説明

印刷装置および電力制御プログラム

【課題】
未使用時の消費電力量を抑制するとともに処理要求時の即時処理を可能にした印刷装置および電力制御プログラムを提供する。
【解決手段】
ホストPC110からファイルオープン通知を受信すると、CPU11が履歴情報として保存したファイルオープン通知の受信から印刷処理までの経過時間を元に印刷推定時間を算出する。算出した印刷推定時間の開始時間に通常モードとなるように電源部18からプリントエンジン16、操作パネル17に電力供給する節電解除処理を行ない、印刷推定時間の終了時間まで通常モードを継続する。印刷推定時間の終了時間となると電源部18からの電力供給を停止する節電処理を行ない、通常モードから節電モードへと移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および電力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷装置には、一定期間、未使用状態が継続した際に待機電力を低減させた節電状態へと移行する節電機能が搭載されており、この節電状態は、印刷用紙の搬送ローラや定着装置、操作パネルなどへの電力供給を行なわない状態である。
【0003】
この節電状態にある印刷装置は、ユーザ操作や印刷データの受信などをトリガとして通常の電力状態(「通常状態」)へと移行する。
【0004】
この通常状態への移行処理は、各装置の予熱時間などが必要となることから、通常状態となるまでにある一定の時間の経過が必要となる。
【0005】
特許文献1に開示された従来技術では、印刷データの作成元となるソフトウェアがホスト機器上で稼動状態にある場合に画像形成装置の定着装置への電力供給を行なう構成が示されている。この特許文献1には、印刷データを作成するソフトウェアがホスト機器で稼動していない場合に電力供給を行なわない旨が記載されている。
【0006】
この特許文献1でも同じように、印刷出力を行なう際には、画像形成装置が通常状態にあることが必要であり、即時印刷を可能とする。
【特許文献1】特開平06−340147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、未使用時の消費電力量を抑制するとともに処理要求時の即時処理を可能にした印刷装置および電力制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、印刷指示を行う印刷指示装置で文書が開かれたことを検出する検出手段と、前記印刷指示装置で文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する推定手段と、前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に達する前に節電状態を解除するように制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記検出手段は、前記印刷指示装置からの文書を開いたことの通知に基づき前記文書が開かれたことを検出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記推定手段は、前記検出手段により前記印刷指示装置で文書が開かれたことが検出されてから当該文書の印刷指示が行われるまでの時間を履歴情報として記憶する記憶手段を具備し、前記記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づき前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記記憶手段は、前記文書を開いたアプリケーションに対応して前記履歴情報を記憶し、前記推定手段は、前記文書を開いたアプリケーションに対応して前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項3の発明において、前記記憶手段は、前記文書を開いたユーザに対応して前記履歴情報を記憶し、前記推定手段は、前記文書を開いたユーザに対応して前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、前記節電状態は、節電レベルに対応した複数段階の節電状態を有し、前記制御手段は、前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に近づくにしたがって節電状態を順次段階的に解除するように制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、コンピュータを、印刷指示を行う印刷指示装置で文書が開かれたことを検出する検出手段と、前記印刷指示装置で文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する推定手段と、前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に達する前に節電状態を解除するように制御する制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1、2、7によれば、利便性を犠牲にすることなく高い節電効果を得ることができるようになる。
