説明

印刷装置及びその制御方法

【課題】 総ページ数の多い印刷ジョブを保存すると、その記憶装置の容量が圧迫されてしまう。またPDLデータから展開するのにそれほど時間のかからない印刷ジョブもイメージデータで記憶装置に保存すると貴重なメモリを使用しているにもかかわらず、再印刷時の高速化が期待できない。
【解決手段】 印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置及び制御方法であって、印刷データをジョブスプール領域に保存し、そのジョブスプール領域に保存された印刷データを基にイメージデータに展開し、展開されたイメージデータをイメージスプール領域に格納し、そのイメージデータを用いて印刷する。そしてイメージスプール領域に保存されたイメージデータを再印刷のために保存するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一度印刷した印刷データを再印刷指示に従って再度印刷できる印刷装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あるドキュメントの印刷後に、同じドキュメントをもう一部印刷したいというユーザの要求がある。このような要求に対して、データ処理装置から印刷データを再送することなく、画像形成装置のパネル操作による再印刷(以降、リプリント)指示に従って、そのドキュメントの再印刷を行うリプリント技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
通常の印刷処理では、画像形成装置は、データ処理装置から受信した印刷ジョブを画像形成装置内の記憶装置に保存し、印刷処理が終了した後に、その保存した印刷ジョブを削除する。
【0004】
これに対してリプリントモードでは、画像形成装置は、印刷処理が終了した後も、保存した印刷ジョブを削除せずに、記憶装置の空きがなくなるまで、リプリント対象の印刷ジョブを保存し続ける。これによりユーザは、再度、データ処理装置から印刷データを受信することなく、パネル操作によるリプリント指示によって、一度印刷した画像を再度印刷することができる。
【0005】
リプリントモードでは、画像形成装置は、受信した印刷ジョブを記憶装置内のジョブスプール領域に自動保存していく。更に、自動保存された印刷ジョブの展開済みイメージデータを記憶装置のイメージスプール領域に保存しておき、リプリント時には、その保存されたイメージデータを使用することで、印刷開始から終了までの時間を短縮ことも提案されている。特許文献2では、印刷ジョブのPDLデータだけでなく、所定ページ数分はPDLデータを展開したイメージデータとして保存しておき、再印刷時にそのイメージデータによる印刷を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−063158号公報
【特許文献2】特開2009−122928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術は次に挙げる問題点を有している。一つ目は、記憶装置に記憶できるイメージデータの保存領域は限られており、総ページ数の多い印刷ジョブを保存すると、その記憶装置の容量が圧迫されてしまう。
【0008】
二つ目は、PDLデータから展開するのにそれほど時間のかからない印刷ジョブであってもイメージデータで記憶装置に保存されてしまうため、貴重な記憶装置のメモリを使用しているにもかかわらず、再印刷時の高速化が期待できないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【0010】
本発明の特徴は、再印刷時の高速化を維持しながら、イメージデータのデータ量を少なく抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る印刷装置は以下のような構成を備える。即ち、
印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置であって、
前記印刷データをジョブスプール領域に保存する保存手段と、
前記保存手段によってジョブスプール領域に保存された印刷データを基にイメージデータに展開する展開手段と、
前記展開手段によって展開されたイメージデータをイメージスプール領域に格納する格納手段と、
前記イメージデータを用いて印刷する印刷手段と、
前記イメージスプール領域に保存された前記イメージデータを再印刷のために保存するか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再印刷時の高速化を維持しながら、イメージデータのデータ量を少なく抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置(印刷装置)を含む印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係るプリンタのコントローラの構成を説明するブロック図。
