説明

印刷装置

【課題】印刷有効期限までの期間の長い印刷ジョブが記憶部に多数記憶されると、印刷有効期限となるまでの期間が長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有されるという問題があった。そこで、印刷有効期限となるまでの期間が長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有されることを防止することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】印刷有効期限までの期間が長ければ長いほど確保容量を大きくすることにより、印刷有効期限までの期間が1日未満の新規ジョブの確保容量と、印刷有効期限までの期間が1週間以上のジョブの確保容量とには、差分を生じさせることができる。このため、印刷有効期限までの期間が長い新規ジョブにメモリ領域110が占有されることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブを印刷装置の記憶部に記憶した後、ユーザからの印刷指示を受け付けた際に、その印刷ジョブを印刷する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PCから送信された印刷ジョブをRAM等の記憶部に記憶することができる印刷装置がある。この印刷装置は、印刷有効期限を経過する前に、記憶された印刷ジョブについて印刷指示があると印刷ジョブを実行する。なお、印刷装置は、印刷有効期限を経過すると、記憶部から印刷ジョブを削除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−42817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷有効期限までの期間の長い印刷ジョブが多数、記憶部に記憶されると、印刷有効期限となるまでの期間が長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有される恐れがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、印刷有効期限となるまでの期間が長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有されることを防止することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は、印刷ジョブを記憶する記憶部と、印刷指示に応じて記憶部に記憶された印刷ジョブを印刷する印刷部と、印刷ジョブを記憶部に記憶することのできる記憶可能容量を取得する取得部と、記憶部に所定の記憶容量を確保する確保部と、印刷ジョブの印刷有効期限が長ければ長いほど、確保部が確保する所定の記憶容量が大きくなるように前記所定の記憶容量を決定する決定部と、取得部の取得した記憶可能容量が決定部によって決定された前記所定の記憶容量以下である場合、記憶部に対する印刷ジョブの記憶を禁止する禁止部とを備えることを特徴とする。
【0007】
印刷ジョブの印刷有効期限が長ければ長いほど、所定の記憶容量が大きくなるが、取得部の取得した記憶可能容量が決定部によって決定された前記所定の記憶容量以下である場合には、記憶部に記憶されない。この結果、印刷有効期限の長い印刷ジョブは、記憶部に記憶されにくくなる。上記構成によれば、印刷有効期限の長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有されることを防止することができる。
【0008】
また、記憶部に印刷ジョブを記憶することができる印刷有効期限を報知するための期限情報を発生する期限情報発生部と、印刷ジョブの印刷有効期限を変更するための期限変更指示を受け付ける第1指示受付部とを備えるようにしてもよい。
【0009】
上記構成によれば、ユーザは、印刷ジョブを記憶部に記憶させるために、記憶可能容量が決定部によって決定された前記所定の記憶容量より大きくなる印刷有効期限を期限情報に従って知ることができるようになる。また、第1指示受付部により受け付けられた期限変更指示に従って印刷有効期限の変更を指示することにより、印刷ジョブが記憶部に記憶される可能性を高くすることができる。
【0010】
また、前記記憶部に印刷ジョブを記憶することができる印刷ジョブのデータ量を報知するためのデータ量情報を発生するデータ量情報発生部と、印刷ジョブのデータ量を変更するためのデータ量変更指示を受け付ける第2指示受付部とを備えるようにしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ユーザは、印刷ジョブを記憶部に記憶させるために、記憶可能容量が決定部によって決定された前記所定の記憶容量より大きくなる印刷ジョブのデータ量をデータ量情報に従って知ることができるようになる。また、第2指示受付部により受け付けられたデータ量変更指示に従ってデータ量の変更を指示することにより、印刷ジョブが記憶部に記憶される可能性を高くすることができる。
【0012】
また、禁止部は、記憶部に記憶されている印刷ジョブのうち、同一ユーザの印刷ジョブを記憶部から消去することを条件に、印刷ジョブの記憶を禁止しないようにしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、同一ユーザの印刷ジョブのうち、記憶部に記憶させる印刷ジョブを消去すると、記憶部に記憶することを禁止された印刷ジョブを記憶部に記憶することができる可能性が高くなるので、他のユーザに与える影響を小さくすることができる。
