説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】インクジェットプリンターで、複数のノズルを有するノズル列の中から、所定のノズルを自由に選択して印刷を行う。
【解決手段】複数の素子PZTに接続される素子選択部87であって、ノズル列は複数の素子群に分けられており、素子選択部87に接続された複数の素子PZTは、それぞれが異なる素子群に属し、素子選択信号Sに応じて、素子選択部87に接続された複数の素子PZTの中から駆動信号COMを印加する1の素子PZTを選択する素子選択部87と、素子選択部87に接続され、素子選択部87を介して駆動信号COMを素子PZTへと転送するスイッチ86と、駆動信号COMを生成してスイッチ86に送信することと、素子選択信号Sを生成して素子選択部87に送信することと、を行う制御部HC’と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルに設けられた素子を振動させてインクを噴出することにより印刷を行うインクジ
ェットプリンターが広く普及している。インクジェットプリンターを用いた印刷方法とし
て、各色インクを噴出するノズル列をそれぞれ複数からなるノズル群(素子群)に分け、
ノズル列のうちの所定のノズル群(素子群)からインクを噴出してドットを形成すること
で、画像を印刷する方法が知られている。
このような印刷を実行するために、画像を形成するドット毎のシリアルデータから各素
子群にそれぞれ対応する印刷データを生成し、該印刷データを素子を振動させるための駆
動信号に変換して、ノズル群中の各素子に印加することで、所定のノズル群(素子群)か
らインクを噴出させる方法が提案されている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、各色ノズル列において、それぞれ異なる位置にある素子群
を用いてインクを噴出させることができる。すなわち、インクの色毎にノズル列の中から
印刷に使用するノズル群をあらかじめ設定しておくことができる。
しかし、このように特定のノズル群を設定して印刷を繰り返すと、ノズル列中で特定部
分のノズル使用頻度が高くなり、その部分のノズル(素子)のみが著しく劣化しやすくなる
ことがある。一方、従来の方法では、印刷中にノズル群を変更することはできず、また、
ノズル列中で部分的にノズルが劣化した場合であっても、該劣化したノズルを切り替えて
、他のノズルを選択して印刷を行うようなことはできなかった。
本発明は、インクジェットプリンターで、複数のノズルを有するノズル列の中から、所
定のノズルを自由に選択して印刷を行うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)複数のノズルにより構成されるノズル
列と、前記複数のノズルにそれぞれ対応して設けられ、駆動信号によって振動することで
ノズルからインクを噴出させる複数の素子と、を有し、媒体が搬送される方向と交差する
方向に移動しつつ、前記ノズルから前記媒体にインクを噴出するヘッド部と、(B)前記
複数の素子に接続される素子選択部であって、前記ノズル列は複数の素子群に分けられて
おり、前記素子選択部に接続された複数の素子は、それぞれが異なる前記素子群に属し、
素子選択信号に応じて、前記素子選択部に接続された複数の素子の中から前記駆動信号を
印加する1の素子を選択する素子選択部と、(C)前記素子選択部に接続され、前記素子
選択部を介して前記駆動信号を前記素子へと転送するスイッチと、(D)前記駆動信号を
生成して前記スイッチに送信することと、前記素子選択信号を生成して前記素子選択部に
送信することと、を行う制御部と、を備える印刷装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは、本実施形態のプリンターの構成を説明する図である。図2Bは、本実施形態のプリンターの構成を説明する側面図である。
【図3】ヘッドの構造を説明する断面図である。
【図4】ヘッドに設けられたノズル列を説明する図である。
【図5】参考例におけるヘッド制御部HCを表したブロック図である。
【図6】駆動信号COMと各種信号の説明図である。
【図7】図7Aは、画素データSIと設定データSPとを含む設定信号の説明図である。図7Bは、波形選択信号生成部844の機能の説明図である。
【図8】第1実施形態におけるヘッド制御部HC’を表したブロック図である。
【図9】第1実施形態におけるスイッチと各ノズルNzとの接続状態を説明する図である。
【図10】第1実施形態における設定信号の説明図である。
【図11】第1実施形態におけるPZT選択部87の構成の一例を示す図である。
【図12A】アナログスイッチを用いたPZT選択部87の変形例を示す図である。
【図12B】トランジスタを用いたPZT選択部87の変形例を示す図である。
【図12C】FETを用いたPZT選択部87の変形例を示す図である。
【図13A】HレベルのPZT選択信号Sが入力された場合のピエゾ素子PZT群の動作を説明する図である。
【図13B】LレベルのPZT選択信号Sが入力された場合のピエゾ素子PZT群の動作を説明する図である。
【図14】表刷り印刷時または裏刷り印刷時にPZT選択部87に入力されるPZT選択信号Sの種類を示す図である。
【図15】図15A及び図15Bは表刷り印刷時に背景画像の上に実画像を形成する方法を説明する図である。
【図16】図16A及び図16Bは裏刷り印刷時に実画像の上に背景画像を形成する方法を説明する図である。
【図17】第1実施形態の変形例を表したブロック図である。
【図18A】第1実施形態の変形例で、HレベルのPZT選択信号Sが入力された場合のピエゾ素子PZT群の動作を説明する図である。
【図18B】第1実施形態の変形例で、MレベルのPZT選択信号Sが入力された場合のピエゾ素子PZT群の動作を説明する図である。
【図18C】第1実施形態の変形例で、LレベルのPZT選択信号Sが入力された場合のピエゾ素子PZT群の動作を説明する図である。
【図19】図19A及び図19Bは、第1実施形態の表刷り印刷時に、背景画像の上に実画像を形成する方法を説明する図である。
【図20】図20A及び図20Bは、第1実施形態の裏刷り印刷時に、実画像の上に背景画像を形成する方法を説明する図である。
【図21】第2施形態におけるヘッド制御部HC”を表したブロック図である。
【図22】第2実施形態におけるスイッチと各ノズルNzとの接続状態を説明する図である。
【図23】図23Aは第2実施形態で表刷り印刷時または裏刷り印刷時にPZT選択部87に入力されるPZT選択信号S1及びS2の種類を示す。図23Bは第2実施形態でKCMYノズル列を使用したカラー印刷時にPZT選択部87に入力されるPZT選択信号S1及びS2の種類を示す。
【図24】図24A及び図24Bは、第2実施形態でWインクとKCMYインクを用いた表刷り印刷時の印刷動作を説明する図である。
【図25】図25Aは第2実施形態でノズル列上流部を用いた印刷動作を説明する図である。図25Bは第2実施形態でノズル列下流部を用いた印刷動作を説明する図である。図25Cは第2実施形態でノズル列中央部を用いた印刷動作を説明する図である。
【図26】微振動用の駆動信号を印加するための構成を示すブロック図である。
【図27】図27Aは第2実施形態の変形例で表刷り印刷時または裏刷り印刷時にPZT選択部87に入力されるPZT選択信号S1,S2及び微振動信号S1〜S4の種類を示す。図27Bは第2実施形態の変形例でKCMYノズル列を使用したカラー印刷時にPZT選択部87に入力されるPZT選択信号S1,S2及び微振動信号S1〜S4の種類を示す。
【図28】図28Aは第2実施形態の変形例でWインクとKCMYインクを用いた表刷り印刷時の印刷動作を説明する図である。図28Bは第2実施形態の変形例でWインクとKCMYインクを用いた裏刷り印刷時の印刷動作を説明する図である。
【図29】図29Aは第2実施形態の変形例でノズル列上流部を用いた印刷動作を説明する図である。図29Bは第2実施形態の変形例でノズル列下流部を用いた印刷動作を説明する図である。図29Cは第2実施形態の変形例でノズル列中央部を用いた印刷動作を説明する図である。
【図30】第3実施形態におけるスイッチと各ノズルNzとの接続状態を説明する図である。
【図31】図31Aは第3実施形態の表刷り印刷時において各ノズルから噴出されるインクの様子を説明する図である。図31Bは第3実施形態の裏刷り印刷時において各ノズルから噴出されるインクの様子を説明する図である。
【図32】第4実施形態における印刷時のフローを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0008】
(A)複数のノズルにより構成されるノズル列と、前記複数のノズルにそれぞれ対応し
て設けられ、駆動信号によって振動することでノズルからインクを噴出させる複数の素子
と、を有し、媒体が搬送される方向と交差する方向に移動しつつ、前記ノズルから前記媒
体にインクを噴出するヘッド部と、(B)前記複数の素子に接続される素子選択部であっ
て、前記ノズル列は複数の素子群に分けられており、前記素子選択部に接続された複数の
素子は、それぞれが異なる前記素子群に属し、素子選択信号に応じて、前記素子選択部に
接続された複数の素子の中から前記駆動信号を印加する1の素子を選択する素子選択部と
、(C)前記素子選択部に接続され、前記素子選択部を介して前記駆動信号を前記素子へ
と転送するスイッチと、(D)前記駆動信号を生成して前記スイッチに送信することと、
前記素子選択信号を生成して前記素子選択部に送信することと、を行う制御部と、を備え
る印刷装置。
このような印刷装置によれば、複数のノズルを有するノズル列の中から、所定のノズル
を自由に選択して印刷を行うことができる。
【0009】
かかる液体噴出装置であって、前記複数の素子群のうち、前記素子選択信号によって選
択される素子で構成される素子群を用いて印刷を行うことが望ましい。
このような印刷装置によれば、ノズル列中で、搬送上流側/下流側等任意の位置の素子
群(ノズル群)を選んで印刷を行うことができる。
【0010】
かかる液体噴出装置であって、前記各素子についてインク噴出不良の有無を検出し、前
記各ノズル列中で、インク噴出不良の生じている素子が所定の割合以下となる素子群を選
択して印刷を行うことが望ましい。
このような印刷装置によれば、あらかじめインク噴出不良を生じている素子の割合が少
ない素子群を選択して印刷を行うことが可能となるため、印刷ムラの少ない画像を形成す
ることができる。
【0011】
かかる液体噴出装置であって、前記ノズル列には、背景色インクを噴出する背景色イン
クノズル列と、カラーインクを噴出するカラーインクノズル列とがあり、
前記背景色インクノズル列と前記カラーインクノズル列とで、各ノズル列長手方向の異
なる位置にある素子群を選択して印刷を行うことが望ましい。
このような印刷装置によれば、白インク列とカラーインク列とでインクを噴出する位置
がずれていることにより、背景と実画像の形成位置(順序)をコントロールすることがで
き、表刷り印刷/裏刷り印刷を自在に行うことができる。
【0012】
かかる液体噴出装置であって、(A)前記各素子群を構成する前記素子に接続され、前
記素子選択信号によって選択されなかった素子を選択する微振動信号に応じて、前記ノズ
ルからインクが噴出されない程度に前記素子を振動させる微振動用駆動信号を印加する素
子を選択する微振動選択部と、(B)前記微振動選択部に接続され、前記微振動選択部を
介して前記微振動用駆動信号を各素子へと転送する微振動用スイッチと、(C)前記微振
動用駆動信号を生成して前記微振動用スイッチに送信することと、前記微振動信号を生成
して前記微振動選択部に送信することと、を行う制御部と、を有し、前記素子選択信号に
より選択されなかった各素子を微振動させることが望ましい。
このような印刷装置によれば、素子選択信号によって選択されず、印刷には使用されな
い素子を微振動させることができ、不使用ノズル内部でのインク固化を防止してノズル目
詰まりを起こしにくくすることができる。
【0013】
かかる液体噴出装置であって、前記各ノズル列両端に位置する複数の素子は、それぞれ
1の前記素子選択部に接続され、前記各ノズル列中央部に位置する複数の素子は、それぞ
れ2の前記素子選択部に接続されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、噴出不良が生じやすいノズル列端部に位置するノズル(
ピエゾ素子PZT)の使用を避けつつ、該噴出不良ノズル以外(ピエゾ素子PZT)の正
常なノズル(ピエゾ素子PZT)を使用して印刷することができるため、効率的な印刷が
できる。
【0014】
かかる液体噴出装置であって、前記素子選択部が、デマルチプレクサ、または、トラン
ジスタ、または、FETを用いて構成されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、素子選択部において消費電力の低減を図ることができる
。また、同一構成の回路を集積化すれば、コストを削減することも可能になる。
【0015】
また、駆動信号を生成してスイッチに送信することと、素子選択信号を生成して素子選
択部に送信することと、前記素子選択信号に応じて、前記素子選択部に接続された複数の
素子のうち、1の素子を選択することと、選択された前記素子に前記スイッチから前記素
子選択部を介して前記駆動信号を印加することで、前記素子を振動させてノズルからイン
クを噴出させることと、を有する印刷方法が明らかとなる。
【0016】
===印刷装置の基本的構成===
発明を実施するための印刷装置の形態として、インクジェットプリンター(プリンター
1)を例に挙げて説明する。プリンター1は、紙、布、等の媒体に向けてインクを噴出す
ることによりインクドットを形成して、媒体に画像を印刷するカラーインクジェットプリ
ンターである。ここで、印刷に使用するインクとしては、紫外線(以下、UVともいう)
の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインクともいう)を使用するこ
とが可能である。その場合、媒体にはフィルムシート等の透明な媒体も含まれる。以下、
UVインクを使用して印刷を行う例について説明する。
【0017】
