説明

印刷適性が優れた防曇性を有する収縮包装用フィルム

【課題】インキとフィルムとの接着性が良好で、従来の印刷方法の条件や設備を変更することがなく印刷ができるため印刷工程の効率を低下させず、かつ、包装フィルムの本来の機能も損なうことがない収縮包装用フィルムを提供する。
【解決手段】防曇剤が0.5〜5重量%添加されたポリエチレン系樹脂を表面層とし、少なくとも一方向に2倍以上延伸した後、2時間以内にフィルムの表面にコロナ放電処理を施す、コロナ放電処理面に印刷が施される収縮包装用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷適性が優れた防曇性を有する収縮包装用フィルムに関する。より詳しくは、従来の印刷工程を何ら変更することなく、さらに印刷工程の効率を低下させない、ポリエチレン系樹脂層を印刷面とする防曇性を有する収縮包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品分野などで利用される容器は、直接容器の表面にインキが印刷され、或いは容器に印刷せずに包装フィルムの外側にラベルやシールを貼って、内容物のイメージや意匠性を高めている。そのような容器は環境面から見ると、回収しても分別が困難であり、再生利用できないという問題がある。そこで、この問題を解決するために、容器に印刷せずに、或いはラベルを使用せずに、容器を包むフィルムに印刷して容器の再生利用を可能とする方法が注目されている。
【0003】
一方、フィルムは、ダイオキシンなどの環境問題から脱塩ビが志向され、ポリオレフィン系の樹脂を用いたフィルムが好まれて利用されている。しかし、ポリオレフィン系フィルムは、本質的にフィルムの表面が不活性であるため、印刷インキを接着させるのが困難なものが多い。さらに、フィルム中に多くの可塑剤などの添加剤を含有させるため、それらがフィルム表面に浮き出して、印刷インキのフィルムに対する接着性がますます弱くなるという問題がある。特に、食品用途に利用される防曇性を有するポリエチレン系フィルムは、防曇剤が表面にブリード、即ちフィルムの表面が防曇剤で薄い膜状に覆われた状態になって初めて防曇性が発現されるため、このような状態ではコロナ放電処理の処理度を上げても濡れ指数は容易に高くならない。また、防曇剤の添加量を減らして表面へのブリード量を少なくすることで、インキの接着を阻害する程度を低くする方法もあるが、そのようなフィルムは防曇性や粘着性に劣り、包装用フィルムとしての要求特性を満足するものではなかった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、市販のラップ用フィルム表面にコロナ放電処理を施した後、印刷する方法が提案されている。この提案では、フィルムの材質や厚みなどとバランスを図って処理の強さを調整し、印刷直前にコロナ放電処理を行う、という熟練した技術を要し、さらに処理の強さを調整するため、コロナ放電処理速度を調節したり、フィルムを加温しながら処理するなど、通常のコロナ放電処理とは異なる方法が用いられている。従って、処理速度低下等による製品得率の低下、処理エネルギーの増加、等を伴うものであった。
【0005】
一方、スリップ剤、防曇剤等を含むポリオレフィン系樹脂フィルムのコロナ放電処理については、例えば、特許文献2には、インラインでコロナ放電処理を行って、フィルムの表と裏の摩擦係数が異なるように調整したフィルムが開示されている。しかし、防曇剤のブリード量とコロナ放電処理による濡れ指数の関係について言及されず、滑り性を改善した共押出複合フィルムであって、印刷が施されるフィルムの開示はない。また、特許文献3には、コロナ放電処理を施し防曇剤のブリードを促進させるフィルムが開示されている。しかし、無延伸すなわち非収縮フィルムであり、コロナ放電処理前の防曇剤のブリード量がコロナ放電処理後の濡れ指数に及ぼす影響について言及されず、また、印刷が施されるフィルムについての開示はない。
【特許文献1】特開2002−308321号公報
【特許文献2】特表2001−513829号公報
【特許文献3】特開2001−287325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の印刷方法を何ら変更することなく使用できるため印刷工程の効率を低下させない、フィルムの機能性、包装品の意匠性と環境にやさしい技術を融合させた、ポリエチレン系樹脂層を印刷面とする、印刷適性の優れた防曇性を有する収縮包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を行なった結果、収縮包装用フィルムを製造した後で、防曇剤がフィルムの表面にブリードする前の状態の時に、コロナ放電処理を行なうことにより、印刷インキの接着性を向上でき、防曇性も有することを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち本発明は、つぎの(1)〜(3)の収縮包装用フィルムを提供するものである。
