説明

印刷装置

【課題】カバー体の開閉を行うヒンジの構成部材を最小限にし、少なくとも専用コイルスプリングの使用を中止しても、印字品質の向上とカバー体のオープンを半自動で行うことを可能とする印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】サーマルヘッド31をプラテンローラ26の周面に所定荷重で押圧させる複数の押圧バネを備え、プラテンローラ26が上カバー5に回転可能に取り付けられており、係止爪28が上カバー5に取り付けられたプラテンローラ26のローラ軸26Aを係止することによって、上カバー5をロールシートホルダ収納ケースに対して固定する構成にし、係止爪28に備えられた解除摘み27によって係止爪28がローラ軸26Aを開放したとき、押圧バネの押圧力が、サーマルヘッド31及びプラテンローラ26を介して、上カバー5をロールシートホルダ収納ケースから浮かす構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に印刷装置に設けられたカバー体の開閉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、本体筐体にカバー体を備える印刷装置においては、上方に開閉可能なカバー体が取り付けられており、そのカバー体のヒンジ機構にコイルバネの反動力を利用して、カバー体の開閉を補助する様々な技術が提示されている。
例えば、特許文献1には、コイルバネがプラスチック製ヒンジブロックのR部と摺動し、ヒンジブロックに設けたV溝にコイルバネが入り込む構造のため、コイルバネの表面摩耗による傷の発生を防止し、更に、V溝による楔効果により、コイルバネの反動を押さえることで、ヒンジの寿命を向上させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−052778号公報(段落0008、図1乃至図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載される構成においては、ヒンジの寿命を向上させる技術としては有効な技術であるが、この構成を実現するために専用部品が多くなると言う問題がある。そのために、工数の増加とコストアップの問題が発生する。また、コイルスプリングの強弱によってカバー体を確実に閉じることができないために印刷品質が維持できないという問題もある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、カバー体の開閉を行うヒンジの構成部材を最小限にし、少なくとも専用コイルスプリングの使用を中止しても、印字品質の向上とカバー体のオープンを半自動で行うことを可能とする印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る印刷装置は、装置の筐体を構成する第1カバー体と、前記第1カバー体に対してヒンジによって開閉可能に配設される第2カバー体と、前記第2カバー体が前記第1カバー体に対して閉じられたとき、第2カバー体を第1カバー体に対して固定する固定手段と、前記第2カバー体に回転可能に取り付けられるプラテンローラと、前記プラテンローラと対向する位置に配設されるサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを保持するヘッド支持部材と、前記固定手段によって前記第2カバー体が第1カバー体に固定されたとき、前記ヘッド支持部材の長手方向に配設されて前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの周面に所定荷重で押圧させる複数の弾性部材と、を備え、前記固定手段による前記第2カバー体の前記第1カバー体への固定が解除されたとき、前記プラテンローラが前記サーマルヘッドを介して前記所定荷重を有する複数の弾性部材によって押圧されることにより、第2カバー体が第1カバー体から浮くようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置において、前記プラテンローラは、前記第2カバー体の前記ヒンジが構成される端部と反対側の端部に配設されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、前記固定手段は、回動中心を有しその回動中心から2つの延出部を備え、一端は弾性部材に係止され、他端に前記プラテンローラに備えられた回転軸を着脱自在に係止する鉤形状を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る印刷装置では、印刷品質を向上させるためにプラテンローラとサーマルヘッドを密着させる必要がある。そのために、プラテンローラ側に弾性部材を備えてプラテンローラをサーマルヘッドに密着させるかサーマルヘッド側に弾性部材を備えてサーマルヘッドをプラテンローラに密着させるかのどちらかである。そこで、印刷装置の筐体を構成する第1カバー体と、第1カバー体に対してヒンジによって開閉可能に配設される第2カバー体と、第2カバー体が第1カバー体に対して閉じられたとき、第2カバー体を第1カバー体に対して固定する固定手段と、第2カバー体に回転可能に取り付けられるプラテンローラと、プラテンローラと対向する位置に配設されるサーマルヘッドと、サーマルヘッドを保持するヘッド支持部材と、固定手段によって第2カバー体が第1カバー体に固定されたとき、ヘッド支持部材の長手方向に配設されてサーマルヘッドをプラテンローラの周面に所定荷重で押圧させる複数の弾性部材と、を備えた構成にすることによって、確実にサーマルヘッドとプラテンローラを密着させることができるので、印字品質を向上させることができる。また、印字品質を向上させるためにサーマルヘッドをプラテンローラの周面に所定荷重で押圧させる複数の弾性部材を備えるという条件を考慮すると、プラテンローラを第2カバー体に回転可能に取り付け、第2カバー体を第1カバー体に対して固定する固定手段を備える構成にすることによって、固定手段を開放したとき弾性部材の押圧力によって第2カバー体を第1カバー体から浮かすことができる。そのまま第2カバー体を容易に開けることができる。このように他の機能に使用される部材を第2カバー体のヒンジに使用される専用コイルスプリングの代用として使用することによって、第2カバー体のヒンジを開閉のみの基本構成にすることができるので、部品点数の削減ができると共に工数の削減ができることによってコストダウンが実現できる。
