説明

印刷装置

【課題】印刷ヘッドの温度上昇を有効に抑制する。
【解決手段】印刷装置は、複数のノズルが形成されたノズルプレートと複数のノズルからインクを吐出するための機構を内部に収容する樹脂製のケース部とを有する印刷ヘッドと、印刷ヘッドとの位置関係が特定の関係にあるときに印刷ヘッドの複数のノズルを覆うキャップ機構と、を備える。キャップ機構は、上記特定の関係にあるとき、印刷ヘッドのノズルプレートの表面における少なくとも1つのノズルの位置を含む領域に接触する表面側部材と、表面側部材を支持するベース部材であって、熱伝導率の値がケース部より大きい純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されていたベース部材と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、インクを吐出して印刷媒体上に文字や図形、画像を記録する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷ヘッドに形成された複数のノズルからインクを吐出して印刷媒体上に文字や図形、画像を記録するインクジェットプリンターが広く普及している。このようなインクジェットプリンターでは、印刷ヘッドの各ノズルに対応して設けられたノズルアクチュエーター(ピエゾ素子やヒーター等)が駆動回路によって駆動されることにより、所定のタイミングで所定量のインクがノズルから吐出される(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30245号公報
【特許文献2】特開平10−250090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンターによる印刷動作時には、ノズルアクチュエーターや駆動回路等からの発熱によって印刷ヘッドの温度が上昇する。印刷ヘッドの温度が過度に上昇すると、ノズルアクチュエーターや駆動回路等に不具合が発生したり、ノズルアクチュエーターを駆動するための駆動波形が不正確となって適切な量のインクが吐出されなかったりするおそれがある。そのため、印刷ヘッドの過度の温度上昇を防止するために、一定時間あるいは一定量の印刷動作後に、印刷動作を休止したり印刷速度を低下させたりする対応が必要となる場合があり、利便性の低下を招いている。特に、印刷速度や印刷解像度が向上すると共に印刷ヘッドの小型化・高密度化が進んだ近年では、印刷ヘッドの温度上昇抑制は大きな課題となっている。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、印刷ヘッドの温度上昇を有効に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷装置であって、
複数のノズルが形成されたノズルプレートと、前記複数のノズルからインクを吐出するための機構を内部に収容する樹脂製のケース部と、を有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドとの位置関係が特定の関係にあるときに、前記印刷ヘッドの前記複数のノズルを覆うキャップ機構と、を備え、
前記キャップ機構は、
前記特定の関係にあるとき、前記印刷ヘッドの前記ノズルプレートの表面における少なくとも1つの前記ノズルの位置を含む領域に接触する表面側部材と、
前記表面側部材を支持するベース部材であって、熱伝導率の値が前記ケース部より大きい純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されていたベース部材と、を有する、印刷装置。
【0008】
この印刷装置では、印刷ヘッドにおいて発生した熱が、ノズルプレートとキャップ機構の表面側部材との接触面を介して表面側部材に伝わり、さらに表面側部材からベース部材に伝わり、比較的熱伝導率の大きいベース部材において速やかに放熱・排熱される。従って、この印刷装置では、印刷ヘッドの温度上昇を有効に抑制することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置であって、
前記表面側部材は、インクを吸収する材料により形成されており、
前記印刷装置は、さらに、
前記印刷ヘッドと前記キャップ機構との位置関係が前記特定の関係になる前に、前記印刷ヘッドに前記表面側部材に向けたインク吐出を行わせる制御部を備える、印刷装置。
【0010】
