説明

印刷装置および端末装置

【課題】印刷装置自体に起因しないエラーの発生時に、印刷可能な印刷対象の印刷が滞ることを防止することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置では、外部機器から印刷データが受信され(S1:YES)、RAMに記憶される。印刷装置の状態を示す装置情報が取得される(S2)。装置情報に基づき、印刷装置自体に起因するプリンタ側エラーが生じているか否かが判断される(S3)。プリンタ側エラーがなければ(S3:NO)、印刷データと装置情報に基づき、印刷データが示す印刷条件が現在の印刷装置の状態に適合するか否か、つまり、現在の印刷装置の状態で印刷可能なデータか否かが判断される(S6)。印刷可能なデータでなければ(S6:NO)、印刷データの送信元にエラー通知が送信され(S7)、所定時間内に印刷可能な状態にならなければ(S15:NO、S11:YES)、印刷データが削除される(S17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器から送信された印刷のためのデータに基づいて印刷を行う印刷装置、および印刷装置に接続して印刷装置に印刷を指示する端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク等を介して複数のパーソナルコンピュータ等の外部機器に接続可能であって、これらの外部機器から指示された印刷ジョブに従って印刷を行う印刷装置が普及している。かかる状況下で、ある印刷ジョブの処理中に何らかの原因で印刷装置にエラーが発生し、印刷が不可能な状態になると、エラーが解除されない限り、その印刷ジョブのみならず、その後に印刷したい他の印刷ジョブまで待たされる状態が継続してしまう。そこで、印刷装置にエラーが発生した場合、エラー発生時に処理していたプリントデータの送信元のホスト等に対してエラー情報を送信するプリンタシステムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−305334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のプリントシステムでは、エラーの発生についてホストに対する通知は行われるが、エラーの原因にかかわらず、エラーが解除されるまで、印刷は行われない。しかしながら、そのエラーが、印刷装置自体に起因するエラーではなく、他の原因に起因する場合、印刷装置自体は印刷可能である。つまり、ある印刷ジョブが原因でエラーが発生している場合、他の印刷ジョブは処理可能な場合でも、一律で待たされることになる。
【0005】
本発明は、印刷装置自体に起因しないエラーの発生時に、印刷可能な印刷対象の印刷が滞ることを防止することが可能な印刷装置を提供することを1つの目的とする。また、印刷装置に印刷を指示する場合に、印刷装置自体に起因しないエラーを防止することが可能な端末装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る印刷装置は、複数の外部機器に接続可能な印刷装置であって、印刷手段と、第一データ取得手段と、第一装置情報取得手段と、第一装置判断手段と、第一適合判断手段と、印刷制御手段と、第一データ処理手段とを備えている。前記印刷手段は、印刷媒体に印刷を行う。前記第一データ取得手段は、外部機器から送信された、印刷対象を印刷するためのデータを取得する。前記第一装置情報取得手段は、前記印刷装置自体の状態を示す情報である装置情報を取得する。前記第一装置判断手段は、前記装置情報に基づき、前記印刷装置自体に起因するエラーが生じているか否かを判断する。前記第一適合判断手段は、前記データおよび前記装置情報に基づき、前記印刷対象を印刷するための条件が前記状態に適合するか否かを判断する。前記印刷制御手段は、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合すると判断された場合に、前記データに基づき前記印刷対象を前記印刷手段に印刷させる。前記第一データ処理手段は、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除する、または、前記印刷対象の印刷順を繰り下げるために前記データを第一記憶手段に記憶する。
【0007】
第一態様に係る印刷装置によれば、印刷装置自体に起因しないエラーの発生時、すなわち外部機器から送信されたデータが印刷装置の状態に適合しない場合に、印刷装置自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、他の印刷可能な印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。
【0008】
本発明の第二態様に係る端末装置は、他の端末装置および印刷装置に接続可能な端末装置であって、第二データ取得手段と、第二装置情報取得手段と、第二装置判断手段と、第二適合判断手段と、データ送信手段と、第二データ処理手段とを備えている。前記第二データ取得手段は、印刷対象を印刷するためのデータを取得する。前記第二装置情報取得手段は、前記印刷装置から、前記印刷装置自体の状態を示す情報である装置情報を取得する。前記第二装置判断手段は、前記装置情報に基づき、前記印刷装置自体に起因するエラーが生じているか否かを判断する。前記第二適合判断手段は、前記データおよび前記装置情報に基づき、前記印刷対象を印刷するための条件が前記状態に適合するか否かを判断する。前記データ送信手段は、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合すると判断された場合に、前記データを前記印刷装置に送信する。前記第二データ処理手段は、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除する、または、前記印刷対象の印刷順を繰り下げるために前記データを第二記憶手段に記憶する。
【0009】
第二態様に係る端末装置によれば、印刷装置自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、印刷装置の状態に適合しないデータを印刷装置に送信してしまうことで、他の印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。つまり、印刷装置に印刷を指示する場合に、印刷装置自体に起因しないエラーを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】印刷装置1およびテープカセット30の外観図である。
【図2】印刷装置1およびPC3の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第一実施形態における印刷装置1のメイン処理のフローチャートである。
【図4】第二実施形態における印刷装置1のメイン処理のフローチャートである。
【図5】第二実施形態における印刷装置1のメイン処理のフローチャートであって、図4の続きである。
【図6】第三実施形態におけるパーソナルコンピュータ3の印刷データ送信処理のフローチャートである。
【図7】第三実施形態における印刷装置1のメイン処理のフローチャートである。
【図8】第四実施形態におけるパーソナルコンピュータ3の印刷データ送信処理のフローチャートである。
【図9】第四実施形態におけるパーソナルコンピュータ3の印刷データ送信処理のフローチャートであって、図8の続きである。