(1)防曇剤が0.5〜5重量%添加されたポリエチレン系樹脂を、少なくとも一方向に2倍以上延伸した後、2時間以内にフィルムの表面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする、コロナ放電処理面に印刷が施される収縮包装用フィルム。
(2)両表面層又は全層に防曇剤が0.5〜5重量%添加され、両表面層がポリエチレン系樹脂からなり、少なくとも一方向に2倍以上延伸された積層フィルムであって、延伸して2時間以内に、フィルムの表面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする、コロナ放電処理面に印刷が施される収縮包装用フィルム。
(3)コロナ放電処理されたフィルム表面の濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とする請求項1乃至2記載の収縮包装用フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られるフィルムは、インキ接着性をフィルムの製造工程で向上させるため、インキとフィルムとの接着性が良好で、かつ、コロナ放電処理後、時間が経過しても印刷適性があるため、従来の印刷方法の条件や設備を変更することがなく印刷ができ、包装フィルムの本来の機能も損なうことがない収縮包装用フィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、具体的な実施の形態により、本発明の収縮包装用フィルムについて詳細に説明する。
本発明で使用されるフィルムは、表面層がポリエチレン系樹脂である単層又は多層のフィルムである。表面層に用いるポリエチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの他、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−デセン−1共重合体などのエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体、さらにはエチレンに共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物あるいはアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等を共重合成分とするものも含まれる。これらの重合体は酸変性されたもの、例えば、α,β−不飽和カルボン酸、脂環族カルボン酸、またはこれらの誘導体でグラフト変性された重合体であってもよい。
【0010】
中でもポリエチレン系樹脂としては、十分な粘着性を得ることを考慮すると、JIS K 6760に規定される密度とMFR(メルトフローレート、190℃、2.16kgf)が0.930g/cm以下、0.1〜10g/10分の線状低密度ポリエチレンが好ましい。より好ましくは密度0.900〜0.925g/cm、さらに好ましくは密度0.905〜0.920g/cmの線状低密度ポリエチレンである。
【0011】
ポリエチレン系樹脂としてエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体を用いる場合は、適度な粘着性を得ることを考慮すると、密度0.88〜0.94g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)0.1〜5.0g/10分のものが好ましい。また、α−オレフィン含量は1〜30重量%のものが好ましい。
【0012】
ポリエチレン系樹脂として、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸または酢酸ビニルなどとの共重合体を用いる場合は、適度な粘着性を得ることを考慮すると、MFR(190℃、2.16kgf)0.1〜10g/10分、コモノマー含量5〜30重量%のものが好ましい。
【0013】
多層フィルムの場合、上記ポリエチレン系樹脂の組み合わせによる積層体であってもかまわないが、包装フィルムの用途や目的に応じて、芯層や中間層がポリエチレン系樹脂以外の、たとえば、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂などの樹脂でもよい。
単層あるいは多層フィルムの厚みは5〜40μmが収縮包装分野では一般的であり、8〜20μmがより好適である。多層フィルムの層構成は包装用途や要求特性に応じて設定でき、例えば、三層構成の場合は表面層の厚みに対して芯層の厚みを1〜10倍程度に設定することが好ましい。その際、表面層の厚みは、防曇性や包装時のシール安定化のため少なくとも1μm以上の厚みが必要である。
【0014】
本発明のフィルムは、少なくとも表面層の1つに、好ましくは全層に、防曇剤を0.5〜5重量%(添加する層に対する重量%)を含有させたものであり、より好ましい含有量は1〜3重量%である。0.5重量%未満では防曇剤のブリード量が少なくなりインキ接着性は良好であるが防曇効果が不十分であり、5重量%を越えると防曇剤のブリード量が多くなりインキ接着性に劣り、更にオーバーブリードにより包装機や被包装物を汚染し、場合によってはシュリンク包装時のシール性を低下させる原因となる。