この印刷装置では、表面側部材に向けて吐出されたインクによって表面側部材が湿潤状態となるため、表面側部材の熱伝導率が乾燥状態と比較して大きくなり、表面側部材における放熱が促され、印刷ヘッドの温度上昇をさらに有効に抑制することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷ヘッドの温度上昇を抑制する方法および装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例におけるプリンター20の概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ヘッド50の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】キャップ機構90の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】キャップ動作完了時のキャップ機構90と印刷ヘッド50との関係を示す説明図である。
【図5】第2実施例におけるキャップ機構90aの構成を概略的に示す説明図である。
【図6】第2実施例におけるキャップ動作完了時のキャップ機構90aと印刷ヘッド50との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0014】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例におけるプリンター(印刷装置)20の概略構成を示す説明図である。本実施例のプリンター20は、インクを吐出することによって印刷媒体としての用紙P上にインクドットを形成し、これにより、図示しないホストコンピューターから供給された印刷データに応じた文字、図形、画像等を記録するインクジェットプリンターである。
【0015】
プリンター20は、印刷ヘッド50を搭載するキャリッジ40と、キャリッジ40をプラテン75の軸に平行な方向に沿って往復移動させる主走査を行う移動機構と、用紙Pを主走査方向と交差する方向(副走査方向)に搬送する副走査を行う搬送機構と、プリンター20の各部を制御する制御ユニット30と、を備えている。すなわち、本実施例のプリンター20は、いわゆるシリアル式のインクジェットプリンターである。なお、キャリッジ40は、図示しないフレキシブルケーブル(FFC)を介して制御ユニット30と接続されている。
【0016】
用紙Pを搬送する搬送機構は、紙送りモーター74を有している。紙送りモーター74の回転は、ギヤトレイン(不図示)を介して用紙搬送ローラー(同)に伝達され、用紙搬送ローラーの回転により用紙Pは副走査方向に沿って搬送される。
【0017】
キャリッジ40を往復移動させる移動機構は、キャリッジモーター70と、プラテン75の軸と平行に架設されキャリッジ40を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモーター70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリー72と、を有している。キャリッジモーター70の回転は、駆動ベルト71を介してキャリッジ40に伝達され、これによりキャリッジ40が摺動軸73に沿って往復移動する。
【0018】
キャリッジ40には、それぞれ所定の色(例えば、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、ブラック(K))のインクが収容された複数のインクカートリッジ42が搭載されている。キャリッジ40に搭載されたインクカートリッジ42に収容されたインクは、インク流路57(図2参照)を介して印刷ヘッド50に供給される。
【0019】
図2は、印刷ヘッド50の構成を概略的に示す説明図である。印刷ヘッド50は、金属製の板状部材であるノズルプレート52と、ノズルプレート52に連続して形成された樹脂製(例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリエチレンテレフタレート(PETP)製)のケース部51と、を有している。樹脂の熱伝導率は、0.3W/(m・K)程度と比較的小さい。ノズルプレート52には、インクを吐出する複数のノズル53が形成されている(なお、図2では複数のノズル53の内の1つのみを図示している)。複数のノズル53は、インク色のそれぞれに対応する複数のノズル列を構成している。ケース部51内には、各ノズル53からインクを吐出するための機構、例えばノズルアクチュエーター(本実施例ではピエゾ素子)54やノズルアクチュエーター54を駆動する駆動回路55が収容されている。ノズルアクチュエーター54が駆動回路55により駆動されると、ノズル53に連通するキャビティー(圧力室)内の振動板が変位してキャビティー内に圧力変化を生じさせ、その圧力変化によって対応するノズル53からインクが吐出される。ノズルアクチュエーター54および駆動回路55は、金属プレート56に支持されている。
【0020】
