説明

印刷装置及び印刷装置の制御方法

【課題】高速で且つ正確に印刷を行なう事ができる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、記録媒体の搬送用のパルスモータ4を有し、印刷データの印刷率に基づいて前記パルスモータ4の1ステップ毎の搬送速度を算出する。印刷装置10は、1つのステップとその次のステップとで搬送速度を比較して加速であるか減速であるかを判定し、減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように前記算出した各ステップ毎の搬送速度を補正する。印刷装置10は、前記補正した各ステップ毎の搬送速度に基づいて前記パルスモータ4を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、印刷データの印刷率に基づいて搬送速度を決定して印字を行う印刷装置及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポータブルプリンタとして、印刷される用紙の幅方向に配列された複数の発熱体を有するサーマルヘッドが搭載されたサーマルプリンタなどがある。例えば、携帯型サーマルプリンタは、バッテリの電力により駆動されるのが一般的である。サーマルプリンタは、パルスモータが1ステップずつ動作する毎に一定距離ずつ感熱紙である用紙を搬送する。サーマルプリンタは、印字を行なう場合、複数の発熱体のうちの印字する箇所に対応する発熱体を発熱させ、発生した熱を搬送される感熱紙に与えることにより、種々の情報を印刷する事が出来る(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−30263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したポータブルプリンタでは、印刷データの印刷率に基づいてサーマルヘッドへの通電時間、及びパルスモータによる用紙の搬送速度を決定している。
【0004】
このようなポータブルプリンタに用いられるパルスモータでは、例えば印刷率がラインとラインとの間で大きく変化する場合、用紙の搬送速度も大きく変化する。しかし、実際には、パルスモータの動作を用紙に伝える為のプラテンローラが慣性モーメントを持っている為に、1ステップで変化することが出来る速度(加速度、若しくは減速度)に限界値がある。この限界値を超えた速度変化が要求される場合、目標の搬送速度により用紙を搬送することが出来ない可能性がある。この為、狙った位置に印刷を行なう事ができず、白抜け、若しくは、印字が伸びるという問題がある。
【0005】
これを回避する為に、最低速度を超えない範囲で用紙を搬送して印刷を行う事もできるが、この場合処理に時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明の一形態における目的は、上記した問題点を解決するものであり、高速で且つ正確に印刷を行なう事ができる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態としての印刷装置は、記録媒体の搬送にパルスモータを用いた印刷装置において、前記記録媒体を印刷するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを制御するヘッド制御部と、印刷データの印刷率に基づいて前記パルスモータの1ステップ毎の搬送速度を算出する搬送速度算出手段と、次のステップとで搬送速度を比較して加速であるか減速であるかを判定する比較手段と、前記比較手段により減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように前記搬送速度算出手段により算出した各ステップ毎の搬送速度を補正する搬送速度補正手段と、前記搬送速度補正手段により補正した各ステップ毎の搬送速度に基づいて前記パルスモータを制御するパルスモータ制御手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の一実施形態としての印刷装置の制御方法は、記録媒体の搬送にパルスモータを用いた印刷装置の制御方法であって、印刷データの印刷率に基づいて前記パルスモータの1ステップ毎の搬送速度を算出し、次のステップとで搬送速度を比較して加速であるか減速であるかを判定し、前記比較の結果、減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように前記算出した各ステップ毎の搬送速度を補正し、前記補正した各ステップ毎の搬送速度に基づいて前記パルスモータを制御する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の一形態によれば、高速で且つ正確に印刷を行なう事ができる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る印刷装置及び印刷装置の制御方法ついて詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるポータブルプリンタ10(印刷装置)の概略構造を示す模式図である。ポータブルプリンタ10は、サーマルヘッド1とプラテンローラ2とを有している。サーマルヘッド1とプラテンローラ2とは、巻回された連続紙S(レシート紙など)から供給される用紙3を挟み、互いに対向する位置に設けられている。
