説明

印刷装置

【課題】固定刃部材を高い精度で位置決めして配置し、被印字媒体の円滑な切断を確実にする。
【解決手段】プリンタ1のメカユニットMUは、サーマルラインヘッド112をプラテンローラ111に向かって遠近揺動可能に収納する揺動空間SPを内側に形成するユニット筐体190と、固定刃部材160とを備え、固定刃部材160は、排出口107の縁部に沿うように立設される刃先部180と、揺動空間SPの上方において略水平方向に延設されるとともに、それぞれの端部がユニット筐体190に取り付けられる2つの取付部181と、揺動空間SPの上方において取付部181に対し刃先部180を接続するように略水平方向に延設される刃先支持部182と、揺動空間SPの上方において2つの取付部181の中間部に位置し、刃先支持部182の端部から上方又は下方に向かって設けられる補強リブ部183と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字媒体に対し所望の印字を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に収納した被印字媒体を繰り出し、所望の印字を行う印刷装置として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この印刷装置(電子レジスタ)は、装置筐体(本体ケース)と、被印字媒体(用紙)を搬送する搬送ローラと、被印字媒体に印字を行うための印刷手段と、印字後の被印字媒体を切断するための固定刃部材(切刃)と、装置筐体に設けられた排出口(発行口)と、を有している。印刷動作時には、ロールから供給される被印字媒体が搬送ローラによって搬送され、印刷手段によって印字が行われる。印字が形成された被印字媒体は、排出口から装置筐体の外部へと排出される。排出された被印字媒体は、操作者が固定刃部材を用いて切断することにより、ロール側から分離された印刷物(レシート)を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記印刷動作時において、前述のようにして搬送され印刷手段で印刷されて排出される被印字媒体の経路に対する、固定刃部材の位置決め精度が重要である。例えば固定刃部材の位置決め精度が悪く、固定刃部材の設置位置が印刷手段のヘッドや排出口に近すぎたり逆に遠すぎたりした場合、操作者による切断の際、固定刃部材の刃先部が円滑に被印字媒体に接触せず、被印字媒体をうまく切断することができない可能性がある。上記従来技術では、切れ味を損なうことなく固定刃部材の安全性を高めることには配慮されているが、上記のような固定刃部材の位置決め精度については特に配慮されていなかった。このため、位置決め精度が低い場合には、被印字媒体の円滑な切断が損なわれるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、固定刃部材を高い精度で位置決めして配置でき、被印字媒体の円滑な切断を確実に実現できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、固定部、及び、水平方向に含まれる第1方向の一方側が前記固定部に対し開閉可能に接続された開閉部、を備え、装置外郭を構成する装置筐体と、前記固定部の前記第1方向一方側に設けられて被印字媒体を巻回したロールを収納するとともに、前記開閉部によって開閉される収納部と、水平方向に含まれ前記第1方向と直交する第2方向に軸心が沿うように前記開閉部に設けられ、当該開閉部が閉じ状態のときに、前記収納部に収納された前記ロールから供給された前記被印字媒体を搬送する、搬送ローラと、前記固定部に設けられ、前記被印字媒体に印字を行うための印刷処理ユニットと、前記筐体において前記第2方向に沿うように設けられ、前記印刷処理ユニットにより印字が行われた前記被印字媒体を前記装置筐体の外部に排出する排出口と、を有する印刷装置であって、前記印刷処理ユニットは、前記搬送ローラにより搬送される前記被印字媒体に対し所望の印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドを前記搬送ローラに向かって遠近揺動可能に収納する揺動空間を内側に形成するユニット筐体と、前記ユニット筐体に対し固定され、前記排出口より排出される前記被印字媒体を切断するための固定刃部材と、を備えており、前記固定刃部材は、前記排出口の縁部に沿うように立設される刃先部と、前記揺動空間の上方の前記第2方向両側それぞれにおいて略水平方向に延設されるとともに、それぞれの前記第1方向他方側端部が前記ユニット筐体に取り付けられる、2つの取付部と、前記揺動空間の上方において、前記2つの取付部に対し前記刃先部を接続するように、当該2つの取付部の前記第1方向一方側に連続して略水平方向に延設される、刃先支持部と、前記揺動空間の上方において、前記第2方向における前記2つの取付部の中間部に位置し、前記刃先支持部の前記第1方向他方側端部から上方又は下方に向かって設けられる、補強リブ部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の印刷装置は、固定部及び開閉部を備えた装置筐体を有している。