印刷装置および印刷装置の制御方法
【課題】交換部品から各種の情報を読み出す印刷装置等を提供すること。
【解決手段】MFPは、カートリッジに記憶されている複数の秘密鍵(第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4と同一の秘密鍵を備えている。MFPは、MFPを使用した履歴に関する履歴情報を記憶する。MFPは、履歴情報に基づいて複数の秘密鍵の中から1つの使用秘密鍵を選択し、選択された特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して第1認証情報を生成・記憶する。MFPは、使用秘密鍵を識別する秘密鍵選択情報と乱数とを、カートリッジに送信する。MFPは、送信した乱数を秘密鍵選択情報で識別される秘密鍵に基づいてカートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、カートリッジから受信する。MFPは、第1認証情報と第2認証情報とが一致する場合に、カートリッジを認証する。
【解決手段】MFPは、カートリッジに記憶されている複数の秘密鍵(第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4と同一の秘密鍵を備えている。MFPは、MFPを使用した履歴に関する履歴情報を記憶する。MFPは、履歴情報に基づいて複数の秘密鍵の中から1つの使用秘密鍵を選択し、選択された特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して第1認証情報を生成・記憶する。MFPは、使用秘密鍵を識別する秘密鍵選択情報と乱数とを、カートリッジに送信する。MFPは、送信した乱数を秘密鍵選択情報で識別される秘密鍵に基づいてカートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、カートリッジから受信する。MFPは、第1認証情報と第2認証情報とが一致する場合に、カートリッジを認証する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、交換部品から各種の情報を読み出す印刷装置、および、印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジに記憶素子(例:ICチップ)を備え、記憶素子に記憶された認証情報とプリンタが記憶する認証情報とを照合することによって、プリンタに装着されたカートリッジが正規業者によって製造された正規カートリッジであるか非正規業者によって製造された互換カートリッジであるかを識別する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−163208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
認証処理において、正規カートリッジ以外の互換カートリッジが正規カートリッジとして認識されるような状態になると、良好な印字品質が得られなかったり、プリンタの故障等を防止する機能が正常に働かなくなるおそれがある。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に記載の印刷装置は、複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられたカートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、カートリッジに記憶されている複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶している第1記憶手段と、印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段に記憶されている履歴情報に基づいて第1記憶手段に記憶されている複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶手段と、特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、第3記憶手段で使用された乱数とをカートリッジに送信する送信手段と、送信手段で送信した乱数を、第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいてカートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、カートリッジから受信する受信手段と、第3記憶手段に記憶されている第1認証情報と受信手段で受信した第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合にカートリッジを認証する認証手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本願に記載の印刷装置では、第3記憶手段で選択された特定秘密鍵と、印刷装置に取付けられたカートリッジに記憶されている複数の秘密鍵の何れか1つとが一致する場合に、当該カートリッジが正規業者によって製造された正規カートリッジである旨を認証することができる。そして第3記憶手段では、ユーザによる印刷装置の使用頻度に応じて、特定秘密鍵を自動で変更することができる。これにより、何れの秘密鍵を使用するかを、外部者に特定困難にすることが可能となる。よって、互換カートリッジを製造することが困難になるため、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の印刷装置では、印刷装置の使用履歴に関わらず、次回のカートリッジの取付けが行われるまでは、当該カートリッジに対する特定秘密鍵を変更しないように制御することができる。これにより、ユーザがカートリッジを取外す等の操作を行っていないにも関わらず、突然に印刷等が実行できなくなってしまう等の事態を防止することができる。
【0008】
また、請求項3に記載の印刷装置では、取付けが行われたカートリッジに対してのみ、特定秘密鍵を選択する動作が行われる。これにより、複数のカートリッジの各々について、個別に特定秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0009】
また、請求項4に記載の印刷装置では、カートリッジが取付口から取外された後に、当該取外されたカートリッジが同一の取付口に再度取付けられる場合(すなわち、カートリッジが交換されることなく、同一のカートリッジが取付口から取外されてその後取付けられた場合)には、特定秘密鍵を選択する動作が行われないとすることができる。これにより、不要な特定秘密鍵の変更動作を実行させないように制御することができる。
【0010】
また、請求項5に記載の印刷装置では、同一のカートリッジが取付口から取外されてその後取付けられた場合に、カートリッジ内の印刷材料の残量が変化している場合には、他の印刷装置で当該カートリッジが使用された可能性があると判断することができる。よって、この場合にも特定秘密鍵を変更する動作を実行することで、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0011】
また、請求項6に記載の印刷装置では、印刷装置で行なわれる所定動作のカウント値が閾値を超えることに応じて、特定秘密鍵を変更する動作を実行する。これにより、特定秘密鍵を自動で変更することが可能となる。
【0012】
また、請求項7に記載の印刷装置では、印刷装置で行なわれるクリーニングの回数などのカウント値を、特定秘密鍵を変更する動作に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】MFPのブロック図である。
【図2】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図3】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図4】カートリッジの動作フローチャートを示す図である。
【図5】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図6】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図7】MFP記憶テーブルの一例を示す図である。
【図8】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図9】カートリッジ記憶テーブルの一例を示す図である。
【図10】チャレンジ&レスポンス認証の動作説明図である。
【図11】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図12】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図13】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<MFPの構成>
図1に、本願に係る実施形態として例示されるMFP(Multifunction Peripheral)51のブロック図を示す。MFP51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)32、記憶部33、カバーオープンセンサ34、ボタン入力部38、パネル39、プリンタ19、スキャナ20、を主に備えている。これらの構成要素は、入出力ポート43を介して互いに通信可能とされている。ASIC32は、後述する各種の処理を実行するための集積回路である。ASIC32は、乱数発生部35を備える。カバーオープンセンサ34は、MFP51の本体カバー(不図示)の開閉を検出するためのセンサである。ボタン入力部38は、MFP51の各機能を実行するためのキーである。パネル39は、MFP51の各種機能情報を表示する。スキャナ20は、読み取りを実行する部位である。
【0015】
プリンタ19は、印刷を実行する部位である。プリンタ19は、プリンタ制御回路67、キャリッジ68を備える。図1において模式的に示されるように、キャリッジ68は、挿入口61C、61M、61Y、61Kを備える。挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色に対応する挿入口である。そして、挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々に対応して、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kが着脱自在に取付けられる。カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色のインクが収容されているカートリッジである。プリンタ制御回路67は、挿入口に取付けられているカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に備えられているICチップ63C、63M、63Y、63Kとの通信を制御する。キャリッジ68は、MFP51の本体カバー(不図示)の内部に配置されている。よって、カートリッジ64C等を交換する際には、本体カバーを開閉する必要がある。