【0009】
また、請求項2に係る印刷装置では、プラテンローラは、第2カバー体のヒンジが構成される端部と反対側の端部に配設されているので、サーマルヘッドを押圧する距離を大きく取ることができる。これによって、固定手段を開放したとき弾性部材の押圧力によって第2カバー体を第1カバー体から浮かす距離を大きく取ることができる。そのため、第2カバー体を開け易くすることができる。
【0010】
そして、請求項3に係る印刷装置では、固定手段は、回動中心を有しその回動中心から2つの延出部を備え、一端は弾性部材に係止され、他端にプラテンローラに備えられた回転軸を着脱自在に係止する鉤形状を有しているので、第2カバー体を第1カバー体に対して閉じたとき、プラテンローラに備えられた回転軸を、他端に設けられた鉤形状が一端に設けられた弾性部材に抗して係止する。このとき、固定手段が第2カバー体自体を固定するのではなく、第2カバー体に設けられたプラテンローラの回転軸を鉤形状が係止することにより、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置を正確に決めることができ、印字品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る印刷装置について、本発明を具体化した一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、本実施例は、本体装置内に長尺状のロールシートを装着してラインサーマルヘッドにて印刷が行われる印刷装置としてのテープ印刷装置について説明する。
【実施例】
【0012】
先ず、本実施例に係るロールシートホルダが装着されるテープ印刷装置の概略構成について図1乃至図8に基づき説明する。
ここで、図1は、本実施例に係るテープ印刷装置の前側からの外観斜視図、図2は、テープ印刷装置の後側からの外観斜視図、図3は、テープ印刷装置にロールシートホルダが装着された状態における上カバーを開けて示す右側上方からの斜視図、図4は、テープ印刷装置にロールシートホルダが装着された状態における上カバーを開けて示す左側上方からの斜視図、図5は、ロールシートホルダをテープ印刷装置に装着した状態を示す側断面図、図6は、テープ印刷装置の上カバーを開けて、フロントカバーを取り外した状態を前側上方から見た概略斜視図、図7は、ロールシートが装着されたロールシートホルダの一例を示す図で、(A)は上方からの斜視図、(B)は下方からの斜視図、図8は、図5のX1−X1矢視断面図である。
【0013】
図1乃至図6に示すように、テープ印刷装置1は、本体筐体2にロールシートホルダ収納ケース4が装着され、所定幅の無定長ロールシート3A(以下、「ロールシート3A」という。)が巻回されたロールシートホルダ3がロールシートホルダ収納ケース4に形成されているロールシートホルダ収納部4Aに収納され、ロールシートホルダ収納ケース4の後側上端縁部に設けられた後述するヒンジ29、30(図9参照)によって開閉自在に取り付けられた樹脂製の上カバー5によって上部が覆われる。また、この上カバー5の上面部には透明樹脂製の透視窓5Aが形成されており、ロールシートホルダ収納部4Aに装着されたロールシート3Aを確認できるように構成されている。
また、上カバー5の前側の一方の側端部(図1中、右端縁部)には、電源ボタン7A、押下している間ロールシート3Aを搬送方向に排出するフィードボタン7B、押下することによってカッターユニット8を駆動させてロールシート3Aを切断するカットボタン7C等が配置されている。そして、カッターユニット8は、上カバー5の前側下方部分に配置されおり、指等の巻き添えによる怪我を防止するためのフロントカバー6で覆われている。また、フロントカバー6には、印刷されたロールシート3Aを外部に排出するシート排出口6Aが形成されている。
【0014】
また、本体筐体2の背面側壁部2Aには一方の側端部に不図示の電源コードが接続されるインレット9が配設されると共に、その横側に送風ファン17(図9参照)が配置されている。また、他方の側端部には不図示のパーソナルコンピュータ等と接続されるUSB(Universal Serial Bus)コネクタ10や接続コネクタ11が設けられている。
そして、本体筐体2の背面側壁部2Aには、背面側壁部2Aを覆う背面カバー14が取り付けられている。
【0015】
ここで、図5に示すように、このロールシート3Aは、自己発色性を有する長尺状の感熱シート(いわゆる、サーマルペーパー)3Cと、この感熱シート3Cの裏面側に粘着剤層3Dを介して剥離紙3Eが張り合わされて構成され、感熱シート3Cの印刷面が内側になるように巻回されている。
【0016】
また、図3、図4及び図6に示すように、テープ印刷装置1は、ロールシートホルダ収納部4Aの搬送方向に対して略垂直方向の一方の側端縁部(図3中、右側側端縁部)に、ロールシートホルダ3を構成する位置決め保持部材12の外側方向に突設される断面略矩形状の取付部材13を嵌め込むことができるホルダ支持部材15が設けられている。このホルダ支持部材15には、幅方向上方に開口すると共に幅方向両側に開口する正面視略縦長コの字状の第1位置決め溝部16が形成されている。
【0017】
また、ロールシート3Aを挿入する挿入口18の後端縁部からロールシートホルダ収納部4Aの前側上端縁部まで略水平に延出されて、後述のロールシートホルダ3を構成するガイド部材20の先端部が載置される載置部21が設けられている。また、この載置部21の搬送方向後側の端縁角部には、ロールシート3Aの複数の幅寸法に対応して断面略L字状の7個の第2位置決め溝部22A〜22Gが形成されている。この各第2位置決め溝部22A〜22Gは、図5に示すように、ロールシートホルダ3を構成するガイド部材20の載置部21に当接する先端下端部分を上方から嵌め込むことができるように形成されている。
