説明

印刷装置

【課題】スクリーン印刷の印刷精度を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】印刷装置のスクリーンマスク1をマスクホルダ2に固定する固定機構が、スクリーンマスク1の外周縁に有る枠5の四辺のうち、スキージ9の擦動方向である矢印12に沿って配置される辺51および辺52とマスクホルダ2とを固定する第1固定機構と、枠5の四辺のうち、矢印12と交差する方向に沿って配置され、かつ、擦動開始位置から見て、矢印12と反対方向に配置される辺53と、マスクホルダ2とを固定する第2固定機構とからなるように構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷技術に関し、特にスクリーン印刷に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2000−202987号公報(特許文献1)には、スクリーンの張力による変形量を少なくした軽量のスクリーン印刷用のフレームとして、以下の構造が記載されている。アルミニウム合金製の角管であって、四辺形に組み立てられて印刷用スクリーンが張力を与えられた状態で張りつけられるスクリーン印刷用フレームの内側隅部に軸方向の開口部を形成し、張力を与えられた状態炭素繊維束を挿入する。
【0003】
この構成によれば、フレームの曲り応力に対する剛性が向上し、重力の増加も抑制されるとされている。
【特許文献1】特開2000−202987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリーン印刷とは、インクなどの印刷剤をスキージング(スキージで印刷剤を押し出すこと)によりステンシルスクリーンを通過させて被印刷物に所望のパターンを転写する孔版印刷方式の一種であり、IC基板の回路配線形成や、PDP(Plasma Display Panel)などのフラットディスプレイパネルの電極形成、蛍光体層形成など様々な用途に利用されている。
【0005】
特に、PDPの製造工程のうち、電極形成工程や蛍光体層形成工程などにスクリーン印刷技術が適用されるが、近年ディスプレイの表示面サイズを大型化したり、表示画像を高精細化したりするため、大型のスクリーンマスクを用いて高精度の印刷を行う技術が要求されている。
【0006】
本発明者はスクリーンマスクで高精度の印刷を行う技術について検討を行い、以下の課題を見出した。
【0007】
高精度のスクリーン印刷を行うためには、所定の位置関係でスクリーンマスクと基板などの被印刷物とを配置し、前記所定の位置関係を高精度で維持しつつ、スキージングを行い、被印刷物に転写する必要がある。
【0008】
ところで、スクリーン印刷は、印刷剤をスキージングによりスクリーンマスクを通過させて被印刷物に転写するため、スキージングを実行するとスクリーンマスクの裏面に印刷剤の一部が付着する(一般に裏まわりと呼ばれる)。
【0009】
裏まわりした印刷剤はクリーニング装置により拭き取られる(一般に裏拭きと呼ばれる)が、この裏拭き工程は、印刷実行位置では行えないため、スクリーンマスクを印刷実行位置からクリーニング実行位置に移送して(スクリーンマスクのマスク枠がマスクホルダに固定された状態で、該マスクホルダごと移送する)実施される。裏拭きされたスクリーンマスクは、印刷実行位置に再度移送され、次の印刷が実行される。
【0010】
裏拭きはスキージングを1回ないしは数回程度行う毎に実施されるため、スクリーンマスクはその都度クリーニング実行位置と印刷実行位置の間を移送される。
【0011】
ここで、スクリーンマスクを印刷作業実行位置に移送する工程では、例えば移送用のガイドレールなどの歪み等に起因して、マスクホルダが変形することがある。マスク枠はマスクホルダに固定されているため、マスク枠がマスクホルダに倣って若干変形する。
【0012】
また、スキージング工程ではスキージをスクリーンマスクの上面から所定の押圧で下面方向に押しながらマスク枠の四角形の一辺から反対側の一辺の方向に向かって擦動させる。
【0013】
ここで、マスク枠にはスキージの擦動方向に沿って曲げ応力が作用するため、マスク枠(特に印刷有効領域に対応する箇所)が若干ではあるが変形することがある。スクリーンマスクの平面寸法が大きくなる程、マスク枠の剛性は小さくなるので、スキージングに伴うマスク枠の変形量はスクリーンマスクの平面寸法(特にスキージの擦動方向に交差する方向の寸法)に比例して大きくなる。
【0014】
マスク枠の変形を抑制する手段として、例えば特開2000−202987号公報(特許文献1)に記載されているように、マスク枠を補強する方法がある。
【0015】
しかし、マスク枠を補強する方法のみにより前記マスク枠の変形を抑制するためには相当量の補強材をマスク枠に挿入しなければならない。しかも、スクリーンマスクの平面寸法が大型化する程、前記マスク枠の剛性は低下するので補強材の挿入量が増し、スクリーンマスクの重量が増大する。
