説明

印刷輪転機の洗浄廃液回収装置

【課題】インキローラの洗浄に使用された洗浄廃液の回収ラインの閉塞を好適に防止しインキローラの洗浄廃液を安定して回収することが出来る印刷輪転機の洗浄廃液回収装置を提供する。
【解決手段】受け皿11-1,・・・,11-8のパイプ12-1,・・・,12-8とポンプ3の入口を上回収ホース7-1,・・・,7-8と上回収弁2-1,・・・,2-8と連結ホース8と上共有ホース19によって接続し、一方、ポンプ3の出口に下共有ホース20を接続し、他端に単一又は複数の継手と下回収ホース9を接続し、下回収ホース9の他端を廃液回収容器4に導く。そして、その単一又は複数の継手の他端に下循環弁15および戻りホース22を接続し、その戻りホース22の他端を洗浄液容器17に導く。一方、連結ホース8の他端に下循環ホース23と上循環弁16および上循環ホース21を接続し、他端を洗浄液容器17に深く挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷輪転機の洗浄廃液回収装置、特に、インキローラの洗浄に使用された洗浄廃液の回収ラインの閉塞を好適に防止しインキローラの洗浄廃液を安定して回収することが出来る印刷輪転機の洗浄廃液回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷輪転機のインキローラを洗浄した後に受け皿に溜まった洗浄廃液は、受け皿と、その下方に配置した回収容器とをホースによって接続し、そのホースを介して自然落下させる事によって回収していた(例えば、特許文献1の図4および図5を参照。)。或いは、受け皿と耐真空性タンクとの間に回収弁を設け、そしてこれらをホースによって接続した上で、耐真空性タンクを真空発生器によって真空状態にしておいて、所望の時間にその回収弁を順に開とし洗浄廃液を順に真空引きすることにより耐真空性タンクに回収していた。そして全受け皿の洗浄廃液が耐真空性タンクに回収された後に耐真空性タンクの上部に設けられた開放弁とその下部に設けられた排出弁を開とすることによりそのタンク内の洗浄廃液を別の回収容器に移送していた(例えば、特許文献1の図1〜図3を参照。)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3123826号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記前者の従来技術の場合、受け皿に溜まった洗浄廃液は、受け皿の底部近傍ではヘドロ状で粘性の高い(流動性が低い)残渣を含み、そしてそのヘドロ状の残渣はホースの内壁に残留し易く、経時的にはホースの内径を狭窄して洗浄廃液の自然落下に対して抵抗となり、終いにはホース内径を閉塞して洗浄廃液の回収を不能に至らしめる問題が起こり得る。
他方、上記後者の従来技術の場合、受け皿の下方に配置した真空自動回収装置によって耐真空性タンク内に真空圧力を発生させて洗浄廃液を回収している。
しかしながら、洗浄廃液の回収には、耐真空性タンク、回収弁、開放弁、排出弁および真空発生器の5点に加えて、それらを連結するホースが別途必要となるため、装置の構成が複雑となり、なお且つ可動部分も多く故障の原因となりやすい。さらに、回収作業終了後にはホース内にヘドロ状で粘性の高い残渣が残留し易く、経時的にはホースの内径を狭窄し回収能力を著しく弱めることがある。また、複数の受け皿から洗浄廃液を回収する場合、回収した洗浄廃液は、全ての回収作業が終了するまで耐真空性タンク内に滞留する為、耐真空性タンクの底部にヘドロ状で粘性の高い残渣が残留・堆積し易く、定期的に耐真空性タンクおよび排出弁を分解して残留堆積物を除去する必要がある。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的はインキローラの洗浄に使用された洗浄廃液の回収ラインの閉塞を好適に防止しインキローラの洗浄廃液を安定して回収することが出来る印刷輪転機の洗浄廃液回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1に記載の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、底部又は側部に排出口を有しインキローラの洗浄廃液を溜める1又は複数の受け皿と、該洗浄廃液を連続的に吸引して下流に送り出すポンプと、該ポンプから送られる洗浄廃液を集める廃液回収容器と、前記受け皿〜前記廃液回収容器を連結する回収ラインと、該回収ラインを遮断する回収弁と、前記回収ラインを洗浄する洗浄液を溜める洗浄液容器と、該洗浄液容器を起点として前記回収ラインの一部分を共有し且つ前記ポンプを経由して再び前記洗浄液容器に戻る洗浄ラインと、該洗浄ラインを遮断する循環弁と、前記回収弁および前記循環弁の開閉および前記ポンプの作動を制御する制御ユニットとを備え、前記洗浄廃液を回収した直後に前記回収ラインの一部分に対して前記洗浄液を強制的に循環させるように構成されていることを特徴とする。
