説明

印刷装置及び有機機能素子製造方法

【課題】有機機能層を印刷する際に、画素の輝度ムラや、ショート、非点灯の原因となる異物を除去する手段を備えた印刷装置及びその印刷装置を使用して有機機能素子を製造する方法を提供する。
【解決手段】被印刷基板に微細パターンを印刷する印刷装置であって、印刷用凸版を備えた第一の回転式版胴201と、第一の回転式版胴201上に設けられ、被印刷基板表面207の異物を除去するための第一の異物除去版302と、印刷用凸版202を備えた第一の回転式版胴201と対向して設けられ、印刷用凸版202表面の異物を除去するための第二の異物除去版402を備えた第二の回転式版胴401と、印刷用凸版202と第一の異物除去版302を洗浄するための第一の洗浄チャンバー303と、第二の異物除去版402を洗浄する第二の洗浄チャンバー304と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤に溶解しているインキを被印刷基板上に印刷することにより高精細なパターンを形成するための印刷装置、及びその印刷装置を使用して有機機能素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、タブレット型PC、モバイルPC、車載用ナビゲーションシステム等における表示素子として、薄型、低電力、高輝度表示などの特徴を備える有機EL素子や、有機EL素子の駆動に使用される有機TFTが注目されている。
【0003】
有機EL素子は、二つの対向する電極の間に正孔輸送材料からなる正孔輸送層及び、有機発光材料からなる有機発光層が形成される。ここではこれらの層を合わせて有機発光媒体層と呼ぶことにするが、有機EL素子はこれらの有機発光媒体層に電流を流すことで発光させるものである。効率よく発光させるには有機発光媒体層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイパネル化するには高精細にパターニングする必要がある。
【0004】
有機発光媒体層を形成する正孔輸送材料及び有機発光材料には、低分子材料と高分子材料が有り、一般に低分子材料は真空蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化するほどパターニング精度が出にくい、真空中で成膜するためにスループットが悪いという問題がある。
【0005】
そこで、最近では高分子材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。高分子材料の塗液を用いてウェットコーティング法で有機発光層を含む有機発光媒体層を形成する場合の層構成は、陽極側から正孔輸送層、有機発光層と積層する二層構成が一般的である。このとき、有機発光層はカラーパネル化するために赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの発光色をもつ有機発光材料を溶剤中に溶解または安定して分散してなる有機発光インキを用いて塗り分ける必要がある。
【0006】
上記のウェットコーティング法として、インクジェット法や凸版印刷法がある。凸版印刷法は、インクジェット法に比べスループットが良い特徴をもっている。
【0007】
図1は従来から用いられている凸版印刷装置の概略を示す図である。図1に示す凸版印刷装置は、インキタンク605からインキチャンバー604にインキを供給し、次にアニロックスロール603によって版胴601の周面に装着された印刷用凸版602にインキを付け、その後定盤606を矢印606aで示す方向に移動し、定盤606に載置された被印刷板607に、印刷用凸版602に付けられたインキを転移して印刷するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−65081号公報
【特許文献2】特開2011−113733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これまで印刷方式では、大気下で数回に渡り印刷を繰り返すため、真空蒸着法に比べ、異物が混入しやすく、画素の輝度ムラや、ショート、非点灯の原因となったり、版に異物が付着した場合、同一の印刷不良が生じ、印刷膜厚のバラツキによる、輝度ムラ、色度のバラツキ、ショートの原因となることから問題となっていた。この問題を解決する方法として異物を除去する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、凸版印刷法における、印刷版にインキを転写する際のドクタリング時に発生する金属異物を、磁性のあるローラで磁気吸着することで、磁性のある金属異物の除去を行なっている。しかし、この方法では、磁性のある金属異物のみ且つ、インキ中の異物しか除去できない欠点がある。
また、別の方法として、特許文献2では、有機膜を成膜後、異物を検出し、レーザー照射により異物を除去する方法が提案されている。しかし、この方法では、有機物の除去はできるが、金属異物の除去は難しく、有機層にレーザーを照射することにより、有機層の劣化が懸念されたり、検出に時間がかかるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、有機機能層を印刷する際に、画素の輝度ムラや、ショート、非点灯の原因となる異物を除去する手段を備えた印刷装置及びその印刷装置を使用して有機機能素子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、被印刷基板に微細パターンを印刷する印刷装置であって、
印刷用凸版を備えた第一の回転式版胴と、