【0016】
スクリーンマスクの重量が増大すると、スクリーンマスクの交換作業などの際に、スクリーンマスクの運搬が困難になる。また、印刷装置の機械的強度を向上させるため、装置が大型化するという問題も生じる。
【0017】
上記した2つの要因によるマスク枠の変形は、変形量が若干であるため、従来認識されていなかった。しかし、PDPの表示画像の高精細化のために要求される印刷精度を得るためには無視できない。
【0018】
すなわち、スクリーン印刷の印刷精度を向上させる手段として、マスク枠に補強材を挿入する方法のみを用いる場合、所望の印刷精度が得られないことがある。
【0019】
本願発明の目的は、スクリーン印刷の印刷精度を向上させることができる技術を提供することにある。また、本願発明の他の目的は、PDPを高精細化できる技術を提供することにある。
【0020】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0022】
すなわち、本発明は、印刷装置のスクリーンマスクをマスクホルダに固定する固定機構が、スクリーンマスクの外周縁に有るマスク枠の四辺のうち、スキージの擦動方向に沿って配置される第1辺および第2辺と前記マスクホルダとを固定する第1固定機構と、
前記マスク枠の四辺のうち、前記擦動方向と交差する方向に沿って配置され、かつ、前記擦動開始位置から見て、前記擦動方向と反対方向に配置される第3辺と、前記マスクホルダとを固定する第2固定機構とからなるように構成するものである。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0024】
すなわち、本発明によれば、スクリーン印刷の印刷精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0026】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0027】
本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態1では本発明に係るスクリーン印刷技術について、PDPの基板表面に形成された隔壁(放電空間をセル毎に区画するための隔壁)で区画されたセル内に蛍光体層を形成するPDPの製造工程を例として説明する。
【0029】
PDPの基板表面に隔壁を形成して放電空間をセル毎に区画する方法は、帯状の隔壁(以下ストライプリブ)により区画する方法と、格子状の隔壁(以下ボックスリブ)で区画する方法とに大別される。
【0030】
これまで、ストライプリブで区画する方法が一般的であったが、PDPの表示画像を高精細化するため、ストライプリブの配置ピッチは短くなり、また、PDPの輝度を向上させるなどの目的で、ボックスリブで区画する方法を採用するケースが増加している。
【0031】
図1は本実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置した状態を示す斜視図、図2は図1に示すスクリーンマスクを戴置したマスクホルダが印刷を実行する位置に移送された状態を示す斜視図、図3は図2に示すスクリーンマスクとマスクホルダを上面からみた平面図、図4は図2に示すスクリーンマスクとマスクホルダを下面からみた平面図、図5は図3に示すA−A線に沿って下面方向に切断した状態を示す要部断面図、図6はB−B線に沿って下面方向に切断した状態を示す要部断面図である。
【0032】
図1において、印刷装置100はスクリーンマスク1と、スクリーンマスク1を坦持するマスクホルダ2と、一方の主面に例えばボックスリブが形成された基板(被印刷物)3を戴置する印刷ステージ4とを有している。
【0033】
図5に示すように、スクリーンマスク1は互いに反対側に位置する上主面(第1の主面)1aと下主面(第2の主面)1bとを有し、外周縁に枠5(マスク枠)を備えている。また、スクリーンマスク1は印刷剤を上主面1aから下主面1a方向に通過させる孔部が所望のパターンで形成された内紗6と、内紗6を枠5の方向に緊張させる外紗7とを備えている。
【0034】
また、枠5の下面にはスクリーンマスク1の上主面1aが対向した状態で接着剤などにより固着され、所望の緊張状態を維持した状態で内紗6および外紗7を保持している。また、枠5は図4および図5に示すように、角管を四角形に形成したものであり、例えばアルミニウム合金などの金属材料からなる。
【0035】
また、枠5の内部には、スクリーンマスクの平面寸法(主面1a側から見た寸法)の大きさに応じて、補強材が挿入されている。
【0036】
図1に示すように、スクリーンマスク1はマスクホルダ2のコの字型のガイド部に挟まれるような状態で挿入される。スクリーンマスク1の挿入方向の位置はマスクホルダ2の一辺に形成されたストッパ8により決定され、マスクホルダ2に戴置される。
