印刷装置
【課題】本印刷以外に必要な印刷については許可し印刷業者にとっての利便性は確保しつつ、無制限な増刷の抑止に資することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】MFP6において、通信部33は、印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データ121を、印刷請負装置からジョブチケット122と共に受け取り、印刷部34が、ジョブチケット122で指定された印刷部数だけ原稿データ121を印刷し、制御部39は、操作部32、表示部31と協働して原稿データ121について本印刷以外の増刷要因毎の増刷指示を取得して、印刷部34に原稿データ121を増刷させ、ログ生成部35が、増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログ125を生成し、通信部33が印刷ログ125を印刷依頼装置に送信する。
【解決手段】MFP6において、通信部33は、印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データ121を、印刷請負装置からジョブチケット122と共に受け取り、印刷部34が、ジョブチケット122で指定された印刷部数だけ原稿データ121を印刷し、制御部39は、操作部32、表示部31と協働して原稿データ121について本印刷以外の増刷要因毎の増刷指示を取得して、印刷部34に原稿データ121を増刷させ、ログ生成部35が、増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログ125を生成し、通信部33が印刷ログ125を印刷依頼装置に送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、入稿データの不正な増刷の抑止に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界においては、印刷依頼者である顧客が、印刷用の原稿である電子ファイル(例えばPDF(Portable Document Format)ファイルや、ワープロソフトにより生成されたドキュメントファイルなど)をネットワーク経由で印刷請負者である印刷業者に送信することでデータ入稿し、印刷業者が自己の有するMFP(Multifunction Peripheral)等で原稿を印刷するという形態が一般的になっている。しかし、この形態においては、印刷業者に悪意がある場合に、顧客が原稿の印刷部数を指定していたとしても、指定された以上の部数が不正に増刷され、増刷分が海賊版として出回ってしまうおそれがある。
【0003】
これを回避する技術として、特許文献1に、代行アカウントを用いる印刷システムが開示されている。印刷依頼者は、印刷請負者に原稿の印刷を依頼する前に、印刷を代行できる代行アカウントを印刷請負者に対し発行する。印刷請負者は、代行アカウントを用いて印刷システムにログインし原稿を印刷する。この印刷システムにおいては、原稿の印刷は、データベースに記録される代行アカウント毎の利用可能頁数情報などの制約に基づき制御される。すなわち、印刷業者は、原稿データについて利用可能頁数情報を超える部数の印刷はできないよう制限される。そして、印刷が完了した場合、その旨が印刷依頼者に送信されるので、印刷依頼者は、指定した印刷部数、原稿が印刷されたことを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−40564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術では、原稿を印刷する場合に、原稿をデータベースに予め規定された利用可能頁数だけ印刷する本印刷以外の、やむを得ず必要な増刷ができないという問題がある。このやむを得ず必要な増刷には、例えば、試し刷りのための増刷(確認印刷)や、印刷装置において印刷エラーなど不具合は検出されなかったものの、印刷物を印刷業者が検査し実際の印刷品質が悪いと判断した場合にこれを補填するための増刷などがある。ここで、実際の印刷品質が悪い場合とは、印刷装置内外の温度変化、湿度変化、印刷用紙の状態の変化、連続印刷による印刷装置自体のコンディションの変化など印刷環境に変化が生じ、トナーこぼれや、かすれが発生した場合や、色が想定より薄く又は濃くなった場合などが想定される。また、印刷実行中に紙詰まり、トナー切れなどによるジャムが発生した場合に補填するための増刷なども上述のやむを得ず必要な増刷に含まれる。
【0006】
上述の技術では、利用可能頁数を超えた印刷はできないよう制限されているため、上述のやむを得ず必要な増刷を行うことができず印刷依頼者、印刷業者にとって利便性が損なわれる。
上記の課題に鑑み、本発明は、本印刷以外の必要な印刷については許可し印刷業者にとっての利便性を確保しつつ、無制限な増刷の抑止に資することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データを、前記印刷請負装置からの印刷要求に基づき印刷する印刷装置であって、対となる暗号鍵と復号鍵のうち復号鍵を保持する鍵保持手段と、前記暗号鍵を保持する前記印刷依頼装置によって前記暗号鍵を用いて暗号化され送信された、原稿データ及び前記原稿データの印刷部数を示す印刷部数情報を、前記印刷請負装置を介して受信する受信手段と、前記暗号化された原稿データ及び印刷部数情報を前記復号鍵を用いて復号する復号手段と、前記原稿データを印刷する印刷手段と、前記原稿データについて、前記印刷部数情報により示される印刷部数だけ前記印刷手段に印刷させるとともに、所定の増刷要因毎に増刷指示を取得した場合には、前記印刷手段に前記原稿データを増刷させる制御手段と、
前記増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログを生成するログ生成手段と、原稿データの印刷が完了した時点の印刷ログを前記印刷依頼装置に送信する送信手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷装置は、上述の構成を備えることにより、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷以外に必要とされる増刷を実行でき、かつ、印刷依頼装置側で、増刷について増刷要因毎の増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷の抑止に寄与できる。
【0009】
また、前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷の事前に印刷結果を確認するための確認印刷であり、前記制御手段は、前記本印刷の前に、前記増刷指示として前記原稿データを1部増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷に先立ち、確認印刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、確認印刷による増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで確認印刷のための増刷の妥当性を判断することができる。
【0010】
また、前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷における印刷物についての印刷不良であり、前記制御手段は、前記本印刷の後に、前記増刷指示として前記本印刷において印刷不良であった部数増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷以外に、印刷不良であった部数を補填するための増刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、印刷不良を補填するための不具合印刷による増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで、不具合印刷のための増刷の妥当性を判断することができる。
【0011】
また、前記所定の増刷要因は、前記印刷手段における印刷実行中のジャムの発生であり、
前記制御手段は、前記増刷指示として前記ジャムの発生した部数増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、印刷実行中に紙詰まり、インク切れなどによるジャムが発生し印刷が失敗した場合に、その印刷に失敗した部数を補填するための増刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、その増刷要因、増刷部数を知ることができる。これにより、印刷依頼装置を有する顧客が、増刷の妥当性を判断することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、所定の増刷要因毎に増刷部数の入力を促す表示をする表示部と、前記増刷部数の入力を受け付ける操作部と、前記印刷手段に、入力された増刷部数前記原稿データを増刷するよう指示する制御部とを備えることとしてもよい。
この構成によれば、ユーザが増刷要因毎に増刷部数を指定することができ、その指定された増刷部数の増刷を行うことができ、かつ、印刷依頼装置側で、増刷要因、増刷要因毎の増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで、増刷要因毎に増刷の妥当性を判断することができる。
【0013】
また、前記送信手段は、前記印刷ログの送信先として前記印刷依頼装置の識別情報を予め記憶しており、前記印刷ログを前記印刷請負装置を介さず前記印刷依頼装置に送信することとしてもよい。
この構成によれば、印刷ログは印刷請負装置を経由しないため、印刷請負装置において印刷ログが閲覧、改竄等されるのを防ぐことができる。印刷依頼装置を有する顧客は、より安全に印刷ログを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る顧客のPCの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るジョブチケットの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る印刷業者のPCの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る印刷業者のMFPの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る印刷ログの一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係るジャム発生時処理を示すフローチャートである。
【図10】印刷装置の表示部に表示されるパネルの一例を示す図である。
【図11】印刷装置の表示部に表示されるパネルの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る印刷システムにおいて顧客のPCが印刷依頼をしてから印刷ログを受け取るまでの全体動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
1.構成
(概要)
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム1の構成を示す図である。
本発明の一実施形態に係る印刷システム1は、印刷業者に原稿の印刷を要求する顧客のパーソナルコンピュータ(印刷依頼装置)PC2と、ネットワーク3を介してPC2に接続する、印刷を請け負う印刷業者のルーティングハブ4と、ルーティングハブ4に接続された印刷業者のパーソナルコンピュータ(印刷請負装置)PC5と、印刷業者のMFP(Multi Function Peripheral)(印刷装置)6とを含んで構成される。