【0011】
サーマルヘッド1は、一端が回転自在に支持されて他端がプラテンローラ2に圧接するように図示しない付勢部材により付勢されている。プラテンローラ2は、パルスモータ4とベルトを介して連結されている。パルスモータ4が回転した場合、プラテンローラ2は、ベルトによりパルスモータ4の回転に連動されて回転する。
【0012】
用紙3は、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間に挟まれた状態でプラテンローラ2が回転することによって搬送される。サーマルヘッド1は、連続紙Sの幅方向に配列された複数の発熱体を有している。サーマルヘッド1は、複数の発熱体のうちの印字する箇所に対応する発熱体を発熱させることにより、感熱紙である用紙3に対して種々の情報を印刷(印字)することができる。本実施形態では、サーマルヘッドに配設された発熱体にストローブ信号を印加して発熱させ、この熱を用紙3に与えることにより用紙3を発色、即ち印刷することができる。
【0013】
図2は、ポータブルプリンタ10の構成を示すブロック図である。ポータブルプリンタ10は、各種の演算処理を実行し各部を集中的に制御するCPU11を有する。このCPU11には、RAM13、及びフラッシュメモリ14を含むメモリがシステムバス15を介して接続されている。
【0014】
フラッシュメモリ14は、ポータブルプリンタ10の動作プログラムを格納する。CPU11は、フラッシュメモリ14に記憶された動作プログラムをRAM13にコピーし実行することにより各部を制御する。動作プログラムには、例えば後述する搬送速度補正処理を行うためのプログラムが含まれる。
【0015】
RAM13は各種の可変情報を一時的に格納する。また、RAM13の一部の領域は、用紙3に印刷される印刷データ(画像データ)が展開される印刷バッファとして利用される。印刷データは、ホストコンピュータ30から受信した印刷対象となる印刷データである。なお、印刷データは、フラッシュメモリ14が記憶するようにしてもよい。また、RAM13は、パルスモータ4の各ステップ毎の搬送速度を一時的に記憶する記憶領域13Aを備えている。
【0016】
CPU11には、モータ制御回路18(パルスモータ制御手段)、ヘッド制御回路19、電源回路20が接続される。
モータ制御回路18は、CPU11の制御のもとで、パルスモータ4を回転駆動させる。例えば、モータ制御回路18は、印刷データの印刷率に応じて、パルスモータ4を動作させる速度を制御する。
【0017】
なお、この印刷率は、サーマルヘッドの複数の発熱体のうち、ストローブ信号を印加する発熱体の比率である。即ち、印刷率は、用紙3の印刷可能な範囲のうちの印刷が施される面積の比率である。
【0018】
ヘッド制御回路19は、CPU11の制御もとで、RAM13の印刷バッファに展開された印刷データに応じて、サーマルヘッド1に配設された発熱体にストローブ信号を印加し、用紙3に印刷を行う。電源回路20は、バッテリ21に蓄えられた電力を各部に供給して動作させる。
【0019】
また、CPU11には、表示コントローラ23、通信インタフェース25、キー入力部26が接続される。
表示コントローラ23は、CPU11の制御のもとで、表示器24における表示を制御する。表示器24は、印字状況などの各種情報を表示する。
【0020】
通信インタフェース(I/F)25は、ホストコンピュータ30(ホスト装置)などの外部の機器と通信を行なう為のインタフェースである。通信インタフェース25は、例えばIrDA等の赤外線通信、USB(Universal Serial Bus)、LAN(Local Area Network)、RS−232C、Bluetooth(登録商標)等により構成され、ホストコンピュータ30に設けられた通信インタフェースと通信が可能である。
【0021】
キー入力部26は、ポータブルプリンタ10に対してユーザが操作を入力するための各種のキーである。
【0022】
ホストコンピュータ30は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機、またはハンディターミナル等により構成され、ユーザによる操作入力に応じて演算処理を実行する。
【0023】
上記のモータ制御回路18は、図2に示すように、搬送速度算出部181、搬送速度比較部182、及び搬送速度補正部183を備えている。