第一の回転式版胴上に設けられ、被印刷基板表面の異物を除去するための第一の異物除去版と、
印刷用凸版を備えた第一の回転式版胴と対向して設けられ、印刷用凸版表面の異物を除去するための第二の異物除去版を備えた第二の回転式版胴と、
印刷用凸版と第一の異物除去版を洗浄するための第一の洗浄チャンバーと、
第二の異物除去版を洗浄する第二の洗浄チャンバーと、を備えていることを特徴とする印刷装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記第一の異物除去版及び第二の異物除去版は、金属異物を除去するためのマグネット層と、有機物あるいは磁性のない金属異物を除去するゴム層と、の2層以上からなることを特徴とする請求項1記載の印刷装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記マグネット層は、フェライト又はネオジウムのいずれかを含むラバーマグネットから成ることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記ゴム層は、シリコーン系、ウレタン系、ブチル系、フッ素系のいずれかから成り、その硬度が10〜30度、粘着力が50〜500g/cmであることを特徴とする請求項2または3に記載の印刷装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記第一の異物除去版及び第二の異物除去版は、第一の回転式版胴及び第二の回転式版胴に前記マグネット層の磁力で固定されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の印刷装置である。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置を用いて、第一の異物除去版で被印刷基板の異物を除去すると同時に、第二の異物除去版で印刷用凸版の異物を除去する異物除去過程と、有機機能層を印刷する成膜過程を経ることを特徴とする有機機能素子製造方法である。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記有機機能素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項6に記載の有機機能素子製造方法である。
【0018】
請求項8に係る発明は、前記有機機能層は一層以上からなり、複数回印刷することを特徴とする請求項6に記載の有機機能素子製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の印刷装置及び有機機能素子製造方法によれば、基板及び印刷版の有機物、金属異物にこだわらず異物を検出せずに除去できるため、短時間で簡易的に、異物による輝度ムラや色度のバラツキ及び非点灯画素の少ない有機EL素子を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の凸版印刷装置の概要を示す図。
【図2】本発明の実施の形態による有機ELパネルにおける有機EL素子の構造を示す断面を示す図。
【図3】本発明の実施の形態における凸版印刷装置の概要を示す断面図である。
【図4】本発明における凸版の版胴の断面図である。
【図5】本発明における異物除去版の構造を示す図である。
【図6】本発明の印刷方法を示す動作フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る印刷装置及び有機EL素子製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、本発明に係る印刷装置は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図2は本発明に係る印刷装置及び有機EL素子製造方法によって作成された有機EL素子の構造を示す断面図である。図3は本発明に係る印刷装置を有機EL素子の発光層印刷に適用した場合のフレキソ印刷装置の全体構成を示す概略図である。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、パッシブマトリックスタイプの有機EL素子に適用した例について説明する。有機EL素子の駆動方法としては、パッシブマトリックスタイプとアクティブマトリックスタイプがあるが、本発明の有機EL素子はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。パッシブマトリックス方式とはストライプ状の電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。この有機EL素子が基板側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要があるが、基板と反対側から光を取り出すトップエミッション方式の場合は、基板は透光性を有する必要はない。
【0024】
基板101としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻取りにより高分子EL素子の製造が可能となり、安価にディスプレイパネルを提供できる。また、その場合のプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、これらのフィルムは水蒸気バリア性、酸素バリア性を示す酸化ケイ素といった金属酸化物、窒化ケイ素といった酸化窒化物やポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物からなるバリア層が必要に応
じて設けられる。
【0025】