固定部の第1方向一方側(例えば装置後方)には、被印字媒体のロールを収納する収納部が設けられ、当該収納部は開閉部によって開閉可能である。固定部には、被印字媒体に印字を行うための印刷処理ユニットも設けられている。また、装置筐体には、第1方向に直交する第2方向(例えば左右方向)に沿うように、排出口が設けられている。
【0008】
印刷動作時には、開閉部の閉じ状態において、収納部のロールから供給される被印字媒体が開閉部に設けた搬送ローラによって搬送され、印刷処理ユニットの印字ヘッドによって印字が行われる。このとき、印刷処理ユニットでは、ユニット筐体の内側に揺動空間が設けられており、印字ヘッドはこの揺動空間において搬送ローラに向かって遠近揺動可能に収納されている。これにより、上記閉じ状態の開閉部に設けられた搬送ローラに対し印字ヘッドを最適な圧力で押圧しつつ、搬送ローラと印字ヘッドとの間に被印字媒体を挟み込み、円滑かつ良好な品質で印字を行うことができる。印字が形成された被印字媒体は、排出口から装置筐体の外部へと排出される。
【0009】
排出された被印字媒体は、操作者が固定刃部材を用いて切断することにより、ロール側から分離することができる。このとき、上述のようにして搬送ローラで搬送され印字ヘッドで印刷されて排出される被印字媒体の経路に対する、固定刃部材の位置決め精度が重要である。例えば固定刃部材の位置決め精度が悪く印字ヘッドに近すぎたり遠すぎた場合、操作者による切断の際、固定刃部材の刃先部が円滑に被印字媒体に接触せず、被印字媒体をうまく切断することができない。また固定刃部材が搬送ローラに近すぎた場合には搬送ローラに接触して耐久性に影響を与えるおそれもある。
【0010】
そこで、本願発明では、固定刃部材を、印字ヘッドが配置されている印刷処理ユニットに固定する。具体的には、刃先部を、刃先支持部を介して、第2方向(例えば左右方向)2箇所にそれぞれ設けた取付部に接続し、それら2つの取付部の第1方向他方側端部(例えば前端部)をユニット筐体に取り付ける。前述のように印字ヘッドは印刷処理ユニットのユニット筐体に対し揺動可能に配置されていることから、当該ユニット筐体に対し直接固定刃部材を取り付けることにより、装置筐体の固定部や開閉部に固定刃部材を取り付ける場合に比べ、印字ヘッドに対して高い精度で固定刃部材を位置決めすることができる。
【0011】
ここで、固定刃部材の刃先部は排出口の縁部に沿うように設けられるが、排出される被印字媒体に対し印字を行う印字ヘッドは、前述したようにユニット筐体の内側の揺動空間で遠近揺動を行う。したがって、この揺動を阻害しないように、本願発明では、上記揺動空間の上方において刃先支持部さらに2つの取付部を略水平方向に延設し、最終的に当該2つの取付部がユニット筐体に取り付けられる構造とする。これにより、印字ヘッドの円滑な揺動を確保することができる。
【0012】
また、上記のような略水平方向への延設構造となる固定刃部材では、刃先部が、第1方向他方側(例えば前方側)の取付部での固定によるいわゆる片持ち構造となる。このため、固定刃部材の材質によってはたわみが生じて位置決め精度を低下させる懸念が生じる。そこで本願発明では、第2方向(例えば左右方向)における上記2つの取付部の中間部において、上記刃先支持部の第1方向他方側端部(例えば前端部)から上方又は下方に向かって補強リブ部を設ける。これにより、上記のような片持ち構造における強度を補強することができるので、上記たわみが生じるのを防止し、高い位置決め精度を確保することができる。
【0013】
以上のようにして、本願発明によれば、固定刃部材を高い精度で位置決めして配置することができるので、被印字媒体の円滑な切断を確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定刃部材を高い精度で位置決めして配置し、被印字媒体の円滑な切断を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるプリンタの外観構成を表す斜視図である。