透明媒体に印刷を行う際には、印刷された画像を透明媒体の印刷された側から直接見る
ための画像(表刷り印刷)と、透明媒体越しに見るための画像(裏刷り印刷)とをいずれ
も印刷することが可能である。このとき、画像を直接見るための画像は、スキャナーで読
み取った画像やデジタルカメラ等にて撮影された画像など、元となる所定画像の正像であ
り、透明媒体越しに見るための画像は、元となる所定画像の鏡像である場合が多いが、左
右対称の画像や元画像に対し左右を反転した画像を敢えて印刷する場合にはこれに限らな
い。
【0018】
また、UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外
線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリン
ター1は、CMYKの4色と背景画像を印刷するため白色(W)とのUVインクを用いて
印刷を行う。
【0019】
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
プリンター1は外部制御装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている
。コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタ
ードライバーは、コンピューター110の表示装置にユーザーインターフェースを表示さ
せ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるた
めのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD
−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている
。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウン
ロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコ
ードから構成されている。
【0020】
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じ
て画像データから変換した印刷データをプリンター1へ送信する。印刷データは、プリン
ター1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データとを有
する。コマンドデータとは、プリンター1に特定の動作の実行を指示するためのデータで
ある。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示す
コマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データは、印刷され
る画像の画素に関するデータである。
【0021】
ここで、画素とは画像を構成する単位要素であり、この画素が2次元的に並ぶことによ
り画像が構成される。印刷データにおける画素データは、媒体(例えば紙Sなど)上に形
成されるドットに関するデータ(例えば、階調値)である。画素データは画素毎に2ビッ
トのデータによって構成される。この2ビットの画素データは1つの画素を4階調で表現
できる。
【0022】
プリンター1は、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット3
0と、照射ユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、駆動信号生成回路
70と、を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受
信した印刷データに基づいて搬送ユニット20やキャリッジユニット30等の各ユニット
を制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視さ
れており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー6
0は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0023】
<搬送ユニット10>
図2Aは本実施形態のプリンター1の構成を表した鳥瞰図であり、図2Bはプリンター
1の構成を表した側面図である。
搬送ユニット10は、媒体である紙S等を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送
させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方向であ
る。搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター12と、搬送ローラー13
と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する(図2A及び図2B)。
給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された紙Sをプリンター内に給紙するためのロー
ラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された紙Sを印刷可能
な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター12によって駆動される。搬送モータ
ー12の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プラテン14は、
印刷中の紙Sを、紙Sの裏側から支持する部材である。排紙ローラー15は、紙Sをプリ
ンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設け
られている。
【0024】
<キャリッジユニット20>
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30が取り付けられたキャリッジ21を所
定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのもので
ある。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22(CRモ
ータともいう)とを有する(図2A及び図2B)。
キャリッジ21は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター22によって
駆動される。キャリッジモーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により
制御される。また、キャリッジ21は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能
に保持している。
【0025】
<ヘッドユニット30>
ヘッドユニット30は、紙Sにインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット3
0は、複数のノズルを有するヘッド31とヘッド制御部HCとを備える。このヘッド31
はキャリッジ21に設けられ、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移
動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にインクを断続的に噴出する
ことによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0026】
図3は、ヘッド31の構造を示した断面図である。ヘッド31は、ケース311と、流
路ユニット312と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース311はピエゾ素子群PZ
Tを収納し、ケース311の下面に流路ユニット312が接合されている。流路ユニット
312は、流路形成板312aと、弾性板312bと、ノズルプレート312cとを有す
る。流路形成板312aには、圧力室312dとなる溝部、ノズル連通口312eとなる貫
通口、共通インク室312fとなる貫通口、インク供給路312gとなる溝部が形成され
ている。弾性板312bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部312hを
有する。そして、アイランド部312hの周囲には弾性膜312iによる弾性領域が形成
されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室312fを介して
、各ノズルNzに対応した圧力室312dに供給される。ノズルプレート312cはノズ
ルNzが形成されたプレートである。
【0027】
ノズル面では、主画像を形成するカラーインク噴出ノズル列としてイエローインクを噴
出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを噴出するマゼンタノズル列Mと、シアン
インクを噴出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを噴出するブラックノズル列Kと
が設けられる。またKCMYの各カラーノズル列に並んで、主に背景画像を形成するホワ
イトインクを噴出するホワイトノズル列Wが設けられる。
【0028】
図4は、ヘッド31に設けられたノズルNzの説明図である。図4に示されるように各
ノズル列では、各色のインクを噴出するための噴出口であるノズルNzが搬送方向に所定
間隔Dにて並ぶことにより構成されている。そして、各ノズル列において、#1〜#36
0の360個のノズルNzを備えている。
【0029】
ピエゾ素子群は、櫛歯状の複数のピエゾ素子PZT(駆動素子)を有し、ノズルNzに
対応する数分だけ設けられている。配線基板であるフレキシブルケーブル(不図示)によ
ってピエゾ素子PZTに駆動信号COMが印加され、駆動信号COMの電位に応じてピエ
ゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、図3に示されるアイラン
ド部312hは圧力室312d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、
アイランド部312h周辺の弾性膜312iが変形し、圧力室312d内の圧力が上昇・
下降することにより、ノズルからインク滴が噴出される。
【0030】
ヘッド制御部HCは、ピエゾ素子群PZTの駆動等を制御するための制御用ICであり
、不図示のフレキシブルケーブルなどに実装され、ノズル列毎に、すなわち色毎に、それ
ぞれ設けられる。ヘッド制御部HCの詳細については、後で説明する。
【0031】
<照射ユニット40>
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。
媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、
硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、仮硬化用照射部41a、41bと本硬化用
照射部43とを備えている。
仮硬化用照射部41a、41bは、走査方向に並べられたWKCMYの各ノズル列の両
端に位置するホワイトインクノズル列W及びイエローインクノズル列Yよりさらに外側に
それぞれ隣接して設けられており、5つのノズル列WKCMYを挟むように配置されてい
る(図4参照)。このため、キャリッジ21が、一端側から他端側へ、または、他端側か
ら一端側へのいずれの方向に移動しつつ噴出したインクであっても、UVを照射すること
ができるように構成されている。また、本硬化用照射部43は、印刷対象となる媒体の幅
よりも長く形成されており、搬送方向におけるヘッド31より下流側に配置されている。
本硬化及び仮硬化の詳細については後述する。
【0032】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には
、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学
センサ54等が含まれる(図2A及び図2B)。
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー
式エンコーダ52は、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙
中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられてい
る発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、移動しながら紙
の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況
に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向
上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0033】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である
。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユ
ニット制御回路64とを有する。
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との
間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算
処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を
確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そ
して、CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回