【0016】
また、請求項3によれば、使用状態に応じて節電状態となり、高い節電効果を得ることが可能になる、
また、請求項4、5によれば、より細かな使用状態に応じて節電状態となり、より高い節電効果を得ることが可能になる、
また、請求項6によれば、節電レベルに応じて節電の状態を調整することができ、利便性に優れるとともに高い節電効果を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係わる印刷装置および電力制御プログラムの一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本実施例では、ホストPCなどの印刷指示装置から処理要求が行われた印刷装置が電力制御を行うことによって節電する例を示すが、印刷指示装置としてホストPCに限定されることなく、要旨を変更しない範囲内でさまざまな装置に適用可能である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係わる印刷装置および電力制御プログラムを適用して構成した装置構成図である。
【0020】
図1に示す本願発明の印刷装置100は、インターフェース制御部10、CPU11、ROM12、RAM13、画像処理部14、タイマー15、不プリントエンジン16、操作パネル17、電源部18を具備して構成する。この印刷装置100は、インターフェース制御部10を介して接続されたホストPC110などの印刷要求元からファイル参照通知(以下、「ファイルオープン通知」)を受信してから印刷要求を受信するまでに要した経過時間に基づいて電力制御を行なう。
【0021】
このファイルオープン通知には、オープンしたファイルのファイル名、アプリケーション名、当該ファイルのオープン操作を行なったユーザ名、オープン操作を行なった装置を識別するIPアドレスなどの識別番号、オープン時刻情報などが含まれ、通知元のホストPC110から印刷要求が行なわれる可能性を示唆するものである。
【0022】
なお、ファイルオープン通知を行ったファイルがホストPC110上で閉じられると、印刷装置100はホストPC110から「ファイルクローズ通知」を受信する。このファイルクローズ通知には、クローズしたファイルのファイル名、アプリケーション名、クローズ操作を行なったユーザ名、オープン操作を行なった装置を識別するIPアドレスなどの識別番号、クローズ時刻情報などが含まれる。
【0023】
さらに、印刷装置100には、ユーザ操作および印刷処理が一定時間以上行なわれない場合に、通常の電力状態よりも低い電力状態である節電状態へと移行して待機状態となる節電機能が搭載されており、以下では、印刷処理が可能な通常の電力状態を「通常モード」と示し、節電機能による節電状態を「節電モード」と示す。
【0024】
節電モードは、印刷出力を行なうプリントエンジンを構成する定着装置、ヒートローラ、感光ドラムなどに供給する予熱電力量を制限する節電処理によって消費電力を低減させた待機状態であって、節電モードから通常モードへは、電源装置から電力供給を受けることにより、定着装置、ヒートローラ、感光ドラムなどを予熱する節電解除処理を行なうことによって移行する。このときの節電解除処理に要する時間は、予め規定されている。
【0025】
この印刷装置100では、受信したファイルオープン通知から印刷要求を受信するまでに経過した経過時間に基づいて電力供給の開始時間および終了時間における電力制御を行う。すなわち、節電モードにある印刷装置100への電力供給および通常モードにある印刷装置100への電力供給の停止における電力制御を行なう。
【0026】
インターフェース制御部10は、LAN(Local Area Network)ケーブルやUSB(Universal Serial Bus)ケーブルなどを示す通信回線で接続されたホストPC110との相互通信を実現する通信インターフェースであって、インターフェース制御部10を介して受信した印刷データを一時的にRAM13に記憶する。
【0027】
RAM13は、画像形成装置100における画像処理の作業領域であって、印刷データや各種情報を記憶する。
【0028】
CPU11は、ROM12に記憶された各種のプログラムを実行する主制御部である。このCPU11では、ROM12に記憶された印刷プログラムを実行することでRAM13に記憶した印刷データの印刷処理を画像処理部14へと指示する。さらに、ROM12に記憶された電力制御プログラムを実行することにより、ファイルオープン通知を受信してから経過した経過時間に基づく電力制御を行なう。
【0029】
CPU11では、ファイルオープン通知を受信すると、タイマー15による計時を開始し、タイマー15では、ファイルオープン通知から印刷要求の受信までの経過時間、および通常モードへの移行後の経過時間を計時する。
【0030】
この電力制御では、過去のファイルオープン通知から印刷要求を受け付けるまでの経過時間の履歴情報を元に、印刷処理が行なわれる印刷推定時間情報を算出し、この印刷推定時間情報に印刷装置100が通常モードとなるように電力供給を制御する。
【0031】