【図2】筐体のトップカバーのうち固定カバー部のみを外した状態を表す、前方側斜め上方向から見た斜視図及び平面図である。
【図3】筐体のトップカバー全体を外した状態を表す、前方側斜め上方向から見た斜視図である。
【図4】筐体のトップカバー全体を外した状態を表す、後方側斜め上方向から見た斜視図である。
【図5】筐体のトップカバー全体及びロール紙を外した状態を表す、後方側斜め上方向から見た斜視図である。
【図6】図1中F−F断面による断面図、及び、G−G断面による断面図である。
【図7】メカユニットの詳細構造を表す斜視図である。
【図8】固定刃部材の詳細構造を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<プリンタの概略構成>
図1〜図6を用いて、本発明の一実施の形態であるプリンタ(印刷装置)1の全体構成を説明する。以下では、図1中の右下方向を右方、左上方向を左方、右上方向を後方、左下方向を前方、上方向を上方、下方向を下方、と定義して説明する(各図の矢印の図示参照)。なお、この例では、上記のような定義における前後方向が各請求項記載の第1方向に相当し、左右方向が第2方向に相当し、後方が第1方向一方側に相当し、前方が第1方向他方側に相当する。
【0018】
プリンタ1は、例えばPC端末や携帯電話等の外部機器(図示せず)より受信した印刷データを、ロール紙S(被印字媒体)に印刷する。このプリンタ1は、電池(図示せず)を電源として駆動可能である。
【0019】
プリンタ1は、例えば樹脂材料で構成された、装置外郭を構成する略箱形形状の装置筐体100を備えている。この装置筐体100は、装置外郭上部を構成するトップカバー101と、装置外郭下部を構成するアンダーカバー102とを備えている。トップカバー101は、前方側に固定カバー部101A、後方側に開閉蓋101Bをそれぞれ備えている。なお、固定カバー部101Aとアンダーカバー102とが各請求項記載の固定部に相当し、開閉蓋101Bが開閉部に相当する。
【0020】
アンダーカバー102の端部には、左・右一対の挿通部102aが備えられている。これら挿通部102aに例えばストラップなどを挿通し、肩や首、さらには腰ベルトなどに架けることにより、操作者は、前述のように電池駆動であるプリンタ1を様々な場所(屋外を含む)に手軽に持ち運び、使用することができる。
【0021】
トップカバー101の開閉蓋101Bの下方(装置筐体100の内部)には、ロール収納部161(収納部)が設けられている(図2、図3、図4、図5、図6参照)。このロール収納部161には、ロール形状に巻回されたロール紙Sが両端部を支持部材162によって回転可能に軸支されて収納されており、これによってロール収納部161から連続的にロール紙Sを供給可能な構成となっている。このとき、開閉蓋101Bはヒンジ部Hを介しアンダーカバー102の後端部に対して回転可能に連結されており、これによってロール収納部161を外部に露出させる開き状態と、ロール収納部161を内部に収容する閉じ状態とに切り替えられる。開閉蓋101Bを開き状態とすることで、ロール収納部161を装置外部に露出させ、ロール紙Sの装着や交換を容易に行うことができる。
【0022】
また、トップカバー101の前後方向略中央部(この例では固定カバー部101Aと開閉蓋101Bとが付き合わされる部分)には、印字後のロール紙Sを排出するための排出口107が設けられている(図1、図6参照)。このとき、排出口107は、上下方向に沿った一方側に(この例では上方に)向かって開口するように設けられている。
【0023】
開閉蓋101Bの前方側端部には、プラテンローラ111(搬送ローラ)が回転自在に支持され、その軸心k(図6参照)が左右方向に沿うように配置されている。プラテンローラ111は、開閉蓋101Bが上記閉じ状態にあるときに、モータケーシング21内の回転子(図示せず)の回転が伝達されることにより、ロール紙Sを搬送する。
【0024】
<メカユニット及び周辺>
一方、装置筐体100の内部(詳細にはアンダーカバー102)の、前後方向中央部付近には、メインシャーシ部材150を備えたメカユニットMU(印刷処理ユニット)が設けられている。メカユニットMUの詳細構成を図7に示す。図7及び上記図2〜図6に示すように、メカユニットMUにおいて、メインシャーシ部材150の内部に、ヘッドユニットHUが前後方向に揺動自在に配置されている(揺動構造の詳細については後述する)。そして、ヘッドユニットHUには、サーマルラインヘッド112(印字ヘッド)と、このサーマルラインヘッド112での発熱を冷却するためのヒートシンク114と、が一体化されて備えられている。そして、ヒートシンク114が、前方側端部がメインシャーシ部材150に支持された複数(この例では2つ)のコイルバネ115により、上記プラテンローラ111側(すなわち後方側)へと付勢されている。これにより、開閉蓋101Bが上記閉じ状態にあるときに、サーマルラインヘッド112はプラテンローラ111に所定の圧接力で接触する。