路64を介して搬送ユニット10等の各ユニットを制御する。また、CPU62は、ヘッ
ド31の動作を制御するためのヘッド制御信号をヘッドユニット30に出力したり、駆動
信号COMを生成するための信号を駆動信号生成回路70に出力したりする。
【0034】
<駆動信号生成回路70>
駆動信号生成回路70は、ピエゾ素子PZTに印加するための駆動信号COMを生成す
るものである。駆動信号生成回路70において生成された駆動信号COMは、他の信号と
ともにケーブルを介してヘッド制御部HCへ入力される。なお、駆動信号生成回路70は
、プリンター側コントローラー60と共通のコントローラー基板CTRに設けられている
(図1参照)。
【0035】
<仮硬化及び本硬化について>
本実施形態では、媒体に着弾したUVインクにUVを照射することでドットを硬化させ
ている。プリンター1では、照射ユニット40として、UVインクの仮硬化用のUV照射
を行なう仮硬化用照射部41a及び41bと、本硬化用のUV照射を行なう本硬化用照射
部43とを備えており、2段階の硬化を行なっている。なお、仮硬化とは、媒体に着弾し
たUVインクの流動(ドットの広がり)を抑えるためや、あるいは、ドット間のインクの
滲みを防止するためにドットの表面部分を硬化するものであり、本硬化とは、UVインク
を完全に硬化させるためのものである。従って、本硬化の方がUVの照射エネルギーが大
きい(すなわち照射量が多い)。
【0036】
仮硬化用照射部41a及び41bは、図2Aや図2Bに示すように、それぞれキャリッ
ジ21に搭載されており、キャリッジ21の移動に伴ってヘッド31と一体的に移動方向
に移動する。すなわち、ヘッド31の各色のノズル列が往復移動する際、仮硬化用照射部
41a及び41bは各色のノズル列に対する相対位置を維持しながら往復移動する。この
際に仮硬化用照射部41a及び41bから媒体に向けてUVが照射される。具体的には、
往動の期間には仮硬化用照射部41aからUVが照射され、復動の期間には仮硬化用照射
部41bからUVが照射される。このように仮硬化は、ドットを形成するのと同じパスに
おいて行なわれる。なお、仮硬化用照射部41a及び41bの光源は、それぞれ仮硬化用
照射部41a及び41b内に収容されることによりヘッド31から隔離されている。これ
により、光源から照射されるUVがヘッド31の下面へ漏れるのを防ぎ、以って、当該下
面に形成された各ノズルの開口付近でUVインクが硬化すること(ノズルの目詰まり)を防
止している。
【0037】
本硬化用照射部43は、ヘッド31よりも搬送方向下流側に設けられており、移動方向
の長さが印刷対象となる媒体の幅よりも長くなっている。そして、本硬化用照射部43は
、移動することなく媒体に向けてUVを照射する。この構成により、パスによってドット
の形成された媒体が、搬送動作によって本硬化用照射部43の下まで搬送されると、本硬
化用照射部43によるUVの照射を受けるようになっている。
【0038】
仮硬化用照射部41a及び41bと、本硬化用照射部43とは、それぞれ媒体に向けて
UVを照射するための光源を備えている。本実施形態では、仮硬化用照射部41a及び4
1bの光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いている。LE
Dは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが
可能である。また、本硬化用照射部43の光源として、ランプ(メタルハライドランプ、
水銀ランプなど)を用いている。
【0039】
<プリンターの基本的な印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピュー
ター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御す
ることにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0040】
給紙処理は、印刷すべき媒体をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも
言う)に媒体を位置決めする処理である。コントローラー60は、給紙ローラー11を回
転させ、印刷すべき媒体を搬送ローラー13まで送る。続いて、搬送ローラー13を回転
させ、給紙ローラー11から送られてきた媒体を印刷開始位置に位置決めする。
【0041】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクを断続的
に噴出させ、媒体上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャリッジ
21を移動方向に移動させ、キャリッジ21が移動している間に、印刷データに基づいて
ヘッド31からインクを噴出させる。噴出されたインク滴が媒体上に着弾すると、媒体上
にドットが形成され、媒体上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが
形成される。形成されたドットに照射ユニット40の仮硬化仮硬化用照射部41a・41
bからUVを照射することにより、半硬化状態のドットが形成される。
【0042】
搬送処理は、媒体をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。
コントローラー60は、搬送ローラー13を回転させて媒体を搬送方向に搬送する。この
搬送処理により、ヘッド31は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位
置とは異なる位置にドットを形成することが可能になる。そして、媒体上に形成されたド
ットは、搬送下流域に設けられた本硬化用照射部43からUV照射を受けることにより完
全硬化され、画像を形成する。
【0043】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理
とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に媒体に印刷する。そし
て、印刷すべきデータがなくなると、排紙ローラーを回転させてその媒体を排紙する。な
お、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。

次の印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0044】
次に、本実施形態の理解を容易にするため、まず参考例について説明し、その後に本実
施形態について説明する。
【0045】
===参考例===
<参考例のヘッド制御部HCについて>
図5は、参考例のヘッド制御部HCのブロック図である。
ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第
1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、信号選択部83と、制御ロジック84
と、スイッチ86とを備えている。そして、制御ロジック84を除いた各部(すなわち、
第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラ
ッチ回路82B、信号選択部83、及びスイッチ86)は、それぞれピエゾ素子PZT毎
に設けられる。制御ロジック84は、設定データSPを記憶するためのシフトレジスタ群
842と、設定データSPに基づいて波形選択信号q0〜q3を生成する波形選択信号生
成部844とを有している。
このヘッド制御部HCには、プリンター側コントローラー60からケーブルを介して、
クロックCLK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、駆動信号COMが入力さ
れる。また、画素データSIと設定データSPとを含む設定信号も、コントローラー60
からケーブルを介してヘッド制御部HCへ入力される。
【0046】
図6は、駆動信号COMと各種信号の説明図である。図7Aは、画素データSIと設定
データSPとを含む設定信号の説明図である。図7Bは、波形選択信号生成部844の機
能の説明図である。
【0047】
クロックCLKに同期して設定信号がヘッド制御部HCに入力されると、設定信号のう
ちの下位ビットデータが第1シフトレジスタ81Aにそれぞれセットされ、上位ビットデ
ータが第2シフトレジスタ81Bにそれぞれセットされ、設定データSPが制御ロジック
84のシフトレジスタ群842にセットされる。なお、各ノズルにそれぞれ対応する2ビ
ットの画素データの下位ビットは第1シフトレジスタ81Aにセットされ、2ビットの画
素データの上位ビットは第2シフトレジスタ81Bにセットされる。
【0048】
そして、ラッチ信号LATのパルスに応じて、下位ビットデータが第1ラッチ回路82
Aにラッチされ、上位ビットデータが第2ラッチ回路82Bにラッチされ、設定データS
Pが波形選択信号生成部844にラッチされる。なお、各ノズルにそれぞれ対応する2ビ
ットの画素データの下位ビットは第1ラッチ回路82Aにラッチされ、2ビットの画素デ
ータの上位ビットは第2ラッチ回路82Bにラッチされる。
【0049】
参考例の設定データSPは、16ビットデータから構成される(図7A参照) 。そし
て、波形選択信号生成部844は、16ビットの設定データSPのうちの所定の4ビット
データ(データP00、データP10、データP20、データP30)とチェンジ信号C
Hとに基づいて、波形選択信号q0を生成する。また、同様に、16ビットの設定データ
SPのうちの所定の4ビットデータとチェンジ信号CHとに基づいて、波形選択信号q0
〜q3を生成する。
【0050】
この参考例では、16ビットの設定データSPのうち、データP00、データP12、
データP13、データP21及びデータP33は[1]であり、他のデータは[0]であ
る。このため、波形選択信号q0のための4ビットデータ(データP00、データP10
、データP20、データP30)は[1000]になり、この結果、波形選択信号q0は
、第1区間T1においてHレベルになり、第2区間T2〜第4区間T4においてLレベル
になる。また、波形選択信号q1〜q3も図7Bに示す通りの信号になる。
【0051】
信号選択部83は、第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bにラッチされた2
ビットの画素データに応じて、波形選択信号q0〜q3から1つを選択する。画素データ
が[00]の場合(下位ビットが[0]で上位ビットが[0]の場合)には波形選択信号
q0が選択され、画素データが[01]の場合には波形選択信号q1が選択され、画素デ
ータが[10]の場合には波形選択信号q2が選択され、画素データが[11]の場合に
は波形選択信号q3が選択される。選択された波形選択信号は、スイッチ信号SWとして
信号選択部83から出力される。
【0052】
スイッチ86には駆動信号COM及びスイッチ信号SWが入力される。スイッチ信号が
Hレベルのとき、スイッチ86はON状態になり、駆動信号COMがピエゾ素子PZTへ
印加される。スイッチ信号SWがLレベルのとき、スイッチ86はOFF状態になり、駆
動信号COMはピエゾ素子PZTへ印加されない。
【0053】
画素データが[00]の場合、スイッチ86が波形選択信号q0によりON/OFFさ
れ、駆動信号COMの第1区間信号SS1がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子P
ZTは駆動パルスPS1により駆動される。この駆動パルスPS1に応じてピエゾ素子P
ZTが駆動すると、インクが噴出されない程度の圧力変動がインクに生じて、インクメニ
スカス(ノズル部分で露出しているインクの自由表面)が微振動する。
【0054】
画素データが[01]の場合、スイッチ86が波形選択信号q1によりON/OFFさ
れ、駆動信号COMの第3区間信号SS3がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子P
ZTは駆動パルスPS3により駆動される。この駆動パルスPS3に応じてピエゾ素子P
ZTが駆動すると、小程度の量のインクが噴出され、用紙に小ドットが形成される。
【0055】
画素データが[10]の場合、スイッチ86が波形選択信号q2によりON/OFFさ
れ、駆動信号COMの第2区間信号SS2がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子P
ZTが駆動パルスPS2により駆動される。この駆動パルスPS2に応じてピエゾ素子P
ZTが駆動すると、中程度の量のインクが噴出され、用紙に中ドットが形成される。
【0056】
画素データが[11]の場合、スイッチ86が波形選択信号q3によりON/OFFさ
れ、駆動信号COMの第2区間信号SS2及び第4区間信号SS4がピエゾ素子PZTへ
印加され、ピエゾ素子PZTが駆動パルスPS2及び駆動パルスPS4により駆動される
。これらの駆動パルスPS2及び駆動パルスPS4に応じてピエゾ素子PZTが駆動する
と、用紙に大ドットが形成される。
【0057】
===第1実施形態===
図8は、第1実施形態におけるヘッド制御部HC’を表したブロック図である。本実施
形態では、ヘッド制御部HC’を構成する信号選択部83やスイッチ86等各ユニットの
数、それらのユニットとピエゾ素子PZTとの接続方法、及び、制御ロジック84の構成
が参考例とは異なり、PZT選択部87が新たに設けられている。また、ヘッド制御部H
C’に入力される設定信号には画素データSIと設定データSPに加えてPZT選択デー
タSEが含まれる。なお、このヘッド制御部HC’が搭載されたヘッド41は、ヘッドユ
ニットに相当する。以下、参考例と異なる点について説明する。
【0058】
<ピエゾ素子PZTの配置>
参考例では1つのスイッチ86に対して1つのピエゾ素子PZTが直に接続されていた
が、本実施形態では1つのスイッチ86に対してPZT選択部87を挟んで複数のピエゾ
素子PZTが接続されている。特に、第1実施形態では1つのスイッチ86に対して2つ
のピエゾ素子PZTを接続する。これら2つのピエゾ素子PZTのうち一方は、印刷周期
Tの期間内において駆動信号COMが印加されることにより動作してノズルNzからイン
