説明

印刷装置

【課題】アイドルプーリ4と駆動プーリ5により張設されたスペースベルト3に固定されたキャリッジ2を左右に移動させて印刷する印刷装置において、スペースベルト3が共振を起こし張力が変動し、キャリッジ2の位置精度が不安定にならないようにする。
【解決手段】印刷装置のメインフレームの一部に係合されたスプリング7により、スペースベルト3を駆動プーリ5と反対側に付勢するアイドルプーリホルダ8に、メインフレームに対し所定の摩擦負荷を発生させるアイドルプーリホルダレバー部10を設けるようにした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷ヘッドを搭載したキャリッジをベルトにて駆動して印刷を行う印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置のうちインパクトプリンタのように、印刷ヘッドによるインクリボンへのインパクトにより印刷用紙等の媒体に印刷を行うインパクトプリンタ等(以下「印刷装置」という)においては、図10に示したように、キャリッジ52を図中矢印A方向に走査する機構として、スペースベルト53の片端に駆動プーリ55を設置し、その反対側にアイドルプーリ54を設置し、印刷ヘッド51が搭載されたキャリッジ52にスペースベルト53を固定して矢印A方向にキャリッジ52を移動させる構成となっている。
【0003】
そして、印刷時のキャリッジ52の加速・減速によるスペースベルト53の伸縮を補正して正しい位置に印刷する技術があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
或いは、図10に示したように、スペースベルト53の張力を一定とするために、アイドルプーリ54の支軸を保持するアイドルプーリホルダ58を装置に固定されたメインフレームの突起59に摺動可能に配置し、一方をメインフレームの突起59に係合させたスプリング57により、アイドルプーリホルダ58を駆動プーリ55と反対側の図中矢印X方向に付勢するようにしていた。
【特許文献1】特開平9−39328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の印刷装置では、アイドルプーリホルダ58は、スプリング57によってX方向に付勢され、X方向に摺動可能にメインフレームに固定されているだけなので、キャリッジ52の駆動によりスペースベルト53が共振を起こす場合がありその張力が変動し、キャリッジ52の位置精度が不安定になり、正しい印刷位置に印刷できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するため次の方法を採用する。すなわち、第1、第2の支持部により張設されたベルトに固定されたキャリッジを左右に移動させて印刷する印刷装置において、装置に対して移動可能に保持された前記第1の支持部を、前記第2の支持部と離れる方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段、または前記第1の支持部の移動に負荷を与える負荷付与手段を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動取引装置によれば、第1、第2の支持部により張設されたベルトに固定されたキャリッジを左右に移動させて印刷する印刷装置において、装置に対して移動可能に保持された前記第1の支持部を、前記第2の支持部と離れる方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段、または前記第1の支持部の移動に負荷を与える負荷付与手段を設けたので、前記付勢手段、または前記第1の支持部の共振を抑制しスペースベルトの緩みの発生を防止し、高品質な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0009】
(構成)
まず、実施例1の印刷装置30は、図4に示した外観を呈しており、後述の図2および図3の印刷機構が内蔵され、印刷装置30の前面のZ方向から挿入される連続用紙や単一用紙、或いは連続複写紙や単票複写紙等に印刷を行い装置後部または上部より排出されるようになっている。
【0010】
次に、実施例1の印刷装置の印刷機構の構成について、図1の実施例1の印刷機構の要部構成図および図2および図3の外観斜視図を用いて以下説明する。なお、図1は、図2および図3のZ方向より見た透視図となっている。また、図3は、実施例1の印刷機構をメインフレームに搭載して組み立てを行うときの印刷機構とメインフレームの関係を示した図となっている。
【0011】