また、基板101の上には陽極としてパターニングされた画素電極102が設けられる。画素電極102の材料としては、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム複合酸化物等の透明電極材料が使用できる。なお、低抵抗であること、耐溶剤性があること、透明性があることなどからITOが好ましい。ITOはスパッタ法により基板上に形成されフォトリソ法によりパターニングされライン状の画素電極102となる。そして、このライン状の画素電極102を形成後、隣接する画素電極の間に感光性材料を用いて、フォトリソグラフィ法により隔壁103が形成される。
【0026】
本実施の形態における隔壁103は、厚みが0.5μmから5.0μmの範囲にあることが望ましい。また、隔壁103を隣接する画素電極102間に設けることによって、各画素電極102上に印刷された正孔輸送インキの広がりを抑え、ディスプレイ化した際に正孔輸送層104が隔壁103上にあることによるリーク電流の発生を防ぐことができる。なお、隔壁103が低すぎるとインキの広がりを防止できずに隔壁103上に正孔輸送層104が形成されることとなる。
【0027】
また、例えばパッシブマトリックスタイプの有機EL素子において、画素電極の間に隔壁を設けた場合、隔壁を直行して陰極層を形成することになる。このように隔壁をまたぐ形で陰極層を形成する場合、絶縁層が高すぎると陰極層の断線が起こってしまい表示不良となる。絶縁層の高さが5.0μmを超えると陰極の断線が起きやすくなってしまう。
【0028】
また、隔壁103を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらであってもよく、市販のもので構わないが、絶縁性を有する必要がある。なお、隔壁が十分な絶縁性を有さない場合には隔壁を通じて隣り合う画素電極102に電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といったものが挙げられるが、これに限定するものではない。また、有機EL素子の表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。
【0029】
また、隔壁103を形成する感光性樹脂はスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の塗布方法を用いて塗布され、フォトリソ法によりパターニングされる。また、感光性樹脂を用いずにグラビアオフセット印刷法、反転印刷法、フレキソ印刷法等を用いて隔壁を形成してもよい。
【0030】
以上のようにして隔壁103を形成した後、次に正孔輸送層104を形成する。正孔輸送層104を形成する正孔輸送材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4―エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等が挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、正孔輸送材料インキとなり、本実施の形態による印刷方法装置を用いて形成される。その場合、選択される正孔輸送材料は、発光材料との相性が重要で、前記正孔輸送材料は、発光材料とのイオン化ポテンシャル(IP)の差が0.2eV以下であることが重要である。なお、形成される正孔輸送層の体積抵抗率は発光効率の点から1×10Ω・cm以下のものが好ましい。また、正孔輸送材料として無機材料を用いる場合、無機材料としては、Cu O、Cr 、Mn 、FeO3、NiO、CoO、Pr
、Ag O、MoO 、Bi 、ZnO、TiO 、SnO 、ThO 、V 、Nb 、Ta 、MoO 、WO 、MnO などの無機材料を、蒸着法又は、スパッタリング法を用いて形成される。ただし材料はこれらに限定されるものではない。
【0031】
また、正孔輸送材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、エチレングリコールジエチルエーテル、1−プロパノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、水等の単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されていても良い。
【0032】
また、印刷する際は、正孔輸送層インキの粘度としては5〜100mPa・sであることが好ましい。これは、本実施の形態で用いる凸版印刷法ではアニロックスから凸版上へのインキの転写が最初に行われるが、100mPa・s以上の粘度ではアニロックスから凸版上へインキが転写した後、凸版上で十分インキがレベリングせず、ムラの原因になる。また、5mPa・s以下では、画素内ではじきムラが発生しやすく、ムラの原因になる。
【0033】
また、正孔輸送層インキの固形分濃度としては0.5〜4.0%であることが好ましい。本実施の形態で用いる正孔輸送インキでは、4.0%以上の濃度ではインキの安定性が悪くなり、インキ凝集や正孔輸送層のムラの原因になる。
【0034】
次に、以上のように正孔輸送層104の形成後、インターレイヤー105を形成する。インターレイヤー105に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。
【0035】
これらのインターレイヤー材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。
【0036】