クを噴出するが、他方は動作せずインクを噴出しない。つまり、本実施形態において、周
期Tの間に実際にインクを噴出するのに使用されるのは、全ピエゾ素子PZTのうち半数
のピエゾ素子PZTである。
【0059】
図9に本実施形態におけるスイッチ86及びPZT選択部87と各ピエゾ素子PZTと
の接続状態の概略図を示す。1つのPZT選択部87に接続される2つのピエゾ素子PZ
Tの組み合わせは、図8及び図9に示されるように、(#1と#181)、(#2と#1
82)〜(#180と#360)の180組となる。そして、図9に示されるように、各
ノズル列を構成するピエゾ素子PZT(#1〜#360)は、ノズル列の搬送上流側に属
するピエゾ素子PZT群(#1〜#180)と、ノズル列の搬送下流側に属するピエゾ素
子PZT群(#181〜#360)との2つのグループに分けることができる。
【0060】
参考例では#1〜#360の各ピエゾ素子PZTについてそれぞれスイッチ86が接続
され、合計360個のスイッチ86が設けられていた。それに対して、本実施形態ではス
イッチ86は合計で180個設けられ、参考例の半数となっている。また、図8及び図9
では省略されているが、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラ
ッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、及び、信号選択部83の数量も参考例の半分と
なっている。
【0061】
各組を構成する2つのピエゾ素子PZTのうち、選択された一方のピエゾ素子PZTの
みが駆動信号により動作してノズルNzからインクを噴出する。例えば(#1と#181
)の組で選択されるのは#1または#181の一方のみである。ピエゾ素子PZTの選択
は、後述するPZT選択信号Sにより行われる。ピエゾ素子PZT選択の際には、必ず上
流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#180)に属する180個のピエゾ素子PZT、ま
たは、下流側のピエゾ素子PZT群(#181〜#360)に属する180個のピエゾ素
子PZTが同時に選択されるようになっている。つまり、PZT選択信号Sの種類により
、各ノズル列の上流側を使用するか、下流側を使用するかを制御することができる。制御
方法の詳細については後で説明する。
【0062】
<制御ロジック84>
制御ロジック84は、シフトレジスタ群842、波形選択信号生成部844に加えて、
PZT選択信号生成部845を有する(図8)。PZT選択信号生成部845は、PZT
選択部87に接続された前述の2つのピエゾ素子PZTのうち、動作してノズルNzから
インクを噴出させる方のピエゾ素子PZTを選択するためのPZT選択信号Sを生成する

【0063】
PZT選択信号Sを生成するために、本実施形態における設定信号には、前述の画素デ
ータSIと設定データSPの他に、PZT選択データSEが含まれている。図10に、本
実施形態における設定信号の概念図を示す。PZT選択データSEは[0]または[1]
で表される1ビットのデータである。PZT選択データSEは画素データSIの次に送信
されているが(図10においてSIとSPとの間の位置)、データ送信の順番はとくに決
まっていない。PZT選択データSEが最初に送信されてもよいし、最後であってもよい

【0064】
なお、画素データSIと設定データSPの働きは参考例の場合と同様であり、これらの
データからスイッチ信号SWが生成される。そして、スイッチ信号SWがスイッチ86に
入力されることで、駆動信号COMのピエゾ素子PZTへの印加が制御される。
【0065】
クロックCLKに同期して設定信号がヘッド制御部HC’に入力されると、設定データ
SPと共にPZT選択データSEが制御ロジック84のシフトレジスタ群842にセット
される。そして、PZT選択データSEはラッチ信号LATのパルスに応じてPZT選択
信号生成部845にラッチされる。PZT選択信号生成部845は、1ビットの設定デー
タSEに基づいて、HレベルまたはLレベルのPZT選択信号Sを生成する。例えば、P
ZT選択データSEが[1]の場合にはHレベルのPZT選択信号Sが生成され、PZT
選択データSEが[0]の場合にはLレベルのPZT選択信号Sが生成される。そして、
生成されたPZT選択信号SはPZT選択部87へと送信される。
【0066】
<PZT選択部87>
PZT選択部87は、PZT選択部87に接続される2のピエゾ素子PZTのうち実際
に使用する方のピエゾ素子PZTを選択する。該選択された方のピエゾ素子PZTにはス
イッチ86から転送された駆動信号COMが印加され、ピエゾ素子PZTを振動させるこ
とによりノズルNzからインクを噴出させる。ノズルの選択は制御ロジック84から送信
されたPZT選択信号Sに基づいて行われる。
【0067】
図11にPZT選択部87の構成の一例を示す。本実施形態では、2以上の出力を有す
るデマルチプレクサ871を用いてPZT選択部87が構成される。図11のように、デ
マルチプレクサ871の入力側にはスイッチ86が接続され、駆動信号COMが入力され
る。なお、PZT選択部87として使用されるデマルチプレクサには、駆動信号COMの
電圧(本実施形態においては42V程度)に耐えられる程度の耐圧性が必要である。デマ
ルチプレクサ871の出力側は2つのピエゾ素子PZT(例えば#1と#181)にそれ
ぞれ接続され、入力された駆動信号COMを2つのピエゾ素子PZTのうち選択された方
のピエゾ素子PZTに出力する。デマルチプレクサ871の制御入力には前述のPZT選
択信号生成部845が接続され、該選択信号生成部845から送信されたPZT選択信号
Sにより、デマルチプレクサ871の出力端子が選択される。
【0068】
例えば、PZT選択信号SがHレベルである場合には前述の上流側ピエゾ素子PZT群
(#1〜#180)に属するピエゾ素子PZTが選択され、PZT選択信号SがLレベル
である場合には下流側ピエゾ素子PZT群(#181〜#360)に属するピエゾ素子P
ZTが選択され、選択された方のピエゾ素子PZTに駆動信号COMが印加される。
このようにデマルチプレクサを用いることで、単純な回路でPZT選択部87構成し、
所望のピエゾ素子PZTを選択して印刷を行うことができる。
【0069】
また、PZT選択部87として、高耐圧のアナログスイッチを用いることもできる。図
12Aにアナログスイッチを用いた場合のPZT選択部87の構成の一例を示す。スイッ
チ86と搬送上流側ピエゾ素子PZT(図12Aにおいては#1)との間にはアナログス
イッチ873が設けられ、スイッチ86と搬送下流側ピエゾ素子PZT(図12Aにおい
ては#181)との間にはアナログスイッチ874が設けられる。アナログスイッチ87
3及び874は同型のアナログスイッチであり、制御入力信号がHレベルの時にONにな
り、制御入力信号がLレベルの時にOFFになる。
PZT選択信号生成部845で生成されたPZT選択信号Sは出力後に2つに分けられ
、一方はそのままアナログスイッチ873の制御入力に接続され、他方は論理否定(NO
T)回路88を通してアナログスイッチ874の制御入力に接続される。
PZT選択信号SはHレベルとLレベルの2種類があるため、一方のPZT選択信号S
はそのままアナログスイッチ873に入力されるが、他方のPZT選択信号Sは論理否定
(NOT)回路88を通過することによりHとLが反転した状態のPZT選択信号S’と
してアナログスイッチ874の制御入力端子に入力される。
【0070】
例えば、図12Aにおいて、PZT選択信号生成部845で生成されるPZT選択信号
SがHレベルのとき、アナログスイッチ873にはHレベルのPZT選択信号Sが入力さ
れ、ONとなる。一方、アナログスイッチ874にはHレベル信号が反転されたLレベル
のPZT選択信号S’が入力され、OFFとなる。
したがって、スイッチ86から転送された駆動信号COMはアナログスイッチ873を
介して#1のピエゾ素子PZTに印加される。一方、#181のピエゾ素子PZTには駆
動信号COMが印加されない。このようにして、PZT選択部87に接続された2つのピ
エゾ素子PZTのうちの一方のピエゾ素子PZTのみに、択一的に駆動信号COMを転送
することができる。
【0071】
なお、アナログスイッチ873及び874の代わりにトランジスタを用いてPZT選択
部87を構成することも可能である。図12Bにトランジスタを用いた場合の例を示す。
図12Bに示すように、アナログスイッチ873の代わりにNPN型トランジスタ875
を用い、コレクタ端子にスイッチ86を接続し、エミッタ端子に搬送上流側のピエゾ素子
PZT(#1)を接続し、ベース端子にはPZT選択信号生成部845を接続する。同様
に、トランジスタ875と同型のNPN型トランジスタ876を、アナログスイッチ87
4の代わりに搬送下流側のピエゾ素子PZT(#181)に接続する。その他の回路構成
は図12Aの場合と同様である。
【0072】
トランジスタ875及びトランジスタ876のベースに入力するPZT選択信号Sはそ
れぞれ反対のレベル信号であるため、一方のトランジスタのみがONとなり、#1または
#181のどちらか一方のピエゾ素子PZTを選択して駆動信号COMを印加することが
できる。
【0073】
さらに、図12Cに示すように、NPN型トランジスタの代わりにFET(Field Effe
ct Transistor)を用いてPZT選択部87を構成することも可能である。図12Cでは
トランジスタ875の代わりにN型のMOS FET877を用いて、ドレインにスイッ
チ86を接続し、ソースに搬送上流側のピエゾ素子PZT(#1)を接続し、ゲートにP
ZT選択信号生成部845を接続する。同様に、トランジスタ876の代わりにMOS
FET877と同型のMOS FET878を搬送下流側のピエゾ素子PZT(#181
)に接続する。
これにより、一方のFETのみがONとなり、どちらか一方のピエゾ素子PZTを選択
して駆動信号COMを印加することができる。
【0074】
トランジスタやFETを用いることで、一般的なアナログスイッチを用いた場合よりも
コストが安くなり、また、消費電力の低減を図ることが可能となる。特に消費電力の低減
を考慮するのであれば、FETを用いるのが好ましい。そして、全てのピエゾ素子PZT
の組について同一の回路構成とすることができるため、IC(集積)化することで、さら
にコスト・消費電力を抑えることができるようになる。
【0075】
<第1実施形態の印刷動作の説明>
各ノズル列に設けられた180組のPZT選択部87には、Hレベル、または、Lレベ
ル何れかのPZT選択信号Sが入力される。該入力されたPZT選択信号Sの種類により
、ノズル列中の搬送上流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#180)、または、搬送下流側
ピエゾ素子PZT群(#181〜#360)のどちらを使用して印刷を行うかを選択する
ことができる。
図13Aに、HレベルのPZT選択信号Sが入力された場合におけるノズル列中のピエ
ゾ素子PZT群の動作の様子を、図13Bに、LレベルのPZT選択信号Sが入力された
場合におけるノズル列中のピエゾ素子PZT群の動作の様子を示す。
【0076】
PZT選択部87にHレベルのPZT選択信号Sが入力された場合、Hレベル信号によ
り、ノズル列の上流側に属するピエゾ素子PZT群(#1〜#180)が選択され、それ
ぞれ駆動信号COMが印加される。したがって、上流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#1
80)に属する180個のピエゾ素子PZTが振動し、図13Aに示されるノズル列中の
着色された部分からインクが噴出され、印刷が行われる。一方、選択されなかったノズル
列下流側に属するピエゾ素子PZT群(#181〜#360)には駆動信号COMが印加
されず、この部分のピエゾ素子PZTは動作せず、インクも噴出しない。
同様に、PZT選択部87にLレベルのPZT選択信号Sが入力された場合、これによ
り、ノズル列の下流側に属するピエゾ素子PZT群(#181〜#360)が選択され、
駆動信号COMが印加される。そして、図13Bに示されるノズル列中の着色された部分
からインクが噴出され、印刷が行われる。一方、選択されなかったノズル列上流側に属す
るピエゾ素子PZT群(#1〜#180)には駆動信号COMが印加されず、インクも噴
出しない。
【0077】
なお、前述のように、PZT選択部87としてアナログスイッチ等を用いる場合には、
ノズル列の上流側にはHレベルのPZT選択信号Sを、下流側にはHレベルのPZT選択
信号Sを反転して生成したLレベルのPZT選択信号S’を入力する。これにより、ノズ
ル列の上流側に属するピエゾ素子PZT群(#1〜#180)はHレベル信号により選択
され、インクを噴出して画像を形成する。一方、下流側に属するピエゾ素子PZT群(#
181〜#360)は反転されたLレベル信号により選択されず、インクを噴出しない。

同様に、ノズル列の上流側にLレベルのPZT選択信号Sを、下流側にHレベルのPZ
T選択信号S’を入力した場合は、ノズル列の上流側に属するピエゾ素子PZT群(#1
〜#180)はLレベル信号によりインクを噴出せず、下流側に属するピエゾ素子PZT
群(#181〜#360)は、Hレベル信号により選択され、インクを噴出して画像を形
成することができる。
このように、各ノズル列に入力するPZT選択信号Sを切り替えることにより、ノズル
列毎にインクを噴出するノズル群(ピエゾ素子PZT群)を自由に選択することができる

【0078】
<表刷り印刷/裏刷り印刷時の印刷動作の説明>
本実施形態の印刷装置では、各ノズル列のインク噴出位置を選択することにより、KC
MYインクを用いた通常の実画像印刷に加えて、W(白)インクを用いた背景画像印刷を
同時に行うことができる。また、印刷された画像を表面から見るための表刷り印刷、及び
、印刷する媒体が透明な場合に、印刷された画像を裏側から見るための裏刷り印刷を行う
ことができる。
【0079】
図14に、表刷り印刷時または裏刷り印刷時において、各ノズル列のインク噴出を制御
するために入力されるPZT選択信号Sの種類を示す。また、図15A及び図15Bは、