実施例1の印刷装置の印刷機構は、印刷を行うための印刷ヘッド1を保持したキャリッジ2を矢印A方向に走査する機構として、スペースベルト3の片端に駆動プーリ5を設置し、その反対側にアイドルプーリ4を設置し、スペースベルト3がキャリッジ2に固定された構成となっている。
【0012】
そして、図示しない制御部からの指示により、スペースモータ6が駆動されると、駆動プーリ5が回転し、駆動プーリ5に係合されたスペースベルト3がアイドルプーリ4の間で回転移動することにより、スペースベルト3に固定されたキャリッジ2が矢印A方向に移動可能となる。
【0013】
アイドルプーリ4は、アイドルプーリホルダ8に回転可能にその支軸が保持されており、スペースベルト3の回転を支持する。アイドルプーリホルダ8は、メインフレーム突起9に矢印A方向に摺動可能に固定されており、メインフレーム突起9とアイドルプーリホルダ8の間に設けたスプリング7により、駆動プーリ5と反対側にスペースベルト3に張力を付勢するように設置されている。
【0014】
さらに、アイドルプーリホルダ8は、メインフレーム摺動壁11に押付けるアイドルプーリホルダレバー部10を有しており、このアイドルプーリホルダレバー部10の先端部とメインフレーム摺動壁11とに摩擦負荷が発生するように構成されている
【0015】
(動作)
以上の構成により、実施例1の印刷装置は以下のように動作する。本動作を前出図1ないし図3を用いて以下詳細に説明する。
【0016】
まず、図示しない制御部の指示により、スペースモータ6が駆動することにより、駆動プーリ5が回転することによりスペースベルト3が矢印A方向に移動する。すると、スペースベルト3に接続されたキャリッジ2が矢印A方向に移動する。そして、キャリッジ2の移動のタイミングに合わせ、図示しない制御部の指示によって印刷ヘッド1が文字や画像などを印刷する。
【0017】
このとき、スペースベルト3と駆動プーリ5との摩擦力を発生させ歯飛びを防止するためにスペースベルト3には一定の張力が必要であり、アイドルプーリ4を駆動プーリ5と逆側に矢印X方向にスプリング7によってアイドルプーリホルダ8を介して押し付けることにより所定の張力、例えば20N〜40N(ニュートン)の張力が発生するようになっている。
【0018】
そして、アイドルプーリホルダ8は、アイドルプーリホルダレバー部10によりメインフレーム摺動壁11に対し、3N〜10N程度の摩擦負荷が発生するようにしている。なお、アイドルプーリホルダレバー部10は、その素材をプラスチックとし所定のたわみが発生可能な形状とし、メインフレーム摺動壁11と接する面には粘性負荷が発生するように当接面を粗く仕上げている。
【0019】
ここで、キャリッジ2は、文字や画像などを印刷するために矢印A方向に駆動されるが、キャリッジ2の加速・減速により発生する慣性力は、通常、20N〜40Nの範囲内であるので、スペースベルト3の張力を20N〜40Nとすることにより、キャリッジ2の加速・減速による影響をなくすることができ、所定の位置に精度よく文字等を印刷することができる。
【0020】
しかしながら、文字等の印刷パタンやキャリッジ2の駆動モードによっては、スペースベルト3の共振周波数と一致し共振が発生する場合がある。この場合は、40N以上の力がスペースベルト3にかかり、スプリング7の力でアイドルプーリホルダ8を抑え切れずに、スペースベルト3に緩みが発生してしまう。
【0021】
実施例1の印刷装置では、アイドルプーリホルダ7にアイドルプーリホルダレバー部10が設けられており、アイドルプーリホルダレバー部10とメインフレーム摺動壁11との摩擦により、所定の摩擦負荷が発生するようになっているので前記共振の発生が抑制されスペースベルト3に緩みが発生することがない。
【0022】
なお、以下の実施例1の説明では、アイドルプーリホルダレバー部10をアイドルプーリホルダ7の側面の一端に設ける例として説明したが、メインフレームの一部との間に所定の摩擦が発生すればよいので、図5に示したように、アイドルプーリホルダ7の厚さ方向にアイドルプーリホルダレバー部10aを設け、当該近傍にメインフレーム摺動壁11を設けるようにしてもよい。
【0023】
また、以下の実施例1の説明では、インパクトプリンタの例として説明したが、スペースベルトにより印刷ヘッドを移動させて印刷を行うものであれば、インクジェットプリンタやレーザプリンタなどにも本発明を適用することができる。
【0024】
(実施例1の効果)
以上詳細に述べたように実施例1の印刷装置によれば、アイドルプーリと駆動プーリにより張設されたスペースベルトに固定されたキャリッジを左右に移動させて印刷する印刷装置において、メインフレームの一部に係合されたスプリングにより、スペースベルトを駆動プーリと反対側に付勢するアイドルプーリホルダに、メインフレームに対し所定の摩擦負荷を発生させるアイドルプーリホルダレバー部を設けるようにしたので、共振を抑制しスペースベルトの緩みの発生を防止し、高品質な印刷を行うことができる。