【0016】
PC2は、保持している原稿データの印刷を依頼するため、原稿データとジョブチケットとをPC5に対しデータ入稿する。原稿データは、印刷対象となる画像、文書等を表すデータであり、一例として、PDFファイルや、ワープロソフトにより生成されたドキュメントファイル等が該当する。また、ジョブチケットは、詳細は後述するが、印刷部数や、印刷時のレイアウトなど原稿データをどのように印刷するかを示す制御情報である。この原稿データ、ジョブチケットは、PC2により、MFP6においてのみ復号可能に暗号化されている。
【0017】
PC5は、暗号化された原稿データとジョブチケットとをMFP6に送信して原稿データの印刷を要求する。
MFP6は、暗号化された原稿データとジョブチケットを復号し、ジョブチケットにより指定された部数、原稿データを印刷する(以下、本印刷という。)。また、MFP6は、本印刷以外に、所定の増刷要因についての原稿データの増刷要求を受け付ける。そして増刷をした場合には、増刷の部数を印刷ログとして記録し、記録した印刷ログをPC2に送信する。
【0018】
この印刷ログはPC2の表示部に表示される。よって、顧客は、本印刷以外に原稿データの増刷がされた場合にその増刷要因、増刷部数を知り、増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷の抑止に寄与することとなる。
(PC2)
PC2は、パーソナルコンピュータであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、PC2はその機能を達成する。
【0019】
図2は、PC2の機能的な構成を示すブロック図である。
PC2は、表示部11、操作部12、通信部13、記憶部14、制御部15、暗号処理部16及び鍵保持部17を含んで構成される。
表示部11は、GUI(Graphical User Interface)等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部(図示せず)を含んで構成される。
【0020】
操作部12は、顧客がPC2に対する指示を入力するために用いるキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。
通信部13は、他の装置等と通信を行う。
記憶部14は、原稿データ121、ジョブチケット122を暗号化するなどしてセキュアに記憶している。ここで、記憶部14によるセキュアなデータの記憶は、記憶部14がデータの暗号化、復号機能を有し、その機能によりデータを暗号、復号することとしてもよいし、記憶部14に耐タンパ性を持たせることで実現してもよい。
【0021】
原稿データ121は、MFP6に印刷を要求する画像、文書等を表すデータである。本実施形態では、原稿データ121は、PDFファイルであるとする。
また、ジョブチケット122は、MFP6による印刷対象とする原稿データ121に対応付けられ、原稿データ121をどのように印刷するか、どのように扱うか等を示す制御情報である。
【0022】
図3は、ジョブチケット122の一例を示す図である。
ジョブチケット122は、ジョブチケットの発行元を示す発行元ID、ジョブの識別情報であるジョブID、ジョブチケット122が印刷制御の対象とする原稿データ121の識別情報である原稿ID、原稿データ121の印刷部数、印刷する用紙のサイズを指定する用紙サイズ、原稿データ121を印刷する際の印刷倍率、ステープラやパンチなどによる処理など仕上げ方法を示す仕上げの各項目を含む。なお、ジョブIDは、ジョブの識別の他、ジョブチケットを識別するためのIDも兼ねている。図3では、ジョブチケット122は、具体的には、発行元IDがPC2を示す0001であり、ジョブIDが0001であり、原稿IDが0001であり、印刷部数が100部であり、用紙サイズはA4であり、印刷倍率は1倍であり、仕上げはステープル処理することを示している。ジョブチケット122には、上記項目の他、図3には示していないが、両面印刷するか片面印刷するかの別、2イン1印刷、4イン1印刷を行うかなどの他、印刷に関連する情報を含めることとしてもよい。
【0023】
ジョブチケット121は、顧客が操作部12を用いて、ジョブチケット122の各項目について値を入力し、その入力された値を用いて制御部15が生成するものとする。ここで、顧客は、項目の全てについて値を入力する必要はなく、例えば、この識別情報、片面印刷、A4用紙、1倍、1部など各パラメータの初期値は予め決められており、或いは、前回ジョブチケットの生成の際に用いたもの等を制御部15が保持しており、変更の必要があるもののみ顧客が入力するものとしてもよい。また、他装置において作成されたジョブチケットを用いるなど他の方法で取得することとしてもよい。
【0024】
制御部15は、顧客が操作部12を介して入力する印刷に関する指示等に基づき、MFP6に印刷を要求するための印刷要求データを作成する。印刷要求データには、印刷を実行するMFPの識別情報MFP−ID(本実施形態ではMFP6の識別情報)と、暗号化された原稿データ及び暗号化されたジョブチケットが含まれる。以下、原稿データ及びジョブチケットを合わせて印刷データという場合もある。制御部15は、原稿データとジョブチケットとの暗号化要求を暗号処理部16に出力する。暗号化要求には、原稿データ121の識別情報である原稿IDと、ジョブチケット122を識別するジョブIDとが含まれているものとする。制御部15は、暗号処理部16から、暗号化要求への応答として、暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを受け取る。ここで、暗号処理部16による暗号化は、原稿データ、ジョブチケットそれぞれ別個に行ってもよいし、原稿データ、ジョブチケット合わせて一括暗号化してもよい。制御部15は、この暗号化された原稿データと、暗号化されたジョブチケットとに、印刷を実行するMFPの識別情報を加えて印刷要求データを生成する。ここで、制御部15は、予め、MFP6の識別情報を記憶しているものとする。そして、制御部15は、印刷要求データを通信部15に対し出力して、PC5へと送信させる。
【0025】
制御部15は、また、通信部13を介して、MFP6から後述する暗号化された印刷ログを受け取る。この場合、制御部15は、暗号処理部16に対し、MFP6から取得した暗号化された印刷ログの復号を指示する。なお、印刷ログの暗号化は、MFP6において、後述するPC2の公開鍵である顧客公開鍵102を用いて行われており、PC2の私有鍵である顧客私有鍵101を用いて復号される。
【0026】
制御部15は、暗号化された印刷ログが暗号処理部16により復号された場合、復号された印刷ログを表示するよう表示部11に指示する。表示部11は、具備するディスプレイデバイスに印刷ログを表示する。
鍵保持部17は、予めMFP6について公開鍵暗号方式に基づき生成された一組の公開鍵と私有鍵であるMFP私有鍵111とMFP公開鍵112のうち、MFP公開鍵112を記憶している。また、鍵保持部17は、予めPC2について公開鍵暗号方式に基づき生成された一組の公開鍵と私有鍵である顧客私有鍵101と顧客公開鍵102のうち、顧客私有鍵101を記憶している。MFP公開鍵112を用いて暗号化されたデータは、MFP私有鍵111を用いてのみ復号できるものとする。また、顧客公開鍵102を用いて暗号化されたデータは、顧客私有鍵101を用いてのみ復号できるものとする。なお、本実施形態では、公開鍵暗号方式を用いることとしたがこれに限らず、共通鍵暗号方式など他の暗号方式を用いることとしてもよい。また、原稿データ、ジョブチケットの改竄検出を行うために、原稿データ、ジョブチケットからデジタル署名を生成して付加するものとしてもよい。この場合、MFP6は、原稿データ、ジョブチケットとともにデジタル署名を受け取って原稿データ、ジョブチケットに改竄が無いことを確認することとなる。
【0027】
暗号処理部16は、制御部15から、暗号化要求を受け取ると、暗号化要求に含まれる原稿ID、ジョブIDにより識別できる原稿データ121と、ジョブチケット122とを読み出して、MFP6の公開鍵を用いて暗号化して制御部15に出力する。
なお、この暗号化は、原稿データとジョブチケットとを合わせて行ってもよいし、原稿データとジョブチケットとを別個にそれぞれ暗号化することとしてもよい。
【0028】
また、暗号処理部16は、制御部15により、MFP6から受け取る暗号化された印刷ログ125の復号を指示された場合、暗号化された印刷ログ125を顧客私有鍵101を用いて復号し制御部15に通知する。
(PC5)
PC5は、印刷業者が使用するパーソナルコンピュータであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、PC5は、その機能を達成する。
【0029】
図4は、PC5の機能的な構成を示すブロック図である。
PC5は、表示部21、操作部22、制御部23及び通信部24を含んで構成される。
表示部21は、GUI等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部を含んで構成される。
操作部22は、印刷業者がPC5に対する指示を入力するためのキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。
【0030】
通信部24は、他の装置と通信を行う。例えば、通信部24は、PC2から印刷要求データを受け取り、受け取った印刷要求データを制御部23に出力する。
制御部23は、PC5の動作を全体制御する。制御部23は、通信部24から印刷要求データを受け取った場合、印刷要求データのうちの暗号化された印刷データと暗号化されたジョブチケットとから成る印刷データを、印刷要求データに含まれる識別情報が示すMFP(ここでは、MFP6)に対し送信する。なお、PC5は、暗号化された原稿データ、ジョブチケットの内容を復号できない。よって、PC5を利用する印刷業者は、PC5を用いて原稿データ、ジョブチケットの内容を改竄等はできない。
(MFP6)
MFP6は、印刷業者が所有し使用するMFPであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーパッド、プリンタユニット、FAXユニットなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、MFP6はその機能を達成する。
【0031】
図5は、MFP6の機能的な構成を示すブロック図である。
MFP6は、表示部31、操作部32、通信部33、印刷部34、ログ生成部35、記憶部36、鍵保持部37、暗号処理部38及び制御部39を含んで構成される。
表示部31は、GUI等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部を含んで構成される。
【0032】
操作部32は、印刷業者がMFP6に対する指示を入力するためのキーパッド、タッチパネル等の入力デバイスである。
通信部33は、他の装置と通信を行う。例えば、通信部33は、PC5から暗号化された印刷データ、暗号化されたジョブチケットを受け取り、制御部39に出力する。また、PC2に対し、暗号化された印刷ログを送信する。
【0033】
印刷部34は、制御部39により行われるジョブチケットの内容等に基づく印刷制御に従い、印刷を実行するプリンタである。印刷部34は、図示しないが、画像プロセス部、給紙部、定着部等を備え、画像プロセス部は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部、光学部、中間転写ベルトなどを備えている。また、印刷部34は、印刷中に生じ得る紙詰まり、トナー切れなどによるジャム発生の検出機構を備えており、ジャムの発生を制御部39に通知する。また、ジャム発生枚数についても制御部39に通知する。