【0014】
また、記憶部に記憶されている印刷ジョブの印刷有効期限が経過した場合に、印刷有効期限が経過した印刷ジョブを消去する消去部を備えるようにしてもよい。
【0015】
上記構成によれば、印刷有効期限が経過した印刷ジョブが記憶部から消去されるので、印刷有効期限を越えた印刷ジョブが記憶部を占有することを防止することができる。
【0016】
また、記憶部に記憶されることが禁止された印刷ジョブを外部装置に送信する送信部を備えるようにしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、記憶部に記憶されることを禁止された印刷ジョブが、外部装置に送信されることから、記憶部に記憶されることを禁止された印刷ジョブを消失するリスクを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態にかかるプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタを含む印刷システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタのジョブ受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】ジョブ受信処理における確保容量決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】ジョブ受信処理におけるジョブ変更処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】ジョブ変更処理で表示する画面の一例を示す図である。
【図7】第2の実施の形態にかかるプリンタのジョブ受信処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の印刷装置を具体化した第1の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、サーバと接続するプリンタに本発明を適用したものである。
【0020】
[プリンタの構成]
本実施の形態にかかるプリンタ100(印刷装置の一例)は、図1に示すように、CPU31と、ROM32と、RAM33と、NVRAM(Non Volatile RAM)34とを備えた制御部30を備えている。また、制御部30は、用紙に画像を印刷する画像形成部10と、動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40と、ネットワークインターフェース37と、USBインターフェース38と、無線通信インターフェース39とに、電気的に接続されている。
【0021】
ROM32は、プリンタ100を制御するための制御プログラムであるファームウェア、各種設定、及び初期値等を記憶している。RAM33およびNVRAM34は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0022】
CPU31(取得部、保持部、決定部、禁止部、消去部、送信部の一例)は、ROM32から読み出した制御プログラム、及び各種センサから送られる信号に従って各種の処理を行い、その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら、プリンタ100の各構成要素を制御する。
【0023】
ネットワークインターフェース37、USBインターフェース38および無線通信インターフェース39は、他の装置との通信を可能にするインターフェースである。プリンタ100は、これらのインターフェースを介して他の装置から送信される印刷ジョブを受信する。本実施の形態では、プリンタ100は、ネットワークインターフェース37を介して、パーソナルコンピュータ(PC)200及びサーバ300との通信が可能になっている。この他、プリンタ100は、USBインターフェース38又は無線通信インターフェース39を介して他の装置と通信してもよい。
【0024】
また、画像形成部10(本発明の印刷部の一例)は、用紙に画像を印刷することができればよく、画像形成方式については電子写真方式であってもインクジェット方式であってもよい。また、画像形成部10は、カラー印刷が可能であってもよく、モノクロ印刷専用であってもよい。
【0025】
また、操作パネル40は、ユーザ入力を受け付ける各種のボタンと、文字情報を表示する液晶画面とを有している。各種のボタンとしては、例えば、印刷の実行を指示するボタン、又は印刷動作のキャンセルを指示するキャンセルボタンがある。
【0026】
[印刷システムの構成]
続いて、プリンタ100を含む印刷システム900の構成および動作について、図2を参照しつつ説明する。なお、図2では、説明の簡略化のため、プリンタ100、PC200およびサーバ300のみで印刷システム900が構成されているが、これらの装置のみに限定するものではなく、この他の情報処理装置が接続されていてもよい。また、PC200はネットワークに複数接続され、各PC200が共通のプリンタ100に印刷ジョブを送信する構成でもよい。
【0027】