搬送速度算出部181は、CPU11から供給される印刷データの印刷率に基づいてパルスモータ4による用紙3の搬送速度を1ステップ毎に算出する。即ち、搬送速度算出部181は、搬送速度算出手段として機能する。搬送速度算出部181は、CPU11の制御に基づいて、印刷データの1ライン分のストローブ信号をサーマルヘッド1に印加する場合の通電時間と、パルスモータ4が1ステップ動作する場合の時間とが対応するように搬送速度を算出する。搬送速度算出部181は、算出した各ステップ毎の搬送速度をRAM13の記憶領域13Aに一時的に保存する。例えば、図3に示すような印刷データを印刷する場合、搬送速度は下記のようになる。
【0024】
図3は、印刷データと搬送速度の関係について説明するための説明図である。図3に示すように、搬送方向aの方向に搬送される用紙3に対して印刷を行なうとする。グラフの横軸は用紙3の移動量、縦軸は搬送速度をそれぞれ示している。
【0025】
即ち、図3に示す(A)から(B)までの搬送が行われる場合、印刷が行われない為、対応するステップの搬送速度は、高速になる。図3に示す(B)から(C)までの搬送が行われる場合、文字の印刷が行われる為に、印刷データの各ライン毎の印刷率に基づいて対応するステップの搬送速度が算出される。
【0026】
図3に示す(C)から(D)までの搬送が行われる場合、印刷が行われない為、対応するステップの搬送速度は、再び最高速度となる。図3に示す(D)から(E)までの搬送が行われる場合、高印刷率の印刷が行われる為、対応するステップの搬送速度は、低速となる。図3に示す(E)から(F)までの搬送が行われる場合、印刷が行われない為、対応するステップの搬送速度は、高速になる。
【0027】
上記したように、搬送速度算出部181は、各ステップにおける搬送速度を算出する。しかし、上記したように、プラテンローラ2は慣性モーメントを有している。この為、1ステップで変化することが出来る搬送速度、即ち、加速度及び減速度には限界値が存在する。例えば、サーマルヘッド1が解像度203dpiのサーマルヘッドである場合、停止状態から最高速の状態、若しくは、最高速の状態から停止状態に移行するために、16ステップが必要となる。
【0028】
例えば、減速度の限界値を超えて減速する必要がある場合、印刷率に基づいて算出した速度(目標速度)まで減速させることができない為に目標の搬送速度より速い速度で搬送が行なわれる。これにより、印刷が正確に行われない可能性があるという問題がある。そこで、目標の搬送速度まで減速することができるように、その前の数ステップの搬送速度を補正する必要がある。
【0029】
搬送速度比較部182は、ステップ間で搬送速度の比較を行い、該ステップ間において加速をするか減速をするかを判定する。即ち、搬送速度比較部182は、搬送速度比較手段として機能する。
【0030】
搬送速度補正部183は、CPU11の制御に基づいて、RAM13の記憶領域13Aに記憶されている各ステップにおける搬送速度を参照し、各ステップの搬送速度を補正する搬送速度補正処理を行なう。即ち、搬送速度補正部183は、搬送速度比較部182により減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように搬送速度算出部181により算出した各ステップ毎の搬送速度を補正する。
【0031】
また、搬送速度補正部183は、搬送速度比較部182により加速であると判定した場合に、目標の搬送速度まで到達可能か否か判定し、到達不可であると判定した場合に加速度の限界値により加速するように搬送速度を補正する。即ち、搬送速度補正部183は、搬送速度補正手段として機能する。
【0032】
図4は、搬送速度補正処理について説明するための説明図である。グラフの横軸はパルスモータ4のステップ数、縦軸は搬送速度をそれぞれ示している。
点線は、搬送速度算出部181により算出した各ステップにおける搬送速度(目標速度)を折れ線でつないだグラフである。実線は、搬送速度補正部183により補正した各ステップにおける搬送速度(補正速度)を折れ線でつないだグラフである。
【0033】
例えば、搬送速度比較部182は、図4のステップGにおける目標速度と、その次のステップ、即ちステップHにおける目標速度とを比較する。搬送速度比較部182は、ステップHの速度の方が高速である場合加速、低速である場合減速と判定する。ここでは、ステップHの方が高速である為、搬送速度比較部182は、加速であると判定する。
【0034】
搬送速度比較部182により加速であると判定した場合、搬送速度補正部183は、ステップGの目標速度からステップHの目標速度まで1ステップで加速可能か否か判定する。即ち、搬送速度補正部183は、ステップG及びステップHにおける速度差が加速度の限界値未満であるか否か判定する。ここでは、ステップG及びステップHにおける速度差が加速度の限界値未満である為、搬送速度補正部183は、ステップHにおける搬送速度の補正を行なわない。なお、ステップH及びステップI間においても同様に、搬送速度の補正は行われない。