【0037】
また、図2に示すように印刷装置100はスキージ9を備え、スキージ9は印刷実行時にスクリーンマスク1の上主面1aを基板3方向に押圧しながら擦動し、印刷剤である蛍光体ペースト(図示せず)を下主面1b側に押し出す押出機構を有している。
【0038】
また、図1および図2に示すように印刷装置100は、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置(第1の位置)から基板3の主面に形成されたボックスリブで区画されたセル内に蛍光体ペーストの充填を行う位置、すなわち印刷実行位置(第2の位置)まで、スクリーンマスク1がマスクホルダ2に戴置された状態で移送する移送機構を備えている。
【0039】
ここで、印刷実行位置とは印刷剤である蛍光体ペーストをスキージ9の擦動により主面1aから主面1bの方向に内紗6に形成された孔部を通過させてリブで区画されたセル内に充填(すなわち転写)する位置である。印刷実行位置では、スクリーンマスク1と基板3とが前記充填に必要な所定の位置関係をなしている。
【0040】
移送機構としては図1および図2に示すように、スクリーンマスク1を支持するマスクホルダ2をガイドレール10に沿って移送する方法を例示することができる。移送のための動力としては例えば、電動モータなどを用いることができる。
【0041】
前記第1の位置から印刷実行位置に移送する段階では、スクリーンマスク1の枠5は、マスクホルダ2に支持されている状態であり、スクリーンマスク1はマスクホルダ2に固定されていない。
【0042】
前記印刷実行位置にマスクホルダ2とともに移送されたスクリーンマスク1は図3〜図5に示すクランプ11により固定される(第1固定機構)。クランプ11は、例えばエアシリンダなどの棒状の部材であり、マスクホルダ2の上側の部材から下側の部材方向に枠5を押圧して固定されている。
【0043】
なお、第1固定機構は印刷実行時に発生する力(すなわち、スキージ9が押圧しながら擦動することにより、擦動方向に働く力)により、枠5が移動する現象を許容範囲内に抑制できれば良く、前記した方法に限定される訳ではない。
【0044】
本実施の形態1ではクランプ11による固定、すなわち第1固定機構は印刷実行位置で動作する。第1固定機構を印刷実行位置以外で動作させた場合の問題点について、図15を用いて説明する。
【0045】
図15は本実施の形態1の比較例である印刷装置のマスクホルダに固定されたスクリーンマスクを印刷実行位置に移送した後の状態を示す平面図である。図15において示す符号は本実施の形態1の図3で示す符号に対応する。また、図15ではスクリーンマスクの変形状態を理解し易くするためスクリーンマスクの変形の程度を誇張して示している。
【0046】
スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置から印刷実行位置に移送する際、ガイドレール10に歪みがあると、図15に示すようにマスクホルダ2が変形することがある。この時、スクリーンマスク1の枠5がマスクホルダに固定されている場合、マスク枠がマスクホルダに倣って若干変形する。
【0047】
スクリーンマスク1の印刷有効領域である内紗6は、外紗6によって枠5の方向に一定範囲内の張力で緊張されているので、枠5が変形すると、これに倣って内紗6も変形する。このため、本実施の形態1の比較例では印刷精度が許容範囲からずれる場合がある。
【0048】
印刷精度が許容範囲からずれると、RGB(Red Green Blue)、の各蛍光体ペーストが所定のセル内に充填されず、例えば隣接したセルに充填されると、混色不良となる。また、混色まで至らなくとも、リブの頂部に蛍光体が乗り上げると、完成したプラズマディスプレイの表示上、ムラなどの不具合を発生させる原因となる。
【0049】
図1〜図6に示す本実施の形態1の印刷装置は、第1固定機構を印刷実行位置で動作するので、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置から印刷実行位置に移送する際にはスクリーンマスク1はマスクホルダ2に固定されておらず、滑動可能な状態で戴置されている。
【0050】
このため、例えば図1および図2に示すガイドレール10に歪みがあるなどの理由により、マスクホルダ2が変形したとしても、スクリーンマスク1の枠5の変形を防止することができる。
【0051】
すなわち、本実施の形態1の印刷装置は、第1固定機構を印刷実行位置で動作させることにより、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置から印刷実行位置に移送する際の枠5の変形を防止することができるので、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0052】
