに基づき、複数の印刷機構部によって、同一の用紙に対して重ねて印刷を行うことで、用紙に対して1の画像を形成する場合について考える。例えば、4台の印刷機構部が、1の印刷画像データに基づきY(Yellow)、M(Magenta)、C(Cyan)およびK(Black)の印刷をそれぞれ行い、当該印刷画像データによる画像を形成することが考えられる。この場合、C、M、YおよびK各色の印刷位置を合わせるために、これら4台の印刷機構部の間で印刷タイミングの制御を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献3は、用紙の両面に印刷する場合の印刷位置制御であって、2台の印刷機構部で構成されるタンデム印刷システムに特化した制御方法である。したがって、特許文献3による印刷位置制御方法を、2台を超える印刷機構部での印刷位置制御に適用することは、極めて困難であるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献3によれば、第1および第2のプリンタ間での紙送り速度差を吸収する中間バッファ装置が設けられていることが前提となっている。そのため、中間バッファ装置を用いない構成に対して適用することが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、2台を超える印刷機構部を用いて印刷を行い1つの画像を形成する際の、各印刷機構部による印刷位置の制御を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、用紙を搬送する搬送手段と、搬送手段で搬送された用紙に印刷を行う印刷手段と、搬送手段による搬送の予め定められた搬送距離毎にタイミング信号を生成する生成手段と、生成手段が生成したタイミング信号を、搬送手段により搬送された用紙が基準位置から印刷手段の印刷位置まで進むために要する時間だけ遅延させる遅延手段とを備え、印刷手段は、遅延手段で遅延されたタイミング信号を基準として印刷を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、搬送手段が、用紙を搬送する搬送ステップと、印刷手段が、搬送ステップにより搬送された用紙に印刷を行う印刷ステップと、生成手段が、搬送ステップによる搬送の予め定められた搬送距離毎にタイミング信号を生成する生成ステップと、遅延手段が、生成ステップが生成したタイミング信号を、搬送ステップにより搬送された用紙が基準位置から印刷ステップによる印刷位置まで進むために要する時間だけ遅延させる遅延ステップとを備え、印刷ステップは、遅延ステップにより遅延されたタイミング信号を基準として印刷を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2台を超える印刷機構部を用いて印刷を行い1つの画像を形成する際の、各印刷機構部による印刷位置の制御を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に適用可能な印刷装置の一例の構成を示す略線図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に適用可能な印刷システムの一例の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に適用可能な上位装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に適用可能なプリンタ装置の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図5】図5は、データ制御部の一例の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、画像出力制御部の一例の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、各印刷機構部に対する印刷基準タイミング信号の例を示す略線図である。
【図8】図8は、規定時間について詳細に説明するための略線図である。
【図9】図9は、印刷基準タイミング信号生成部の一例の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、信号タイミングシフト回路の一例の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に適用可能な印刷処理を概念的に示す一例のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(印刷装置の構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷装置およびその制御方法の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に適用可能な印刷装置200の一例の構成を示す。図1の例では、印刷装置200は、印刷用紙として連帳紙を用い、カラー画像の印刷の際には、カラー画像を構成する、例えばC(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)およびK(Black)各色の印刷を個別の印刷機構部によって行う。
【0015】
印刷用紙201は、印刷用紙補給部210から電源操作ボックス220を介して第1搬送部230に供給される。印刷用紙201は、第1搬送部230において、複数のローラなどを介して搬送されて、搬送方向に直列に並べて設置されるステーション250a、250b、250cおよび250dを介して第2搬送部260に供給される。
【0016】
ステーション250a、250b、250cおよび250dは、それぞれ、印刷用紙201に対して画像を形成し印刷を行うための印刷機構部を備える。この例では、ステーション250aが色C、ステーション250bが色M、ステーション250cが色Y、ステーション250dが色Kの印刷を行う印刷機構部をそれぞれ有するものとする。なお、以下では、各ステーション250a、250b、250cおよび250dは、互いに区別する必要の無いときは、ステーション250として代表させて記述する。
【0017】
図1の例では、印刷装置200が4台のステーションステーション250a、250b、250cおよび250dを備えているように示されているが、これはこの例に限られない。すなわち、印刷装置200が備えるステーション250は、4台未満且つ1台以上であってもよいし、4台を超えていてもよい。また、ステーション250は、印刷装置200に対して増設が可能とされている。
【0018】
第2搬送部260は、供給された印刷用紙201の搬送駆動を行う。例えば、印刷用紙201は、第2搬送部260に設けられる搬送駆動ローラで印刷方向(用紙送り方向)に駆動されると共に、第1搬送部230において印刷方向に対して逆方向の負荷を適宜与えられて、弛みがないようにされる。