【図10】第四実施形態における印刷装置1のメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。
<第一実施形態>
以下に、図1〜図3を参照して、第1実施形態について説明する。まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る印刷装置1の構成について説明する。印刷装置1は、テープカセット30が着脱可能に構成され、テープカセット30のケース内に収納された長尺状のテープ31に印刷を行い、貼付可能なラベルを作成することが可能なラベルプリンタである。また、印刷装置1は、外部機器と接続可能に構成されており、外部機器から送信された印刷指令に基づき、テープ31に印刷を行う。
【0012】
図1を参照して、印刷装置1の概略構成について説明する。図1に示すように、印刷装置1の本体部51内部には、テープカセット30が着脱される領域であるカセット装着部52が設けられている。本体部51の上面には、カセット装着部52を開閉するためのカバー53が設けられている。カセット装着部52には、カバー53が適切に閉じられたか否かを検出するカバーセンサ20(図2参照)が設けられている。
【0013】
カセット装着部52には、サーマルヘッド25(図2参照)を搭載したヘッドホルダ61が設けられている。ヘッドホルダ61に対向して、アーム状のプラテンホルダ64が回動可能に軸支されている。プラテンホルダ64には、プラテンローラ65と、カセットセンサ21(図2参照)が設けられている。詳細は図示しないが、カセットセンサ21は、ヘッドホルダ61の方向へ突出する複数の検出スイッチを含む。一方、テープカセット30は、カセット装着部52に装着された場合にプラテンホルダ64に対向するケースの前面に、テープカセット30の種類に応じて定められたパターンで形成されたスイッチ孔を含む指標部を有する。カセットセンサ21は、指標部に対向した各スイッチのON/OFF信号を出力する。なお、本実施形態では、テープカセット30の種類としてテープ幅が検出されるものとする。
【0014】
テープカセット30がカセット装着部52に装着され、カバー53が適切に閉じられると、カバーセンサ20がこれを検出してON信号を出力する。カバー53の動きと連動して、プラテンホルダ64がヘッドホルダ61に向けて回動する。これにより、プラテンローラ65は、テープ31およびインクリボンをサーマルヘッド25に対して押圧し、印刷可能な状態とする。また、カセットセンサ21によって、指標部におけるスイッチ孔の形成パターンに応じて、ON/OFF信号が出力される。印刷装置1では、このON/OFF信号の組合せに基づいて、テープカセット30がカセット装着部52に適切に装着されているか否か、および、テープカセット30の種類が特定される。その後、印刷が指示されると、印刷が実行される。
【0015】
図2を参照して、印刷装置1の電気的構成について説明する。図2に示すように、印刷装置1は、CPU11、ROM12、RAM13、フラッシュROM14、およびタイマ15を備えている。これらは相互にバスで接続されている。CPU11は、印刷装置1全体の制御を司る。ROM12には、後述するメイン処理用のプログラム等、印刷装置1の制御に必要な各種のプログラムと、これらのプログラムに必要な制御データ等が記憶されている。CPU11は、ROM12に記憶されたプログラムに従って、各種の演算、制御処理を行う。また、ROM12には、多数のキャラクタ(文字、数字、記号等)の各々について、キャラクタの輪郭線を規定するフォントデータが記憶されている。フォントデータは、複数の書体(ゴシック系書体、明朝系書体等)について、書体毎に分類され、コードデータに対応付けて記憶されている。RAM13には、CPU11による各種の演算結果等が一時的に記憶される。RAM13には、例えば、外部機器から送信されたデータが記憶される。フラッシュROM14は、不揮発性メモリであり、各種の情報が記憶される。
【0016】
CPU11には入出力インタフェイス17が接続されている。入出力インタフェイス17には、カバーセンサ20、カセットセンサ21、駆動回路22〜24、LANインタフェイス(I/F)28、およびUSBインタフェイス(I/F)29が接続されている。カバーセンサ20は、カバー53(図1参照)が適切に閉じられている場合にはON信号を出力し、カバー53が適切に閉じられていない場合にはOFF信号を出力する。カセットセンサ21は、複数の検出スイッチが夫々押されたか否かを示すON/OFF信号の組合せを出力する。駆動回路22〜24には、夫々、テープ31への印刷を行うサーマルヘッド25(図1参照)、テープ31およびインクリボンを搬送するためのテープ駆動軸およびリボン巻取軸(図示略)を回転駆動するテープ送りモータ26、および印刷済みのテープ31を切断する可動刃(図示略)を上下駆動するカッタモータ27が接続されている。
【0017】
LANI/F28には、LAN(Local Area Network)接続のためのLANコネクタ(図示略)が接続されている。印刷装置1は、LANI/F28、LANコネクタ、ケーブルを介してLAN2に接続し、LAN2を介してパーソナルコンピュータ(以下、PCという)3等の外部機器に接続することができる。LAN接続されたPC3は、印刷装置1に対して印刷指令を送信することができる。なお、LAN2に接続しているPC3が複数ある場合、そのうちの一台をサーバとして使用することができる。この場合は、クライアント端末であるその他のPC3(以下、クライアントPC3という)は、ホスト端末であるPC3(以下、ホストPC3という)に対して印刷指令を送信し、ホストPC3が印刷装置1に対して印刷指令を送信する。
【0018】
USBI/F29には、USB(Universal Serial Bus)接続のためのUSBコネクタ(図示略)が接続されている。印刷装置1は、USBI/F29、USBコネクタ、ケーブルを介して、PC3等の外部機器に接続することができる。よって、USB接続されたPC3は、印刷装置1に対して印刷指令を送信することができる。なお、印刷装置1にはPC3以外にバーコードリーダ等の外部機器も接続可能であるが、以下の実施形態の処理については、PC3を例として説明する。
【0019】
図2を参照して、印刷装置1に接続されるPC3の電気的構成について説明する。なお、ホストPC3もクライアントPC3も、構成は同一である。図2に示すように、PC3は、汎用型の端末装置であり、CPU301、ROM302、RAM303、およびタイマ304を備えている。これらは相互にバスで接続されている。CPU301には入出力インタフェイス310が接続されている。入出力インタフェイス301には、ハードディスク装置(HDD)311、LANI/F321、USBI/F322、マウス331、キーボード332、ディスプレイ333が接続されている。
【0020】
CPU301は、PC3全体の制御を司る。ROM302には、PC3の制御に必要な各種のプログラムと、これらのプログラムに必要な制御データ等が記憶されている。CPU301は、ROM302またはHDD311に記憶されたプログラムに従って、各種の演算、制御処理を行う。RAM303には、CPU301による各種の演算結果等が一時的に記憶される。RAM303には、例えば、クライアントPC3等の外部機器から送信されたデータが記憶される。記憶装置であるHDD311には、PC3で実行される各種のプログラムや各種の情報が記憶される。
【0021】