【実施例2】
【0025】
(構成)
実施例1の印刷装置はアイドルプーリホルダ8に摩擦負荷を発生するためのアイドルプーリホルダレバー部10を設ける構成としたが、実施例2の印刷装置では、図6に示したように、インクリボン14の駆動をアイドルローラ4側から行うようにし、この駆動ギア12a、12bにより駆動されるアイドルギア12cに当接するアイドルギア15aと、当該アイドルギア15aに当接しアイドルプーリ4の支軸と同軸上に、アイドルギア15bを設けた構成としている。このアイドルギア15bはアイドルプーリ4に所定の摩擦負荷を持って接続されている。
【0026】
そして、インクリボン14の駆動力をアイドルギア15bに伝達し、アイドルギア15bの回転による当該支軸への反力をスプリング7による付勢力に加えて、スペースベルト3の張力を増加させるようにしている。
【0027】
その他の構成は、実施例1の印刷装置の構成と同様であるため、簡略化のために詳細な説明は省略する。
【0028】
(動作)
以上の構成により、実施例2の印刷装置は以下のように動作する。本動作を図6、図7および図8を用いて以下詳細に説明する。
【0029】
すなわち、実施例2の印刷装置では、印刷を開始する際に、リボン駆動ギア12a、12bを付記した矢印のように回転駆動させ、インクリボン14を矢印B方向に繰り出すと、アイドルギア12c、アイドルギア15a、15bはそれぞれ付記した矢印のように回転する。
【0030】
すると、リボンギアの駆動力がアイドルギア12cを介してアイドルギア15bに伝達し、図7に示したリボン駆動開始前の状態から、アイドルギア15aの回転により図8に示したようにその支軸への反力が矢印X方向に発生し、当該反力がスプリング7による付勢力に加わり、スペースベルト3の張力が増加する。このとき、図8に示したように、アイドルギア15bはアイドルギア15aとの噛み合いが外れない程度に矢印X方向に移動する。なお、アイドルギア15bは、所定の摩擦負荷を持ってアイドルプーリ4に接続されているのでリボン駆動が続いても所定の反力以上は発生することがなく、一定の付勢力を発生させることができる。
【0031】
ところで、印刷速度が速いときは、スペースベルト3への負荷が増加するためにより大きな張力を発生させる必要があるが、この場合、インクリボン14を図6の矢印B方向に取り込む速度を増加させリボン駆動ギア12bの駆動力が増加するので、より強い前記反力がアイドルプーリ4に加わるようになり、スペースベルト3の張力を増加させることができる。
【0032】
逆に、印刷速度が遅いときは、スペースベルト3への負荷が減少するために少ない張力とする必要があるが、この場合、インクリボン14を矢印B方向に取り込む速度を遅くさせリボン駆動ギア12bの駆動力が小さくなるので、前記反力が弱くなりスペースベルト3の張力が弱くなる。
【0033】
以上のように、印刷速度に応じてスペースベルト3の張力を増減させることが可能となるので、無駄にスペースベルト3の張力を強くすることなく、適時に張力を強くすることができ、スペースベルト3の共振の発生を抑制することができる。
【0034】
なお、以上の実施例2の説明では、図6のようにインクリボン14のアイドルギア12cに当接するアイドルギア15aと、当該アイドルギア15aに当接しアイドルプーリ4の支軸と同軸上にアイドルギア15bを設けた構成の例を説明したが、図9に示したように、アイドルギア15aに当接するアイドルギア15bと同軸上に設けたアイドルプーリ16aを備え、このアイドルプーリ16aをアイドルプーリホルダ8の側面一端に当接させ、アイドルプーリ16aの回転により所定の摩擦力が発生するようにしてもよい。
【0035】
このような構成とした場合でも、印刷速度が速いときは、スペースベルト3への負荷が増加するためにより大きな張力を発生させる必要があるが、この場合は、インクリボン14を矢印B方向に取り込む速度を増加させるためにリボン駆動ギア12bの駆動力が増加するので、アイドルギア15aとアイドルプーリホルダ8との接点に発生するX方向への摩擦力が増加してスプリング7の付勢力に加わるようになり、スペースベルト3の張力を増加させることができる。
【0036】
逆に、印刷速度が遅いときはスペースベルト3への負荷が減少するために少ない張力とする必要があるが、この場合は、インクリボン14を矢印B方向に取り込む速度を遅くさせるためにリボン駆動ギア12bの駆動力が小さくなり、アイドルギア15aとアイドルプーリホルダ8との接点に発生するX方向への摩擦力が減少してスプリング7の付勢力に加わるようになる。