上記印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、従来の洗浄廃液の回収装置に見られたタンク内の高真空圧力が回収弁の開口によって極短時間に大気圧に戻るまでの吸引力によって、受け皿に溜まった洗浄廃液を回収ラインを介して瞬時に回収するのではなく、ポンプの回転によって発生する常時安定した真空圧を連続的に発生させ、その真空圧が回収弁を通して回収ライン中に伝搬することによって、受け皿に溜まった洗浄廃液を連続的に吸引する。そして、吸引された洗浄廃液はポンプを経由して連続的に廃液回収容器に強制的に回収される。従って、洗浄廃液が好適に回収されるようになり、その結果、ヘドロ状の残渣が回収ラインの内壁面に残留しにくくなる。また、洗浄廃液回収後は、回収ラインを洗浄する洗浄液がポンプによって連続的に吸い上げられ、洗浄廃液の通過した回収ラインの一部分を経て元の洗浄液容器に回収され、再びポンプによって吸い上げられ同様な行程をたどるように構成されている。この洗浄液の循環によって回収ラインの内壁面に付着したヘドロ状の残渣が好適に洗い流されるため、回収ラインが閉塞することがなく、インキローラ等の印刷輪転機の洗浄に使用された洗浄廃液を常時安定して好適に回収することが出来るようになる。
【0006】
請求項2に記載の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、前記回収ラインは、その途中に容器等の液溜まり部分を有さずに前記廃液回収容器に導かれていることとした。
上記印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、上記構成とすることにより、回収ラインの閉塞の原因となるヘドロ状の残渣が残留・堆積しにくくなる。
【0007】
請求項3に記載の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、前記洗浄液を前記回収ラインの一部分に対し強制的に循環させた直後に該回収ラインの上流部を大気開放として該回収ラインに残留する前記洗浄液を前記ポンプによって吸引することとした。
上記印刷輪転機の洗浄廃液回収装置では、上記構成とすることにより、回収ラインの内壁面に洗浄廃液を含む洗浄液が残留しなくなり、その結果、回収ライン閉塞の原因となるヘドロ状の残渣が残留・堆積しにくくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置によれば、従来技術で必要であった開放弁、真空発生器、回収弁、耐真空性タンクおよび排出弁から成る主構成を回収弁、循環弁およびポンプから成る主構成に置き換えることにより、システムを単純化し故障を起き難くすると共に製造コストを低減することが可能となる。
また、洗浄廃液回収後に回収ラインの内壁面に対し洗浄液を循環させながら連続的に洗浄することにより、回収ラインの内壁面に付着したヘドロ状の残渣が洗い流されて同内壁面に残留しなくなり、その結果、印刷輪転機の洗浄廃液を常時安定して回収することが出来ると共に保守のための労力およびコストを省く事が出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に係るインキローラの洗浄廃液回収装置100を示す構成説明図である。