【0018】
また、ロールシートホルダ収納部4Aの底面部には、ホルダ支持部材15の内側基端部から対向する側面部基端部まで搬送方向に対して略垂直に平面視横長四角形の位置決め凹部4Bが所定深さ(本実施例では、約1.5〜3mmの深さである。)で形成されている。この位置決め凹部4Bの搬送方向幅寸法は、ロールシートホルダ3を構成する位置決め保持部材12及びガイド部材20の各下端縁部の幅寸法にほぼ等しくなるように形成されている。また、位置決め凹部4Bのホルダ支持部材15の内側基端部には、位置決め保持部材12の下端縁部から略直角内側方向に延出される後述のシート判別部60(図7参照)に対向する部分が、位置決め凹部4Bよりもさらに所定深さ(本実施例では、約1.5〜3mmの深さである。)だけ深くなるように形成された搬送方向に縦長の平面視長四角形の判別凹部4Cが形成されている。
【0019】
また、この判別凹部4Cには、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されて、ロールシート3Aの種別、感熱シート3Cの材質、ロールシート幅等を判別するための6個のシート判別センサP1、P2、P3、P4、P5、P6がL字状に設けられている。尚、図6には、5個の各シート判別センサP1〜P5が示されている。
この各シート判別センサP1〜P6は、プランジャーとマイクロスイッチ等から構成される公知の機械式スイッチからなり、該各プランジャーの上端部は、該判別凹部4Cの底面部から位置決め凹部4Bの底面部近傍まで突き出るように設けられている。そして、この各シート判別センサP1〜P6に対して位置決め保持部材12の下端縁部から略直角内側方向に延出されるシート判別部60に形成される後述の各センサ孔60A〜60F(図7参照)が有るか否かを検出して、そのオン・オフ信号によりロールシートホルダ3に装着されたロールシート3Aの種別、感熱シート3Cの材質、ロールシート幅等を検出するものである。
【0020】
尚、本実施例の場合は、各シート判別センサP1〜P6は、そのプランジャーが常には、判別凹部4Cの底面から位置決め凹部4Bの底面部近傍まで突き出しており、マイクロスイッチがオフ状態になっている。そして、シート判別部60の各センサ孔60A〜60Fが、各シート判別センサP1〜P6に対向する位置に有る場合には、プランジャーが押下されずマイクロスイッチがオフ状態にあるので、オフ信号が出力され、一方、シート判別部60の各センサ孔60A〜60Fが、各シート判別センサP1〜P6に対向する位置に無い場合には、プランジャーが押下されてマイクロスイッチがオン状態になるので、オン信号が出力される。従って、各シート判別センサP1〜P6によって6ビットの「0」、「1」信号が出力され、各シート判別センサP1〜P6が全てオフ状態の場合、即ち、ロールシートホルダ3が装着されていない場合には、6ビットの「000000」の信号が出力される。
【0021】
また、挿入口18のホルダ支持部材15側の側端縁部(図3中、右端縁部)は、該ホルダ支持部材15に嵌め込まれる位置決め保持部材12の内側端面と同一平面上の位置に形成されている。また、この挿入口18のホルダ支持部材15側の側端縁部には、載置部21のほぼ搬送方向後端部まで立設された案内壁面を形成すると共に、ロールシート3Aの上面部を覆うように幅方向に所定幅延出された案内部23が形成され、ロールシート3Aが挿通されている。
【0022】
また、上カバー5の前端部下側には、プラテンローラ26が回転自在に軸支されている。そして、テープ印刷装置1は、上カバー5を閉じることによって、プラテンローラ26が押圧バネ24によって上方に付勢されているサーマルヘッド31にロールシート3Aを押圧付勢して印字可能な状態になる。このとき、上カバー5が閉じられたことによって、プラテンローラ26のローラ軸26Aの両端部の外周に回転可能に嵌挿された各カラー部材25、25が、搬送方向後側に付勢された側面視略逆L字状の鉤形状を有する各係止爪28、28に係止されている。また、ローラ軸26Aのホルダ支持部材15側の端縁部には、ギヤ26Bが固設され、上カバー5を閉じた際に、ギヤ列51(図13参照)に歯合し、プラテンローラ26をステッピングモータ等で構成されるシート送りモータ52(図13参照)により回転駆動可能な状態になっている。そして、本体筐体2の左右側壁部に設けられた各解除摘み27、27を上方に押し上げることによって、各係止爪28、28が付勢力に抗して搬送方向前側に回動され、各カラー部材25との係止が解除され、上カバー5が開放可能な状態になる。
【0023】
また、ロールシートホルダ収納ケース4の下側には、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令により各機構部を駆動制御する制御回路部が形成されると共に各シート判別センサP1〜P6が配設された制御基板36が設けられている(図8参照)。また、フレーム33の下方には、電源回路部が形成された電源基板37が設けられている。そして、制御基板36及び電源基板37は、底面部にネジ止めされた薄い鋼板製(本実施例では、厚さ約0.5mmのSPCC等の鋼板製である。)の底面カバー38によって覆われている。
【0024】
次に、ロールシートホルダ3の概略構成について図7及び図8に基づいて説明する。
図7及び図8に示すように、巻芯3Bに巻回されたロールシート3Aが装着されるロールシートホルダ3は、下記のように構成されている。即ち、ロールシート3Aの巻芯3Bの筒孔の一端側端縁部にガイド部材20の内側面に立設される第1筒部20Aが嵌挿されて、該ガイド部材20の内側面にロールシート3Aの一方の端面が当接されている。また、ロールシート3Aの巻芯3Bの筒孔の他端側端縁部に位置決め保持部材12の内側面に立設される第2筒部12Aが嵌挿されて、該位置決め保持部材12の内側面にロールシート3Aの他方の端面が当接されている。そして、このガイド部材20の第1筒部20Aに嵌挿されて一端側端面の外周部に形成されるフランジ部40Aが該第1筒部20Aの外側端面、即ちガイド部材20の外側端面に遊嵌されると共に、他端側端部が位置決め保持部材12の第2筒部12A内に嵌挿されて該第2筒部12Aに固着される略筒状のホルダ軸部材40を備えている。従って、ホルダ軸部材40の長さ寸法を変更することにより、異なる幅寸法のロールシート3Aが装着された複数種類のロールシートホルダ3を容易に製作することができる。