【図3】実施形態に係るプリンタのコントローラにおけるデータの流れを説明する図。
【図4】実施形態に係る保存ジョブ制御部が管理する保存ジョブ管理テーブルの一例を示す図。
【図5】実施形態において、パネルインタフェース部がリプリント指示を受け付けるためのUI画面の一例を示す図。
【図6】実施形態に係るプリンタが印刷ジョブを受信して印刷するまでの処理を説明するフローチャート。
【図7】実施形態に係るプリンタによるリプリント実行時の処理手順を示すフローチャート。
【図8】図6のS109のイメージデータを保存するかどうかを決定するための処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置(印刷装置)100を含む印刷システムの構成を示すブロック図である。
【0016】
画像形成装置100は、コントローラ102、操作パネル103、プリンタエンジン104を有している。またデータ処理装置(PC)101は、画像形成装置100に印刷ジョブを送信するホストコンピュータとして機能しており、画像形成装置100に対して、印刷ジョブとして印刷データや当該印刷ジョブの属性情報等を送信する。
【0017】
本実施形態では、画像形成装置100としてレーザビームプリンタ(以降、プリンタ)を用いている。本実施形態に係る画像形成装置100は、レーザビームプリンタに限られるものではなく、インクジェットプリンタ等他のプリント方式のプリンタでもよいことは言うまでもない。コントローラ102は、データ処理装置101から供給される印刷データ(例えば、ページ記述言語(PDL))に基づいて、ページ毎にラスタデータを生成してプリンタエンジン104に送出する。プリンタエンジン104は、コントローラ102から供給されるラスタデータに基づいて、感光ドラム上に潜像を形成し、その潜像を記録媒体上に転写・定着(電子写真方式)することにより画像を記録する。操作パネル103は、ユーザインタフェースとして使用される。コントローラ102は、操作パネル103を介してユーザからの所望の動作指示を受け付ける。またコントローラ102は、操作パネル103を介して、プリンタ100の処理内容やユーザへの警告内容を表示する。
【0018】
図2は、実施形態に係る画像形成装置100のコントローラ102の構成を説明するブロック図である。
【0019】
図において、パネルインタフェース部201は、操作パネル103とコントローラ102とのデータのやり取りを制御する。CPU209は、パネルインタフェース部201を介して、操作パネル103を使用したユーザによる設定及び指示内容を受け付ける。ホストインタフェース部202は、ネットワークを介してホストコンピュータ等のデータ処理装置101と双方向で通信する。中間データ作成部203は、ホストインタフェース部202を介してデータ処理装置101から受信した印刷ジョブをプリンタ100で扱いやすい形である中間データに変換する。ROM204は、本実施形態に係る処理や、その他プリンタ100が実行する制御プログラムコード等を保持している。RAM205は、CPU209のワークエリアを提供したりCPU209のメインメモリとして使用される。CPU209がRAM205に格納するデータには、ホストインタフェース部202を介して受信した印刷データ、印刷データを解釈して生成される中間データがある。更には、その中間データをレンダリングして生成されるビットマップデータ(以下、イメージデータ)、その他の処理に必要な一時的な各種処理ステータスなどがある。
【0020】
二次ストレージ221は、ホストインタフェース部202を介して受信した印刷データやその他ログ情報などを保存する。この二次ストレージ221には、HDDやSDカードなどが用いられる。エンジンインタフェース部206は、プリンタエンジン104とコントローラ102との間のインタフェースを制御する。CPU209は、エンジンインタフェース部206を介して、プリンタエンジン104の状態を認識する。DMA制御部207は、RAM205に格納されているイメージデータをエンジンインタフェース部206に転送する。レンダリング部208は、RAM205に格納された中間データの内容に従ってイメージデータに展開する。CPU209は、ROM204に格納された制御プログラムに基づいて、CPUバス220に接続されたデバイスを制御する。EEPROM210は、プリンタ100の設定情報を保持するための不揮発性メモリである。メディアインタフェース部211は、USBメモリ等のリムーバブルメディア222から画像データ、プログラムデータ、機器設定データ等の各種データを読み取ったり書き込んだりする。
