説明

印刷装置

【課題】用紙の逆フィード時には、下流側の印字部のサーマルヘッドをプラテンローラから離間させて直接接触させないようにする。
【解決手段】用紙搬送方向に沿って配設され、印字ヘッドとこの印字ヘッドに接触するプラテンローラとからなる上流側及び下流側の印字部を備え、上流側の印字ヘッドで用紙の一面側に印字したのち、該用紙を下流側の印字部7の第1のサーマルヘッド12とプラテンローラ13との間のフィ−ドしてその他面側に印字して所定量送り出してから切断し、この切断後、用紙を逆フィードして上流側の印字部に送る印刷装置において、用紙の逆フィード時に、下流側の印字部7の第1のサーマルヘッド12を第1のプラテンローラ13から離間させる昇降機構25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面に印字する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の印刷装置には、ロール用紙の搬送路中にその搬送方向の下流側に位置して第1の印字部、上流側に位置して第2の印字部を配設するものが知られている。
【0003】
この印刷装置では、第2の印字部で用紙の一面側に印字したのち、該用紙を第1の印字部にフィードしてその他面側に印字する。この両面に印字された用紙は、第1の印字部から所定量送り出されたのちカッタで切断されて放出される。そして、この切断後、ロール用紙側は逆フィードされて第2の印字部側に戻されてその印字位置に位置決めされて次の印字に備えるようになっている。
【0004】
しかしながら、ロール用紙側が逆フィードされて第1の印字部から送り出されると、第1の印字部を構成するサーマルヘッドがプラテンローラに直接接触し、両者間に大きな摩擦力が生じる。このため、プラテンローラを回転させるフィードモータに負荷がかかり、フィードモータが脱調し、印字位置がずれてしまう不都合があった。
【0005】
なお、プラテンローラとサーマルヘッドとの接触圧を負荷調整機構により調整できるようにしたものは開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−272151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2000−272151号公報に開示されるものは、サーマルヘッドをプラテンローラから完全に離間させることができないため、用紙が逆フィードされて第1の印字部から送り出されると、やはりサーマルヘッドがプラテンローラに直接接触する。このため、プラテンローラが磨耗したり、プラテンローラから磨耗粉が発生するとともに、サーマルヘッドを損傷させるといった虞れがある。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、用紙の逆フィード時における下流側印字部の印字ヘッドとプラテンローラとの接触を防止できるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、用紙搬送方向に沿って配設され、印字ヘッドとこの印字ヘッドに接触するプラテンローラとからなる上流側及び下流側の印字部を備え、前記上流側の印字ヘッドで前記用紙の一面側に印字したのち、該用紙を前記下流側の印字部の印字ヘッドとプラテンローラとの間にフィ−ドしてその他面側に印字して所定量送り出してから切断し、この切断後、前記用紙を逆フィードして前記上流側の印字部に送る印刷装置において、前記用紙の逆フィード時に、前記下流側の印字部の印字ヘッドをプラテンローラから離間させる離間手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、用紙の逆フィード時における下流側印字部のプラテンローラの磨耗や磨耗粉の発生を防止できるとともに、印字ヘッドの損傷も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である印刷装置を示すものである。
【0011】
図中1は装置本体で、この装置本体1内には両面に感熱印刷面を有する用紙2を供給するリール部3が設けられている。用紙2はリール部3にロール状に取り付けられ、用紙搬送路4に沿って引き出される。用紙搬送路4中には用紙搬送方向に沿って上流側の印字部としての第2の印字部5、用紙検知センサ6、下流側の印字部としての第1の印字部7、及び用紙カッタ部8が順次、配設されている。
【0012】
第1の印字部7は印字ヘッドとしての第1のサーマルヘッド12と、この第1のサーマルヘッド12の下方に位置して接触するプラテンローラとしての第1のプラテンローラ13とによって構成されている。第2の印字部5は印字ヘッドとしての第2のサーマルヘッド14と、この第2のサーマルヘッド14の上方に位置して接触するプラテンローラとしての第2のプラテンローラ15とによって構成されている。