このインキローラの洗浄廃液回収装置100は、インキローラ10-1,・・・,10-8の洗浄に使用された洗浄廃液13を各々溜める受け皿11-1,・・・,11-8と、洗浄廃液13の排出口となるパイプ12-1,・・・,12-8と、洗浄廃液13を下流へ移送する上回収ホース7-1,・・・,7-8と、上回収ホース7-1,・・・,7-8の洗浄廃液13の移送を断続すると共に洗浄液18が上回収ホース7-1,・・・,7-8へ流入することを遮断する上回収弁2-1,・・・,2-8と、全ての上回収弁2-1,・・・,2-8を連結する連結ホース8と、洗浄廃液13と洗浄液18の双方が流れポンプ3の吸込口(入口)に接続される上共有ホース19と、同吐出口(出口)に接続される下共有ホース20と、洗浄廃液13を廃液回収容器4へ移送する下回収ホース9と、洗浄液18が流れる上循環ホース21と、同下循環ホース23と、洗浄液18を洗浄液容器に移送する戻りホース22と、洗浄廃液13の移送を断続すると共に洗浄液18が下回収ホース9へ流入することを遮断する下回収弁14と、洗浄液18の移送を断続すると共に洗浄廃液18が戻りホース22へ流入することを遮断する下循環弁15と、洗浄液18の移送を断続すると共に洗浄廃液18が上循環ホース21へ流入することを遮断する上循環弁16と、インキローラ10-1,・・・,10-8の洗浄に使用された洗浄廃液13を貯留する廃液回収容器4と、洗浄液18を貯留する洗浄液容器17と、洗浄廃液13を吸引し又は洗浄液18を循環させるポンプ3と、上回収弁2-1,・・・,2-8、下回収弁14、下循環弁15、上循環弁16およびポンプ3を制御する制御ユニット5と、制御ユニット5からの信号を伝送する制御線6と、上記構成部品を保護する回収ユニット1とを具備して構成されている。なお、実施例1における制御ユニット5の各弁およびポンプ3に対するシーケンス制御については、図2を参照しながら後述する。
【0011】
詳細については後述するが、上回収ホース7-1,・・・,7-8、上回収弁2-1,・・・,2-8、連結ホース8、上共有ホース19、ポンプ3、下共有ホース20、下回収弁14、および下回収ホース9は、いわゆる洗浄廃液13の回収ラインを形成している。他方、上循環ホース21、上循環弁16、下循環ホース23、連結ホース8、上共有ホース19、ポンプ3、下共有ホース20、下循環弁15、戻りホース22および洗浄液容器17は、いわゆる洗浄液18による循環ライン(洗浄ライン)を形成している。
【0012】
本インキローラの洗浄廃液回収装置100において、上回収弁2-1,・・・,2-8の上方にはインキローラ10-1,・・・,10-8の受け皿11-1,・・・,11-8が各々あり、その側面の穿った穿穴口に一端が受け皿11-1,・・・,11-8の底部に向かって開口部を持つパイプ12-1,・・・,12-8を各々配置し、そのパイプ12-1,・・・,12-8の他端と上回収弁2-1,・・・,2-8を上回収ホース7-1,・・・,7-8を介して各々連結し、上回収弁2-1,・・・,2-8の他端に連結ホース8を接続し、連結ホース8の他端に分岐を設けて上共有ホース19と下循環ホース23を接続して一連化した。
【0013】
上回収弁2-1,・・・,2-8の下方には、下回収弁14、下循環弁15および上循環弁16とポンプ3を配置し、さらに下方には廃液回収容器4と洗浄液容器17を配置した。上共有ホース19をポンプ3の入口に連結し、ポンプ3の出口と下回収弁14および下循環弁15の各入口を下共有ホース20を介して連結し、下回収弁14の出口に下回収ホース9を接続し、その他端を廃液回収容器4の上に導管し、さらに下循環弁15の出口に戻りホース22を接続し、その他端を洗浄液容器17の上に導管した。そして、下循環ホース23を上循環弁16の出口と連結し、上循環弁16の入口に上循環ホース21を接続し、上循環ホース21の他端を洗浄液容器17内の底部近傍まで導管して洗浄液18に充分浸漬するようにした。上回収弁2-1,・・・,2-8、下回収弁14、下循環弁15、上循環弁16およびポンプ3と、制御ユニット5とは複数の制御線6(図の点線部)で接続した。なお、符号1は回収ユニットであり、符号13は洗浄廃液である。
【0014】
図2は、実施例1に係る制御ユニット5のシーケンス制御を示す説明図である。
本実施例1においてインキローラ10-1,・・・,10-8の洗浄終了後、制御ユニット5は、信号線6を通して予め決められた上回収弁2-1,・・・,2-8を順に開き(図2における5〜12項)、同時に下回収弁14を開き(図2における13項)、同時にポンプ3を起動する(図2における17項)。すると、受け皿11-1,・・・,11-8に溜まっていた洗浄廃液13が上回収ホース7-1,・・・,7-8を通してポンプ3によって順に吸引され、上共有ホース19〜下回収ホース9を介して廃液回収容器4に順に回収される。このように、制御ユニット5は、受け皿11-1,・・・,11-8に対応する複数の上回収弁2-1,・・・,2-8を個別に作動させながら、対応する受け皿の洗浄廃液13をポンプ3でそれぞれ吸引し、廃液回収容器4に回収する。なお、図3は、受け皿11-1から洗浄廃液13が吸引され廃液回収容器4へ回収される状態を示す説明図である。