本実施形態において表刷り印刷時に背景画像の上に実画像を形成する方法を説明する図で
ある。Wインクノズル列、KCMYインクノズル列ともに、図15A及び図15Bの斜線
部で示される部分からインクが噴出される。
表刷り印刷時には、まず、Wインクドッを形成してUV照射により半硬化させておき、
形成されたWインクドットの上にKCMYインクドットを形成する。
【0080】
図15Aに示されるように、Wインクノズル列にはHレベルのPZT選択信号Sを入力
し、KCMYインクノズル列にはLレベルのPZT選択信号Sを入力する。これにより、
まず、Wインクノズル列の搬送方向上流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)からWインク
を噴出させ、媒体上の所定の領域である領域1にWインクドットによる背景画像を形成し
ておく。次に、図15Bのように媒体を搬送させて、領域1上に形成された背景画像をK
CMYインクノズル列の下流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)の噴出位置まで移動させ
る。そして、CMYKインクノズル列の搬送方向下流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)
からKCMYインクを噴出させ、領域1に形成されている背景画像の上に実画像を形成す
る。このとき、媒体の領域1の搬送上流側に位置する領域2には、Wインクノズル列の搬
送方向上流側ノズル群からWインクが噴出され背景画像が形成される。このような動作を
繰り返すことで、表刷り印刷時において背景画像の上に実画像を形成することができる。
【0081】
続いて、裏刷り印刷について説明する。図16A及び図16Bは裏刷り印刷時に実画像
の上に背景画像を形成する方法を説明する図である。裏刷り印刷時は、表刷り印刷時とは
逆に、まず媒体上にKCMYインクドッを形成してUV照射により半硬化させておき、形
成されたKCMYインクドット上にWインクドットを形成する。
【0082】
図16Aに示されるように、KCMYインクノズル列にHレベルのPZT選択信号Sを
入力し、Wインクノズル列にはLレベルのPZT選択信号Sを入力する。これにより、K
CMYインクノズル列の搬送方向上流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)からKCMYイ
ンクを噴出させ、媒体上の所定の領域である領域1にKCMYインクドットによる実画像
を形成しておく。次に、図16Bのように媒体を搬送させて、領域1上に形成された実画
像がWインクノズル列の下流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)の位置まで移動したとこ
ろで、該領域1に形成された実画像の上にWインクを噴出して背景画像を形成する。この
とき、媒体の領域1の搬送上流側に位置する領域2には、KCMYインクノズル列の搬送
方向上流側ノズル群(ピエゾ素子PZT群)からカラーインクが噴出され実画像が形成さ
れる。このような動作を繰り返すことで、裏刷り印刷時において実画像の上に背景画像を
形成することができる。
【0083】
このように、裏刷り印刷時には表刷り印刷時とは逆のPZT選択信号Sを入力すること
で、インクを噴出するピエゾ素子PZT群も逆にすることができる。本実施形態では選択
信号Sを切り替えることにより、表刷り印刷時/裏刷り印刷時のそれぞれについて、背景
画像を形成した印刷を簡単に行うことができる。
【0084】
<第1実施形態の効果>
本実施形態のプリンターを使用すれば、PZT選択信号Sにより、各色ノズル列の上流
側からインクを噴出するか、または、下流側からインクを噴出するかを自由に選択するこ
とができる。これにより、印刷ジョブ毎に、ノズル列中で実際にインクを噴出させるノズ
ル群(ピエゾ素子PZT群)を使い分けることが可能となる。なるべく全ノズルが均等に
使用されるようにノズル群を使い分けることで、特定のノズルのみが集中的に使用される
ことによるノズルの劣化(例えばノズル列の上流側ノズル群のみを使用し続ける場合等)
を防止することができる。また、一部のノズルに噴出不良が生じている場合などには、そ
のノズルを含むノズル群(ピエゾ素子PZT群)を避けて印刷を行うことも可能である。
【0085】
なお、ノズル列中で一部のノズル群(ピエゾ素子PZT群)を選択して印刷を行うのは
、これらの目的には限られない。例えば、前述のように各色ノズル列で印刷に使用するノ
ズル群(ピエゾ素子PZT群)を適当に選択することによって、背景画像と実画像を同時
に印刷したり、表刷り印刷/裏刷り印刷を使い分けたりすることができる。
【0086】
===第1実施形態の変形例===
第1実施形態では、1つのPZT選択部87に対して2つのピエゾ素子PZTを接続し
た場合について説明したが、1つのPZT選択部87に接続されるピエゾ素子PZTは2
つでなくてもよい。図17に第1実施形態の変形例として、1つのPZT選択部87に対
して3つのピエゾ素子PZTが接続された場合のブロック図を示す。
【0087】
1つのPZT選択部87に接続されるピエゾ素子PZTの組み合わせは、(#1と#1
21と#241)、(#2と#122と#242)〜(#120と#240と#360)
の120組となる。これは、各ノズル列を構成するピエゾ素子PZT(#1〜#360)
を搬送方向に3分割して、搬送上流側に属するピエゾ素子PZT群(#1〜#120)、
搬送中流側に属するピエゾ素子PZT群(#121〜#240)、及び、搬送下流側に属
するピエゾ素子PZT群(#241〜#360)に分けたものである。
【0088】
PZT選択部87に接続される3つのピエゾ素子PZTのうち、動作してノズルからイ
ンクを噴出するのは、選択された1つのピエゾ素子PZTのみであり、ピエゾ素子PZT
の選択はPZT選択信号Sにより行われる。また、ピエゾ素子PZT選択の際には、必ず
上流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#120)、または中流側のピエゾ素子PZT群(
#121〜#240)、または下流側のピエゾ素子PZT群(#241〜#360)の1
20個のピエゾ素子PZTが同時に選択されるようになっている。つまり、PZT選択信
号Sの種類により、各ノズル列中の上流側・中流側・下流側のいずれかを使用するよう制
御することができる。
【0089】
なお、ピエゾ素子PZT配置以外の基本的構成は第1実施形態と同じであるが、本実施
形態において、PZT選択部87は3つのピエゾ素子PZTから1つを選ぶことになる。
したがって、インクを噴出するノズルNzを選択するためのPZT選択信号Sは、例えば
Hレベルと、Mレベルと、Lレベルのように、3種類必要となる。
【0090】
図18A〜図18Cに、3種類のPZT選択信号Sを入力した場合のノズル列の動作の
様子をそれぞれ示す。PZT選択部87にHレベルのPZT選択信号S信号が入力される
とノズル列上流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#120)が選択され、図18Aのノズ
ル列中の着色された部分からインクを噴出する。MレベルのPZT選択信号S信号が入力
されるとノズル列中流側のピエゾ素子PZT群(#121〜#240)が選択され、図1
8Bのノズル列中の着色された部分からインクを噴出する。LレベルのPZT選択信号S
信号が入力されるとノズル列下流側のピエゾ素子PZT群(#241〜#360)が選択
され、図18Cのノズル列中で着色された部分からインクを噴出する。
【0091】
図19A及び図19Bは本実施形態で表刷り印刷時に背景画像の上に実画像を形成する
方法を説明する図である。まず、Wインクノズル列中の上流側に位置するピエゾ素子PZ
T群(#1〜#120)を用いて背景画像を形成する場合について説明する。
【0092】
図15A及び図15Bで説明した場合と同様に、Wインクノズル列にはHレベルのPZ
T選択信号Sを入力する。これにより、Wインクノズル列の上流側に位置するピエゾ素子
PZT群(#1〜#120)からWインクを噴出させて媒体上の領域1に背景画像を形成
する(図19A)。領域1に背景画像が形成された後、媒体を下流側に搬送し、Wインク
を噴出したピエゾ素子PZT群(#1〜#120)よりも下流の位置(#121〜#36
0の間)まで移動させる。そして、KCMYインクノズル列にはLレベルのPZT選択信
号Sを入力し、KCMYインクノズル列中の下流側ピエゾ素子PZT群(#241〜#3
60)からKCMYインクを噴出して、領域1に形成された背景画像の上に実画像を形成
する(図19B)。このとき、領域1の搬送上流側の領域2には、Wインクノズル列の上
流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#120)からWインクが噴出され背景画像が形成され
る。この動作を繰り返すことで表刷り印刷が行われる。
【0093】
このような印刷方法は、乾燥・蒸発などによって媒体に定着するインクを用いて印刷を
行う場合に特に効果的である。Wインクノズル列上流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#
120)を用いて背景画像が形成され、KCMYインクノズル列下流側のピエゾ素子PZ
T群(#241〜#360)を用いて実画像が形成されるため、(#121〜#240)
の区間ではいずれのインクも噴出されない。従って、この区間(#121〜#240)を
媒体が搬送される間に、図18Aの領域1に形成されたWインクドット(背景画像)を乾燥
させることができるからである。
【0094】
なお、KCMYインクはWインクよりも搬送下流域で噴出されればよい。従って、KC
MYインクノズル列中の中流に位置するピエゾ素子PZT群(#121〜#240)から
カラーインクを噴出させて実画像を形成することも可能である。この場合には、KCMY
インクノズル列にはMレベルのPZT選択信号Sを入力する。
【0095】
また、Wインクノズル列中の中流側ピエゾ素子PZT群(#121〜#240)を用い
て背景画像を印刷してもよい。その場合は、中流側ピエゾ素子PZT群(#121〜#2
40)よりもさらに下流側に位置する、KCMYノズル列中の下流側ピエゾ素子PZT群
(#241〜#360)を用いて実画像を形成する。
【0096】
裏刷り印刷を行う場合は、表刷り印刷と逆の動作を行う。すなわち、図16A及び図1
6Bで説明した場合と同様、Wインクを噴出するピエゾ素子PZT群よりも上流側に位置
するピエゾ素子PZT群からKCMYインクを噴出すればよい。
【0097】
図20A及び図20Bに、裏刷り印刷時に実画像の上に背景画像を形成する方法を説明
する図を示す。例えば、KCMYインクノズル列の中流側に位置するピエゾ素子PZT群
(#121〜#240)を用いて実画像を形成する場合、KCMインクノズル列にMレベ
ルのPZT選択信号Sを入力する。MレベルのPZT選択信号Sにより、KCMYインク
ノズル列の中流に位置するピエゾ素子PZT群(#121〜#240)が選択され、KC
MYインクを噴出することで媒体中の領域1に実画像が形成される(図20A)。そして
、Wインクノズル列にはLレベルのPZT選択信号Sを入力する。媒体を搬送させて領域
1がノズル列下流側ピエゾ素子PZT群(#241〜#360)の位置に到達した時に、
Wインクノズル列から噴出されたWインクにより、領域1に形成された実画像の上に背景
画像が形成される(図20B)。
【0098】
===第2実施形態===
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、1つのPZT選択部87に対して2つのピ
エゾ素子PZTが接続される。しかし、本実施形態では、制御ロジック84のPZT選択
信号生成部845において、2通りのPZT選択信号S1及びS2が生成される点が第1
実施形態とは異なっている。
図21に、第2施形態におけるヘッド制御部HC’’のブロック図の概略を示す。なお
、ヘッド制御部HC’’の基本的構成は第1実施形態と同じであり、図21ではSR81
,ラッチ回路82,信号選択部83等の機器、及び、CLC,LAT,CH等の各種信号
については省略している。
【0099】
<ピエゾ素子PZTの配置>
本実施形態において1つのスイッチ86及びPZT選択部87に接続される2つのピエ
ゾ素子PZTの組み合わせは、第1実施形態と同様(#1と#181),(#2と#18
2)〜(#180と#360)の180組である。このように配置することで、第1実施
形態では各ノズル列を、搬送上流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#180)と搬送下流
側のピエゾ素子PZT群(#181〜#360)とに分け、ノズル列を搬送方向の上下に
2分割して印刷を行っていた。これに対して、第2実施形態ではPZT選択部87に入力
するPZT選択信号を2通りにすることにより、ノズル列を搬送方向に4分割して印刷を
行うことができる。
図22は、本実施形態でスイッチ86、PZT選択部87に接続される各ピエゾ素子P
ZTの配置、及び、2通りのPZT選択信号S1及びS2との関係を表す図である。
【0100】
PZT選択信号S1が入力される90組のPZT選択部87には、ノズル列中の搬送最
上流側のピエゾ素子PZT群(#1〜#90)と、搬送中流下側のピエゾ素子PZT群(
#181〜#270)とで、合計180個のピエゾ素子PZTが接続されている。
【0101】
一方、PZT選択信号S2が入力される90組のPZT選択部87には、搬送中流上側
のピエゾ素子PZT群(#91〜#180)と、搬送最下流側のピエゾ素子PZT群(2
71〜#360)とで、合計180個のピエゾ素子PZTが接続されている。つまり、本
実施形態では、4つのピエゾ素子PZT群によって各ノズル列が搬送方向に4等分されて
いる。なお、PZT選択部87自体の構成は第1実施形態と同様とする。
【0102】
PZT選択信号S1及びS2には第1実施形態と同様、それぞれHレベル信号及びLレ
ベル信号がある。PZT選択部87にHレベルのPZT選択信号S1が入力されると、P
ZT選択部87はノズル列最上流側に位置するピエゾ素子PZT群(#1〜#90)を選