【0025】
また、このガイド部材20は、第1筒部20Aの外側端面の下側外周部から下側方向に延出されて、ロールシートホルダ収納部4Aの底面部に形成される位置決め凹部4Bに嵌入されて該位置決め凹部4Bの底面に当接される第1延出部42が形成されている。また、ガイド部材20は、ロールシート3Aの前側方向略1/4円周上の外側端面部を覆うように外側方向に延出される第2延出部43が形成されている。また、この第2延出部43の外周部から載置部21まで上側端縁部が前下がり状に延出される第3延出部44が形成されている。この第3延出部44の下端面は略水平に形成され、先端側下端部45は、装着されたロールシート3Aのシート幅に対向する各第2位置決め溝部22A〜22Gのいずれかに嵌入されるように構成されている(図3、図4参照)。また、この第3延出部44の内側面によって装着されたロールシート3Aの一側端縁部が挿入口18まで案内されるように構成されている(図4参照)。
【0026】
また、ガイド部材20の内側面に立設された第1筒部20Aと位置決め保持部材12の内側面に立設された第2筒部12Aとによって、ロールシート3Aが巻回された巻芯3Bが回転可能に保持される。尚、ホルダ軸部材40は、ロールシート3Aの巻芯3Bの各長さ寸法に対応して複数種類(本実施例では、7種類である。)の長さ寸法のものが設けられている。
また、位置決め保持部材12の外側端面部の搬送方向(図7(B)参照)略中央部に、即ち、ホルダ軸部材40の軸心の端縁部から該軸心に対してほぼ直交するように、上下方向に縦長の断面略矩形状の取付部材13が突設されている。この取付部材13は、正面視下方向(図7(B)中、上方向)に幅狭になるように形成され、テープ印刷装置1のホルダ支持部材15の下方向に幅狭な第1位置決め溝部16内に密着可能に形成されている。また、この取付部材13の突出高さ寸法は、この第1位置決め溝部16の幅寸法にほぼ等しく形成されている。
【0027】
また、位置決め保持部材12の取付部材13の下端部には、該取付部材13の下端部よりも左右方向に各々外側方向に所定長さ(本実施例では、約1.5mm〜3mmである。)突出する正面視略四角形の平板状(本実施例では、約1.5mm〜3mmの厚さ寸法である。)の案内部57が形成されている。これにより、ロールシートホルダ3を装着する場合は、取付部材13の下端部に形成される案内部57をホルダ支持部材15の外側端面に当接させつつ、取付部材13を第1位置決め溝部16に挿入することによって、該ロールシートホルダ3を容易に位置決めしつつ装着することができる。
また、位置決め保持部材12の延出部56の下端縁部は、ガイド部材20の下端縁部よりも所定長さ(本実施例では、約1mm〜2.5mmである。)下側方向に突出するように延出されると共に、該下端縁部には、略直角内側方向に所定長さ延出される略長四角形のシート判別部60が形成されている。
【0028】
また、図7(B)に示すように、このシート判別部60には、上述したように、各シート判別センサP1〜P6に対向する所定位置に各センサ孔60A〜60Fが略L字状に配置されて穿設される。尚、図7(B)中、各センサ孔60A〜60Fのうちの各センサ孔60A〜60D、60Fが、シート判別部60に穿設された状態を示している。
これにより、各センサ孔60A〜60Fは、6個のうちの最大5個穿設されるため、1つひとつの有無を「1」と「0」に対応させることにより、該ロールシートホルダ3に装着されたロールシート3Aの種別、感熱シートの材質、ロールシート幅等を「000001」〜「111111」の6ビットの符号によって表示することができる。尚、「000000」の6ビットの符号は、ロールシートホルダ3が装着されていないことを表している。
【0029】
次に、上カバー5に設けられてロールシートホルダ3を押さえるホルダ押さえ部について図3、図4、図6及び図8に基づいて説明する。
図3、図4及び図8に示すように、上カバー5は、上カバー本体5Bと、この上カバー本体5Bの左右にネジ止め等によって固着される略円形状の左側カバー部材5Cと、右側カバー部材5Dとから構成されている。
【0030】
また、左側カバー部材5Cと右側カバー部材5Dの内側面には、上カバー5を閉じた際に、ロールシートホルダ収納部4A内に装着されたロールシートホルダ3の取付部材13の上端面に対向する位置に各補強リブ62、63が、水平にほぼ全幅に渡って立設されている。
また、右側カバー部材5Dの内側面に立設される補強リブ63の取付部材13の上端面に対向する位置には、所定幅(本実施例では、取付部材13の幅寸法の約1.5倍で、約12mmの幅である。)の薄い平板状(本実施例では、厚さ約1mmの平板状である。)のホルダ押さえ部65が内側方向に水平に延出されている。このホルダ押さえ部65は、上カバー5を閉じた際に、先端下面部が取付部材13の上端面に当接し、且つ位置決め保持部材12には当接しないように内側方向に延出されている。
【0031】
これにより、巻芯に巻回されたロールシート3Aが装着されたロールシートホルダ3は、位置決め保持部材12の取付部材13をホルダ支持部材15の第1位置決め溝部16に嵌め込むと共に、ガイド部材20の先端下端部を各第2位置決め溝部22A〜22Gのいずれかに嵌め込んで該ガイド部材20の下端部を位置決め凹部4B内に嵌入して当接させることによって、ロールシートホルダ収納部4Aに着脱自在に取り付けられる。また、位置決め保持部材12の内側下端縁部に設けられたシート判別部60が判別凹部4C内に挿入され、判別凹部4Cに配設される各シート判別センサP1〜P6に対向する該シート判別部60の各センサ孔60A〜60Fが有るか否か検出可能となる。即ち、ロールシートホルダ3に装着されたロールシート3Aの種別などを検出可能となる。
【0032】