【0021】
ジョブ制御部212は、ROM204に保持されるプログラムのモジュールであり、そのプログラムはコントローラ102のRAM205に記憶され、CPU209により実行される。CPU209は、データ処理装置101から受信したデータを印刷ジョブとして、ジョブ制御部212を介して、RAM205或いは二次ストレージ221に保存した上で印刷処理を実行する。更にCPU209は、データ処理装置101から受信したデータを印刷ジョブとして、ジョブ制御部212を介して、RAM205或いは二次ストレージ221に保存したり、保存されている印刷ジョブをそれらから消去したりする。CPUバス220は、アドレス、データ、コントロールバスを含む。上述した201から210で示すデバイスのそれぞれは、CPUバス220に接続された全てのデバイスにアクセスできる。ジョブ制御部212は、リプリント用にRAM205や二次ストレージ221に格納されている印刷ジョブの保存や削除等の処理を担う。
【0022】
図3は、実施形態に係るプリンタ100のコントローラ102におけるデータの流れを説明する図である。
【0023】
図において、受信バッファ301は、RAM205に論理的に確保されており、データ処理装置101から受信した印刷データを格納する。ジョブスプール領域302は、RAM205或いは二次ストレージ221に論理的に確保されていて、受信バッファ301に格納された印刷データを記憶する。この受信バッファ301の容量は、通常、ジョブスプール領域302の容量よりも小さい。イメージスプール領域303は、RAM205に論理的に確保されており、レンダリング部208により展開されたイメージデータを格納する。
【0024】
ホストインタフェース部202は、受信バッファ301が空であれば、データ処理装置101より印刷データを受信して受信バッファ301に保存する(S310)。ジョブ制御部212は、受信バッファ301に印刷データが保存されたという通知を受けたときに、ジョブスプール領域302に、少なくとも受信バッファ301の容量と同じサイズの空きがあることを確認する。ジョブ制御部212は、その空きがなければ空きができるまで待機し、その空きがあればジョブスプール領域302に印刷データを印刷ジョブとして保存するとともに受信バッファ301のデータを消去して受信バッファ301を空にする(S311)。ジョブ制御部212は、一方で、ジョブスプール領域302に保存されている保存ジョブを消去する処理も非同期に行っている。
【0025】
中間データ作成部203は、イメージスプール領域303に所定のサイズの空きがあるという条件の下で、ジョブスプール領域302に保存されている印刷ジョブを読み出し、PDL解釈処理(中間データ作成処理)を行う。中間データ作成部203によって作成された中間データは、RAM205に論理的に確保された不図示のバッファに保存される。レンダリング部208は、不図示のバッファに保存されている中間データに従ってレンダリング処理を開始し、レンダリング処理によって生成されるイメージデータをイメージスプール領域303に保存する(S312)。エンジンインタフェース部206は、プリンタエンジン104と同期を取りながら、DMA制御部207を介してイメージスプール領域303のイメージデータをプリンタエンジン104に転送する(S313)。又ジョブ制御部212は、S313の後に、イメージスプール領域303に保存されたイメージデータを保存しておくか、消去するかを判断し(S314)、保存もしくは消去を行う。
【0026】
本実施形態に係るコントローラ102は、データ処理装置101より印刷データを受信して印刷する通常モードの他にリプリントモードを備えており、リプリントモードと通常モードを本体のユーザメニューの設定によって切り替えることができる。
【0027】
リプリントモードは、一度印刷した印刷ジョブをジョブスプール領域302に保存したままにしておいて、別のタイミングで、その保存されている印刷ジョブをユーザからの印刷指示に従って再度印刷するモードのことである。またリプリント時における印刷時間の短縮のため、印刷ジョブをジョブスプール領域302に保存するだけでなく、展開後のイメージデータをイメージスプール領域303に保存しておき、再印刷時に利用している。リプリントモードが設定されているときには、コントローラ102は、ジョブ制御部212を介して、印刷ジョブが終了してもジョブスプール領域302に自動保存した保存ジョブデータを消去しないまま残しておくように制御する。ジョブ制御部212は、リプリントモードに設定されているときには、図4を参照して後述する保存ジョブ管理テーブルに従って保存ジョブを管理する。