プリンター20の制御ユニット30(図1)は、各種演算処理を実行するCPU31と、プログラムやデータを一時的に格納・展開するRAM38と、CPU31が実行するプログラム等を格納するROM37と、印刷ヘッド50を駆動するヘッド駆動回路33と、を含んでいる。CPU31は、ROM37に記憶されたプログラムをRAM38に展開して実行することにより、紙送りモーター74やキャリッジモーター70といった各部の動作を制御して、用紙Pの送り動作やキャリッジ40の往復動を実行させる。また、ヘッド駆動回路33は、印刷データに基づき印刷ヘッド50を制御して、印刷ヘッド50に形成された複数のノズル53(図2)からインクを吐出させる。これらの制御により、用紙P上の適切な位置にインクドットが形成され、用紙P上に文字や図形、画像が記録される。なお、CPU31が実現する機能の少なくとも一部は、制御ユニット30が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されてもよい。
【0021】
図1に示すように、プリンター20は、印刷ヘッド50のノズルプレート52に形成されたノズル53の乾燥を防ぐためのキャップ機構90を備えている。キャップ機構90は、用紙Pが配置されることのない位置(印刷ヘッド50による用紙Pへのインク吐出が行われない位置)に設置されている。制御ユニット30は、各印刷ジョブの間やフラッシング等のメンテナンスを行うときに、キャリッジ40をキャップ機構90の位置に移動してキャップ機構90に密着させる動作(以下、「キャップ動作」と呼ぶ)を行う。
【0022】
図3は、キャップ機構90の構成を概略的に示す説明図である。また、図4は、キャップ動作完了時のキャップ機構90と印刷ヘッド50との関係を示す説明図である。図3に示すように、キャップ機構90は、プリンター20のプラテン75またはフレームに固定されたベース部材91と、ベース部材91の印刷ヘッド50に対向する側(以下、「印刷ヘッド対向側」と呼ぶ)の表面に支持された表面側部材93およびリップ部材92と、を有している。ベース部材91は、純アルミ材料またはアルミ合金材料(例えばA2011,A2014,A2017,A2024,A2618,A3003,A4032,A5052,A5056,A5083,A6061,A6063,A7075等)により形成されている。純アルミ材料またはアルミ合金材料の熱伝導率(100ないし240W/(m・K)程度)は、上述したケース部51の材料である樹脂の熱伝導率(0.3W/(m・K)程度)と比較して大きい。表面側部材93は、平板状のインク吸収材料(例えばスポンジ)により形成されており、印刷ヘッド対向側とは反対側の表面がベース部材91の表面に接合されている。リップ部材92は、線状の弾性材料(例えばゴム)により形成されており、表面側部材93の周囲を取り囲むように配置されている。リップ部材92の先端(印刷ヘッド対向側の先端)は、表面側部材93の印刷ヘッド対向側の表面より僅かに突出している。
【0023】
図4に示すように、キャップ動作完了時には、キャップ機構90が印刷ヘッド50に形成された複数のノズル53を覆う。具体的には、キャップ機構90のリップ部材92が、印刷ヘッド50のノズルプレート52に押されて弾性変形し、ノズルプレート52の表面に密着する。これにより、ノズルプレート52とリップ部材92およびベース部材91とに囲まれた密閉空間が形成され、ノズル53の乾燥が抑制される。また、キャップ動作完了時には、表面側部材93の印刷ヘッド対向側の表面は、ノズルプレート52の表面におけるすべてのノズル53の位置を含む領域(以下、「ノズル形成領域」とも呼ぶ)に接触する。そのため、各ノズル53は、表面側部材93によって塞がれることとなり、ノズル53の乾燥が有効に抑制される。なお、図4に示すキャップ動作完了時のキャップ機構90と印刷ヘッド50との位置関係は、本発明における「特定の関係」に相当する。
【0024】
本実施例のプリンター20においては、印刷動作時に、ノズルアクチュエーター54や駆動回路55からの発熱によって印刷ヘッド50の温度が上昇する。印刷ヘッド50の温度上昇は、金属プレート56を介した放熱やインク流路57を流れるインクを介した放熱によりある程度抑えられる。しかし、これらによる放熱だけでは、印刷ヘッド50の温度上昇を十分に抑制できず、印刷動作を休止したり印刷速度を低下させたりする対応が必要となる場合がある。本実施例のプリンター20では、各印刷ジョブの間やフラッシング等のメンテナンスを行うときにキャップ動作が行われる。キャップ動作完了時の状態では、リップ部材92がノズルプレート52に接触するだけではなく、表面側部材93の印刷ヘッド対向側の表面もノズルプレート52の表面におけるノズル形成領域に接触する。印刷ヘッド50において、複数のノズル53は各インク色に対応する複数のノズル列を構成しているため、ノズルプレート52の表面におけるノズル形成領域は一定以上の面積を有する。そのため、表面側部材93とノズルプレート52とは、一定以上の面積において接触することとなる。また、表面側部材93を支持するベース部材91は比較的大きな熱伝導率を有する純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されている。そのため、印刷ヘッド50において発生した熱は、ノズルプレート52と表面側部材93との比較的大きな接触面を介して表面側部材93に伝わり、さらに表面側部材93からベース部材91に伝わり、比較的熱伝導率の大きいベース部材91において速やかに放熱・排熱される。従って、本実施例のプリンター20では、印刷ヘッド50の温度上昇を有効に抑制することができる。これにより、印刷動作を休止したり印刷速度を低下させたりする対応が必要となる場合を減らす、あるいは、なくすことができ、プリンター20の利便性の低下を抑制することができる。