インターレイヤー105の形成方法としては、凸版印刷法を用いる場合は、有機発光インキに適した樹脂凸版を使用することができ、中でも水現像タイプの感光性樹脂凸版が好適である。
【0037】
次に、有機発光層106を形成する。有機発光層106は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層106を形成する有機発光材料は、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられる。
【0038】
これらの有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族
有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されても良い。
【0039】
有機発光層106の形成方法としては、凸版印刷法を用いる場合は、有機発光インキに適した樹脂凸版を使用することができ、中でも水現像タイプの感光性樹脂凸版が好適である。
【0040】
また、有機発光インキの粘度としては5〜100mPa・sであることが好ましい。これは、本実施の形態で用いる凸版印刷法ではアニロックスから凸版上へのインキの転写が最初に行われるが、100mPa・s以上の粘度ではアニロックスから凸版上へインキが転写した後、凸版上で十分インキがレベリングせず、ムラの原因になる。また、5mPa・s以下では、画素内ではじきムラが発生しやすく、ムラの原因になる。
【0041】
次に、以上のような有機発光層106の形成後、陰極層107を画素電極102のラインパターンと直交するラインパターンで形成する。この陰極層6の材料としては、有機発光層106の発光特性に応じたものを使用でき、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体やこれらと金、銀などの安定な金属との合金などが挙げられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。陰極層の形成方法としてはマスクを用いた真空蒸着法による形成方法が挙げられる。
【0042】
なお、本実施の形態の有機EL素子は、陽極である画素電極102と陰極層107の間に陽極層側から正孔輸送層104、インターレイヤー105と有機発光層106を積層した構成であるが、陽極層と陰極層の間において正孔輸送層104、有機発光層106以外に正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層といった層を必要に応じ選択した積層構造をとることができる。また、これらの層を形成する際にも本発明の製造方法を使用することができる。
【0043】
最後に、これらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップ108と接着剤109を用いて密閉封止し、有機EL素子を得ることができる。また、基板101が可撓性を有する場合には、封止剤と可撓性フィルムを用いて封止を行っても良い。
【0044】
以下、本発明の実施の形態における印刷装置について説明する。この実施の形態に示すフレキソ印刷装置は、図3に示すように、定位置に回転可能に支持された第一の回転式版胴201と、第一の回転式版胴201の周面に装着された、発光パターン形成用の印刷用凸版(フレキソ版)202と基板の異物を除去するための第一異物除去版302と、第一の回転式版胴201と対向して矢印401aで示す方向に移動可能に設置された印刷用凸版202の異物を除去する第二の異物除去版402を備えた第二の回転式版胴401と、印刷用凸版202と第一の異物除去版を洗浄するための第一の洗浄チャンバー303と、第二の異物除去版402を洗浄する第二の洗浄チャンバー304を備えている。また、第一の回転式版胴201の下方で矢印206aで示される方向に移動可能に設置された定盤206と、定盤206上に載置された被印刷基板207と、印刷用凸版202の表面に発光層用のインキを供給するアニロックスロール203と、このアニロックスロール203にインキを供給するインキチャンバー204と、インキチャンバー204にインキを定期的に供給するインキタンク205と、を併せ備えている。
【0045】
図4は第一の回転式版胴201の周面に装着された発光パターン形成用の印刷用凸版202と基板の異物を除去するための第一異物除去版302と、を示す図である。第一の回転式版胴201の同一周面に印刷用凸版202と基板の異物を除去するための第一異物除去版302が隣接して設けられている。また、定盤206は矢印201aで示す方向に移動可能となっており、印刷用凸版207の異物除去を第一異物除去版302で行い、次に矢印201aで示す方向に移動して印刷用凸版202によって印刷を行うことが出来る。
【0046】
前記第一の異物除去版302と第二の異物除去版402は、それぞれ磁性金属異物を磁気吸着するマグネット層と、その他異物を粘着で吸着させるゴム層からなる。即ち、図5(a)で示すように第一の異物除去版302はマグネット層302aとゴム層302bで構成されている。また、図5(b)で示すように第二の異物除去版402はマグネット層402aとゴム層402bで構成されている。第一の異物除去版302と第二の異物除去版402は、ゴム層が最表面となっている。
【0047】
マグネット層302aと402aの材料としては、例えば、フェライト、ネオジウムのいずれかを含むラバーマグネットが好ましい。磁場は、等方性、異方性に因らない。
【0048】