【0028】
コントローラ102は、ジョブスプール領域302に保存している印刷ジョブを、パネルインタフェース部201を介して操作パネル103にリプリント可能なジョブリストとして表示する。リプリント可能なジョブリストを示す操作パネル103の表示画面例を図5を参照して後述する。
【0029】
そしてコントローラ102は、操作パネル103に表示したリプリント可能なジョブリストに対して、操作パネル103を介してユーザからリプリント指示があれば、その指示された保存ジョブを印刷する。このとき対象の保存ジョブに対するイメージデータが保存されている場合は、その保存されているイメージデータを使用して印刷を行う。
【0030】
図4は、実施形態に係るジョブ制御部212が管理する保存ジョブ管理テーブルの一例を示す図である。
【0031】
この保存ジョブ管理テーブルは、ジョブ制御部212がジョブスプール領域302に保存している全ての保存ジョブと、イメージスプール領域303に保存しているイメージデータを管理するための管理テーブルである。この保存ジョブ管理テーブルは、ジョブスプール領域302内の管理領域に保存されている。
【0032】
ジョブ制御部212は、受信バッファ301に保存されている印刷データをジョブスプール領域302に転送するときに、その印刷データが新規ジョブの印刷データかどうかを判断する。ジョブ制御部212は、その印刷データが新規ジョブの印刷データと判断した場合は、その印刷データのジョブ情報(属性情報)を解釈し、ジョブID、ジョブオーナー、ジョブ名、ジョブサイズ、ジョブ生成日時といった情報を抽出する。そして、その抽出した情報を保存ジョブ管理テーブルに新規に登録する。またジョブ制御部212は、エンジンインタフェース部206からの印刷終了通知に従って、対象ジョブの最終印刷日時を登録、或いは更新する。更にジョブ制御部212は、新規ジョブとして保存ジョブ管理テーブルに登録する場合、また操作パネル103を介してユーザからリプリント指示を受けた場合、更にエンジンインタフェース部206からの印刷終了通知を受けた場合は印刷状態を更新する。またジョブ制御部212は、イメージスプール領域303に保存しているイメージデータを継続して保存するか、消去するかを判断してイメージデータを更新する。図4の例では、ジョブIDが「JID001」と「JID002」の印刷ジョブのイメージデータが保存されておらず、ジョブIDが「JID003」のイメージデータが保存されているのが分かる。
【0033】
図5は、実施形態において、パネルインタフェース部201がリプリント指示を受け付けるためのUI画面の一例を示す図である。
【0034】
図5(A)は、ジョブスプール領域302に保存されているジョブを操作するためのジョブメニュー画面例を示す。このジョブメニュー画面において、操作パネル103を介してユーザが「リプリント」を選択すると、パネルインタフェース部201は、ジョブ制御部212を介して保存ジョブ管理テーブルのジョブオーナー情報に従って図5(B)に示す画面を表示する。
【0035】
図5(B)は、リプリント可能な印刷ジョブのオーナーリストの表示画面例を示し、この画面を使用して、リプリントを指示するジョブのオーナー情報を入力する。例えばこの画面において、操作パネル103を介してユーザが「UID004」を選択すると、パネルインタフェース部201は、ジョブ制御部212を介してジョブオーナー「UID004」に対応するジョブ名に従って図5(C)に示す画面を表示する。
【0036】
図5(C)は、ジョブオーナー「UID004」が有するリプリント可能な印刷ジョブの一覧表示例を示す画面で、この画面を使用して、リプリントを指示するジョブ情報が入力される。例えばこの画面において、操作パネル103を介してユーザが「分担表」を選択すると、パネルインタフェース部201は、ジョブ制御部212を介してジョブ名「分担表」に対応するジョブID情報(JID001)を取得する。そして図5(D)に示すリプリントの開始を指示するための画面を表示する。
【0037】
図5(D)は、リプリントの開始を確認するための画面例を示す図である。例えばこの画面において、操作パネル103を介してユーザが「はい」を選択すると、パネルインタフェース部201は、ジョブ制御部212にジョブID「JID004」の「分担表」のリプリントの開始を指示する。ジョブ制御部212は、パネルインタフェース部201からのジョブIDが「JID004」のリプリント開始指示に従ってリプリントジョブを生成する。このとき、このジョブIDが「JID004」の印刷ジョブのイメージデータが保存されていると、ジョブ制御部212は、その保存されているイメージデータを基にリプリントジョブを生成する。
【0038】