【0034】
記憶部36は、原稿データ121、ジョブチケット122及び印刷ログ125などを暗号化するなどしてセキュアに記憶している。ここで、記憶部36によるセキュアなデータの記憶は、記憶部36がデータの暗号化、復号機能を有し、その機能によりデータを暗号、復号することとしてもよいし、記憶部36に耐タンパ性を持たせることで実現してもよい。
【0035】
また、原稿データ121、ジョブチケット122は、通信部33がPC5から受け取った暗号化されている原稿データ121及びジョブチケット122が、暗号処理部37により復号されて記憶されたものであり、PC2が保持している原稿データ121及びジョブチケット122と内容的に同じものである。
印刷ログ125は、印刷部34により行われる原稿データ121の印刷の結果に関するログである。
【0036】
印刷ログ125には、ジョブチケット122により指定された印刷部数の印刷である本印刷を行った部数の他、本印刷の部数を超えて増刷した場合の増刷要因毎の増刷数も記録される。本実施形態では、増刷要因として、後述の確認印刷、不具合印刷、ジャムの発生を例として説明している。
図6は、印刷ログ125の一例を示す図である。
【0037】
印刷ログ125は、一例として、原稿ID、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数、ジャム部数、合計部数及びコメントの各項目を含む。
原稿IDは、ログの対象である原稿を識別する識別情報である。本実施形態では、原稿IDとして、原稿データ121を特定する値0001が設定されている。
印刷成功部数は、原稿IDで示される原稿について、印刷部34による印刷が成功した部数を示す。
【0038】
確認印刷部数は、原稿IDで示される原稿について、ジョブチケットにより指定された印刷部数を実際に印刷するのに先立ち、色目の確認などのために行われる場合がある確認印刷(いわゆる試し刷り)を行った部数を示す。
不具合印刷部数は、印刷部34による原稿データ121の印刷結果について印刷不良があることが、印刷業者の目視等で明らかになった場合に、これを補填するためなどに増刷した部数を示す。
【0039】
ジャム部数は、印刷部34による原稿データ121の印刷の際、紙詰まり、トナー切れなどによるジャムが発生した場合にそのジャムが発生した部数を示す。なお、本実施形態では、印刷途中にジャムが発生した場合には、ジャムが発生した頁から継続して印刷するのではなく、その部について1頁目から印刷し直すことを前提としている。
合計部数は、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数及びジャム部数の合計の部数を示す。
【0040】
コメントには、例えば印刷業者が操作部32を用いて入力する文字などが記載される。一例として、コメントに「不具合印刷は赤色の色再現性が悪かったものです」との記載をする。
これにより、印刷ログを顧客が受け取った場合に、顧客は不具合印刷の理由その他の増刷の理由などを知ることができる。これらのコメントは、例えば、原稿データ121の増刷の正当性を顧客が判断する場合の助けになる。
【0041】
ログ生成部35は、印刷ログ125を生成して記憶部36に記録し、また、印刷ログ125の内容を更新する。
ログ生成部35は、制御部39から、原稿データ121の印刷に成功した部数の通知を受けた場合には、通知された部数を印刷ログ125の印刷成功部数として記録する。
また、ログ生成部35は、制御部39から増刷要因と増刷数との通知を受けた場合には、印刷ログ125に、増刷要因毎の増刷数を記録する。
【0042】
ここで、ログ生成部35は、印刷ログ125中の印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数、ジャム部数を更新等した場合には、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数及びジャム部数を合計し合計部数として印刷ログ125に記録する。
また、ログ生成部35は、印刷業者がコメントとして操作部32を用いて入力する文字などを取得し、印刷ログ125のコメントとして記録する。
【0043】
鍵保持部37は、予めMFP6について生成された一組の公開鍵と私有鍵である、MFP私有鍵111とMFP公開鍵112のうち、MFP私有鍵111を記憶している。また、鍵保持部37は、予めPC2について生成された一組の公開鍵と私有鍵である顧客私有鍵101と顧客公開鍵102のうちの顧客公開鍵102を記憶している。
暗号処理部38は、制御部39から暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122との復号を指示されると、暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とをMFP私有鍵111を用いて復号し、復号後の原稿データ121とジョブチケット122とを記憶部36に記憶し、制御部39に復号完了を通知する。
【0044】
また、暗号処理部38は、制御部39から印刷ログ125を暗号化するよう指示された場合に、印刷ログ125を顧客公開鍵102を用いて暗号化する。
暗号化された印刷ログ125は、通信部33によりPC2に対して送信される。
ここで、通信部33は、PC2の識別情報(IPアドレスなど)を予め保持しており、PC5を介さずに、ネットワークを介してPC2と直接通信する。
【0045】
なお、通信部33は、PC5を介さずにネットワークを介してPC2と直接通信するとしたが、印刷ログ125を暗号化するなどしてPC5において印刷ログ125の内容が閲覧、改竄等がされないように取り扱われる場合であれば、印刷ログ125をPC5を介してPC2に送信することとしてもよい。
ここで、PC5への印刷ログ125の送信は、FTP(File Transfer Protocol)などのファイルを転送できるプロトコルを用いてもよいし、顧客への電子メールに添付するなどの方法で送信することとしてもよい。また、PC5と、PC2との間の通信は、安全性向上のため、IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)などを用いた暗号化通信により行うこととしてもよい。
【0046】
制御部39は、MFP6の全体制御を行い、特に、表示部31、操作部32と共に、原稿データの印刷、増刷について制御する制御手段として動作する。また、確認印刷、不具合印刷、本印刷を含む印刷について制御する制御部として印刷部34、ログ生成部35と協働する。
ここで、印刷処理について、制御部39の動作を中心に図面を用いて説明する。
【0047】
図7、図8は、印刷処理を示すフローチャートである。
印刷処理は、MFP6がPC5から暗号化印刷要求データを受信することにより開始される。印刷要求データには、暗号化された原稿データ121と、ジョブチケット122が含まれている。この図7と図8の印刷処理においては、原稿データ121と、ジョブチケット122とは既に復号済みの状態であるとする。
【0048】
ここで、原稿データ121について印刷すべき部数は、ジョブチケット122の印刷部数の項に記載されている。本実施形態では、一例として印刷部数(以下、印刷部数Aともいう。)は100部であるものとする。
制御部39は、ログ生成部35に印刷ログの生成、初期化を指示する。
ログ生成部35は、印刷ログ125を生成し、初期化する(S11)。具体的には、印刷ログ125中の印刷成功部数s、確認印刷部数t、不具合印刷部数e、ジャム部数j、合計部数aの各項目を値0で初期化する。
【0049】
次に、制御部39は、表示部31に指示し、確認印刷の有無を、印刷業者に確認するためのパネルを表示させる(S12)。
図10は、S12において表示部31に表示されるパネルの一例であるパネル201を示す。
パネル201は、確認印刷ボタン202、OKボタン203を含む。印刷業者は、パネル201の表示を見て、確認印刷を行うか否かを判断し、確認印刷を行うと判断した場合、確認印刷ボタン202に触れる。また、本印刷を行う場合、OKボタン203に触れる(S13)。
【0050】
なお、本実施形態では、確認印刷は1部行うこととするが、印刷部数の入力を受け付けて、その入力された印刷部数だけ確認印刷することとしてもよい。
確認印刷ではなく、本印刷が選択された場合(S14:No)、制御部39は、ジョブチケットで指定されたA(=100)部の印刷を印刷部34に指示する。印刷部34は、sがA未満の場合(S15:No)、原稿データ121を1部印刷する(S16)。印刷部34は、印刷時にジャムが発生した場合、ジャム発生を制御部39に通知し、ジャムが発生しなかった場合、制御部39に原稿データ121の1部印刷完了を通知する。
【0051】
制御部39は、ジャムが発生しなかった場合(S31:No)、すなわち1部印刷完了の通知を印刷部34から受け取った場合、ログ生成部35にsを1カウントアップさせ(S33)、aの値(s+t+e+j)を再計算させ(S34)、S15に移行する。制御部39は、ジャム発生の通知を印刷部34から受け取った場合(S31:Yes)、ジャム発生時処理(S32)を実行する。
【0052】
図9は、ジャム発生時処理を示すフローチャートである。
制御部39は、ログ生成部35にジャム部数jを1カウントアップさせ(S71)、aの値(s+t+e+j)を再計算させる(S72)。そして、制御部39は、表示部31に指示して、印刷業者に対してジャム解消を要求する旨の表示をさせる(S73)。
そして、制御部39は、印刷業者によってジャム解消の措置がされるのを待ち(S74)、解消されればジャム発生時処理を終了する。
【0053】
ここで、図7の説明に戻る。
S13において、確認印刷が選択された場合(S14:Yes)、制御部39は、印刷部34に対し確認印刷を実行させる(S21)。
印刷部34は、印刷時にジャムが発生した場合、ジャム発生を制御部39に通知し、ジャムが発生しなかった場合、制御部39に確認印刷完了を通知する。
【0054】
制御部39は、ジャム発生の通知を印刷部34から受け取った場合(S22:Yes)、ジャム発生時処理を行い(S23)、S21に移行する。
ここで、S23のジャム発生時処理は、S32のジャム発生時処理と同じ処理であり、既に図9を用いて説明したので、再度の説明は省略する。ジャムが発生しなかった場合(S22:No)、すなわち確認印刷完了の通知を印刷部34から受け取った場合、ログ生成部35にtを1カウントアップさせ(S24)、aの値(s+t+e+j)を再計算させ(S25)、S12に移行する。
【0055】
本印刷が終了した後(S15:Yes)、制御部39は、表示部31に対し不具合印刷(印刷不具合が増刷要因である増刷)の実行有無を印刷業者に確認するパネルを表示させる(S41)。
図11は、S41で表示部31に表示するパネル211を示す図である。
印刷業者は、図11のパネル211の表示を見て、追加印刷を行うか否かを判断し、追加印刷を行うと判断した場合、Yesボタン213に触れ、追加印刷を行わないと判断した場合、Noボタン214に触れる(S42)。ここで、パネル211の追加印刷部数(以下、追加印刷部数Fという。)を示すボックス212には、初期値として1(F=1)が設定されている。印刷業者は、2部以上追加印刷が必要な場合、操作部32のキーパッド、タッチパネル等を操作することで、所望の追加印刷部数をボックス212に入力することで追加印刷部数Fを変更する。
【0056】
S42において、Yesボタンに触れられた場合(S43:Yes)、制御部39は、ログ生成部35に不具合印刷部数eにFを加算させる(S44)。
また、制御部39は、ログ生成部35に印刷成功部数sからF減算させ(S45)、aの値(s+t+e+j)を再計算させる(S46)。そして、制御部39は、表示部31に指示し、印刷パラメータの入力を促すパネルを表示する(S47)。