【0016】
カートリッジの構造について、カートリッジ64Cを例として説明する。カートリッジ64Cは、ICチップ63Cを備える。ICチップ63Cは、制御部69Cおよび記憶部70Cを備える。制御部69Cは、乱数を暗号化する処理や、プリンタ制御回路67との通信処理を制御する部位である。記憶部70Cは、カートリッジ記憶テーブルTB21C、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4、を記憶する。第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4は、カートリッジ64Cの製造者によって予め記憶される。
【0017】
図9に、カートリッジ記憶テーブルTB21Cの一例を示す。カートリッジ記憶テーブルTB21Cは、カートリッジ識別情報211C、カートリッジ色情報212C、インク残量情報213C、を記憶する。カートリッジ識別情報211Cは、カートリッジ64Cを識別するための情報である。カートリッジ識別情報211Cの例としては、製造シリアル番号が挙げられる。カートリッジ色情報212Cは、カートリッジに収容されているインクの色種類(シアン)を示す情報である。インク残量情報213Cは、カートリッジ64Cに収容されているインクの残量に関する情報である。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kの各構成についても、カートリッジ64Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
挿入口の構造について、挿入口61Cを例として説明する。挿入口61Cには、カートリッジのICチップに対応して、電極62Cが備えられている。そして、カートリッジ64Cが挿入口61Cに正しく装着されたとき、ICチップ63C上のパッド(不図示)が電極62Cと接触し、通信可能となる。また、挿入口61Cには、取付センサ65Cが備えられている。取付センサ65Cは、挿入口61Cに対するカートリッジの取外しおよび取付けを検出するセンサである。電極62Cおよび取付センサ65Cは、ケーブルを介してプリンタ制御回路67に接続されている。なお、挿入口61M、61Y、61Kの各構成についても、挿入口61Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(ハードディスク)、などが組み合わされて構成されている。また記憶部33は、MFP記憶テーブルTB11、秘密鍵テーブルTB12、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4、を記憶する。
【0020】
図7に、MFP記憶テーブルTB11の一例を示す。MFP記憶テーブルTB11は、カートリッジ識別情報111Cないし111K、使用秘密鍵112Cないし112K、インク残量情報113Cないし113K、履歴情報120、を記憶する。カートリッジ識別情報111Cないし111Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々から読み出したカートリッジ識別情報211Cないし211Kを記憶しておく領域である。使用秘密鍵112Cないし112Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々を認証するために使用される秘密鍵である。インク残量情報113Cないし113Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々から読み出した、インク残量情報213Cないし213Kを記憶しておく領域である。
【0021】
履歴情報120は、MFP51を使用した履歴に関する情報である。履歴情報120は、カートリッジ取付回数121Cないし121K、クリーニング回数122、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124、を含んでいる。カートリッジ取付回数121Cないし121Kの各々は、挿入口61Cないし61Kの各々において、カートリッジが取付けられた回数の累積値である。クリーニング回数122は、ヘッド部(不図示)に備えられるインクノズルのクリーニングを行った回数の累積値である。累積印刷枚数123は、MFP51で印刷を行った回数の累積値である。累積電源オン時間124は、MFP51の電源が投入されている時間の累積値である。
【0022】
図8に、秘密鍵テーブルTB12の一例を示す。秘密鍵テーブルTB12は、クリーニング回数閾値301ないし304と、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4との関係を示すテーブルである。秘密鍵テーブルTB12では、ヘッド部のクリーニング回数122がクリーニング回数閾値301ないし304の何れの範囲内であるかに基づいて、使用秘密鍵を決定することができる。例えば、クリーニング回数122が500回の場合には第1秘密鍵K1が使用秘密鍵として選択され、クリーニング回数122が501回の場合には第2秘密鍵K2が使用秘密鍵として選択される。クリーニング回数閾値301ないし304は、予め秘密鍵テーブルTB12に記憶されているとしてもよい。
【0023】
本願に係るMFP51では、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々には、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4が予め記憶されている。また、MFP51の記憶部33には、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4が予め記憶されている。カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4と、MFP51の記憶部33に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4とは、同一の秘密鍵である。これにより、後述するチャレンジ&レスポンス認証を実行することが可能とされている。チャレンジ&レスポンス認証は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kが、正規業者によって製造された正規カートリッジであるか否かを確認するための技術である。
【0024】
MFP51の動作を、図2ないし図6のフローを用いて説明する。図2ないし図6のフローは、MFP51の電源がオン状態である期間中に常に動作するフローである。
【0025】
<カートリッジ交換処理(MFP)>
図2および図3のフローを用いて、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの何れかの交換時に、MFP51側で行われる処理を説明する。S112において、ASIC32は、MFP51の本体カバーが開かれたか否かを判断する。当該判断は、カバーオープンセンサ34の検出結果を監視することによって行われる。本体カバーが開かれていない場合(S112:NO)にはS112へ戻り、本体カバーが開かれた場合(S112:YES)にはS114へ進む。S114において、ASIC32は、取付センサ65C、65M、65Y、65Kによって、カートリッジの取外しおよび取付けが検出されたか否かを判断する。検出されない場合(S114:NO)にはS116へ進み、検出された場合(S114:YES)にはS115へ進む。S115においてASIC32は、MFP記憶テーブルTB11のカートリッジ取付回数121C、121M、121Y、121Kのうち、取外しおよび取付けが検出されたカートリッジについてのカートリッジ取付回数を1カウントアップする。S116において、ASIC32は、MFP51の本体カバーが閉じられたか否かを判断する。本体カバーが閉じられていない場合(S116:NO)にはS114へ戻り、本体カバーが閉じられた場合(S116:YES)にはS118へ進む。
【0026】
S118において、ASIC32は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kのうちの何れかのカートリッジで、取外しおよび取付けが行われたか否かを判断する。当該判断は、カートリッジ取付回数121C、121M、121Y、121Kの更新状態に基づいて行われる。何れのカートリッジでも取外しおよび取付けが行われていない場合(例:単に本体カバーを開閉した場合)(S118:NO)にはS140へ進み、カートリッジの、取外しおよび取付けが行われた場合(S118:YES)にはS120へ進む。
【0027】
S120において、ASIC32は、取付けられたカートリッジを認証対象カートリッジに設定する。認証対象カートリッジは、後述する認証処理の実行対象となるカートリッジである。本実施形態の説明例では、説明の簡略化のために、カートリッジ64Cが認証対象カートリッジに設定された場合の動作例を、以下に説明する。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kが認証対象カートリッジに設定された場合の処理内容も、カートリッジ64Cが認証対象カートリッジに設定された場合の処理内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
S122において、ASIC32は、取付け後の認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)のカートリッジ識別情報211Cを、カートリッジ64Cから読み出す。カートリッジ識別情報211Cは、現在取り付けられているカートリッジの識別情報である。S124において、ASIC32は、取外し前の認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)のカートリッジ識別情報111Cを、MFP記憶テーブルTB11から読み出す。カートリッジ識別情報111Cは、前回取り付けられていたカートリッジの識別情報である。
【0029】
S126において、ASIC32は、S122で取得したカートリッジ識別情報211Cと、S124で取得したカートリッジ識別情報111Cとが一致するか否かを判断する。両情報が一致しない場合(S126:NO)には、取外しおよび取付け動作によってカートリッジ64Cが交換された場合であると判断され、S131へ進む。S131において、ASIC32は、S122で読み出したカートリッジ識別情報211Cを、新たなカートリッジ識別情報111Cとして、MFP記憶テーブルTB11に上書き記憶させる。そして、秘密鍵を選択する動作を実行するために、S132(図3)へ進む。