【0019】
第1搬送部230の出力側に、印刷用紙201上の印刷基準位置を検出する位置センサ(図示しない)が設けられる。以下、この位置センサを、基準位置センサと呼ぶ。より具体的には、基準位置センサは、印刷用紙201上における印刷の基準位置となる印刷基準位置と、印刷装置200における印刷の基準位置となる用紙基準位置とが一致するか否かを検出する。この検出結果に基づき、印刷用紙201の用紙基準位置に対する垂直方向(搬送方向)の位置合わせを行う。
【0020】
例えば、印刷用紙201が所定間隔でミシン目が入れられた連帳紙であれば、ミシン目を印刷基準位置として用い、基準位置センサを用いてミシン目を検出し、検出されたミシン目と用紙基準位置とが合致するように、位置合わせを行う。また、用紙の幅方向については、例えば、各色のステーション250それぞれでテストパターンなどの印刷を行い、印刷された基準色の画像に対する他色の位置を計測することで、位置合わせを行うことができる。
【0021】
ステーション250a、250b、250cおよび250d、ならびに、第1搬送部230および第2搬送部260は、印刷用紙補給部210と所定のケーブルで接続される(図示しない)。印刷するための画像データ、印刷を制御する印刷制御信号および印刷用紙201の搬送を制御する搬送制御信号などが、このケーブルを介して通信される。
【0022】
印刷後の印刷用紙201は、第2搬送部260から排出されて、裁断部270に供給される。印刷後の印刷用紙201は、裁断部270によりミシン目に従い裁断され各ページを分離される。
【0023】
ここで、印刷装置200は、ページが連続した連帳紙である印刷用紙201に印刷を行うため、各ステーションにおける印刷用紙201への印刷後、当該印刷用紙201が第2搬送部260から排出されるまでの経路にも、印刷用紙201が絶えず存在することになる。
【0024】
なお、第1搬送部230、ステーション250a、250b、250cおよび250d、ならびに、第2搬送部260からなる構成をもう一組用意して、前側の第2搬送部260から排出された印刷後の印刷用紙201を表裏反転して後側の第1搬送部230に供給することで、印刷用紙201に対する両面印刷が可能となる。
【0025】
(印刷システムの構成)
図2は、本発明の実施形態に適用可能な印刷システムの一例の構成を示す。この印刷システムは、上位装置10と、図1の印刷装置200と対応するプリンタ装置13とが、複数のデータ線11と制御線12とで接続されて構成される。上位装置10は、ホスト装置から供給される印刷ジョブデータに従ってRIP(Raster Image Processor)処理を行い、印刷画像データである各色毎のビットマップデータを作成する。それと共に、上位装置10は、当該印刷ジョブデータやホスト装置の情報などに基づき、印刷動作を制御するための制御情報を作成する。
【0026】
上位装置10で作成された各色毎の印刷画像データは、複数のデータ線11をそれぞれ介してプリンタ装置13の図示されない印刷機構部に供給される。印刷機構部は、図1のステーション250a、250b、250cおよび250dに対応する。また、上位装置10とプリンタコントローラ14との間で、制御線12を介して制御情報の送受信が行われる。プリンタコントローラ14は、この制御情報の送受信に基づき印刷機構部を制御して、印刷ジョブに従った印刷を実行する。プリンタコントローラ14は、例えば図1の印刷用紙補給部210内に設けられる。
【0027】
印刷機構部に適用される印刷方式は特に限定されないが、本実施形態では、インクジェット方式により印刷用紙に対して印刷画像を形成する。また、印刷用紙は、切断可能なミシン目が所定間隔で打たれた連続紙である連帳紙(連続帳票)を用いるものとする。プロダクションプリンティングでは、印刷用紙としてこの連帳紙を用いることが多い。勿論、これに限らず、A4サイズ、B4サイズなど、サイズが固定的とされたカット紙を印刷用紙として用いてもよい。なお、連帳紙において、ページは、例えば所定間隔で打たれたミシン目で挟まれる領域をいうものとする。
【0028】
図3は、本実施形態に適用可能な上位装置10の一例の構成を示す。バス100に対してCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ハードディスクドライブ(HDD)104が接続される。バス100に対して、さらに、外部I/F110、制御情報用I/F111および画像データ用I/F112が接続される。バス100に接続されたこれら各部は、バス100を介して互いに通信可能とされている。
【0029】
ROM102およびHDD104は、CPU101が動作するためのプログラムが予め格納される。RAM103は、CPU101のワークメモリとして用いられる。すなわち、CPU101は、ROM102およびHDD104に格納されるプログラムに従い、RAM103をワークメモリとして用いて、この上位装置10の全体の動作を制御する。
【0030】
外部I/F110は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に対応し、ホスト装置との通信を制御する。制御情報用I/F111は、制御情報の通信を制御する。また、画像データ用I/F112は、印刷画像データの通信を制御するもので、複数のチャネルを有する。例えば、上位装置10において作成された、各色の印刷画像データは、これら複数のチャネルからそれぞれ出力される。画像データ用I/F112は、高速な転送速度が要求されるため、例えばPCI Express(Peripheral Component Interconnect Bus Express)が用いられる。画像データ用I/F112は、必要に応じて増設が可能である。また、制御情報用I/F111の方式は特に限定されないが、ここでは、画像データ用I/F112と同様に、PCI Expressを用いるものとする。
【0031】
このような構成において、ホスト装置から送信された印刷ジョブデータが、上位装置10の外部I/F110に受信され、CPU101を介してHDD104に格納される。CPU101は、HDD104から読み出した印刷ジョブデータに基づきRIP処理を行い、各色のビットマップデータを生成してRAM103にそれぞれ書き出す。例えば、CPU101は、RIP処理によりPDL(Page Description Language)をレンダリングして各色のビットマップデータを生成してRAM103に書き出す。CPU101は、RAM103に書き出された各色のビットマップデータを圧縮符号化してHDD104に一旦格納する。
【0032】