印刷システム900では、PC200がPC200の操作部230を通してユーザからの印刷指示を受け付けると、プリンタドライバ210が印刷ジョブを作成する。そして、PC200からプリンタ100に対して印刷ジョブが投入(送信)される。なお、印刷ジョブは、印刷対象となる印刷データの他、個々の印刷ジョブを識別するための情報と、印刷ジョブのデータ量と、ジョブを投入するユーザを識別する情報と、印刷有効期限とを含む。印刷有効期限は、ユーザ入力によって設定されてもよいし、プリンタドライバ210によって自動的に設定されてもよい。
【0028】
プリンタ100は、印刷ジョブを受信すると、その印刷ジョブを、印刷ジョブの保管用に設けられたメモリ領域110(本発明の記憶部の一例)に記憶する。メモリ領域110は、RAM33及びNVRAM34のいずれか一方、又はその両方によって構成される。なお、USBメモリ等の外部記憶装置がプリンタ100と接続されている場合には、メモリ領域110はその外部記憶装置に設けられたメモリ領域を含めてもよい。また、メモリ領域110に記憶される印刷データは、ビットマップイメージデータでも良いし、ビットマップイメージデータに展開する前の画像情報データ(例えばPDLデータやPDFデータ)であっても良い。本実施形態では、RAM33及びNVRAM34がメモリ領域110を構成する。
【0029】
プリンタ100は、印刷ジョブをメモリ領域110に記憶した後、その印刷ジョブの印刷指示の入力を待つ待機状態になる。すなわち、プリンタ100は、印刷ジョブを受信した段階ではその印刷ジョブの印刷を開始しない。
【0030】
また、プリンタ100は、印刷有効期限までの期間が長ければ長いほど、メモリ領域110に確保すべき空き領域の容量(以下、確保容量と称する、本発明の所定の記憶容量の一例)が大きくなるように確保容量を決定する。メモリ領域110に記憶することができる実際の空き領域の容量(本発明の記憶可能容量の一例)が、確保容量未満である場合、プリンタ100は、メモリ領域110に新規の印刷ジョブ(以後、新規ジョブと称する)を記憶することを禁止し、指定の送信先装置(例えばPC200)に退避させる。すなわち、プリンタ100は、新規ジョブを退避の印刷ジョブ(以後、退避ジョブと称する)として送信先装置に送信し、その後、送信した新規ジョブをメモリ領域110から消去する。本実施の形態では、新規ジョブを退避させて記憶する装置として、新規ジョブを送信した送信先装置が指定されるように構成されている。
【0031】
なお、メモリ領域110に新規ジョブを記憶することが禁止された場合でも、ユーザが、PC200の表示部220に表示された内容に従い、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限の少なくとも一方を変更することを指示するにより、プリンタ100は、PC200からの変更指示に従って新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限の少なくとも一方を変更し、メモリ領域110に新規ジョブを記憶させるようにすることもできる。また、PC200の表示部220に表示された内容と同様の内容が、操作パネル40に表示されてもよい。
【0032】
また、プリンタ100は、メモリ領域110に記憶されている印刷ジョブの印刷有効期限を管理し、印刷有効期限が経過してしまった印刷ジョブを、指定の送信先装置に送信する。その後、プリンタ100は、印刷有効期限が経過してしまった印刷ジョブをメモリ領域110から消去する。これにより、印刷有効期限が経過してしまった印刷ジョブがメモリ領域110を長期に占有することを回避する。
【0033】
[ジョブ受信処理]
続いて、上述した印刷システム900の制御について説明する。始めに、プリンタ100が新規ジョブを受信したときの処理であるジョブ受信処理を、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。ジョブ受信処理は、プリンタ100がPC200から新規ジョブを受信した場合にCPU31によって実行される。本実施の形態では、プリンタ100は、新規ジョブの受信が開始されたときに、その受信中の新規ジョブをメモリ領域110に逐次記憶するように構成されている。
【0034】
CPU31は、まず、受信した新規ジョブのジョブ情報及びメモリ領域110の空き領域の容量を取得する(S101)。具体的には、CPU31は、受信した新規ジョブの中からジョブ情報を抽出して取得する。また、CPU31は、RAM33最大記憶容量及びNVRAM34の最大記憶容量の合計から、印刷ジョブが記憶されている占有記憶領域の容量を差し引くことにより、新規ジョブを記憶するためのメモリ領域110の空き領域の容量を取得する。本実施の形態では、ジョブ情報には、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限が該当する。次に、CPU31は、確保容量決定処理を実行する(S102、本発明の決定部の一例)。図4は、S102の確保容量決定処理の手順を示している。
【0035】
確保容量決定処理は、新規ジョブを受信してから新規ジョブの印刷有効期限となるまでの期間に応じて、確保容量(本発明の所定の記憶容量の一例)を決定する。
【0036】
従来から、メモリ領域の空き領域の容量が所定量以下になったときに、新規ジョブをメモリ領域に記憶させない印刷装置があるが、印刷有効期限までの期間が長い新規ジョブが多くメモリ領域に記憶されることがある。例えば、印刷有効期限までの期間が1週間以上のジョブによってメモリ領域が占有されると、メモリ領域の空き領域の容量が所定量以下となった場合、印刷有効期限までの期間が1日未満の新規ジョブをメモリ領域に記憶させることができない。しかし、印刷有効期限までの期間が1日未満の新規ジョブは、1日経てばメモリ領域から消去されるから、印刷有効期限までの期間が1週間以上のジョブほど、メモリ領域を長期間占有することはない。このため、印刷有効期限までの期間が短いジョブと印刷有効期限までの期間が長いジョブとを一律に扱い、メモリ領域の空き領域の容量が所定量以下になったからといって、新規ジョブをメモリ領域に記憶させないのは適切ではない。