【0030】
一方、S126において両情報が一致する場合(S126:YES)には、カートリッジ64Cが挿入口61Cから取外された後に、当該取外されたカートリッジ64Cが再び挿入口61Cに取付けられた場合(すなわち、カートリッジ64Cが交換されていない場合)であると判断される。よってS128へ進み、ASIC32は、インク残量情報213Cをカートリッジ64Cから読み出す。
【0031】
S130において、ASIC32は、MFP記憶テーブルTB11から読み出されるインク残量情報113C(前回取り付けられていたカートリッジのインク残量)と、S128でカートリッジ64Cから読み出されるインク残量情報213C(現在取り付けられているカートリッジのインク残量)とが、一致するか否かを判断する。両インク残量情報が一致しない場合(S130:NO)には、他の印刷装置で当該カートリッジ64Cが使用された可能性がある場合であると判断される。よって、秘密鍵を選択する動作(S132、S134)を実行する場合であると判断され、S132(図3)へ進む。一方、両インク残量情報が一致する場合(S130:YES)には、秘密鍵を選択する動作(S132、S134)をスキップして、S140(図3)へ進む。
【0032】
S132(図3)においてASIC32は、MFP記憶テーブルTB11からクリーニング回数122を読み出す。S134において、ASIC32は、読み出したクリーニング回数122に対応する使用秘密鍵を、秘密鍵テーブルTB12に基づいて選択する。具体的には、クリーニング回数122が、クリーニング回数閾値301ないし304の何れの範囲内であるかを判断する。そして、選択した秘密鍵を、使用秘密鍵112CとしてMFP記憶テーブルTB1に上書き記憶する。
【0033】
S140ないしS146において、チャレンジ&レスポンス認証が行われる。図10を用いて、本願で用いられるチャレンジ&レスポンス認証の具体内容を説明する。図10の説明例では、説明の簡略化のために、認証に使用される鍵(使用秘密鍵)として、第1秘密鍵K1が使用される場合を説明する。S140において、ASIC32は、乱数発生部35を用いて乱数を生成する。S141においてASIC32は、使用秘密鍵112C(第1秘密鍵K1)を記憶部33から読み出す。そして、生成した乱数を使用秘密鍵112Cを用いて暗号化し、第1認証情報を算出して記憶部33に一時的に記憶させる。
【0034】
S142において、ASIC32は、生成した乱数と秘密鍵選択情報を、認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)へ送信する。秘密鍵選択情報は、MFP51の記憶部33およびカートリッジ64Cの記憶部70Cに共通に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4のうち、何れの秘密鍵を使用秘密鍵として選択するかを、カートリッジ64Cへ報知するための情報である。
【0035】
<カートリッジ側処理>
図4のフローを用いて、カートリッジ64Cで行われる処理を説明する。S212において、制御部69Cは、乱数と秘密鍵選択情報をMFP51本体側から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S212:NO)にはS212へ戻り、受信した場合(S212:YES)にはS214へ進む。S214において、制御部69Cは、秘密鍵選択情報に基づいて、使用秘密鍵(第1秘密鍵K1)を選択する。S216において、制御部69Cは、受信した乱数を使用秘密鍵(第1秘密鍵K1)を用いて暗号化し、第2認証情報を算出する。S218において、制御部69Cは、第2認証情報をMFP51本体側へ送信する。これにより、カートリッジ64C側での処理が完了する。
【0036】
説明をMFP51で行われる処理に戻す。S144(図3)において、ASIC32は、カートリッジ64Cから第2認証情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合(S144:NO)にはS144へ戻り、受信した場合(S144:YES)にはS146へ進む。
【0037】
S146において、ASIC32は、記憶部33に一時的に記憶されている第1認証情報と、カートリッジ64Cから受信した第2認証情報とが一致するか否かを判断する。一致しない場合(S146:NO)には、認証が失敗したとして、S148へ進む。S148においてASIC32は、交換後のカートリッジ64Cが純正品ではない旨、および、純正品のカートリッジに交換必要である旨を、パネル39に表示させる。これにより、純正品でないカートリッジを用いた印刷を実行できない状態とすることができる。
【0038】
一方、S146において両情報が一致する場合(S146:YES)には、認証が成功したとして、S150へ進む。S150において、ASIC32は、スタンバイモード(印刷ジョブを待機するモード)に移行する。そしてフローを終了する。
【0039】
<クリーニング回数の更新処理>
図5のフローを用いて、MFP51で行われる、クリーニング回数122の更新処理を説明する。S312において、ASIC32は、ヘッド部のクリーニングが実施されたか否かを判断する。クリーニングは、クリーニングボタンがユーザにより押下されたことや、予め定められた所定枚数が印刷されたことなどの各種のトリガに応じて実施される。クリーニングが実施されていない場合(S312:NO)にはS312へ戻り、実施された場合(S312:YES)にはS314へ進む。
【0040】
S314において、ASIC32は、クリーニング回数122をMFP記憶テーブルTB11から読み出す。S316において、ASIC32は、読み出したクリーニング回数122を1カウントアップする。S318において、ASIC32は、カウントアップしたクリーニング回数122を、MFP記憶テーブルTB11に上書き記憶する。これにより、更新処理が終了する。
【0041】
なお、履歴情報120に含まれている累積印刷枚数123や累積電源オン時間124などの更新処理も、クリーニング回数122の更新処理と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0042】
<インク残量情報の更新処理>
図6のフローを用いて、MFP51で行われる、インク残量情報113の更新処理を説明する。S412において、ASIC32は、プリンタ19で印刷が実行されたか否かを判断する。印刷が実行された場合(S412:YES)にはS416へ進み、実行されていない場合(S412:NO)にはS414へ進む。S414において、ASIC32は、ヘッド部のクリーニングが実行されたか否かを判断する。クリーニングが実行されていない場合(S414:NO)にはS412へ戻り、実行された場合(S414:YES)にはS416へ進む。
【0043】
S416において、ASIC32は、印刷処理またはクリーニング処理でのインク使用量を、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々についてカウントする。インク使用量は、例えばドットカウントによって取得することができる。S418において、ASIC32は、印刷またはクリーニングが終了したか否かを判断する。終了していない場合(S418:NO)にはS416へ戻り、終了した場合(S418:YES)にはS420へ進む。S420において、ASIC32は、MFP記憶テーブルTB11のインク残量情報113Cないし113Kの各々を更新する。S422においてASIC32は、カートリッジ64Cないし64Kの各々に記憶されているカートリッジ記憶テーブルTB21CないしTB21Kの各々において、インク残量情報213Cないし213Kの各々を更新する。S424において、ASIC32は、スタンバイモードに移行する。そしてフローを終了する。
【0044】
<効果>
以上説明した、本実施形態の説明例に係るMFP51の効果を説明する。本願に記載のMFP51では、ユーザによるMFP51の使用頻度(クリーニング回数)に応じて、使用秘密鍵を自動で変更することができる(S134)。これにより、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4のうちの何れの秘密鍵を使用するかについて、外部からの特定を困難にすることができる。よって、非正規業者によって製造された互換カートリッジが、正規業者によって製造された正規カートリッジとして認識されるような状態の発生を抑制することができるため、MFP51の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0045】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジの取付けが行われたことが検出されることに応じて(S118:Y)、使用秘密鍵を選択する動作(S134)を実行する。これにより、MFP51の使用履歴(クリーニング回数)の値に関わらず、次回のカートリッジの取付けが行われるまでは、当該カートリッジに対する使用秘密鍵を変更しないように制御することができる。よって、ユーザがカートリッジを取外す等の操作を行っていないにも関わらず、突然に印刷等が実行できなくなってしまう等の事態を防止することができる。
【0046】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kのうち、取外しおよび取付けが行われたカートリッジに対してのみ(S120)、使用秘密鍵を選択する動作(S134)が行われる。これにより、複数のカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々について、個別に使用秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0047】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジが挿入口から取外された後に、当該取外されたカートリッジが再び取付口に取付けられる場合(すなわち、カートリッジが交換されていない場合)(S126:Y)には、使用秘密鍵を選択する動作(S134)が行われないとすることができる。これにより、不要な使用秘密鍵の変更動作を実行させないように制御することができる。
【0048】
また本願に記載のMFP51では、同一のカートリッジが挿入口から取外されてその後取付けられた場合(S126:Y)に、カートリッジ内のインク残量が変化している場合(S130:NO)には、他の印刷装置で当該カートリッジが使用された可能性があると判断することができる。よって、この場合にも使用秘密鍵を選択する動作(S134)を実行することで、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を説明する。