図6は、実施形態に係るプリンタ100が印刷ジョブを受信して印刷するまでの処理を説明するフローチャートである。尚、図6のフローチャートで示す処理は、CPU209がROM204に格納されているプログラムを実行することにより達成される。
【0039】
まずS101で、ジョブ制御部212は、ホストインタフェース部202を介してデータ処理装置101からの印刷データの受信通知を待つ。印刷データの受信通知は、ホストインタフェース部202が図3のS310で、データ処理装置101から印刷データを受信し、受信バッファ301に保存することによって発生する。ホストインタフェース部202から印刷データの受信通知があるとジョブ制御部212は、ジョブスプール領域302に所定サイズの空きがあるかどうかを判断する。この所定サイズの空きとは、例えば受信バッファ301と同じメモリサイズの空きでよい。この所定サイズの空きがないときは、ジョブ制御部212は、ジョブスプール領域302全体のメモリサイズから、保存ジョブ管理テーブルのジョブサイズの合計値を引いた値が、受信バッファ301のメモリサイズより小さいかどうかを判断する。そして小さいと判断すると、いずれかの保存ジョブを消去してジョブスプール領域302に空きを作る。このとき消去する保存ジョブの判断基準としては、例えば、保存ジョブ管理テーブルの最終印刷日時が最も古い印刷ジョブを消去するといった判断基準でも良い。
【0040】
こうしてジョブ制御部212は、ジョブスプール領域302に必要なメモリサイズを確保できるとS102に進む。S102では、受信バッファ301の印刷データをジョブスプール領域302に保存ジョブとして保存し、保存ジョブ管理テーブルに新規ジョブを登録してS103に進む。
【0041】
次にジョブ制御部212は、図3のS312で、ジョブスプール領域302に保存された保存ジョブからイメージデータを生成する時間を計測するために、S103で、イメージデータの生成開始時刻T1を記録する。続いてS104に進み、中間データ作成部203は、ジョブスプール領域302に保存された保存ジョブを読み出してPDL解釈処理を行って中間データを作成し、RAM205に論理的に確保された不図示のバッファに保存する。次にS105に進み、レンダリング部208は、不図示のバッファに保存されている中間データに従ってレンダリング処理を行い、イメージデータを生成する。そしてS106で、ジョブ制御部212はS103と同様に、イメージデータの生成終了時刻T2を記録する。
【0042】
そしてジョブ制御部212は、レンダリング処理の完了通知を受けると、イメージスプール領域303に所定サイズの空きがあるかどうかを判断する。この所定サイズの空きとは、例えばイメージデータのサイズと同等のサイズでよい。所定サイズの空きがないときは、イメージスプール領域303全体のサイズから、保存ジョブ管理テーブルにおける保存イメージ情報が「有」であるジョブサイズの合計値を引いた値を求める。そして、この値がイメージデータのサイズより小さければ、いずれかの保存イメージを消去してメモリの空きを作る。消去する保存イメージの判断基準としては、例えば、保存ジョブ管理テーブルの最終印刷日時が最も古い印刷ジョブを消去するといった判断基準でもよい。また、最終印刷日時から一定時間が経過している印刷ジョブを消去するといった基準や、合計で規定ページ数分のみ保存するといった基準でもよい。
【0043】
こうしてジョブ制御部212が、イメージスプール領域303に必要なサイズの空きを確保するとS107に進み、S105で生成されたイメージデータをイメージスプール領域303に保存してS108に進む。S108では、保存したイメージデータをプリンタエンジン104に転送して印刷を実行する。
【0044】
ジョブ制御部212は、該当ページの印刷完了後、S109で、保存しているイメージデータの保存を継続するか、削除するかを判断する。この処理は図8のフローチャートを参照して後述する。このイメージデータの保存を継続するか否かの判断は、例えばS103,S106で記録した実測時間の差(T2−T1)に基づいて行われる。例えば、この時間差が、プリンタエンジン104の性能やコントローラ102の性能から算出されるスループットを満たすために必要な時間より大きい場合に、該当ページを保存するようにしても良い。プリンタエンジン104の性能としては、片面・両面の搬送速度に対応したスループットの値や、プリンタエンジン104毎の後回転発生の紙間許容時間等が挙げられる。
【0045】
また、複数ページを含む印刷ジョブにおいて、1ページでも該当するページデータが含まれる場合に、該当ジョブの全ページのイメージデータを保存するようにしてもよい。その他の基準の例として、印刷ジョブの総ページ数が、規定ページ数以下であれば、それらページのイメージデータを保存するようにしても良い。このとき、規定ページ数は、ユーザが設定可能にしても良いことは言うまでもない。