PC3は、印刷装置1と同様、LANI/F321を介してLAN2に接続可能である。よって、PC3は、LAN2を介して印刷装置1や他のPC3等の外部機器に可能である。また、PC3は、USBI/F322を介して印刷装置1等の外部機器に接続可能である。マウス331およびキーボード332は入力機器であり、ユーザは、これらを用いて様々な指示や情報をPC3に入力できる。ディスプレイ333は各種情報を表示する表示機器である。
【0022】
図3を参照して、本実施形態の印刷装置1で実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、印刷装置1の電源がONにされるとROM12に記憶されたプログラムが起動されることで開始され、電源がOFFにされるまで、CPU11によって継続して実行される。CPU11は、LAN接続またはUSB接続されているいずれかのPC3から、印刷指令とともに印刷データを受信したか否かを判断する(S1)。ここでいう印刷データとは、例えば、PC3でプリンタドライバにより作成された、印刷装置1が受信してサーマルヘッド25で印刷を行うことができる形式のドットパターンデータである。印刷データを受信しない間は(S1:NO)、CPU11は待機する。印刷データを受信すると(S1:YES)、CPU11は、受信した印刷データを、送信元のPC3の識別情報と共にRAM12の所定の記憶エリアに記憶させる。
【0023】
続いて、CPU11は、印刷装置1の状態を示す情報(以下、装置情報という)を取得する(S2)。本実施形態では、装置情報として、カバーセンサ20やカセットセンサ21からの出力信号が取得される。カバーセンサ20からの出力信号は、カバー53が適切に閉じられているか否かを示す情報である。カセットセンサ21からの出力信号は、テープカセット30の装着状態や、装着されているテープカセット30の種類(テープ幅)を示す情報である。CPU11は、取得された装置情報に基づいて、印刷装置1自体に起因するエラー(以下、プリンタ側エラーという)が生じているか否かを判断する(S2)。プリンタ側エラーには、例えば、カバー53(図1参照)が開いている状態や、カセット装着部52(図1参照)にテープカセット30が適切に装着されていない状態(全く装着されていない状態を含む)がある。よって、プリンタ側エラーがある場合、印刷装置1は印刷を実行できない状態にある。
【0024】
プリンタ側エラーが生じている場合(S3:YES)、CPU11は、印刷データの送信元のPC3に対して、プリンタ側エラーにより印刷実行が不可能であることを示すエラー通知を送信し(S4)、ステップS3の処理に戻る。通知を受けたPC3のユーザは、印刷装置1に何らかの不具合があることを知ることができる。よって、ユーザは、印刷装置1の状態を調べ、プリンタ側エラーを解除する措置を講じることができる。プリンタ側エラーが解消された場合、または、元々プリンタ側エラーは生じていない場合(S3:NO)、CPU11は、ステップS1で受信した印刷データを解析する(S5)。より具体的には、印刷データの解析により、その印刷データが示す印刷条件が特定される。本実施形態では、印刷データが示す印刷条件として、テープ幅が特定されるものとする。
【0025】
続いて、印刷データが示す印刷条件が、現在の印刷装置1の状態に適合しているか、つまり、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データか否かが判断される(S6)。印刷装置1の状態は、ステップS2で取得された装置情報から特定することができる。本実施形態では、印刷装置1の状態として、印刷装置1に装着されているテープカセット30の種類(テープ幅)が特定される。そして、印刷データが示すテープ幅が、印刷装置1に装着されているテープカセット30のテープ幅と一致するか否かが判断される。両者が一致すれば、その印刷データに基づく印刷が可能なので(S6:YES)、印刷が実行される(S16)。具体的には、CPU11は、印刷データに従い、駆動回路22および23を制御することで、サーマルヘッド25およびテープ送りモータ26の動作を制御し、テープ31やインクリボンを搬送しながらテープ31への印刷を行う。また、駆動回路24を制御することで、カッタモータ27の動作を制御し、印刷後のテープ31を所定位置で切断する。印刷が完了すると、処理はステップS1に戻る。
【0026】
一方、印刷データが示すテープ幅が、印刷装置1に装着されているテープカセット30のテープ幅と一致しない場合、印刷装置1自体は印刷可能な状態にあるが、印刷データに起因するエラー(以下、データ側エラーという)が生じている状態である。このように、印刷可能なデータでないと判断された場合(S6:NO)、CPU11は、RAM12に印刷データと共に記憶されている識別情報に基づき、印刷データの送信元のPC3に対して、データ側エラーにより印刷実行が不可能であることを示すエラー通知を送信する(S7)。また、タイマ15(図2参照)を用いて、エラー通知送信からの経過時間の計測を開始する。
【0027】
CPU11は、エラー通知送信から所定時間が経過していない間は(S11:NO)、ステップS2と同様に装置情報を取得し(S12)、ステップS3と同様、プリンタ側エラーが生じているか否かを判断する(S13)。プリンタ側エラーがあれば(S13:YES)、エラー通知を送信する(S14)。プリンタ側エラーがなければ(S13:NO)、印刷可能な状態になったか否かを判断する(S15)。つまり、印刷装置1が、印刷データが示す印刷条件に適合する状態になったか否かが判断される。印刷可能な状態になっていなければ(S15:NO)、処理はステップS11に戻る。
【0028】
前述したように、データ側エラーは送信元のPC3に通知されるので、そのPC3のユーザは、印刷装置1に装着されているテープカセット30のテープ幅が適切でないことを知ることができる。よって、ユーザは、印刷装置1に装着されていたテープカセット30を取り外し、所望のテープ幅のテープカセット30に入れ替えることができる。この場合は、ステップS12で取得される装置情報から、テープ幅が適切なものに変化したことが認識され、印刷可能となったと判断される(S15:YES)。よって、印刷が実行される(S16)。印刷が完了すると、処理はステップS1に戻る。
【0029】
一方、テープカセット30が交換されないまま所定時間が経過すると(S11:YES)、CPU11は、RAM12に記憶されていた印刷データを削除した後(S17)、ステップS1の処理に戻り、印刷データの受信を待つ。
【0030】
以上に説明したように、第一実施形態の印刷装置1では、外部機器であるPC3から印刷データが受信され、RAM12に記憶される。そして、カバーセンサ20およびカセットセンサ21からの出力信号が、装置情報として取得される。装置情報から、プリンタ側エラーは生じていないと判断され、更に、印刷データと装置情報から、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データであると判断された場合は、サーマルヘッド25を用いて印刷が実行される。一方、プリンタ側エラーは生じていないが、印刷データが示す印刷条件が現在の印刷装置1の状態に適合しないと判断された場合は、その印刷データはRAM12から削除される。
【0031】