【0015】
使用される防曇剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸コハク酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンーグリセリン系縮合脂肪酸エステル、ソルビタンージグリセリン系縮合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどの多価アルコール部分脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどのエチレンオキサイド付加物、さらにソルビトールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加した後にエステル化して得られるソルビトール誘導体、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミドなどのアミン、アミド類およびそれらのエチレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール、その他公知のものの中から1種または2種以上を併用して用いられる。
【0016】
本発明のフィルムは、周知の方法で製造され、例えばTダイ法やインフレーション法とロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、テンター逐次または同時二軸延伸法を組み合わせた方法、或いはチューブラー同時二軸延伸法等の方法で製造することが出来る。以下、チューブラー同時二軸延伸法による多層フィルムの製法の一例について述べる。
先ず、各層を構成する樹脂を別々の押出機で溶融混練して、多層環状ダイよりチューブ状に溶融押出したものを冷媒によって急冷して折り畳んで原反を作製する。押出の際に表面層または全層に防曇剤を0.5〜5.0wt%添加するが、その際に本発明の特性を損なわない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、粘着剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、無機フィラー等を添加してもよい。また、原反作製後に電子線等の放射線を照射して架橋処理を施しても良い。
次に、原反を2対の差動ニップロール間に通して約60〜130℃に加熱した後、内部に空気を入れてバブルを形成させて冷風を吹き付けながら連続的に延伸を行う。延伸倍率は縦横に各々2倍以上、好ましくは3倍以上で行う。必要に応じて両表面層の融点以下で熱処理を緊張状態または弛緩状態で行い、マスターロールとして巻き取る。
【0017】
コロナ放電処理は延伸後2時間以内に行うことが必要である。2時間以内にコロナ放電処理を施せば、フィルム表面の防曇剤のブリード量は20mg/m未満になっており、コロナ放電処理によって濡れ指数38mN/m、好ましくは40mN/m、を超えるフィルムの表面状態が得られる。一般に、濡れ指数が高いほどインキ接着性は良好で、濡れ指数40mN/m以上であれば、より安定したインキ接着性が得られる様になって好ましい。
また、2時間以内にコロナ放電処理を行ったフィルムは、時間経過と共に防曇剤のブリード量は増加するものの、長期間にわたって濡れ指数38mN/m、好ましくは40mN/mを維持しており、そのまま、通常の装置、方法で印刷を施すことができる。
なお、本発明の延伸後2時間以内とは、前記樹脂と防曇剤の組み合わせで製造されたフィルムを室温で保管した状態での時間をいう。
【0018】
コロナ放電処理を行う方法は、例えばマスターロールから適当な幅や巻き量に裁断するスリッターの一部にコロナ放電処理設備を導入し、コロナ放電処理と裁断を同ラインで行っても良い。或いは、コロナ放電処理設備をフィルム製造工程に導入し、例えば熱処理後にコロナ放電処理を行ってもよい。この場合、延伸直後(例えば60秒以内)にコロナ放電処理を行うことが可能となるため、防曇剤のブリード量を最小限に抑えることができ、さらに濡れ指数が向上する。
コロナ放電処理条件としては、処理度合の因子としてあげられる処理電流、電極間間隔などを適度に調節して、フィルムの濡れ指数が20℃において38mN/mを超える、好ましくは40mN/m以上になるように表面処理する。例えば、コロナ放電照射量20〜100W/m/minで処理することで、上記の範囲の濡れ指数を得ることができる。
【0019】
本発明のフィルムは印刷が施されるものである。
使用される印刷インキとしては、一般に使用されているプラスチックフィルム用印刷インキを用いることができる。たとえば、インキ性能を特徴付けるバインダー樹脂として、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、ポリウレタン樹脂、マレイン酸系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化オレフィン樹脂、マレイン化オレフィン樹脂などを含有する、溶剤性あるいは水性プラスチックフィルム印刷用インキが使用できる。
