説明

印刷装置

【課題】排紙異常により生じる用紙の無駄を軽減する。
【解決手段】印刷された用紙Pが排紙台62の排紙エンドフェンス621に突き当たる際に生じる振動を半導体加速度センサ624により電気信号に変換し、制御部8は、この電気信号に基づき、排紙台62への排紙が正常に行われたか否かを判断し、排紙の異常が発生した場合、印刷部5の印刷動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷装置等の印刷装置においては、排紙された印刷済みの用紙を受けるための排紙台が設けられている(例えば、特許文献1参照)。排紙台上には、用紙の排出方向における位置を規制する排紙エンドフェンスと、紙幅方向における用紙の位置を規制する一対の排紙サイドフェンスとが設けられている。
【0003】
印刷装置では、印刷中において、高湿環境による用紙の軟化の影響や、空調などの気流による排紙の方向異常等により、排紙された用紙が排紙エンドフェンスや排紙サイドフェンスを飛び越えたり、排紙台上で用紙がバラけたりする排紙異常が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−82311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排紙台には、用紙の積載不良を検出する機能が設けられておらず、排紙異常が発生しても印刷および排紙が続行される。排紙異常が発生すると、用紙が汚れたり、排紙台から飛び越えたりして用紙の無駄が生じることがあった。現状では、排紙異常を抑えるために環境管理を徹底したり、排紙台をカバーで覆うなどの対策をユーザが行うしかなかった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、排紙異常により生じる用紙の無駄を軽減することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る印刷装置は、用紙に印刷を行う印刷部と、前記印刷部により印刷された用紙を排出する排出部と、前記排出部により排出された用紙を積載する排紙台と、前記排紙台に設けられ、排出された用紙の排出方向における位置を規制する排紙エンドフェンスと、排出された用紙が前記排紙エンドフェンスに突き当たる際に生じる波動を電気信号に変換する衝突検出部と、前記電気信号に基づき、前記排紙台への排紙が正常に行われたか否かを判断し、排紙の異常が発生した場合、前記印刷部の印刷動作を停止するように制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置において、前記排出部を通過する用紙を検知する排紙検知部をさらに備え、前記制御部は、前記排紙検知部における用紙の検知後の所定期間に、前記電気信号において基準電圧以上の電圧が検出され、かつ基準周波数範囲内の周波数が検出された場合に、前記排紙台への排紙が正常に行われたと判断することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る印刷装置は、請求項2に記載の印刷装置において、前記基準電圧および前記基準周波数範囲は、印刷開始後の初期の所定枚数の排紙時における前記電気信号に基づいて設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る印刷装置は、請求項2または3に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記基準電圧および前記基準周波数範囲を、所定枚数を印刷して排紙するごとに、前記電気信号に基づいて更新することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る印刷装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置において、表示部と、ユーザの操作を受け付ける操作入力部とをさらに備え、前記制御部は、排紙の異常が発生して前記印刷部の印刷動作を停止させた場合、前記排紙台への積載不良となった用紙の枚数の入力をユーザに指示する指示画面を前記表示部に表示させ、ユーザの前記操作入力部の操作により積載不良となった用紙の枚数が入力されると、予め設定された印刷設定枚数から印刷済みの枚数を差し引いた残りの印刷枚数にユーザ操作により入力された枚数を加えた枚数の印刷を行うように前記印刷部を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る印刷装