つまり、データ側エラーが生じている場合、印刷データが削除されることで、エラーが解消される。従って、印刷装置1自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、印刷条件が適合しない印刷データのせいで、他の印刷可能な印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。また、所定時間が経過してもデータ側エラーが解消されない場合に印刷データが削除されるので、ユーザは、所定時間内に、印刷条件と印刷装置1の状態が適合するように、印刷装置1に装着されているテープカセット30を適切なものに交換する等の措置を取ることができる。また、プリンタ側エラーが生じている場合、データ側エラーが生じている場合のいずれについても、印刷データの送信元のPC3にエラー内容を示す通知が送信されるので、ユーザは、その理由に応じてエラーを解除する措置を講じることができる。
【0032】
データ側エラーの最も代表的な例は、前述したような印刷媒体の種類(本実施形態ではテープ幅)の不適合である。従って、装置情報として、印刷装置1にセットされている印刷媒体の種類を取得し、印刷条件が示す印刷媒体の種類と合致するか否かを判断して処理することで、このような代表的なデータ側エラーを解消することができる。
【0033】
第一実施形態では、印刷装置1のサーマルヘッド25が、本発明の「印刷手段」に相当する。図3のステップS1で印刷データを受信する処理を行うCPU11が、「第一データ取得手段」に相当する。ステップS2、ステップS12で装置情報を取得するCPU11が、「第一装置情報取得手段」に相当する。ステップS3、S13でプリンタ側エラーの判断を行うCPU11が、「第一装置判断手段」に相当する。ステップS6、S15で印刷条件が装置の状態と適合するか否か判断するCPU11が、「第一適合判断手段」に相当する。ステップS16で印刷を実行する処理を行うCPU11が、「印刷制御手段」に相当する。S17で印刷データを削除するCPU11が、「第一データ処理手段」に相当する。
【0034】
<第二実施形態>
以下に、図4および図5を参照して、第二実施形態について説明する。第二実施形態の印刷装置1の構成は第一実施形態と同一であるため、説明は省略する。第二実施形態におけるメイン処理は、第一実施形態と一部が同一で、一部が異なっている。よって、以下では、第一実施形態と同一の処理の説明は省略し、異なる処理について説明する。第二実施形態では、印刷条件が印刷装置1の状態に適合しない場合に、印刷データが削除される代わりに、印刷順を繰り下げる処理が行われる。なお、図4および図5では、図3に示す第一実施形態の処理と同一の処理が行われるステップには、同一のステップ番号が付されている。
【0035】
図4に示すように、第二実施形態のメイン処理でも、第一実施形態と同様、印刷データが受信されると、装置情報が取得され、プリンタ側エラーの有無に応じた処理が行われる(S1〜S5)。印刷データの解析の結果、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データであると判断された場合には(S6:YES)、印刷データに基づく印刷処理が実行された後(S16)、処理は後述するステップS24(図5参照)に移行する。また、印刷可能なデータでないと判断された場合には(S6:NO)、送信元のPC3にデータ側エラーが通知された後(S7)、フラッシュROM14(図2参照)に確保された退避用メモリに空きがあるか否かが判断される(S21)。退避用メモリ(以下、単にメモリという)は、印刷装置1の状態に適合しない印刷データの印刷順を繰り下げるために、印刷データを一時的に記憶する記憶エリアである。なお、本実施形態では、メモリに退避される印刷データの数は三つであるものとするが、三未満または四以上の印刷データが退避可能に構成されてもよい。
【0036】
メモリに空きがあれば(S21:YES)、CPU11は、ステップS1で受信され、RAM12に記憶されていた印刷データとその送信元のPC3の識別情報をメモリに記憶させる(S23)。また、退避時刻として、その時点の時刻もあわせて記憶される。メモリに空きがない場合は(S21:NO)、CPU11は、退避時刻に基づき、メモリに記憶されている印刷データのうち、最も古い印刷データを削除してメモリに空きを作り(S22)、ステップS1で受信した印刷データ、その送信元のPC3の識別情報、および退避時刻を記憶させる(S23)。
【0037】
図5に示すように、ステップS24では、メモリに印刷データが記憶されているか否かが判断される。メモリに退避されている印刷データがあれば(S24:YES)、CPU11は、そのうちで最も古い印刷データを処理対象として取得する。また、CPU11は、新たに装置情報を取得する(S25)。そして、取得された装置情報に基づき、プリンタ側エラーが生じているか否かを判断する(S26)。プリンタ側エラーがあれば(S26:YES)、エラー通知を送信する(S27)。プリンタ側エラーがなければ(S26:NO)、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データか否かを判断する(S28)。つまり、印刷データが示す印刷条件に適合する印刷装置1の状態であるか否かが判断される。印刷可能な印刷データであれば(S28:YES)、その印刷データに基づいて印刷が実行される(S33)。このとき印刷が実行された印刷データは、メモリから削除される。
【0038】
その後、まだメモリに記憶されている印刷データがあるか否か、つまり、前述のステップS23の処理で印刷順が繰り下げられ、印刷を待っている送信元のPC3があるか否かが判断される(S34)。印刷を待っている送信元のPC3がない場合は(S34:NO)、処理はそのままステップS24に戻る。印刷を待っている送信元のPC3があれば(S34:YES)、メモリに記憶された識別情報に基づき、そのPC3に現在の印刷状況を示す通知を送信する(S35)。この通知では、例えば、現在、他の印刷データを印刷中であること、印刷待ちの印刷データの数、および、そのPC3の送信した印刷データの印刷順(例えば、二番目)を示す情報が通知される。これにより、印刷順が繰り下げられ、メモリに退避されている印刷データの送信元のPC3のユーザは、自分の印刷データに起因するデータ側エラーの解除措置を講じる適切なタイミングを知ることができる。印刷状況の通知後(S35)、処理はステップS24に戻る。
【0039】
ステップS24では、まだメモリ内に記憶されている印刷データがあれば(S24:YES)、同様に、装置情報が取得され、エラーの判断が行われる(S25〜S28)。処理対象の印刷データが印刷可能でなければ(S28:NO)、ステップS7(図4参照)と同様、送信元のPC3に対してデータ側エラーの通知が送信される(S29)。そして、新たに装置情報が取得される(S30)。取得された装置情報から、直前に装置情報が取得された時点(S25)から、印刷装置1の状態に変化があったか否かが判断される(S31)。状態に変化が生じるのは、例えば、テープカセット30が別の種類のテープカセット30に交換された場合である。状態に変化があったと判断された場合(S31:YES)、処理はステップS28に戻り、再び、その印刷データは現在の印刷装置1の状態で印刷可能か否かが判断される。そして、印刷可能になっていれば(S28:YES)、前述のステップS33〜S35の処理が行われ、依然として印刷可能でなければ(S28:NO)、ステップS29〜S31の処理が行われる。
【0040】
印刷装置1の状態に変化がなければ(S31:NO)、CPU11は、接続中のいずれかのPC3から、他の印刷データを受信したか否かを判断する(S32)。他の印刷データを受信していなければ(S32:NO)、CPU11は、ステップS31に戻り、印刷装置1の状態に変化があったか否かを判断する。他の印刷データを受信した場合(S32:YES)、処理は図4に示すステップS3に戻り、CPU11は、プリンタ側エラーの有無を判断する。その後の処理は、前述した通りである。以上の処理で、メモリに退避されていた印刷データが全て印刷可能となって順次印刷が実行されると、メモリに記憶された印刷データはなくなる(S24:NO)。この場合、処理は図4に示すステップS1に戻り、CPU11は、新たな印刷データの受信を待つ。