【0015】
制御ユニット5は、全ての受け皿11-1,・・・,11-8に対する洗浄廃液13の回収が終了後、信号線6を通して全ての上回収弁2-1,・・・,2-8と下回収弁14を閉じ、代わって下循環弁15と上循環弁16を開き(図2における14項および15項)、ポンプ3を起動させた(図2における17項)。ポンプ3の吸引圧によって、上循環ホース21を介して洗浄液容器17内の洗浄液18が連続的に吸い上げられ、上循環弁16、下循環ホース23、連結ホース8、上共有ホース19を経由してポンプ3に導かれ、下共有ホース20、下循環弁15、戻りホース22を経て元の洗浄液容器17に排出された。このように、洗浄液18の入口と出口が同じとなる循環経路を通して、ポンプ3による強い水流を持った洗浄液18を連続的に循環させることによって、前記循環経路の内壁に付着している洗浄廃液13中のヘドロ状の残渣が洗い流されて残留・堆積しなくなる。なお、図4は、洗浄液容器17から洗浄液18が吸引され循環経路を通り再び洗浄液容器17へ戻る状態を示す説明図である。
【0016】
さらに、制御ユニット5は、前記循環経路内の洗浄が終了後、信号線6を通して、上循環弁16を閉じ(図2における15項)、予め決められた上回収弁、例えば上回収弁2-1を開け(図2における5項)、ポンプ3を稼働させることによって、前記循環経路内の上方に残留していた洗浄液18が吸引されて元の洗浄液容器17に回収され、次回の洗浄廃液の回収時まで残留しないようにした。このように、洗浄廃液13の回収のみならず、循環経路内の洗浄を強制的に行うことにより、洗浄廃液中のヘドロ状の残渣が循環経路の内壁に付着するのが大幅に減少し、長期間に亘って安定して稼働する(洗浄廃液13を回収する)ことが出来るようになる。なお、図5は、循環経路内の洗浄液18が吸引され再び洗浄液容器17へ戻る状態を示す説明図である。
【0017】
制御ユニット5は、待機時間を経過後に、2回目以降の洗浄廃液13の回収を開始する。
【実施例2】
【0018】
図6は、実施例2に係るインキローラの洗浄廃液回収装置200を示す構成説明図である。
このインキローラの洗浄廃液回収装置200は、上記インキローラの洗浄廃液回収装置100において下循環弁15および上循環弁16に代えて、新たに中循環弁15a、中回収弁16a、上循環弁24、下循環弁25aおよび下切換弁26を具備し、さらに中循環ホース27を新たに具備して構成されている。なお、実施例2における制御ユニット5の各弁およびポンプ3のシーケンス制御については、図7を参照しながら後述する。
【0019】
このインキローラの洗浄廃液回収装置200は、前記の一連化した連結ホース8の一端と中回収弁16aおよびポンプ3の入口を上共有ホース19によって連結し、ポンプ3の出口に下共有ホース20の一端を接続し、そのホース20の他端に単一又は複数の継手を設け、その分岐点に下回収弁14、中循環弁15aおよび下切換弁26のそれぞれの入口を連結し、中循環弁15aの出口と前記一連化した連結ホース8の他端を下循環ホース23によって連結し、下回収弁14の出口に下回収ホース9を接続し、その他端を廃液回収容器4の上に導管して構成されている。また、中回収弁16aの入口は分岐点を設けて下循環弁25aの入口に中循環ホース27によって連結し、一方、下循環弁25aの出口に戻りホース22を接続し、その戻りホース22の他端に分岐点を設け、一端を下切換弁26の出口と接続し、もう一端を洗浄液容器17の上に導管して構成されている。さらに、中回収弁16aの出口とポンプ3の入口との間に分岐点を設け、その分岐点に上循環弁24の出口を接続し、上循環弁24の入口に上循環ホース21を接続し、その他端を洗浄液容器17の底部近傍まで導管して洗浄液18に充分浸漬するようにして構成されている。上回収弁2-1,・・・,2-8、下回収弁14、中循環弁15a、中回収弁16a、上循環弁24、下循環弁25a、下切換弁26およびポンプ3は、制御ユニット5と複数の制御線6で接続した。なお、符号1は回収ユニットであり、符号13は洗浄廃液である。
【0020】
詳細については後述するが、上回収ホース7-1,・・・,7-8、上回収弁2-1,・・・,2-8、連結ホース8、上共有ホース19、中回収弁16a、ポンプ3、下共有ホース20、下回収弁14、および下回収ホース9は、いわゆる洗浄廃液13の回収ラインを形成している。他方、上循環ホース21、上循環弁24、ポンプ3、下共有ホース20、中循環弁15a、下循環ホース23、連結ホース8、上共有ホース19、中循環ホース27、下循環弁25a、戻りホース22および洗浄液容器17は、いわゆる洗浄液18による循環ライン(洗浄ライン)を形成している。