そして、ロールシート3Aの一方の側端縁部をガイド部材20の内側面に当接させつつ、このロールシート3Aの他方の側端縁部を挿入口18の側縁部に設けられた案内部23に当接させながら挿入口18内に挿入して、上カバー5を閉じることによって、図5に示すように、押圧バネ24によって上方に付勢されているライン型のサーマルヘッド31にロールシート3Aを押圧付勢して印字可能な状態になる。また、図8に示すように、上カバー5を閉じることによって、右側カバー部材5Dの内側に延出されるホルダ押さえ部65の下面が、取付部材13の上端面に当接され、ロールシートホルダ3の位置決め保持部材12が下方に押下される。
【0033】
その後、該プラテンローラ26をステッピングモータ等で構成されるシート送りモータ52により回転駆動しつつ、該サーマルヘッド31を駆動制御することによって、ロールシート3Aを搬送しながら感熱シート3Cの印刷面に順次画像データを印刷できる。そして、印字済みロールシート3Aの搬送方向後ろ側の切断位置が、カッターユニット8の固定刃46に対向する位置まで搬送された場合には、カッターユニット8の正面視V字形の可動刃47がDCモータ等で構成される切断用モータ48(図6参照)により上下方向に往復移動して固定刃46と可動刃47とによって切断され、シート排出口6Aから排出される。
【0034】
次に、このように構成されたテープ印刷装置1において、樹脂製のロールシートホルダ収納ケース4の後側上端縁部と樹脂製の上カバー5の後側下端縁部とを開閉自在に取り付けるヒンジ29、30の構成及びヒンジ軸29A、30Aの係止の方法について図9に基づいて説明する。
ここで、図9は、ロールシートホルダ収納ケースに上カバーを組み付ける工程を説明する説明図である。
【0035】
図9に示すように、本体筐体2の背面側壁部2Aには一方の側端部にインレット9が取り付けられており、その横側に送風ファン17が取り付けられている。そして、他方の側端部には不図示のパーソナルコンピュータ等と接続されるUSB(Universal Serial Bus)コネクタ10や接続コネクタ11が取り付けられている。また、本体筐体2には、ロールシートホルダ収納ケース4が装着されている。そして、インレット9の上方にあるロールシートホルダ収納ケース4の端部には、内側からヒンジ軸29Aを貫通させる貫通穴29Eを有すると共にヒンジ29を構成する固定ヒンジリブ29Dが一体に形成されている。更に、ヒンジ軸29Aに形成された段差部29Bを貫通させる貫通穴29Gを有すると共にヒンジ29を構成する固定ヒンジリブ29Fが固定ヒンジリブ29Dと並列に形成されている。また、USBコネクタ10の上方にあるロールシートホルダ収納ケース4の端部には、内側からヒンジ軸30Aを貫通させる貫通穴30Eを有すると共にヒンジ30を構成する固定ヒンジリブ30Dが一体に形成されている。更に、ヒンジ軸30Aに形成された段差部30Bを貫通させる貫通穴30Gを有すると共にヒンジ30を構成する固定ヒンジリブ30Fが固定ヒンジリブ30Dと並列に形成されている。
【0036】
また、樹脂製の上カバー5の後側下端縁部には、ヒンジ29を構成すると共に、ヒンジ軸29Aを貫通させる貫通穴29Jを備え、固定ヒンジリブ29Dと固定ヒンジリブ29Fに挟持される回動ヒンジリブ29Hと、ヒンジ30を構成すると共に、ヒンジ軸30Aを貫通させる貫通穴30Jを備え、固定ヒンジリブ30Dと固定ヒンジリブ30Fに挟持される回動ヒンジリブ30Hが一体に形成されている。
【0037】
そして、ロールシートホルダ収納ケース4の後側上端縁部と樹脂製の上カバー5の後側下端縁部とを開閉自在に取り付けるためには、先ず、上カバー5の回動ヒンジリブ29Hを、ロールシートホルダ収納ケース4の固定ヒンジリブ29Dと固定ヒンジリブ29Fに挟持し、同時に上カバー5の回動ヒンジリブ30Hを、ロールシートホルダ収納ケース4の固定ヒンジリブ30Dと固定ヒンジリブ30Fに挟持するように上カバー5を矢印Aの方向に装着する。
次に、ヒンジ軸29Aを、ヒンジ軸29Aの段差部29Bを先頭にして、固定ヒンジリブ29Dの貫通穴29E、回動ヒンジリブ29Hの貫通穴29J、固定ヒンジリブ29Fの貫通穴29Gの順に、ヒンジ軸29Aに設けた段差部29Bの段差によってヒンジ軸29Aが固定ヒンジリブ29Fに止まるまで挿入する。更に、ヒンジ軸30Aを、ヒンジ軸30Aの段差部30Bを先頭にして、固定ヒンジリブ30Dの貫通穴30E、回動ヒンジリブ30Hの貫通穴30J、固定ヒンジリブ30Fの貫通穴30Gの順に、ヒンジ軸30Aに設けた段差部30Bの段差によってヒンジ軸30Aが固定ヒンジリブ30Fに止まるまで挿入する。この工程によって、ロールシートホルダ収納ケース4と上カバー5は、ヒンジ29とヒンジ30によって回動可能に取り付けられる。
【0038】
次に、ヒンジ軸29Aとヒンジ軸30Aは、まだ固定されていないので固定の方法を説明する。
図9に示すように、本体筐体2の背面側壁部2Aには、固定ヒンジリブ30Fの左側に係止孔2E、USBコネクタ10の下側に係止孔2F、接続コネクタ11の下側に係止孔2G、インレット9の下側に係止孔2H、固定ヒンジリブ29Fの右側に係止孔2Jが設けられている。そして、これらの位置に対応して背面カバー14には、係止孔2Eに対応して係止爪14Aが、係止孔2Fに対応して係止爪14Bが、係止孔2Gに対応して係止爪14Cが、係止孔2Hに対応して係止爪14Dが、係止孔2Jに対応して係止爪14Eがそれぞれ設けられ、また、挿入されたヒンジ軸29Aの軸端面29Cと抜け止めリブ14Fとが対向する位置に設けられ、さらに、挿入されたヒンジ軸30Aの軸端面30Cと抜け止めリブ14Gとが対向する位置に設けられている。そしてこれらの位置関係を維持して、背面カバー14を矢印Bの方向に合わせて押圧することにより、本体筐体2の背面側壁部2Aに背面カバー14が取り付けられる。これによって、ヒンジ軸29Aの軸端面29Cと抜け止めリブ14Fとが対向し、さらにヒンジ軸30Aの軸端面30Cと抜け止めリブ14Gとが対向することによって、ヒンジ軸29Aとヒンジ軸30Aは固定される。
【0039】