択し、LレベルのPZT選択信号S1が入力されると、PZT選択部87はノズル列中流
部下側に位置するピエゾ素子PZT群(#181〜#270)を選択する。
【0103】
一方、PZT選択部87にHレベルのPZT選択信号S2が入力されると、PZT選択
部87はノズル列中流部上側に位置するピエゾ素子PZT群(#91〜#180)を選択
し、LレベルのPZT選択信号S2が入力されると、PZT選択部87はノズル列最下流
側に位置するピエゾ素子PZT群(#271〜#360)を選択する。
【0104】
このようにPZT選択信号を2通り用いることによって、ノズル列中の所定の領域から
インクを噴出させるピエゾ素子PZT群を自由に選択することができるようになる。
【0105】
<第2実施形態の印刷動作の説明>
図23Aに、本実施形態において各ノズル列のインク噴出を制御するためにPZT選択
部87に入力されるPZT選択信号S1及びS2の種類を示す。また、図24A及び図2
4BにWインクノズル列とKCMYインクノズル列を用いた表刷り印刷時の印刷動作を説
明する図を示す。Wインクノズル列、KCMYインクノズル列ともに、図24A及び図2
4Bの斜線部で示される部分からインクが噴出される。
【0106】
第1実施形態で説明したとおり、表刷り印刷時はWノズル列の上側半分のノズル、及び
、KCMYノズル列の下側半分のノズルを用いて印刷を行う(図15A及び図15B参照
)。したがって、図24A及び図24Bに示されるように、HレベルのPZT選択信号S
1、及び、HレベルのPZT選択信号S2をWノズル列に入力する。これにより、Wノズ
ル列中の最上流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#90)と、中流部上側ピエゾ素子PZT
群(#91〜#180)とが選択され、該ピエゾ素子PZT群を動作させることで、白(
W)インクを噴出して媒体上の領域1に背景画像を形成する(図24A)。背景画像が形
成された媒体は下流側へと搬送される。
【0107】
そして、KCMYノズル列にはLレベルのPZT選択信号S1、及び、LレベルのPZ
T選択信号S2を入力する。これにより、KCMYノズル列中の中流部下側ピエゾ素子P
ZT群(#181〜#270)と、最下流側ピエゾ素子PZT群(#271〜#360)
とが選択され、該ピエゾ素子PZT群を動作させることで、KCMYインクを噴出し、領
域1に形成された背景画像の上に実画像を形成する(図24B)。なお、このとき領域2
にはWインクノズル列中の上側半分のピエゾ素子群(#1〜#180)により背景画像が
形成される。
【0108】
裏刷り印刷時は表刷り印刷時とは逆に、Wノズル列の下側半分のノズル、及び、KCM
Yノズル列の上側半分のノズルを用いて印刷を行う(図16A及び図16B参照)。した
がって、HレベルのPZT選択信号S1、及び、HレベルのPZT選択信号S2をKCM
Yノズル列に入力する。これにより、KCMYノズル列中の最上流側ピエゾ素子PZT群
(#1〜#90)と、中流部上側ピエゾ素子PZT群(#91〜#180)とが選択され
、該ピエゾ素子PZT群を動作させることで、カラー(KCMY)インクを噴出して実画
像を形成する。
【0109】
そして、Wノズル列にはLレベルのPZT選択信号S1、及び、LレベルのPZT選択
信号S2を入力する。これにより、Wノズル列中の中流部下側ピエゾ素子PZT群(#1
81〜#270)と、最下流側ピエゾ素子PZT群(#271〜#360)とが選択され
、該ピエゾ素子PZT群を動作させることで、白(W)インクを噴出して背景画像を形成
することができる。
【0110】
さらに、本実施形態ではノズル列を搬送方向に4分割しているため、印刷時にノズル列
両端の最上流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#90)及び最下流側ピエゾ素子PZT群(
#271〜#360)を用いずに、ノズル列中流部(#91〜#180、及び、#180
〜#270)のピエゾ素子PZT群を選択して印刷を行うこともできる。
【0111】
図3に示したように、インクジェットプリンターのヘッドでは、流路ユニット312の
共通インク室312f内をインクが移動し、各ノズルNzに対応した圧力室312dに流
入してノズルNzから噴出される。ここで、ノズル列全体について流路ユニット312内
をインクが均等に流れれば、各ノズルNzから均等にインクを噴出することが可能である

【0112】
しかし、インクはヘッドの中央部から流路ユニット内に供給される場合が多く、ヘッド
両端の搬送上流側及び搬送下流側に位置するノズルNzには、ヘッド中央部に位置するノ
ズルNzよりもインクが流れ込みにくくなることがある。すなわち、ヘッド中央部の圧力
室312dには所定量のインクが流入するが、ヘッド両端部の圧力室312dには十分な
量のインクが流入しにくい。このような場合、ノズル列中のノズル位置によってインク噴
出特性にばらつきが生じ、印刷画像に“むら”が生じる原因となる。
【0113】
また、ヘッド部が斜めに取り付けられた傾斜ヘッドを有するプリンターにおいては、ノ
ズル列のうち傾斜の下側部分にインクが沈降しやすい。インクが沈降した傾斜下側に位置
するノズルNzは目詰まりを起こしやすく、このような場合にもノズル列中のノズル位置
によってンク噴出特性にばらつきが生じるおそれがある。特に、比重の重い顔料から構成
されるインクを用いて印刷を行う場合などに顕著な問題となる。
【0114】
そこで、本実施形態のような構成の印刷装置を用いれば、ノズル列の両端部に位置する
ピエゾ素子PZT群(図22において最上流側ピエゾ素子PZT群(#1〜#90)及び
最下流側ピエゾ素子PZT群(#271〜#360))を使用せず、比較的インク噴出特
性が安定するノズル列中央部に位置するピエゾ素子PZT群(図22において中流上側ピ
エゾ素子PZT群(#91〜#180)及び中流下側ピエゾ素子PZT群(#181〜#
270))を選択して印刷を行うことができる。
【0115】
図23Bに、通常のKCMYインクを用いたカラー印刷を行う場合に、PZT選択部8
7に入力されるPZT選択信号S1及びS2の種類を示す。また、図25A〜図25Cに
KCMYインクを用いた印刷時の印刷動作を説明する図を示す。図25A〜図25Cにお
いて、KCMYノズル列の斜線部で示される部分からインクが噴出される。
【0116】
KCMYノズル列の上流側半分または下流側半分のピエゾ素子PZT群を用いる場合は
、PZT選択信号S1及びS2を同じ種類の信号とすればよい。すなわち、ノズル列上流
側を使用する場合はPZT選択信号S1及びS2をともにHレベルとし(図25A)、ノ
ズル列下流側を使用する場合はPZT選択信号S1及びS2をともにLレベルとする(図
25B)。
【0117】
一方、ノズル列両端部のピエゾ素子PZTを避けてノズル列中央部のピエゾ素子PZT
群を用いて印刷を行う場合は、LレベルのPZT選択信号S1、及び、HレベルのPZT
選択信号S2をKCMYノズル列に入力する(図25C)。LレベルのPZT選択信号S
1によりKCMYノズル列の中流部下側ピエゾ素子PZT群(#181〜#270)が選
択され、HレベルのPZT選択信号S2によりKCMYノズル列の中流部上側ピエゾ素子
PZT群(#91〜#180)が選択される。このような方法により、ノズル列中央部に
位置するピエゾ素子PZT群(#91〜#270)のみを使用して印刷を行うことができ
るようになる。
【0118】
<第2実施形態の効果>
本実施形態では、ノズル列を搬送方向に4分割して、4つのピエゾ素子PZT群の中か
ら所定の2つのピエゾ素子PZT群を選択できるようにしたことで、印刷に使用するノズ
ル群を第1実施形態の場合よりも自由に選択できるようになっている。
特に、インク噴出特性が悪くなりやすいノズル列両端部に位置するノズル群(ピエゾ素
子PZT群)を避けて、ノズル列中央部のノズル群(ピエゾ素子PZT群)を選択できる
ようになっているため、印刷ムラの少ない画像を形成することができる。逆に、ノズル列
中央部のみを集中して使用し続けると、該中央部ピエゾ素子PZT群の劣化が進行しやす
くなるため、あえてノズル列両端部のピエゾ素子PZT群を選択して印刷を行うことも可
能である。
【0119】
===第2実施形態の変形例===
前述の実施形態において、印刷時に使用されるピエゾ素子PZTは各ノズル列について
全体の半数のみであった。つまり、全体の半数のノズルはインクを噴出しないことになる
。そのようなノズルの未使用状態が継続すると、該未使用ノズルにおいてヘッド内部でイ
ンクが固化してしまうおそれがある。ヘッド内部でインクが固化したノズルはそれ以降イ
ンクを噴出することができなくなるため、ノズル列中でインク噴出特性にばらつきが生じ
、印刷ムラの原因となる場合がある。
【0120】
そこで、本実施形態では、選択されなかった未使用ピエゾ素子PZTに対してインクメ
ニスカスを微振動させるための微振動用駆動信号(前述の参考例における駆動パルスPS
1に相当)を印加し、ノズル内部でのインク固化を防止している。
【0121】
図26は各ノズルに設けられたピエゾ素子PZTに微振動用の駆動信号を印加するため
の構成を示すブロック図である。本実施形態では、第2実施形態における構成に加えて、
微振動用駆動信号をピエゾ素子PZTに印加する微振動用スイッチ85を各ノズル列につ
いて1つ有する。そして、微振動用スイッチ85と、ノズル列中の4つのピエゾ素子PZ
T群(#1〜#90,#91〜#180,#181〜#270,#271〜#360)と
の間には、4つの微振動選択部891〜894がそれぞれ設けられる。また、制御ロジッ
ク84内には、微振動用駆動信号を印加するピエゾ素子PZTを選択するための微振動信
号S1〜S4を生成する微振動信号生成部846を備える。
【0122】
微振動用スイッチ85には駆動信号COMと微振動生成用の画素データSIが入力さ
れる。そして、微振動用スイッチ85は画素データSIによりON状態となり、入力さ
れた駆動信号COMを微振動用駆動信号として4つの微振動選択部891〜894にそれ
ぞれ転送する。ここで、微振動用スイッチ85に入力される駆動信号COMは、画素デー
タSIにより前述の駆動パルスPS1に相当する信号となっている。駆動パルスPS1
を選択するための画素データSIは[00]で表され、上位データ1ビットと下位デー
タ1ビットからなる2ビットのデータである。
【0123】
微振動選択部891はノズル列中の最上流側に位置するピエゾ素子PZT群(#1〜#
90)を構成する90個のピエゾ素子PZTに接続される。同様に、微振動選択部892
はノズル列中の中流部上側ピエゾ素子PZT群(#91〜#180)を構成する90個の
ピエゾ素子PZTに、微振動選択部893はノズル列中の中流部下側ピエゾ素子PZT群
(#181〜#270)を構成する90個のピエゾ素子PZTに、微振動選択部894は
ノズル列中の最下流側ピエゾ素子PZT群(#271〜#360)を構成する90個のピ
エゾ素子PZTにそれぞれ接続される。各微振動選択部は微振動信号Sに従って微振動
用スイッチ85から転送された微振動用駆動信号を各ピエゾ素子PZTへと印加する。
【0124】
微振動選択部891〜894の制御入力には、微振動信号生成部846で生成された微
振動信号S1〜S4がそれぞれ入力される。微振動信号S1〜S4は、前述のP
ZT選択信号Sと同様にそれぞれHレベルまたはLレベルの2種類があり、微振動選択部
891〜894は微振動信号SがHレベルの時にON状態となり、接続された各ピエゾ
素子PZT群に微振動用駆動信号を印加する。微振動用駆動信号が印加されたピエゾ素子
PZTはインクを噴出する代わりに微振動をすることで、ヘッド内部でのインクの固化を
防止する。一方、微振動信号SがLレベルの時には、微振動選択部891〜894はO
FF状態となり、微振動用駆動信号は各ピエゾ素子PZTに印加されない。
【0125】
微振動信号S1〜S4は制御ロジック84内に設けられた微振動信号生成部846
で、PZT選択データSEから生成される。PZT選択データSEは前述の実施形態と同
様に画素データSI等に付加されて設定信号として制御ロジック84に入力される。
【0126】
<第2実施形態の変形例の印刷動作の説明>
図27Aに、本実施形態を用いた表刷り印刷/裏刷り印刷時において、各ノズル列のイ
ンク噴出を制御するためにPZT選択部87に入力されるPZT選択信号S1,S2、及
び、微振動信号S1〜S4の種類を示す。また、図28AにWインクとKCMYイン
クを用いた表刷り印刷時の各ピエゾ素子PZT群の動作の様子を説明する図を示し、図2
8Bに裏刷り印刷時の各ピエゾ素子PZT群の動作の様子を説明する図を示す。Wインク
ノズル列,KCMYインクノズル列ともに斜線部で示される部分からインクが噴出される

【0127】
HレベルのPZT選択信号Sによって選択されたピエゾ素子PZT群は、駆動信号CO
Mに従って動作して、ノズルからインクを噴出する。そして、該選択されたピエゾ素子P
ZT群にはLレベルの微振動信号Sが入力される。Lレベルの微振動信号Sが入力さ
れた微振動選択部はOFF状態となるため、微振動用駆動信号はピエゾ素子PZT群に印
加されない。したがって、PZT選択信号Sによって選択されたピエゾ素子PZT群は微
振動しない。
【0128】
一方、PZT選択信号Sによって選択されなかったピエゾ素子PZT群は、駆動信号C
OMが印加されずインクを噴出しない。そして、該インクを噴出しないピエゾ素子PZT
群にはHレベルの微振動信号Sが入力される。Hレベルの微振動信号Sが入力された
微振動選択部はON状態となるため、微振動スイッチより転送された微振動用駆動信号が
ピエゾ素子PZT群に印加される。したがって、PZT選択信号Sによって選択されなか
ったピエゾ素子PZT群は微振動する。
【0129】
例えば、図28Aの表刷り印刷時において、Wインクノズル列では搬送上流側半分のピ
エゾ素子PZT群(#1〜#180)を用いてインクを噴出する。したがって、Hレベル
のPZT選択信号S1により#1〜#90のピエゾ素子PZT群が選択され、同時にLレ
ベルの微振動信号S1が入力される。同様に、HレベルのPZT選択信号S2により#
91〜#180のピエゾ素子PZT群が選択され、同時にLレベルの微振動信号S2が
入力される。
【0130】