【0041】
以上に説明したように、第二実施形態の印刷装置1では、外部機器であるPC3から印刷データが受信され、RAM12に記憶される。そして、カバーセンサ20およびカセットセンサ21からの出力信号が、装置情報として取得される。装置情報から、プリンタ側エラーは生じていないと判断され、更に、印刷データと装置情報から、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データであると判断された場合は、サーマルヘッド25を用いて印刷が実行される。一方、プリンタ側エラーは生じていないが、印刷データが示す印刷条件が現在の印刷装置1の状態に適合しないと判断された場合は、その印刷データはフラッシュROM14の退避用メモリに記憶され、印刷順が繰り下げられる。
【0042】
従って、第二実施形態でも、印刷装置1自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、印刷条件が適合しない印刷データのせいで、他の印刷可能な印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。また、退避されていた印刷データの印刷順が最初となった場合、装置情報が新たに取得され、印刷可能か否かの判断が再度行われるので、印刷対象の印刷順が繰り下げられた後、印刷順が再び最初になった時点で、印刷条件と印刷装置の状態が適合していれば、印刷が行われることになる。従って、ユーザは、印刷順が繰り下げられている間に両者が適合するように何らかの措置を取ることができる。
【0043】
第二実施形態では、図4のステップS1の処理を行うCPU11が、「第一データ取得手段」に相当する。図4のステップS2、図5のステップS25で装置情報を取得するCPU11が、「第一装置情報取得手段」に相当する。図4のステップS3、図5のS26でプリンタ側エラーの判断を行うCPU11が、「第一装置判断手段」に相当する。図4のステップS6、図5のS28で印刷条件が装置の状態と適合するか否か判断するCPU11が、「第一適合判断手段」に相当する。図4のステップS16、図5のステップS33で印刷を実行する処理を行うCPU11が、「印刷制御手段」に相当する。図4のS23で印刷データを「第一記憶手段」に相当するフラッシュROM14に記憶させるCPU11が、「第一データ処理手段」に相当する。
【0044】
<第三実施形態>
以下に、図6および図7を参照して、第三実施形態について説明する。第三実施形態では、印刷装置1に接続されたホストPC3において、第一実施形態と同様の処理が行われる。第三実施形態の印刷装置1およびホストPC3の構成は図2を参照して説明した通りであるため、ここでの説明は省略する。また、以下では、第一実施形態と同一の処理の説明は簡略化しながら、第三実施形態の処理について説明する。
【0045】
まず、図6を参照して、第三実施形態においてホストPC3で行われる印刷データ送信処理について説明する。この処理は、ホストPC3でHDD311(図2参照)に記憶されたプログラムが起動されることで開始され、プログラムの終了指示が入力されるまで、CPU301によって継続して実行される。
【0046】
ホストPC3のCPU301は、印刷データを取得するまで待機する(S101:NO、S101)。ホストPC3は、ホストPC3内で作成された印刷データに加え、LAN2を介して接続されたいずれかのクライアントPC3から送信された印刷データについても、印刷装置1に印刷を指示することができる。よって、ホストPC3内で作成された印刷データの印刷指示が入力された場合、または、他のクライアントPC3から印刷データが受信された場合に、印刷データが取得され、RAM302の所定の記憶エリアに記憶される(S101:YES)。なお、印刷データが他のクライアントPC3から送信されたものであれば、送信元の識別情報が合わせて記憶される。
【0047】
CPU301は、印刷装置1に対して、装置情報の送信を要求する(S102)。要求に応じて、印刷装置1から装置情報が送信されると、CPU301はこれを受信し、RAM302に記憶させる(S103)。CPU301は、装置情報に基づき、印刷装置1にプリンタ側エラーが生じているか否かを判断する(S104)。プリンタ側エラーが生じている場合(S104:YES)、CPU301は、印刷データがホストPC3内で作成されたものであれば、ディスプレイ333に、プリンタ側エラーにより印刷が実行できないことを示すメッセージを表示させる(S105)。また、印刷データが他のクライアントPC3から送信されたものであれば、そのクライアントPC3に、プリンタ側エラーにより印刷が実行できないことを示す通知を送信する(S105)。
【0048】
プリンタ側エラーが生じていなければ(S104:NO)、CPU301は印刷データを解析し(S106)、現在の印刷装置1の状態に印刷条件が適合する、印刷可能な印刷データか否かを判断する(S107)。印刷可能であれば(S107:YES)、CPU301は印刷装置1に印刷指令と共に印刷データを送信し(S117)、ステップS101の処理に戻る。印刷可能でない場合(S107:NO)、CPU301は、印刷データがホストPC3内で作成されたものであれば、ディスプレイ333に、データ側エラーにより印刷が実行できないことを示すメッセージを表示させる(S108)。また、印刷データが他のクライアントPC3から送信されたものであれば、そのクライアントPC3に、データ側エラーにより印刷が実行できないことを示す通知を送信する(S108)。また、タイマ304(図2参照)を用いて、経過時間の計測を開始する。
【0049】
所定時間が経過していなければ(S111:NO)、CPU301は、印刷装置1に再び装置情報の送信を要求し(S112)、印刷装置1から送信された装置情報を取得する(S113)。そして、取得された装置情報に基づき、プリンタ側エラーが生じているか否かを判断する(S114)。プリンタ側エラーがあれば(S114:YES)、エラーを表示または通知を送信する(S115)。プリンタ側エラーがなければ(S114:NO)、印刷可能な状態になったか否かを判断する(S116)。印刷可能な状態になっていなければ(S116:NO)、処理はステップS111に戻る。印刷可能となった場合は(S116:YES)、印刷装置1に印刷データを送信し(S117)と、処理はステップS101に戻る。印刷可能な状態にならないまま、所定時間が経過した場合は(S111:YES)、RAM302に記憶されていた印刷データは削除され(S118)、処理はステップS101に戻る。
【0050】
図7を参照して、第三実施形態において印刷装置1で行われるメイン処理について説明する。この処理は、印刷装置1の電源がONにされるとROM12に記憶されたプログラムが起動されることで開始され、電源がOFFにされるまで、CPU11によって継続して実行される。CPU11は、印刷装置1に接続されたいずれかのPC3から、装置情報の送信要求を受信した場合(S201:YES)、装置情報を取得し、取得した装置情報を要求元のPC3に送信する(S202)。装置情報の送信要求を受信していない場合(S201:NO)、印刷装置1に接続されたいずれかのPC3から、印刷データを受信したか否かを判断する(S203)。印刷データを受信した場合(S203:YES)、印刷データに基づいて印刷を実行し(S204)、ステップS201の処理に戻る。印刷データを受信していなければ(S203:NO)、そのままステップS201の処理に戻る。