このように取り付けられた上カバー5を構成する部材には、上カバー5を自動的に開く原動力を蓄積する部材は含まれていない。しかしながら、上カバー5を閉じたときには、上カバー5に付設されているプラテンローラ26はサーマルヘッド31からサーマルヘッド31を上方に付勢する押圧バネ24の付勢力を常に受けている。それ故、この押圧バネ24の付勢力を利用することにより、上カバー5を自動的に開く構成が実現できる。そこで、図10乃至図18に基づいて、上カバー5を自動的に開く構成と動作を説明する。
【0040】
ここで、図10は、サーマルヘッドのヘッド支持部材への組み付け斜視図、図11は、サーマルヘッド及び放熱板等が取り付けられたヘッド支持部材のフレームへの取り付け斜視図、図12は、フレームへの右側支持フレームと左側支持フレームの取り付け斜視図、図13は、組立が完了した印刷ユニットの上面図、図14は、図13のX2−X2矢視断面図、図15は、上カバーを閉じたときのプラテンローラと係止爪を備える解除摘みの関係を示す透視斜視図、図16は、図15の透視右側面図、図17は、上カバーを閉じたときのプラテンローラとヘッド支持部材と押圧バネの関係を説明する透視右側面図、図18は、解除摘みを操作して上カバーを開く状態を説明する透視右側面図である。
【0041】
先ず、図10乃至図14に基づいて、サーマルヘッド31が押圧バネ24から付勢力を受ける構成について、印刷ユニット19を組み立てる組立順序を参考にしながら説明する。
図10に示すように、長尺のサーマルヘッド31は下方にアルミニュウム製の放熱板31Aが両面粘着剤で装着され、サーマルヘッド31の上辺左右にフラットケーブル31B、31Cがコネクタ31D、31Eにて接続されている。
このようにセットされたサーマルヘッド31は、放熱板31Aを介して矢印Cの向きにヘッド支持部材32の上面に装着し、ネジ32A、32Bによって、ヘッド支持部材32の裏面からネジ用孔32C、32Dを通してネジ止めされる。
【0042】
また、ヘッド支持部材32には、このヘッド支持部材32の搬送方向に対して後側の端縁部には支持部32Eが設けられ、後述するフレーム33の後側側壁部33Aに穿設された支持孔33Bによって上下方向に揺動可能に支持される。また、このヘッド支持部材32の搬送方向前側の端縁部中央においても、外側方向に延出される所定幅(本実施例では、約15mmである。)のガイド部32Fが設けられ、後述するフレーム33の前側側壁部33Cに穿設されるガイド孔33Dへ上下方向に移動可能に嵌入される。
また、ヘッド支持部材32の右側端縁部の後方には、後述する右側支持フレーム49に穿設される右側ガイド孔49Aに嵌入される右側凸部32Gが設けられ、ヘッド支持部材32の左側端縁部の後方には、後述する左側支持フレーム50に穿設される左側ガイド孔50Aに嵌入される左側凸部32Hが設けられている。
また、ヘッド支持部材32には、ガイド部32Fの近傍に2つの押圧バネ24、24のバネ係止部32J、32Kが設けられている。更に、バネ係止部32Jとネジ用孔32Cの間にはスリット32Lが設けられ、バネ係止部32Kとネジ用孔32Dの間にはスリット32Mが設けられている。
【0043】
次に、図11に示すように、2つの押圧バネ24、24の一端をフレーム33に設けられたバネ係止部33E、33F(図14参照)に係止して、押圧バネ24、24の他端をサーマルヘッド31及び放熱板31A等が取り付けられたヘッド支持部材32のバネ係止部32J、32Kに係止しながらヘッド支持部材32の矢印Dの方向に押圧し、ヘッド支持部材32の支持部32Eをフレーム33の後側側壁部33Aに穿設された支持孔33Bに上下方向に揺動可能に取り付けた後に、ヘッド支持部材32のガイド部32Fをフレーム33の前側側壁部33Cに穿設されたガイド孔33Dへ上下方向に移動可能に嵌入する。
【0044】
次に、図12では、サーマルヘッド31及び放熱板31A等が取り付けられたヘッド支持部材32を装着したフレーム33に、右側支持フレーム49及び左側支持フレーム50を取り付ける。
先ず、図12に示すように、右側支持フレーム49に穿設されている右側ガイド孔49Aにヘッド支持部材32の右側凸部32Gを挿通させながら矢印Eの方向に右側支持フレーム49をフレーム33に当接してネジ49B、49Cによってネジ止めする。次に、左側支持フレーム50に穿設されている右側ガイド孔50Aにヘッド支持部材32の左側凸部32Hを挿通させながら矢印Fの方向に左側支持フレーム50をフレーム33に当接してネジ50B、50Cによってネジ止めする。
【0045】
次に、図13では、右側支持フレーム49の内側から外側に向けてシート送りモータ52が取り付けられている。そして、上カバー5を閉じたときに、シート送りモータ52によって上カバー5の前端部下側に回転自在に軸支されているプラテンローラ26を回転駆動するために、ローラ軸26Aに固設されたギヤ26B(図3参照)とシート送りモータ52を連結するギヤ列51を右側支持フレーム49の外側に取り付ける。
【0046】
更に、上カバー5を閉じたときに、上カバー5の前端部下側に回転自在に軸支されているプラテンローラ26のローラ軸26Aの右側端部の外周に、回転可能に嵌挿されたカラー部材25を係止する側面視略逆L字状の鉤形状を有する係止爪28を備えた解除摘み27(図15参照)が、右側支持フレーム49の外側に取り付けられる。この係止爪28は、搬送方向後側に付勢バネ27Aによって付勢され、解除摘み27を上方に押し上げることによって、係止爪28が付勢力に抗して搬送方向前側に回動され、カラー部材25との係止が解除され、上カバー5が開放可能な状態になる。
【0047】
同様に、図13では、上カバー5を閉じたときに、上カバー5の前端部下側に回転自在に軸支されているプラテンローラ26のローラ軸26Aの左側端部の外周に、回転可能に嵌挿されたカラー部材25を係止する側面視略逆L字状の鉤形状を有する係止爪28を備えた解除摘み27(図15参照)が、左側支持フレーム50の外側に取り付けられる。この係止爪28は、搬送方向後側に付勢バネ27Aによって付勢され、解除摘み27を上方に押し上げることによって、係止爪28が付勢力に抗して搬送方向前側に回動され、カラー部材25との係止が解除され、上カバー5が開放可能な状態になり、右側支持フレーム49の外側に取り付けられた解除摘み27の上方への押し上げと合わせることによって、後述するようにプラテンローラ26がサーマルヘッド31によって上方に付勢されて、上カバー5が上方に少し持ち上げられる。