【0037】
この場合、印刷有効期限までの期間が長ければ長いほど確保容量を大きくすることにより、印刷有効期限までの期間が1日未満のジョブの確保容量と、印刷有効期限までの期間が1週間以上のジョブの確保容量とには、差分を生じさせることができる。このため、印刷有効期限までの期間が1週間以上のジョブがメモリ領域110に記憶されることが制限されるので、印刷有効期限までの期間が長い新規ジョブがメモリ領域110を長期間占有することを防止することができる。
【0038】
まず、確保容量決定処理において、CPU31は、新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1日未満であるか判断する(S201)。新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1日未満である場合(S201:YES)、CPU31は、確保容量を新規ジョブのデータ量と第1容量との和に決定し(S202)、確保容量決定処理を終了する。
【0039】
一方、新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1日以上である場合(S201:NO)、CPU31は、新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1週間未満であるか判断する(S203)。新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1週間未満である場合(S203:YES)、CPU31は、確保容量を新規ジョブのデータ量と第1容量より大きい第2容量との和に決定し(S204)、確保容量決定処理を終了する。
【0040】
また、新規ジョブの印刷有効期限までの期間が1週間以上である場合(S203:NO)、CPU31は、確保容量を新規ジョブのデータ量と第2容量より大きい第3容量との和に決定し(S205)、確保容量決定処理を終了する。
【0041】
なお、確保容量決定処理では、第1容量、第2容量、第3容量の順に容量が大きくなる。新規ジョブの印刷有効期限までの期間と比較される期間は、1日、1週間に限らず、1月、1年としてもよい。また、ユーザが設定できるようにしてもよい。
【0042】
図3の説明に戻り、S102の確保容量決定処理後、CPU31は、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できるか否か判断する(S103)。このS103の判断では、CPU31は、新規ジョブのデータをメモリ領域110に記憶させた場合、メモリ領域110の空き領域の容量が確保容量決定処理で決定された確保容量より大きいか否か判断する。
【0043】
新規ジョブをメモリ領域110に記憶できると判断する場合(S103:YES)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶させ(S104)、ジョブ受信処理を終了させる。
【0044】
一方、新規ジョブをメモリ領域110に記憶できないと判断する場合(S103:NO)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶できるように、ジョブを変更するジョブ変更処理を実行する(S105)。図5は、S105のジョブ変更処理の手順を示している。
【0045】
ジョブ変更処理では、CPU31は、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限の少なくとも一方を変更できるか否か判断する(S301)。新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限を変更できないと判断する場合(S301:NO)、例えば、新規ジョブの印刷有効期限までの期間を変更する候補、及び新規ジョブのデータ量を変更する候補がない場合、CPU31は、ジョブ変更処理を終了する。
【0046】
一方、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限の少なくとも一方を変更できると判断する場合(S301:YES)、CPU31は、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限の少なくとも一方を変更する候補をPC200の表示部220に表示させるための期限表示指示(期限情報の一例)を発生し、ネットワークインターフェース37を介してPC200に送信する(S302)。期限表示指示を発生するためにS302を実行するCPU31は、期限情報発生部の一例である。
【0047】
例えば、新規ジョブの印刷有効期限が2週間後であった場合、印刷有効期限を1週間後とすれば新規ジョブをメモリ領域110に記憶できるとする。このとき、図6に示す選択肢400のように、印刷有効期限の変更の候補として、1週間がPC200の表示部220に表示される。
【0048】