【0021】
図7は、制御ユニット5のシーケンス制御の一例を示す説明図である。
本実施例2においてインキローラ10-1,・・・,10-8の洗浄終了後、制御ユニット5は、信号線6を通して予め決められた上回収弁2-1,・・・,2-8を順に開き(図7における5〜12項)、同時に下回収弁14および中回収弁16aを開き(図7における13項および15項)、同時にポンプ3を起動する(図7における20項)。すると、受け皿11-1,・・・,11-8に溜まっていた洗浄廃液13が上回収ホース7-1,・・・,7-8を通してポンプ3によって順に吸引され、上共有ホース19〜下回収ホース9を介して廃液回収容器4に順に回収される。このように、制御ユニット5は、受け皿11-1,・・・,11-8に対応する複数の上回収弁2-1,・・・,2-8を個別に作動させながら、対応する受け皿の洗浄廃液13をポンプ3でそれぞれ吸引し、廃液回収容器4に回収する。なお、図8は、受け皿11-1から洗浄廃液13が吸引され廃液回収容器4へ回収される状態を示す説明図である。
【0022】
制御ユニット5は、全ての受け皿11-1,・・・,11-8に対する洗浄廃液13の回収が終了後、信号線6を通して全ての上回収弁2-1,・・・,2-8と下回収弁14および中回収弁16aを閉じ(図7における13項および15項)、代わって中循環弁15aと上循環弁24と下循環弁25aを開き(図7における14項、16項および17項)、ポンプ3を起動させる。ポンプ3の吸引圧によって、上循環ホース21を介して洗浄液容器17内の洗浄液18が連続的に吸い上げられ、上循環弁24を経由してポンプ3に導かれ、下共有ホース20、下循環ホース23、連結ホース8、上共有ホース19、下循環弁25a、戻りホース22を経て元の洗浄液容器17に排出される。このように、洗浄液18の入口と出口が同じとなる循環経路を通して、ポンプ3による強い水流を持った洗浄液18を連続的に循環させることによって、前記循環経路の内壁に付着している洗浄廃液13中のヘドロ状の残渣が洗い流されて残留しなくなる。なお、図9は、洗浄液容器17から洗浄液18が吸引され循環経路を通り再び洗浄液容器17へ戻る状態を示す説明図である。
【0023】
さらに、制御ユニット5は、前記循環経路内の洗浄が終了後、信号線6を通して、中循環弁15aと上循環弁24と下循環弁25aを閉じ(図7における14項、16項及び17項)、予め決められた上回収弁、例えば上回収弁2-1と、中回収弁16aおよび下切換弁26を開け(図7における15項及び18項)、ポンプ3を稼働させることによって、前記循環経路内の上方に残留していた洗浄液18が吸引されて元の洗浄液容器17に回収され、次回の洗浄廃液の回収時まで残留しないようにした。このように、洗浄廃液13の回収のみならず、循環経路内の洗浄を強制的に行うことにより、洗浄廃液中のヘドロ状の残渣が循環経路の内壁に付着するのが大幅に減少し、長期間に亘って安定して稼働する(洗浄廃液13を回収する)ことが出来るようになる。なお、図10は、循環経路内の洗浄液18が吸引され再び洗浄液容器17へ戻る状態を示す説明図である。
【0024】
制御ユニット5は、待機時間を経過後に、2回目以降の洗浄廃液13の回収を開始する。
【0025】
上記実施例1および2の制御線6は、電気信号を伝送するものでも機械的な力を伝達するものでもどちらでも良い。また、弁およびポンプ3は電気信号で作動するものでも機械的な力で作動するものでもどちらでも良い。
【0026】
また、受け皿11-1,・・・,11-8の穿穴口は側面であったが、下側でも良い。
【0027】
また、上記実施例1および2では、洗浄廃液13は廃液回収容器4に排出していたが、廃液回収容器4を使用せずに、他の場所に設置した貯蔵容器に直接圧送することも可能である。
【0028】
また、上記実施例1および2では、印刷機一台分の場合であるが、当該一台分を並列的に複数台、例えば4台分設置して印刷機1セット分とすることも出来る。
【0029】
また、上記実施例1および2では、洗浄廃液を移送するためにホースを使用して回収ライン及び循環ライン(循環経路)を形成しているが、それに代えて配管を使用して回収ライン及び循環ラインを形成しても良い。
【0030】