このときの電力制御プログラムによって行なわれる電力制御の詳細な処理の流れを図3のフローチャートに示す。
【0032】
画像処理部14は、CPU11からの印刷処理指示に基づいて印刷処理を行ない、印刷出力する画像データを生成する。生成した画像データはプリントエンジン16によって印刷出力処理される。
【0033】
プリントエンジン16は、定着装置、ヒートローラ、感光ドラムなどによって構成され、画像処理部14により出力処理指示された画像データを印字媒体に印字する。
【0034】
操作パネル17は、表示ディスプレイやキーボードによって構成されるユーザインターフェースであって、印刷装置100への電源投入を指示するメインスイッチ(17−1)を具備する。ユーザがメインスイッチをONにすると、CPU11がこれを検知し、ROM12に記憶された電力制御プログラムを実行する。
【0035】
電源部18は、CPU11からの指示に基づいてプリントエンジン16に電力供給を行ない、印刷出力を可能な状態とする。
【0036】
図2は、本願発明の画像形成装置の一例である印刷装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
図2に示す印刷装置100は、インターフェース制御部20、制御部21、電力制御部22、記憶部23、計時部24、算出部25、履歴情報生成部26、電源部27、印刷処理部28、操作パネル29を具備して構成され、インターフェース制御部20を介して接続されたホストPC110からの情報に基づいて印刷処理を行う。
【0038】
さらに、この印刷装置100では、節電機能によって節電モードにある状態から通常モードへの節電解除処理および通常モードから節電モードへの節電処理それぞれにおける電力制御を行なう。
【0039】
節電モードの状態で、インターフェース制御部20を介してホストPC110からファイルオープン通知を受信すると、そのファイルオープン通知を制御部21へと転送する。また、ホストPC110からファイルクローズ通知をも受信し、ファイルオープン通知同様、制御部21へと転送する。
【0040】
制御部21は、印刷装置100における主制御であって、インターフェース制御部20を介してホストPC110からファイルオープン通知、ファイルクローズ通知を受信すると、その旨を電力制御部22へと転送する。制御部21からファイルオープン通知およびファイルクローズ通知を受信した電力制御部22では、ROMやRAMにより構成される記憶部23に記憶された電力制御プログラムを実行することにより電力制御を行う。
【0041】
まず、ファイルオープン通知を受信した場合には、ファイルオープン通知の受信により、ホストPC110から印刷要求が行われて印刷処理が開始されるまでに経過する印刷推定時間の算出依頼を算出部25へと行なう。また同時に、ファイルオープン通知の受信からの経過時間の計時依頼を計時部24へと行なう。この計時部24は、タイマーによって構成され、電力制御部22からの計時指示に基づいて時間を計時する。
【0042】
そして、印刷推定時間の算出依頼を受けた算出部25では、履歴情報保存部26に保存された履歴情報を元に、ファイルオープン通知を受信してから印刷処理が行われる印刷推定時間を算出する。
【0043】
この印刷推定時間は、印刷処理の開始時間および印刷処理が行われなくなる終了時間によって示される時間間隔であって、開始時間は、電源部27から印刷処理部28や操作パネル29に電力供給を行なって通常モードとする節電解除処理の終了時間を示し、また、終了時間は、通常モードから節電モードへと移行する節電処理を開始する時間を示す。
【0044】
この印刷推定時間を算出する元となる履歴情報の一例を図6に示し、この図6に示した履歴情報を正規分布曲線で表したものを図5に示す。
【0045】
以下に、図5と図6を用いて、印刷推定時間の開始時間および終了時間の算出例を示す。
【0046】
図6に示す履歴情報は、ホストPC110からファイルオープン通知を受信後、印刷処理を行なうまでに経過した経過時間であって、[履歴番号]601、[経過時間]602から構成される。[履歴番号]601は、履歴として記録した順番を示し、[経過時間]602が印刷処理を行なうまでの経過時間を示す。
【0047】
例えば、[履歴番号]601が「1」の[経過時間]602に示された「4」は、ファイルオープン通知を受信してから印刷処理を行なうまでに「4」分が経過したことを示している。
【0048】
この図6に示したデータを用いて平均値(x)と散らばり度合いを表した標準偏差(k)の値を算出する。
【0049】
平均値(x)は、ファイルオープン通知を受信してから印刷処理するまでの平均時間であって以下の数式(1)によって算出できる。また、標準偏差(k)は平均値(x)からのズレ量であって以下の数式(2)によって算出することができる。
【0050】
【数1】

【0051】
次に、算出した平均値(x)および標準偏差(k)を用いてデータが属する一定の範囲を算出する。統計学的に「95.44%」のデータが属することとなる時間の範囲(m)は以下の数式(3)によって表すことができる。
【数2】

【0052】
この数式(3)によって表される範囲(m)の下限を印刷推定時間の開始時間(T1)とし、上限を印刷推定時間の終了時間(T2)とする。