ここで、本実施の形態1に係る印刷装置100を用いて被印刷物にスクリーン印刷を行う方法について、基板3に形成されたリブで区画された各セル内にRGBの各蛍光体ペーストを充填する方法を例として説明する。
【0053】
図7は本実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置する工程示す要部断面図、図8は本実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置する位置から印刷実行位置に移送する工程を示す要部断面図、図9は本実施の形態1の印刷装置の押出機構が動作し、印刷剤を被印刷物に転写する工程を示す要部断面図、図10は本実施の形態1である印刷装置のスクリーンマスクの裏面をクリーニングする工程を示す要部断面図である。
【0054】
(a)まず、図7に示すように第1の位置でスクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する。この工程では、スクリーンマスク1の枠5は、マスクホルダ2に支持されている状態であり、スクリーンマスク1はマスクホルダ2に固定されているわけではない。
【0055】
また、基板3は印刷ステージ4の上に戴置されている。
【0056】
(b)次に図8に示すように、マスクホルダ2はスクリーンマスク1の枠5を支持した状態のまま印刷実行位置(第2の位置)に移送される。移送手段としては既に説明したようにマスクホルダ2をガイドレール10に沿って移送する方法を例示することができる。
【0057】
(c)スクリーンマスク1およびマスクホルダ2が、印刷実行位置に移送された後、印刷装置100の第1固定機構が動作し、スクリーンマスク1はマスクホルダ2に固定される。第1固定機構としては、図3〜図5を用いて既に説明した通り、例えばクランプ11で、マスクホルダ2の上側の部材から下側の部材方向に枠5を押圧して固定する方法を例示することができる。
【0058】
本実施の形態1の印刷方法によれば、第1固定機構を印刷実行位置に移送した際に動作させることにより、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置から印刷実行位置に移送する際の枠5の変形を防止することができるので、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0059】
(d)スクリーンマスク1が印刷実行位置でマスクホルダ2に固定された後、基板3が印刷実行位置に配置されるように移送される。基板3は、基板3が戴置された状態で印刷ステージ4が移動することにより所定の印刷位置に調整される。
【0060】
位置調整の具体的手段としては、赤外線センサなどにより、スクリーンマスク1および基板3の位置を認識し、所定の位置関係となるように印刷ステージ4を移動させる方法を例示することができる。
【0061】
本実施の形態1の印刷ステージ4は、スクリーンマスク1の主面1bに沿った方向にも、主面1bに交差する方向にも移動可能な状態で印刷装置100のフレームに支持されている。このため、基板3が戴置された状態で印刷ステージ4を移動させることにより、基板3を印刷実行位置に移送することが可能となる。
【0062】
(e)スクリーンマスク1および基板3がそれぞれ印刷実行位置に配置された後、印刷装置100のスキージング(押出機構)が動作し、印刷剤である蛍光体ペーストが被印刷物である基板3に転写される。すなわち第1の転写工程が実行される。
【0063】
ここで、図9に示す主面1bに対向する基板3の主面3aには、ボックスリブまたはストライプリブが形成されている。スキージ9はスクリーンマスク1の内紗6(図3参照)を、主面1aから基板3の主面3aの方向に押圧しながら、図の矢印12で示す方向(擦同方向)に擦動することにより、例えば赤色の蛍光体ペーストを基板3の主面3aに形成されたリブで区画されたセル内に充填(すなわち転写)する。
【0064】
スクリーンマスク1の内紗6は所定の範囲内の張力で、枠5方向に緊張されているため、スキージ9の前記擦動を完了し、上部に移動した段階で内紗6と基板3とは剥離して第1の転写工程が終了する。
【0065】
(f)転写工程では蛍光体ペーストをスキージングにより内紗6の孔部を通過させて基板3に充填するため、スキージングを実行するとスクリーンマスク1の裏面に蛍光体ペーストの一部が付着する(裏まわり)。
【0066】
異なる種類の蛍光体ペーストを充填する場合、混色の問題を防止するため、付着した蛍光体ペーストを拭き取る工程が必要となる。そこで、図10に示すようにスクリーンマスク1の主面1bに付着した蛍光体ペーストをクリーニング装置13によりクリーニングする。
【0067】