【0013】
第1及び第2のプラテンローラ13,15には動力伝達系(図示しない)を介して駆動モータ18が接続され、この駆動モータ18の正逆回転により第1及び第2のプラテンローラ13,15は正逆方向に回転駆動されるようになっている。
【0014】
図2は上記した第1の印字部7を示す斜視図で、図3はその側面図である。
【0015】
第1のサーマルヘッド12は支持フレーム21の下面側に取り付けられ、支持フレーム21は支軸22によって回動自在に支持されている。支持フレーム21の上面部には所定間隔を存して複数個の押圧スプリング23が配設されている。支持フレーム21は押圧スプリング23によって下方に押し下げられ、第1のサーマルヘッド12を第1のプラテンローラ13に接触させるようになっている。
【0016】
ところで、支持フレーム21に取り付けられる第1のサーマルヘッド12は、離間手段としての昇降機構25によって第1のプラテンローラ13に対して接離されるようになっている。
【0017】
昇降機構25はカムモータ26を備え、このカムモータ26には複数個のギアからなるギア列28を介してカムシャフト29が接続されている。カムシャフト29は第1のプラテンローラ13の軸方向に沿って平行に設けられている。カムシャフト29の一端部側にはカム31及び円形状の被検知体30が同軸的に取り付けられ、他端部側にもカム31が取り付けられている。被検知体30の下方部には被検知体30の回転を検知してカム31の位置を検知するカム位置検知センサ35が設けられている。
【0018】
また、カムシャフト29の両端部側にはリフタ32がそれぞれ配設され、これらリフタ32によって支持フレーム21の回動端側が支持されている。リフタ32の下部側には図4に示すように上下方向に所定間隔を存して突起部33a,33bが突設され、カム31はリフタ32の突起部33a,33b間に位置してリフタ32を支持している。
【0019】
リフタ32はカム31の回動に基づいて図4(a)に示すように上昇され、また、図4(b)に示すように下降される。リフタ32の上昇により図5に示すように支持フレーム21が上方に回動して第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13から離間され、リフタ32の下降により図3に示すように、第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13に接触されるようになっている。
【0020】
図6は、駆動制御系を示すブロック図である。
【0021】
上記した用紙検知センサ6、カム位置検知センサ35、また、スタートボタン36は信号回路を介して制御部40に接続され、この制御部40には制御回路を介して駆動モータ18、カムモータ26、カッタモータ10が接続されている。
【0022】
制御部40は、用紙検知センサ6、カム位置検知センサ35からの検知信号、また、スタートボタン36からのスタート信号に基づいて駆動モータ18、カムモータ26、カッタモータ10の駆動を制御するようになっている。
【0023】
次に、上記したように構成される印刷装置の印刷動作について図7及び図8に基づいて説明する。
【0024】
図7(a)に示すように、用紙2はその先端部側が第2のサーマルヘッド14と第2のプラテンローラ15との間に介在された状態にある。この状態からスタートボタン36がオンされると、第1の印字部7のカムモータ26が動作されてカム31が回転し、リフタ32が上昇される。このリフタ32の上昇により、第1のサーマルヘッド12が上方へ移動して第1のプラテンローラ13から離間される。この離間後、駆動モータ18が正方向に駆動されて第1及び第2のプラテンローラ13,15が正方向に回転される。これにより、用紙2がフィードされるとともに、第2のサーマルヘッド14が発熱されて用紙2の一面側に印字される。
【0025】
この印字された用紙2の先端部側が図7(b)に示すように、第1の印字部7の離間された状態にある第1のサーマルヘッド12と第1のプラテンローラ13との間に送り込まれると、駆動モータ18の駆動が停止される。
【0026】
この停止後、第1の印字部7のカムモータ26が再度動作して図7(c)に示すようにリフタ32が下降されて第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13に用紙2を介して接触される。
【0027】
この接触後、駆動モータ18が再度、動作して図8(a)に示すように第1及び第2のプラテンローラ13,15が回転されて用紙2が搬送されるとともに、第1の印字部7の第1のサーマルヘッド12により用紙2の他面側に印字される。
【0028】