【0051】
以上に説明したように、第三実施形態のホストPC3では、ホストPC3で作成された、または他のクライアントPC3から送信された印刷データが取得され、RAM302に記憶される。また、ホストPC3の要求に応じて印刷装置1から送信された装置情報が取得される。そして、装置情報から、プリンタ側エラーは生じていないと判断され、更に、印刷データと装置情報から、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データであると判断された場合には、印刷装置1に印刷指令と共に印刷データが送信される。一方、プリンタ側エラーは生じていないが、印刷データが示す印刷条件が現在の印刷装置1の状態に適合しないと判断された場合は、その印刷データは印刷装置1に送信されることなくRAM302から削除される。
【0052】
従って、ホストPC3は、印刷装置1自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、印刷装置の状態に適合しないデータを印刷装置1に送信してしまうことで、他の印刷可能な印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。つまり、印刷装置1に印刷を指示する場合に、印刷装置1自体に起因しないエラーを防止することが可能である。また、所定時間が経過してもデータ側エラーが解消されない場合に印刷データが削除されるので、ホストPC3のユーザは、所定期間内に、印刷条件と印刷装置1の状態が適合するように、印刷装置1に装着されているテープカセット30を適切なものに交換する等の措置を取ることができる。また、プリンタ側エラーが生じている場合、データ側エラーが生じている場合のいずれについても、印刷データの送信元のクライアントPC3にもエラー内容を示す通知が送信されるので、クライアントPC3のユーザは、その理由に応じてエラーを解除する措置を講じることができる。
【0053】
第三実施形態では、ホストPC3が、本発明の「端末装置」に相当し、クライアントPC3が、「他の端末装置」に相当する。図6のステップS101で印刷データを取得する処理を行うCPU301が、「第二データ取得手段」に相当する。ステップS103、S113で印刷装置1から装置情報を取得するCPU301が、「第二装置情報取得手段」に相当する。ステップS104、S114でプリンタ側エラーの判断を行うCPU301が、「第二装置判断手段」に相当する。ステップS107、S116で印刷条件が装置の状態と適合するか否か判断するCPU301が、「第二適合判断手段」に相当する。ステップS117で印刷装置1に印刷データを送信する処理を行うCPU11が、「データ送信手段」に相当する。S118で印刷データを削除するCPU11が、「第二データ処理手段」に相当する。
【0054】
<第四実施形態>
以下に、図8〜図10を参照して、第四実施形態について説明する。第四実施形態では、印刷装置1に接続されたホストPC3において、第二実施形態と同様の処理が行われる。第四実施形態の印刷装置1およびホストPC3の構成は図2を参照して説明した通りであるため、ここでの説明は省略する。また、第四実施形態の処理は、第三実施形態の処理と一部は同一である。よって、以下では、第二、第三実施形態と同一の処理の説明は簡略化しながら、第四実施形態の処理について説明する。なお、図8〜図10では、図6および図7に示す第三実施形態の処理と同一の処理が行われるステップには、同一のステップ番号が付されている。
【0055】
まず、図8および図9を参照して、第四実施形態においてホストPC3で行われる印刷データ送信処理について説明する。この処理は、ホストPC3でHDD311(図2参照)に記憶されたプログラムが起動されることで開始され、プログラムの終了指示が入力されるまで、CPU301によって継続して実行される。図8に示すように、処理開始後の、印刷データが取得され、エラー判断が行われるまでのステップS101〜S108、S117の処理は第三実施形態と同一であるため、説明は省略する。第四実施形態では、データ側エラーのエラー表示または通知後(S108)、HDD311(図2参照)の退避用メモリに空きがあるか否かが判断される(S121)。空きがあればそのまま(S121:YES)、また、空きがなければ(S121:NO)最も古い印刷データがメモリから削除された後(S122)、取得された印刷データがメモリに記憶され、印刷データの送信順、つまり、印刷順が繰り下げられる(S123)。
【0056】
図9に示すように、メモリに印刷データが記憶されている場合には(S124:YES)、最も古いデータが処理対象として取得される。CPU301は、印刷装置1に対して装置情報の送信を要求し(S125)、印刷装置1から送信された装置情報を受信する(S126)。取得した装置情報に基づき、プリンタ側エラーがあると判断された場合(S127:YES)、プリンタ側エラーをディスプレイ333(図2参照)に表示し、または送信元のクライアントPC3に通知する(S128)。プリンタ側エラーがなければ(S127:NO)、CPU301は、装置情報と印刷データに基づき、現在の印刷装置1の状態で印刷データの印刷が可能か否かを判断する(S129)。印刷可能であれば(S129:YES)、印刷装置1に対して処理対象の印刷データが送信される(S135)。
【0057】
その後、まだメモリに記憶されている印刷データ(印刷待ちデータ)があるか否かが判断される(S136)。印刷待ちデータがない場合は(S136:NO)、処理はそのままステップS124に戻る。印刷待ちデータがあれば(S136:YES)、CPU301は、印刷装置1に対して、現在の印刷状況を示す情報の送信を要求する(S137)。印刷状況を示す情報は、例えば、現在、印刷装置1で印刷待ち状態にある印刷データとその数および順番を含む。印刷装置1から、要求に応じて印刷状況を示す情報が送信されると、CPU301はこれを受信してRAM302に記憶させる(S138)。
【0058】
CPU301は、メモリに記憶されている印刷データがホストPC3で作成されたものであれば、ディスプレイ333(図2参照)に印刷状況を示す情報を表示させる(S139)。また、印刷データが他のクライアントPC3から送信されたものであれば、そのクライアントPC3に、印刷状況を示す情報を送信して通知する(S139)。これにより、印刷順が繰り下げられ、メモリに退避されている印刷データの作成元のPC3のユーザは、自分の印刷データに起因するデータ側エラーの解除措置を講じる適切なタイミングを知ることができる。印刷状況の表示または通知後(S139)、処理はステップS124に戻る。
【0059】
処理対象の印刷データが印刷可能でなければ(S129:NO)、データ側エラーの表示または通知が行われ(S130)、印刷装置1から装置情報が取得される(S131〜S132)。取得された装置情報に基づき、印刷装置1の状態に変化があったと判断された場合(S133:YES)、処理はステップS129に戻る。印刷可能であれば(S129:YES)、前述のステップS135〜S139の処理が行われ、依然として印刷可能でなければ(S129:NO)、ステップS120〜S133の処理が行われる。
【0060】