【0025】
また、メカユニットMUには、図7に示すように、メインシャーシ部材150の左側に、プラテンローラ111を回転駆動する駆動力を発生する前述のモータの外郭となる略円筒形状のモータケーシング21と、複数のギアから構成され、開閉蓋101Bの閉じ状態においてプラテンローラ111に作動連結されることで上記モータの駆動力をプラテンローラ111に伝達するギア機構132と、が設けられている。
【0026】
モータケーシング21は、装置筐体100の内部において、上記排出口107から下側に設けられる(前述の図6(b)参照)。モータケーシング21は、左右方向を軸方向としており、駆動モータのモータ軸MAが当該モータケーシング21から左側に突出して設けられている。また、上記モータケーシング21を覆うモータカバー31が設けられている。上記駆動モータは、メカユニットMUの下方から筐体100内部の後方にかけて配置された制御基板170(図2(a)、図2(b)、図5、及び図6(a)参照)によって、その駆動が制御される。この制御基板170は、取り扱い性や組立性の便宜を図るために、この例では、水平方向に延設されている。なお、図3及び図4では、図示の煩雑を避けるために制御基板170の図示を省略している。そして、制御基板170は、上記電池から供給される電力を用いつつ、メカユニットMUのサーマルラインヘッド112及び上記駆動モータ等の制御を行う。
【0027】
<プリンタの概略動作>
上記構成において、印刷時には、PC端末や携帯電話等の外部機器より、プリンタ1に対し、無線通信(又は有線通信や赤外線通信でもよい)を介して、印刷データが送信される。また、上記駆動モータの駆動力に基づくプラテンローラ111の回転によってロール収納部161からロール紙Sが繰り出される。繰り出されたロール紙Sは、排出口107の下方に設けられたガイド部材120により、プラテンローラ111とサーマルラインヘッド112との圧接部に案内される。そして、サーマルラインヘッド112とプラテンローラ111との間に挿通されたロール紙Sに対し、サーマルラインヘッド112が上記印刷データに基づいた所望の態様の印刷を行う。印刷後のロール紙Sは、左右方向に沿って延設された排出口107から装置筐体100の外部へと排出される。このとき、メインシャーシ部材150には、排出口107の内側において当該排出口107に沿うように固定刃部材160が取り付けられている。操作者は、上記のようにして印刷が完了し排出口107から排出されたロール紙Sの端部を、この固定刃部材160を用いて手動で切断することができる。
【0028】
なお、紙詰まり等が生じた場合には、トップカバー101の上記開閉蓋101Bを開放することで、サーマルラインヘッド112からプラテンローラ111がリリースされ、容易にロール紙Sを引き出すことが可能となる。
【0029】
<本実施形態の特徴>
以上の基本構成において、本実施形態の特徴は、メカユニットMUにおける固定刃部材160の形状及び取付構造にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0030】
<メカユニットにおけるヘッドユニットの収納構造>
図7に示すように、メカユニットMUは、メインシャーシ部材150の一部を構成する矩形筒状の支持枠によって形成された、ユニット筐体190を備えている。サーマルラインヘッド112を備えたヘッドユニットHUが、上記ユニット筐体190に揺動可能に配置されている。すなわち、ユニット筐体190の内側に揺動空間SPが設けられており、ヘッドユニットHUは、この揺動空間SPにおいて、上記したメインシャーシ部材150に支持された複数(この例では2つ)のコイルバネ115を介して、プラテンローラ111に向かって遠近揺動可能に収納されている。
【0031】
これにより、上記閉じ状態の開閉蓋101Bに設けられたプラテンローラ111に対し、ヘットユニットHUのサーマルラインヘッド112を最適な圧力で押圧しつつ、プラテンローラ111とサーマルラインヘッド112との間にロール紙Sを挟み込むことができる。これにより、円滑かつ良好な品質で印字を行うことができ、印字が形成されたロール紙Sは、前述したように、排出口107から装置筐体100の外部へと排出される。排出されたロール紙Sは、操作者が固定刃部材160を用いて切断することにより、ロール側から分離することができる。固定刃部材160の詳細構造を図8に示す。