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置において、前記排紙台に設けられ、前記排出方向に直交する紙幅方向に近接離反自在な一対の排紙サイドフェンスと、前記一対の排紙サイドフェンスを移動させるフェンス駆動部とをさらに備え、前記排紙エンドフェンスは、前記フェンス駆動部により前記排出方向に往復移動自在に構成され、前記制御部は、排紙の異常が発生した場合、前記印刷部の印刷動作を一時停止させ、前記一対の排紙サイドフェンス間と前記排紙エンドフェンスとで囲まれる用紙が載置される領域を一旦広げた後に元の位置に戻すジョガー動作を前記フェンス駆動部に行わせた後、前記印刷部の印刷動作を再開させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷装置によれば、排紙異常により生じる用紙の無駄を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す印刷装置の印刷動作時のタイミングチャートである。
【図4】印刷動作時の排紙エンドフェンスの振動に基づく電気信号の波形の一例を示す図である。
【図5】半導体加速度センサの電気信号のFFT後の信号を示す波形図であり、(a)は正常排紙時の信号の一例を示す図、(b)は排紙異常時の信号の一例を示す図である。
【図6】警告画面の一例を示す図である。
【図7】警告画面の一例を示す図である。
【図8】指示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、原稿読取部2と、製版書込部3と、給紙部4と、印刷部5と、排紙部6と、操作パネル部7と、制御部8とを備える。
【0018】
原稿読取部2は、印刷装置1の上部に設けられ、被複写物である原稿を光学的に読み取る。
【0019】
製版書込部3は、図示しないサーマルヘッドにより図示しない孔版原紙を加熱穿孔して、原稿読取部2で読み取った原稿の画像を孔版原紙に穿孔パターンとして書き込む。
【0020】
給紙部4は、印刷媒体である用紙Pが積層される給紙台41と、給紙台41から用紙Pを1枚ずつピックアップして搬送する1次給紙ロール42と、1次給紙ロール42から搬送されてきた用紙Pを所定のタイミングで印刷部5に送り出す2次給紙ロール43とを備える。
【0021】
印刷部5は、給紙部4に対して用紙Pの搬送方向下流側に配置され、ドラム51と、プレスロール52と、排版部53とを備える。
【0022】
ドラム51は、多孔構造によるインク透過性の部材で外周壁が構成され、メインモータ(図示せず)によって回転駆動される。ドラム51の外周壁には、製版書込部3で製版された孔版原紙をクランプし、孔版原紙をドラム51の外周壁に装着させるためのクランプ部54が設けられている。また、ドラム51の内部には、インクをドラム51の内周面に供給するインク供給部(図示せず)が設けられている。
【0023】
プレスロール52は、ドラム51の外周壁の外側に配置され、2次給紙ロール43より送り出されてきた用紙Pをドラム51の外周壁に押し付ける。プレスロール52は、図示しない移動機構により、ドラム51の外周壁を押圧する押圧位置と、ドラム51の外周壁より十分に退避する退避位置との間で移動自在に構成され、非印刷時には退避位置に移動される。
【0024】
排版部53は、使用済みの孔版原紙をドラム51から取り外し、この使用済みの孔版原紙を収納する。
【0025】
また、印刷部5は、ドラム51に対して用紙Pの搬送方向下流側に配置され、ドラム51から用紙Pを引き剥がす分離爪55と、ドラム51の基準停止位置を検出するB検センサ56とを備える。
【0026】
印刷部5は、上記のような構成により、製版書込部3から供給される孔版原紙の先端をクランプ部54でクランプし、この状態でドラム51を回転して孔版原紙をドラム51の外周壁に巻装し、ドラム51の回転に同期して搬送されてくる用紙Pをプレスロール52にてドラム51の孔版原紙に押圧することによって、用紙Pに孔版原紙の穿孔部分からインクを転写して画像を印刷するようになっている。
【0027】
排紙部6は、印刷部5に対して用紙Pの搬送方向下流側に配置され、排出部61と、排紙台62とを備える。
【0028】
排出部61は、所定間隔で配置され、図示しないモータにより回転駆動される1対のプーリ611と、この1対のプーリ611に掛け渡され、1対のプーリ611の回転に伴って移動する環状の搬送ベルト612と、この搬送ベルト612に用紙Pを吸引するための吸引力を発生させるファン613と、排出部61を通過する用紙Pを検知する排紙センサ(排紙検知部)614とを備える。
【0029】