CPU101は、例えばプリンタ装置13において印刷動作が開始される際に、HDD104から圧縮符号化された各色のビットマップデータを読み出して圧縮符号を復号し、伸張された各色のビットマップデータをRAM103にそれぞれ書き込む。各色のビットマップデータは、例えばRAM103において、各色毎に異なる領域に書き込まれる。そして、CPU101は、RAM103からこれら各色のビットマップデータを読み出して、各色の印刷画像データとして画像データ用I/F112の各チャネルからそれぞれ出力させ、プリンタ装置13に対して供給する。また、CPU101は、印刷動作の進行などに応じて、プリンタ装置13との間で制御情報用I/F111を介して制御情報の送受信を行う。
【0033】
(プリンタ装置の構成)
図4は、本実施形態に適用可能なプリンタ装置13の一例の構成をより詳細に示す。プリンタ装置13は、基本的な構成においては、プリンタコントローラ14、C、M、YおよびK各色それぞれの印刷機構部30a、30b、30cおよび30d、ならびに、用紙搬送制御部50を有する。なお、図4において、各種制御情報の送受信を行う制御線などは、煩雑さを避けるため一部が省略されている。
【0034】
プリンタコントローラ14は、CPU21および印刷制御部22を有し、これらCPU21と印刷制御部22とがバス20で互いに通信可能に接続される。バス20に対して制御線12が接続され、CPU21は、制御線12を介して上位装置10との間で制御情報の送受信を行って、プリンタ装置13における印刷動作を制御する。
【0035】
印刷制御部22は、さらに、印刷基準タイミング信号生成部23を含む。印刷基準タイミング信号生成部23は、後述する用紙搬送制御部50から供給される印刷基準位置信号51に基づき印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dを生成する。印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dは、例えば、パルスの立ち上がりで印刷の基準となるタイミングを示す信号である。
【0036】
用紙搬送制御部50は、印刷用紙201を搬送するための搬送系の駆動を制御するもので、図示されない基準位置センサからのセンサ出力が供給される。用紙搬送が開始されると、用紙搬送制御部50は、印刷用紙201の垂直方向(用紙搬送方向)の印刷開始位置を決めるための印刷基準位置信号51を生成する。
【0037】
印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、それぞれ図1のステーション250a、250b、250cおよび250dに含まれる。印刷機構部30a、30b、30cおよび30dはそれぞれデータ線11a、11b、11cおよび11dが接続され、これらデータ線11a、11b、11cおよび11dを介して上位装置10から転送された各色の印刷画像による、印刷用紙201に対する印刷動作を行う。印刷タイミングは、プリンタコントローラ14から供給される印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dにより制御される。
【0038】
印刷機構部30aは、データ制御部31aおよび画像出力制御部33aと、複数のヘッド34a、34a、…とを含む。印刷機構部30b、30cおよび30dについても同様に、それぞれ、データ制御部31b、31cおよび31dと、画像出力制御部33b、33cおよび33dと、ヘッド34b、34cおよび34dとを含む。データ制御部31a、31b、31cおよび31dと、画像出力制御部33a、33b、33cおよび33dとは、それぞれデータ線32a、32b、32cおよび32dで接続される。
【0039】
印刷機構部30a、30b、30cおよび30dにおいて、データ制御部31a、31b、31cおよび31dは、それぞれ、上位装置10からデータ線11a、11b、11cおよび11dを介して転送された印刷画像データを一時的に溜め込む。
【0040】
図5を用いて、データ制御部31a、31b、31cおよび31dの一例の構成について説明する。なお、データ制御部31a、31b、31cおよび31dは、構成を同一とするため、以下では、データ制御部31aを例にとって説明を行う。
【0041】
データ制御部31aは、ロジック回路60aおよびメモリ61aを含む。ロジック回路60aは、上位装置10からデータ線11aを介して転送された印刷画像データを、メモリ61aに格納する。ロジック回路60aは、印刷画像データがメモリ61aに格納されると、その旨を、制御線70aを介して画像出力制御部33aに通知する。また、ロジック回路60aは、画像出力制御部33aからの読み出し要求に従いメモリ61aから印刷画像データを読み出して、当該画像出力制御部33aに供給する。
【0042】
画像出力制御部33aは、メモリ61aから読み出した印刷画像データを、図示されないバッファに一時的に溜め込む。そして、印刷基準タイミング信号生成部23から供給された印刷基準タイミング信号が示すタイミングに従いバッファから印刷画像データを読み出し、ヘッド34a、34a、…に書き出す。ヘッド34a、34a、…は、画像出力制御部33aにより書き込まれた印刷画像データに従いインクを噴出し、印刷用紙201に対してインクによる画像を形成し、印刷を行う。
【0043】
図6を用いて、画像出力制御部33a、33b、33cおよび33dの一例の構成について説明する。なお、画像出力制御部33a、33b、33cおよび33dは、構成を同一とするので、ここでは、画像出力制御部33aを例にとって説明を行う。
【0044】
画像出力制御部33aは、データ読み出し制御部73a、バッファ74aおよび75a、ならびに、データ書き出し制御部76aを有する。バッファ74aおよび75aは、それぞれ、少なくとも1ページ分の印刷画像データを格納可能な容量を有し、ページ単位で印刷画像データを溜め込む。データ読み出し制御部73aは、データ制御部31aのロジック回路60aから制御線70aを介して印刷画像データがメモリ61aに格納された旨の通知を受け取ると、ロジック回路60aに対して、メモリ61aに格納された印刷画像データを要求する。メモリ61aから読み出された印刷画像データは、データ線32aを介してデータ読み出し制御部73aに供給される。
【0045】
データ読み出し制御部73aは、メモリ61aから読み出され供給印刷画像データを、バッファ74aおよびバッファ75aのうち一方に書き込む。一方、データ書き出し制御部76aは、印刷画像データをバッファ74aまたは75aから読み出して、ヘッド34a、34a、…に書き込む。
【0046】
データ読み出し制御部73aおよびデータ書き出し制御部76aは、バッファ74aおよび75aを1ページ単位で切り替えながら、バッファ74aおよび75aに対する印刷画像データの書き込み、ならびに、バッファ74aおよび75aからの印刷画像データの読み出しを行う。このとき、データ書き出し制御部76aによるバッファ74aおよび75aからの印刷画像データの読み出しのタイミングは、印刷基準タイミング信号生成部23で生成された印刷基準タイミング信号40aにより制御される。