クリーニング工程に先だって、クリーニング装置13の配置スペースを確保するため、スクリーンマスク1をクリーニング実行位置(第1の位置)まで移送する必要がある。移送の手段としては、第1固定機構を解除した後、クリーニング実行位置に移送する方法も考えられる。
【0068】
しかし、第1固定機構を解除すると、クリーニング後に実施される第2転写工程で再度スクリーンマスク1および基板3の位置を認識する必要が生じるため、作業が繁雑になる。第2転写工程前の位置認識を回避するためには、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に固定した状態で移送する必要が生じる。
【0069】
ところで、スクリーンマスク1をマスクホルダ2に固定した状態で移送する場合、既に説明したように、ガイドレール10に歪みがあると、マスクホルダ2およびマスク枠5が若干変形することがある。
【0070】
本発明者が検討した結果、この場合であってもスクリーンマスク1をマスクホルダ2に固定した状態を維持したままクリーニング工程、および印刷実行位置への移送工程を行うことにより、マスク枠5は第1固定機構を動作させた際の形状に復元されることを見出した。
【0071】
すなわち、本実施の形態1によれば、実施の形態1の印刷装置は、第1固定機構を印刷実行位置で動作させることにより、マスク枠5が移送工程により変形しても印刷実行位置では復元できるので、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態1では、説明の都合上スクリーンマスク1をマスクホルダ2に戴置する位置と、クリーニング実行位置とを区別して記載したが、これらは同一の位置として良い。同一の位置とすれば、印刷装置の専有面積を小さくすることができる。
【0073】
(g)クリーニング工程が終了した後、図8に示すように、マスクホルダ2は印刷実行位置(第2の位置)に移送される。既に説明したとおり、この際、スクリーンマスク1はマスクホルダ2に固定された状態のまま移送される。
【0074】
以下、前記(d)〜前記(f)で説明した工程を繰り返し、第2転写工程、第3転写工程が終了した時点で、基板3に形成されたリブにより区画された各セル内には、RGBの各蛍光体ペーストが所定の位置に充填される。
【0075】
なお、第1印刷工程が終了したあとの前記(d)位置調整工程ではスクリーンマスク1および基板3の位置を認識する作業は省略することができる。
【0076】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、スクリーンマスクのマスク枠をマスクホルダに固定する機構を第1固定機構として説明したが、第1固定機構とは異なる第2固定機構を追加することもできる。本実施の形態2では前記第1固定機構に加え、第2固定機構を備える印刷装置について説明する。
【0077】
図11は本実施の形態2の印刷装置の斜視図、図12は図11に示すスキージ、スクリーンマスク、およびマスクホルダを上面からみた平面図、図13は図12に示すB−B線に沿って下面方向に切断した状態を示す要部断面図、図14はC−C線に沿って下面方向に切断した状態を示す拡大要部断面図である。なお、図12に示すA−A線に沿った断面図は図5に示した断面図と同様の構造となるので図示は省略する。
【0078】
図11に示す本実施の形態2の印刷装置101と、図2に示す前記実施の形態1の印刷装置100との相違点は、印刷装置101には固定治具(第2固定機構)14を備えている点である。
【0079】
図11において、印刷装置101はスクリーンマスク1と、スクリーンマスクのマスク枠5を支持するマスクホルダ2とを備えている。図11はマスクホルダ2を印刷実行位置に移相した後の状態であるため、図11には示されていないが、印刷装置101はスクリーンマスク1の下方に、被印刷物である基板3(図5、図14参照)が戴置された印刷ステージ4(図5、図14参照)を備えている。
【0080】
また、スクリーンマスク1は上主面(第1の主面)1aおよび下主面(第2の主面)1bを有し(図5、図14参照)、四つの辺51、52、53、54を有する枠(マスク枠)5を外周縁に持っている。
【0081】
また、印刷装置101はスキージ9を備え、該スキージ9は転写工程においてスクリーンマスク1の主面1aを基板3方向に押圧しながら図11に矢印(第1方向)12で示す方向に擦動し、印刷剤(図示せず)を主面1b側に押し出す機構(押出機構)を有している。
【0082】
また、印刷装置101はスクリーンマスク1をマスクホルダ2に固定する固定機構を備えている。ここで、該固定機構について詳細に説明する。
【0083】
スクリーンマスク1の枠5は、図11に示すように四つの辺51、52、53、54を有しているが、このうち矢印12の方向に沿って延在するように配置される辺(第1辺)51、および辺(第2辺)52は、前記実施の形態1で説明した印刷装置100と同様に、クランプ11によりマスクホルダ2に固定されている(第1固定機構)。