排出部61は、印刷部5から印刷済みの用紙Pを受け取り、この用紙Pを搬送ベルト612に吸引しながら排紙台62に排出する。
【0030】
排紙台62には、排出部61により排出された印刷済みの用紙Pが積載される。排紙台62は、排出された用紙Pの排出方向であるz方向における位置を規制し、z方向に往復移動自在な排紙エンドフェンス621と、積載される用紙Pの紙面に平行かつz方向に直交するx方向(紙幅方向)に近接離反自在な一対の排紙サイドフェンス622とを有する。x方向は、図1において紙面に垂直な方向である。排紙エンドフェンス621および一対の排紙サイドフェンス622は、フェンス駆動部623(図2に示す)により駆動されるようになっており、それぞれの位置が印刷に用いられる用紙Pのサイズに応じて設定される。
【0031】
排紙エンドフェンス621には、排出部61により排出された用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たる際に生じる振動を電気信号に変換する衝突検出部としての半導体加速度センサ624が設置されている。半導体加速度センサ624は、3軸の加速度センサであり、排紙エンドフェンス621のx方向中央部に設置され、x方向、z方向、およびx,z方向の双方と直交するy方向の振動をそれぞれ電気信号に変換する。
【0032】
操作パネル部7は、印刷装置1の上部に設けられ、製版動作や印刷動作等を開始させるためのスタートキー、製版動作や印刷動作等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等を備え、操作入力部として機能する。
【0033】
また、操作パネル部7には、表示部としての機能と操作入力部としての機能とを併せ持つ表示/入力パネル71(図2に示す)が設けられている。表示/入力パネル71は、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネル(図示せず)と、このタッチパネルの裏面に配置された液晶表示パネル(図示せず)とを有している。ユーザは、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで入力操作を行うことができる。
【0034】
制御部8は、制御プログラムに応じた処理を行うことによって、印刷装置1全体の動作を制御するものであり、各種の演算処理やデータの入出力等の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等からなる。
【0035】
図2に示すように、制御部8には、制御プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)9と、一時的なデータの保存や演算時における制御部8のワーク領域として使用されるRAM(Random Access Memory)10とが接続されており、制御部8は、制御プログラムに応じて、原稿読取部2、製版書込部3、給紙部4、印刷部5、排紙部6、操作パネル部7の動作を制御する。
【0036】
また、制御部8には、原稿読取部2で読み取って生成されたアナログの電気信号がA/D変換されたデジタルデータに孔版用の画像処理を施す画像処理部11から画像データが入力されるようになっている。
【0037】
また、制御部8には、排紙センサ614から用紙Pの検知信号が入力される。制御部8は、排紙センサ614からの検知信号に基づいて、印刷された用紙Pの枚数を計数するカウンタとしての処理を行う。
【0038】
また、制御部8には、半導体加速度センサ624から排紙エンドフェンス621の振動よる電気信号が入力される。制御部8は、半導体加速度センサ624からの電気信号に基づき、排紙台62への排紙が正常に行われたか否かを判断する。
【0039】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0040】
ユーザ操作に応じて操作パネル部7から製版を開始する指示信号が入力されると、制御部8は、排版部53を駆動し、ドラム51の外周面に巻装されている使用済みの孔版原紙を取り除かせる。
【0041】
次いで、制御部8は、原稿読取部2を駆動し、原稿の読み取り処理を実行する。原稿読取部2で原稿を読み取って生成されたアナログの電気信号は、図示しないA/D変換部でデジタルデータに変換された後、画像処理部11に送られる。
【0042】
画像処理部11は、A/D変換部からのデジタルデータに対し、孔版用の画像処理を施して二値化された白黒データに変換するとともに、熱履歴データを生成し、これらのデータを画像データとして制御部8へ出力する。制御部8は、画像処理部11から入力された原稿の画像データをRAM10に記憶する。