【0053】
すなわち、図5に示すT1とT2がこの開始時間(T1)と終了時間(T2)となる。
【0054】
図6に示すデータ数(n)の履歴情報を数式(1)、数式(2)に当てはめると、平均値(x)は「14.25」と算出でき、標準偏差(k)は「9.68」と算出できる。
【0055】
さらに、算出した平均値(x)、標準偏差(k)と、データ数(n)を数式(3)に当てはめると、範囲(m)は「10.44≦m≦18.04」と算出できる。
【0056】
よって、小数点以下を切り捨てた開始時間(T1)は「10」であり、終了時間(T2)は「18」である。
【0057】
すなわち、印刷推定時間が示す開始時間はファイルオープン通知を受信してから10分後であり、また終了時間はファイルオープン通知を受信してから18分後である。この10分後から18分後までの8分間に通常モードとなり、それ以外の時間には節電モードとなる。
【0058】
なお、統計学的に「68.26%」のデータが属することとなる範囲は図5に示すT3〜T4となり、「95.44%」の範囲のT1〜T2に比べて、データが範囲内に属する可能性が低くなるが、通常モードの時間が短くなり、より節電効果が得られる。
【0059】
この印刷推定時間の範囲は印刷装置100の利用状態に応じて設定することができる。
【0060】
この図6に示す履歴情報をファイルを参照するアプリケーションごとに記憶しておくほか、ユーザごとに記憶しておくような構成であってもよい。この場合、参照されたファイルのアプリケーションやユーザを判定し、それぞれにしたがった履歴情報を用いて印刷推定時刻を算出する。
【0061】
このように、算出部25が印刷推定時間の開始時間(T1)および終了時間(T2)を算出すると、電力制御部22が予め規定された節電解除処理に要する時間を記憶部23から読み込み、この算出した開始時間から節電解除処理に要する時間を差し引いた時間を計算し、計時部24がこの時間を計時することによって節電解除処理を開始する。これにより、算出した開始時間(T1)に通常モードへと移行する。
【0062】
また、算出された印刷推定時間の終了時間(T2)を計時部24が計時すると、電力制御部22では通常モードから節電モードへと移行する節電処理を行う。
【0063】
このときの節電解除処理は、電力制御部22から電源部27へと電力供給の開始を指示し、指示を受けた電源部27が印刷処理部28、操作パネル29に電力を供給する処理を行なう。また、節電処理は、電力制御部22から電源部27へと電力供給の停止を指示し、指示を受けた電源部27が印刷処理部28、操作パネル29への電力供給を停止する処理を行なう。
【0064】
このような電力制御がファイルオープン通知を受信した電力制御部22によって行われる。
【0065】
それに対して、電力制御部22が印刷推定時間の開始時間(T1)以前に、ファイルクローズ通知を受信した場合、節電モードから通常モードへの節電解除処理における電力制御を停止する。
【0066】
このように印刷装置100では、算出した印刷推定時間に基づいて節電処理および節電解除処理における電力制御が行われる。
【0067】
図3は、本願発明の画像形成装置における処理の流れを示したフローチャートである。
【0068】
図3に示すフローチャートは、印刷要求元のホストPCでファイルの参照処理が行なわれ、ソフトウェアが起動してファイルがオープンすると処理が開始され、ホストPCからファイルオープン通知の受信を確認する(301)。
【0069】
節電モードにある印刷装置がホストPCからファイルオープン通知を受信すると(301でYES)、履歴情報から印刷処理が行なわれる印刷推定時間を算出する(302)。この印刷推定時間は、上記するように、過去の履歴情報に基づいて算出される時間であって、開始時間(T1)と終了時間(T2)によって構成される。
【0070】
そして、ファイルオープン通知を受信してから経過した経過時間(t1)を計時し(303)、さらに、印刷装置で行なわれる節電解除処理に要する時間(t2)の読み込みを行なう(304)。
【0071】
計時した経過時間(t1)が、印刷推定時間の開始時間(T1)から節電解除処理に要する時間(t2)を差し引いた節電解除時間(T1−t2)以上となったことを確認する(305)。計時した経過時間(t1)が節電解除時間(T1−t2)未満である場合(305でNO)には、節電モードを継続して節電解除時間となるまで待機する。
【0072】
それに対して、計時した経過時間(t1)が節電解除時間(T1−t2)以上となった場合(305でYES)には、節電解除処理を行なう(306)。
【0073】
節電解除処理によって節電モードから通常モードへと移行すると、続いて、ホストPCから印刷データの受信を待つ(307)。
【0074】
印刷データの受信を確認すると(307でYES)、受信した印刷データを印刷処理し(308)、印刷データの受信時の経過時間(t1)を履歴情報として印刷装置に保存する(309)。
【0075】
そして、印刷推定時間の終了時間による節電モードへの節電処理を無効とする無効化処理を行う(315)ことで印刷データの受信による印刷出力を可能とする。
【0076】