【0047】
一例として、データ読み出し制御部73aは、例えばバッファ74aに対する1ページ分の印刷画像データの書き込みが終了したら、制御線71aを介してその旨をデータ書き出し制御部76aに通知すると共に、次の1ページ分の印刷画像データをバッファ75aに書き込む。
【0048】
データ書き出し制御部76aは、この1ページ分の印刷画像データの書き込み終了通知を受けた状態で、印刷基準タイミング信号40aを受け取ると、受け取った印刷基準タイミング信号40aが示すタイミングに従い、データ読み出し制御部73aから受け取った通知に示される例えばバッファ74aの印刷画像データの、ヘッド34a、34a、…に対する書き出しを開始する。例えば、印刷開始直後では、データ書き出し制御部76aは、印刷基準タイミング信号40aの最初のパルスに合わせて、ヘッド34a、34a、…に対する印刷画像データの書き出しを開始する。
【0049】
データ書き出し制御部76aは、1ページ分の印刷画像データのヘッド34a、34a、…への書き出しが終了した時点で、次の1ページ分の印刷画像データの書き込み終了通知を受けている場合、印刷画像データを読み出すバッファを切り替える。そして、切り替えたバッファから当該次の1ページ分の印刷画像データを読み出して、ヘッド34a、34a、…に対して書き出す。この例では、印刷画像データを読み出すバッファを、バッファ74aからバッファ75aに切り替える。そして、印刷基準タイミング信号40aが示す、ページ先頭の印刷位置を示すタイミングに従い、バッファ75aから読み出した印刷画像データのヘッド34a、34a、…に対する書き出しを行う。
【0050】
詳細は後述するが、印刷基準タイミング信号40aは、ページ先頭およびページ先頭から所定間隔の各印刷位置に対応した印刷タイミングを示すように、パルスの立ち上がりが形成される。
【0051】
データ書き出し制御部76aは、バッファ75aからの1ページ分の印刷画像データのヘッド34a、34a、…への書き出しが終了した時点で、次の1ページ分の印刷画像データの書き込み終了通知を受けている場合、印刷画像データを読み出すバッファをバッファ74aに切り替え、切り替えたバッファ74aから読み出した印刷画像データのヘッド34a、34a、…に対する書き出しを行う。このようにして、1ページ分の印刷画像データのヘッド34a、34a、…に対する書き出しが終了する度に、印刷画像データを読み出すバッファを順次切り替える。
【0052】
なお、上述では、バッファ74aおよび75aがそれぞれ1ページ分の印刷画像データを格納可能な容量を有するとして説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、バッファ74aおよび75aがそれぞれ1/2ページ分や1/4ページ分の印刷画像データを格納可能な容量であっても、同様の制御が可能である。これにより、バッファ74aおよび75aとして用いるメモリのサイズを小さく抑えることができる。この場合、印刷基準タイミング信号40aが、バッファ74aおよび75aに格納される印刷画像データを印刷する際の先頭位置に対応するタイミングを示している必要がある。
【0053】
(実施形態による印刷タイミングの制御)
本実施形態では、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dにおける印刷用紙201への印刷のタイミングを、上述の各画像出力制御部33a、33b、33cおよび33dにそれぞれ供給する印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dにより制御する。以下に、この印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dによる印刷タイミング制御について詳細に説明する。
【0054】
図7は、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対する印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dの例を示す。印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dは、用紙搬送制御部50から出力される印刷基準位置信号51のタイミングを、それぞれに規定された時間だけ遅延させることで生成される。なお、図7において、印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dを、それぞれ印刷基準タイミング信号(1)、(2)、(3)および(4)として示している。また、規定時間(1)、(2)、(3)および(4)は、印刷基準タイミング信号(1)、(2)、(3)および(4)それぞれに規定された遅延時間を示す。
【0055】
先ず、印刷基準位置信号51について説明する。用紙搬送制御部50は、印刷用紙201の搬送が開始され、基準位置センサにより印刷用紙201の基準位置が検出されると、印刷基準位置信号51の最初のパルス3001を発生させる。以降、用紙搬送制御部50は、予め決められた搬送距離Dの搬送駆動を行う毎に、パルス3002、3003、…を発生させる。具体的な例として、予め決められた搬送距離Dを1/2インチとし、用紙搬送制御部50は、1/2インチ分の搬送駆動を行う度に、パルス300xを発生させる。
【0056】
なお、印刷用紙201のサイズは、インチを用いて表されることが多いため、ここでは、長さの単位をインチを用いて表現する。
【0057】
各印刷基準タイミング信号40a〜40dは、供給先の印刷機構部30a〜30dが含まれるステーション250a〜250dの、用紙基準位置に対する距離に応じた規定時間だけ印刷基準位置信号51が遅延されて生成される。例えば、各印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dは、それぞれ、各印刷機構部30a〜30dにおけるヘッド34a、34b、34cおよび34dの、用紙基準位置に対する距離に応じて印刷基準位置信号51が遅延されて生成される。
【0058】
具体的な例を用いて説明する。図1を参照し、印刷装置200において、第1搬送部230と、ステーション250a、250b、250cおよび250dとが、それぞれの相対的な位置関係が固定的とされて配置されているものとする。このとき、第1搬送部230に対して、色Cの印刷を行うステーション250a、色Mの印刷を行うステーション250b、色Yの印刷を行うステーション250c、色Kの印刷を行うステーション250dの順に配置されているものとする。
【0059】