なお、実施例1のインキローラの洗浄廃液回収装置100(以下、「実施例1」という。)と実施例2のインキローラの洗浄廃液回収装置200(以下、「実施例2」という。)では、上回収弁2-1,・・・,2-8の下方向に配置されている弁の数が違っており、実施例1では3個、実施例2では6個であり、また洗浄廃液13と洗浄液18の流れる流路が大幅に違っている。洗浄液18を循環経路に流して循環経路内を洗浄する場合、実施例1ではポンプ3の吸引力のみを利用しており加圧力は利用していない(大気開放されている)ため、洗浄液の最大圧力は0.08MPa程度が限界である。一方、実施例2ではポンプ3の出口側で加圧された洗浄液が循環経路を流れるため、0.2MPa以上の圧力を得ることが可能である。
従って、同じ循環経路に洗浄液18を流した場合、実施例2の方が実施例1よりも2倍以上の流速を得ることが可能で、循環経路の内壁に付着したヘドロ状の残渣を勢いよく洗い流して残留し難くすることが出来る。従って装置として長期間安定して稼働させる場合は、実施例2の方が実施例1よりも優れていることになる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置は、インキローラ等の輪転機を使用する印刷産業に好適に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係るインキローラの洗浄廃液回収装置を示す構成説明図である。
【図2】実施例1に係る制御ユニットのシーケンス制御を示す説明図である。
【図3】実施例1に係る洗浄廃液の回収を示す説明図である。
【図4】実施例1に係る回収ラインの循環洗浄を示す説明図である。
【図5】実施例1に係る洗浄液の回収を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2に係るインキローラの洗浄廃液回収装置を示す構成説明図である。
【図7】実施例2に係る制御ユニットのシーケンス制御を示す説明図である。
【図8】実施例2に係る洗浄廃液の回収を示す説明図である。
【図9】実施例2に係る回収ラインの循環洗浄を示す説明図である。
【図10】実施例2に係る洗浄液の回収を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 回収ユニット
3 ポンプ
4 廃液回収容器
5 制御ユニット
6 制御線
8 連結ホース
9 下回収ホース
19 上共有ホース
20 下共有ホース
21 上循環ホース
22 戻りホース
23 下循環ホース
100,200 印刷輪転機の洗浄廃液回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部又は側部に排出口を有しインキローラの洗浄廃液を溜める1又は複数の受け皿と、該洗浄廃液を連続的に吸引して下流に送り出すポンプと、該ポンプから送られる洗浄廃液を集める廃液回収容器と、前記受け皿〜前記廃液回収容器を連結する回収ラインと、該回収ラインを遮断する回収弁と、前記回収ラインを洗浄する洗浄液を溜める洗浄液容器と、該洗浄液容器を起点として前記回収ラインの一部分を共有し且つ前記ポンプを経由して再び前記洗浄液容器に戻る洗浄ラインと、該洗浄ラインを遮断する循環弁と、前記回収弁および前記循環弁の開閉および前記ポンプの作動を制御する制御ユニットとを備え、前記洗浄廃液を回収した直後に前記回収ラインの一部分に対して前記洗浄液を強制的に循環させるように構成されていることを特徴とする印刷輪転機の洗浄廃液回収装置。
【請求項2】
前記回収ラインは、その途中に容器等の液溜まり部分を有さずに前記廃液回収容器に導かれている請求項1に記載の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置。
【請求項3】
前記洗浄液を前記回収ラインの一部分に対し強制的に循環させた直後に該回収ラインの上流部を大気開放として該回収ラインに残留する前記洗浄液を前記ポンプによって吸引する請求項1又は2に記載の印刷輪転機の洗浄廃液回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−213305(P2008−213305A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53924(P2007−53924)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(591240401)株式会社東京製作所 (1)
【Fターム(参考)】