【0050】
<変形例>
本願に記載のMFP51では、クリーニング回数122を用いて使用秘密鍵を選択する場合(S134)を説明したが、この形態に限られない。MFP51を使用した履歴に関する情報(カートリッジ取付回数121Cないし121K、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124)を用いることによっても、S134において使用秘密鍵を選択する動作を行わせることが可能である。例えば、図11に示す秘密鍵テーブルTB12aを用いる場合には、累積印刷枚数123が、累積印刷枚数閾値301aないし304aの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。また、図12に示す秘密鍵テーブルTB12bを用いる場合には、累積電源オン時間124が、累積電源オン時間閾値301bないし304bの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。
【0051】
また、図13に示す秘密鍵テーブルTB12cを用いる場合には、カートリッジ取付回数121Cないし121Kの各々が、カートリッジ取付回数閾値301cないし304cの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。この場合、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々について、個別に使用秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0052】
MFP51の記憶部33、およびカートリッジ64C、64M、64Y、64Kに予め記憶される秘密鍵の数は、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4の4つに限られず、3つ以下または5つ以上であってもよい。
【0053】
使用されるインク種類はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4種類の場合を説明したが、この形態に限られず、3種類以下または5種類以上の場合においても本願の技術を適用可能である。また、カートリッジに収容されている印刷材料はインクに限られず、トナーなどの他の材料であってもよい。
【0054】
ICチップ63C、63M、63Y、63Kは接触式ICであるとしたが、非接触式ICを適用してもよい。
【0055】
第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4は複数の秘密鍵の一例である。インクは印刷材料の一例である。挿入口61C、61M、61Y、61Kは取付口の一例である。記憶部33は第1記憶手段の一例である。カートリッジ取付回数121Cないし121K、クリーニング回数122、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124は、履歴情報の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第2記憶手段の一例である。使用秘密鍵は特定秘密鍵の一例である。S141を実行するASIC32は第3記憶手段の一例である。秘密鍵選択情報は第1識別情報の一例である。S142を実行するASIC32は送信手段の一例である。S144を実行するASIC32は受信手段の一例である。S150を実行するASIC32は認証手段の一例である。取付センサ65Cないし65Kは検出手段の一例である。カートリッジ識別情報は第2識別情報の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第4記憶手段の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第5記憶手段の一例である。クリーニング回数閾値301ないし304は閾値の一例である。
【符号の説明】
【0056】
32:ASIC、33:記憶部、51:MFP、61C、61M、61Y、61K:挿入口、64C、64M、64Y、64K:カートリッジ、121Cないし121K:カートリッジ取付回数、クリーニング回数122、TB11:MFP記憶テーブル、TB12:秘密鍵テーブル、TB21CないしTB21K:カートリッジ記憶テーブル
【技術分野】
【0001】
本願は、交換部品から各種の情報を読み出す印刷装置、および、印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジに記憶素子(例:ICチップ)を備え、記憶素子に記憶された認証情報とプリンタが記憶する認証情報とを照合することによって、プリンタに装着されたカートリッジが正規業者によって製造された正規カートリッジであるか非正規業者によって製造された互換カートリッジであるかを識別する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−163208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
認証処理において、正規カートリッジ以外の互換カートリッジが正規カートリッジとして認識されるような状態になると、良好な印字品質が得られなかったり、プリンタの故障等を防止する機能が正常に働かなくなるおそれがある。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に記載の印刷装置は、複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられたカートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、カートリッジに記憶されている複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶している第1記憶手段と、印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段に記憶されている履歴情報に基づいて第1記憶手段に記憶されている複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶手段と、特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、第3記憶手段で使用された乱数とをカートリッジに送信する送信手段と、送信手段で送信した乱数を、第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいてカートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、カートリッジから受信する受信手段と、第3記憶手段に記憶されている第1認証情報と受信手段で受信した第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合にカートリッジを認証する認証手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本願に記載の印刷装置では、第3記憶手段で選択された特定秘密鍵と、印刷装置に取付けられたカートリッジに記憶されている複数の秘密鍵の何れか1つとが一致する場合に、当該カートリッジが正規業者によって製造された正規カートリッジである旨を認証することができる。そして第3記憶手段では、ユーザによる印刷装置の使用頻度に応じて、特定秘密鍵を自動で変更することができる。これにより、何れの秘密鍵を使用するかを、外部者に特定困難にすることが可能となる。よって、互換カートリッジを製造することが困難になるため、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の印刷装置では、印刷装置の使用履歴に関わらず、次回のカートリッジの取付けが行われるまでは、当該カートリッジに対する特定秘密鍵を変更しないように制御することができる。これにより、ユーザがカートリッジを取外す等の操作を行っていないにも関わらず、突然に印刷等が実行できなくなってしまう等の事態を防止することができる。
【0008】
また、請求項3に記載の印刷装置では、取付けが行われたカートリッジに対してのみ、特定秘密鍵を選択する動作が行われる。これにより、複数のカートリッジの各々について、個別に特定秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0009】
また、請求項4に記載の印刷装置では、カートリッジが取付口から取外された後に、当該取外されたカートリッジが同一の取付口に再度取付けられる場合(すなわち、カートリッジが交換されることなく、同一のカートリッジが取付口から取外されてその後取付けられた場合)には、特定秘密鍵を選択する動作が行われないとすることができる。これにより、不要な特定秘密鍵の変更動作を実行させないように制御することができる。
【0010】
また、請求項5に記載の印刷装置では、同一のカートリッジが取付口から取外されてその後取付けられた場合に、カートリッジ内の印刷材料の残量が変化している場合には、他の印刷装置で当該カートリッジが使用された可能性があると判断することができる。よって、この場合にも特定秘密鍵を変更する動作を実行することで、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0011】
また、請求項6に記載の印刷装置では、印刷装置で行なわれる所定動作のカウント値が閾値を超えることに応じて、特定秘密鍵を変更する動作を実行する。これにより、特定秘密鍵を自動で変更することが可能となる。
【0012】
また、請求項7に記載の印刷装置では、印刷装置で行なわれるクリーニングの回数などのカウント値を、特定秘密鍵を変更する動作に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】MFPのブロック図である。
【図2】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図3】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図4】カートリッジの動作フローチャートを示す図である。
【図5】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図6】MFPの動作フローチャートを示す図である。
【図7】MFP記憶テーブルの一例を示す図である。
【図8】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図9】カートリッジ記憶テーブルの一例を示す図である。
【図10】チャレンジ&レスポンス認証の動作説明図である。