印刷装置1の状態に変化がなければ(S133:NO)、CPU301は、ホストPC3または他のクライアントPC3から、他の印刷データを取得したか否かを判断する(S134)。他の印刷データを取得していなければ(S134:NO)、CPU11は、ステップS133に戻り、印刷装置1の状態に変化があったか否かを判断する。他の印刷データを受信した場合(S134:YES)、処理は図8に示すステップS104に戻る。その後の処理は、前述した通りである。以上の処理で、メモリに退避されていた印刷データが全て印刷可能となって順次印刷が実行されると、メモリに記憶された印刷データはなくなる(S124:YES)。この場合、処理は図8に示すステップS101に戻り、CPU11は、新たな印刷データの受信を待つ。
【0061】
図10を参照して、第四実施形態において印刷装置1で行われるメイン処理について説明する。第四実施形態の処理は、図7に示す第三実施形態の処理に加え、印刷データが受信されない場合(S203:NO)、いずれかのPC3から印刷状況の送信要求があったか否かが判断される(S205)。印刷状況の送信要求があった場合(S205:YES)、CPU11は、要求元のPC3に現在の印刷状況を示す情報を送信し(S206)、ステップS201の処理に戻る。印刷状況の送信要求がなければ(S205:NO)、処理はそのままステップS201に戻る。なお、本実施形態では、ステップS206で印刷状況を示す情報をPC3に送信するために、印刷装置1では、ステップS203で受け付けられた印刷データが、フラッシュROM14(図2参照)に確保された印刷待ちデータ用のメモリに記憶され、ステップS204で印刷が実行されると、その印刷結果がフラッシュROM14(図2参照)の履歴リスト(図示略)に記憶される。
【0062】
以上に説明したように、第四実施形態のホストPC3では、ホストPC3で作成された、または他のクライアントPC3から送信された印刷データが取得され、RAM302に記憶される。また、ホストPC3の要求に応じて印刷装置1から送信された装置情報が取得される。そして、装置情報から、プリンタ側エラーは生じていないと判断され、更に、印刷データと装置情報から、現在の印刷装置1の状態で印刷可能な印刷データであると判断された場合には、印刷装置1に印刷指令と共に印刷データが送信される。一方、プリンタ側エラーは生じていないが、印刷データが示す印刷条件が現在の印刷装置1の状態に適合しないと判断された場合は、その印刷データは印刷装置1に送信されることなくHDD311の退避用メモリに記憶され、印刷順が繰り下げられる。
【0063】
従って、第四実施形態でも、ホストPC3は、印刷装置1自体は印刷可能な状態であるにもかかわらず、印刷装置の状態に適合しないデータを印刷装置1に送信してしまうことで、他の印刷可能な印刷対象の印刷が滞ってしまうことを防止できる。つまり、印刷装置1に印刷を指示する場合に、印刷装置1自体に起因しないエラーを防止することが可能である。また、退避されていた印刷データの印刷順(送信順)が最初となった場合、印刷装置1から装置情報が新たに取得され、印刷可能か否かの判断が再度行われるので、印刷対象の印刷順が繰り下げられた後、印刷順が再び最初になった時点で、印刷条件と印刷装置の状態が適合していれば、印刷データが送信されることになる。従って、ユーザは、印刷順が繰り下げられている間に両者が適合するように何らかの措置を取ることができる。
【0064】
第四実施形態では、図8のステップS101の処理を行うCPU301が、「第二データ取得手段」に相当する。図8のステップS103、図9のステップS126で装置情報を取得するCPU301が、「第二装置情報取得手段」に相当する。図8のステップS104、図9のS127でプリンタ側エラーの判断を行うCPU301が、「第二装置判断手段」に相当する。図8のステップS107、図9のS129で印刷条件が装置の状態と適合するか否か判断するCPU1301が、「第二適合判断手段」に相当する。図8のステップS117、図9のステップS135で印刷データを送信するCPU11が、「データ送信手段」に相当する。図8のS123で印刷データを「第二記憶手段」に相当するHDD311に記憶させるCPU301が、「第二データ処理手段」に相当する。
【0065】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、テープカセット30を用いてテープ31に印刷を行うラベルプリンタを例示している。そして、装置情報として、カバー53が適切に閉じられているかを示すカバーセンサ20の出力信号と、テープカセット30の装着状態およびテープカセット30の種類を示すカセットセンサ21の出力信号を利用する例を説明した。しかしながら、印刷装置1は、ラベルプリンタに限られず、外部機器からの印刷指令を受けて印刷を行うその他の印刷装置であってもよい。よって、実施形態の処理は、カットされた用紙に印刷を行うプリンタや、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ等に適用されてもよい。また、装置情報として、用紙切れ、紙詰まり、セットされているカット用紙のサイズ(A4、B5等)等を示す情報が利用されてもよい。この場合、用紙切れや紙詰まりが、プリンタ側エラーである。また、データ側エラーとして、印刷条件がセットされている用紙と異なるサイズの用紙を指定している場合や、データがプリンタで処理不能のフォーマットで作成されている場合等が挙げられる。
【0066】
上記実施形態では、印刷対象を印刷するためのデータとして、印刷装置1でそのまま印刷が可能なドットパターンデータ(印刷データ)を使用する例を説明した。しかしながら、印刷対象を印刷するためのデータは、これに限られず、例えば、アプリケーション上で作成された文書を構成するキャラクタ(文字、(文字、数字、記号等)のコードデータと文書のフォーマットデータや、画像を印刷するための画像データ等であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、ラベルプリンタである印刷装置1において、テープカセット30の種類として、テープ幅が使用される例を説明したが、ラベルプリンタの場合、テープ幅、テープ色、およびインク色のうち一つまたは複数が使用されてもよい。例えば、インク色を使用する場合、印刷装置1にセットされているテープカセット30のインク色と、印刷対象の印刷条件が示すインク色が一致しない場合に、印刷対象を印刷するためのデータを削除する、または、印刷順を繰り下げる処理が行われればよい。
【0068】
上記実施形態で行われるエラーの通知や表示の処理は必ずしも行う必要はない。例えば、印刷装置1において、印刷結果の履歴をフラッシュROM14に記憶しておき、PC3からアクセスすることで印刷結果を確認可能としてもよい。また、第一、第三実施形態では、エラー通知や表示の後、所定時間が経過した後で印刷データが削除される例を説明したが、データ側エラーが生じている場合、所定時間経過するのを待つことなく、データを削除する処理が行われてもよい。また、第二、第四実施形態では、データ側エラーが生じている場合、印刷順が繰り下げられ、再度、印刷順が最初になった場合に、装置情報が新たに取得され、プリンタ側エラーとデータ側エラーの有無が判断されているが、これらの判断は省略し、そのまま印刷実行または印刷データの送信処理が行われてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 印刷装置
3 パーソナルコンピュータ
11 CPU
14 フラッシュROM
25 サーマルヘッド
301 CPU
311 ハードディスク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外部機器に接続可能な印刷装置であって、