【0084】
一方、印刷装置101では矢印12の方向に交差する方向(第2方向)に沿って延在するように配置される辺(第3辺)53、および辺(第4辺)54のうち、矢印12で示す方向と反対方向に配置される辺(第3辺)53は固定治具14によりマスクホルダ2に固定されている(第2固定機構)。
【0085】
ここで、前記第2固定機構を備えていない印刷装置でスクリーン印刷を行う場合の問題点について、図16を用いて説明する。
【0086】
図16は本実施の形態2の比較例である前記第2固定機構を備えていない印刷装置を用いてスクリーン印刷を行った際のスクリーンマスクの変形状態を示す平面図である。図16において示す符号は本実施の形態1の図12で示す符号に対応する。また、図16ではスクリーンマスクの変形状態を理解し易くするためスクリーンマスクの変形の程度を誇張して示している。
【0087】
図16において、スキージ9は転写工程で、矢印12の下側の始点から上側の終点(矢印12の先端)に向かって擦動する。この際、スキージ9は内紗6および外紗7を被印刷物方向(図16が記載される紙面の表面から裏面方向)に押圧しながら擦動するため、枠5の辺53、54には、矢印12に沿った方向の外力が加わる。
【0088】
前記外力が加わった結果、枠5の辺53、54が図16に示すように変形する場合がある。この擦動持の外力による枠5の変形は、枠5の合成が最も弱い部分、すなわち、辺53、54の中央付近で特に大きく変形する。枠5の辺53、54が変形すると、これに倣って印刷有効領域である内紗6が変形する。
【0089】
既に説明したとおり、スクリーン印刷を行うためには、所定の位置関係でスクリーンマスクと被印刷物とを配置し、前記所定の位置関係を高精度で維持しつつ、スキージングを行い、被印刷物に転写する必要がある。
【0090】
従って、印刷有効領域である内紗6が、変形するとこれに伴い所定の位置関係が維持できなくなる。しかも、内紗6の変形の程度は不規則的に発生するため、前記変形の程度範囲以上に印刷精度を向上させることができないという問題が生じる。
【0091】
本実施の形態2の印刷装置101は第2固定機構を備えることにより、辺53、54の変形を防止または抑制することが可能となる。なお、本発明者が検討した所、第2固定手段により、辺53をマスクホルダ2に固定すれば、辺54の変形も防止または抑制できることが分かっている。
【0092】
ここで、PDPのパネル基板に形成されたストライプリブ、またはボックスリブで区画された各セル内に蛍光体ペーストを充填する例で更に詳細に説明する。
【0093】
ストライプリブで区画された各セル内に蛍光体ペーストを充填する場合、ストライプリブが帯状に配置される方向に沿ってスキージを擦動させるので、図12に示す矢印12と交差する方向(第2方向)の位置関係を特に高精度に制御すれば良く、矢印12に沿った方向(第1方向)の位置関係は第2方向の位置関係程の精度は求められない。
【0094】
一方、ボックスリブで区画された各セル内に蛍光体ペーストを充填する場合、前記第1方向の位置関係も前記第2方向と同程度に所定の位置関係を高精度で維持することが必要になる。
【0095】
本実施の形態2の印刷装置101は、印刷領域である内紗6が、矢印12に沿った方向、すなわち第1方向に変形することを防止または抑制することができるので、一方の主面にボックスリブが形成されるPDPを特に高精細化することができる。
【0096】
本実施の形態2では、第2固定機構として、3個の固定治具14で辺53の3箇所をマスクホルダ2に固定する例で説明したが、辺53を固定する箇所は3箇所に限定されない。印刷有効領域である内紗6の変形を防止または所望の範囲内に抑制できれば良いので、辺53のうち、スクリーンマスク1の印刷有効領域である内紗6に対向する領域の少なくとも1箇所が固定されていれば良い。
【0097】
既に説明した通り、辺53の変形は辺53の中央で最も大きくなるので、前記固定箇所は少なくとも辺53の中央を含んでいることが好ましい。固定箇所に辺53の中央を含めることにより、より確実に内紗6の変形を防止または抑制できるので、印刷精度を向上させることができる。
【0098】
また、本実施の形態2では、固定治具14の形状がコの字型である例を説明したが、枠5の辺53の変形が防止または所望の範囲内に抑制できれば、固定治具14の形状はコの字型に限定されない。
【0099】
既に説明した通り、辺53の変形は矢印12に沿った方向(第1方向)に発生するので、固定治具14は、辺53の第1方向側の側面を前記第1方向と反対方向(すなわち辺53の外周方向)に抑える面を有するように構成することが好ましい。このように構成すれば、直接的に辺53の変形を防止または抑制することができるので、印刷精度を向上させることができる。
【0100】