図8を用いて、規定時間について詳細に説明する。図8は、上述した図1から第1搬送部230と、ステーション250aおよび250bとを抜き出した図である。図8において、印刷用紙201と、印刷用紙201を送り出す搬送ローラ240とが接する所定位置を用紙基準位置Aとする。この用紙基準位置Aが印刷タイミングの基準点となる。
【0060】
また、この例では、ステーション250aにおいて、印刷用紙201が搬入される入り口に配される搬送ローラ241の近傍の所定位置が、ヘッド34aが配置され印刷が開始される印刷開始位置Bであるものとする。同様に、ステーション250bにおいて、刷用紙201が搬入される入り口に配される搬送ローラ242の近傍の所定位置が、ヘッド34bが配置され印刷が開始される印刷開始位置Cであるものとする。
【0061】
用紙搬送制御部50は、例えば印刷用紙201の搬送開始後、基準位置センサによって印刷用紙201の印刷基準位置が最初に用紙基準位置Aに到達したことが検出されると、印刷基準位置信号51の最初のパルス3001を発生させる。用紙搬送制御部50は、この最初のパルス3001を発生させた後、所定長さ(この例では1/2インチ)の搬送毎に順次、パルス3002、3003、…を発生させる。
【0062】
最初のパルス3001の発生から時間tA-Bが経過した後に、搬送された印刷用紙201の印刷基準位置がステーション250aにおける印刷開始位置Bに到達し、ステーション250aによる印刷が開始されるものとする。この場合、規定時間(1)を時間tA-Bとし、印刷基準位置信号51をこの時間tA-Bだけ遅延させた信号を、ステーション250aに対する印刷基準タイミング信号40aとすればよい。時間tA-Bは、印刷基準位置Aと印刷開始点Bとの間の距離LA-Bを、印刷用紙201の搬送速度vで除すことで求められる。
【0063】
ステーション250bに対する印刷基準タイミング信号40bについても、同様である。すなわち、印刷基準位置信号51のパルス3001が発生して、時間tA-Cが経過した後、搬送された印刷用紙201の印刷基準位置がステーション250bにおける印刷開始位置Cに到達した時点で、ステーション250bによる印刷が開始されればよい。したがって、規定時間(2)を時間tA-Cとし、印刷基準位置信号51をこの時間tA-Cだけ遅延させた信号を、ステーション250bに対する印刷基準タイミング信号40bとすればよい。時間tA-Cは、印刷基準位置Aと印刷開始点Cとの間の距離LA-Cを、印刷用紙201の搬送速度vで除すことで求められる。
【0064】
ステーション250cに対する規定時間(3)、ならびに、ステーション250dに対する規定時間(4)についても、上述の規定時間(1)および(2)と同様に、搬送速度vと、ステーション250cおよび250dそれぞれの印刷開始位置と用紙基準位置Aとの間の距離とに基づき求めることができる。
【0065】
一例として、距離LA-B=5インチ、距離LA-C=15インチ、搬送速度v=100インチ/秒の場合、規定時間(1)および規定時間(2)は、下記のようになる。
規定時間(1)=LA-B/v=5/100=0.05秒
規定時間(2)=LA-C/v=15/100=0.15秒
【0066】
このように、用紙基準位置Aと印刷開始点との間の距離が長いほど、印刷基準位置信号51に遅延を与える規定時間も長くなる。
【0067】
なお、各ステーション250a、250b、250cおよび250dと、用紙基準位置Aとの間の距離は、各ステーション250a、250b、250cおよび250dの設置時に実測して取得する。これに限らず、各ステーション250a、250b、250cおよび250dに対して距離センサを設け、所定のタイミングで自動的に測距するようにもできる。この場合、例えば測距結果は、各ステーション250a、250b、250cおよび250dから制御線などを介してプリンタコントローラ14に対して送信される。さらに、連結機構などにより、各ステーション250a、250b、250cおよび250dと用紙基準位置Aとの間の距離が固定的とされている場合には、図示されないROM(Read Only Memory)などに予め各規定時間を記憶しておいてもよい。
【0068】
図9は、印刷基準タイミング信号40a〜40dを生成する印刷基準タイミング信号生成部23の一例の構成を示す。印刷基準タイミング信号生成部23は、規定時間設定部80a、80b、80cおよび80dと、信号タイミングシフト回路81a、81b、81cおよび81dとを有する。規定時間設定部80aおよび信号タイミングシフト回路81aは、印刷機構部30aに供給する印刷基準タイミング信号40aを生成する。同様に、規定時間設定部80bおよび信号タイミングシフト回路81bは、印刷機構部30bに供給する印刷基準タイミング信号40bを、規定時間設定部80cおよび信号タイミングシフト回路81cは、印刷機構部30cに供給する印刷基準タイミング信号40cを、規定時間設定部80dおよび信号タイミングシフト回路81dは、印刷機構部30dに供給する印刷基準タイミング信号40dをそれぞれ生成する。
【0069】
印刷基準タイミング信号40aを例にとって説明する。規定時間設定部80aは、上述した規定時間(1)を信号タイミングシフト回路81aに対して設定する。規定時間(1)は、上述したように、搬送速度vと、用紙基準位置Aおよびステーション250aの印刷開始位置Bの間の距離LA-Bとに基づき求められる。搬送速度vおよび距離LA-Bは、それぞれ既知の値なので、規定時間(1)は、予め求めることができる。規定時間設定部80aは、例えばレジスタからなり、例えばCPU21により予め求められた規定時間(1)が保持される。信号タイミングシフト回路81aは、用紙搬送制御部50から供給された印刷基準位置信号51を、規定時間設定部80aに保持される規定時間(1)だけ遅延させて、印刷基準タイミング信号40aとして出力する。
【0070】
なお、印刷基準タイミング信号40b、40cおよび40dについても、印刷基準タイミング信号40aと同様にして生成されるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0071】
図10を用いて、信号タイミングシフト回路81a、81b、81cおよび81dの一例の構成について説明する。なお、信号タイミングシフト回路81a、81b、81cおよび81dは、構成を同一とするので、ここでは、信号タイミングシフト回路81aを例にとって説明を行う。信号タイミングシフト回路81aは、第1パルス間隔計時部90aと、計時値書き込み部91aと、計時値保持用メモリ92aと、計時値読み出し部93aと、第2パルス間隔計時部94aと、パルス発生部95aとを有する。
【0072】
なお、計時値保持用メモリ92aは、複数の計時値を入力順に保持可能なメモリであって、例えばFIFO(First In First Out)メモリを用いることができる。計時値保持用メモリ92aに記憶されているデータのうち、最も古くに記憶されたデータを先頭のデータとする。