印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
外部機器から送信された、印刷対象を印刷するためのデータを取得する第一データ取得手段と、
前記印刷装置自体の状態を示す情報である装置情報を取得する第一装置情報取得手段と、
前記装置情報に基づき、前記印刷装置自体に起因するエラーが生じているか否かを判断する第一装置判断手段と、
前記データおよび前記装置情報に基づき、前記印刷対象を印刷するための条件が前記状態に適合するか否かを判断する第一適合判断手段と、
前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合すると判断された場合に、前記データに基づき前記印刷対象を前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段と、
前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除する、または、前記印刷対象の印刷順を繰り下げるために前記データを第一記憶手段に記憶する第一データ処理手段と、
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記第一装置情報取得手段は、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合、前記装置情報を新たに取得し、
前記第一装置判断手段および前記第一適合判断手段は、前記第一装置情報取得手段によって新たに取得された前記装置情報に基づき、新たに判断を行い、
前記第一データ処理手段は、所定時間を経過しても、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第一装置情報取得手段は、前記第一データ処理手段によって前記データが前記第一記憶手段に記憶された後、前記印刷対象の前記印刷順が再び最初となった場合、前記装置情報を新たに取得し、
前記第一装置判断手段および前記第一適合判断手段は、前記第一装置情報取得手段によって新たに取得された前記装置情報に基づき、新たに判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記データの送信元である前記外部機器に対して、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていると判断された場合には前記エラーが生じていることを通知し、前記第一装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第一適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合には、前記条件が前記状態に適合しないことを通知する第一通知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第一装置情報取得手段は、前記印刷装置自体の不具合の有無と、前記印刷装置にセットされた印刷媒体の種別を示す情報を少なくとも含む情報を、前記装置情報として取得し、
前記第一装置判断手段は、前記装置情報が前記不具合の存在を示す情報を含む場合、前記エラーが生じていると判断し、
前記第一適合判断手段は、前記条件によって特定される印刷媒体の種別と、前記印刷装置にセットされた前記印刷媒体の前記種別とが合致しない場合、前記条件が前記状態に適合しないと判断することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
他の端末装置および印刷装置に接続可能な端末装置であって、
印刷対象を印刷するためのデータを取得する第二データ取得手段と、
前記印刷装置から、前記印刷装置自体の状態を示す情報である装置情報を取得する第二装置情報取得手段と、
前記装置情報に基づき、前記印刷装置自体に起因するエラーが生じているか否かを判断する第二装置判断手段と、
前記データおよび前記装置情報に基づき、前記印刷対象を印刷するための条件が前記状態に適合するか否かを判断する第二適合判断手段と、
前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合すると判断された場合に、前記データを前記印刷装置に送信するデータ送信手段と、
前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除する、または、前記印刷対象の印刷順を繰り下げるために前記データを第二記憶手段に記憶する第二データ処理手段と、
を備えた端末装置。
【請求項7】
前記第二装置情報取得手段は、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合、前記印刷装置から前記装置情報を新たに取得し、
前記第二装置判断手段および前記第二適合判断手段は、前記第二装置情報取得手段によって新たに取得された前記装置情報に基づき、新たに判断を行い、
前記第二データ処理手段は、所定時間を経過しても、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合に、前記データを削除することを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
前記第二装置情報取得手段は、前記第二データ処理手段によって前記データが前記第二記憶手段に記憶された後、前記印刷対象の前記印刷順が最初となった場合、前記印刷装置から前記装置情報を新たに取得し、
前記第二装置判断手段および前記第二適合判断手段は、前記第二装置情報取得手段によって新たに取得された前記装置情報に基づき、新たに判断を行うことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項9】
前記第二データ取得手段によって、他の端末装置から送信された前記データが取得された場合、前記データの送信元である前記他の端末装置に対して、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていると判断された場合には前記エラーが生じていることを通知し、前記第二装置判断手段によって前記エラーが生じていないと判断され、且つ、前記第二適合判断手段によって前記条件が前記状態に適合しないと判断された場合には、前記条件が前記状態に適合しないことを通知する第二通知手段を更に備えたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の端末装置。
【請求項10】
前記第二装置情報取得手段は、前記印刷装置自体の不具合の有無と、前記印刷装置にセットされた印刷媒体の種別を示す情報を少なくとも含む情報を、前記装置情報として前記印刷装置から取得し、
前記第二装置判断手段は、前記装置情報が前記不具合の存在を示す情報を含む場合、前記エラーが生じていると判断し、
前記第二適合判断手段は、前記条件によって特定される印刷媒体の種別と、前記印刷装置にセットされた前記印刷媒体の前記種別とが合致しない場合、前記条件が前記状態に適合しないと判断することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192719(P2012−192719A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60384(P2011−60384)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】