また、本実施の形態2では、第1固定機構および第2固定機構を動作させる位置については特に限定していない。しかし、第1固定機構および第2固定機構を印刷実行位置で動作させても良いことはいうまでもない。
【0101】
本実施の形態2の印刷装置101において、第1固定機構および第2固定機構を印刷実行位置、すなわち、印刷剤をスキージ9の擦動によりスクリーンマスク1の主面1aから主面1bの方向に内紗6に形成された孔部を通過させて被印刷剤に転写する位置で動作させることにより、印刷精度を更に向上させることが可能となる。
【0102】
本発明者が検討した所、本実施の形態2の印刷装置101において、第1固定機構および第2固定機構を印刷実行位置で動作させれば、転写工程の際に発生するマスク枠5の辺53中央部の変位量(辺53の中央部が第1方向に沿って移動する距離)を10μm以内に抑制することができる。
【0103】
ところで、プラズマディスプレイの表示面を大型化すると、PDPの表示面の精細度を向上させる必要がある。
【0104】
特に42インチ(ディスプレイの表示面の大きさを示す尺度であって、表示面の対角線の長さをインチで示す)フルHD(full high definition)以上のディスプレイにおいては精細度を180μm×420μm以下にする技術が要望されている。
【0105】
精細度を180μm×420μm以下とするためにはボックスリブで区画されたセルの平面寸法を70μm×320μmとする必要がある。
【0106】
ここで、例えば、外形寸法が3.5m×3.3mであるスクリーンマスクを用いる印刷装置において、固定治具14を備えていない場合、スキージング方向の版枠の最大変位量は120μm程度となり、平面寸法が70μm×320μmのセルに対して蛍光体ペーストの充填を行うと、隣接するセルにまで蛍光体ペーストが充填されてしまう。
【0107】
また、固定治具14を備えていても、マスク枠の辺53をのうち印刷有効領域に対向する領域が1箇所も固定されていない場合、スキージング方向の版枠の最大変位量は50μm程度となる。
【0108】
本実施の形態の印刷装置はマスク枠の辺53をのうち印刷有効領域に対向する領域が1箇所固定することにより、スキージング方向の版枠の最大変位量は10μm以下とすることができる。
【0109】
スキージング方向の版枠の最大変位量は10μm以下とすることにより、印刷有効領域の最大変位量は10μm以下とすることができる。このため、平面寸法が70μm×320μmのセルに対して混色や色ムラを生じることなく蛍光剤を充填することが可能となる、すなわちPDPの精細度を向上させることが可能となる。
【0110】
本実施の形態2の印刷装置101は、マスク枠5のスキージ9が動作する際の辺53中央部の変位量を10μm以内に抑制することにより、印刷精度を向上させることができるのでPDPを高精細化することができる。
【0111】
PDPの製造工程において、スクリーン印刷技術は前記実施の形態1および本実施の形態2で説明した蛍光体層形成(蛍光体ペーストの充填)工程の他、例えば、ストライプリブまたはボックスリブの背面に形成されるアドレス電極の形成などにも適用される。
【0112】
PDPの精細度はリブで区画された各セルの精細度により決定される。したがって、スクリーン印刷の印刷精度を向上させれば、PDPを高精細化することができる。
【0113】
以上、本発明者によってなされた発明を発明に実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、スクリーン印刷装置、特に高い印刷精度が要求されるスクリーン印刷装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すスクリーンマスクが戴置されたマスクホルダが印刷実行位置に移送された状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示す印刷装置のマスクホルダとスクリーンマスクを上面からみた平面図である。
【図4】図2に示す印刷装置のマスクホルダとスクリーンマスクを下面からみた平面図である。
【図5】図3に示すA−A線に沿って下面方向に切断した状態を示す断面図である。
【図6】図3に示すB−B線に沿って下面方向に切断した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置する工程を示す要部断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の印刷装置のマスクホルダにスクリーンマスクを戴置する位置から印刷実行位置に移送する工程を示す要部断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の印刷装置の押出機構が動作し、印刷剤を被印刷物に転写する工程を示す要部断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の印刷装置のスクリーンマスクの裏面をクリーニングする工程を示す要部断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2の印刷装置の斜視図である。