【0043】
次いで、制御部8は、製版書込部3を駆動し、孔版原紙への製版処理を実行する。この製版処理において、制御部8は、RAM10から原稿の画像データを読み出し、この画像データに基づいて、製版書込部3のサーマルヘッドにより孔版原紙を加熱穿孔させ、原稿の画像を孔版原紙に穿孔パターンとして書き込ませる。
【0044】
次いで、制御部8は、製版書込部3により原稿の画像が書き込まれた孔版原紙の先端をドラム51のクランプ部54にクランプさせ、メインモータによりドラム51を所定方向に回転させることにより、ドラム51の外周面に巻きつける。その後、孔版原紙の後端を図示しないカッタにより所定位置で切断し、孔版原紙をドラム51の外周面に完全に巻きつけることで、ドラム51への着版処理が完了する。
【0045】
ドラム51への着版処理が完了し、ユーザ操作に応じて操作パネル部7から印刷を開始する指示信号が入力されると、制御部8は、メインモータによりドラム51を同期して回転させ、1次給紙ロール42、2次給紙ロール43を回転駆動して用紙Pをドラム51に向けて搬送させるとともに、これと同期してプレスロール52を押圧位置に移動させてドラム51の外周面に押し付ける。
【0046】
そして、インク供給部からドラム51の内周面にインクを供給することにより、孔版原紙の穿孔部分からインクが滲み出して、プレスロール52によってドラム51に押し付けられた用紙Pに原稿の画像が印刷される。
【0047】
印刷済みの用紙Pは、分離爪55によりドラム51から引き剥がされた後、排出部61により排紙台62に排出される。排出された用紙Pは、排紙エンドフェンス621に突き当たり、落下して排紙台62上に積載される。上記の一連の手順を設定された印刷設定枚数分だけ繰り返す。
【0048】
上述した印刷動作時において、制御部8は、排紙センサ614からの検知信号に基づいて、印刷された用紙Pの枚数を計数するとともに、半導体加速度センサ624からの電気信号に基づいて、排紙台62への排紙が正常に行われたか否かを判断している。
【0049】
印刷動作時には、図3に示すように、印刷速度(印刷周期)に応じたタイミングで、ドラム51の1回転ごとに基準停止位置がB検センサ56により検出され、それと同じ周期で排紙センサ614が用紙Pを検知する。用紙Pが排紙センサ614の検知位置を通過して排紙センサ614がOFFとなると、所定時間経過後に印刷枚数がカウントアップされる。
【0050】
排紙台62への排紙が正常に行われている場合には、図3に示すように、半導体加速度センサ624でz方向の振動を変換して得られる電気信号に、排紙センサ614が用紙Pを検知する周期と同様の周期で、用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たったことを示す電圧ピークが現れる。
【0051】
そこで、制御部8は、排紙センサ614における用紙Pの検知後の所定期間に、半導体加速度センサ624からのz方向に対応する電気信号において基準電圧以上の電圧が検出され、かつ基準周波数範囲内の周波数が検出された場合に、排紙台62への排紙が正常に行われたと判断する。
【0052】
例えば、排紙センサ614の検知位置から排紙エンドフェンス621までのz方向における距離が500mm、排出部61による用紙Pの排出速度が800mm/s、印刷部5における印刷速度が毎分120枚(印刷周期500ms)とすると、用紙Pの先端は排紙センサ614で検知された後、625msで排紙エンドフェンス621に到達すると算出できる。
【0053】
そこで、マージンとして例えば200msを確保し、排紙センサ614で用紙Pの先端が検知されてから625ms経過後の200msの間に、半導体加速度センサ624からのz方向の電気信号において基準電圧以上の電圧が検出され、かつ基準周波数範囲内の周波数が検出された場合に、制御部8は排紙が正常に行われたと判断する。この判断に電圧に加えて周波数を用いるのは、用紙Pの衝突以外の要因により発生する振動を排除して判断の精度向上させるためである。
【0054】
図4は、印刷動作時の排紙エンドフェンス621のz方向の振動に基づく電気信号の波形の一例を示す図である。制御部8は、FFT(Fast Fourier Transform)により、図4に示すような時間領域の信号を周波数領域の信号へと変換し、上述した電圧および周波数の検出には、周波数変換後の信号を用いる。FFT用のウィンドウサイズは、印刷部5における印刷周期に応じて予め設定され、明らかに用紙Pの排紙エンドフェンス621への衝突が生じない時間の信号については周波数変換を行わない。