【図11】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図12】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【図13】秘密鍵テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<MFPの構成>
図1に、本願に係る実施形態として例示されるMFP(Multifunction Peripheral)51のブロック図を示す。MFP51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)32、記憶部33、カバーオープンセンサ34、ボタン入力部38、パネル39、プリンタ19、スキャナ20、を主に備えている。これらの構成要素は、入出力ポート43を介して互いに通信可能とされている。ASIC32は、後述する各種の処理を実行するための集積回路である。ASIC32は、乱数発生部35を備える。カバーオープンセンサ34は、MFP51の本体カバー(不図示)の開閉を検出するためのセンサである。ボタン入力部38は、MFP51の各機能を実行するためのキーである。パネル39は、MFP51の各種機能情報を表示する。スキャナ20は、読み取りを実行する部位である。
【0015】
プリンタ19は、印刷を実行する部位である。プリンタ19は、プリンタ制御回路67、キャリッジ68を備える。図1において模式的に示されるように、キャリッジ68は、挿入口61C、61M、61Y、61Kを備える。挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色に対応する挿入口である。そして、挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々に対応して、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kが着脱自在に取付けられる。カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色のインクが収容されているカートリッジである。プリンタ制御回路67は、挿入口に取付けられているカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に備えられているICチップ63C、63M、63Y、63Kとの通信を制御する。キャリッジ68は、MFP51の本体カバー(不図示)の内部に配置されている。よって、カートリッジ64C等を交換する際には、本体カバーを開閉する必要がある。
【0016】
カートリッジの構造について、カートリッジ64Cを例として説明する。カートリッジ64Cは、ICチップ63Cを備える。ICチップ63Cは、制御部69Cおよび記憶部70Cを備える。制御部69Cは、乱数を暗号化する処理や、プリンタ制御回路67との通信処理を制御する部位である。記憶部70Cは、カートリッジ記憶テーブルTB21C、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4、を記憶する。第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4は、カートリッジ64Cの製造者によって予め記憶される。
【0017】
図9に、カートリッジ記憶テーブルTB21Cの一例を示す。カートリッジ記憶テーブルTB21Cは、カートリッジ識別情報211C、カートリッジ色情報212C、インク残量情報213C、を記憶する。カートリッジ識別情報211Cは、カートリッジ64Cを識別するための情報である。カートリッジ識別情報211Cの例としては、製造シリアル番号が挙げられる。カートリッジ色情報212Cは、カートリッジに収容されているインクの色種類(シアン)を示す情報である。インク残量情報213Cは、カートリッジ64Cに収容されているインクの残量に関する情報である。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kの各構成についても、カートリッジ64Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
挿入口の構造について、挿入口61Cを例として説明する。挿入口61Cには、カートリッジのICチップに対応して、電極62Cが備えられている。そして、カートリッジ64Cが挿入口61Cに正しく装着されたとき、ICチップ63C上のパッド(不図示)が電極62Cと接触し、通信可能となる。また、挿入口61Cには、取付センサ65Cが備えられている。取付センサ65Cは、挿入口61Cに対するカートリッジの取外しおよび取付けを検出するセンサである。電極62Cおよび取付センサ65Cは、ケーブルを介してプリンタ制御回路67に接続されている。なお、挿入口61M、61Y、61Kの各構成についても、挿入口61Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(ハードディスク)、などが組み合わされて構成されている。また記憶部33は、MFP記憶テーブルTB11、秘密鍵テーブルTB12、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4、を記憶する。
【0020】
図7に、MFP記憶テーブルTB11の一例を示す。MFP記憶テーブルTB11は、カートリッジ識別情報111Cないし111K、使用秘密鍵112Cないし112K、インク残量情報113Cないし113K、履歴情報120、を記憶する。カートリッジ識別情報111Cないし111Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々から読み出したカートリッジ識別情報211Cないし211Kを記憶しておく領域である。使用秘密鍵112Cないし112Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々を認証するために使用される秘密鍵である。インク残量情報113Cないし113Kの各々は、カートリッジ64Cないし64Kの各々から読み出した、インク残量情報213Cないし213Kを記憶しておく領域である。
【0021】
履歴情報120は、MFP51を使用した履歴に関する情報である。履歴情報120は、カートリッジ取付回数121Cないし121K、クリーニング回数122、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124、を含んでいる。カートリッジ取付回数121Cないし121Kの各々は、挿入口61Cないし61Kの各々において、カートリッジが取付けられた回数の累積値である。クリーニング回数122は、ヘッド部(不図示)に備えられるインクノズルのクリーニングを行った回数の累積値である。累積印刷枚数123は、MFP51で印刷を行った回数の累積値である。累積電源オン時間124は、MFP51の電源が投入されている時間の累積値である。
【0022】
図8に、秘密鍵テーブルTB12の一例を示す。秘密鍵テーブルTB12は、クリーニング回数閾値301ないし304と、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4との関係を示すテーブルである。秘密鍵テーブルTB12では、ヘッド部のクリーニング回数122がクリーニング回数閾値301ないし304の何れの範囲内であるかに基づいて、使用秘密鍵を決定することができる。例えば、クリーニング回数122が500回の場合には第1秘密鍵K1が使用秘密鍵として選択され、クリーニング回数122が501回の場合には第2秘密鍵K2が使用秘密鍵として選択される。クリーニング回数閾値301ないし304は、予め秘密鍵テーブルTB12に記憶されているとしてもよい。
【0023】
本願に係るMFP51では、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々には、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4が予め記憶されている。また、MFP51の記憶部33には、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4が予め記憶されている。カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4と、MFP51の記憶部33に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4とは、同一の秘密鍵である。これにより、後述するチャレンジ&レスポンス認証を実行することが可能とされている。チャレンジ&レスポンス認証は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kが、正規業者によって製造された正規カートリッジであるか否かを確認するための技術である。
【0024】
MFP51の動作を、図2ないし図6のフローを用いて説明する。図2ないし図6のフローは、MFP51の電源がオン状態である期間中に常に動作するフローである。
【0025】
<カートリッジ交換処理(MFP)>
図2および図3のフローを用いて、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの何れかの交換時に、MFP51側で行われる処理を説明する。S112において、ASIC32は、MFP51の本体カバーが開かれたか否かを判断する。当該判断は、カバーオープンセンサ34の検出結果を監視することによって行われる。本体カバーが開かれていない場合(S112:NO)にはS112へ戻り、本体カバーが開かれた場合(S112:YES)にはS114へ進む。S114において、ASIC32は、取付センサ65C、65M、65Y、65Kによって、カートリッジの取外しおよび取付けが検出されたか否かを判断する。検出されない場合(S114:NO)にはS116へ進み、検出された場合(S114:YES)にはS115へ進む。S115においてASIC32は、MFP記憶テーブルTB11のカートリッジ取付回数121C、121M、121Y、121Kのうち、取外しおよび取付けが検出されたカートリッジについてのカートリッジ取付回数を1カウントアップする。S116において、ASIC32は、MFP51の本体カバーが閉じられたか否かを判断する。本体カバーが閉じられていない場合(S116:NO)にはS114へ戻り、本体カバーが閉じられた場合(S116:YES)にはS118へ進む。
【0026】
S118において、ASIC32は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kのうちの何れかのカートリッジで、取外しおよび取付けが行われたか否かを判断する。当該判断は、カートリッジ取付回数121C、121M、121Y、121Kの更新状態に基づいて行われる。何れのカートリッジでも取外しおよび取付けが行われていない場合(例:単に本体カバーを開閉した場合)(S118:NO)にはS140へ進み、カートリッジの、取外しおよび取付けが行われた場合(S118:YES)にはS120へ進む。