【0073】
この信号タイミングシフト回路81aは、例えばクロック周波数が1MHzの動作クロックで動作する。規定時間設定部80aは、動作クロックで規定時間(1)分の時間をカウントした場合の計時値が予め保持されている。一例として、図8を用いて説明した例では、規定時間(1)が0.05秒であるので、動作クロックを1MHzとした場合、計時値C0は、50000となる。この計時値C0が規定時間設定部80aに保持されている。
【0074】
信号タイミングシフト回路81aにおいて、第1パルス間隔計時部90aは、印刷基準位置信号51のパルスを検出し、あるパルスから次のパルスまでのクロックをカウントする。カウントされたカウント値は、計時値C1として出力される。第1パルス間隔計時部90aは、当該次のパルスが検出されると、第2パルス間隔計時部94aに対してカウント開始指示を出すと共に、カウント値をリセットしてさらに次のパルスまでのクロックをカウントする。第1パルス間隔計時部90aから出力された計時値C1は、計時値書き込み部91aを介して計時値保持用メモリ92aに追加して記憶される。
【0075】
第2パルス間隔計時部94aは、第1パルス間隔計時部90aからのカウント開始指示に応じて、計時値読み出し部93aを介して計時値保持用メモリ92aの先頭から計時値C1または計時値C0を読み出す。そして、カウント値をリセットしてクロックのカウントを開始し、カウント値が計時値保持用メモリ92aの先頭から読み出した計時値C1または計時値C0と一致したら、パルス発生部95aに対してパルスの発生を指示する。
【0076】
なお、計時値保持用メモリ92aから読み出された計時値C1または計時値C0は、計時値保持用メモリ92aから削除される。
【0077】
このような構成において、第1パルス間隔計時部90aは、印刷基準位置信号51の最初のパルス3001を検出すると、クロックのカウントを開始すると共に、第2パルス間隔計時部94aに対してカウント開始を指示する。第1パルス間隔計時部90aは、印刷基準位置信号51の次のパルス3002を検出したら、カウント値を計時値C1として出力し、計時値書き込み部91aを介して計時値保持用メモリ92aに記憶させる。
【0078】
第1パルス間隔計時部90aは、このように、印刷基準位置信号51のパルスを検出する度に、カウント値を計時値C1として出力して計時値保持用メモリ92aに記憶させると共に、第2パルス間隔計時部94aに対してカウント開始を指示する。そして、カウント値をリセットして、印刷基準位置信号51の次のパルスまでクロックのカウントを行う。
【0079】
なお、印刷基準位置信号51のパルスが1/2インチの搬送毎に発生され、搬送速度v=100インチ/秒であれば、パルス間隔が1/200秒となる。したがって、クロック周波数が1MHzの場合、計時値C1は、5000となる。
【0080】
第2パルス間隔計時部94aは、第1パルス間隔計時部90aからのカウント開始指示に応じて、計時値読み出し部93aを介して計時値保持用メモリ92aの先頭から規定時間(1)に対応する計時値C0(例えば50000)を読み出す。読み出された計時値C0は、計時値保持用メモリ92aから削除される。そして、第2パルス間隔計時部94aは、カウント値をリセットして、計時値C0までクロックをカウントする。第2パルス間隔計時部94aは、カウント値が計時値保持用メモリ92aから読み出した計時値C0と一致したら、パルス発生部95aに対してパルスの発生を指示する。
【0081】
パルス発生部95aは、この指示に応じて、印刷基準タイミング信号40aのパルスを発生させる。このパルスが、印刷基準タイミング信号40aの最初のパルスとなる。これにより、印刷基準タイミング信号40aの最初のパルスが、印刷基準位置信号51の最初のパルスに対して規定時間(1)に相当する時間だけ遅延されることになる。
【0082】
第2パルス間隔計時部94aは、次に第1パルス間隔計時部90aからカウント開始が指示されると、計時値保持用メモリ92aから計時値C1(例えば5000)を読み出し、カウント値をリセットして計時値C1までクロックをカウントする。カウント値が計時値C1と一致したら、パルス発生部95aに対してパルス発生を指示する。
【0083】
このようにして、信号タイミングシフト回路81aでは、印刷基準位置信号51の各パルス3001、3002、3003、…をそれぞれ規定値(1)だけ遅延させた印刷基準タイミング信号40aを生成し出力することができる。
【0084】
(印刷シーケンス)
次に、各実施形態に適用可能な印刷処理について説明する。図11は、本実施形態に適用可能な印刷処理を概念的に示す一例のシーケンス図である。プリンタコントローラ14は、上位装置10から制御情報として印刷用紙201に関する情報を受信したら(SEQ100)、受信した情報に基づき用紙搬送制御部50に対して用紙送り長を設定する(SEQ110)。用紙送り長は、例えば搬送方向における1ページのサイズである。
【0085】
プリンタコントローラ14は、上位装置10から1ページ目(ページ#1)の印刷ジョブを受信したら(SEQ101)、受信した印刷ジョブに基づき、印刷機構部30a、30b、30cおよび30dによるデータ転送処理や印刷処理を管理するために用いる転送管理テーブルを作成し、作成した転送管理テーブルに従い印刷機構部30a、30b、30cおよび30dのそれぞれに対して1ページ目を示すページ識別子と、色C、Y、MおよびK各色についてページ識別子で示されるページのデータ転送を開始するように要求する(SEQ110a、110b、110cおよび110d)。
【0086】
印刷機構部30aは、この要求に従い、データ線11aを介して上位装置10に対して色Cの1ページ目の印刷画像データを要求する。印刷機構部30a内のデータ制御部31aは、この要求に応じて上位装置10から転送された色Cの1ページ目の印刷画像データをメモリ61aに格納する。それと共に、データ制御部31aは、画像出力制御部33aに対して、印刷画像データが上位装置10から転送された旨を画像出力制御部33aに通知する。画像出力制御部33aは、この通知を受けて、メモリ61aから印刷画像データを読み出し、例えばバッファ74aに記憶する。
【0087】
各印刷機構部30b、30cおよび30dについても同様に、SEQ110b、110cおよび110dの要求に従い、データ線11b、11cおよび11dを介して上位装置10に対して各色Y、MおよびKの1ページ目の印刷画像データをそれぞれ要求する。各印刷機構部30b、30cおよび30dは、この要求に応じて上位装置10から転送された各色Y、MおよびKの1ページ目の印刷画像データを、データ制御部31b、31cおよび31d内のメモリにそれぞれ格納する。それと共に、各印刷機構部30b、30cおよび30dは、印刷画像データが上位装置10から転送された旨を、画像出力制御部33b、33cおよび33dに通知する。画像出力制御部33b、33cおよび33dは、この通知を受けて、データ制御部31b、31cおよび31d内のメモリから印刷画像データを読み出し、それぞれの1ページ目の印刷画像データを記憶するためのバッファに記憶する。