一方、Wインクノズル列の搬送下流側半分のピエゾ素子PZT群(#181〜#360
)はインクを噴出しない。したがって、#181〜#270のピエゾ素子PZT群は選択
されず、Hレベルの微振動信号S3により微振動を行う。同様に、#271〜#360
のピエゾ素子PZT群は選択されず、Hレベルの微振動信号S4により微振動を行う。
これにより、インクを噴出しない#181〜#360のピエゾ素子PZTを微振動させる
ことができる。
このようにして、全てのノズルにおいてピエゾ素子を振動させることにより、ヘッド内
部でインクが固化しないようにしている。
【0131】
KCMYインクノズル列ではWインクノズル列とは逆に、搬送下流側半分のノズル(#
181〜#360)からインクを噴出するため、入力する各種信号もWインクノズル列の
場合の逆の信号となる。
すなわち、LレベルのPZT選択信号S1により#181〜#270のピエゾ素子PZ
T群が選択され、同時にLレベルの微振動信号S3が入力される。同様に、Lレベルの
PZT選択信号S2により#271〜#360のピエゾ素子PZT群が選択され、同時に
Lレベルの微振動信号S4が入力される(図28A)。
【0132】
一方、KCMYノズル列の搬送上流側半分のピエゾ素子PZT群(#1〜#180)か
らはインクを噴出しないため、#1〜#90のピエゾ素子PZT群は選択されず、Hレベ
ルの微振動信号S1により微振動を行う。同様に、#91〜#180のピエゾ素子PZ
T群は選択されず、Hレベルの微振動信号S2により微振動を行う。
【0133】
また、裏刷り印刷時は、PZT選択信号S及び微振動信号Sのそれぞれについて、表
刷り印刷時と全く逆の信号が入力される(図27A及び図28B参照)。
【0134】
図27Bは、第2実施形態で説明したのと同様に、KCMYインクノズル列(またはW
ノズル列)の一部のピエゾ素子PZT群のみを用いて印刷を行う場合に、PZT選択部8
7に入力されるPZT選択信号S1,S2、及び、微振動信号S1〜S4の種類を表
す図である。また、図29A〜図29CはKCMYインクノズル列を用いたカラー印刷時
に各ピエゾ素子PZT群の動作の様子を説明するものである。
【0135】
この場合も、PZT選択信号Sで選択されなかったピエゾ素子PZT群はHレベルの微
振動信号Sにより微振動を行う。例えば、ノズル列上流側半分のピエゾ素子PZT群(
#1〜#90、及び、#91〜#180)を選択する場合は、PZT選択信号S1及びS
2をともにHレベルとして、また、微振動信号S1及びS2をLレベルとして入力す
ることで、インクの噴出を行う。一方、PZT選択信号Sにより選択されなかったノズル
列下流側半分のピエゾ素子PZT群(#181〜#270、及び、#271〜#360)
には、それぞれHレベルの微振動信号S3及びS4が入力され、微振動を行う(図2
9A)。
【0136】
同様に、ノズル列下流側半分のピエゾ素子PZT群(#181〜#270、及び、#2
71〜#360)を選択する場合は、PZT選択信号S1及びS2をともにLレベルとし
て、また、微振動信号S3及びS4をLレベルとして入力することで、インクの噴出
を行う。一方、PZT選択信号Sにより選択されなかったノズル列上流側半分のピエゾ素
子PZT群(#1〜#90及び#91〜#180)には、それぞれHレベルの微振動信号
1及びがS2入力され、微振動を行う(図29B)。
【0137】
ノズル列両端部のピエゾ素子PZT群(#1〜#90、及び、#271〜#360)を
避けて、ノズル列中央部のピエゾ素子PZT群(#91〜#180、及び、#181〜#
270)を用いて印刷する場合は、HレベルのPZT選択信号S1とLレベルのPZT選
択信号S2により、(#181〜#270)と(#91〜#180)のピエゾ素子PZT
群が選択される。したがって、(#91〜#180)のピエゾ素子PZT群に入力される
微振動信号S2と、(#181〜#270)のピエゾ素子PZT群に入力される微振動
信号S3はLレベルの信号とする。一方、PZT選択信号S1により選択されたかった
ピエゾ素子PZT群(#1〜#90)にはHレベル微振動信号S1が入力され、PZT
選択信号S2により選択されたかったピエゾ素子PZT群(#271〜#360)にはH
レベル微振動信号S4が入力される。これにより、ノズル列両端部のピエゾ素子PZT
群(#1〜#90、及び、#271〜#360)を微振動させる(図29C)。
【0138】
<微振動信号Sの生成について>
微振動信号S1〜S4は、前述の設定信号中のSEデータを用いて生成されるが、
PZT選択信号S1及びS2から生成することも可能である。
前述のとおり、PZT選択信号Sにより選択された(インクを噴出する)ピエゾ素子P
ZT群にはLレベルの微振動信号Sが入力され、PZT選択信号Sにより選択されなか
った(インクを噴出しない)ピエゾ素子PZT群にはHレベルの微振動信号Sが入力さ
れる。
すなわち、PZT選択信号S1がHレベルの時は、#1〜#90のピエゾ素子PZTが
選択されるので、#1〜#90に入力される微振動信号S1はLレベルとして、微振動
信号S3をHレベルとする。一方、PZT選択信号S1がLレベルの時は、#181〜
#270のピエゾ素子PZTが選択されるので、微振動信号S3はLレベルとして、微
振動信号S1をHレベルとする(図27A及び図27B参照)。
【0139】
同様に、PZT選択信号S2がHレベルの時は、微振動信号S2がLレベル、微振動
信号S4がHレベルとなり、PZT選択信号S2がLレベルの時は、微振動信号S
がHレベル、微振動信号S4がLレベルとなる。
つまり、微振動信号S1はPZT選択信号S1と反対の信号であり、微振動信号S
3はPZT選択信号S1と同等の信号である。また、微振動信号S2はPZT選択信号
S2と反対の信号であり、微振動信号S4はPZT選択信号S2と同等の信号である。
【0140】
===第3実施形態===
第3実施形態は、1つのピエゾ素子PZTに対して2つのスイッチ86及びPZT選択
部87が接続される場合と、1つのピエゾ素子PZTに対して1つのスイッチ86及びP
ZT選択部87が接続される場合とが混在する構成である。スイッチ86及びPZT選択
部87の数量とピエゾ素子PZTの接続方法以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0141】
図30に本実施形態におけるスイッチ86及びPZT選択部87と各ピエゾ素子PZT
との接続状態の概略図を示す。各スイッチ86に接続されるピエゾ素子PZTの組み合わ
せは、(#1と#61),(#2と#62)〜(#300と#360)の300組である
。ただし、本実施形態では、ノズル列の搬送方向両端に位置するピエゾ素子PZT群(#
1〜#60、及び、#301〜#360)にはそれぞれスイッチ86及びPZT選択部8
7が1つずつ接続され、ノズル列中央部のピエゾ素子PZT群(#61〜#300)には
それぞれスイッチ86及びPZT選択部87が2つずつ接続される。
【0142】
第1実施形態と同様に、PZT選択部87はPZT選択信号Sにより、駆動信号COM
を印加するピエゾ素子PZTを選択する。ここで、PZT選択信号SがHレベルの時に番
号が小さい方のピエゾ素子PZTが選択され、PZT選択信号SがLレベルの時に番号が
大きい方のピエゾ素子PZTが選択されるものとする。例えばPZT選択信号SがHレベ
ルの時、(#1と#61)では#1のピエゾ素子PZTが選択され、(#61と#121
)では#61のピエゾ素子PZTが選択される。すなわち、PZT選択信号SがHレベル
の時には#1〜#300のピエゾ素子PZTが選択され、逆にPZT選択信号SがLレベ
ルの時には#61〜#360のピエゾ素子PZTが選択される。
【0143】
これは、印刷時において、ノズル列中央部のピエゾ素子PZT群(#61〜#300)
は常に動作してインクを噴出し、ノズル列両端部のピエゾ素子PZT群(#1〜#60、
または、#301〜#360)は動作せずインクを噴出しない場合があるということでも
ある。したがって、図30には表していないが、動作しない(インクを噴出しない)ピエ
ゾ素子PZTには、前述の第2実施形態の変形例で示したように微振動用駆動信号を印加
して微振動させる構成とすると効果的である。
【0144】
図31Aに表刷り印刷を行う場合の各ピエゾ素子PZT群のインク噴出の様子を、図3
1Bに裏刷り印刷を行う場合の各ピエゾ素子PZT群のインク噴出の様子を表す。Wイン
クノズル列,KCMYインクノズル列ともに斜線部で示される部分からインクが噴出され
る。
【0145】
表刷り印刷時においては、Wノズル列にはHレベルのPZT選択信号Sが入力され、ノ
ズル列上流側のピエゾ素子群(#1〜#300)が選択される。そして、KCMYノズル
列にはLレベルのPZT選択信号Sが入力され、ノズル列下流側のピエゾ素子群(#61
〜#360)が選択される(図31A)。一方、表刷り印刷時においては、Wノズル列に
はLレベルのPZT選択信号Sが入力され、ノズル列下流側のピエゾ素子群(#61〜#
360)が選択される。そして、KCMYノズル列にはHレベルのPZT選択信号Sが入
力され、ノズル列上流側のピエゾ素子群(#1〜#300)が選択される(図31B)。
【0146】
なお、この場合、Wノズル列中でインクを噴出する部分のピエゾ素子PZT(図31A
において#1〜#300)とKCMYノズル列中でインクを噴出する部分のピエゾ素子P
ZT(図31Aにおいて#61〜#360)との間で搬送方向の位置がお互いにオーバー
ラップするピエゾ素子PZT(#61〜#300)を含んでいるが、このような印刷を行
うことは可能である。
【0147】
例えば、キャリッジが走査方向を往復移動する時に、往路のみでノズルからインクを噴
出する単方向(Uni−D)印刷を行う場合、まず、Wインクノズル列中でオーバーラッ
プするピエゾ素子PZT群(#61〜#300)によってWインクを噴出する。そして、
その噴出に遅れて、同一のラスタライン上に、KCMYインクノズル列中でオーバーラッ
プするピエゾ素子PZT群(#61〜#300)からKCMYインクが噴出されるように
すればよい。
【0148】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態では、ノズル列端部の片側を使用せずに印刷を行うことができる。前述の
ように、ノズル列両端部のノズル(ピエゾ素子PZT)は噴出不良を生じやすい。一方で
、両端部が同時に噴出不良を生じる可能性は低い。本実施形態によれば、噴出不良が生じ
た側のノズル群のみを避けて、他の正常なノズル群を使用することができる。第2実施形
態等と比較して、ノズル列中の多くのノズル(本実施形態においては300ノズル)を使
用することができるようになるため、1回のキャリッジ往復運動で印字できる範囲も広く
なり、効率のよい印刷が可能となる。
【0149】
===第4実施形態===
前述の各実施形態によれば、各ノズル列のうち特定の部分のノズル群(ピエゾ素子群)
を選択して印刷を行うことができる。そこで、印刷開始時にノズル検査を行って、目詰ま
り等の異常が発見されたノズルを避けることにより、なるべく正常なノズルで構成できる
ノズル群を選択して印刷を行うようにする構成も可能である。特にノズル列の搬送方向両
端部(長手方向両端部)に位置するノズルは異常が検出されやすいため、正常にインクを
噴出できるノズル群を選択して印刷を行うことにより、よりムラの少ない画像を印刷する
ことができる。
【0150】
例えば、第2実施形態で説明したようなノズル列両端部を避けて中央部を使用した印刷
をする場合に、印刷開始時に本実施形態の判定を行うことで、ノズル列中央部のノズル群
を選択できるか否かの判断を適切に行うことができる。
図32に印刷時におけるノズル検査や印刷に使用するノズル群の選択に関するフローを
示す。まず、印刷開始直後にノズル検査を行う(S101)。検査方法としては、例えば
電荷を加えたインクを電極板に噴出させて、インクドットが形成されたか否かを検出する
方法等がある。ノズル検査の結果により、印刷に使用するノズル列中の正常なノズルから
、実際にインクを噴出させるノズル群を構成できるか否かが判断される(S102)。
【0151】
例えば、第2実施形態で説明した図22において、最上流側の90組のノズル群や中流
上側の90組のノズル群等各ノズル群の中に、不良ノズルが規定数量以上含まれていない
かが判断される。
正常なノズルによりノズル群を構成することができると判断された場合は、そのノズル
群をノズル列中の中央部分で構成できるか否かが判断される(S103)。構成可能と判
断された場合は、中央部のノズル群が選択され(S104)、該中央部ノズル群を用いて
印刷が実行される(S106)。
【0152】
例えば、ノズル検査の結果、第2実施形態におけるノズル列中央部(図22の#91〜
#270)に位置する中流上側ノズル群(ピエゾ素子群)が使用できると判断された場合
には、中央部のピエゾ素子PZTを選択するためのピエゾ素子PZT選択信号S1(Lレ
ベル)及びS2(Hレベル)が生成され、#91〜#270のノズル群を用いて印刷が実
行される。
前述のようにノズル列両端部に位置するノズルは、インク目詰まりなどにより噴出不良
の問題を生じやすいことから、可能であれば、ノズル列中央部のノズル群を選択して印刷
を行うことが望ましい。
【0153】
ノズル列中央部のノズル群が正常ノズルで構成できない場合は、中央部以外のノズル群
を使用して印刷が行われる(S105・S106)。例えば、図22においてノズル検査
の結果、第2実施形態におけるノズル列中央部(図22の#91〜#270)に位置する
中流上側ノズル群(ピエゾ素子群)に不良ノズルが多く含まれ、正常ノズルでノズル群を
構成することができないと判断された場合には、両端部のピエゾ素子PZTを選択するた
めのピエゾ素子PZT選択信号S1(Hレベル)及びS2(Lレベル)が生成され、ノズ
ル列両端部に位置する最上流側ノズル群(#1〜#90)及び最下流側ノズル群(#27
1〜#360)を用いて印刷が行われる。
【0154】
S102において正常なノズルによりノズル群を構成することができないと判断された
場合には、ノズルクリーニングの過程へと進む。まず、当該印刷の開始時点において、ノ
ズルクリーニングが所定の回数以上行われていたか否かが判断される(S107)。クリ
ーニング実行回数が所定の回数に達していた場合には警告が表示され(S108)、その