また、印刷データを受信せず、受信待ちとなっている場合(307でNO)には、ホストPCからのファイルクローズ通知の受信待ちとなる(310)。すなわち、印刷データかファイルクローズ通知いずれかを受信するまで待機状態となり、印刷推定時間の終了時間内で待機状態を継続する。
【0077】
ファイルクローズ通知を受信した場合(310でYES)には、そのファイルクローズ通知によって全てのファイルがクローズされた状態となったかを確認して判断する(311)。全てのファイルがクローズされた状態である場合(311でYES)には、ファイルオープン通知を受信してから経過した経過時間(t1)を初期化して(312)、節電処理(313)を行なう。
【0078】
それに対して、ファイルクローズ通知を受信することなく(310でNO)、印刷推定時間の終了時間を迎えた場合(314でNO)、若しくはファイルクローズ通知を受信した場合(310でYES)であっても全てのファイルがクローズされずに(311でNO)、印刷推定時間の終了時間を迎えた場合(314でNO)には、節電処理を行なって通常モードから節電モードへと移行する(313)。
【0079】
このフローチャートによって、算出した印刷推定時間情報の時間内に通常モードとなり、時間外には節電モードへと移行することができる。
【0080】
図4は、時間経過に対する電力状態の変化を示した図である。
【0081】
図4には、5つのケースにおける電力状態の変化を示している。
【0082】
「CASE1」には、節電モードの状態にある従来の印刷装置が印刷要求を受信して印刷出力するまでの電力状態の変化を表し、「CASE2」〜「CASE5」には、本願発明における電力状態の変化を表している。
【0083】
まず、「CASE1」では、ホストPCでファイルをオープンしたタイミングを[タイミングA]とし、この[タイミングA]から一定時間経過後の[タイミングC]でホストPCから印刷要求が行なわれ、その印刷要求を受信した[タイミングD]で印刷装置が節電解除処理を開始することを示している。
【0084】
さらに、節電解除処理が完了した[タイミングE]で印刷処理を開始し、印刷処理が完了した[タイミングF]で印刷装置からホストPCに対して印刷完了通知を転送する。これによって、ホストPCが印刷完了通知を受信した[タイミングG]で印刷完了したこととなる。
【0085】
この「CASE1」に対して、本願発明の電力状態を示した「CASE2」では、ホストPCが[タイミングA]でファイルをオープンし、印刷装置が[タイミングB]でホストPCからファイルオープン通知を受信すると、履歴情報から算出した印刷推定時間に基づく節電解除処理の開始時間を計時する。
【0086】
算出した印刷推定時間が示す開始時間に節電解除処理が完了するように[タイミングH]で節電解除処理を開始し、節電解除処理が完了した[タイミングI]で通常モードに移行する。この[タイミングI]が算出した印刷推定時間の開始時間を示している。
【0087】
なお、節電解除処理に要する時間は予め印刷装置に指定されており、算出した印刷推定時間の開始時間から逆算して[タイミングH]を求めることができる。
【0088】
そして、[タイミングI]で通常モードに移行した印刷装置が[タイミングE]で印刷要求を受信すると印刷処理を開始し、印刷処理が完了した[タイミングK]で印刷要求元であるホストPCへと印刷完了通知を送信する。ホストPCでは、印刷完了通知を受信した[タイミングJ]で印刷の完了を認識する。この[タイミングK]で印刷装置は、印刷推定時間の終了時間に行われる節電処理を無効とする無効化処理を行う。この無効化処理によって、印刷推定時間の終了時間となっても節電モードとならずに通常モードを継続する。
【0089】
次に、「CASE3」では、「CASE2」と同じように、ホストPCが[タイミングA]でファイルをオープンし、印刷装置が[タイミングB]でホストPCからファイルオープン通知を受信すると、履歴情報から予め算出した印刷推定時間に基づく節電解除処理の開始時間を計時する。
【0090】
算出した印刷推定時間が示す開始時間に節電解除処理が完了するように[タイミングH]で節電解除処理を開始し、節電解除処理が完了した[タイミングI]で通常モードに移行する。
【0091】
そして、[タイミングI]で通常モードの状態にある印刷装置が、ホストPCのファイルが[タイミングL]でクローズされ、印刷推定時間によって示される節電モードへの移行時間を示した[タイミングN]以前の[タイミングM]に、ホストPCからファイルクローズ通知を受信すると、算出した印刷推定時間によって示される通常モードから節電モードへの移行時間になるのを待たずして直ぐに節電モードへと移行する。
【0092】
この「CASE3」では、印刷出力を行なわずにファイルが閉じられた場合の電力状態の変化を示している。
【0093】
次に、「CASE4」では、「CASE2」および「CASE3」と同じように、ホストPCが[タイミングA]でファイルをオープンし、印刷装置が[タイミングB]でホストPCからファイルオープン通知を受信すると、履歴情報から予め算出した印刷推定時間に基づく節電解除処理の開始時間を計時する。
【0094】