【0035】
図4のステップIにおける目標速度と、ステップJにおける目標速度とを比較する場合、ステップJの方が高速である為、搬送速度比較部182は、加速と判定する。さらに、搬送速度補正部183は、ステップIからステップJまで1ステップで加速可能か否か判定する。
【0036】
ここでは、ステップI及びステップJにおける速度差が加速度の限界値以上である為、搬送速度補正部183は、ステップIから加速度の限界値により加速した速度をステップJにおける搬送速度として補正を行う。即ち、図4に示すように、実線のステップJにおける速度が補正速度となる。
【0037】
また、図4のステップLにおける目標速度と、その前段のステップにおける目標速度とを比較する場合、ステップLの方が低速である為、搬送速度比較部182は、減速と判定する。さらに、搬送速度補正部183は、前段のステップからステップLまで1ステップで減速可能か否か判定する。即ち、搬送速度補正部183は、ステップL及びその前段のステップにおける速度差が減速度の限界値未満であるか否か判定する。
【0038】
ここでは、ステップL及びその前段における速度差が減速度の限界値以上である為、搬送速度補正部183は、ステップLの搬送速度を補正する。即ち、搬送速度補正部183は、何ステップ前からであればステップLの目標速度まで減速が可能であるかを判定する。即ち、搬送速度補正部183は、ステップLの前段の各ステップについて、減速度の限界値ずつステップLまで減速した場合にステップLにおける目標速度に到達するか否かを判定することにより、何ステップ前からであればステップLの目標速度まで減速が可能であるかを判定する。
【0039】
図4に示す例によると、ステップLの3ステップ前、即ち、ステップKからであれば減速可能である為、搬送速度補正部183は、ステップKからステップLにおける搬送速度に到達するように減速を開始するように補正する。即ち、搬送速度補正部183は、RAM13の記憶領域13Aに記憶されているステップKからステップLまでの各ステップの搬送速度を書き換えることにより補正を行なう。
【0040】
上記した搬送速度補正処理により、点線で示す目標速度をつないだグラフに基づいて実線で示すように搬送速度を補正することが出来る。
【0041】
図5は、図1及び2に示すポータブルプリンタ10により印刷を行なう場合の処理を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、解像度203dpiのサーマルヘッドがサーマルヘッド1として装着されていると仮定して説明する。
【0042】
ポータブルプリンタ10の電源が入れられると、システムが機動される。即ち、CPU11は、フラッシュメモリ14から各種プログラムを読み込み、RAM13に展開する。システムを起動すると、CPU11は、システムチェックを行なう。即ち、CPU11は、ポータブルプリンタ10の各部の状態を検査する。
【0043】
ポータブルプリンタ10のCPU11は、起動されると、印刷データの受信を待つ状態となる(ステップS11)。印刷データを受信すると(ステップS11、YES)、CPU11は、各ライン毎に印刷データを取得する(ステップS12)。CPU11は、各ライン毎に印刷データの印刷率を算出する(ステップS13)。すなわち、CPU11は、サーマルヘッド1に配設された全発熱体のうちのストローブ信号を印加する必要がある発熱体の比率を、1ライン分の印刷データに含まれる黒情報の数をもとに算出する。
【0044】
図2に示すモータ制御回路18の搬送速度算出部181は、CPU11の制御により、算出した印刷率に基づいて、各ライン(各ステップ)毎の搬送速度を算出する(ステップS14)。即ち、搬送速度算出部181は、各ステップ毎にパルスモータ4を動作させるタイミングを算出する。搬送速度算出部181は、算出した各ステップ毎の搬送速度をRAM13の記憶領域13Aに記憶する。
【0045】
モータ制御回路18の搬送速度比較部182及び搬送速度補正部183は、記憶領域13Aを参照し、搬送速度算出部181により算出した各ステップのうちの16ステップ先までの各ステップにおける目標の搬送速度に基づいて搬送速度補正処理を行い、1ステップ分の搬送速度を補正する(ステップS15)。
【0046】
モータ制御回路18は、搬送速度補正部183により補正した1ステップ分の搬送速度に基づいて用紙3を搬送するようにパルスモータ4を制御する(ステップS16)。ヘッド制御回路19は、CPU11の制御により1ライン分のストローブ信号をサーマルヘッド1に印加する(ステップS17)。
【0047】