まま印刷動作は終了する。
【0155】
一方、クリーニング実行回数が所定の回数未満であればノズルクリーニングが実行され
(S109)、クリーニング後の状態で再びノズル検査過程(S101)へと進む。例え
ば、所定のクリーニング回数が3回であるときに、今回で4回目のクリーニングとなる場
合には、クリーニングを実行せずに警告が発せられ、印刷を行うことはできない。一方、
今回で3回目のクリーニングとなる場合には、ノズルクリーニングが実行され、クリーニ
ング後のノズルが正常と判断されれば印刷が行われる。
【0156】
これらの判断は印刷装置のコントローラー60によって行われる。また、S102にお
けるノズル郡中に含まれる不良ノズルの許容数量(含有率)や、S107におけるクリー
ニングの規定回数の設定等はメモリ63に記憶させておくことができる。
【0157】
===まとめ===
複数のノズルから構成されるノズル列からインクを噴出することで印刷を行うインクジ
ェットプリンターにおいて、駆動信号をピエゾ素子PZTに印加するスイッチ1つに対し
て2以上のピエゾ素子PZTが接続されており、PZT選択信号によって選択される一方
のピエゾ素子PZTにのみ駆動信号が印加されるという構成を備えている。
これにより、ノズル列の中から印刷に使用したいノズル(ピエゾ素子PZT)を選択し
て印刷を行うことができる。
【0158】
また、同じ種類のPZT選択信号によって選択されるピエゾ素子PZTは、各ノズル列
中で所定のピエゾ素子PZT群を構成する。該PZT選択信号により印刷に使用するピエ
ゾ素子群を選択することができるため、ノズル列中でインクを噴出する位置を制御するこ
とができる。
これにより、印刷用途に応じてノズル列中の上流側/下流側等を使い分けて印刷するこ
とができる。
【0159】
また、印刷開始時にノズル列中の各ノズル(ピエゾ素子PZT)がインク噴出不良を生
じていないか検査して、なるべく噴出不良の生じているピエゾ素子PZTが含まれないピ
エゾ素子群を選択して印刷を行うことができる。
これにより、噴出不良ノズルを避けた印刷が可能となり、印刷ムラの少ない画像が形成
できる。
【0160】
また、インクジェットプリンターはWインクノズル列とKCMYインクノズル列とを有
し、各ノズル列では、それぞれ搬送方向の異なる位置からインクを噴出することができる
。例えば、Wインクノズル列では、搬送上流側半分のピエゾ素子PZT群を用いてWイン
クを噴出し、KCMYインクノズル列では、搬送下流側半分のピエゾ素子PZT群を用い
てKCMYインクを噴出することなどができる。
これにより、表刷り印刷時には実画像より先に背景画像を形成し、表刷り印刷時には背
景画像より先に実画像を形成する等、裏刷り印刷/裏刷り印刷にあわせて適宜インク噴出
方法を変更して印刷することができる。
【0161】
また、PZT選択信号によって選択されなかった方のピエゾ素子PZTには、微振動用
駆動信号を印加することで、インクメニスカスを微振動させる。
【0162】
これにより、インクを噴出しないノズルのピエゾ素子PZTも振動させることができ、
ヘッド内部でのインク固化を防止することができる。
【0163】
また、ノズル列両端部のピエゾ素子群にはそれぞれ1つのスイッチを接続し、ノズル列
中央部のピエゾ素子群にはそれぞれ2つのスイッチを接続し、PZT選択信号によって適
当なピエゾ素子群を選択することにより、ノズル列端部片側のピエゾ素子群を使用せずに
印刷することもできる。
これにより、噴出不良の発生した側のノズル列端部ノズル(ピエゾ素子PZT)を避け
て、ノズル列中の該噴出不良ノズル以外(ピエゾ素子PZT)のほとんどのノズル(ピエ
ゾ素子PZT)を使用して印刷することができるため、より印字速度の速い印刷をするこ
とができる。
【0164】
また、PZT選択信号に応じて駆動信号を印加するPZT選択部には、デマルチプレク
サや、トランジスタ、FET等を利用することができる。
これにより、消費電力の低減を図ることが可能となる。また、同一構成の回路をIC(
集積)化すれば、さらにコストや消費電力を抑えることができるようになる。
【0165】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容
易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、
その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含ま
れることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれる
ものである。
【0166】
<印刷装置について>
前述の各実施形態では、印刷装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに
限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半
導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高
分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのイ
ンクジェット技術を応用した各種の印刷装置に、本実施形態と同様の技術を適用してもよ
い。
【0167】
<トランジスタ,MOSFETについて>
前述の各実施形態では、PZT選択部に用いるスイッチ素子としてトランジスタやMO
SFETを例示して説明したが、これに限られるものではない。PZT選択信号によりO
N/OFFの制御が自在であり、応答性に問題がなければリレー等他のスイッチ素子を用
いてもよい。
【0168】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(U
Vインク)をノズルから噴出していた。しかし、噴射する液体は、このようなインクに限
られるものではなく、UV以外の他の電磁波の照射を受けることによって硬化するもので
あってもよい。この場合、仮硬化用照射部及び本硬化用照射部から、その液体を硬化させ
るための電磁波を照射するようにすればよい。
また、電磁波により硬化するインクではなく、乾燥・蒸発などによって媒体に定着する
、一般的な溶媒系インク(例えば水性染料/顔料インク等)を用いてもよい。
【0169】
<ノズル列について>
前述の実施形態では、KCMYの4色、及び、背景用のWインクを使用して印刷する例
が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン、ライトマゼ
ンタ、ホワイト、クリアー等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行ってもよいし
、背景色としてW以外の色を用いてもよい。
また、ヘッド部のノズル列は左側からWKCMYの配列順で並んでいたが、これに限ら
れるものではない。例えば、ノズル列の順番が入れ替わっていてもよいし、Kインクのノ
ズル列数が他のインクのノズル列数より多い構成などであってもよい。また、Wインクノ
ズル列がヘッドの両脇にあってKCMYインクノズル列を挟み込むような配置としてもよ
い。
【0170】
<ピエゾ素子について>
前述の各実施形態では、液体を噴出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZ
Tを例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを
用いてもよい。
【0171】
<プリンタードライバーについて>
プリンタードライバーの処理はプリンター側で行っても良い。その場合、プリンターと
プリンタードライバーをインストールしたPCとで記録装置が構成される。
【符号の説明】
【0172】
1 プリンター、10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、12 搬送モーター、
13 搬送ローラー、14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 キャリッジモーター、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、311 ケース、312 流路ユニット、
312a 流路形成板、312b 弾性板、312c ノズルプレート、
312d 圧力室、312e ノズル連通口、312f 共通インク室、
312g インク供給路、312h アイランド部、312i 弾性膜、
40 照射ユニット、41a・41b 仮硬化用照射部、
43 本硬化用照射部、50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、
52 ロータリー式エンコーダ、53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラー、61 インターフェース部、62 CPU、
63 メモリ、64 ユニット制御回路、70 駆動信号生成回路、
81A 第1シフトレジスタ、 81B 第2シフトレジスタ、
82A 第1ラッチ回路、82B 第2ラッチ回路、83 信号選択部、
84 制御ロジック、842 シフトレジスタ群、844 波形選択信号生成部、
845 PZT選択信号生成部、846 微振動信号生成部、
85 微振動用スイッチ、 86 スイッチ、87 PZT選択部、
871 デマルチプレクサ、873・874 アナログスイッチ、
875・876 NPN型トランジスタ、877・878 MOSFET、
88 論理否定回路、891〜894 微振動選択部、110 コンピューター、
HC ヘッド制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)複数のノズルにより構成されるノズル列と、
前記複数のノズルにそれぞれ対応して設けられ、駆動信号によって振動することで
ノズルからインクを噴出させる複数の素子と、を有し、
媒体が搬送される方向と交差する方向に移動しつつ、前記ノズルから前記媒体にイ
ンクを噴出するヘッド部と、
(B)前記複数の素子に接続される素子選択部であって、
前記ノズル列は複数の素子群に分けられており、前記素子選択部に接続された複数
の素子は、それぞれが異なる前記素子群に属し、
素子選択信号に応じて、前記素子選択部に接続された複数の素子の中から前記駆動
信号を印加する1の素子を選択する素子選択部と、
(C)前記素子選択部に接続され、前記素子選択部を介して前記駆動信号を前記素子へ
と転送するスイッチと、
(D)前記駆動信号を生成して前記スイッチに送信することと、前記素子選択信号を生
成して前記素子選択部に送信することと、を行う制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記複数の素子群のうち、前記素子選択信号によって選択される素子で構成される素子
群を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記各素子についてインク噴出不良の有無を検出し、
前記各ノズル列中で、インク噴出不良の生じている素子が所定の割合以下となる素子群
を選択して印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記ノズル列には、背景色インクを噴出する背景色インクノズル列と、カラーインクを
噴出するカラーインクノズル列とがあり、
前記背景色インクノズル列と前記カラーインクノズル列とで、各ノズル列長手方向の異
なる位置にある素子群を選択して印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置であって、
(A)前記各素子群を構成する前記素子に接続され、
前記素子選択信号によって選択されなかった素子を選択する微振動信号に応じて、
前記ノズルからインクが噴出されない程度に前記素子を振動させる微振動用駆動信号を印
加する素子を選択する微振動選択部と、
(B)前記微振動選択部に接続され、前記微振動選択部を介して前記微振動用駆動信号
を各素子へと転送する微振動用スイッチと、
(C)前記微振動用駆動信号を生成して前記微振動用スイッチに送信することと、前記
微振動信号を生成して前記微振動選択部に送信することと、を行う制御部と、
を有し、
前記素子選択信号により選択されなかった各素子を微振動させることを特徴とする印刷
装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記各ノズル列両端に位置する複数の素子は、それぞれ1の前記素子選択部に接続され

前記各ノズル列中央部に位置する複数の素子は、それぞれ2の前記素子選択部に接続さ
れる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記素子選択部が、デマルチプレクサ、または、トランジスタ、または、FETを用い
て構成されることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
駆動信号を生成してスイッチに送信することと、
素子選択信号を生成して素子選択部に送信することと、
前記素子選択信号に応じて、前記素子選択部に接続された複数の素子のうち、1の素子
を選択することと、
選択された前記素子に前記スイッチから前記素子選択部を介して前記駆動信号を印加す
ることで、前記素子を振動させてノズルからインクを噴出させることと、
を有する印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図13A】
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【図13B】
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【図15】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−152648(P2011−152648A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13921(P2010−13921)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】