算出した印刷推定時間が示す開始時間に節電解除処理が完了するように[タイミングH]で節電解除処理を開始し、節電解除処理が完了した[タイミングI]で通常モードに移行する。
【0095】
通常モードにある印刷装置が算出した印刷推定時間の通常モードから節電モードへの移行時間の[タイミングN]になるまでに印刷要求を受けずにいた場合、この[タイミングN]で節電モードへと移行する。
【0096】
この「CASE4」では、履歴情報から算出した印刷推定時間が示す節電モードへの移行時間までにホストPCから印刷要求を受信しなかった場合の電力状態の変化を示している。
【0097】
そして、「CASE5」では、ホストPCの2つのファイル(ファイル1、ファイル2)が異なるタイミングでオープンされた場合の電力状態の変化を示している。
【0098】
この「CASE5]は、ホストPCが[タイミングA]でファイル1をオープンし、ファイル2が[タイミングO]でオープンした場合を示しており、印刷装置が[タイミングB]でファイル1のファイルオープン通知を受信し、[タイミングP]でファイル2のオープン通知を受信する。
【0099】
印刷装置がホストPCからファイルオープン通知を受信すると、履歴情報から算出した印刷推定時間に基づく節電解除処理の開始時間を計時する。先に[タイミングB]で受信したファイル1のファイルオープン通知を元に、履歴情報から印刷推定時間を算出し、その印刷推定時間が示す開始時間の[タイミングI]に節電解除処理が完了するように[タイミングH]で節電解除処理を開始する。
【0100】
さらに、計時した節電解除処理の開始時間の[タイミングH]となる前の[タイミングP]でホストPCからファイルオープン通知を受信すると、ファイル1と同様に、履歴情報から印刷推定時間を算出し、[タイミングQ]で通常モードへと移行することになる。このとき、[タイミングQ]で印刷装置が通常モードに移行した状態にある場合には新たに節電解除処理を行なう必要がないと判断する。
【0101】
そして、先に起動したファイル1による印刷推定時間によって示される通常モードから節電モードへの移行時間である[タイミングH]となる前に[タイミングR]でファイル1がクローズされると、印刷装置が[タイミングS]で通常モードから節電モードへの移行処理を行なうが、ファイル2が通常モードの状態にあるため、節電モードへ移行することなく通常モードの状態を維持する。
【0102】
ファイル2の節電モードへの移行時間である[タイミングT]となると、印刷装置を節電モードへと移行する。
【実施例2】
【0103】
上記実施例1では、図5および図6を用いて印刷推定時間を算出するように構成しているが、本実施例2では、この図5に示す正規分布曲線を用いて、算出した印刷推定時間内で節電状態のレベルを調整する例を示す。
【0104】
図5では、印刷要求が行われる確率が統計学的に「95.44%」である範囲をT1からT2で示し、このT1からT2の範囲を印刷推定時間と算出している。さらに、印刷要求が行われる確率が統計学的に「68.26%」である範囲をT3からT4で示し、これらの範囲の中心をT5と示している。このT5は、正規分布曲線を左右対称に分割する位置である。
【0105】
このことからT3〜T4の範囲よりもT1〜T2の方が広い範囲を示すこととなり、T1よりもT3の方が印刷要求されるまでに多くの時間を要することを示しており、T4よりもT2の方が印刷要求されるまでに多くの時間を要することを示している。
【0106】
また、T5はT3とT4およびT1とT2の中心であることから、印刷要求されるまでの推定時間の関係は、「T1<T3<T5<T4<T2」となる。また、正規分布曲線の特徴から各時間間隔は全て等しく、図5ではその間隔を「k」と示している。つまり、「T3=T1+k」、「T5=T3+k」、「T4=T5+k」、「T2=T4+k」の各式が成立する。
【0107】
この状態において、各時間(T1、T2、T3、T4、T5)ごとに節電レベルを調整する処理を行う。
【0108】
節電レベルは、節電の度合いを示す指標であって、例えば、全く節電されていない状態の節電レベル1、印刷装置のプリントエンジンのみを節電状態とする節電レベル2、プリントエンジンに加えて画像形成CPUをも節電状態とする節電レベル3などがある。
【0109】
図5に示す例では、T1からT2の範囲内が印刷要求される印刷推定時間を示していることから、T1に至るまでの時間およびT2を超えた時間ではレベル3で節電状態にあることを示し、また、T1からT3の範囲およびT4からT2の範囲では、レベル2で節電状態にあることを示している。
【0110】
さらに、T3からT5およびT5からT4の範囲すなわちT3からT4の範囲では節電状態ではなく通常モードのレベル1であることを示す。
【0111】
このような電力制御を印刷装置のCPU11からの信号によって行う。
【0112】
なお、上記フローチャートに示す処理は、コンピュータにより実行可能な電力制御プログラムによっても実現できる。
【0113】
本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0114】