【0057】
不具合印刷は、MFP6においては印刷エラーは検出されなかったものの、印刷結果を印刷業者が検査し実際の印刷品質が悪いと判断した場合にこれを補填するための増刷を行うものである。この実際の印刷品質が悪い場合とは、印刷装置内外の温度変化、湿度変化、印刷用紙の状態の変換、連続印刷による印刷装置自体のコンディションの変化など印刷環境に変化が生じ、トナーこぼれ、かすれが発生した場合や、トナーのりが悪くなり印刷物において色が薄くなってしまった場合などが想定される。
【0058】
印刷業者は、印刷品質を向上させるために、操作部32を用いて、MFP6に対する印刷パラメータ(例えば、印刷濃度、カラーバランス、明度、コントラスト、再度など)の入力を行い(S48)、S15に移行する。印刷パラメータは、一例として表示部31に印刷パラメータ入力用のパネルを表示し、そのパネルを用いて印刷業者が入力するものとするが、入力方法については公知であるので詳細な説明は省略する。
【0059】
S42において、Noボタン214に触れられた場合(S43:No)、印刷が完了したものとしてジョブチケット122を無効化し(S50)、印刷処理を完了する。
2.動作
図12は、印刷システム1において、原稿データが印刷依頼装置である顧客のPC2から印刷請負装置である印刷業者のPC5にデータ入稿され、印刷業者の印刷装置であるMFP6により印刷されて、その印刷ログがMFP6からPC2に通知されるまでの動作を示す図である。
【0060】
まず、PC2において、暗号処理部16が、印刷の対象となる原稿データ121と、ジョブチケット122とをMFP公開鍵112を用いて暗号化する(S101)。
制御部15は、暗号化された原稿データ121と暗号化されたジョブチケット122とから成る印刷データに、印刷を行うMFP6を示す識別子であるMFP−IDを印刷データに付加して印刷要求データを生成する(S102)。ここで、制御部15は、印刷を行うMFPがMFP6であることを予め設定等で認識しており、MFP6のMFP−IDを予め記憶しているものとする。
【0061】
制御部15は、通信部13を介して、PC5に対し、印刷要求データを送信する(S103)。
PC5の通信部24は、印刷要求データを受け取り、受け取った旨を制御部23に通知する。
制御部23は、印刷要求データから印刷データを抽出する(S111)。そして、印刷要求データに含まれるMFP−IDにより識別されるMFP6に対し通信部24を介して印刷データを送信する(S112)。
【0062】
MFP6の通信部33は、印刷データを受信し、制御部39に対しその旨通知する。
制御部39は、印刷データに含まれる暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを復号するよう暗号処理部38に指示する。
暗号処理部38は、MFP私有鍵111を用いて暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを復号し(S121)、復号完了を制御部39に通知する。
【0063】
制御部39は、暗号処理部38から復号完了の通知を受けて、原稿データ121の印刷処理を実行する(S122)。ここで、印刷処理の実行にあたり、制御部39は、ジョブチケット122に記載されている項目を印刷パラメータとして、ジョブIDが0001であり、原稿IDが0001であり、印刷部数が100部であり、用紙サイズがA4であり、印刷倍率は1倍であり、仕上げとしてステープル処理を行うことを印刷部34に通知するものとする。印刷部34では、印刷パラメータに従い印刷を実行する。すなわち印刷部34において、原稿データ121の印刷はA4用紙に1倍の印刷倍率で100部され1部毎にステープル処理がされることとなる。
【0064】
S122の印刷処理は、図7から図9を用いて既に説明した印刷処理と同じ処理である。この印刷処理により、MFP6において、印刷ログ125が生成される。
MFP6の制御部39は、暗号処理部38に、印刷ログ125の暗号化を指示する。暗号処理部38は、印刷ログ125をジョブチケット122に含まれる発行元IDで示されるPC2の公開鍵である顧客公開鍵102を用いて暗号化し、暗号化完了を制御部39に通知する(S123)。
【0065】
制御部39は、通信部33を介して、ジョブチケット122に含まれる発行元IDで示されるPC2に対し、暗号化された印刷ログ125を送信する(S124)。
ここで、制御部39は、発行元IDと、データの送信先(例えば発行元のPCのIPアドレス、発行元の顧客のメールアドレス等)との対応を予め記憶しているものとする。すなわち、制御部39は、発行元IDがPC2を示す場合に、印刷ログ125の送信先としてPC2のIPアドレスを取得できるものとする。PC2の制御部15は、通信部13を開始、暗号化された印刷ログ125を受信する。そして、暗号処理部16に対し、暗号化された印刷ログ125の復号を指示する。
【0066】
暗号処理部16は、顧客私有鍵101を用いて、暗号化された印刷ログ125を復号し(S131)、復号が完了した旨を制御部15に通知する。
制御部15は、表示部11に対し印刷ログ125を表示するよう指示する。そして、表示部11は、印刷ログを表示部11に含まれるディスプレイデバイスに表示する(S132)。以上で、動作の説明を終える。
【0067】
以上、説明した通り、MFP6において、確認印刷(試し刷り印刷)や、不具合印刷を増刷要因とする増刷部数は、顧客がジョブチケットで指定した印刷部数とは独立して管理され、増刷要因毎の印刷部数が印刷ログに記憶される。そして、印刷ログはPC2に送信されて、PC2の表示部に表示される。よって、顧客は、本印刷以外に原稿データの増刷がされた場合にその増刷要因、増刷部数を知り、増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷は抑止されることとなる。
3.変形例
なお、本発明を上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
(1)上述の本実施形態では、印刷ログにおいて、印刷した数を頁単位ではなく部単位で計数して記録している。しかしながら、これに限るものではなく、頁単位など他の単位に基づいて計数することとしてもよい。
【0068】
例えば、ジャム発生時には、ジャムが発生した頁から印刷を継続するものとして、ジャムにより紙詰まりを生じた頁数だけ、印刷ログに記録することとしてもよい。
なお、部数単位で計数する場合、ジャムが発生した部における最初の頁からジャム発生直前の頁までについても利用されず破棄等される。一方で、頁単位で計数する場合、ジャムが発生した部における最初の頁からジャム発生直前の頁までについては利用し、ジャムが発生した頁から最終頁までについて継続して印刷することとなる。上記ジャム発生時の説明は、確認印刷、不具合印刷など他の増刷要因についても当然適用できる。
(2)上述の実施形態では、確認印刷の有無、不具合印刷の有無、不具合印刷の部数の入力など、印刷業者が何らかの入力を行う際のGUIは、MFP6の表示部31に表示されることとしていた。また、この入力は、MFP6の操作部32を用いて行っていた。しかしながら、これに限らず、MFP6が、表示すべきGUIを表す情報をPC5に通知し、その通知に基づいてPC5がGUIを表示部21に表示してもよい。この場合、PC5の表示部21に表示されるGUIに基づき、印刷業者は、PC5の操作部22を用いて確認印刷の有無、不具合印刷の有無、不具合印刷の部数について入力をする。この入力された情報は、PC5からMFP6に転送される。
(3)上述の実施形態では、MFP6は、印刷ログをPC2に送信することとしていたが、これに限らない。印刷ログに相当する情報をジョブチケットに書き込んで、PC2に送り返すこととしてもよい。
(4)上述の実施形態では、PC2と、MFP6との間のデータの暗号化通信、復号は、公開鍵暗号方式を利用した例で説明したが、PC2とMFP6との間の通信の秘匿性が確保できさえすれば、他の暗号方式、通信方式を用いてもよい。
(5)上述の実施形態は、PC5では、暗号化されたジョブチケットを復号できない構成の例で説明したが、PC5においてジョブチケットの内容が改変できない構成或いは改変を検出できる構成であれば、他の構成を採用してもよい。例えば、PC2においてジョブチケットに署名を付し、MFP6において署名を用いてジョブチケットの改変を検出することとしてもよい。PC5においてジョブチケットの改変があれば、MFP6はジョブチケットに改変があったことを署名を用いて検出し、このジョブチケットを破棄する。よって、MFP6は、ジョブチケットにおいて指定される印刷部数の改変などがされた場合に、改変された指定部数印刷してしまうのを防ぐことができる。
(6)印刷装置には、プリンター、複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機などが含まれる。
(7)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の印刷装置は、原稿をデータ入稿する印刷システムにおいて原稿を印刷する印刷装置、画像形成装置として利用するのに好適であり、出版業界などで広く利用される。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷システム
2 PC
3 ネットワーク
4 ルーティングハブ
5 PC
6 MFP
31 表示部
32 操作部
33 通信部
34 印刷部
35 制御部
36 記憶部
37 鍵保持部
38 暗号処理部
39 制御部
101 顧客私有鍵
102 顧客公開鍵
111 MFP私有鍵
112 MFP公開鍵
121 原稿データ
122 ジョブチケット
125 印刷ログ
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、入稿データの不正な増刷の抑止に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界においては、印刷依頼者である顧客が、印刷用の原稿である電子ファイル(例えばPDF(Portable Document Format)ファイルや、ワープロソフトにより生成されたドキュメントファイルなど)をネットワーク経由で印刷請負者である印刷業者に送信することでデータ入稿し、印刷業者が自己の有するMFP(Multifunction Peripheral)等で原稿を印刷するという形態が一般的になっている。しかし、この形態においては、印刷業者に悪意がある場合に、顧客が原稿の印刷部数を指定していたとしても、指定された以上の部数が不正に増刷され、増刷分が海賊版として出回ってしまうおそれがある。
【0003】
これを回避する技術として、特許文献1に、代行アカウントを用いる印刷システムが開示されている。印刷依頼者は、印刷請負者に原稿の印刷を依頼する前に、印刷を代行できる代行アカウントを印刷請負者に対し発行する。印刷請負者は、代行アカウントを用いて印刷システムにログインし原稿を印刷する。この印刷システムにおいては、原稿の印刷は、データベースに記録される代行アカウント毎の利用可能頁数情報などの制約に基づき制御される。すなわち、印刷業者は、原稿データについて利用可能頁数情報を超える部数の印刷はできないよう制限される。そして、印刷が完了した場合、その旨が印刷依頼者に送信されるので、印刷依頼者は、指定した印刷部数、原稿が印刷されたことを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−40564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術では、原稿を印刷する場合に、原稿をデータベースに予め規定された利用可能頁数だけ印刷する本印刷以外の、やむを得ず必要な増刷ができないという問題がある。このやむを得ず必要な増刷には、例えば、試し刷りのための増刷(確認印刷)や、印刷装置において印刷エラーなど不具合は検出されなかったものの、印刷物を印刷業者が検査し実際の印刷品質が悪いと判断した場合にこれを補填するための増刷などがある。ここで、実際の印刷品質が悪い場合とは、印刷装置内外の温度変化、湿度変化、印刷用紙の状態の変化、連続印刷による印刷装置自体のコンディションの変化など印刷環境に変化が生じ、トナーこぼれや、かすれが発生した場合や、色が想定より薄く又は濃くなった場合などが想定される。また、印刷実行中に紙詰まり、トナー切れなどによるジャムが発生した場合に補填するための増刷なども上述のやむを得ず必要な増刷に含まれる。