また、新規ジョブのデータ量が10MBであるとき、新規ジョブのデータ量を5MBに変更すれば、新規ジョブの印刷有効期限を2週間後としてメモリ領域110に記憶できるとする。このときは、CPU31は、新規ジョブのデータ量を5MBに変更を促す旨をPC200の表示部220に表示させるためのデータ量表示指示(データ量情報の一例)を発生し、ネットワークインターフェース37を介してPC200に送信する。データ量表示指示を発生するためにS302を実行するCPU31は、データ量情報発生部の一例である。
【0049】
次に、ユーザがPC200の操作部により変更指示を入力操作すると、CPU31はネットワークインターフェース37を介してPC200からの変更指示を受信して受け付け(S303)、ジョブ変更処理を終了する。具体的には、ユーザが、PC200の操作部により、表示された印刷有効期限の変更の候補からいずれかに変更することを入力操作すると、CPU31は、PC200からの期限変更指示(期限変更指示の一例)を受け付け、新規ジョブの印刷有効期限を変更してメモリ領域110に記憶する。また、ユーザが、PC200の操作部により、表示されたデータ量の変更の候補からいずれかに変更することを入力操作すると、CPU31は、PC200からのデータ量変更指示(データ量変更指示の一例)を受け付ける。CPU31は、データ量変更指示に従って、データを圧縮したり、PDF等のファイルに変換したりするなどのデータ量変更処理を行い、新規ジョブをメモリ領域110に記憶する。なお、ユーザが、PC200の操作部により新規ジョブを変更しないことを入力操作できるようにしてもよい。期限変更指示を受け付けるためにS303を実行するCPU31は、第1指示受付部の一例であり、データ量変更指示を受け付けるためにS303を実行するCPU31は、第2指示受付部の一例である。
【0050】
再び図3の説明に戻り、S105のジョブ変更処理後、CPU31は、新規ジョブに変更があったか否か判断する(S106)。新規ジョブに変更があったと判断する場合(S106:YES)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶させ(S104)、ジョブ受信処理を終了させる。
【0051】
一方、新規ジョブに変更がなかったと判断する場合(S106:NO)、例えば、印刷有効期限が変更されていないと、新規ジョブをメモリ領域110に記憶できないから、CPU31は、新規ジョブを送信先装置に送信する(S107)。そして、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110から削除して(S108)、ジョブ受信処理を終了させる。プリンタ100がPC200から新規ジョブを受信するとき、新規ジョブをメモリ領域110に全部受信しておいてもよいし、新規ジョブの一部、例えば、ジョブ情報を受信しておいてもよい。新規ジョブをメモリ領域110に全部受信したときは、新規ジョブを送信先装置に送信し、新規ジョブをメモリ領域110から削除する。
【0052】
[第1の実施の形態の効果]
第1の実施の形態では、CPU31は、確保容量決定処理を実行するので、印刷有効期限の長い印刷ジョブにより、記憶部が長期間占有されることを防止することができる。
【0053】
また、CPU31は、新規ジョブのジョブ情報であるデータ量及び印刷有効期限を変更する候補をPC200の表示部に表示させる期限表示指示を発生する(S302)。このとき、印刷有効期限の変更の候補として、1週間をPC200の表示部に表示させることにより、ユーザは、印刷ジョブを記憶部に記憶させるために、実際の空き領域の容量である記憶可能容量が確保容量より大きくなる印刷有効期限を知り、PC200から印刷有効期限の変更を指示することにより、印刷ジョブが記憶部に記憶される可能性を高くすることができる。
【0054】
また、CPU31が、新規ジョブのデータ量を5MBに変更を促す旨をPC200の表示部に表示させるデータ量表示指示を発生する(S302)。このとき、データ量の変更の候補として、5MBをPC200の表示部に表示させることにより、ユーザは、印刷ジョブを記憶部に記憶させるために、記憶可能容量が確保容量より大きくなる印刷ジョブのデータ量を知り、PC200からデータ量の変更を指示することにより、印刷ジョブが記憶部に記憶される可能性を高くすることができる。
【0055】
また、プリンタ100は、メモリ領域110に記憶されている印刷ジョブの印刷有効期限を管理し、印刷有効期限が経過してしまった印刷ジョブを、指定の送信先装置に送信し、その後、印刷有効期限が経過してしまった印刷ジョブをメモリ領域110から消去するので、印刷有効期限を越えた印刷ジョブが記憶部を占有することを防止することができる。
【0056】
また、プリンタ100は、メモリ領域110の現在の空き領域の容量が、印刷有効期限までの期間が長ければ長いほど大きくなる確保容量未満である場合、メモリ領域110に新規ジョブを記憶することを禁止し、新規ジョブを指定の送信先装置(例えばPC200)に退避させる。詳説すると、PC、又は携帯電話等の端末装置から印刷装置に印刷ジョブを送信し、印刷装置はその印刷ジョブを記憶して待機し、その後、ユーザが印刷装置に対してその印刷ジョブの印刷実行指示を行った場合に印刷を開始するリモート印刷技術がある。近年、公衆無線LANサービスの普及により、前述のようなリモート印刷技術が広く利用されている。例えば、駅、空港等の公共施設の印刷装置に印刷ジョブを事前に送信しておくことで、ユーザは現地で印刷物を手に入れることができる。