【0027】
S120において、ASIC32は、取付けられたカートリッジを認証対象カートリッジに設定する。認証対象カートリッジは、後述する認証処理の実行対象となるカートリッジである。本実施形態の説明例では、説明の簡略化のために、カートリッジ64Cが認証対象カートリッジに設定された場合の動作例を、以下に説明する。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kが認証対象カートリッジに設定された場合の処理内容も、カートリッジ64Cが認証対象カートリッジに設定された場合の処理内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
S122において、ASIC32は、取付け後の認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)のカートリッジ識別情報211Cを、カートリッジ64Cから読み出す。カートリッジ識別情報211Cは、現在取り付けられているカートリッジの識別情報である。S124において、ASIC32は、取外し前の認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)のカートリッジ識別情報111Cを、MFP記憶テーブルTB11から読み出す。カートリッジ識別情報111Cは、前回取り付けられていたカートリッジの識別情報である。
【0029】
S126において、ASIC32は、S122で取得したカートリッジ識別情報211Cと、S124で取得したカートリッジ識別情報111Cとが一致するか否かを判断する。両情報が一致しない場合(S126:NO)には、取外しおよび取付け動作によってカートリッジ64Cが交換された場合であると判断され、S131へ進む。S131において、ASIC32は、S122で読み出したカートリッジ識別情報211Cを、新たなカートリッジ識別情報111Cとして、MFP記憶テーブルTB11に上書き記憶させる。そして、秘密鍵を選択する動作を実行するために、S132(図3)へ進む。
【0030】
一方、S126において両情報が一致する場合(S126:YES)には、カートリッジ64Cが挿入口61Cから取外された後に、当該取外されたカートリッジ64Cが再び挿入口61Cに取付けられた場合(すなわち、カートリッジ64Cが交換されていない場合)であると判断される。よってS128へ進み、ASIC32は、インク残量情報213Cをカートリッジ64Cから読み出す。
【0031】
S130において、ASIC32は、MFP記憶テーブルTB11から読み出されるインク残量情報113C(前回取り付けられていたカートリッジのインク残量)と、S128でカートリッジ64Cから読み出されるインク残量情報213C(現在取り付けられているカートリッジのインク残量)とが、一致するか否かを判断する。両インク残量情報が一致しない場合(S130:NO)には、他の印刷装置で当該カートリッジ64Cが使用された可能性がある場合であると判断される。よって、秘密鍵を選択する動作(S132、S134)を実行する場合であると判断され、S132(図3)へ進む。一方、両インク残量情報が一致する場合(S130:YES)には、秘密鍵を選択する動作(S132、S134)をスキップして、S140(図3)へ進む。
【0032】
S132(図3)においてASIC32は、MFP記憶テーブルTB11からクリーニング回数122を読み出す。S134において、ASIC32は、読み出したクリーニング回数122に対応する使用秘密鍵を、秘密鍵テーブルTB12に基づいて選択する。具体的には、クリーニング回数122が、クリーニング回数閾値301ないし304の何れの範囲内であるかを判断する。そして、選択した秘密鍵を、使用秘密鍵112CとしてMFP記憶テーブルTB1に上書き記憶する。
【0033】
S140ないしS146において、チャレンジ&レスポンス認証が行われる。図10を用いて、本願で用いられるチャレンジ&レスポンス認証の具体内容を説明する。図10の説明例では、説明の簡略化のために、認証に使用される鍵(使用秘密鍵)として、第1秘密鍵K1が使用される場合を説明する。S140において、ASIC32は、乱数発生部35を用いて乱数を生成する。S141においてASIC32は、使用秘密鍵112C(第1秘密鍵K1)を記憶部33から読み出す。そして、生成した乱数を使用秘密鍵112Cを用いて暗号化し、第1認証情報を算出して記憶部33に一時的に記憶させる。
【0034】
S142において、ASIC32は、生成した乱数と秘密鍵選択情報を、認証対象カートリッジ(カートリッジ64C)へ送信する。秘密鍵選択情報は、MFP51の記憶部33およびカートリッジ64Cの記憶部70Cに共通に記憶されている第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4のうち、何れの秘密鍵を使用秘密鍵として選択するかを、カートリッジ64Cへ報知するための情報である。
【0035】
<カートリッジ側処理>
図4のフローを用いて、カートリッジ64Cで行われる処理を説明する。S212において、制御部69Cは、乱数と秘密鍵選択情報をMFP51本体側から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S212:NO)にはS212へ戻り、受信した場合(S212:YES)にはS214へ進む。S214において、制御部69Cは、秘密鍵選択情報に基づいて、使用秘密鍵(第1秘密鍵K1)を選択する。S216において、制御部69Cは、受信した乱数を使用秘密鍵(第1秘密鍵K1)を用いて暗号化し、第2認証情報を算出する。S218において、制御部69Cは、第2認証情報をMFP51本体側へ送信する。これにより、カートリッジ64C側での処理が完了する。
【0036】
説明をMFP51で行われる処理に戻す。S144(図3)において、ASIC32は、カートリッジ64Cから第2認証情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合(S144:NO)にはS144へ戻り、受信した場合(S144:YES)にはS146へ進む。
【0037】
S146において、ASIC32は、記憶部33に一時的に記憶されている第1認証情報と、カートリッジ64Cから受信した第2認証情報とが一致するか否かを判断する。一致しない場合(S146:NO)には、認証が失敗したとして、S148へ進む。S148においてASIC32は、交換後のカートリッジ64Cが純正品ではない旨、および、純正品のカートリッジに交換必要である旨を、パネル39に表示させる。これにより、純正品でないカートリッジを用いた印刷を実行できない状態とすることができる。
【0038】
一方、S146において両情報が一致する場合(S146:YES)には、認証が成功したとして、S150へ進む。S150において、ASIC32は、スタンバイモード(印刷ジョブを待機するモード)に移行する。そしてフローを終了する。
【0039】
<クリーニング回数の更新処理>
図5のフローを用いて、MFP51で行われる、クリーニング回数122の更新処理を説明する。S312において、ASIC32は、ヘッド部のクリーニングが実施されたか否かを判断する。クリーニングは、クリーニングボタンがユーザにより押下されたことや、予め定められた所定枚数が印刷されたことなどの各種のトリガに応じて実施される。クリーニングが実施されていない場合(S312:NO)にはS312へ戻り、実施された場合(S312:YES)にはS314へ進む。
【0040】
S314において、ASIC32は、クリーニング回数122をMFP記憶テーブルTB11から読み出す。S316において、ASIC32は、読み出したクリーニング回数122を1カウントアップする。S318において、ASIC32は、カウントアップしたクリーニング回数122を、MFP記憶テーブルTB11に上書き記憶する。これにより、更新処理が終了する。
【0041】
なお、履歴情報120に含まれている累積印刷枚数123や累積電源オン時間124などの更新処理も、クリーニング回数122の更新処理と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0042】
<インク残量情報の更新処理>
図6のフローを用いて、MFP51で行われる、インク残量情報113の更新処理を説明する。S412において、ASIC32は、プリンタ19で印刷が実行されたか否かを判断する。印刷が実行された場合(S412:YES)にはS416へ進み、実行されていない場合(S412:NO)にはS414へ進む。S414において、ASIC32は、ヘッド部のクリーニングが実行されたか否かを判断する。クリーニングが実行されていない場合(S414:NO)にはS412へ戻り、実行された場合(S414:YES)にはS416へ進む。
【0043】
S416において、ASIC32は、印刷処理またはクリーニング処理でのインク使用量を、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々についてカウントする。インク使用量は、例えばドットカウントによって取得することができる。S418において、ASIC32は、印刷またはクリーニングが終了したか否かを判断する。終了していない場合(S418:NO)にはS416へ戻り、終了した場合(S418:YES)にはS420へ進む。S420において、ASIC32は、MFP記憶テーブルTB11のインク残量情報113Cないし113Kの各々を更新する。S422においてASIC32は、カートリッジ64Cないし64Kの各々に記憶されているカートリッジ記憶テーブルTB21CないしTB21Kの各々において、インク残量情報213Cないし213Kの各々を更新する。S424において、ASIC32は、スタンバイモードに移行する。そしてフローを終了する。
【0044】
<効果>
以上説明した、本実施形態の説明例に係るMFP51の効果を説明する。本願に記載のMFP51では、ユーザによるMFP51の使用頻度(クリーニング回数)に応じて、使用秘密鍵を自動で変更することができる(S134)。これにより、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4のうちの何れの秘密鍵を使用するかについて、外部からの特定を困難にすることができる。よって、非正規業者によって製造された互換カートリッジが、正規業者によって製造された正規カートリッジとして認識されるような状態の発生を抑制することができるため、MFP51の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0045】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジの取付けが行われたことが検出されることに応じて(S118:Y)、使用秘密鍵を選択する動作(S134)を実行する。これにより、MFP51の使用履歴(クリーニング回数)の値に関わらず、次回のカートリッジの取付けが行われるまでは、当該カートリッジに対する使用秘密鍵を変更しないように制御することができる。よって、ユーザがカートリッジを取外す等の操作を行っていないにも関わらず、突然に印刷等が実行できなくなってしまう等の事態を防止することができる。