【0006】
上述の技術では、利用可能頁数を超えた印刷はできないよう制限されているため、上述のやむを得ず必要な増刷を行うことができず印刷依頼者、印刷業者にとって利便性が損なわれる。
上記の課題に鑑み、本発明は、本印刷以外の必要な印刷については許可し印刷業者にとっての利便性を確保しつつ、無制限な増刷の抑止に資することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データを、前記印刷請負装置からの印刷要求に基づき印刷する印刷装置であって、対となる暗号鍵と復号鍵のうち復号鍵を保持する鍵保持手段と、前記暗号鍵を保持する前記印刷依頼装置によって前記暗号鍵を用いて暗号化され送信された、原稿データ及び前記原稿データの印刷部数を示す印刷部数情報を、前記印刷請負装置を介して受信する受信手段と、前記暗号化された原稿データ及び印刷部数情報を前記復号鍵を用いて復号する復号手段と、前記原稿データを印刷する印刷手段と、前記原稿データについて、前記印刷部数情報により示される印刷部数だけ前記印刷手段に印刷させるとともに、所定の増刷要因毎に増刷指示を取得した場合には、前記印刷手段に前記原稿データを増刷させる制御手段と、
前記増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログを生成するログ生成手段と、原稿データの印刷が完了した時点の印刷ログを前記印刷依頼装置に送信する送信手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷装置は、上述の構成を備えることにより、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷以外に必要とされる増刷を実行でき、かつ、印刷依頼装置側で、増刷について増刷要因毎の増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷の抑止に寄与できる。
【0009】
また、前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷の事前に印刷結果を確認するための確認印刷であり、前記制御手段は、前記本印刷の前に、前記増刷指示として前記原稿データを1部増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷に先立ち、確認印刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、確認印刷による増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで確認印刷のための増刷の妥当性を判断することができる。
【0010】
また、前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷における印刷物についての印刷不良であり、前記制御手段は、前記本印刷の後に、前記増刷指示として前記本印刷において印刷不良であった部数増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、原稿データについて印刷部数情報で示される部数の印刷である本印刷以外に、印刷不良であった部数を補填するための増刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、印刷不良を補填するための不具合印刷による増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで、不具合印刷のための増刷の妥当性を判断することができる。
【0011】
また、前記所定の増刷要因は、前記印刷手段における印刷実行中のジャムの発生であり、
前記制御手段は、前記増刷指示として前記ジャムの発生した部数増刷する指示を取得することとしてもよい。
この構成によれば、印刷実行中に紙詰まり、インク切れなどによるジャムが発生し印刷が失敗した場合に、その印刷に失敗した部数を補填するための増刷を実行することができ、かつ、印刷依頼装置側で、その増刷要因、増刷部数を知ることができる。これにより、印刷依頼装置を有する顧客が、増刷の妥当性を判断することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、所定の増刷要因毎に増刷部数の入力を促す表示をする表示部と、前記増刷部数の入力を受け付ける操作部と、前記印刷手段に、入力された増刷部数前記原稿データを増刷するよう指示する制御部とを備えることとしてもよい。
この構成によれば、ユーザが増刷要因毎に増刷部数を指定することができ、その指定された増刷部数の増刷を行うことができ、かつ、印刷依頼装置側で、増刷要因、増刷要因毎の増刷部数を知ることができる。印刷依頼装置を有する顧客は、印刷ログを見ることで、増刷要因毎に増刷の妥当性を判断することができる。
【0013】
また、前記送信手段は、前記印刷ログの送信先として前記印刷依頼装置の識別情報を予め記憶しており、前記印刷ログを前記印刷請負装置を介さず前記印刷依頼装置に送信することとしてもよい。
この構成によれば、印刷ログは印刷請負装置を経由しないため、印刷請負装置において印刷ログが閲覧、改竄等されるのを防ぐことができる。印刷依頼装置を有する顧客は、より安全に印刷ログを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る顧客のPCの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るジョブチケットの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る印刷業者のPCの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る印刷業者のMFPの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る印刷ログの一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係るジャム発生時処理を示すフローチャートである。
【図10】印刷装置の表示部に表示されるパネルの一例を示す図である。
【図11】印刷装置の表示部に表示されるパネルの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る印刷システムにおいて顧客のPCが印刷依頼をしてから印刷ログを受け取るまでの全体動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
1.構成
(概要)
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム1の構成を示す図である。
本発明の一実施形態に係る印刷システム1は、印刷業者に原稿の印刷を要求する顧客のパーソナルコンピュータ(印刷依頼装置)PC2と、ネットワーク3を介してPC2に接続する、印刷を請け負う印刷業者のルーティングハブ4と、ルーティングハブ4に接続された印刷業者のパーソナルコンピュータ(印刷請負装置)PC5と、印刷業者のMFP(Multi Function Peripheral)(印刷装置)6とを含んで構成される。
【0016】
PC2は、保持している原稿データの印刷を依頼するため、原稿データとジョブチケットとをPC5に対しデータ入稿する。原稿データは、印刷対象となる画像、文書等を表すデータであり、一例として、PDFファイルや、ワープロソフトにより生成されたドキュメントファイル等が該当する。また、ジョブチケットは、詳細は後述するが、印刷部数や、印刷時のレイアウトなど原稿データをどのように印刷するかを示す制御情報である。この原稿データ、ジョブチケットは、PC2により、MFP6においてのみ復号可能に暗号化されている。
【0017】
PC5は、暗号化された原稿データとジョブチケットとをMFP6に送信して原稿データの印刷を要求する。
MFP6は、暗号化された原稿データとジョブチケットを復号し、ジョブチケットにより指定された部数、原稿データを印刷する(以下、本印刷という。)。また、MFP6は、本印刷以外に、所定の増刷要因についての原稿データの増刷要求を受け付ける。そして増刷をした場合には、増刷の部数を印刷ログとして記録し、記録した印刷ログをPC2に送信する。
【0018】
この印刷ログはPC2の表示部に表示される。よって、顧客は、本印刷以外に原稿データの増刷がされた場合にその増刷要因、増刷部数を知り、増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷の抑止に寄与することとなる。
(PC2)
PC2は、パーソナルコンピュータであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、PC2はその機能を達成する。
【0019】
図2は、PC2の機能的な構成を示すブロック図である。
PC2は、表示部11、操作部12、通信部13、記憶部14、制御部15、暗号処理部16及び鍵保持部17を含んで構成される。
表示部11は、GUI(Graphical User Interface)等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部(図示せず)を含んで構成される。
【0020】
操作部12は、顧客がPC2に対する指示を入力するために用いるキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。
通信部13は、他の装置等と通信を行う。
記憶部14は、原稿データ121、ジョブチケット122を暗号化するなどしてセキュアに記憶している。ここで、記憶部14によるセキュアなデータの記憶は、記憶部14がデータの暗号化、復号機能を有し、その機能によりデータを暗号、復号することとしてもよいし、記憶部14に耐タンパ性を持たせることで実現してもよい。
【0021】
原稿データ121は、MFP6に印刷を要求する画像、文書等を表すデータである。本実施形態では、原稿データ121は、PDFファイルであるとする。
また、ジョブチケット122は、MFP6による印刷対象とする原稿データ121に対応付けられ、原稿データ121をどのように印刷するか、どのように扱うか等を示す制御情報である。
【0022】
図3は、ジョブチケット122の一例を示す図である。
ジョブチケット122は、ジョブチケットの発行元を示す発行元ID、ジョブの識別情報であるジョブID、ジョブチケット122が印刷制御の対象とする原稿データ121の識別情報である原稿ID、原稿データ121の印刷部数、印刷する用紙のサイズを指定する用紙サイズ、原稿データ121を印刷する際の印刷倍率、ステープラやパンチなどによる処理など仕上げ方法を示す仕上げの各項目を含む。なお、ジョブIDは、ジョブの識別の他、ジョブチケットを識別するためのIDも兼ねている。図3では、ジョブチケット122は、具体的には、発行元IDがPC2を示す0001であり、ジョブIDが0001であり、原稿IDが0001であり、印刷部数が100部であり、用紙サイズはA4であり、印刷倍率は1倍であり、仕上げはステープル処理することを示している。ジョブチケット122には、上記項目の他、図3には示していないが、両面印刷するか片面印刷するかの別、2イン1印刷、4イン1印刷を行うかなどの他、印刷に関連する情報を含めることとしてもよい。