しかし、PC、又は携帯電話等の端末装置から印刷装置に印刷ジョブを送信したが、その送信直後に印刷ジョブの元のデータが何らかの理由で端末装置から消失してしまったときに、メモリ領域110に記憶されることを禁止された新規ジョブが消去されてしまうと、元のデータがプリンタ100にもPC200にも存在しなくなってしまうというリスクがある。このような場合、メモリ領域110に記憶されることを禁止された新規ジョブが、送信先装置である端末装置に送信されることから、メモリ領域110に記憶されることを禁止された新規ジョブを消失するリスクを小さくすることができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について、説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態とジョブ受信処理の点で異なることから、この異なるジョブ受信処理のみについて説明する。第2の実施の形態では、受信した新規ジョブとメモリ領域110に記憶されているジョブとのユーザが同じであれば、メモリ領域110に記憶されている同一ユーザのジョブを削除すると、受信した新規ジョブをメモリ領域110に記憶することができる可能性が高くなる。
【0058】
[ジョブ受信処理]
第2の実施の形態のジョブ受信処理について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。第1の実施の形態のジョブ受信処理と同じ処理については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
新規ジョブがメモリ領域110に記憶できないと判断する場合(S103:NO)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶できるように、受信した新規ジョブとメモリ領域110に記憶されているジョブとのユーザが同じ場合に、記憶されているジョブを削除するジョブ削除処理を実行する(S401)。
【0060】
ジョブ削除処理では、CPU31は、仮にメモリ領域110に記憶されている同一ユーザのジョブを削除した場合に、メモリ領域110の空き領域の容量が、新規ジョブの印刷有効期限を基に決定された確保容量より大きくなる既存のジョブのジョブ一覧を、ジョブを投入するユーザを識別する情報に基づいて作成する。次に、CPU31は、ジョブ一覧をPC200の表示部に表示させるための表示指示をPC200に送信する。そして、同一ユーザのジョブがメモリ領域110にある場合、PC200の表示部に表示されたジョブ一覧から、ユーザがPC200の操作部230を操作してジョブを選択する。CPU31は、選択された同一ユーザのジョブを示す指示をPC200から受信し、この指示に従ってジョブを削除する。一方、同一ユーザのジョブがメモリ領域110にない場合、CPU31はジョブ削除処理を終了する。なお、ジョブ一覧には、仮に複数のジョブを削除した場合に、メモリ領域110の空き領域の容量が、複数の新規ジョブについて印刷有効期限を基に決定された確保容量より大きくなるジョブを表示させてもよい。
【0061】
そして、ジョブ削除処理後、CPU31は、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できるか否か判断する(S402)。このS402の判断は、同一ユーザのジョブを削除した結果、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できると判断する場合(S402:YES)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶させる(S104)。
【0062】
一方、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できないと判断する場合(S402:NO)、同一ユーザのジョブが削除されていなければ、メモリ領域110の空き領域の容量が確保容量より大きくならないので、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110から削除する(S108)。
【0063】
[第2の実施の形態の効果]
第2の形態では、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶できるように、受信した新規ジョブとメモリ領域110に記憶されているジョブとのユーザが同じ場合に、記憶されているジョブを削除するジョブ削除処理を実行する(S401)。これにより、同一ユーザの印刷ジョブのうち、メモリ領域110に記憶させるジョブを調整することで、例えば、他のユーザのジョブを消去して新規ジョブをメモリ領域110に記憶することができるようにすること等がないから、他のユーザに与える影響を小さくすることができる。
【0064】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、プリンタは、印刷機能を備えるものであればよく、複合機又は複写機であっても適用可能である。また、プリンタに印刷ジョブを投入する情報処理装置は、PCに限るものではなく、例えば、スマートフォン等のモバイル端末であってもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、操作パネル400の操作によって、プリンタに記憶されている印刷ジョブの印刷を開始しているが、これに限るものではない。例えば、モバイル端末からの印刷指令、又はカードリーダ等による認証に従って印刷を開始してもよい。