【0055】
排紙が正常に行われたか否かの判断に用いる上述の基準電圧および基準周波数範囲は、用紙種類や環境変化に対応するため、印刷開始後の初期の複数の用紙Pの排紙時に半導体加速度センサ624により得られるz方向の電気信号に基づいて設定される。
【0056】
印刷開始後の初期において、制御部8は、半導体加速度センサ624により得られる電気信号から、用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たるタイミングにおける電圧および周波数を検出し、初期の複数枚の排紙時に検出した電圧および周波数の平均値に基づき、上述の基準電圧および基準周波数範囲を設定する。用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たるタイミングは、上述のように、排紙センサ614の検知位置から排紙エンドフェンス621までのz方向における距離から算出される。なお、上記のように設定される基準電圧、基準周波数範囲のかわりに、予め設定された値を用いてもよい。
【0057】
半導体加速度センサ624の電気信号は、排紙台62における用紙Pの積載枚数が増加するごとに周波数が大きくなり、電圧ピークが下がることが実験的に確認されている。そこで、制御部8は、基準電圧および基準周波数範囲を、所定枚数を印刷して排紙するごとに、直近の所定枚数の排紙時に半導体加速度センサ624によるz方向の電気信号から検出した、各用紙の排紙エンドフェンス621への衝突時の電圧および周波数の平均値に基づいて更新する。これにより、排紙が正常に行われたか否かの判断の精度低下を回避することができる。
【0058】
排紙センサ614における用紙Pの検知後の所定期間に、半導体加速度センサ624からのz方向の電気信号において、基準電圧以上の電圧および基準周波数範囲内の周波数の少なくとも一方が検出されなかった場合、制御部8は、排紙台62への排紙が正常に行われず、排紙異常が発生したと判断する。
【0059】
排紙異常の場合、用紙Pが排紙エンドフェンス621に正常に突き当たっていない。図5は、半導体加速度センサ624の電気信号のFFT後の信号を示す波形図であり、(a)は正常排紙時の信号の一例を示す図、(b)は排紙異常時の信号の一例を示す図である。図5(b)の例では、横風等によりx方向における排紙エンドフェンス621の端の方にしか用紙Pが当たらない排紙異常が発生し、図5(a)と比べて、x方向において排紙エンドフェンス621の大きな振動(特に60Hz付近)が検出されている。
【0060】
排紙異常が発生した場合、制御部8は、給紙部4の給紙動作および印刷部5の印刷動作を停止させる。そして、制御部8は、図6に示すような、排紙の異常が発生したことを示す警告画面20や、図7に示すような、印刷設定枚数の印刷が終了していないことを示す警告画面21を、表示/入力パネル71に表示させる。なお、警告画面20,21の表示に加えて、またはかわりに、図示しない警告灯や、警告音によりユーザに排紙異常を知らせるようにしてもよい。
【0061】
また、図8に示すような、排紙異常により排紙台62への積載不良となった用紙の枚数をユーザに操作入力させるための指示画面22を表示/入力パネル71に表示させてもよい。この場合、ユーザが操作パネル部7を操作して積載不良となった用紙の枚数を入力すると、制御部8は、予め設定された印刷設定枚数から排紙センサ614の検知信号に基づいてカウントした印刷済みの枚数を差し引いた残りの印刷枚数に、ユーザ操作により入力された積載不良の用紙の枚数を加えた枚数の印刷を行うように印刷部5を制御する。
【0062】
上記説明のように本実施の形態によれば、印刷された用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たる際に生じる排紙エンドフェンス621の振動を半導体加速度センサ624により電気信号に変換し、この電気信号に基づき、排紙台62への排紙が正常に行われたか否かを判断し、排紙の異常が発生した場合、印刷動作を停止するので、排紙異常により無駄となる用紙を軽減することができる。
【0063】
なお、排紙異常が発生して印刷動作を停止した後に、制御部8が、フェンス駆動部623により排紙エンドフェンス621および一対の排紙サイドフェンス622を駆動してジョガー動作を行い、その後、印刷部5の印刷動作を再開させるようにしてもよい。
【0064】