【0023】
ジョブチケット121は、顧客が操作部12を用いて、ジョブチケット122の各項目について値を入力し、その入力された値を用いて制御部15が生成するものとする。ここで、顧客は、項目の全てについて値を入力する必要はなく、例えば、この識別情報、片面印刷、A4用紙、1倍、1部など各パラメータの初期値は予め決められており、或いは、前回ジョブチケットの生成の際に用いたもの等を制御部15が保持しており、変更の必要があるもののみ顧客が入力するものとしてもよい。また、他装置において作成されたジョブチケットを用いるなど他の方法で取得することとしてもよい。
【0024】
制御部15は、顧客が操作部12を介して入力する印刷に関する指示等に基づき、MFP6に印刷を要求するための印刷要求データを作成する。印刷要求データには、印刷を実行するMFPの識別情報MFP−ID(本実施形態ではMFP6の識別情報)と、暗号化された原稿データ及び暗号化されたジョブチケットが含まれる。以下、原稿データ及びジョブチケットを合わせて印刷データという場合もある。制御部15は、原稿データとジョブチケットとの暗号化要求を暗号処理部16に出力する。暗号化要求には、原稿データ121の識別情報である原稿IDと、ジョブチケット122を識別するジョブIDとが含まれているものとする。制御部15は、暗号処理部16から、暗号化要求への応答として、暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを受け取る。ここで、暗号処理部16による暗号化は、原稿データ、ジョブチケットそれぞれ別個に行ってもよいし、原稿データ、ジョブチケット合わせて一括暗号化してもよい。制御部15は、この暗号化された原稿データと、暗号化されたジョブチケットとに、印刷を実行するMFPの識別情報を加えて印刷要求データを生成する。ここで、制御部15は、予め、MFP6の識別情報を記憶しているものとする。そして、制御部15は、印刷要求データを通信部15に対し出力して、PC5へと送信させる。
【0025】
制御部15は、また、通信部13を介して、MFP6から後述する暗号化された印刷ログを受け取る。この場合、制御部15は、暗号処理部16に対し、MFP6から取得した暗号化された印刷ログの復号を指示する。なお、印刷ログの暗号化は、MFP6において、後述するPC2の公開鍵である顧客公開鍵102を用いて行われており、PC2の私有鍵である顧客私有鍵101を用いて復号される。
【0026】
制御部15は、暗号化された印刷ログが暗号処理部16により復号された場合、復号された印刷ログを表示するよう表示部11に指示する。表示部11は、具備するディスプレイデバイスに印刷ログを表示する。
鍵保持部17は、予めMFP6について公開鍵暗号方式に基づき生成された一組の公開鍵と私有鍵であるMFP私有鍵111とMFP公開鍵112のうち、MFP公開鍵112を記憶している。また、鍵保持部17は、予めPC2について公開鍵暗号方式に基づき生成された一組の公開鍵と私有鍵である顧客私有鍵101と顧客公開鍵102のうち、顧客私有鍵101を記憶している。MFP公開鍵112を用いて暗号化されたデータは、MFP私有鍵111を用いてのみ復号できるものとする。また、顧客公開鍵102を用いて暗号化されたデータは、顧客私有鍵101を用いてのみ復号できるものとする。なお、本実施形態では、公開鍵暗号方式を用いることとしたがこれに限らず、共通鍵暗号方式など他の暗号方式を用いることとしてもよい。また、原稿データ、ジョブチケットの改竄検出を行うために、原稿データ、ジョブチケットからデジタル署名を生成して付加するものとしてもよい。この場合、MFP6は、原稿データ、ジョブチケットとともにデジタル署名を受け取って原稿データ、ジョブチケットに改竄が無いことを確認することとなる。
【0027】
暗号処理部16は、制御部15から、暗号化要求を受け取ると、暗号化要求に含まれる原稿ID、ジョブIDにより識別できる原稿データ121と、ジョブチケット122とを読み出して、MFP6の公開鍵を用いて暗号化して制御部15に出力する。
なお、この暗号化は、原稿データとジョブチケットとを合わせて行ってもよいし、原稿データとジョブチケットとを別個にそれぞれ暗号化することとしてもよい。
【0028】
また、暗号処理部16は、制御部15により、MFP6から受け取る暗号化された印刷ログ125の復号を指示された場合、暗号化された印刷ログ125を顧客私有鍵101を用いて復号し制御部15に通知する。
(PC5)
PC5は、印刷業者が使用するパーソナルコンピュータであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、PC5は、その機能を達成する。
【0029】
図4は、PC5の機能的な構成を示すブロック図である。
PC5は、表示部21、操作部22、制御部23及び通信部24を含んで構成される。
表示部21は、GUI等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部を含んで構成される。
操作部22は、印刷業者がPC5に対する指示を入力するためのキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスである。
【0030】
通信部24は、他の装置と通信を行う。例えば、通信部24は、PC2から印刷要求データを受け取り、受け取った印刷要求データを制御部23に出力する。
制御部23は、PC5の動作を全体制御する。制御部23は、通信部24から印刷要求データを受け取った場合、印刷要求データのうちの暗号化された印刷データと暗号化されたジョブチケットとから成る印刷データを、印刷要求データに含まれる識別情報が示すMFP(ここでは、MFP6)に対し送信する。なお、PC5は、暗号化された原稿データ、ジョブチケットの内容を復号できない。よって、PC5を利用する印刷業者は、PC5を用いて原稿データ、ジョブチケットの内容を改竄等はできない。
(MFP6)
MFP6は、印刷業者が所有し使用するMFPであり、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーパッド、プリンタユニット、FAXユニットなどから構成されるコンピュータシステムである。ROM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されており、RAM上に読み出されたコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、MFP6はその機能を達成する。
【0031】
図5は、MFP6の機能的な構成を示すブロック図である。
MFP6は、表示部31、操作部32、通信部33、印刷部34、ログ生成部35、記憶部36、鍵保持部37、暗号処理部38及び制御部39を含んで構成される。
表示部31は、GUI等を表示するディスプレイデバイス及びGUIの表示制御を行う表示制御部を含んで構成される。
【0032】
操作部32は、印刷業者がMFP6に対する指示を入力するためのキーパッド、タッチパネル等の入力デバイスである。
通信部33は、他の装置と通信を行う。例えば、通信部33は、PC5から暗号化された印刷データ、暗号化されたジョブチケットを受け取り、制御部39に出力する。また、PC2に対し、暗号化された印刷ログを送信する。
【0033】
印刷部34は、制御部39により行われるジョブチケットの内容等に基づく印刷制御に従い、印刷を実行するプリンタである。印刷部34は、図示しないが、画像プロセス部、給紙部、定着部等を備え、画像プロセス部は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部、光学部、中間転写ベルトなどを備えている。また、印刷部34は、印刷中に生じ得る紙詰まり、トナー切れなどによるジャム発生の検出機構を備えており、ジャムの発生を制御部39に通知する。また、ジャム発生枚数についても制御部39に通知する。
【0034】
記憶部36は、原稿データ121、ジョブチケット122及び印刷ログ125などを暗号化するなどしてセキュアに記憶している。ここで、記憶部36によるセキュアなデータの記憶は、記憶部36がデータの暗号化、復号機能を有し、その機能によりデータを暗号、復号することとしてもよいし、記憶部36に耐タンパ性を持たせることで実現してもよい。
【0035】
また、原稿データ121、ジョブチケット122は、通信部33がPC5から受け取った暗号化されている原稿データ121及びジョブチケット122が、暗号処理部37により復号されて記憶されたものであり、PC2が保持している原稿データ121及びジョブチケット122と内容的に同じものである。
印刷ログ125は、印刷部34により行われる原稿データ121の印刷の結果に関するログである。
【0036】
印刷ログ125には、ジョブチケット122により指定された印刷部数の印刷である本印刷を行った部数の他、本印刷の部数を超えて増刷した場合の増刷要因毎の増刷数も記録される。本実施形態では、増刷要因として、後述の確認印刷、不具合印刷、ジャムの発生を例として説明している。
図6は、印刷ログ125の一例を示す図である。
【0037】
印刷ログ125は、一例として、原稿ID、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数、ジャム部数、合計部数及びコメントの各項目を含む。
原稿IDは、ログの対象である原稿を識別する識別情報である。本実施形態では、原稿IDとして、原稿データ121を特定する値0001が設定されている。
印刷成功部数は、原稿IDで示される原稿について、印刷部34による印刷が成功した部数を示す。
【0038】
確認印刷部数は、原稿IDで示される原稿について、ジョブチケットにより指定された印刷部数を実際に印刷するのに先立ち、色目の確認などのために行われる場合がある確認印刷(いわゆる試し刷り)を行った部数を示す。
不具合印刷部数は、印刷部34による原稿データ121の印刷結果について印刷不良があることが、印刷業者の目視等で明らかになった場合に、これを補填するためなどに増刷した部数を示す。
【0039】
ジャム部数は、印刷部34による原稿データ121の印刷の際、紙詰まり、トナー切れなどによるジャムが発生した場合にそのジャムが発生した部数を示す。なお、本実施形態では、印刷途中にジャムが発生した場合には、ジャムが発生した頁から継続して印刷するのではなく、その部について1頁目から印刷し直すことを前提としている。
合計部数は、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数及びジャム部数の合計の部数を示す。
【0040】
コメントには、例えば印刷業者が操作部32を用いて入力する文字などが記載される。一例として、コメントに「不具合印刷は赤色の色再現性が悪かったものです」との記載をする。
これにより、印刷ログを顧客が受け取った場合に、顧客は不具合印刷の理由その他の増刷の理由などを知ることができる。これらのコメントは、例えば、原稿データ121の増刷の正当性を顧客が判断する場合の助けになる。
【0041】
ログ生成部35は、印刷ログ125を生成して記憶部36に記録し、また、印刷ログ125の内容を更新する。
ログ生成部35は、制御部39から、原稿データ121の印刷に成功した部数の通知を受けた場合には、通知された部数を印刷ログ125の印刷成功部数として記録する。
また、ログ生成部35は、制御部39から増刷要因と増刷数との通知を受けた場合には、印刷ログ125に、増刷要因毎の増刷数を記録する。
【0042】
