説明

印刷装置のギャップ設定方法

【課題】 従来の印刷装置のギャップ設定方法は、自動で印刷用紙厚を計測することで最適なギャップの設定をおこなっていたが、用紙厚を計測する機構部にコストがかかり、安価なドットプリンタには原価的に困難という問題があった。
【解決手段】 ハンマバンクと、シャトル機構部と、紙送り機構部と、プラテンと、ギャップ可変機構部と、印刷制御部と、印刷モード設定手段と、印刷モード等の印刷設定を記憶する不揮発性記憶素子を有する印刷装置において、印刷モード設定時に前記不揮発性記憶素子に記憶した印刷用紙仕様に適したギャップを同時に設定できることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のギャップ設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷媒体である印刷用紙には給与明細、宅配伝票等多種多様であるので、ドットラインプリンタには各印刷用紙への印刷に対応できる様々な印刷モードや印刷用紙厚に最適なギャップの設定がある。印刷速度、印刷密度、及び複写能力を設定する印刷モードの選択は印刷用紙の仕様に依存し、設定が複雑である。複雑な組み合わせの各種設定は、ユーザーにとって印刷モード設定の定義及び内容を理解しづらく、かつ、各種印刷モード設定との差異がわからず、印刷用紙に適切な設定で印刷を行っていない場合がある。
【0003】
また、ギャップが広いと印刷結果が薄くなったり、印刷品質が低下したりといった問題が発生する場合があり、ギャップが狭いと用紙ジャム、印刷汚れや印刷かすれが発生する場合がある。
【0004】
上述した不具合を防止するために、適切な印刷モード設定及びギャップで印刷を行うことは実ジョブ上でも不可欠なことである。
【0005】
ギャップ設定については、用紙厚検出機構等の用紙厚検出装置を用いてギャップを自動調整するという方法がある。例えば特許文献1で提案されたギャップ設定方法において、ユーザーが指定する印刷モードを低騒音モードで印刷する場合に用紙厚検出装置から用紙厚を検出し、低騒音モードに適当なギャップに自動調整するという技術がある。
【0006】
しかし、用紙厚検出機構を用いた自動調整はコスト高になるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−310075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の印刷装置のギャップ、印刷モード設定方法は、どちらも個別に設定するようになっている。ギャップ設定を手動で行う場合は、調整レバーを可変しながらテスト印刷を行って適当値を決定しているが、この設定する方法では使用者の操作ミスや設定漏れを起こしやすいという問題があった。
【0009】
ギャップ設定を自動で行う場合は、センサ等の用紙厚検出装置を用いて用紙厚を測定し自動調整しているが、検出機構部を付加ことになるためコスト高になってしまい安価な印刷装置には付加できないという問題があった。
【0010】
また、印刷モード設定は多岐にわたるの中から数種類の設定を簡略化し、ユーザーが印刷モード設定を容易にできるようにしているが、ギャップ設定と関連した設定はできず、ユーザーは印刷モード設定内容を認識し、それに応じたギャップを設定しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ギャップ、印刷モードの設定について無知なユーザーであっても数パターンの適当な設定値を選択できるようにすることにより、設定ミスによる印刷不正を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ハンマバンクと、シャトル機構部と、紙送り機構部と、プラテンと、ギャップ可変機構部と、印刷制御部と、印刷モード設定手段と、印刷モード等の印刷設定を記憶する不揮発性記憶素子を有する印刷装置において、印刷モード設定時に前記不揮発性記憶素子に記憶した印刷用紙仕様に適したギャップを同時に設定できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷装置によれば、事前に使用する印刷用紙仕様を入力することで、印刷に適した印刷モード、ギャップ設定を数種類に限定することでユーザーが印刷モード、ギャップ設定を選択しやすくできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下実施例図面を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例の印刷装置の概略図である。図2は、本発明の一実施例の印刷装置のブロック図である。図3は、本発明の一実施例の印刷装置のフローチャートである。
【0016】
図1において、1はハンマバンク、2はインクリボン、3は印刷用紙、4はプラテン、5はシャトル機構部、6は紙送り機構部、7は印刷制御部、8は印刷モード設定手段である。
【0017】
印字素子を有するハンマバンク1は、シャトル機構部5により桁方向に往復運動する。またハンマバンク1は、インクリボン2と印刷用紙3とを間に挟み、印字力を支持するためのプラテン4と対向した状態で配置されている。往復動した状態で印字素子が適時駆動されるごとにドットマトリクスの形で文字、図形等が印刷用紙3に印刷される。印字用紙3はその過程で適時、紙送り機構部6により、桁方向と垂直に搬送される。印字力を支持するためのプラテン4はハンマバンク1とのギャップを印刷用紙3の仕様により可変できる。印刷制御部7は印刷モード設定手段8によって入力された印刷モード等の設定を認識、処理し、上述した印刷動作についての制御を行っている。