CPU11は、1ラインについて印刷を完了すると、印刷データの全てのラインについて印刷を行なったか否かを判定する(ステップS18)。印刷データの全てのラインについて印刷を行なったと判定した場合(ステップS18、YES)、CPU11は、処理を終了する。印刷データの全てのラインについて印刷を行なっていないと判定した場合(ステップS18、NO)、CPU11は、ステップS15に移行し、次のステップの搬送速度を補正し、印刷を行う。
【0048】
図6は、図1及び2に示すポータブルプリンタ10により搬送速度補正処理を行なう場合の処理を説明するためのフローチャートである。
CPU11は、参照した16ステップ中の先頭のステップを選択する(ステップS21)。搬送速度比較部182は、CPU11の制御により、選択中のステップの搬送速度と次のステップの搬送速度を比較する(ステップS22)。
【0049】
搬送速度比較部182は、上記の比較により、比較した2ステップ間において加速を行うか減速を行なうかを判定する(ステップS23)。即ち、搬送速度比較部182は、選択中のステップの搬送速度が次のステップの搬送速度より高速である場合加速、選択中のステップの搬送速度が次のステップの搬送速度より低速である場合減速を行なうと判定する。
【0050】
ステップS23において加速を行うと判定した場合、搬送速度補正部183は、目標速度に到達可能であるか否か判定する(ステップS24)。即ち、搬送速度補正部183は、現在選択しているステップの搬送速度と搬送速度算出部181により算出した次のステップの搬送速度(目標速度)まで加速度の限界値により加速可能であるか否かを判定する。
【0051】
目標速度に到達可能であると判定した場合(ステップS24、YES)、搬送速度補正部183は、次のステップの搬送速度を目標速度に設定する(ステップS25)。即ち、搬送速度補正部183は、搬送速度の補正を行わない。
【0052】
目標速度に到達不可能であると判定した場合(ステップS24、NO)、搬送速度補正部183は、次のステップの搬送速度を選択中のステップの搬送速度に加速度の限界値を加算した速度に設定する(ステップS26)。
【0053】
また、ステップS23において減速を行うと判定した場合、搬送速度補正部183は、目標速度に到達可能であるか否か判定する(ステップS27)。即ち、現在選択しているステップの搬送速度と搬送速度算出部181により算出した次のステップの搬送速度(目標速度)まで減速度の限界値により減速可能であるか否かを判定する。
【0054】
目標速度に到達可能であると判定した場合(ステップS27、YES)、搬送速度補正部183は、次のステップの搬送速度を目標速度に設定する(ステップS28)。即ち、搬送速度補正部183は、搬送速度の補正を行わない。
【0055】
目標速度に到達不可能であると判定した場合(ステップS27、NO)、搬送速度補正部183は、何ステップ前からであれば目標速度まで減速可能であるかを判定する(ステップS29)。搬送速度補正部183は、減速可能であると判定したステップから目標速度に到達するように各ステップにおける搬送速度を補正する。(ステップS30)。
【0056】
1つのステップについて搬送速度を設定すると、CPU11は、16ステップの全てのステップについて搬送速度を設定したか否かを判定する(ステップS31)。まだ搬送速度を設定していないステップが存在する場合(ステップS31、NO)、CPU11は、現在選択しているステップの次のステップ、即ち、搬送速度を設定したステップを選択し(ステップS32)、ステップ22に移行する。
【0057】
全てのステップについて搬送速度を設定済みであると判定した場合(ステップS31、YES)、CPU11は、16ステップ中の先頭のステップの搬送速度を確定し、図5に示すステップS16及びステップS17の処理を行う。
【0058】
上述したように、本発明の一実施形態によると、2ステップ間で目標速度まで減速が不可能なステップが存在する場合、目標速度まで減速可能なステップから減速を開始するように各ステップの搬送速度を補正する。即ち、印刷データの各ライン毎に、後段の数ステップ分の搬送速度を参照し、1ライン毎に搬送速度を確定する。
【0059】
ポータブルプリンタは、上記の構成により、全体の処理速度を落とすことなく、正確に用紙の搬送を行なう事ができる。この結果として、高速で且つ正確に印刷を行なう事ができる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供することができる。
【0060】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0061】
なお、上記した実施形態によると、解像度203dpiのサーマルヘッドがサーマルヘッド1として装着される例を挙げて説明したが、これに限定されない。如何なる解像度のサーマルヘッドを用いる場合でも、本発明は適用され得る。
【0062】