【0032】
ここで、上述のようにしてプラテンローラ111で搬送されサーマルラインヘッド112で印刷されて排出されるロール紙Sの経路に対する、固定刃部材160の位置決め精度が重要となる。例えば固定刃部材160の位置決め精度が悪くサーマルラインヘッド112に近すぎたり、遠すぎたりした場合、操作者による切断の際、固定刃部材160の刃先部180が円滑にロール紙Sに接触せず、ロール紙Sをうまく切断することができない。また、固定刃部材160がプラテンローラ111に近すぎた場合には、固定刃部材160自体がプラテンローラ111に接触して耐久性に影響を与えるおそれもある。
【0033】
<固定刃部材の具体的構成>
そこで、本実施形態では、図8、図2、図5、及び図7等に示すように、固定刃部材160がメカユニットMUに備えられた上記ユニット筐体190に固定されるとともに、上記刃先部180と、左・右2つの取付部181,181と、刃先支持部182と、を備えている。取付部181は、上記揺動空間SPの上方の左右方向両側それぞれにおいて略水平方向に延設されており、それぞれの前方側端部がユニット筐体190に取り付けられている。刃先支持部182は、揺動空間SPの上方において、上記2つの取付部181,181に対し刃先部180を接続するように、当該2つの取付部181,181の後方側に連続して略水平方向に延設されている。刃先部180は、刃先支持部182を介して、左右方向2箇所にそれぞれ設けた平板突起状の取付部181に接続され、それら2つの取付部181の前端部がユニット筐体190にネジ止め等で取り付けられる。前述のようにサーマルラインヘッド112を備えたヘッドユニットHUはユニット筐体190に対し揺動可能に配置されていることから、当該ユニット筐体190に対し直接固定刃部材160を取り付けることにより、装置筐体100の固定カバー部101A及びアンダーカバー102や開閉蓋101Bに固定刃部材160を取り付ける場合に比べ、サーマルラインヘッド112に対して高い精度で固定刃部材160を位置決めすることができる。
【0034】
ここで、固定刃部材160の刃先部180は排出口107の縁部に沿うように設けられるが、排出されるロール紙Sに対し印字を行うサーマルラインヘッド112を含むヘッドユニットHUは、前述したようにユニット筐体190の内側の揺動空間SPで遠近揺動を行う。したがって、この揺動を阻害しないように、本実施形態では、上記揺動空間SPの上方において刃先支持部182さらに2つの取付部181を略水平方向に延設し、最終的に当該2つの取付部181がユニット筐体190に取り付けられる構造とすることにより、サーマルラインヘッド112を含むヘッドユニットHUの円滑な揺動を確保している。
【0035】
一方、上記のような略水平方向への延設構造とした固定刃部材160では、刃先部180が、前方側の取付部181での固定によるいわゆる片持ち構造となっている。このため、固定刃部材160の材質によってはたわみが生じて位置決め精度を低下させる懸念が生じる。そこで本実施形態では、左右方向における上記2つの取付部181,181の中間部において、上記刃先支持部182の前端部から下方に向かって(又は上方に向かって設けてもよい)補強リブ部183を設けている。これにより、上記のような片持ち構造における強度を補強することができ、上記たわみが生じるのを防止し、高い位置決め精度を確保可能にしている。
【0036】
以上のようにして、本実施形態のプリンタ1においては、固定刃部材160を高い精度で位置決めして配置することができるので、ロール紙Sの円滑な切断を確実に実現することができる。
【0037】
また、本実施形態では特に、固定刃部材160の補強リブ部183を、刃先支持部182の前端部から(上方ではなく)下方に向けて設けている。これには特に以下のような意義がある。すなわち、固定刃部材160のうち、上記刃先部180は排出口107の縁部に沿うように排出口107に露出して設けられるが、それ以外の部分は装置筐体100の固定カバー部101A上面の下方に、すなわち固定カバー部101A上面に覆われるように設けられている(図1、図2、図6参照)。したがって、固定刃部材160と固定カバー部101Aとの干渉を防止するためには、固定カバー部101Aからその下側に位置する固定刃部材160の上部までの間に所定の距離を確保する必要がある。