【0046】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kのうち、取外しおよび取付けが行われたカートリッジに対してのみ(S120)、使用秘密鍵を選択する動作(S134)が行われる。これにより、複数のカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々について、個別に使用秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0047】
また本願に記載のMFP51では、カートリッジが挿入口から取外された後に、当該取外されたカートリッジが再び取付口に取付けられる場合(すなわち、カートリッジが交換されていない場合)(S126:Y)には、使用秘密鍵を選択する動作(S134)が行われないとすることができる。これにより、不要な使用秘密鍵の変更動作を実行させないように制御することができる。
【0048】
また本願に記載のMFP51では、同一のカートリッジが挿入口から取外されてその後取付けられた場合(S126:Y)に、カートリッジ内のインク残量が変化している場合(S130:NO)には、他の印刷装置で当該カートリッジが使用された可能性があると判断することができる。よって、この場合にも使用秘密鍵を選択する動作(S134)を実行することで、印刷装置の故障等を防止する機能をより正常に働かせることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を説明する。
【0050】
<変形例>
本願に記載のMFP51では、クリーニング回数122を用いて使用秘密鍵を選択する場合(S134)を説明したが、この形態に限られない。MFP51を使用した履歴に関する情報(カートリッジ取付回数121Cないし121K、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124)を用いることによっても、S134において使用秘密鍵を選択する動作を行わせることが可能である。例えば、図11に示す秘密鍵テーブルTB12aを用いる場合には、累積印刷枚数123が、累積印刷枚数閾値301aないし304aの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。また、図12に示す秘密鍵テーブルTB12bを用いる場合には、累積電源オン時間124が、累積電源オン時間閾値301bないし304bの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。
【0051】
また、図13に示す秘密鍵テーブルTB12cを用いる場合には、カートリッジ取付回数121Cないし121Kの各々が、カートリッジ取付回数閾値301cないし304cの何れの範囲内であるかを判断することによって、使用秘密鍵を選択することができる。この場合、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々について、個別に使用秘密鍵を変更する動作を実行することが可能となる。
【0052】
MFP51の記憶部33、およびカートリッジ64C、64M、64Y、64Kに予め記憶される秘密鍵の数は、第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4の4つに限られず、3つ以下または5つ以上であってもよい。
【0053】
使用されるインク種類はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4種類の場合を説明したが、この形態に限られず、3種類以下または5種類以上の場合においても本願の技術を適用可能である。また、カートリッジに収容されている印刷材料はインクに限られず、トナーなどの他の材料であってもよい。
【0054】
ICチップ63C、63M、63Y、63Kは接触式ICであるとしたが、非接触式ICを適用してもよい。
【0055】
第1秘密鍵K1ないし第4秘密鍵K4は複数の秘密鍵の一例である。インクは印刷材料の一例である。挿入口61C、61M、61Y、61Kは取付口の一例である。記憶部33は第1記憶手段の一例である。カートリッジ取付回数121Cないし121K、クリーニング回数122、累積印刷枚数123、累積電源オン時間124は、履歴情報の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第2記憶手段の一例である。使用秘密鍵は特定秘密鍵の一例である。S141を実行するASIC32は第3記憶手段の一例である。秘密鍵選択情報は第1識別情報の一例である。S142を実行するASIC32は送信手段の一例である。S144を実行するASIC32は受信手段の一例である。S150を実行するASIC32は認証手段の一例である。取付センサ65Cないし65Kは検出手段の一例である。カートリッジ識別情報は第2識別情報の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第4記憶手段の一例である。MFP記憶テーブルTB11は第5記憶手段の一例である。クリーニング回数閾値301ないし304は閾値の一例である。
【符号の説明】
【0056】
32:ASIC、33:記憶部、51:MFP、61C、61M、61Y、61K:挿入口、64C、64M、64Y、64K:カートリッジ、121Cないし121K:カートリッジ取付回数、クリーニング回数122、TB11:MFP記憶テーブル、TB12:秘密鍵テーブル、TB21CないしTB21K:カートリッジ記憶テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられた前記カートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、
前記カートリッジに記憶されている前記複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶している第1記憶手段と、
前記印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報に基づいて前記第1記憶手段に記憶されている前記複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された前記特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶手段と、
前記特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、前記第3記憶手段で使用された前記乱数とを前記カートリッジに送信する送信手段と、
前記送信手段で送信した前記乱数を、前記第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいて前記カートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、前記カートリッジから受信する受信手段と、
前記第3記憶手段に記憶されている前記第1認証情報と前記受信手段で受信した前記第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合に前記カートリッジを認証する認証手段と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記カートリッジが前記取付口に取付けられているか否かを検出する検出手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、前記取付口でカートリッジの取付けが行われたことが前記検出手段で検出されることに応じて、前記特定秘密鍵を選択する動作を実行し、
前記第3記憶手段は、前記検出手段でカートリッジの取付けが行われたことを検出し、前記特定秘密鍵を選択してから、新たにカートリッジの取付けが行われたことが前記検出手段で検出されるまでの間は、前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報にかかわらず、当該特定秘密鍵として選択された秘密鍵以外の他の秘密鍵を前記特定秘密鍵として選択しないことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置は、前記取付口を複数備えており、複数の前記カートリッジを装着することが可能とされており、
前記第3記憶手段は、複数の前記取付口に取付けられている複数の前記カートリッジのうち、カートリッジの取付けが行われた取付口に取付けられているカートリッジに対して、特定秘密鍵を選択する動作を実行することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記カートリッジごとに固有な情報であって当該カートリッジを識別することができる第2識別情報を、前記取付口に取付けられているカートリッジから受信して記憶する第4記憶手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、前記第4記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの第2識別情報と、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する第2識別情報と、が一致する場合には、カートリッジの取外し前に前記特定秘密鍵として選択されていた秘密鍵以外の他の秘密鍵を前記特定秘密鍵として選択しないことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記取付口に取付けられているカートリッジに収容されている印刷材料の残量に関する残量情報を、前記取付口に取付けられているカートリッジから受信して記憶する第5記憶手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、
前記第4記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの第2識別情報と、前記受信手段によって受信される、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する第2識別情報と、が一致する場合において、