このようにして両面が印字された用紙2は図8(b)に示すように、第1及び第2のプラテンローラ13,15の回転により搬送されて所定距離搬送されると、駆動モータ18の駆動が停止されてカッタモータ10によりカッタ部8が動作されて所定寸法にカットされる。
【0029】
このカット後、第1の印字部7のカムモータ26が再度動作して図8(c)に示すようにリフタ32が再度、上昇されて第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13から離間される。この離間後、駆動モータ18が逆回転されて第1及び第2のプラテンローラ13,15が逆方向に回転駆動されて用紙2が逆フィードされる。この逆フィードされる用紙2の先端部が用紙検知センサ6で検知されたのち所定距離搬送されて第2の印字部5の印字位置で停止される。この停止後、再び、上記したと同様に第2のサーマルヘッド14によって用紙2の一面側に印字される。以後、順次上記したと同様の印字動作が繰り返される。
【0030】
上記したように、この実施の形態によれば、用紙2の逆フィード時には、第1のサーマルヘッド12を第1のプラテンローラ13から離間させるため、用紙2が第1のサーマルヘッド12と第1のプラテンローラ13との間から送り出されても、第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13に直接接触することがない。
【0031】
また、用紙2のフィード時においても、第1のサーマルヘッド12を第1のプラテンローラ13から離間させるため、第1のサーマルヘッド12が第1のプラテンローラ13に直接接触することがない。
【0032】
従って、この実施の形態によれば、第1のプラテンローラ13の磨耗や磨耗粉を発生することがないとともに、第1のサーマルヘッド12の損傷も確実に防止することができる。
【0033】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態である印刷装置を示す概略的構成図。
【図2】図1の第1の印字部を示す斜視図。
【図3】図2の第1の印字部を示す側面図。
【図4】図3の昇降機構を示す図。
【図5】図4の昇降機構により第1のサーマルヘッドがプラテンローラから離間された状態を示す図。
【図6】図1の印刷装置の駆動制御系を示すブロック図。
【図7】図1の第1の印字部による印字動作を示す図。
【図8】図1の第1の印字部による印字動作を示す図。
【符号の説明】
【0035】
5…第2の印字部(上流側の印字部)、7…第1の印字部(下流側の印字部)、12…第1のサーマルヘッド(印字ヘッド)、14…第2のサーマルヘッド(印字ヘッド)、13…第1のプラテンローラ(プラテンローラ)、15…第1のプラテンローラ(プラテンローラ)、18…駆動モータ、25…昇降機構(離間手段)、26…カムモータ(駆動源)、31…カム、32…リフタ(昇降部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送方向に沿って配設され、印字ヘッドとこの印字ヘッドに接触するプラテンローラとからなる上流側及び下流側の印字部を備え、
前記上流側の印字ヘッドで前記用紙の一面側に印字したのち、該用紙を前記下流側の印字部の印字ヘッドとプラテンローラとの間にフィ−ドしてその他面側に印字して所定量送り出してから切断し、この切断後、前記用紙を逆フィードして前記上流側の印字部に送る印刷装置において、
前記用紙の逆フィード時に、前記下流側の印字部の印字ヘッドをプラテンローラから離間させる離間手段を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記離間手段は、前記用紙のフィード時にも、前記下流側の印字部の印字ヘッドをプラテンローラから離間させることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記離間手段は、駆動源と、この駆動源によって回動されるカムと、このカムの回動に基づいて昇降し前記印字ヘッドを前記プラテンローラから接離する方向に移動させる昇降部材とを具備することを特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記用紙はその両面に感熱面を有し、
前記印字ヘッドはサーマルヘッドであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記上流側及び下流側のプラテンローラは、同一の駆動モータによって回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64311(P2010−64311A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231285(P2008−231285)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】