【0048】
次に、図14は、図13のX2−X2矢視断面図であって、押圧バネ24がフレーム33とヘッド支持部材32の間に収納されている状態を示しており、この状態はプラテンローラ26が無いのでヘッド支持部材32が押圧バネ24によって上方に押圧された状態になっている。そのため、ヘッド支持部材32の支持部32Eは、元々支持孔33Bの上端部で支持されるようになっているが、ヘッド支持部材32のガイド部32Fも、ガイド孔33Dの上端部に当接して係止されている。また、ヘッド支持部材32の右側凸部32Gと左側凸部32Hは、それぞれ右側ガイド孔49Aと左側ガイド孔50Aの中を上下方向には自由に移動できるので、サーマルヘッド31を含むヘッド支持部材32は、プラテンローラ26に対して支持部32Eを中心とする自動調芯機構となっている。これによってロールシート3Aに対して安定した印刷が可能となる。
【0049】
次に、図15乃至図18に基づいて、サーマルヘッド31が押圧バネ24から付勢力を受けて上カバー5を開く動作について説明する。
先ず、図15、図16に示すテープ印刷装置1は、上カバー5を閉じることによって、上カバー5の前端部下側に回転自在に軸支されているプラテンローラ26のローラ軸26Aの両端部の外周に、回転可能に嵌挿された各カラー部材25、25が、搬送方向後側に付勢バネ27A、27Aによって回動係止孔27C、27Cを中心に回動するように付勢され、解除摘み27、27を備える側面視略逆L字状の鉤形状を有する各係止爪28、28に係止されて、上カバー5を閉じた状態が維持されている。
尚、係止爪28の鉤形状は、係止爪28が回動係止孔27Cを中心に回動したとき、プラテンローラ26のローラ軸26Aの両端部の外周に、回転可能に嵌挿された各カラー部材25、25を係止し易くするための形状である。
【0050】
上カバー5を閉じた状態では、図17に示すように、押圧バネ24は、プラテンローラ26からの押圧をサーマルヘッド31、放熱板31A、ヘッド支持部材32を介して受ける。これにより、ヘッド支持部材32が支持孔32Eの上端部を支点にしてガイド孔33Dの上端部からLの距離分だけ回動する、その結果、押圧バネ24は、Lの距離分だけ圧縮される。そして、ガイド孔33Dの上端部にガイド部32Fを当接して押圧するためのプリロードを含むこのLの距離分だけ圧縮された押圧バネ24の反発力がプラテンローラ26を押圧する押圧力として矢印Gの方向に加えられている。この押圧力は、ロールシート3Aに対して安定した印刷を可能とする押圧力でもある。
【0051】
そして、図18に示すように、本体筐体2の左右側壁部に設けられた各解除摘み27、27を、回動係止孔27Cを中心に回動させて矢印Hの方向に押し上げることによって、各係止爪28、28が付勢力に抗して回動係止孔27Cを中心にして矢印Jの方向に回動され、各カラー部材25との係止が解除される(図6、図15参照)。係止が解除されると、図17で説明したLの距離分だけ圧縮された押圧バネ24の反発力がプラテンローラ26を押圧する押圧力としてプラテンローラ26に加えられる。これにより、プラテンローラ26が上方に付勢されて、上カバー5が矢印Kの方向にLの距離分だけ持ち上げられ、開放可能な状態になる。
尚、プラテンローラ26を上カバー5の前端部下側に設けることによって、ヒンジ29、30を中心として回動するプラテンローラ26の回転半径が大きくなるので、上述のLの距離を大きく取ることができる。このLの距離を大きく取ることによって、上カバー5を開け易くすることができる。
【0052】
ここで、ロールシートホルダ収納ケース4は、第1カバー体として機能する。また、上カバー5は、第2カバー体として機能する。また、解除摘み27を備える係止爪28は、固定手段として機能する。また、押圧バネ24は、弾性部材として機能する。また、付勢バネ27Aは、弾性部材として機能する。そして、テープ印刷装置1は、印刷装置として機能する。
【0053】
以上、詳細に説明した通りテープ印刷装置1では、印刷品質を向上させるためにプラテンローラ26とサーマルヘッド31を密着させる必要がある。そのために、プラテンローラ26側に押圧バネ24を備えてプラテンローラ26をサーマルヘッド31に密着させるかサーマルヘッド31側に押圧バネ24を備えてサーマルヘッド31をプラテンローラ26に密着させるかのどちらかである。そこで、テープ印刷装置1の筐体を構成するロールシートホルダ収納ケース4と、ロールシートホルダ収納ケース4に対してヒンジ29、30によって開閉可能に配設される上カバー5と、上カバー5がロールシートホルダ収納ケース4に対して閉じられたとき、上カバー5をロールシートホルダ収納ケース4に対して固定する解除摘み27を備える係止爪28と、上カバー5に回転可能に取り付けられるプラテンローラ26と、プラテンローラ26と対向する位置に配設されるサーマルヘッド31と、サーマルヘッド31を保持するヘッド支持部材32と、解除摘み27を備える係止爪28がプラテンローラ26のローラ軸26Aを係止することによって上カバー5がロールシートホルダ収納ケース4に固定されたとき、ヘッド支持部材32の長手方向に配設されてサーマルヘッド31をプラテンローラ26の周面に所定荷重で押圧させる複数の押圧バネ24と、を備えた構成にすることによって、確実にサーマルヘッド31とプラテンローラ26を密着させることができると共に、印字品質を向上させることができる。
また、印字品質を向上させるために、サーマルヘッド31をプラテンローラ26の周面に所定荷重で押圧させる複数の押圧バネ24を備えている。そこで、プラテンローラ26を上カバー5に回転可能に取り付け、係止爪28が上カバー5に取り付けられたプラテンローラ26のローラ軸26Aを係止して、上カバー5をロールシートホルダ収納ケース4に対して固定する構成にすることによって、係止爪28に備えられた解除摘み27によって係止爪28がローラ軸26Aを開放したとき、押圧バネ24の押圧力が、サーマルヘッド31及びプラテンローラ26を介して上カバー5をロールシートホルダ収納ケース4から浮かすようにすることができる。上カバー5が浮くので、そのまま上カバー5を容易に開けることができる。このように他の機能に使用される部材を上カバー5のヒンジ29、30に使用される専用コイルスプリングの代用として使用することができるので、上カバー5のヒンジ29、30を開閉のみの基本構成にすることができ、部品点数の削減ができると共に工数の削減ができることによってコストダウンが実現できる。