【0066】
また、実施の形態では、PC200からプリンタ100に直接印刷ジョブが送信されるが、これに限るものではない。例えば、PC200からサーバ300を介してプリンタ100にジョブが送信されてもよい。
【0067】
また、実施の形態では、退避ジョブがPC200に送信されるが、送信先はPC200に限るものではない。例えば、印刷ジョブの投入元である各PC以外の予め定められた外部装置に送信してもよい。また、退避ジョブを保存するための記憶装置がプリンタ及びPCなどの端末装置を管理する管理サーバなどの外部装置にある場合には、その記憶装置に送信してもよい。
【0068】
また、実施の形態のジョブ受信処理において、ジョブ情報は、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限であったが、ジョブ情報は、新規ジョブのデータ量及び新規ジョブの印刷有効期限のどちらか一方であってもよい。
【0069】
また、実施の形態のジョブ受信処理では、S105〜S107がない実施の形態であってもよい。つまり、S101〜S103の順に処理し、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できると判断する場合(S103:YES)、CPU31は、新規ジョブをメモリ領域110に記憶させ(S104)、ジョブ受信処理を終了し、新規ジョブがメモリ領域110に記憶できないと判断する場合(S103:NO)、新規ジョブをメモリ領域110から削除して(S108)、ジョブ受信処理を終了するようにしてもよい。なお、ジョブ受信処理の各処理の順序又は各処理の具体的内容を適宜変更してもよい。
【0070】
また、実施の形態では、CPU31が、新規ジョブのデータ量を5MBに変更を促す旨をPC200の表示部に表示させ、データを圧縮したり、PDF等のファイルに変換したりしている。この構成に代えて、PCなどの外部装置からプリンタに送信するデータの個数が閾値以下となるよう、ユーザにデータを選択させる旨を外部装置の画面に表示させてもよい。そして、データごとのファイルサイズを外部装置の画面に表示し、ユーザにデータの個数が閾値以下になるように選択させてもよい。
【0071】
実施の形態では、PC200の表示部220が、プリンタ100からの期限表示指示、及びデータ量表示指示に従って、印刷有効期限の変更する候補、及びデータ量の変更する候補を表示する構成であった。この構成に代えて、プリンタ100の操作パネル40の液晶画面が、印刷有効期限の変更する候補、及びデータ量の変更する候補を表示する構成であっても良い。この変形例の構成では、操作パネル40の各種ボタンにより、ユーザは、希望する変更の候補を選択することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 画像形成部
30 制御部
100 プリンタ
110 メモリ領域
200 PC
300 サーバ
900 印刷システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブを記憶する記憶部と、
印刷指示に応じて前記記憶部に記憶された印刷ジョブを印刷する印刷部と、
印刷ジョブを前記記憶部に記憶することのできる記憶可能容量を取得する取得部と、
前記記憶部に所定の記憶容量を確保する確保部と、
印刷ジョブの印刷有効期限が長ければ長いほど、前記確保部が確保する所定の記憶容量が大きくなるように前記所定の記憶容量を決定する決定部と、
前記取得部の取得した記憶可能容量が前記決定部によって決定された前記所定の記憶容量以下である場合、前記記憶部に対する印刷ジョブの記憶を禁止する禁止部とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記記憶部に印刷ジョブを記憶することができる印刷有効期限を報知するための期限情報を発生する期限情報発生部と、
印刷ジョブの印刷有効期限を変更するための期限変更指示を受け付ける第1指示受付部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記記憶部に印刷ジョブを記憶することができる印刷ジョブのデータ量を報知するためのデータ量情報を発生するデータ量情報発生部と、
印刷ジョブのデータ量を変更するためのデータ量変更指示を受け付ける第2指示受付部とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記禁止部は、前記記憶部に記憶されている印刷ジョブのうち、同一ユーザの印刷ジョブを前記記憶部から消去することを条件に、印刷ジョブの記憶を禁止しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶されている印刷ジョブの印刷有効期限が経過した場合に、印刷有効期限が経過した印刷ジョブを消去する消去部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記記憶部に記憶されることが禁止された印刷ジョブを外部装置に送信する送信部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−22857(P2013−22857A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160598(P2011−160598)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】