ジョガー動作は、一対の排紙サイドフェンス622の対向間隔を広げるとともに排紙エンドフェンス621をz方向に移動させることにより、一対の排紙サイドフェンス622と排紙エンドフェンス621とで囲まれる用紙Pが載置される領域を一旦広げ、その後に元の位置に戻す動作である。このジョガー動作により、排紙台62上で散乱した用紙Pが整えられ、その後の排紙動作が改善されることが期待できる。
【0065】
また、上記実施の形態では、排紙が正常に行われた否かの判断に排紙エンドフェンス621の振動に基づく電気信号を用いたが、用紙Pが排紙エンドフェンス621に突き当たる際に生じる音を電気信号に変換するマイクロフォン等の装置を用い、この音を変換した電気信号を用いて上記説明と同様に、排紙が正常に行われた否かの判断を行うようにしてもよい。
【0066】
また、孔版印刷方式に限らず、インクジェット方式等の他の方式の印刷機構を用いた印刷装置にも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
2 原稿読取部
3 製版書込部
4 給紙部
5 印刷部
6 排紙部
7 操作パネル部
8 制御部
20,21 警告画面
22 指示画面
61 排出部
62 排紙台
71 表示/入力パネル
614 排紙センサ
621 排紙エンドフェンス
622 排紙サイドフェンス
623 フェンス駆動部
624 半導体加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部により印刷された用紙を排出する排出部と、
前記排出部により排出された用紙を積載する排紙台と、
前記排紙台に設けられ、排出された用紙の排出方向における位置を規制する排紙エンドフェンスと、
排出された用紙が前記排紙エンドフェンスに突き当たる際に生じる波動を電気信号に変換する衝突検出部と、
前記電気信号に基づき、前記排紙台への排紙が正常に行われたか否かを判断し、排紙の異常が発生した場合、前記印刷部の印刷動作を停止するように制御する制御部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記排出部を通過する用紙を検知する排紙検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記排紙検知部における用紙の検知後の所定期間に、前記電気信号において基準電圧以上の電圧が検出され、かつ基準周波数範囲内の周波数が検出された場合に、前記排紙台への排紙が正常に行われたと判断することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記基準電圧および前記基準周波数範囲は、印刷開始後の初期の所定枚数の排紙時における前記電気信号に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準電圧および前記基準周波数範囲を、所定枚数を印刷して排紙するごとに、前記電気信号に基づいて更新することを特徴とする請求項2または3に記載の印刷装置。
【請求項5】
表示部と、
ユーザの操作を受け付ける操作入力部とをさらに備え、
前記制御部は、排紙の異常が発生して前記印刷部の印刷動作を停止させた場合、前記排紙台への積載不良となった用紙の枚数の入力をユーザに指示する指示画面を前記表示部に表示させ、ユーザの前記操作入力部の操作により積載不良となった用紙の枚数が入力されると、予め設定された印刷設定枚数から印刷済みの枚数を差し引いた残りの印刷枚数にユーザ操作により入力された枚数を加えた枚数の印刷を行うように前記印刷部を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記排紙台に設けられ、前記排出方向に直交する紙幅方向に近接離反自在な一対の排紙サイドフェンスと、
前記一対の排紙サイドフェンスを移動させるフェンス駆動部とをさらに備え、
前記排紙エンドフェンスは、前記フェンス駆動部により前記排出方向に往復移動自在に構成され、
前記制御部は、排紙の異常が発生した場合、前記印刷部の印刷動作を一時停止させ、前記一対の排紙サイドフェンス間と前記排紙エンドフェンスとで囲まれる用紙が載置される領域を一旦広げた後に元の位置に戻すジョガー動作を前記フェンス駆動部に行わせた後、前記印刷部の印刷動作を再開させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−155437(P2010−155437A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−308(P2009−308)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】