【0054】
また、プラテンローラ26は、上カバー5のヒンジ29、30が構成される端部と反対側の端部に配設されているので、サーマルヘッド31を押圧する距離を大きく取ることができる。これによって、解除摘み27を備える係止爪28を開放したとき押圧バネ24の押圧力によって上カバー5をロールシートホルダ収納ケース4から浮かす距離を大きく取ることができる。そのため、上カバー5を開け易くすることができる。
【0055】
そして、係止爪28を備える解除摘み27は、回動係止孔27Cを有し、その回動係止孔27Cから伸びる腕の先端に係止爪28が備えられている。また、回動係止孔27Cから伸びる腕にバネ係止部27Bが備えられている。係止爪28は、プラテンローラ26に備えられたローラ軸26Aを着脱自在に係止する鉤形状を有しているので、上カバー5をロールシートホルダ収納ケース4に対して閉じたとき、プラテンローラ26に備えられたローラ軸26Aを、係止爪28の鉤形状がバネ係止部27Bに設けられた付勢バネ27Aに抗して係止する。このとき、解除摘み27を備える係止爪28が上カバー5自体を固定するのではなく、上カバー5に設けられたプラテンローラ26のローラ軸26Aを鉤形状が係止することにより、サーマルヘッド31に対するプラテンローラ26の位置を正確に決めることができ、印字品質を向上させることができる。
【0056】
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施例に係るテープ印刷装置の前側からの外観斜視図である。
【図2】テープ印刷装置の後側からの外観斜視図である。
【図3】テープ印刷装置にロールシートホルダが装着された状態における上カバーを開けて示す右側上方からの斜視図である。
【図4】テープ印刷装置にロールシートホルダが装着された状態における上カバーを開けて示す左側上方からの斜視図である。
【図5】ロールシートホルダをテープ印刷装置に装着した状態を示す側断面図である。
【図6】テープ印刷装置の上カバーを開けて、フロントカバーを取り外した状態を前側上方から見た概略斜視図である。
【図7】ロールシートが装着されたロールシートホルダの一例を示す図で、(A)は上方からの斜視図、(B)は下方からの斜視図である。
【図8】図5のX1−X1矢視断面図である。
【図9】ロールシートホルダ収納ケースに上カバーを組み付ける工程を説明する説明図である。
【図10】サーマルヘッドのヘッド支持部材への組み付け斜視図である。
【図11】サーマルヘッド及び放熱板等が取り付けられたヘッド支持部材のフレームへの取り付け斜視図である。
【図12】フレームへの右側支持フレームと左側支持フレームの取り付け斜視図である。
【図13】組立が完了した印刷ユニットの上面図である。
【図14】図13のX2−X2矢視断面図である。
【図15】上カバーを閉じたときのプラテンローラと係止爪を備える解除摘みの関係を示す透視斜視図である。
【図16】図15の透視右側面図である。
【図17】上カバーを閉じたときのプラテンローラとヘッド支持部材と押圧バネの関係を説明する透視右側面図である。
【図18】解除摘みを操作して上カバーを開く状態を説明する透視右側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 テープ印刷装置
2 本体筐体
4 ロールシートホルダ収納ケース
5 上カバー
24 押圧バネ
26 プラテンローラ
26A ローラ軸
27 解除摘み
27A 付勢バネ
27B バネ係止部
27C 回動係止孔
28 係止爪
29 ヒンジ
30 ヒンジ
31 サーマルヘッド
32 ヘッド支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の筐体を構成する第1カバー体と、
前記第1カバー体に対してヒンジによって開閉可能に配設される第2カバー体と、
前記第2カバー体が前記第1カバー体に対して閉じられたとき、第2カバー体を第1カバー体に対して固定する固定手段と、
前記第2カバー体に回転可能に取り付けられるプラテンローラと、
前記プラテンローラと対向する位置に配設されるサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを保持するヘッド支持部材と、
前記固定手段によって前記第2カバー体が第1カバー体に固定されたとき、前記ヘッド支持部材の長手方向に配設されて前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの周面に所定荷重で押圧させる複数の弾性部材と、
を備え、
前記固定手段による前記第2カバー体の前記第1カバー体への固定が解除されたとき、前記プラテンローラが前記サーマルヘッドを介して前記所定荷重を有する複数の弾性部材によって押圧されることにより、第2カバー体が第1カバー体から浮くようにしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記プラテンローラは、前記第2カバー体の前記ヒンジが構成される端部と反対側の端部に配設されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記固定手段は、回動中心を有しその回動中心から2つの延出部を備え、一端は弾性部材に係止され、他端に前記プラテンローラに備えられた回転軸を着脱自在に係止する鉤形状を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−94009(P2008−94009A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279470(P2006−279470)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】