【0088】
一方、この図11の例では、プリンタコントローラ14から各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対して1ページ目のデータ転送が要求されている間に、プリンタコントローラ14は、上位装置10から送信された次の2ページ目の印刷ジョブを受信する(SEQ102)。プリンタコントローラ14は、受信された印刷ジョブに基づき転送管理テーブルを作成し、図示されないメモリ上に保持する。
【0089】
各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、上位装置10からの各色の1ページ目の印刷画像データの転送が終了したら、それぞれ、その旨をプリンタコントローラ14に通知する(SEQ111a、111b、111cおよび111d)。プリンタコントローラ14は、当該通知にそれぞれ応答して、印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対してそれぞれ2ページ目(ページ#2)のデータ転送を開始するように要求する(SEQ112a、112b、112cおよび112d)。
【0090】
この要求に応じて、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、上位装置10に対して各色の2ページ目の印刷画像データをそれぞれ要求し、この要求に応じて上位装置10から転送された各色の2ページ目の印刷画像データを、データ制御部31a、31b、31cおよび31d内のメモリにそれぞれ格納する。それと共に、各印刷機構部30b、30cおよび30dは、印刷画像データが上位装置10から転送された旨を、画像出力制御部33b、33cおよび33dに通知する。画像出力制御部33b、33cおよび33dは、この通知を受けて、データ制御部31b、31cおよび31d内のメモリから印刷画像データを読み出し、それぞれの2ページ目の印刷画像データを記憶するためのバッファに記憶する。
【0091】
一方、プリンタコントローラ14は、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dの全てから1ページ目のデータ転送終了の通知を受信したら、用紙搬送制御部50に対して用紙搬送開始を要求する(SEQ113)。用紙搬送制御部50は、この要求に応じて印刷用紙201の所定速度での搬送を開始する。また、プリンタコントローラ14は、用紙搬送制御部50に対して用紙搬送開始の要求を行うと共に、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対して、1ページ目の印刷の開始を指示する(SEQ114)。
【0092】
用紙搬送制御部50は、例えば印刷用紙201が所定位置に到達したら、印刷基準位置信号51の最初のパルス3001を発生させると共に、印刷可能状態である旨をプリンタコントローラ14に対して通知する(SEQ117)。プリンタコントローラ14において、印刷基準タイミング信号生成部23は、この用紙搬送制御部50からの印刷可能状態報告に応じて、印刷基準位置信号51に対して、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dそれぞれに設定される規定時間(1)、(2)、(3)および(4)を適用させて印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dを生成する。そして、生成した印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dを、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対して出力する(SEQ118)。
【0093】
各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dの最初のパルスに応じて印刷を開始する。この例では、印刷用紙201の搬送方向に沿って各色C、Y、MおよびKの印刷を行う印刷機構部30a、30b、30cおよび30dが並べられている。この場合、例えば印刷機構部30aにおいて、印刷基準タイミング信号40aの最初のパルスが検出されたら、画像出力制御部33a内のデータ書き出し制御部76aは、1ページ目の印刷であればバッファ74aから印刷画像データを読み出して、各ヘッド34a、34a、…に書き出し、印刷用紙201に対する印刷が行われる(SEQ119a)。色Cの1ページ目の印刷が終了すると、その旨がプリンタコントローラ14に対して通知される(SEQ120a)。
【0094】
続けて、印刷用紙201における1ページ目の印刷の先頭位置が印刷機構部30bによる印刷開始位置に達したら、印刷機構部30bにおいて、画像出力制御部33bは、印刷基準タイミング信号40bの最初のパルスに応じて、画像出力制御部33bが有する図示されないバッファから1ページ目の印刷画像データを読み出して、各ヘッド34b、34b、…に書き出し、印刷用紙201に対する印刷が開始される(SEQ119b)。色Yの1ページ目の印刷が終了したら、その旨がプリンタコントローラ14に対して通知される(SEQ120b)。
【0095】
以下同様にして、印刷機構部30cおよび30dにおいて、印刷基準タイミング信号40cおよび40dの最初のパルスに応じて色MおよびKの印刷が順次開始され(SEQ119c、119d)、印刷が終了したら、その旨がプリンタコントローラ14に対して通知される(SEQ120cおよび120d)。
【0096】
一方、上述のSEQ112a〜112dで開始された2ページ目の各色の印刷画像データの転送が終了すると、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、その旨をプリンタコントローラ14に対して通知する(SEQ115)。プリンタコントローラ14は、このデータ転送完了の通知に応じて、各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dに対して、2ページ目の印刷の開始をそれぞれ指示する(SEQ116)。
【0097】