【0025】
なお、本実施例のプリンター20において、キャップ動作完了前に(すなわちキャップ動作開始前に、あるいは、キャップ動作中に)、表面側部材93に向けたインク吐出動作が行われるとしてもよい。このようにすれば、吐出されたインクによって表面側部材93が湿潤状態となるため、キャップ動作完了時に形成される上記密閉空間の湿度が増加し、ノズル53の乾燥がより有効に抑制される。また、表面側部材93の熱伝導率が乾燥状態と比較して大きくなるため、表面側部材93における放熱が促され、印刷ヘッド50の温度上昇をさらに有効に抑制することができる。
【0026】
B.第2実施例:
図5は、第2実施例におけるキャップ機構90aの構成を概略的に示す説明図である。また、図6は、第2実施例におけるキャップ動作完了時のキャップ機構90aと印刷ヘッド50との関係を示す説明図である。第2実施例のプリンター20は、キャップ機構90aの構成のみが上述した第1実施例のプリンター20と異なっている。
【0027】
図5に示すように、キャップ機構90aは、プリンター20のプラテン75またはフレームに固定されたベース部材91と、ベース部材91の印刷ヘッド対向側の表面に支持された表面側部材94と、を有している。ベース部材91は、第1実施例と同様に、純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されている。一方、表面側部材94は、平板状の弾性材料(例えばゴム)により形成されている。表面側部材94には、熱伝導率を向上させるために、金属フィラーが埋め込まれるとしてもよい。なお、第2実施例のキャップ機構90aは、第1実施例のようなリップ部材92を有していない。
【0028】
図6に示すように、キャップ動作完了時には、キャップ機構90aが印刷ヘッド50に形成された複数のノズル53を覆う。具体的には、キャップ機構90aの表面側部材94が、印刷ヘッド50のノズルプレート52に押されて弾性変形し、ノズルプレート52の表面に密着する。このとき、表面側部材94の印刷ヘッド対向側の表面は、ノズルプレート52の表面におけるノズル形成領域に接触する。そのため、各ノズル53は、表面側部材94によって塞がれることとなり、ノズル53の乾燥が有効に抑制される。なお、図6に示すキャップ動作完了時のキャップ機構90aと印刷ヘッド50との位置関係は、本発明における「特定の関係」に相当する。
【0029】
第2実施例のプリンター20では、キャップ動作完了時の状態において、表面側部材94の印刷ヘッド対向側の表面がノズルプレート52の表面におけるノズル形成領域に接触する。ノズルプレート52の表面におけるノズル形成領域は一定以上の面積を有するため、表面側部材94とノズルプレート52とは一定以上の面積において接触することとなる。また、表面側部材94を支持するベース部材91は比較的大きな熱伝導率を有する純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されている。そのため、印刷ヘッド50において発生した熱は、ノズルプレート52と表面側部材94との比較的大きな接触面を介して表面側部材94に伝わり、さらに表面側部材94からベース部材91に伝わり、比較的熱伝導率の大きいベース部材91において速やかに放熱・排熱される。従って、第2実施例のプリンター20では、印刷ヘッド50の温度上昇を有効に抑制することができる。
【0030】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0031】
上記実施例におけるプリンター20の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施例では、ノズルアクチュエーター54としてピエゾ素子(圧電素子)を用いているが、ピエゾ素子の代わりに、磁歪素子等の他の素子や、インク通路に配置した発熱素子(ヒーター)によりインク通路内に発生する気泡を用いてインクを吐出する機構といった他のアクチュエーターを用いるとしてもよい。また、プリンター20を構成する各部材の材料は、上記実施例において述べた機能や性能を奏する限りにおいて、他の種々の材料に変更可能である。
【0032】