ここで、ログ生成部35は、印刷ログ125中の印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数、ジャム部数を更新等した場合には、印刷成功部数、確認印刷部数、不具合印刷部数及びジャム部数を合計し合計部数として印刷ログ125に記録する。
また、ログ生成部35は、印刷業者がコメントとして操作部32を用いて入力する文字などを取得し、印刷ログ125のコメントとして記録する。
【0043】
鍵保持部37は、予めMFP6について生成された一組の公開鍵と私有鍵である、MFP私有鍵111とMFP公開鍵112のうち、MFP私有鍵111を記憶している。また、鍵保持部37は、予めPC2について生成された一組の公開鍵と私有鍵である顧客私有鍵101と顧客公開鍵102のうちの顧客公開鍵102を記憶している。
暗号処理部38は、制御部39から暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122との復号を指示されると、暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とをMFP私有鍵111を用いて復号し、復号後の原稿データ121とジョブチケット122とを記憶部36に記憶し、制御部39に復号完了を通知する。
【0044】
また、暗号処理部38は、制御部39から印刷ログ125を暗号化するよう指示された場合に、印刷ログ125を顧客公開鍵102を用いて暗号化する。
暗号化された印刷ログ125は、通信部33によりPC2に対して送信される。
ここで、通信部33は、PC2の識別情報(IPアドレスなど)を予め保持しており、PC5を介さずに、ネットワークを介してPC2と直接通信する。
【0045】
なお、通信部33は、PC5を介さずにネットワークを介してPC2と直接通信するとしたが、印刷ログ125を暗号化するなどしてPC5において印刷ログ125の内容が閲覧、改竄等がされないように取り扱われる場合であれば、印刷ログ125をPC5を介してPC2に送信することとしてもよい。
ここで、PC5への印刷ログ125の送信は、FTP(File Transfer Protocol)などのファイルを転送できるプロトコルを用いてもよいし、顧客への電子メールに添付するなどの方法で送信することとしてもよい。また、PC5と、PC2との間の通信は、安全性向上のため、IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)などを用いた暗号化通信により行うこととしてもよい。
【0046】
制御部39は、MFP6の全体制御を行い、特に、表示部31、操作部32と共に、原稿データの印刷、増刷について制御する制御手段として動作する。また、確認印刷、不具合印刷、本印刷を含む印刷について制御する制御部として印刷部34、ログ生成部35と協働する。
ここで、印刷処理について、制御部39の動作を中心に図面を用いて説明する。
【0047】
図7、図8は、印刷処理を示すフローチャートである。
印刷処理は、MFP6がPC5から暗号化印刷要求データを受信することにより開始される。印刷要求データには、暗号化された原稿データ121と、ジョブチケット122が含まれている。この図7と図8の印刷処理においては、原稿データ121と、ジョブチケット122とは既に復号済みの状態であるとする。
【0048】
ここで、原稿データ121について印刷すべき部数は、ジョブチケット122の印刷部数の項に記載されている。本実施形態では、一例として印刷部数(以下、印刷部数Aともいう。)は100部であるものとする。
制御部39は、ログ生成部35に印刷ログの生成、初期化を指示する。
ログ生成部35は、印刷ログ125を生成し、初期化する(S11)。具体的には、印刷ログ125中の印刷成功部数s、確認印刷部数t、不具合印刷部数e、ジャム部数j、合計部数aの各項目を値0で初期化する。
【0049】
次に、制御部39は、表示部31に指示し、確認印刷の有無を、印刷業者に確認するためのパネルを表示させる(S12)。
図10は、S12において表示部31に表示されるパネルの一例であるパネル201を示す。
パネル201は、確認印刷ボタン202、OKボタン203を含む。印刷業者は、パネル201の表示を見て、確認印刷を行うか否かを判断し、確認印刷を行うと判断した場合、確認印刷ボタン202に触れる。また、本印刷を行う場合、OKボタン203に触れる(S13)。
【0050】
なお、本実施形態では、確認印刷は1部行うこととするが、印刷部数の入力を受け付けて、その入力された印刷部数だけ確認印刷することとしてもよい。
確認印刷ではなく、本印刷が選択された場合(S14:No)、制御部39は、ジョブチケットで指定されたA(=100)部の印刷を印刷部34に指示する。印刷部34は、sがA未満の場合(S15:No)、原稿データ121を1部印刷する(S16)。印刷部34は、印刷時にジャムが発生した場合、ジャム発生を制御部39に通知し、ジャムが発生しなかった場合、制御部39に原稿データ121の1部印刷完了を通知する。
【0051】
制御部39は、ジャムが発生しなかった場合(S31:No)、すなわち1部印刷完了の通知を印刷部34から受け取った場合、ログ生成部35にsを1カウントアップさせ(S33)、aの値(s+t+e+j)を再計算させ(S34)、S15に移行する。制御部39は、ジャム発生の通知を印刷部34から受け取った場合(S31:Yes)、ジャム発生時処理(S32)を実行する。
【0052】
図9は、ジャム発生時処理を示すフローチャートである。
制御部39は、ログ生成部35にジャム部数jを1カウントアップさせ(S71)、aの値(s+t+e+j)を再計算させる(S72)。そして、制御部39は、表示部31に指示して、印刷業者に対してジャム解消を要求する旨の表示をさせる(S73)。
そして、制御部39は、印刷業者によってジャム解消の措置がされるのを待ち(S74)、解消されればジャム発生時処理を終了する。
【0053】
ここで、図7の説明に戻る。
S13において、確認印刷が選択された場合(S14:Yes)、制御部39は、印刷部34に対し確認印刷を実行させる(S21)。
印刷部34は、印刷時にジャムが発生した場合、ジャム発生を制御部39に通知し、ジャムが発生しなかった場合、制御部39に確認印刷完了を通知する。
【0054】
制御部39は、ジャム発生の通知を印刷部34から受け取った場合(S22:Yes)、ジャム発生時処理を行い(S23)、S21に移行する。
ここで、S23のジャム発生時処理は、S32のジャム発生時処理と同じ処理であり、既に図9を用いて説明したので、再度の説明は省略する。ジャムが発生しなかった場合(S22:No)、すなわち確認印刷完了の通知を印刷部34から受け取った場合、ログ生成部35にtを1カウントアップさせ(S24)、aの値(s+t+e+j)を再計算させ(S25)、S12に移行する。
【0055】
本印刷が終了した後(S15:Yes)、制御部39は、表示部31に対し不具合印刷(印刷不具合が増刷要因である増刷)の実行有無を印刷業者に確認するパネルを表示させる(S41)。
図11は、S41で表示部31に表示するパネル211を示す図である。
印刷業者は、図11のパネル211の表示を見て、追加印刷を行うか否かを判断し、追加印刷を行うと判断した場合、Yesボタン213に触れ、追加印刷を行わないと判断した場合、Noボタン214に触れる(S42)。ここで、パネル211の追加印刷部数(以下、追加印刷部数Fという。)を示すボックス212には、初期値として1(F=1)が設定されている。印刷業者は、2部以上追加印刷が必要な場合、操作部32のキーパッド、タッチパネル等を操作することで、所望の追加印刷部数をボックス212に入力することで追加印刷部数Fを変更する。
【0056】
S42において、Yesボタンに触れられた場合(S43:Yes)、制御部39は、ログ生成部35に不具合印刷部数eにFを加算させる(S44)。
また、制御部39は、ログ生成部35に印刷成功部数sからF減算させ(S45)、aの値(s+t+e+j)を再計算させる(S46)。そして、制御部39は、表示部31に指示し、印刷パラメータの入力を促すパネルを表示する(S47)。
【0057】
不具合印刷は、MFP6においては印刷エラーは検出されなかったものの、印刷結果を印刷業者が検査し実際の印刷品質が悪いと判断した場合にこれを補填するための増刷を行うものである。この実際の印刷品質が悪い場合とは、印刷装置内外の温度変化、湿度変化、印刷用紙の状態の変換、連続印刷による印刷装置自体のコンディションの変化など印刷環境に変化が生じ、トナーこぼれ、かすれが発生した場合や、トナーのりが悪くなり印刷物において色が薄くなってしまった場合などが想定される。
【0058】
印刷業者は、印刷品質を向上させるために、操作部32を用いて、MFP6に対する印刷パラメータ(例えば、印刷濃度、カラーバランス、明度、コントラスト、再度など)の入力を行い(S48)、S15に移行する。印刷パラメータは、一例として表示部31に印刷パラメータ入力用のパネルを表示し、そのパネルを用いて印刷業者が入力するものとするが、入力方法については公知であるので詳細な説明は省略する。
【0059】
S42において、Noボタン214に触れられた場合(S43:No)、印刷が完了したものとしてジョブチケット122を無効化し(S50)、印刷処理を完了する。
2.動作
図12は、印刷システム1において、原稿データが印刷依頼装置である顧客のPC2から印刷請負装置である印刷業者のPC5にデータ入稿され、印刷業者の印刷装置であるMFP6により印刷されて、その印刷ログがMFP6からPC2に通知されるまでの動作を示す図である。
【0060】
まず、PC2において、暗号処理部16が、印刷の対象となる原稿データ121と、ジョブチケット122とをMFP公開鍵112を用いて暗号化する(S101)。
制御部15は、暗号化された原稿データ121と暗号化されたジョブチケット122とから成る印刷データに、印刷を行うMFP6を示す識別子であるMFP−IDを印刷データに付加して印刷要求データを生成する(S102)。ここで、制御部15は、印刷を行うMFPがMFP6であることを予め設定等で認識しており、MFP6のMFP−IDを予め記憶しているものとする。
【0061】
制御部15は、通信部13を介して、PC5に対し、印刷要求データを送信する(S103)。
PC5の通信部24は、印刷要求データを受け取り、受け取った旨を制御部23に通知する。
制御部23は、印刷要求データから印刷データを抽出する(S111)。そして、印刷要求データに含まれるMFP−IDにより識別されるMFP6に対し通信部24を介して印刷データを送信する(S112)。
【0062】
MFP6の通信部33は、印刷データを受信し、制御部39に対しその旨通知する。
制御部39は、印刷データに含まれる暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを復号するよう暗号処理部38に指示する。
暗号処理部38は、MFP私有鍵111を用いて暗号化された原稿データ121と、暗号化されたジョブチケット122とを復号し(S121)、復号完了を制御部39に通知する。
【0063】
制御部39は、暗号処理部38から復号完了の通知を受けて、原稿データ121の印刷処理を実行する(S122)。ここで、印刷処理の実行にあたり、制御部39は、ジョブチケット122に記載されている項目を印刷パラメータとして、ジョブIDが0001であり、原稿IDが0001であり、印刷部数が100部であり、用紙サイズがA4であり、印刷倍率は1倍であり、仕上げとしてステープル処理を行うことを印刷部34に通知するものとする。印刷部34では、印刷パラメータに従い印刷を実行する。すなわち印刷部34において、原稿データ121の印刷はA4用紙に1倍の印刷倍率で100部され1部毎にステープル処理がされることとなる。
【0064】