【0018】
図2において、7は印刷制御部、8は印刷モード設定手段、11は印刷制御処理部、12は不揮発性記憶素子、13は印刷機構部制御ドライバ、14は印刷機構動作部である。
【0019】
ユーザーは印刷モード設定手段8を用いて印刷用紙仕様の入力を行う。入力された印刷用紙仕様は印刷モード設定手段8から印刷制御部7中の印刷制御処理部11に転送され、記憶用データに変換されて不揮発性記憶素子12に記憶する。印刷制御処理部11は入力された印刷用紙仕様と不揮発性素子12に記憶していた印刷用紙仕様についてのデータを元にギャップ最適値の算出を行い、併せて最適な印刷モード数種類を選択しギャップ最適値とを組み合わせて、ユーザーが選択できるように印刷モード設定手段8から告知する。ユーザーによって選択された印刷モード、ギャップ設定は不揮発性素子12に記憶し、常時本設定が選択できるようにする。選択された印刷モード、ギャップに従い印刷制御処理部11はハンマバンク1、プラテン4、シャトル機構部5、紙送り機構部6等の印刷機構部制御ドライバ13を駆動させ、ハンマバンク1、プラテン4、シャトル機構部5、紙送り機構部6等の印刷機構動作部14が動作し印刷を行う。
【0020】
ここで、上述した印刷モード、ギャップ選択制御に関し、図3のフローチャートを用いて説明する。印刷用紙3の仕様として、部数、連量、カーボンの種類、厚紙の有無等がある。上述した用紙仕様の情報があれば、印刷用紙3の厚さが算出できるので、ユーザーに印刷手段モード設定8を用いて印刷用紙の仕様について選択してもらう。まず部数について選択(本フローチャートにおいては1〜8部紙)し、次に連量を選択(本フローチャートにおいては代表的な連量34Kg、45Kg、55Kg、70Kg、90Kg、110Kg、135Kg)し、次にカーボン紙の仕様を選択(本フローチャートにおいてはカーボン、ケミカルカーボン、未使用)し、最後にハガキ等の厚紙使用の有無を選択し、各設定値を不揮発性素子12に記憶し、印刷用紙3の厚さを算出する。ギャップは印刷用紙3の厚さによって最適値が決定でき、印刷モードは算出したギャップの広さによってハンマバンク1の打撃力を高めたり、ハンマバンク1を搭載するシャトル機構部5を往復運動させ同一箇所に数回印刷させる等の印字力を高める選択を行える。算出した印刷に適切な印刷モード、ギャップの選択は、印刷速度にも依存するので、最良と考えられる印刷モード、ギャップ設定の候補(本フローチャートにおいては3候補とした)を算出、記憶する。算出した印刷モード、ギャップ設定の候補から最もユーザーの要求に適合した印刷モード、ギャップ設定をユーザーが印刷モード設定手段8を用いて選択し、選択された設定値を不揮発性素子12に記憶し、印刷動作時に本設定値で行えるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の印刷装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例の印刷制御部のブロック図である。
【図3】本発明の一実施例の印刷制御部のフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1はハンマバンク、2はインクリボン、3は印刷用紙、4はプラテン、5はシャトル機構部、6は紙送り機構部、7は印刷制御部、8は印刷モード設定手段、11は印刷制御処理部、12は不揮発性記憶素子、13は印刷機構部制御ドライバ、14は印刷機構動作部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印刷素子を搭載したハンマバンクと、前記ハンマバンクを桁方向に往復移動させるシャトル機構部と、ステッピングモータ等を用いて桁方向と垂直に印刷用紙を間欠的に搬送するための紙送り機構部と、前記ハンマバンクの印刷力を支持すると共に前記印刷用紙のガイドとなるプラテンと、印刷用紙を挟む前記ハンマバンクと前記プラテン間のギャップを印刷用紙厚によって可変できるギャップ可変機構部と、前記ハンマバンクの打撃時間、回数、及び印刷ドット密度を変更し印刷速度及び複写能力を制御する印刷制御部と、印刷モードを選択、設定をすることのできる印刷モード設定手段と、印刷モード等の印刷設定を記憶する不揮発性記憶素子を有する印刷装置において、印刷モード設定時に前記不揮発性記憶素子に記憶した印刷用紙仕様に適したギャップを同時に設定できることを特徴とする印刷装置のギャップ設定方法。
【請求項2】
印刷用紙の連量、部数、カーボン紙等の仕様を印刷モード設定手段から印刷装置に入力することによって、印刷用紙仕様に適したギャップを印刷制御部で算出し、不揮発性素子に記憶し、印刷モード設定時に自動でギャップ設定することを特徴とする請求項1記載の印刷装置のギャップ設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−38611(P2007−38611A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228302(P2005−228302)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】