【0020】
収縮包装は、手動包装機や自動包装機を用いて行われ、包装形態によって半折包装やピロー包装等がある。いずれも、延伸フィルムにエアー抜き孔を施して、ヒートシールにて被包装物を袋状に仮包装し、加温された収縮トンネル内を通過させて、被包装物に対してフィルムがタイトに収縮した美麗な包装体になるようにするものである。本発明のフィルムには、収縮することを考慮したデザインを印刷することが必要であり、インキは耐熱性のものがより望ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例及び比較例において、用いた樹脂は以下の通りである。
LL1:密度が0.920g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)が1.0g/10分の線状低密度ポリエチレン
LL2:密度が0.920g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)が0.5g/10分の線状低密度ポリエチレン
LL3:密度が0.920g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)が0.5g/10分のエチレン−ブテン−1共重合体
EVA1:密度が0.933g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)が3.5g/10分、酢酸ビニル含量が15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
PP1:JIS K 6758に規定される、密度が0.90g/cm3 、MFR(230℃、2.16kgf)が4.0g/10分のエチレン含量が2重量%のプロピレン−エチレン共重合体
【0022】
防曇剤としては、モノグリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンラウリン酸エステルから1種または2種を混合して使用した。
【0023】
印刷は、グラビア表刷用印刷インキであるDX−60藍およびXGS−3200(いずれも商品名、サカタインクス(株)製)を用いて印刷した。
【0024】
フィルムの特性については以下の方法で評価を行った。
1.濡れ指数:JIS K 6768に準拠した。
2.防曇剤ブリード量:フィルムの表面から防曇剤をメタノールで抽出し、GC分析にて定量した。
3.防曇性:100mlビーカーに30mlの水を入れ、ビーカー上面をフィルムで覆い、4℃で24時間放置した後、フィルムに付着した水滴の状態で曇り度合いを、以下の基準で評価した。
A:水膜がフィルム全体に均一で、ビーカー内部がよく見え、透明感がある(防曇性が優れる)。
B:水膜が均一でなく、ビーカー内部が半分程度しか確認できない(防曇性が中程度)。
C:水膜を形成せず、無数の水滴で覆われ、ビーカー内部が曇って見えない(防曇性が劣る)。
【0025】
4.インキ接着性:以下の(a)〜(e)の5項目の評価を行った。
(a)耐セロハンテープ剥離性
印刷物の印刷面にセロハンテープ(12mm幅、ニチバン(株)製)を貼り、親指の腹で3回擦った後、セロハンテープの剥離を行ない、インキの剥離度合から耐セロハンテープ剥離性を評価した。
A:インキがほとんど剥離しない(耐セロハンテープ剥離性が優れる)。
B:半分程度インキが剥離する(耐セロハンテープ剥離性が中程度)。
C:インキがほとんど剥離する(耐セロハンテープ剥離性が劣る)。
(b)耐スクラッチ性
印刷物の印刷面を爪先で擦り、インキの剥離の状況から耐スクラッチ性を評価した。
A:インキがほとんど剥離しない(耐スクラッチ性が優れる)。
B:強く力のかかった部分のみインキが剥離する(耐スクラッチ性が中程度)。
C:インキがほとんど剥離する(耐スクラッチ性が劣る)。
(c)耐低温揉み性
−5℃の恒温室内で印刷物を手で10回揉み、インキの剥離度合から耐低温揉み性を評価した。
A:インキがほとんど剥離しない(耐低温揉み性が優れる)。
B:半分程度インキが剥離する(耐低温揉み性が中程度)。
C:インキがほとんど剥離する(耐低温揉み性が劣る)。
(d)耐熱剥離性
幅10mmのバーシーラーを有するヒートシール試験機を用い、印刷物に同種で未処理のラップ用フィルムを当て紙として当て、熱圧着(0.2MPa、1秒)したときの、インキが当て紙の方に転移する温度から耐熱剥離性を評価した。
A:140℃でも当て紙にインキが転移しない。
B:110℃以上、140℃未満で当て紙にインキが転移する。
C:80℃以上、110℃未満で当て紙にインキが転移する。
D:80℃未満で当て紙にインキが転移する。
(e)耐裏移り性
印刷直後に印刷物の印刷面と無地フィルムとを重ね、荷重をかけて約600Paに加圧した状態で、40℃雰囲気中に2週間放置後、インキ皮膜の無地フィルムへの転移の有無から耐裏移り性を評価した。
A:インキがほとんど転移しない(耐裏移り性に優れる)。