各印刷機構部30a、30b、30cおよび30dは、1ページ目の印刷の終了後に、それぞれ2ページ目の印刷を開始する。例えば、印刷機構部30aは、1ページ目の印刷が完了(SEQ120a)した後、印刷用紙201における2ページ目の印刷の先頭位置が所定の印刷開始位置に達したら、画像出力制御部33aが有する図示されないバッファから2ページ目の色Cの印刷画像データを読み出して画像出力制御部33aに供給し、印刷用紙201に対する印刷を開始する(SEQ121a)。色Cの印刷が終了したら、その旨がプリンタコントローラ14に対して通知される(SEQ122a)。
【0098】
各印刷機構部30b、30cおよび30dにおいても、同様にして、2ページ目の先頭位置が各印刷機構部30b、30cおよび30dそれぞれの印刷開始位置に達したら、画像出力制御部33b、33cおよび33dが有する図示されないバッファから各色の印刷画像データを読み出し、印刷用紙201に対する印刷を開始する(SEQ121b〜121d)。各色の印刷が終了したら、その旨がプリンタコントローラ14に対してそれぞれ通知される(SEQ122b〜122d)。
【0099】
プリンタコントローラ14は、2ページ目の色Kの印刷終了通知を印刷機構部30dから受け取ると、印刷ジョブによる最終ページの印刷が終了したとして、用紙搬送制御部50に対して印刷用紙201の搬送の停止を要求する(SEQ123)。用紙搬送制御部50は、この要求に応じて印刷用紙201の搬送を停止させ、その旨をプリンタコントローラ14に対して報告する(SEQ124)。それと共に、用紙搬送制御部50は、印刷基準位置信号51の出力を停止する。これにより、一連の印刷処理が終了する。
【0100】
なお、上述では、ステーション250a、250b、250cおよび250dそれぞれに供給する印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dを、プリンタコントローラ14が印刷基準位置信号51をそれぞれ対応する規定時間だけ遅延させることで生成するように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、各ステーション250a、250b、250cおよび250d側で、それぞれ印刷基準位置信号51を遅延させてもよい。この場合、遅延を与えるための規定時間は、各ステーション250a、250b、250cおよび250d毎に設定される。
【0101】
以上説明したように、本発明の実施形態による印刷装置では、印刷位置の基準となる用紙基準位置と、C、M、YおよびK各色の印刷機構部30a、30b、30cおよび30dそれぞれの印刷開始位置との間の距離に応じて、印刷の基準タイミングを示す印刷基準タイミング信号40a、40b、40cおよび40dをそれぞれ遅延させる。そのため、一連の印刷を行う複数の印刷機構部がそれぞれ適切なタイミングで印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0102】
10 上位装置
11,11a,11b,11c,11d データ線
12 制御線
13 プリンタ装置
14 プリンタコントローラ
21 CPU
22 印刷制御部
23 印刷基準タイミング信号生成部
30a,30b,30c,30d 印刷機構部
31a,31b,31c,31d データ制御部
33a,33b,33c,33d 画像出力制御部
34a,34b,34c,34d ヘッド
40a,40b,40c,40d 印刷基準タイミング信号
50 用紙搬送制御部
51 印刷基準位置信号
73a データ読み出し制御部
74a,75a バッファ
76a データ書き出し制御部
80a,80b,80c,80d 規定時間設定部
81a,81b,81c,81d 信号タイミングシフト部
90a 第1パルス間隔計時部
92a 計時値保持用メモリ
94a 第2パルス間隔計時部
95a パルス発生部
200 印刷装置
201 印刷用紙
210 印刷用紙補給部
230 第1搬送部
250,250a,250b,250c,250d ステーション
260 第2搬送部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2004−287519号公報
【特許文献2】特開2002−254736号公報
【特許文献3】特許第3504926号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段で搬送された前記用紙に印刷を行う印刷手段と、
前記搬送手段による搬送の予め定められた搬送距離毎にタイミング信号を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記タイミング信号を、前記搬送手段により搬送された前記用紙が基準位置から前記印刷手段の印刷位置まで進むために要する時間だけ遅延させる遅延手段と
を備え、
前記印刷手段は、
前記遅延手段で遅延された前記タイミング信号を基準として印刷を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
複数の前記印刷手段が前記用紙の搬送方向に直列に並べて設けられ、
前記遅延手段は、
前記複数の前記印刷手段それぞれの前記タイミング信号を、該複数の前記印刷手段の前記印刷位置それぞれの前記基準位置に対する距離に応じて遅延させる
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記遅延手段は、
前記タイミング信号の間隔を計測し、計測された該間隔が示すタイミング毎に前記時間を加算することで、該タイミング信号を遅延させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷手段は、
印刷を行う画像データを一時的に記憶するバッファ手段を有し、
前記遅延手段で遅延された前記タイミング信号に従い、該バッファ手段から該画像データを読み出して印刷を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
搬送手段が、用紙を搬送する搬送ステップと、
印刷手段が、前記搬送ステップにより搬送された前記用紙に印刷を行う印刷ステップと、
生成手段が、前記搬送ステップによる搬送の予め定められた搬送距離毎にタイミング信号を生成する生成ステップと、
遅延手段が、前記生成ステップが生成した前記タイミング信号を、前記搬送ステップにより搬送された前記用紙が基準位置から前記印刷ステップによる印刷位置まで進むために要する時間だけ遅延させる遅延ステップと
を備え、
前記印刷ステップは、
前記遅延ステップにより遅延された前記タイミング信号を基準として印刷を行う
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−196825(P2012−196825A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61463(P2011−61463)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】