この結果、補強リブ部183を上方に向けて設ける場合には、その補強リブ部183の上下方向寸法の分、装置筐体100の固定カバー部101Aの位置をさらに上方へ高くする必要があり、装置筐体100の大型化を招く。そこで、本実施形態においては、図8に示すように、固定刃部材160の補強リブ部183を下方に向けて設ける。これにより、上記のような装置筐体100の上下方向への大型化を回避し、確実に小型化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では特に、揺動空間SPでは、サーマルラインヘッド112、及び、サーマルラインヘッド112での発熱を放熱するためのヒートシンク114、を一体化したヘッドユニットHUが、ユニット筐体190に対し相対変位可能に支持されている(図3、図4、図6(a)、図7参照)。これにより、サーマルラインヘッド112の発熱を円滑かつ確実に放熱しつつ、プラテンローラ111に対しサーマルラインヘッド112を最適な圧力で押圧できる構成を実現することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 プリンタ(印刷装置)
100 装置筐体
101 トップカバー
101A 固定カバー部(固定部)
101B 開閉蓋(開閉部)
102 アンダーカバー(固定部)
107 排出口
111 プラテンローラ(搬送ローラ)
112 サーマルラインヘッド(印字ヘッド)
160 固定刃部材
161 ロール収納部(収納部)
180 刃先部
181 取付部
182 刃先支持部
183 補強リブ部
HU ヘッドユニット
MU メカユニット(印刷処理ユニット)
S ロール紙(被印字媒体)
SP 揺動空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部、及び、水平方向に含まれる第1方向の一方側が前記固定部に対し開閉可能に接続された開閉部、を備え、装置外郭を構成する装置筐体と、
前記固定部の前記第1方向一方側に設けられて被印字媒体を巻回したロールを収納するとともに、前記開閉部によって開閉される収納部と、
水平方向に含まれ前記第1方向と直交する第2方向に軸心が沿うように前記開閉部に設けられ、当該開閉部が閉じ状態のときに、前記収納部に収納された前記ロールから供給された前記被印字媒体を搬送する、搬送ローラと、
前記固定部に設けられ、前記被印字媒体に印字を行うための印刷処理ユニットと、
前記筐体において前記第2方向に沿うように設けられ、前記印刷処理ユニットにより印字が行われた前記被印字媒体を前記装置筐体の外部に排出する排出口と、
を有する印刷装置であって、
前記印刷処理ユニットは、
前記搬送ローラにより搬送される前記被印字媒体に対し所望の印字を行う印字ヘッドと、
前記印字ヘッドを前記搬送ローラに向かって遠近揺動可能に収納する揺動空間を内側に形成するユニット筐体と、
前記ユニット筐体に対し固定され、前記排出口より排出される前記被印字媒体を切断するための固定刃部材と、
を備えており、
前記固定刃部材は、
前記排出口の縁部に沿うように立設される刃先部と、
前記揺動空間の上方の前記第2方向両側それぞれにおいて略水平方向に延設されるとともに、それぞれの前記第1方向他方側端部が前記ユニット筐体に取り付けられる、2つの取付部と、
前記揺動空間の上方において、前記2つの取付部に対し前記刃先部を接続するように、当該2つの取付部の前記第1方向一方側に連続して略水平方向に延設される、刃先支持部と、
前記揺動空間の上方において、前記第2方向における前記2つの取付部の中間部に位置し、前記刃先支持部の前記第1方向他方側端部から上方又は下方に向かって設けられる、補強リブ部と、
を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記補強リブ部は、
前記刃先支持部の前記第1方向他方側端部から下方に向かって設けられている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の印刷装置において、
前記揺動空間では、前記印字ヘッド、及び、前記印字ヘッドでの発熱を放熱するためのヒートシンク、を一体化したヘッドユニットが、前記ユニット筐体に対し相対変位可能に支持されている
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49175(P2013−49175A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187865(P2011−187865)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】