また、解像度203dpiのサーマルヘッドを用いる場合、最低速から最高速まで到達する為に16ステップ必要な為、搬送速度補正処理により参照するステップの数を16としたが、これに限定されない。サーマルヘッド1及びサーマルヘッド1に対応するプラテンローラ2の仕様に応じて搬送速度補正処理により参照するステップの数は適宜変更することができる。即ち、最低速から最高速まで到達する為に必要なステップ数だけ参照すれば、本発明を実現することが出来る。
【0063】
また、予め、印刷データの全てのラインの搬送速度について補正を行うようにしてもよい。即ち、搬送速度を1ステップずつ確定するのではなく、全ステップについて上記の搬送速度補正処理を行い、全ステップの搬送速度を同時に確定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本実施形態におけるポータブルプリンタの概略構造を示す模式図である。
【図2】図2は、ポータブルプリンタの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、印刷データと搬送速度の関係について説明するための説明図である。
【図4】図4は、搬送速度補正処理について説明するための説明図である。
【図5】図5は、図1及び2に示すポータブルプリンタにより印刷を行なう場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、図1及び2に示すポータブルプリンタにより搬送速度補正処理を行なう場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…サーマルヘッド、2…プラテンローラ、3…用紙、4…パルスモータ、10…ポータブルプリンタ、11…CPU、13…RAM、13A…記憶領域、14…フラッシュメモリ、15…システムバス、18…モータ制御回路、19…ヘッド制御回路、20…電源回路、21…バッテリ、23…表示コントローラ、24…表示器、25…通信インタフェース、26…キー入力部、30…ホストコンピュータ、181…搬送速度算出部、182…搬送速度比較部、183…搬送速度補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送にパルスモータを用いた印刷装置において、
前記記録媒体を印刷するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを制御するヘッド制御部と、
印刷データの印刷に基づいて前記パルスモータの1ステップ毎の搬送速度を算出する搬送速度算出手段と、
次のステップとで搬送速度を比較して加速であるか減速であるかを判定する比較手段と、
前記比較手段により減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように前記搬送速度算出手段により算出した各ステップ毎の搬送速度を補正する搬送速度補正手段と、
前記搬送速度補正手段により補正した各ステップ毎の搬送速度に基づいて前記パルスモータを制御するパルスモータ制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送速度補正手段は、前記比較手段により加速であると判定した場合に目標の搬送速度まで加速可能であるかを判定し、加速不可と判定した場合に前ステップから最大加速度により加速させた搬送速度を当該ステップにおける搬送速度として補正することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
記録媒体の搬送にパルスモータを用いた印刷装置の制御方法であって、
印刷データの印刷率に基づいて前記パルスモータの1ステップ毎の搬送速度を算出し、
次のステップとで搬送速度を比較して加速であるか減速であるかを判定し、
前記比較の結果、減速であると判定した場合に目標の搬送速度まで減速するために何ステップ必要かを判定し、判定したステップから減速するように前記算出した各ステップ毎の搬送速度を補正し、
前記補正した各ステップ毎の搬送速度に基づいて前記パルスモータを制御する、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項4】
前記比較の結果、加速であると判定した場合に目標の搬送速度まで加速可能であるかを判定し、加速不可と判定した場合に前ステップから最大加速度により加速させた搬送速度を当該ステップにおける搬送速度として補正することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298037(P2009−298037A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155575(P2008−155575)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】