ゴム層302bと402bの材料としては、硬度が、10〜30度、粘着力が50〜500g/cmで、ゴム自体に粘着力があるシリコーン系、ウレタン系、ブチル系、フッ素系の合成ゴムが挙げられるが、これに、限定するものではない。また、帯電防止加工されており、ゴム層の成分が残留しない加工がされていることや、画素面に接触するように、画素に合わせてパターニングされていることが好ましい。
【0049】
また、第一の異物除去版302は、印刷用凸版202に近接して設けられており、第一の異物除去版で被印刷基板207の異物を除去すると同時に、第二の異物除去版402で印刷用凸版202の異物を除去する。
【0050】
また、第一と第二の異物除去版302、402は、マグネットの磁力で固定されており、特別に固定する箇所を設けていないため、固定箇所の干渉が問題にならない。
【0051】
以下、本発明の実施の形態における印刷装置の印刷方法について説明する。本発明の印刷方法を図6に示す動作フロー図を用いて説明する。本発明の印刷方法は異物を除去する異物除去過程と、有機機能膜を印刷して成膜する成膜過程を経る。開始後(S1)、異物除去過程に際しては、被印刷基板207が設置された定盤が第一の異物除去版302の下に移動して異物を除去できるように、図示しない方法で第一の回転式版胴201の軸と水平方向に移動する(S2)と同時に、版胴201と対向に設置された、第二の異物除去版を備えた第二の回転式版胴301が、図示しない方法で印刷用凸版に接するまで、版胴201の軸方に垂直方向に水平移動する(S3)。第一の異物除去版302が、印刷用凸版201の延長上にある場合は、定盤206を移動させる必要がない。
【0052】
その後、被印刷基板207を、第一の異物除去版302で、画素間の異物を除去する(S4)と同時に、印刷用版胴201に接触した異物除去版を備えた第一の回転式版胴301を同じ回転数で、お互い逆方向に回転させることで、印刷用凸版201上に付着した異物を除去する(S5)。
【0053】
異物除去過程終了後、次に定盤206は印刷用凸版202の下に移動して(S6)、次に印刷による成膜(成膜過程)を行う(S7)。成膜過程に際しては、アニロックスロール204の回転に伴い、アニロックスロール203表面上に供給されたインキ層は、アニロックスロール203に近接して回転する駆動される版胴201にマウントされた印刷用凸版202の凸部に転移する。印刷用凸版202の凸部にあるインキは被印刷基板207に対して印刷され、必要に応じて乾燥工程を経て被印刷基板207上に、有機膜が成膜される。
【0054】
印刷終了後、図示しない方法で、第二の回転式版胴401を、洗浄液の溜められた第二の洗浄チャンバー304まで移動させ、第二の回転式版胴401を回転させることにより、第二の異物除去版402の洗浄を行なう。また、同時に、同様にして、第一の回転式版胴201を、洗浄液の溜められた第一の洗浄チャンバー303まで、図示しない方法で移動させ、第一の回転式版胴201を回転させることにより、印刷用凸版202と第一の異物除去版302の洗浄を行なう。
【0055】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0056】
<実施例>
基板は、支持体上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタを備えたアクティブマトリクス基板を用いた。基板のサイズは200mm×200mm、対角5インチである。
【0057】
この基板上に設けられている第一電極の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁103を形成した。隔壁103形成は、日本ゼオン(株)製、ポジレジスト、商品名「ZWD6216−6」を用いて、スピンコーター法にて基板全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィー法を用いて幅40μmにパターニングして隔壁103を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。
【0058】
第一電極102上に正孔輸送層104として、厚み20nmの酸化モリブデンをスパッタ法により成膜した。
【0059】
次に本発明の印刷装置を用いて、第一の異物除去版で基板の異物を除去し、同時に第二の異物除去版で印刷用凸版の異物を除去した後、印刷用凸版で濃度2%になるようにトルエンでインキ化したインターレイヤー105を印刷し成膜を行なった。その際使用した第一の異物除去版302及び第二の異物除去版402は、ゴム層の硬度が15度、粘着力が、200g/cmかつ、マグネット層の吸着力が、440g/cmのネオジウムラバーマグネットを使用した。印刷、乾燥後の膜厚は、30nmとなった。印刷後は、印刷装置に備え付けられた第一の洗浄チャンバーで第一の異物除去版と印刷用凸版の洗浄し、また第二の洗浄チャンバーで第二の異物除去版を洗浄をした。
【0060】
次に、インターレイヤー105と同様の方法により、濃度2%になるようにトルエンでインキ化したインキ化した発光層106を印刷、乾燥後、その膜厚は、60nmになった。
【0061】
その上に、Ca、Alからなる陰極層107を画素電極のラインパターンと直行するようなラインパターンで抵抗加熱蒸着法により、マスク蒸着して形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップ108、接着剤109を用いて密閉封止し、有機ELディスプレイパネルを作製した。
【0062】
これにより得られた有機ELディスプレイパネルの表示部の周辺部には各画素電極に接続されている陽極側の取り出し電極と、陰極側の取り出し電極があり、これらを電源に接続することにより、得られた有機ELディスプレイパネルの点灯表示確認を行い、発光状態のチェックを行った。