S122の印刷処理は、図7から図9を用いて既に説明した印刷処理と同じ処理である。この印刷処理により、MFP6において、印刷ログ125が生成される。
MFP6の制御部39は、暗号処理部38に、印刷ログ125の暗号化を指示する。暗号処理部38は、印刷ログ125をジョブチケット122に含まれる発行元IDで示されるPC2の公開鍵である顧客公開鍵102を用いて暗号化し、暗号化完了を制御部39に通知する(S123)。
【0065】
制御部39は、通信部33を介して、ジョブチケット122に含まれる発行元IDで示されるPC2に対し、暗号化された印刷ログ125を送信する(S124)。
ここで、制御部39は、発行元IDと、データの送信先(例えば発行元のPCのIPアドレス、発行元の顧客のメールアドレス等)との対応を予め記憶しているものとする。すなわち、制御部39は、発行元IDがPC2を示す場合に、印刷ログ125の送信先としてPC2のIPアドレスを取得できるものとする。PC2の制御部15は、通信部13を開始、暗号化された印刷ログ125を受信する。そして、暗号処理部16に対し、暗号化された印刷ログ125の復号を指示する。
【0066】
暗号処理部16は、顧客私有鍵101を用いて、暗号化された印刷ログ125を復号し(S131)、復号が完了した旨を制御部15に通知する。
制御部15は、表示部11に対し印刷ログ125を表示するよう指示する。そして、表示部11は、印刷ログを表示部11に含まれるディスプレイデバイスに表示する(S132)。以上で、動作の説明を終える。
【0067】
以上、説明した通り、MFP6において、確認印刷(試し刷り印刷)や、不具合印刷を増刷要因とする増刷部数は、顧客がジョブチケットで指定した印刷部数とは独立して管理され、増刷要因毎の印刷部数が印刷ログに記憶される。そして、印刷ログはPC2に送信されて、PC2の表示部に表示される。よって、顧客は、本印刷以外に原稿データの増刷がされた場合にその増刷要因、増刷部数を知り、増刷の妥当性を判断することができる。顧客により増刷が不当と判断されれば、その印刷業者について取引停止等の措置が取られ得ることから、印刷業者による原稿データの不当な増刷は抑止されることとなる。
3.変形例
なお、本発明を上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
(1)上述の本実施形態では、印刷ログにおいて、印刷した数を頁単位ではなく部単位で計数して記録している。しかしながら、これに限るものではなく、頁単位など他の単位に基づいて計数することとしてもよい。
【0068】
例えば、ジャム発生時には、ジャムが発生した頁から印刷を継続するものとして、ジャムにより紙詰まりを生じた頁数だけ、印刷ログに記録することとしてもよい。
なお、部数単位で計数する場合、ジャムが発生した部における最初の頁からジャム発生直前の頁までについても利用されず破棄等される。一方で、頁単位で計数する場合、ジャムが発生した部における最初の頁からジャム発生直前の頁までについては利用し、ジャムが発生した頁から最終頁までについて継続して印刷することとなる。上記ジャム発生時の説明は、確認印刷、不具合印刷など他の増刷要因についても当然適用できる。
(2)上述の実施形態では、確認印刷の有無、不具合印刷の有無、不具合印刷の部数の入力など、印刷業者が何らかの入力を行う際のGUIは、MFP6の表示部31に表示されることとしていた。また、この入力は、MFP6の操作部32を用いて行っていた。しかしながら、これに限らず、MFP6が、表示すべきGUIを表す情報をPC5に通知し、その通知に基づいてPC5がGUIを表示部21に表示してもよい。この場合、PC5の表示部21に表示されるGUIに基づき、印刷業者は、PC5の操作部22を用いて確認印刷の有無、不具合印刷の有無、不具合印刷の部数について入力をする。この入力された情報は、PC5からMFP6に転送される。
(3)上述の実施形態では、MFP6は、印刷ログをPC2に送信することとしていたが、これに限らない。印刷ログに相当する情報をジョブチケットに書き込んで、PC2に送り返すこととしてもよい。
(4)上述の実施形態では、PC2と、MFP6との間のデータの暗号化通信、復号は、公開鍵暗号方式を利用した例で説明したが、PC2とMFP6との間の通信の秘匿性が確保できさえすれば、他の暗号方式、通信方式を用いてもよい。
(5)上述の実施形態は、PC5では、暗号化されたジョブチケットを復号できない構成の例で説明したが、PC5においてジョブチケットの内容が改変できない構成或いは改変を検出できる構成であれば、他の構成を採用してもよい。例えば、PC2においてジョブチケットに署名を付し、MFP6において署名を用いてジョブチケットの改変を検出することとしてもよい。PC5においてジョブチケットの改変があれば、MFP6はジョブチケットに改変があったことを署名を用いて検出し、このジョブチケットを破棄する。よって、MFP6は、ジョブチケットにおいて指定される印刷部数の改変などがされた場合に、改変された指定部数印刷してしまうのを防ぐことができる。
(6)印刷装置には、プリンター、複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機などが含まれる。
(7)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の印刷装置は、原稿をデータ入稿する印刷システムにおいて原稿を印刷する印刷装置、画像形成装置として利用するのに好適であり、出版業界などで広く利用される。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷システム
2 PC
3 ネットワーク
4 ルーティングハブ
5 PC
6 MFP
31 表示部
32 操作部
33 通信部
34 印刷部
35 制御部
36 記憶部
37 鍵保持部
38 暗号処理部
39 制御部
101 顧客私有鍵
102 顧客公開鍵
111 MFP私有鍵
112 MFP公開鍵
121 原稿データ
122 ジョブチケット
125 印刷ログ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データを、前記印刷請負装置からの印刷要求に基づき印刷する印刷装置であって、
対となる暗号鍵と復号鍵のうち復号鍵を保持する鍵保持手段と、
前記暗号鍵を保持する前記印刷依頼装置によって前記暗号鍵を用いて暗号化され送信された、原稿データ及び前記原稿データの印刷部数を示す印刷部数情報を、前記印刷請負装置を介して受信する受信手段と、
前記暗号化された原稿データ及び印刷部数情報を前記復号鍵を用いて復号する復号手段と、
前記原稿データを印刷する印刷手段と、
前記原稿データについて、前記印刷部数情報により示される印刷部数だけ前記印刷手段に印刷させるとともに、所定の増刷要因毎に増刷指示を取得した場合には、前記印刷手段に前記原稿データを増刷させる制御手段と、
前記増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログを生成するログ生成手段と、
原稿データの印刷が完了した時点の印刷ログを前記印刷依頼装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴する印刷装置。
【請求項2】
前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷の事前に印刷結果を確認するための確認印刷であり、
前記制御手段は、前記本印刷の前に、前記増刷指示として前記原稿データを1部増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷における印刷物についての印刷不良であり、
前記制御手段は、前記本印刷の後に、前記増刷指示として前記本印刷において印刷不良であった部数増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記所定の増刷要因は、前記印刷手段における印刷実行中のジャムの発生であり、
前記制御手段は、前記増刷指示として前記ジャムの発生した部数増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
所定の増刷要因毎に増刷部数の入力を促す表示をする表示部と、
前記増刷部数の入力を受け付ける操作部と、
前記印刷手段に、入力された増刷部数前記原稿データを増刷するよう指示する制御部と
を含むことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項6】
前記送信手段は、前記印刷ログの送信先として前記印刷依頼装置の識別情報を予め記憶しており、前記印刷ログを前記印刷請負装置を介さず前記印刷依頼装置に送信する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項1】
印刷依頼装置から印刷請負装置にデータ入稿される原稿データを、前記印刷請負装置からの印刷要求に基づき印刷する印刷装置であって、
対となる暗号鍵と復号鍵のうち復号鍵を保持する鍵保持手段と、
前記暗号鍵を保持する前記印刷依頼装置によって前記暗号鍵を用いて暗号化され送信された、原稿データ及び前記原稿データの印刷部数を示す印刷部数情報を、前記印刷請負装置を介して受信する受信手段と、
前記暗号化された原稿データ及び印刷部数情報を前記復号鍵を用いて復号する復号手段と、
前記原稿データを印刷する印刷手段と、
前記原稿データについて、前記印刷部数情報により示される印刷部数だけ前記印刷手段に印刷させるとともに、所定の増刷要因毎に増刷指示を取得した場合には、前記印刷手段に前記原稿データを増刷させる制御手段と、
前記増刷要因毎の増刷部数を記録した印刷ログを生成するログ生成手段と、
原稿データの印刷が完了した時点の印刷ログを前記印刷依頼装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴する印刷装置。
【請求項2】
前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷の事前に印刷結果を確認するための確認印刷であり、
前記制御手段は、前記本印刷の前に、前記増刷指示として前記原稿データを1部増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の増刷要因は、前記原稿データを前記印刷部数印刷する本印刷における印刷物についての印刷不良であり、
前記制御手段は、前記本印刷の後に、前記増刷指示として前記本印刷において印刷不良であった部数増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記所定の増刷要因は、前記印刷手段における印刷実行中のジャムの発生であり、
前記制御手段は、前記増刷指示として前記ジャムの発生した部数増刷する指示を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
所定の増刷要因毎に増刷部数の入力を促す表示をする表示部と、
前記増刷部数の入力を受け付ける操作部と、
前記印刷手段に、入力された増刷部数前記原稿データを増刷するよう指示する制御部と
を含むことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項6】
前記送信手段は、前記印刷ログの送信先として前記印刷依頼装置の識別情報を予め記憶しており、前記印刷ログを前記印刷請負装置を介さず前記印刷依頼装置に送信する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−111102(P2012−111102A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261115(P2010−261115)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]