B:インキが20%未満で転移する(耐裏移り性がある)。
C:インキが20%以上転移する(耐裏移り性が劣る)。
【0026】
実施例1
99.5重量%のLL1と0.25重量%のモノグリセリンオレイン酸エステルと0.25重量%のジグリセリンオレイン酸エステルを1台の押出機にて120〜230℃で溶融混練して環状ダイより押出し、チューブ状溶融樹脂を水冷しながら引き取り、折り畳んで原反を作製した。次いで、原反を低速ニップロールに通し、約100℃まで加熱して、チューブ内部のエアーにてバブルを形成させ、冷風にて冷却後折り畳み、高速ニップロールにて引き取った。その際、高速ニップロールと低速ニップロールの速度比から縦方向に3倍、延伸後のフィルム幅と原反幅の比から横方向に3倍になるように延伸倍率を調整した。次いで、80℃で緊張熱処理を行った後、フィルムを2枚に開きマスターロールに巻き取った。
約1.5時間後、コロナ放電照射量85W/m/minにてコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は15mg/mで、コロナ放電処理後の濡れ指数は42mN/mであった。
2日後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は20mg/mでブリード量は増えたが、濡れ指数は42mN/mのままであった。グラビア表刷用印刷インキのDX−60藍及びXGS−3200(サカタインクス(株)製)を用いて速度100m/minにて印刷を行い、インキ接着性の評価を行ったがいずれの評価も良好であった。また、防曇性も良好であった。
印刷されたフィルムで、牛肉を入れた蓋のない発砲スチロールトレーを自動包装機にて収縮包装を行った結果、タイト感のある包装体が得られ、印刷図柄も綺麗であった。印刷面が重なるようにトレーを重ねて輸送した後、重なったトレーを切り離したがインキの剥離などは全くなかった。また、冷蔵庫にて数日間保管したが、フィルムに曇りはなく、牛肉の状態がはっきりと識別できた。
【0027】
実施例2
両表層を80.0重量%のLL1と18重量%のLL3と1.0重量%のモノグリセリンオレイン酸エステルと1.0重量%のジグリセリンラウリン酸エステルの組成で、芯層を98.0重量%のLL2と1.0重量%のモノグリセリンオレイン酸エステルと1.0重量%のジグリセリンオレイン酸エステルの組成で3台の押出機と3層環状ダイを用い、実施例1と同様に原反を作製し、縦6倍横6倍に延伸し、熱処理を行ってマスターロールに巻き取った。
0.5時間後、コロナ放電照射量70W/m/minにてコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は16mg/mで、コロナ放電処理後の濡れ指数は42mN/mであった。
1ケ月後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は35mg/mでブリード量は増えたが、濡れ指数は42mN/mのままであった。グラビア印刷を速度100m/minにて行い、インキ接着性の評価を行ったがいずれの評価も良好であった。また、防曇性も良好であった。
【0028】
実施例3
両表層を97.0重量%のEVA1と1.0重量%のモノグリセリンオレイン酸エステルと2.0重量%のジグリセリンラウリン酸エステルの組成で、芯層を100.0重量%のPP1の組成で3台の押出機と3層環状ダイを用い、実施例1と同様に原反を作製した。熱処理とマスターロールの間にコロナ放電処理を設け、実施例1と同様に延伸及び熱処理を行った後、コロナ放電照射量70W/m/minにてコロナ放電処理を施してマスターロールに巻き取った。コロナ放電処理後のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は13mg/mで、濡れ指数は43mN/mであった。
裁断して1週間後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は28mg/mでブリード量は増えたが、濡れ指数は43mN/mのままであった。グラビア印刷を速度100m/minにて行い、インキ接着性の評価を行ったがいずれの評価も良好であった。また、防曇性も良好であった。
【0029】
実施例4
実施例3において、両表層を95.0重量%のLL1と2.5重量%のモノグリセリンオレイン酸エステルと2.5重量%のジグリセリンオレイン酸エステルの組成とした以外、実施例3と同様に実施し原反を作製し、延伸、熱処理、コロナ放電処理を施してマスターロールに巻き取った。コロナ放電処理後のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は16mg/mで、濡れ指数は40mN/mであった。
裁断して1週間後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は33mg/mでブリード量は増えたが、濡れ指数は40mN/mのままであった。グラビア印刷を速度100m/minにて行い、インキ接着性の評価を行ったがいずれの評価も良好であった。また、防曇性も良好であった。