前記第5記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの残量情報と、前記受信手段によって受信される、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する残量情報と、が一致しない場合には、特定秘密鍵を選択する動作を新たに実行することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記履歴情報は、前記印刷装置で行なわれる所定動作の回数のカウント値であり、
前記第3記憶手段は、前記カウント値が予め定められた少なくとも1つの閾値を越えることに応じて、前記複数の秘密鍵の中からそれまで使用していた前記特定秘密鍵と異なる秘密鍵を新たな特定秘密鍵として選択することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記印刷装置で行なわれるクリーニングの回数、前記取付口への前記カートリッジの取付けの回数、前記印刷装置で印刷が行なわれた枚数、前記印刷装置の稼働時間、の少なくとも何れか1つをカウントするものであることを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられた前記カートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置の制御方法であって、
前記カートリッジに記憶されている前記複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶する第1記憶ステップと、
前記印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶ステップと、
前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報に基づいて前記第1記憶手段に記憶されている前記複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された前記特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶ステップと、
前記特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、前記第3記憶手段で使用された前記乱数とを前記カートリッジに送信する送信ステップと、
前記送信手段で送信した前記乱数を、前記第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいて前記カートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、前記カートリッジから受信する受信ステップと、
前記第3記憶手段に記憶されている前記第1認証情報と前記受信手段で受信した前記第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合に前記カートリッジを認証する認証ステップと、
を備える印刷装置の制御方法。
【請求項1】
複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられた前記カートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置であって、
前記カートリッジに記憶されている前記複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶している第1記憶手段と、
前記印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報に基づいて前記第1記憶手段に記憶されている前記複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された前記特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶手段と、
前記特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、前記第3記憶手段で使用された前記乱数とを前記カートリッジに送信する送信手段と、
前記送信手段で送信した前記乱数を、前記第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいて前記カートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、前記カートリッジから受信する受信手段と、
前記第3記憶手段に記憶されている前記第1認証情報と前記受信手段で受信した前記第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合に前記カートリッジを認証する認証手段と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記カートリッジが前記取付口に取付けられているか否かを検出する検出手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、前記取付口でカートリッジの取付けが行われたことが前記検出手段で検出されることに応じて、前記特定秘密鍵を選択する動作を実行し、
前記第3記憶手段は、前記検出手段でカートリッジの取付けが行われたことを検出し、前記特定秘密鍵を選択してから、新たにカートリッジの取付けが行われたことが前記検出手段で検出されるまでの間は、前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報にかかわらず、当該特定秘密鍵として選択された秘密鍵以外の他の秘密鍵を前記特定秘密鍵として選択しないことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置は、前記取付口を複数備えており、複数の前記カートリッジを装着することが可能とされており、
前記第3記憶手段は、複数の前記取付口に取付けられている複数の前記カートリッジのうち、カートリッジの取付けが行われた取付口に取付けられているカートリッジに対して、特定秘密鍵を選択する動作を実行することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記カートリッジごとに固有な情報であって当該カートリッジを識別することができる第2識別情報を、前記取付口に取付けられているカートリッジから受信して記憶する第4記憶手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、前記第4記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの第2識別情報と、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する第2識別情報と、が一致する場合には、カートリッジの取外し前に前記特定秘密鍵として選択されていた秘密鍵以外の他の秘密鍵を前記特定秘密鍵として選択しないことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記取付口に取付けられているカートリッジに収容されている印刷材料の残量に関する残量情報を、前記取付口に取付けられているカートリッジから受信して記憶する第5記憶手段をさらに備え、
前記第3記憶手段は、
前記第4記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの第2識別情報と、前記受信手段によって受信される、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する第2識別情報と、が一致する場合において、
前記第5記憶手段に記憶されている、カートリッジの取外し前に前記取付口に取付けられていたカートリッジの残量情報と、前記受信手段によって受信される、カートリッジの取付けが行われた後に前記取付口に取付けられているカートリッジから受信する残量情報と、が一致しない場合には、特定秘密鍵を選択する動作を新たに実行することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記履歴情報は、前記印刷装置で行なわれる所定動作の回数のカウント値であり、
前記第3記憶手段は、前記カウント値が予め定められた少なくとも1つの閾値を越えることに応じて、前記複数の秘密鍵の中からそれまで使用していた前記特定秘密鍵と異なる秘密鍵を新たな特定秘密鍵として選択することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記印刷装置で行なわれるクリーニングの回数、前記取付口への前記カートリッジの取付けの回数、前記印刷装置で印刷が行なわれた枚数、前記印刷装置の稼働時間、の少なくとも何れか1つをカウントするものであることを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
複数の秘密鍵が記憶されているカートリッジを取付けおよび取外し可能な取付口を少なくとも1つ備えており、取付けられた前記カートリッジに収容されている印刷材料を用いて被記録媒体に印刷を行う印刷装置の制御方法であって、
前記カートリッジに記憶されている前記複数の秘密鍵と同一の複数の秘密鍵を記憶する第1記憶ステップと、
前記印刷装置を使用した履歴に関する履歴情報を記憶する第2記憶ステップと、
前記第2記憶手段に記憶されている前記履歴情報に基づいて前記第1記憶手段に記憶されている前記複数の秘密鍵の中から1つの特定秘密鍵を選択し、選択された前記特定秘密鍵に基づいて乱数を暗号化して生成した第1認証情報を記憶する第3記憶ステップと、
前記特定秘密鍵を識別する第1識別情報と、前記第3記憶手段で使用された前記乱数とを前記カートリッジに送信する送信ステップと、
前記送信手段で送信した前記乱数を、前記第1識別情報で識別される秘密鍵に基づいて前記カートリッジ側で暗号化して生成した第2認証情報を、前記カートリッジから受信する受信ステップと、
前記第3記憶手段に記憶されている前記第1認証情報と前記受信手段で受信した前記第2認証情報とを比較し、両者が一致する場合に前記カートリッジを認証する認証ステップと、
を備える印刷装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−62780(P2013−62780A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201721(P2011−201721)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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