【0046】
そしてS110に進み、S109で決定した判断基準に基づいて、当該印刷ジョブの該当ページのイメージデータを保存するかどうかを判定する。ここで保存しないと判定するとS111に進み、イメージスプール領域の該当するイメージデータを削除してS112に進む。S112では、保存ジョブ管理テーブルの情報をS109〜S111の判断に従って更新する。
【0047】
以上説明したフローチャートによれば、所定の条件を満たすイメージデータだけをリプリント用のイメージデータとして保存することにより、イメージスプール領域を効率良く使用してリプリントに要する時間を短縮できる。
【0048】
また例えばPDLデータをレンダリングするまでの時間が所定時間内のデータは、PDLデータのままでリプリント用にジョブスプール領域に保存するため、ジョブスプール領域のメモリ容量が圧迫される度合いを少なくしてリプリント用のデータを保存できる。また、リプリント用のデータのデータ量の増大を抑えながら、かつリプリントに要する時間の増大を抑えることができる。一般に、イメージデータで保存されている場合は、高速にリプリントを行うことができる。しかし、イメージデータは一般的にPDLデータよりもデータ量が多いため、メモリの容量を節約するためにPDLデータで保存するか、或いはイメージデータで保存するかを判定している。
【0049】
図7は、実施形態に係るプリンタ100によるリプリント実行時の処理手順を示すフローチャートである。尚、図7のフローチャートで示す処理は、CPU209がROM204に格納されているプログラムを実行することにより達成される。
【0050】
まずS200で、ユーザが図5(A)〜(D)に示すようなリプリント指示画面を通して、リプリント対象の印刷ジョブを選択してリンプリントの開始を指示する。これにより、図4に示す保存ジョブ管理テーブルに格納されたジョブの中からリプリント対象の印刷ジョブが一意に決定されてS201に進む。S201では、ジョブ制御部212が、保存ジョブ管理テーブルの「保存イメージ」の情報を基に、該当印刷ジョブのイメージデータが保存されているか否かを判別する。イメージデータが保存されていないときはS202に進むが、イメージデータが保存されているときはS208に進む。S208では、ジョブ制御部212が、イメージスプール領域303に保存された、該当するイメージデータを検索してS209に進む。S209では、図6のS108と同様に、その保存されているイメージデータをプリンタエンジン104に転送して印刷を実行する。そしてS210に進み、図6のS109〜S112と同様に、イメージデータの保存或いは削除処理を実行して、保存ジョブ管理テーブルのイメージデータの最終印刷日時を更新する。
【0051】
一方、イメージデータが保存されていないときはS202に進み、ジョブ制御部212が、ジョブスプール領域302に保存された印刷ジョブを検索してS203に進む。S203では、図6のS103と同様に、イメージデータの生成開始時刻T1を記録する。次にS204に進み、図6のS104と同様に、中間データ作成部203がジョブスプール領域302に保存された該当印刷ジョブを用いてPDLの解釈処理を行って中間データを作成する。次にS205に進み、S105と同様に、レンダリング部208がS204で生成された中間データに従ってレンダリング処理を行ってイメージデータを生成する。次にS206に進み、図6のS106と同様に、イメージデータの生成終了時刻T2を記録する。そしてS207に進み、S107と同様に、ジョブ制御部212が、S205で生成されたイメージデータをイメージスプール領域303に保存してS209に進む。S209では、図6のS108と同様に、その保存されているイメージデータをプリンタエンジン104に転送して印刷を実行する。そしてS210に進み、図6のS109〜S112と同様に、イメージデータの保存或いは削除処理を実行して、保存ジョブ管理テーブルのイメージデータの最終印刷日時を更新する。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、総ページ数の少ないジョブの展開済みイメージデータ、或いはイメージデータへの展開に長い時間がかかる印刷ジョブの展開済みイメージデータを効率的に保存できる。これにより、メモリの浪費を抑えながら、リプリントを高速に実行できるという効果がある。
【0053】
図8は、図6のS109のイメージデータを保存するかどうかを決定するための処理を説明するフローチャートである。
【0054】