また、本発明は、電力制御システムで上述の動作を実行させ、あるいは上述の手段を構成させるためのプログラムを格納した記録媒体(CD−ROM、DVD−ROM等)から該プログラムをインストールし、これを実行させることにより、上述の処理を実行する電力制御システムを構成することも可能である。
【0115】
また、プログラムを供給するための媒体は、通信媒体(通信回線、通信システムのように、一時的または流動的にプログラムを保持する媒体)でもよい。例えば、通信ネットワークの電子掲示板(BBS:Bulletin Board Service)に該プログラムを掲示し、これを通信回線を介して配信するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、処理開始までの推定時間情報に基づいて電力制御を行う印刷装置および電力制御プログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係わる印刷装置および電力制御プログラムを適用して構成した装置構成図。
【図2】本願発明の電力制御システムを構成する印刷装置を示すブロック図。
【図3】本願発明の印刷装置および電力制御プログラムにおける処理の流れを示したフローチャート。
【図4】時間経過に対する電力状態の変化を示した図。
【図5】履歴情報の正規分布曲線を示す図。
【図6】履歴情報の一例を示す図。
【符号の説明】
【0118】
10 インターフェース制御部
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 画像処理部
15 タイマー
16 プリントエンジン
17 操作パネル
17−1 メインスイッチ
18 電源部
20 インターフェース制御部
21 制御部
22 電力制御部
23 記憶部
24 計時部
25 算出部
26 履歴情報保存部
27 電源部
28 印刷処理部
29 操作パネル
100 画像形成装置(印刷装置)
110 ホストPC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷指示を行う印刷指示装置で文書が開かれたことを検出する検出手段と、
前記印刷指示装置で文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する推定手段と、
前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に達する前に節電状態を解除するように制御する制御手段と
を具備する印刷装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記印刷指示装置からの文書を開いたことの通知に基づき前記文書が開かれたことを検出する請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記推定手段は、
前記検出手段により前記印刷指示装置で文書が開かれたことが検出されてから当該文書の印刷指示が行われるまでの時間を履歴情報として記憶する記憶手段
を具備し、
前記記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づき前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する
請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、
前記文書を開いたアプリケーションに対応して前記履歴情報を記憶し、
前記推定手段は、
前記文書を開いたアプリケーションに対応して前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する
請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、
前記文書を開いたユーザに対応して前記履歴情報を記憶し、
前記推定手段は、
前記文書を開いたユーザに対応して前記文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する
請求項3記載の印刷装置。
【請求項6】
前記節電状態は、
節電レベルに対応した複数段階の節電状態を有し、
前記制御手段は、
前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に近づくにしたがって節電状態を順次段階的に解除するように制御する
請求項1記載の印刷装置。
【請求項7】
コンピュータを、
印刷指示を行う印刷指示装置で文書が開かれたことを検出する検出手段と、
前記印刷指示装置で文書が開かれてから該文書の印刷指示が行われるまでの時間を推定する推定手段と、
前記検出手段により前記文書が開かれたことが検出されてから前記推定手段により推定した時間に達する前に節電状態を解除するように制御する制御手段と
して機能させる電力制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−62617(P2008−62617A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245790(P2006−245790)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】