【0037】
以上のようにすることにより、印刷速度に応じてスペースベルト3の張力を増減させることが可能となるので、無駄に張力を強くすることなく、適時にスペースベルト3の張力を強くすることができ、スペースベルト3の共振の発生を抑制することができる。
【0038】
また、以上の実施例の説明では、インパクトプリンタの例として説明したが、ベルトにより印刷ヘッドを移動させてインクリボンにより印刷を行うものであれば、通帳などの記帳端末やコピー機などにおいても本発明を適用することができる。
【0039】
(実施例2の効果)
以上詳細に述べたように、実施例2の印刷装置によれば、アイドルプーリ側にインクリボン駆動ギアを設け、アイドルプーリの支軸と同軸上に当該駆動ギアにより駆動され所定の回転制動力を有するアイドルギアを設けるようにしたので、スペースベルトの緩みの発生を防止し共振の発生を抑制し、高品質な印刷を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上述べたように、本発明は、ベルトにより印刷ヘッドを移動させて印刷を行う印刷装置に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の印刷装置の印刷機構の要部構成図である。
【図2】実施例1の印刷装置の印刷機構の外観斜視図である。
【図3】実施例1の印刷装置の印刷機構とメインフレームとの関係図である。
【図4】実施例1の印刷装置の外観斜視図である。
【図5】実施例1の印刷装置の変形例の構成図である。
【図6】実施例2の印刷装置の要部構成図である。
【図7】実施例2の印刷装置のアイドルプーリホルダの動作説明図である。
【図8】実施例2の印刷装置のアイドルプーリホルダの動作説明図である。
【図9】実施例2の印刷装置の印刷機構の変形例の要部構成図である。
【図10】従来の印刷装置の印刷機構の要部構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1 印字ヘッド
2 キャリッジ
3 スペースベルト
4 アイドルプーリ
5 駆動プーリ
6 スペースモータ
7 スプリング
8 アイドルプーリホルダ
9 メインフレーム突起
10 アイドルプーリホルダレバー部
11 メインフレーム摺動壁
12a、12b リボン駆動ギア
13 リボンカートリッジ
14 インクリボン
12c、15a、15b アイドルギア
16a アイドルプーリ
21 メインフレーム
30 印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の支持部により張設されたベルトに固定されたキャリッジを左右に移動させて印刷する印刷装置において、
装置に対して移動可能に保持された前記第1の支持部を、前記第2の支持部と離れる方向に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段、または前記第1の支持部の移動に負荷を与える負荷付与手段とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
第1、第2の支持部により張設されたベルトに固定されたキャリッジを左右に移動させて印刷する印刷装置において、
装置に対して移動可能に保持された前記第1の支持部を、前記第2の支持部と離れる方向に付勢する付勢手段と、
前記第1の支持部近傍にインクリボン駆動手段を配置し、
前記第1の支持部と同軸上に回転部材を配置し、当該回転部材を前記インクリボン駆動手段の負荷として回転駆動させて前記付勢手段に付勢力を付加するようにしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記インクリボン駆動手段はインクリボン駆動ギアであって、前記付加する付勢力は、前記インクリボン駆動ギアと噛み合わせた前記第1の支持部と同軸上に配置したギアを前記インクリボン駆動ギアにより駆動させて発生させるようにしたこと請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクリボン駆動手段はインクリボン駆動ギアであって、前記付加する付勢力は、前記インクリボン駆動ギアと噛み合わせた回転部材を前記付勢手段に当接させて発生させるようにしたことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−64390(P2010−64390A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233534(P2008−233534)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】