<比較例1>
【0063】
異物除去版のマグネット層を除き、ゴム層の1層のみ以外は、実施例と同じとした。
<比較利2>
【0064】
異物除去版のゴム層を除き、マグネット層の1層のみ以外は、実施例と同じとした。
<比較例3>
【0065】
異物を除去するための、異物除去版による基板の異物を除去と、印刷用凸版の異物を除去する機構がないこれまでの印刷装置(図1)を用いた以外は、実施例と同様とした。
【0066】
表1に実施例と比較例1から3の評価結果を示す。実施例及び比較例1のように作成した有機ELパネルの異物数評価、表示状態での発光形状に異常がある画素や、極端に輝度が低い画素を異常発光画素とし評価している。表1に示されるように実施例は、比較例に比べて異物が10分の1以下であることや、異物によるショート画素が格段に少ないことから、良好な結果が得られることがわかる。また、ゴム層のみの単層では、異物数は、減るが、ショート画素が多い、また、逆に、マグネット層のみの単層では、ショート画素は減るが、異物数が多いことと、異常発光画素が多いことが分かる。これは、ゴム層のみでは、異物除去能力は高いが、ショートの原因となる金属異物の除去が不足している。それに比べ、マグネット層のみでは、ショートの原因となる金属異物の除去能力は高いが、その他、有機物などの異物の除去ができないため、異物数が多い。よって、実施例のように、ゴム層、マグネット層の異物除去能力を併せ持った2層構造が望ましい。
【0067】
【表1】

【符号の説明】
【0068】
101・・・・・基板
102・・・・・画素電極
103・・・・・隔壁
104・・・・・正孔輸送層
105・・・・・インターレイヤー
106・・・・・有機発光層
107・・・・・陰極層
108・・・・・ガラスキャップ
109・・・・・接着剤
201・・・・・第一の回転式版胴(印刷用版胴)
201a・・・・定盤の移動する方向を示す矢印
202・・・・・印刷用凸版
203・・・・・アニロックスロール
204・・・・・インキチャンバー
205・・・・・インキタンク
206・・・・・定盤
206a・・・・定盤が移動する方向を示す矢印
207・・・・・印刷用基板
302・・・・・第一の異物除去版
302a・・・・マグネット層
302b・・・・ゴム層
303・・・・・印刷用洗浄チャンバー
304・・・・・異物除去版用洗浄チャンバー
401・・・・・異物除去版用版胴
402・・・・・第二の異物除去版
402a・・・・マグネット層
402b・・・・ゴム層
501・・・・・マグネット層
502・・・・・ゴム層
601・・・・・版胴
602・・・・・印刷用凸版
603・・・・・アニロックスロール
604・・・・・インキチャンバー
605・・・・・インキタンク
606・・・・・定盤
606a・・・・定盤が移動する方向を示す矢印
607・・・・・被印刷板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷基板に微細パターンを印刷する印刷装置であって、
印刷用凸版を備えた第一の回転式版胴と、
第一の回転式版胴上に設けられ、被印刷基板表面の異物を除去するための第一の異物除去版と、
印刷用凸版を備えた第一の回転式版胴と対向して設けられ、印刷用凸版表面の異物を除去するための第二の異物除去版を備えた第二の回転式版胴と、
印刷用凸版と第一の異物除去版を洗浄するための第一の洗浄チャンバーと、
第二の異物除去版を洗浄する第二の洗浄チャンバーと、を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第一の異物除去版及び第二の異物除去版は、金属異物を除去するためのマグネット層と、有機物あるいは磁性のない金属異物を除去するゴム層と、の2層以上からなることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記マグネット層は、フェライト又はネオジウムのいずれかを含むラバーマグネットから成ることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ゴム層は、シリコーン系、ウレタン系、ブチル系、フッ素系のいずれかから成り、その硬度が10〜30度、粘着力が50〜500g/cmであることを特徴とする請求項2または3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第一の異物除去版及び第二の異物除去版は、第一の回転式版胴及び第二の回転式版胴に前記マグネット層の磁力で固定されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置を用いて、第一の異物除去版で被印刷基板の異物を除去すると同時に、第二の異物除去版で印刷用凸版の異物を除去する異物除去過程と、有機機能層を印刷する成膜過程を経ることを特徴とする有機機能素子製造方法。
【請求項7】
前記有機機能素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項6に記載の有機機能素子製造方法。
【請求項8】
前記有機機能層は一層以上からなり、複数回印刷することを特徴とする請求項6に記載の有機機能素子製造方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−71337(P2013−71337A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212639(P2011−212639)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】