【0030】
比較例1
両表層と芯層の防曇剤を6.0重量%にした以外は実施例2と同様に延伸、コロナ放電処理及び印刷を行った。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は21mg/mで、コロナ放電処理後の濡れ指数は36mN/mであった。
1ケ月後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は45mg/mでブリード量は増えており、濡れ指数は32mN/mに低下していた。インキ接着性の評価を行ったが、インキが剥がれ易く、インキ接着性に劣るものであった。防曇性は良好であったが、実施例1と同様に収縮包装行ったところ、収縮トンネル内でシール部の破袋が2割程度発生した。また、輸送後にトレーを切り離すと、トレー上面のインキが別のトレー底面に転写していた。
【0031】
比較例2
両表層と芯層の防曇剤を0.3重量%にした以外は実施例2と同様に延伸、コロナ放電処理及び印刷を行った。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は10mg/mで、コロナ放電処理後の濡れ指数は42mN/mであった。
1ケ月後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は17mg/mでブリード量は増え、濡れ指数は41mN/mであった。グラビア印刷を速度100m/minにて行い、インキ接着性の評価を行ったがいずれの評価も良好であった。しかし、防曇性は評価基準Cレベルであった。
また。実施例1と同様に収縮包装行い冷蔵庫で保管すると、フィルムに水滴が付着して牛肉の状態が確認できなかった。
【0032】
比較例3
マスターロール巻き上がりから4時間以上経過してコロナ放電処理を行った以外は、実施例2と同様に延伸、コロナ放電処理及び印刷を行った。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は28mg/mで、コロナ放電処理後の濡れ指数は36mN/mであった。
1ケ月後に印刷を行う際、印刷前のフィルムの防曇剤ブリード量は35mg/mでブリード量は増えており、濡れ指数は34mN/mに低下していた。インキ接着性の評価を行ったが、インキが剥がれ易く、インキ接着性に劣るものであった。
【0033】
比較例4
実施例2と同様に延伸を行った後、マスターロール巻き上がりから2日間経過して印刷直前にコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理は、通常の2分の1の速度に調整してコロナ放電照射量140W/m/minに上げて実施した。コロナ放電処理前のマスターロールに巻かれたフィルムの防曇剤ブリード量は30mg/mで、コロナ放電処理及び印刷後の濡れ指数は37mN/mであった。インキ接着性評価の耐セロハンテープ剥離性及び耐低温揉み性は良好であったが、耐スクラッチ性、耐裏移り性及び耐熱剥離性に劣り、印刷適性が十分と言えるものではなかった。また、処理速度が遅く、生産性が通常の50%に低下した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明してきたように、本発明の収縮包装用フィルムは、インキ接着性をフィルムの製造工程で向上させるため、インキとフィルムとの接着性が良好で、かつ、コロナ放電処理後、時間が経過しても印刷適性があるため、従来の印刷方法の条件や設備を変更することがなく印刷ができ、包装フィルムの本来の機能も損なうことがない収縮包装用フィルムである。従って、無地のプラスチック容器等の収縮包装に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防曇剤が0.5〜5重量%添加されたポリエチレン系樹脂を、少なくとも一方向に2倍以上延伸した後、2時間以内にフィルムの表面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする、コロナ放電処理面に印刷が施される収縮包装用フィルム。
【請求項2】
両表面層又は全層に防曇剤が0.5〜5重量%添加され、両表面層がポリエチレン系樹脂からなり、少なくとも一方向に2倍以上延伸された積層フィルムであって、延伸して2時間以内に、フィルムの表面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする、コロナ放電処理面に印刷が施される収縮包装用フィルム。
【請求項3】
コロナ放電処理されたフィルム表面の濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とする請求項1乃至2記載の収縮包装用フィルム。

【公開番号】特開2006−70131(P2006−70131A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254079(P2004−254079)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】