【図12】図11に示す印刷装置のスキージ、マスクホルダ、およびスクリーンマスクを上面からみた平面図である。
【図13】図12に示すB−B線に沿って下面方向に切断した状態を示す断面図である。
【図14】図12に示すC−C線に沿って下面方向に切断した状態を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1の比較例である印刷装置のマスクホルダに固定されたスクリーンマスクを印刷実行位置に移送した後の状態を示す平面図である。
【図16】本発明の実施の形態2の比較例である前記第2固定機構を備えていない印刷装置を用いてスクリーン印刷を行った際のスクリーンマスクの変形状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 スクリーンマスク
1a 主面(第1の主面)
1b 主面(第2の主面)
2 マスクホルダ
3 基板(被印刷物)
3a 主面
4 印刷ステージ
5 枠(マスク枠)
6 内紗
7 外紗
8 ストッパ
9 スキージ(押出機構)
10 ガイドレール
11 クランプ(第1固定機構)
12 矢印(第1方向)
13 クリーニング装置
14 固定治具(第2固定機構)
51 辺(第1辺)
52 辺(第2辺)
53 辺(第3辺)
54 辺(第4辺)
100、101 印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と第2の主面を有し、マスク枠を外周縁に持つスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクの前記マスク枠を支持するマスクホルダと、
被印刷物を戴置する印刷ステージと、
前記スクリーンマスクの前記第1の主面を前記被印刷物方向に押圧しながら擦動し、印刷剤を前記第2の主面側に押し出す押出機構と、
前記マスク枠を支持した状態で前記マスクホルダを第1の位置から印刷実行位置である第2の位置に移送する移送機構と、
前記スクリーンマスクを前記マスクホルダに固定する固定機構とを備え、
前記固定機構が、前記第2の位置で動作することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
第1の主面と第2の主面を有し、四辺を有するマスク枠を外周縁に持つスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクの前記マスク枠を支持するマスクホルダと、
被印刷物を戴置する印刷ステージと、
前記スクリーンマスクの前記第1の主面を前記被印刷物方向に押圧しながら第1方向に擦動し、印刷剤を前記第2の主面側に押し出す押出機構と、
前記スクリーンマスクを前記マスクホルダに固定する固定機構とを備え、
前記固定機構は、
前記マスク枠の四辺のうち、前記第1方向に沿って配置される第1辺および第2辺と、前記マスクホルダとを固定する第1固定機構と、
前記マスク枠の四辺のうち、前記第1方向に交差する第2方向に沿って配置され、かつ、前記押出機構が前記擦動を開始する位置から見て前記第1方向と反対方向に配置される第3辺と、前記マスクホルダとを固定する第2固定機構とからなり、
前記第2固定機構は、
前記第3辺のうち、前記スクリーンマスクの印刷有効領域に対向する領域の少なくとも1箇所を固定することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
第1の主面と第2の主面を有し、四辺を有するマスク枠を外周縁に持つスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクの前記マスク枠を支持するマスクホルダと、
被印刷物を戴置する印刷ステージと、
前記スクリーンマスクの前記第1の主面を前記被印刷物方向に押圧しながら第1方向に擦動し、印刷剤を前記第2の主面側に押し出す押出機構と、
前記スクリーンマスクを前記マスクホルダに固定する固定機構とを備え、
前記マスク枠は、
前記第1方向に沿って配置される第1辺および第2辺と、
前記第1方向に交差する第2方向に沿って配置され、かつ、前記押出機構が前記擦動を開始する位置から見て前記第1方向と反対方向に配置される第3辺とを備え、
前記押出機構が動作する際に前記第3辺の中央部が前記第1方向に沿って変形する変位量が10μm以内であることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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