また、上記実施例では、キャップ動作完了時に、表面側部材93または表面側部材94の表面が、ノズルプレート52の表面におけるすべてのノズル53の位置を含む領域(ノズル形成領域)に接触するとしているが、表面側部材93または表面側部材94とノズルプレート52との接触態様は必ずしもこれに限られない。例えば、表面側部材93または表面側部材94の表面が、ノズルプレート52の表面における一部の(少なくとも1つの)ノズル53の位置を含む領域に接触するとしてもよい。このようにしても、当該接触面を介してノズルプレート52から表面側部材93または表面側部材94への伝熱が促進されるため、印刷ヘッド50の温度上昇を抑制することができる。ただし、上記実施例のように、表面側部材93または表面側部材94の表面が、ノズルプレート52の表面におけるすべてのノズル53の位置を含む領域(ノズル形成領域)に接触するとすれば、ノズルプレート52から表面側部材93または表面側部材94への伝熱が最大限に促進されるため、印刷ヘッド50の温度上昇をきわめて良好に抑制することができる。
【0033】
また、上記実施例では、インクの収容容器としてキャリッジ40に搭載されるインクカートリッジ42を採用しているが、インク収容容器としてキャリッジ40に搭載されない容器(例えばインクタンク)を採用することもできる。また、上記実施例では、プリンター20は、複数色のインクで印刷を行うカラープリンターであるとしているが、本発明は、単色インクで印刷を行うモノクロプリンターにも適用可能である。
【0034】
また、上記実施例では、プリンター20は、ホストコンピューターから印刷データを受信して印刷処理を行うとしているが、これに代えて、プリンター20は、例えば、メモリーカードから取得した画像データや所定のインターフェイスを介してデジタルカメラから取得した画像データ、スキャナーによって取得した画像データ等に基づき印刷データを生成して印刷処理を行うものとしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、プリンター20は、用紙Pに対して印刷ヘッド50を所定の方向(主走査方向)に往復移動する動作(主走査)と、用紙Pを主走査方向と交差する搬送方向に搬送する動作(副走査)と、を繰り返しつつ印刷を行うプリンターであるとしているが、本発明は、印刷ヘッドの下面に紙幅長さに亘って並んで配設されたノズル列の下を、紙幅方向と交差する方向に用紙を搬送させつつ印刷を行ういわゆるラインプリンターにも適用することが可能である。
【0036】
また、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0037】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【符号の説明】
【0038】
20…プリンター
30…制御ユニット
31…CPU
33…ヘッド駆動回路
37…ROM
38…RAM
40…キャリッジ
42…インクカートリッジ
50…印刷ヘッド
51…ケース部
52…ノズルプレート
53…ノズル
54…ノズルアクチュエーター
55…駆動回路
56…金属プレート
57…インク流路
70…キャリッジモーター
71…駆動ベルト
72…プーリー
73…摺動軸
74…紙送りモーター
75…プラテン
90…キャップ機構
91…ベース部材
92…リップ部材
93…表面側部材
94…表面側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
複数のノズルが形成されたノズルプレートと、前記複数のノズルからインクを吐出するための機構を内部に収容する樹脂製のケース部と、を有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドとの位置関係が特定の関係にあるときに、前記印刷ヘッドの前記複数のノズルを覆うキャップ機構と、を備え、
前記キャップ機構は、
前記特定の関係にあるとき、前記印刷ヘッドの前記ノズルプレートの表面における少なくとも1つの前記ノズルの位置を含む領域に接触する表面側部材と、
前記表面側部材を支持するベース部材であって、熱伝導率の値が前記ケース部より大きい純アルミ材料またはアルミ合金材料により形成されていたベース部材と、を有する、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記表面側部材は、インクを吸収する材料により形成されており、
前記印刷装置は、さらに、
前記印刷ヘッドと前記キャップ機構との位置関係が前記特定の関係になる前に、前記印刷ヘッドに前記表面側部材に向けたインク吐出を行わせる制御部を備える、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107306(P2013−107306A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254709(P2011−254709)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】