まずS401で、その印刷ジョブの総ページ数がN(Nは正の整数で、例えばN=10)ページ以下かどうかを判定する。そうであればS402に進み、Nページ以下であればイメージデータのデータ量が少ないと判断して、そのイメージデータをイメージスプール領域303に保存すると決定して元の処理に戻る。
【0055】
一方、S401で、その印刷ジョブの総ページ数がN以上であればS403に進み、図6のS103,S106で測定された時間の差(展開時間:T2−T1)が所定時間よりも短いかどうかを判定する。S403で所定時間よりも短いと判定するとS404に進み、この場合はPDLデータのままで保存してもリプリントに要する時間がそれほど長くならないと判定して、イメージスプール領域303の該当するイメージデータを削除すると決定する。そして元の処理に戻る。
【0056】
尚、図8のS401で、印刷ジョブの総ページ数がN以上であればS404に進んで、イメージスプール領域303の該当するイメージデータを削除すると決定するようにしても良い。
【0057】
このように本実施形態によれば、イメージデータへの展開にそれほど時間がかからない印刷データは、データ量の少ないPDLデータで保存しておき、また印刷データのデータ量が所定量以下のデータはイメージデータで保存している。これにより、リプリントの高速化を実現しながら、かつイメージスプール領域303におけるイメージデータのデータ量の増大を抑えることができる。
【0058】
本実施形態によれば、総ページ数の多いジョブにイメージスプール領域を占有されることなく、総ページ数の少ないジョブをイメージスプール領域に保存することで、リプリント用ジョブとして保存すべき有効ジョブ数を多くすることができるようになる。また、展開に時間のかかる印刷ジョブに関してのみイメージスプール領域に保存することで、リプリント時間の短縮に有効なジョブの保存数を多くすることができるようになる。
【0059】
(その他の実施例)
また本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置であって、
前記印刷データをジョブスプール領域に保存する保存手段と、
前記保存手段によってジョブスプール領域に保存された印刷データを基にイメージデータに展開する展開手段と、
前記展開手段によって展開されたイメージデータをイメージスプール領域に格納する格納手段と、
前記イメージデータを用いて印刷する印刷手段と、
前記イメージスプール領域に保存された前記イメージデータを再印刷のために保存するか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記印刷データが所定のページ数以下である場合に保存すると判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記展開手段による前記印刷データからイメージデータへの展開時間を測定する測定手段を更に有し、
前記判定手段は、前記測定手段により測定された前記展開時間が所定時間よりも少ない場合に、前記イメージデータを再印刷のために保存しないと判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
再印刷を指示する指示手段と、
前記指示手段による再印刷の指示に応じて、前記イメージスプール領域に該当するイメージデータが格納されているときは当該イメージデータに基づいて再印刷を実行し、前記イメージスプール領域に該当するイメージデータが格納されていないときは前記保存手段に保存されている該当する印刷データを前記展開手段により展開して再印刷を実行する再印刷手段とを更に有することを特徴とする請求項1乃至の3いずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置を制御する制御方法であって、
前記印刷装置の保存手段が、前記印刷データをジョブスプール領域に保存する保存工程と、
前記印刷装置の展開手段が、前記保存工程でジョブスプール領域に保存された印刷データを基にイメージデータに展開する展開工程と、
前記印刷装置の格納手段が、前記展開工程で展開されたイメージデータをイメージスプール領域に格納する格納工程と、
前記印刷装置の印刷手段が、前記イメージデータを用いて印刷する印刷工程と、
前記印刷装置の判定手段が、前記イメージスプール領域に保存された前記イメージデータを再印刷のために保存するか否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111947(P2013−111947A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262656(P2011−262656)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】